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【発明の名称】 内視鏡
【発明者】 【氏名】荻野 隆之

【要約】 【課題】オートクレーブ処理を繰り返し行っても、素線径が0.2mm以下のオースティナイト系ステンレス鋼線撚り合わせ部品に応力腐食割れが発生せず、内視鏡検査後の滅菌処理をオートクレーブで確実に行うことができる内視鏡を提供すること。

【解決手段】素線径が0.2mm以下のオースティナイト系ステンレス鋼線を複数撚り合わせて、内視鏡を構成する部品として用いられる内視鏡のステンレス鋼線撚り合わせ部品6,11であって、ステンレス鋼線撚り合わせ部品6,11を構成する各素線6a,11aに蓄積された残留応力が各素線6a,11aを複数撚り合わせる加工の際に増大したものにおいて、各素線6a,11aに蓄積された残留応力の一部を除去するための残留応力除去熱処理が、ステンレス鋼線撚り合わせ部品6,11の状態に形成されたものに対して施されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素線径が0.2mm以下のオースティナイト系ステンレス鋼線を複数撚り合わせて、内視鏡を構成する部品として用いられる内視鏡のステンレス鋼線撚り合わせ部品であって、
上記ステンレス鋼線撚り合わせ部品を構成する各素線に蓄積された残留応力が上記各素線を複数撚り合わせる加工の際に増大したものにおいて、
上記各素線に蓄積された残留応力の一部を除去するための残留応力除去熱処理が、上記ステンレス鋼線撚り合わせ部品の状態に形成されたものに対して施されていることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
上記ステンレス鋼線撚り合わせ部品が、上記複数の素線を中実状態に撚り合わせて形成されたワイヤである請求項1記載の内視鏡。
【請求項3】
上記ワイヤが、上記内視鏡の挿入部の先端付近に設けられた湾曲部を上記挿入部の基端側からの遠隔操作によって屈曲させる操作を行うための湾曲操作ワイヤである請求項2記載の内視鏡。
【請求項4】
上記ステンレス鋼線撚り合わせ部品が、上記複数の素線を中空の筒状に撚り合わせて形成された網状管である請求項1記載の内視鏡。
【請求項5】
上記網状管が、上記内視鏡の挿入部を外装する可撓管内に組み込まれるものである請求項4記載の内視鏡。
【請求項6】
上記残留応力除去熱処理が、上記ステンレス鋼線撚り合わせ部品を350〜400℃の雰囲気に20〜30分おくものである請求項1ないし5のいずれかの項に記載の内視鏡。
【請求項7】
上記残留応力除去熱処理によって除去される残留応力が、上記各素線に蓄積されている残留応力の2〜30%の範囲である請求項1ないし6のいずれかの項に記載の内視鏡。
【請求項8】
上記残留応力除去熱処理によって除去される残留応力が、上記各素線に蓄積されている残留応力の4〜20%の範囲である請求項7に記載の内視鏡。
【請求項9】
上記残留応力除去熱処理によって除去される残留応力が、上記各素線に蓄積されている残留応力の6〜10%の範囲である請求項8に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡においては、素線径が0.2mm以下のオースティナイト系ステンレス鋼線を複数撚り合わせたステンレス鋼線撚り合わせ部品が、湾曲操作ワイヤや挿入部可撓管の網状管等として用いられている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2000−152911
【特許文献2】特開平9−117409
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、内視鏡を介しての感染防止の完全を期すため、内視鏡検査が終了する毎に内視鏡に対して高温高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)による滅菌処理が行われることが多くなり、内視鏡の外装部材等が過酷なオートクレーブ処理の環境に耐えられるよう改良されてきている。
【0004】
しかし、オートクレーブ処理が行われると、蒸気に直接触れない湾曲操作ワイヤや挿入部可撓管内の網状管等のような素線径が0.2mm以下のオースティナイト系ステンレス鋼線撚り合わせ部品が、応力腐食割れの発生により小さな張力が加わっただけで簡単に折れてしまう現象が発生するようになった。
【0005】
応力腐食割れは、金属が、材質的要因(クロムを含むオースティナイト系ステンレス鋼等)、応力要因(残留応力)及び環境要因(溶在酸素の存在)の三つの要因が重なった時だけ通常より極めて低い応力で破壊されてしまう現象であり、原子力発電所における圧力容器や配管等の溶接部の破損原因として取り上げられている。
【0006】
内視鏡に用いられるステンレス鋼線撚り合わせ部品の中でも、素線径が0.2mm以下のものは元々の引っ張り強度が低いうえに、各素線を複数撚り合わせる加工の際に残留応力が著しく増大していて、オートクレーブ処理によって機材が高温になると、ステンレス鋼線撚り合わせ部品の端部を固定する半田付けに用いられた残留フラックスが蒸発することで溶在酸素が発生し、応力腐食割れが発生する三つの要因が揃う状態になって簡単に素線折れが発生するものと考えられる。
