| 【発明の名称】 |
容器詰コーヒー飲料及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】杉本 明夫
【氏名】衣笠 仁
【氏名】塚本 働
【氏名】越智 貴之
【氏名】松本 延夫
【氏名】社 三雄
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| 【要約】 |
【課題】クロロゲン酸類を適度に含有し、かつ呈味性に優れ、加温時の劣化が抑制された容器詰コーヒー飲料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C): |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の成分(A)、(B)及び(C): (A)ピークα成分 (B)ピークβ成分 (C)クロロゲン酸類 を含有し、高速液体クロマトグラフィー装置を用いた検出波長260nmのコーヒー抽出液の成分分析により得られるクロマトグラム上で、保持時間が2.0〜2.3分に出現する成分(A)と保持時間が2.7〜3.2分に出現する成分(B)とのピーク面積比が{(A)/(B)}×100=30〜100であり、成分(C)中の成分5−カフェオイルキナ酸の含有率が28.0〜35.0重量%であることを特徴とする容器詰コーヒー飲料。 【請求項2】 成分(C)の含有量がコーヒー固形量1.0重量%あたりの換算値で360ppm以上〜840ppm以下である請求項1記載の容器詰コーヒー飲料。 【請求項3】 コーヒー豆を抽出して得られるコーヒー抽出液において、次の成分(A)、(B)及び(C): (A)ピークα成分 (B)ピークβ成分 (C)クロロゲン酸類 を含有し、高速液体クロマトグラフィー装置を用いた検出波長260nmのコーヒー抽出液の成分分析により得られるクロマトグラム上で、保持時間が2.0〜2.3分に出現する成分(A)と保持時間が2.7〜3.2分に出現する成分(B)とのピーク面積比が{(A)/(B)}×100=30〜100であり、成分(C)中の成分5−カフェオイルキナ酸の含有率が28.0〜35.0重量%となるように調整することを特徴とする容器詰コーヒー飲料の製造方法。 【請求項4】 前記調整のために、L値16〜21.5の焙煎コーヒー豆と、L値22〜33の焙煎コーヒー豆とを100:0〜60:40の比率でブレンドしてコーヒー抽出液を得ることを特徴とする請求項3記載の容器詰コーヒー飲料の製造方法。 【請求項5】 得られたコーヒー抽出液にクロロゲン酸類を添加することを特徴とする請求項3又は4記載の容器詰コーヒー飲料の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、クロロゲン酸類を適度に含有し、かつ呈味性に優れ、加温時の劣化が抑制された容器詰コーヒー飲料に関する。 【背景技術】 【0002】 コーヒーは世界中で愛飲されている嗜好性飲料である。通常の焙煎豆からの抽出やインスタントコーヒーの他、手軽に摂取可能な容器詰コーヒー飲料が広く普及している。また、近年、コーヒーに含まれる有用成分が注目されている。コーヒー飲料中に含まれる有用成分の1つにクロロゲン酸類がある。クロロゲン酸類の効果としては、SOD様作用が知られ、老化や種々の病気に関与している活性酸素や過酸化脂質の生成を抑制する働きがあり、抗酸化能を持つことが報告されている(例えば特許文献1、2参照)。クロロゲン酸類を含む天然ポリフェノールの1日の摂取目安量は成人1人あたり1gとされており(例えば特許文献3参照)、より簡便に摂取する方法が望まれていた。この方法の一つとして、クロロゲン酸類を含有する食品原料を通電処理することにより抗酸化能を向上させる方法がある(例えば特許文献4参照)。 【0003】 また、クロロゲン酸類の中でも特に一般にネオクロロゲン酸と呼ばれる3−カフェオイルキナ酸(例えば特許文献5参照)が抗酸化能に優れていることが報告されており、これを簡便に摂取する方法として、デキストランゲルによりクロロゲン酸類を分離し配合率を変える方法(例えば特許文献6参照)、クロロゲン酸類を含む水溶液をアルカリ処理する方法がある(例えば特許文献7参照)。 