トップ :: A 生活必需品 :: A23 食品または食料品;他のクラスに包含されないそれらの処理




【発明の名称】 ペットフード又はペット用飲料
【発明者】 【氏名】伴 武

【氏名】梅田 智重

【要約】 【課題】歯垢の形成を強力に抑制し、虫歯や歯周病を予防することができるペットフード又はペット用飲料の提供。

【解決手段】歯垢を除去したペットに与えるものであって、トラガカントガムを含有する、ペリクル形成阻害用ペットフード又はペット用飲料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯垢を除去したペットに与えるものであって、トラガカントガムを含有する、ペリクル形成阻害用ペットフード又はペット用飲料。
【請求項2】
トラガカントガムを含有する、歯垢を除去したペット用のペリクル形成阻害剤。
【請求項3】
トラガカントガムを含有するフード又は飲料を、歯垢を除去したペットに与えることを特徴とするペット口腔内のペリクル形成阻害方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットの歯垢形成を抑制するペットフード又はペット用飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
歯垢及びこれが石灰化した歯石は、う蝕や歯周疾患等種々の口腔疾患の原因であることから、これらの疾患を予防する目的で、ヒト用の各種の歯垢形成抑制剤や歯石形成抑制剤が提案されている。歯垢は歯の表面に付着したネバネバした塊であり、口腔内細菌叢及びそれらの産生物からなる。この歯垢の形成は、歯牙表面における唾液成分よりなるペリクル(獲得被膜)の形成から始まる。ペリクルは歯牙表面に形成された不定形の膜様の構造物であり、糖タンパク質などの唾液成分が歯牙表面に選択的に吸着したものである。歯垢は、このペリクル表面に口腔内細菌が吸着・増殖する事により形成される。さらに、歯垢の形成は、歯の表面に吸着した細菌に、例えばフゾバクテリウム属などの桿菌が吸着した場合、共凝集と呼ばれる口腔内細菌同士の吸着反応により助長される。
【0003】
従来から、歯垢形成抑制剤としては、殺菌剤や抗菌剤が広く用いられており、口腔内細菌数を減少させる等の効果が報告されている(非特許文献1)。しかし、唾液の洗浄作用により口腔内においてその有効濃度を維持するのが困難であり、その効果は不十分である(非特許文献2)。また、既に歯垢が存在している場合、これらは歯垢中細菌の代謝活性を低下させ、ミネラル沈着、すなわち石灰化を進行させる。一方、ペリクルへの細菌吸着を阻害する剤としてフノラン、ジェランガムなどの多糖類(特許文献1)等が提案されている。また、歯石形成抑制剤としては、リン酸化デンプンの使用(特許文献2)、アルギン酸と2価金属の併用(特許文献3)等が提案されている。さらに、キサンタンガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム等の多糖類が、口腔内細菌同士の共凝集を抑制し、歯垢形成抑制剤として有用であることが知られている(特許文献4)。
【0004】
一方、ペットの口腔ケアを目的とした技術は、硬い突起を一定の角度で配置したドッグフードとして歯垢を掻き取る技術(特許文献5)、こんにゃく又はグルコマンナンを用いたスポンジ状のペットフードとして口腔内を清掃する技術(特許文献6)、緑茶抽出物を一定量含有させ、口腔内の細菌を減じる作用を有するキャットフード(特許文献7)等が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−139979号公報
【特許文献2】特開平4−217613号公報
【特許文献3】特開平9−175968号公報
【特許文献4】特開平01−213222号公報
【特許文献5】特開2005−304475号公報
【特許文献6】特開2001−292707号公報
【特許文献7】特開平11−137184号公報
【非特許文献1】J. Periodontol.,1991,62(11):649〜651
【非特許文献2】Oral Surg.Oral Med. Oral Pathol.,1990 Apr.;69(4):444〜449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歯垢の形成は前述の通りペリクルの形成から始まるが、前記従来の技術は、いずれもペリクルの形成そのものを抑制するものではなく、細菌吸着の抑制、歯垢中のリン酸カルシウム等が結晶化し歯石になるのを防止、口腔内細菌同士の共凝集の抑制等の対症療法的なものである結果、効果としては満足のいくものではなかった。特に、より歯垢が形成され易い口腔環境を有するペットにおいては、従来の対処療法的な方法では充分な効果を発揮するものではないことも判明した。