【0007】
そして、応力腐食割れにより湾曲操作ワイヤが断線すると、挿入部先端付近の湾曲部を屈曲させる操作を行うことができなくなり、挿入部可撓管内の網状管が断線すると、挿入部可撓管の回転追従性が低下して挿入部先端の回転方向の向きを手元側からスムーズに変えることができなくなってしまう。
【0008】
そこで本発明は、オートクレーブ処理を繰り返し行っても、素線径が0.2mm以下のオースティナイト系ステンレス鋼線撚り合わせ部品に応力腐食割れが発生せず、内視鏡検査後の滅菌処理をオートクレーブで確実に行うことができる内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡は、素線径が0.2mm以下のオースティナイト系ステンレス鋼線を複数撚り合わせて、内視鏡を構成する部品として用いられる内視鏡のステンレス鋼線撚り合わせ部品であって、ステンレス鋼線撚り合わせ部品を構成する各素線に蓄積された残留応力が各素線を複数撚り合わせる加工の際に増大したものにおいて、各素線に蓄積された残留応力の一部を除去するための残留応力除去熱処理が、ステンレス鋼線撚り合わせ部品の状態に形成されたものに対して施されているものである。
【0010】
なお、ステンレス鋼線撚り合わせ部品が、複数の素線を中実状態に撚り合わせて形成されたワイヤであってもよく、そのワイヤが、内視鏡の挿入部の先端付近に設けられた湾曲部を挿入部の基端側からの遠隔操作によって屈曲させる操作を行うための湾曲操作ワイヤであってもよい。
【0011】
また、ステンレス鋼線撚り合わせ部品が、複数の素線を中空の筒状に撚り合わせて形成された網状管であってもよく、その網状管が、内視鏡の挿入部を外装する可撓管内に組み込まれるものであってもよい。
【0012】
また、残留応力除去熱処理が、ステンレス鋼線撚り合わせ部品を350〜400℃の雰囲気に20〜30分おくものであってもよく、残留応力除去熱処理によって除去される残留応力が、各素線に蓄積されている残留応力の2〜30%の範囲であってもよい。
【0013】
さらに、残留応力除去熱処理によって除去される残留応力が、各素線に蓄積されている残留応力の4〜20%の範囲であれば、より高い耐久性が得られ、残留応力除去熱処理によって除去される残留応力が、各素線に蓄積されている残留応力の6〜10%の範囲であるようにすれば絶大な効果がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、素線径が0.2mm以下のオースティナイト系ステンレス鋼線撚り合わせ部品を構成する各素線に蓄積された残留応力の一部を除去するための残留応力除去熱処理が、ステンレス鋼線撚り合わせ部品の状態に形成されたものに対して施されていることにより、オートクレーブ処理を繰り返し行っても、ステンレス鋼線撚り合わせ部品に応力腐食割れが発生しなくなり、内視鏡検査後の内視鏡の滅菌処理をオートクレーブで確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
素線径が0.2mm以下のオースティナイト系ステンレス鋼線を複数撚り合わせて、内視鏡を構成する部品として用いられる内視鏡のステンレス鋼線撚り合わせ部品であって、ステンレス鋼線撚り合わせ部品を構成する各素線に蓄積された残留応力が各素線を複数撚り合わせる加工の際に増大したものにおいて、各素線に蓄積された残留応力の一部を除去するための残留応力除去熱処理が、ステンレス鋼線撚り合わせ部品の状態に形成されたものに対して施されている。
【実施例】
【0016】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は本発明の実施例の内視鏡の全体構成を示しており、挿入部可撓管1の先端には遠隔操作によって屈曲する湾曲部2が連結され、図示されていない観察窓等が配置された先端部本体3が湾曲部2の先端に連結されている。11は、挿入部可撓管1を構成する部材の一つである網状管であり、挿入部可撓管1の外皮を部分的に剥がした状態で図示されている。
【0017】
挿入部可撓管1の基端に連結された操作部4には回転操作自在な湾曲操作ノブ5が配置されていて、湾曲操作ノブ5を操作することにより、操作部4内から挿入部可撓管1内及び湾曲部2内にわたって挿通配置された複数の湾曲操作ワイヤ6の一部が選択的に牽引されて、湾曲部2を任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができる。
【0018】
湾曲操作ワイヤ6としては、複数のオースティナイト系ステンレス鋼線を中実状態に撚り合わせたいわゆる撚り線が用いられている。ここでは、図2に軸線と垂直方向の断面形状が図示されているような7×7本撚りの撚り線が用いられており、素線6aの径が0.06〜0.1mm(したがって、撚り合わされた状態の外径が0.54〜0.9mm)の大きさのものが選択されている。なお、1×19本撚り(例えば素線径が0.04mmで外径が0.2mm等)又はその他の撚り方の撚り線であってもよい。