【0004】 その他、3−カフェオイルキナ酸は5−カフェオイルキナ酸をアルカリ中で加熱することにより生成することが知られている(例えば非特許文献1)。 【0005】 また、クロロゲン酸類はコーヒー豆を焙煎した場合不安定な状態となり、コーヒー抽出液に殺菌処理を行うなどの熱履歴が重なると、酢酸、ギ酸、リンゴ酸、クエン酸等の低分子有機酸に分解し、その結果経時的に酸味が増し劣化を引き起こすことが知られている(例えば特許文献8)。 【0006】 一方、容器詰飲料を店頭や自動販売機で加温した場合、加温によりその品質が著しく劣化するという問題があり、これを解決するために、例えば香料を添加してマスキングする方法や、サイクロデキストリン及びアスコルビン酸又はアスコルビン酸塩を添加する方法が提案されている(例えば特許文献9参照)。 【0007】 しかしながら、上記いずれの方法を選択したとしても、コーヒー飲料抽出後に別の成分を添加、又は特殊な処理を行うことに起因して、コーヒー本来の風味が失われる、製造処理工程が増加することによりコストが増大するという欠点があった。また、クロロゲン酸類は多量に含有させると雑味の原因となるため(例えば特許文献10、11、12参照)、クロロゲン酸類を高濃度に含有させたまま呈味性を確保することは困難であった。 【0008】 【特許文献1】特開2001−136910号公報 【特許文献2】特開2002−080351号公報 【特許文献3】特開2005−312301号公報 【特許文献4】特開2003−102403号公報 【特許文献5】特開2004−033023号広報 【特許文献6】特開平09−143465号公報 【特許文献7】特開2000−063827号公報 【特許文献8】特開平07−050993号公報 【特許文献9】特開2004−073057号公報 【特許文献10】特開2005−333927号公報 【特許文献11】特開2003−204755号公報 【特許文献12】特開2003−204756号公報 【非特許文献1】「高速液体クロマトグラフィーによるコーヒー入り飲料中のクロロゲン酸類およびカフェインの定量」植木隆、本田浩、桜井史郎 農林規格検査所発行 第10号 昭和61年3月(http://www.cfqlcs.go.jp/technical_information/investigation_research_report/rs10.htm) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の目的は、クロロゲン酸類を適度に含有し、かつ呈味性に優れ、加温時の劣化が抑制された容器詰コーヒー飲料を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を想到するに至った。具体的には、本発明者らは、クロロゲン酸類中の5−カフェオイルキナ酸の含有率を特定の範囲内とすることにより容器詰コーヒー飲料の加温時における劣化を抑制でき、かつ成分α及びβのピーク面積比率を特定の範囲内とすることにより呈味性を改善できることを見出した。 【0011】 より具体的には本発明は、以下の通りである。 【0012】 1.次の成分(A)、(B)及び(C): (A)ピークα成分 (B)ピークβ成分 (C)クロロゲン酸類 を含有し、高速液体クロマトグラフィー装置を用いた検出波長260nmのコーヒー抽出液の成分分析により得られるクロマトグラム上で、保持時間が2.0〜2.3分に出現する成分(A)と保持時間が2.7〜3.2分に出現する成分(B)とのピーク面積比が{(A)/(B)}×100=30〜100であり、成分(C)中の成分5−カフェオイルキナ酸の含有率が28.0〜35.0重量%であることを特徴とする容器詰コーヒー飲料。 2.1において、成分(C)の含有量がコーヒー固形量1.0重量%あたりの換算値で360ppm以上〜840ppm以下である容器詰コーヒー飲料。 3.