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【発明の名称】 含気油中固液分散型食品
【発明者】 【氏名】安永 浩一

【氏名】戸井 知子

【氏名】片岡 潔

【氏名】森 秀樹

【要約】 【課題】食感が軽くなめらかで、起泡力が高く低カロリーとなり、冷蔵しても常温でも柔らかな物性で良好な塗りやすさを有し、その物性が1ケ月以上の長期間の流通、保存後も維持される性能を同時に満たしうる食品を提供する。

【解決手段】ジグリセリドを10重量%以上含む油脂中に風味材を含有せしめ、且つ融点が40℃以上の乳化剤を2.5〜7重量%含むことを特徴とする含気油中固液分散型食品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセリドを10重量%以上含む油脂中に風味材を含有せしめ、且つ融点が40℃以上の乳化剤を2.5〜7重量%含むことを特徴とする含気油中固液分散型食品。
【請求項2】
DSCで、80℃で10分保持し、2℃/分の速度で−50℃まで冷却するとき、20℃から5℃まで温度変化させる際の発熱量が全発熱量の20%以下である、油脂と乳化剤との混合物中に、風味材を含有せしめることを特徴とする請求項1記載の含気油中固液分散型食品。
【請求項3】
DSCで、80℃から−50℃まで40℃/分の速度で冷却し、−50℃で10分間保持し、2℃/分の速度で90℃まで昇温するとき、40℃から80℃までの吸熱量が全吸熱量の5%以上である、油脂と乳化剤との混合物中に、風味材を含有せしめることを特徴とする請求項1又は2記載の含気油中固液分散型食品。
【請求項4】
乳化剤が、多価アルコールエステルである請求項1〜3の何れか1項記載の含気油中固液分散型食品。
【請求項5】
乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリドとポリカルボン酸とのエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコールエステルである請求項4記載の含気油中固液分散型食品。
【請求項6】
油脂と風味材の重量比が20:80〜99:1である請求項1〜5の何れか1項記載の含気油中固液分散型食品。
【請求項7】
気泡含量が50〜85体積%である請求項1〜6の何れか1項記載の含気油中固液分散型食品。
【請求項8】
水分活性0.85以下もしくは酸度1.2 以上の風味材を含有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の含気油中固液分散型食品。
【請求項9】
風味材の水分含量が30重量%以下である請求項1〜8の何れか1項記載の含気油中固液分散型食品。
【請求項10】
プラスチック、紙、金属のうち何れか一つ、またはこれらの混成でなるスクイズ容器に充填した、請求項1〜9の何れか1項記載の含気油中固液分散型食品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂としてジグリセリドを使用しているため、トリグリセリドを使った場合よりも、ざらつきのない、なめらかな食感を有し、その上、気泡率が高まるため低カロリーで健康的となる含気固液分散型食品に関する。また、以上の性能に加えて、冷蔵しても柔らかい物性を保ち、他の食品に塗りやすく、ヒートショックに対してもオイルオフしたり、気泡率が低下しないため、常温の含気状態で長時間の流通、保存が可能な含気固液分散型食品に関する。本発明で言う含気油中固液分散型食品とは、連続相である油脂中に風味付与のための固形分や液状物(これらを風味材という)を分散させた組成物を含気せしめた食品、又は油脂を含気せしめた後に風味材を混合して得られる食品であり、含気状態で流通、保存される。また、パン、クラッカー、ポテトチップス等のスナック菓子、米飯、麺類、野菜、肉類、魚類等に付けて食することのできる食品である。この食品は、風味材を適宜選択することで、バター、マーガリン、スプレッド、ジャム、ドレッシング、ヨーグルト等に代わる食品として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
最近の健康志向による食品の低カロリー化の傾向にともなって、バターやマーガリンなど油脂含量の高い食品を敬遠する消費者が増加している。これらの油脂含量を低減するために糖質及びタンパク質などを添加するファットスプレッド類もあるが、カロリーを減少させる目的では大きな効果があるとはいえず、しかも糖類及びタンパク類によって油脂食品本来の風味、食感が損なわれている。一方、近年の簡便志向の高まりにともない、取り扱いやすい食品に対する要望が高まっている。現在、パン等の素材に塗る食品としては、バター、マーガリン、ジャム等のスプレッドがある。それのほとんどは、冷蔵時にその物性が固くなり、柔らかなパン組織を損なうことなく、手軽にムラなく均一に塗ることのできる食品はない。上記の問題を解決するために、起泡させたホイップバター、ホイップマーガリン、ホイップピーナッツバター、ホイップクリーム等があるが、起泡性が不十分であったり、長期間の流通、保存安定性に欠けるため、手軽さと健康性を解決するには至っていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、食感が軽くなめらかで、起泡力が高く低カロリーとなり、冷蔵しても常温でも柔らかな物性で良好な塗りやすさを有し、その物性が1ケ月以上の長期間の流通、保存後も維持される性能を同時に満たしうる食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