そこで本発明は、ペットの口腔内におけるペリクルの形成を阻害し、優れた歯垢形成抑作用を有するペットフード又はペット用飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記特許文献4には、トラガカントガム(特許文献4中には「トラガントガム」と記載されているが、同じものを意味する)は口腔内細菌同士の共凝集抑制作用を有し、トラガカントガムを含まない場合に比べて、濃度0.35%で口腔内細菌の共凝集を50%抑制することが記載されている。しかしながら、特許文献4における共凝集抑制作用はリン酸緩衝液中で試験された結果である。そこで本発明者は、実使用状態に即し、唾液存在下でのトラガカントガムの口腔内細菌同士の共凝集抑制作用に着目して検討したところ、これらの多糖類は唾液存在下では、歯垢形成抑制作用を十分に発揮できるほど高い率で口腔内細菌の共凝集を抑制できないことが判明した。
【0008】
また、犬の口腔内環境はpHが8程度と高く、pHが7程度であるヒトの環境と比べて5倍も早く歯垢が形成される。更に、犬はヒトと違って自発的な歯磨きをしないため、飼い主が歯垢形成予防を意識的に行わないと次第に歯石となり、これが原因で歯周病に至る。以上のことから、本発明者は、犬においてはより早期に歯垢の形成を抑制する手段を採ることが重要であり、そのためには歯垢形成の初期段階であるペリクルの形成を阻害することが有効であると考え、特に、フードや飲料にその作用を持たせればより効果的であることに思い至った。
【0009】
一方、本発明者は、犬の唾液の存在下において、トラガカントガムの歯表面への細菌吸着と歯垢形成抑制効果について検討したところ、全く意外にも、トラガカントガムには、犬の唾液存在下において細菌の共凝集を効果的に抑制できないほどの低濃度で、強力に歯垢形成を抑制する作用があることを見出した。また、歯垢を除去した歯と歯垢が付着した歯にて比較したところ、前者にて歯垢形成抑制効果が顕著であることを見出した。これら検討の結果、トラガカントガムは歯表面への細菌の吸着そのものを抑制するのではなく、その前段階である歯表面でのペリクルの形成を阻害することにより、細菌の吸着が抑制され、歯垢形成を抑制していることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、歯垢を除去したペットに与えるものであって、トラガカントガムを含有する、ペリクル形成阻害用ペットフード又はペット用飲料を提供するものである。
また、本発明は、トラガカントガムを含有する、歯垢を除去したペット用のペリクル形成阻害剤を提供するものである。
さらに、本発明は、トラガカントガムを含有するフード又は飲料を、歯垢を除去したペットに与えることを特徴とするペット口腔内のペリクル形成阻害方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のペットフード又はペット用飲料を、歯に付着した歯垢を除去したペットに継続的に用いることにより、歯垢の形成を強力に抑制し、虫歯や歯周病を予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のペットフード又はペット用飲料及びペット用ペリクル形成阻害剤(以下、単にペットフード又はペット用飲料という)は、トラガカントガムを含有するものである。
トラガントガムのペットフード又はペット用飲料中の含有量は、ペリクル形成を阻害し歯垢形成抑制作用に優れる点から、0.001〜1質量%(以下、単に「%」と表記する)、さらに0.002〜0.5%、特に0.005〜0.1%が好ましい。
【0013】
また、本発明のペットフード又はペット用飲料においては、水溶性のポリリン酸又はその塩を併用することが、ペリクル形成阻害効果が高く、歯垢形成抑制作用に優れる点から好ましい。水溶性のポリリン酸の具体例としては、ピロリン酸、酸性ピロリン酸、トリポリリン酸等が挙げられ、ピロリン酸、酸性ピロリン酸、トリポリリン酸が好ましい。ここで、ポリリン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が使用でき、具体的にはピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、またトリポリリン酸ナトリウムなどの縮合リン酸塩が挙げられる。ポリリン酸の含有量は、ペットフード又はペット用飲料中0.001〜1%、さらに0.002〜0.5%、さらに0.003〜0.2%、特に0.005〜0.1%であることが、ペリクル形成阻害作用が高く、歯垢形成抑制効果に優れる点から好ましい。
【0014】