コーヒー豆を抽出して得られるコーヒー抽出液において、次の成分(A)、(B)及び(C): (A)ピークα成分 (B)ピークβ成分 (C)クロロゲン酸類 を含有し、高速液体クロマトグラフィー装置を用いた検出波長260nmのコーヒー抽出液の成分分析により得られるクロマトグラム上で、保持時間が2.0〜2.3分に出現する成分(A)と保持時間が2.7〜3.2分に出現する成分(B)とのピーク面積比が{(A)/(B)}×100=30〜100であり、成分(C)中の成分5−カフェオイルキナ酸の含有率が28.0〜35.0重量%となるように調整することを特徴とする容器詰コーヒー飲料の製造方法。 4.3における調整のために、L値16〜21.5の焙煎コーヒー豆と、L値22〜33の焙煎コーヒー豆とを100:0〜60:40の比率でブレンドすることを特徴とする容器詰コーヒー飲料の製造方法。 5.3又は4において、得られたコーヒー抽出液にクロロゲン酸類を添加することを特徴とする容器詰コーヒー飲料の製造方法。 【発明の効果】 【0013】 本発明によれば、上記組成とすることにより、コーヒー中の有用成分であるクロロゲン酸類を適度に含有しつつも、呈味性に優れ、かつ加温時の劣化が抑制された容器詰コーヒー飲料を提供することが可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 以下に、本発明の実施の態様について説明する。本明細書において使用する用語の意味は以下の通りである。 【0015】 「(A)ピークα成分」とは、コーヒー豆を焙煎するほど増加する未同定の成分であり、具体的には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたコーヒー抽出液の成分分析の際に得られる、検出波長260nm、保持時間2.0〜2.3分に出現するピークに対応する成分である。該成分は、HPLC装置により測定が可能である。HPLC装置としては、市販の装置、例えば日立製作所社製の「LaChrom」、島津製作所社製の「LC−10A」が使用できるが、特に限定されない。測定条件は、該成分が検出可能なように適宜設定する。カラムは、該成分を検出可能なものであれば特に限定されないが、「inertsil ODS−2 Ф3.0×250mm」(GLサイエンス社製)を用いるのが好ましい。 【0016】 「(B)ピークβ成分」とは、α成分とは逆に、コーヒー豆を焙煎するほど減少する未同定の成分であり、α成分と同様の条件で、HPLC装置により測定が可能である。具体的には、HPLC装置を用いたコーヒー抽出液の成分分析の際に得られる、検出波長260nm、保持時間2.7〜3.2分に出現するピークに対応する成分である。 【0017】 本明細書において、「(C)クロロゲン酸類」とは、3−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、3−フェラルキナ酸、5−フェラルキナ酸、4−フェラルキナ酸を合わせての総称である。また、それらの由来については特に限定されず、人工的に添加もしくは脱処理してもよい。 【0018】 「5−カフェオイルキナ酸」は、成分(C)クロロゲン酸類に含まれる成分の1つである。クロロゲン酸類中で最も熱に弱く、コーヒー豆を焙煎するに従い低分子有機酸に分解するか、または3−カフェオイルキナ酸へ異性化する性質を有する。したがって、5−カフェオイルキナ酸はコーヒー豆の焙煎時間により含有量が変動し、結果としてクロロゲン酸類の総量が減少することとなる。また、異性化により3−カフェオイルキナ酸の含有率が高まるとクロロゲン酸類の抗酸化能は高くなるが、3−カフェオイルキナ酸は含有量が多くなり過ぎても抗酸化能への寄与が小さくなる。5−カフェオイルキナ酸が分解されて生じる低分子有機酸は酸味が強く、経時的な呈味性劣化の原因となり得る。なお、劣化は活性酸素(ラジカル)生成に起因することが知られている。ラジカル生成量が高まる程劣化が進行しており、逆にラジカル生成量を抑えることができれば劣化を抑制することができる。 【0019】 本発明によれば、上記4成分を適切な範囲に調整することによって、クロロゲン酸類を適度に含有しつつも、呈味性に優れ、かつ加温時の劣化が抑制された容器詰コーヒー飲料を得ることができる。