食感が軽くなめらかな食感とするためには、各種の粉体、固体脂及び乳化剤の溶解性がよく、起泡力が高い油脂素材が必要である。また、物性面としては、冷蔵温度から常温の温度範囲で柔らかで一定した物性を有し、長期間の流通、保存後も維持されている必要がある。
本発明者らは、以上の性能を獲得するため検討を行った結果、油脂としてジグリセリドと乳化剤を使用することによって、トリグリセリドの場合と比較して、気泡含量の高い気泡物を得ることができ、食感もなめらかで良好になることが判明し、低カロリーで健康的であり、且つおいしさも両立した食品を得ることに成功し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、ジグリセリドを10重量%以上含む油脂中に風味材を含有せしめ、且つ融点が40℃以上の乳化剤を2.5〜7重量%含むことを特徴とする含気油中固液分散型食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、気泡率が高く、低カロリーとなり、なめらかで軽い食感を有すると同時に、冷蔵しても柔らかい物性を保ち、長期保存でも物性維持が可能といった、簡便性をも有する含気固液分散型食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に使用する油脂は、ジグリセリドを10重量%以上、好ましくは30重量%以上含むものである。ジグリセリド(グリセリンジ脂肪酸エステル)を構成する脂肪酸としては、炭素数8〜22の飽和及び不飽和脂肪酸の何れでもかまわないが、特に炭素数16〜22の不飽和脂肪酸が好ましく、その含有量としてはジグリセリドの脂肪酸残基を基準として70重量%以上、特に80重量%以上が好ましい。中でもジ不飽和ジグリセリドを用いるのが好ましい。特に、ジシス不飽和ジグリセリドが好ましく、その含有量としてはジグリセリドを基準として50重量%以上、特に70重量%以上が好ましい。モノ不飽和モノ飽和ジグリセリド及びジ飽和ジグリセリドは、起泡性に悪影響を及ぼす物質ではなく、ジ不飽和ジグリセリド製造の際に生成されて、ジ不飽和ジグリセリド中に少量混在していてもかまわない。
本発明に用いるジグリセリドは、天然起源の油脂、例えばサフラワー油、ナタネ油、コーン油、大豆油、綿実油、オリーブ油、パーム油等の植物油、更にはラード、牛脂、魚油、バター脂等の動物油、あるいはそれらの硬化油、分別油、ランダムエステル交換油から選ばれた1種以上の油脂とグリセリンの混合物を、アルカリ金属又は(及び)アルカリ土類金属の水酸化物の存在下でエステル交換するか、又は不飽和脂肪酸レベルの高い脂肪酸組成物とグリセリンの混合物をエステル化反応することにより得られる。生成ジグリセリド混合物中に形成された過剰のモノグリセリドは起泡性に悪影響を及ぼす物質ではないが、油脂中に高い比率で含まれると、食感に悪影響を及ぼすため、予め分子蒸留法あるいはクロマトグラフィー法によって除去することが好ましい。
【0007】
また、本発明に用いる油脂は、天然起源の油脂、例えばサフラワー油、ナタネ油、コーン油、大豆油、綿実油、オリーブ油、パーム油等の植物油、更にはラード、牛脂、魚油、バター脂等の動物油、あるいはそれらの硬化油、分別油、ランダムエステル交換油から選ばれた1種以上の油脂である。
また、本発明において使用する油脂と乳化剤との混合物の物性として、DSCで、80℃で10分間保持し、2℃/分の速度で−50℃まで冷却するとき、20℃から5℃まで温度変化させる際の発熱量が全発熱量の20%以下、特に10%以下であることが、冷蔵しても常温になじんでも良好な塗り易さを有する点でより好ましい。
さらに、DSCで、80℃から−50℃まで40℃/分の速度で冷却し、−50℃で10分間保持し、2℃/分の速度で90℃まで昇温するとき、40℃から80℃まで温度変化させる際の吸熱量が全吸熱量の5%以上、好ましくは10〜20%である、油脂と乳化剤との混合物とすることで、高温でも残存する油脂と乳化剤からなる結晶を存在させることが可能となり、以上で述べたきたような性能を低下させることなく、ヒートショック時のオイルオフや気泡率低下の抑制を可能として、長期間の常温流通が可能な含気油中固液分散型食品を得ることに成功した。
【0008】
本発明で使用される乳化剤は、多価アルコールエステルが好ましく、 特にグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリドとポリカルボン酸のエステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコールエステルとすることで、より高い起泡性、長期間の気泡安定性を獲得することができる。乳化剤は、組成物中に0.5 重量%以上、好ましく2.5 〜7重量%配合される。また、油脂と風味材の重量比は、20:80〜99:1、特に50:50〜95:5であることが好ましい。この範囲とすることで、油脂の持つまろやかな食味と、充分な風味材の滋味が得られる。
【0009】
この含気油中固液分散型食品中の気泡含量は、冷蔵しても常温になじんでも良好な塗り易さを達成し、低カロリー化をはかるうえで、50〜85体積%、望ましくは75〜85体積%であることが好ましい。気泡含量は、次式により求める。
【0010】
【数1】