本発明のうち、ペットフードに水溶性のポリリン酸又はその塩を使用する場合には、効果的にペリクルの形成を阻害するために、先にポリリン酸又はその塩が溶解を開始し、次いでトラガカントガムが溶解を開始するように構成されることが好ましい。「先に溶解を開始し」とは、ペットがフードを食する際に、先にポリリン酸又はその塩を含む部分が口腔内に接触すればよく、またトラガカントガムを含む部分とポリリン酸又はその塩を含む部分の両者が同時に口腔内に接触する場合には、ペットフード全体の表面積に占めるポリリン酸又はその塩を含む部分の表面積が大きくなるように構成されているか、ポリリン酸又はその塩が早く溶解するよう構成されていることが好ましい。また、優先して口腔内に接触する部分にトラガカントガムとポリリン酸又はその塩の両者が含まれている場合には、ポリリン酸又はその塩の濃度がトラガカントガム濃度より高くなるよう構成されていることが好ましい。例えば、トラガカントガムをポリリン酸又はその塩で被覆したり、ポリリン酸又はその塩中にトラガカントガムが分散した状態とするもの、またポリリン酸又はその塩を含む層でトラガカントガム層をサンドイッチ状に挟んだ構成とすることが挙げられる。
【0015】
本発明のペットフード又はペット用飲料は、さらに特定の糖アルコールを配合することが、ペリクル形成阻害作用が高く、歯垢形成抑制効果に優れる点から好ましい。糖アルコールとしては、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールから選ばれるものであるが、特にペリクル形成阻害作用が高い点からエリスリトールを使用することが好ましい。エリスリトールには、L−エリスリトール、D−エリスリトール、meso−エリスリトールの3種の異性体が存在するが、これらいずれの構造のものであってもよい。
【0016】
糖アルコールの含有量は、ペリクル形成阻害作用が高く、歯垢形成抑制効果に優れる点から、ペットフードの場合は0.01〜50%、さらに0.1〜30%、さらに1〜20%、特に1〜25%が好ましく、ペット用飲料の場合は0.01〜25%、さらに0.05〜20%、さらに0.1〜15%、特に0.5〜10%が好ましい。
また、糖アルコールは、水溶性のポリリン酸又はその塩を同時に使用する場合には、これと同時に溶解を開始するように構成されていることが、ペリクル形成阻害作用が高くなる点から好ましい。
【0017】
本発明のうちペットフードにおいては、ペリクル形成をより効果的に阻害する点から、物理的研磨剤として用いられるものを併用することが好ましい。物理的研磨剤としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカゲル、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、沈降性シリカ、硫酸カルシウム、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、ポリメタクリル酸メチル等の合成樹脂等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することが好ましい。これらの研磨材はペットフードの中に練り込んでもよいが、表面にまぶすことでより効率的に研磨することが可能となる。ペットフード中の物理的研磨剤の含有量は、0.001〜10%、さらに0.01〜5%、さらに0.05〜3%、特に0.1〜2%が好ましい。
【0018】
また、本発明のうちペットフードにおいては、上記物理的研磨剤と共に又はこれに替え、牛皮、豚耳などの動物皮の乾燥物、動物の骨、カゼインなどを固めて成型したもの、ドライドッグフード、肉等を乾燥したものを用いても良い。
【0019】
また、本発明のペットフードにおいては、その他ペットフードに通常用いられる素材である油脂源、蛋白源、炭水化物源、ミネラル類等を配合することができる。油脂源としては、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、コーン油、ナタネ油、大豆油、パーム油、ひまわり油、亜麻仁油、ごま油、ラード、牛脂、魚油、乳脂等が挙げられるが、油脂として配合したものに限られず、他の植物原料、又は動物原料中に油脂が含有されている場合にはこれも含む。油脂は本発明のペットフード中1〜50%、更に3〜40%、特に5〜30%含有するのが好ましい。
【0020】