クロロゲン酸類量と呈味性の観点から、(A)成分αと(B)成分βのピーク面積比率{(A)/(B)}×100は30〜100に調整する。さらに優れた呈味性を維持するためには、40〜75、好ましくは50〜65となるように調整する。30未満ではクロロゲン酸類由来の雑味が顕著となるなどの呈味性低下が見られ、100以上ではクロロゲン酸類量が過小となるためである。 【0020】 (C)クロロゲン酸類は、品質面及び抗酸化能を得る観点から、コーヒー固形量1.0重量%あたりの換算値で360ppm〜840ppm、好ましくは440ppm〜710ppm、より好ましくは490ppm〜600ppm含有させるとよい。840ppmを越えると、大量のクロロゲン酸類が熱により低分子有機酸に分解するため経時的に酸味等を生じ易いので、注意すべきである。5−カフェオイルキナ酸の含有率は、クロロゲン酸類量と品質面及び抗酸化能の観点から、28.0%〜35.0%、より好ましくは28.8%〜31.5%、更に好ましくは29.5%〜31.0%に調整する。28.0%未満では、クロロゲン酸類量が過小となる上に3−カフェオイルキナ酸の含有率が高くなり過ぎて、抗酸化能への寄与が低下する。35.0%を越えると、3−カフェオイルキナ酸の含有率が少なくなり抗酸化能が低くなる上に、5−カフェオイルキナ酸の含有量が高いため、経時的に酸味が増加する。 【0021】 本発明の容器詰コーヒー飲料は、通常の方法により焙煎コーヒー豆を水又は熱水にて抽出することによって得ることもできるが、単一の抽出物のみでは本発明の組成を満たすことは困難であるので、複数の抽出物のブレンド及び/または各成分の添加により、成分(A)、(B)及び(C)が前記組成になるように調整して得ることが好ましい。例えば、L値16以上の深煎り焙煎コーヒー豆と、L値33以下の浅煎り焙煎コーヒー豆とを90:10の比率でブレンドして抽出すればよい。より詳細には、深煎り焙煎コーヒー豆のL値は16〜21.5、より好ましくは16.5〜20、更に好ましくは17〜19.5、特に好ましくは17.5〜18.0に調整する。浅煎り焙煎コーヒー豆のL値は22〜33、より好ましくは22.5〜27、更に好ましくは23〜26、特に好ましくは23.5〜25.5に調整する。ブレンド比率を100:0〜60:40、より好ましくは95:5〜70:30、更に好ましくは90:10〜80:20とすることにより、本発明の目的が達成される。 【0022】 用いるコーヒー豆の産地としては、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ等が挙げられるが、特に限定されない。また、豆の品種としては、アラビカ種、ロブスタ種等が挙げられる。コーヒー豆は、1種類で用いても、複数の種類をブレンドして用いてもよい。焙煎は一般的な方法を用いて行い、各成分の調整に必要な抽出物を得るために焙煎の程度は適宜調整する。具体的には、焙煎を深くすると苦みが強くなり、焙煎が浅いと酸味が強くなる。 【0023】 コーヒー飲料のL値は、28〜62、より好ましくは33〜57、さらに好ましくは38〜52であることが好ましい。ここで、L値とは明度の指標となる値である。コーヒー飲料のL値は、色彩色差計CT−310(ミノルタ社製)を用いて、1cmセルで常法に従って測定することができる。 【0024】 本発明で規定している各成分を単独で添加することによっても、本発明の容器詰コーヒー飲料を製造することができる。クロロゲン酸類を単独添加して調整する場合は、クロロゲン酸類を含有する植物の抽出物を添加するのが好ましい。ここで用いることが可能なクロロゲン酸類を含有する植物原料としては、コーヒー(豆)、サンザシ、ブドウ、センキュウ、トウキ、オウレン、ウコン、アギ、カンショ、モロヘイヤ、ヒマワリ(種子)、リンゴ(果実)、タバコ(葉)、ナシ(葉)、モモ等が挙げられる。コーヒー飲料の呈味性の観点から言えば、コーヒーを原料とする抽出物を用いるのが好ましい。コーヒーを原料とする抽出物は、生コーヒー豆から抽出することが好ましい。