【0019】
このような湾曲操作ワイヤ6に用いられる撚り線は、素線6aが引き抜き加工で製造される際に残留応力が発生するが、素線6aに蓄積される残留応力は、さらに複数の素線6aどうしを撚り合わせることで大幅に増大している。
【0020】
そこで本発明においては、図3に示されるように、複数の素線6aが撚り合わされた湾曲操作ワイヤ6の状態に形成されたもの(即ち、内視鏡に組み付けられる前の状態)に対して、各素線6aに蓄積された残留応力の一部を除去するための残留応力除去熱処理が施され、それにより応力腐食割れの応力要因が小さくされている。
【0021】
そのような残留応力除去熱処理は、湾曲操作ワイヤ6を350〜400℃の雰囲気に20〜30分おく条件で行われており、それによって除去される残留応力が、各素線6aに蓄積されている残留応力の4〜20%程度の範囲になればよい。
【0022】
即ち、各素線6aに蓄積されている残留応力の4%以上が除去されると、内視鏡にオートクレーブ処理を繰り返し行っても(例えば500回以上)、湾曲操作ワイヤ6の素線6aに応力腐食割れによる断線が発生しない。また、各素線6aに蓄積されている残留応力を20%以下の範囲で除去する熱処理であれば、湾曲操作ワイヤ6の機械的強度を実用性の範囲以下に低下させない。
【0023】
即ち、例えば素線6aの径が0.08mmで、それを撚り合わせた湾曲操作ワイヤ6の径が0.72mmの場合には引っ張り強度が350N以上になり、例えば、最大湾曲操作を10000回繰り返し行っても素線6aに断線が発生しない。
【0024】
湾曲操作ワイヤ6の素線6aに蓄積されている残留応力を2〜4%の範囲又は20〜30%の範囲で除去する処理を行った場合には、上記の条件で最大湾曲操作を行ったとき湾曲操作ワイヤ6の素線6aにある程度の折れが発生する場合があるものの、300N以上の引っ張り強度が得られて、従来より優れた耐久強度が得られる。
【0025】
また、残留応力除去熱処理によって除去される残留応力が、湾曲操作ワイヤ6の素線6aに蓄積されている残留応力の6〜10%の範囲であるように残留応力除去熱処理を行えば、内視鏡にオートクレーブ処理を実用以上に繰り返し行っても(例えば800回以上)、最大湾曲操作の実用以上の繰り返し(例えば10000回以上)で、湾曲操作ワイヤ6の素線6aに全く切れが発生しない絶大な効果が得られる。
【0026】
図4は挿入部可撓管1を示しており、ステンレス鋼帯材を螺旋状に巻いて形成された二重の螺旋管12,13の外周に網状管11が被覆されて、その外周に合成樹脂材からなる可撓性の外皮14が被覆されている。
【0027】
網状管11は、素線11aの径が0.05〜0.15mm程度の複数のオースティナイト系ステンレス鋼線を中空の筒状に撚り合わせて形成されており、素線11aが引き抜き加工で製造される際に残留応力が発生するが、素線11aに蓄積される残留応力は、さらに複数の素線11aどうしを網状管11として撚り合わせる際に大幅に増大している。
【0028】
そこで本発明においては、図5に示されるように、複数の素線11aが撚り合わされて網状管11の状態に形成されたもの(即ち、挿入部可撓管1に組み込まれる前の状態)に対して、湾曲操作ワイヤ6の場合と同様にして、残留応力の一部を除去するための残留応力除去熱処理が350〜400℃の雰囲気に20〜30分おく条件で施されており、それにより応力腐食割れの応力要因が小さくなって、湾曲操作ワイヤ6の場合と同様の耐久上の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の全体構成を示す側面図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡の湾曲操作ワイヤの軸線に垂直な断面図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡の湾曲操作ワイヤの側面図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の挿入部可撓管の層を順に剥がして図示した側面図である。
【図5】本発明の実施例の内視鏡の挿入部可撓管の網状管の側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 挿入部可撓管
2 湾曲部
6 湾曲操作ワイヤ(ステンレス鋼線撚り合わせ部品)
6a 素線
11 網状管(ステンレス鋼線撚り合わせ部品)
11a 素線
【出願人】 【識別番号】000000527
【氏名又は名称】ペンタックス株式会社
【出願日】 平成18年6月8日(2006.6.8)
【代理人】 【識別番号】100091317
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 和彦


【公開番号】 特開2007−325748(P2007−325748A)
【公開日】 平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願番号】 特願2006−159259(P2006−159259)