蛋白質源としては、動物性又は植物性の蛋白質が挙げられる。動物性蛋白質としては、カゼイン等の乳タンパク質、肉類蛋白質が挙げられる。また、動物としては、牛、豚、羊、うさぎ、カンガルー等が挙げられ、これらの畜肉及び獣肉、ならびにその副生成物及び加工品;鶏、七面鳥、うずらなどの鳥肉ならびにその副生物及び加工品;魚、白身魚などの魚肉ならびにその副生物及び加工品;ミートミール、ミートボーンミール、チキンミール、フィッシュミール等の上記原料のレンダリング等が挙げられる。複数の肉類タンパク質を混合して用いる場合には、鶏肉及び/又は魚肉を肉類中の30〜100%、特に50〜100%含有させるのが好ましい。植物性タンパク質としては、大豆タンパク質、小麦タンパク質、小麦グルテン、コーングルテン等が好ましい。
【0021】
本発明のうちペットフードは、ウェットタイプからドライタイプまで種々のものが範囲となるが、フード自体に物理的研磨効果を付与する場合には、水分が30%以下、更に25〜3%、特に20〜5%とすることが、ペリクル形成阻害作用が高く、歯垢形成抑制効果に優れる点から好ましい。
【0022】
本発明のペットフード又はペット用飲料は、予め歯に付着した歯垢を除去したペットに対して与えることが必要である。予め歯垢を除去しておくことにより、ペリクルの形成を効果的に阻害し、歯垢形成抑制効果を有効に発揮するからである。ペットの歯の歯垢を除去する方法としては、超音波スケーラーまたはハンドスケーラーを用いた除去、ポリッシャーを用いた除去、ブラッシングによる除去が挙げられる。なお、本発明におけるペットには、犬、猫、フェレット、ミニブタ、馬等が含まれる。
【0023】
本発明のペット用ペリクル形成阻害剤は、歯垢を除去した後のペットに与えればよい。ペットフード又はペット用飲料に含有させてもよいし、餌とは別に経口投与してもよい。
【実施例】
【0024】
試験例1
2頭のビーグル犬に対し、水道水にトラガカントガム0.01%を溶解したもの、又は水道水のみを3日間与え、試験前後の歯垢の状態を写真撮影することにより、この間に形成された歯垢についてその形成抑制効果の程度を、下記基準により評価した。なお、歯垢は歯垢染色液を用いて赤く染まった部分の面積を、試験前後の写真を並べて比較することにより増減を評価した。また、試験前に予めガーゼを用いて歯を拭き取ることにより歯に付着している歯垢を完全に除去した場合と、歯垢の除去を行わない場合について行った。また、食餌は1日に1回、市販のドライドッグフード(サイエンスダイエットメンテナンス、日本ヒルズ・コルゲート(株))を与えた。結果を表1に示す。
【0025】
〔歯垢形成抑制効果の評価基準〕
1:20%以上増加した
2:20%未満増加した
3:変化なし
4:20%未満減少した
5:20%以上減少した
【0026】
【表1】


【0027】
表1の結果から、歯垢を除去したビーグル犬に対して、トラガカントガムを含有させた水道水を与えた場合に、最も効果的に歯垢形成を抑制する効果が高いことが確認できた。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【出願日】 平成18年6月9日(2006.6.9)
【代理人】 【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所

【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸

【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄

【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫

【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹

【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人

【識別番号】100101317
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 ひろみ

【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高

【識別番号】100134935
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 詩木

【識別番号】100130683
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 政広

【識別番号】100140497
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 信宏


【公開番号】 特開2007−325572(P2007−325572A)
【公開日】 平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願番号】 特願2006−161580(P2006−161580)