【0011】
本発明において使用される風味材としては、固形状でも液状でも良い。 固体としては、食塩、 糖類、澱粉類、蛋白質、乾燥野菜、乾燥果実、乾燥畜肉、乾燥魚肉などの粉体、液体としては、以上の固体風味材が溶解もしくは分散したペーストや、野菜、果実、畜肉、魚肉などを調味料とともに煮沸して得られるペーストなどが挙げられる。また、長期間の常温での流通、保存を行う際には、風味材の水分活性0.85以下、特に0.80以下、もしくは酸度1.2 以上、特に2.0 以上であり、しかも水分含量が30重量%以下、特に16重量%以下であることが望ましい。
【0012】
本発明の含気油中固液分散型食品は、融解した油脂組成物を攪拌徐冷して製造することができる他、プレート冷却器、コンビネーター、ボテーターなどの急冷可塑化機、練り機などを目的に応じて単独もしくは自由に組み合わせて使用できる。テンパリングは行わなくても目的の性能は得られるが、好ましく油脂、乳化物混合物の上昇融点より5〜15℃低い温度で12〜48時間テンパリングすることでより高い気泡率の製品を得ることができる。
この含気油中固液分散型食品は、プラスチック、紙、金属のうち何れか一つ、またはこれらの混成でなるスクイズ容器に充填することで、操作性、保存性、簡便性、食味に優れたホイップスプレッドとすることができる。
【0013】
また、本発明で規定した熱量は、市販のDSC(METTLER DSC820)により測定できる。以下にその測定法を述べる。まず、試料である油脂と乳化剤との混合物を加熱溶解し、その10〜15mgをアルミニウム製のパンに封入する。対照試料として、空気を封入したアルミニウム製のパンを使用する。続いて、試料を80℃で10分間保持し、2℃/分の速度で−50℃まで冷却し、全発熱量および20℃から5℃まで温度変化させる際の発熱量とを測定する。発熱量はピーク面積より算出されるが、その際に使用するベースラインは、DSC曲線において、降温過程でピークが現れる以前の直線部分を延長することにより得る。さらに、80℃から−50℃まで40℃/分の速度で冷却し、−50℃で10分間保持し、2℃/分の速度で90℃まで昇温し、全吸熱量と40℃から80℃まで温度変化させる際の吸熱量とを測定する。吸熱量はピーク面積より算出されるが、その際に使用するベースラインは、DSC曲線において、昇温過程でピークが消失した以降の直線部分を延長することにより得る。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
実施例1〜5、比較例1〜6
表1、2に示した配合で油脂と乳化剤を混合し、80℃で加熱溶解し、混練しながら10℃まで冷却した、20℃で24時間テンパリングした後、風味材を添加、混合してからホイッピングした(実施例1,2,4,5、比較例2,3,4,5,6)。または、油脂と乳化剤の混合物をテンパリング後にホイッピングし、ホイップ物に風味材を混合した(実施例3、比較例1)。
各実施例及び比較例の評価結果を表1,2に示す。
評価基準は以下の通りである。
起泡率は、ホバートキキサー(HOBART CANADA社製、N-50 型) を用いて、15分間ホイップした後、それぞれの条件で保存したときの値を示す。
食感の評価は、10名のパネルにより、今回の実施例及び比較例の各サンプルを官能で評価した。評価基準は今回のサンプル内の相対比較で行い、「なめらかで軽い食感であるか」の質問に対して、以下の5段階で回答し、その平均点によって性能を評価した。
5:十分に認められる
4:ほぼ認められる
3:どちらともいえない
2:やや認められる
1:認められない
塗りやすさの評価は、10名のパネルにより、今回の実施例及び比較例の各サンプルを実際にパンに塗ってもらい官能で評価した。評価基準は今回のサンプル内の相対比較で行い、以下の5段階で回答し、その平均点によって性能を評価した。
5:十分に塗りやすい
4:塗りやすい
3:どちらともいえない
2:やや塗りにくい
1:塗りにくい
オイルオフの評価は、表に記載の条件でガラスビンに密封して保存した後、オイルオフがなければマイナス(−)、オイルオフがあればプラス(+)とした。
【0016】
【表1】


【0017】
【表2】


【0018】
実施例1〜5に見られるように、ジグリセリドと乳化剤の混合物を使用した場合、気泡率が高くなり、一定体積当たりのカロリーが顕著に少なくなることがわかる。また、食感評価でも、ジグリセリドを使用した場合、評価が上がり、なめらかで軽い食感が向上していることがわかる。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【出願日】 平成19年2月13日(2007.2.13)
【代理人】 【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡

【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦

【識別番号】100091845
【弁理士】
【氏名又は名称】持田 信二

【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌


【公開番号】 特開2007−125042(P2007−125042A)
【公開日】 平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願番号】 特願2007−31901(P2007−31901)