生コーヒー豆抽出物は、生コーヒー豆を必要に応じて粉砕し、エタノール、含水エタノール、メタノール等を用いて室温から100℃の温度で抽出することにより得ることができる。また、フレーバーホルダーRC−30R、FH−1242等(長谷川香料社製)等の市販品を使用することもできる。また、5−カフェオイルキナ酸を単独添加する場合は、ヒマワリ種子を原料として、粉砕後水または含水アルコールで抽出して得られるヒマワリ種子抽出物をスチレン−ジビニルベンゼン系多孔性重合樹脂に吸着後メタノールのような有機溶媒で溶出処理して得られるクロロゲン酸類含有抽出物を、更に、デキストランゲル充填カラムに通して水で溶出することにより得られる溶出物を利用することができる。 【0025】 また、本発明の容器詰コーヒー飲料には、所望により、ショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブドウ糖液、糖アルコール等の糖分、乳成分、抗酸化剤、pH調整剤、乳化剤、香料等を添加することができる。乳成分としては、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、れん乳等が挙げられる。本発明のコーヒー飲料のpHとしては、3〜7、さらに4〜7、特に5〜7が飲料の安定性の面で好ましい。 【0026】 抗酸化剤としては、アスコルビン酸又はその塩、エリソルビン酸又はその塩等が挙げられるが、このうちアスコルビン酸又はその塩等が特に好ましい。 【0027】 乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、微結晶セルロース、レシチン類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が好ましい。 【0028】 本発明に用いる容器としては、PETボトル、缶(アルミニウム、スチール)、紙、レトルトパウチ、瓶(ガラス)等が挙げられる。 【0029】 本発明におけるコーヒー抽出液の殺菌処理は、金属缶のように容器に充填後加熱殺菌できる場合にあっては、食品衛生法に定められた殺菌条件で行われる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、予め食品衛生法に定められた条件と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。 【実施例】 【0030】 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。 【0031】 [1.クロロゲン酸類、及び成分(α、β)の分析法] クロロゲン酸類、成分(α、β)の分析方法として、HPLCによるグラジェント溶出法を用いた。分析機器としては、HPLC本体にWaters 2695セパレーションモジュール(日本ウォーターズ社製)を用い、検出器としてWaters 2996 PDA(日本ウォーターズ社製)を用いた。分析条件は以下の通りである。 【0032】 【表1】
【0033】 【表2】
【0034】 [(1)−1 クロロゲン酸類の定量方法] 検量線作成方法: ・5−カフェオイルキナ酸(5−CQA)の標準品(和光純薬工業社製)を蒸留水で20ppm〜100ppm程度の範囲内で3段階の濃度になるように調製し標準液とした。各濃度の標準液をHPLCに注入し、得られたピーク面積値と濃度から3点検量線を作成した。 ・試料の調整及び定量方法: 各試料5mLを正確に量り、25mLのメスフラスコに入れ蒸留水で定容し、0.45μmのフィルターで濾過後、HPLCに注入し、前記3点検量線法により5−CQAを定量した。また、3−カフェオイルキナ酸(3−CQA)、4−カフェオイルキナ酸(4−CQA)、3−フェルラキナ酸(3−FQA)、5−フェルラキナ酸(5−FQA)、4−フェルラキナ酸(4−FQA)の定量については、標準品がないため定性のみ行い、各ピークの面積値を5−CQAの検量線を用いて推定値として算出し、6種類のクロロゲン酸類の合計値をクロロゲン酸類量とした。 【0035】 [(1)−2 成分(α、β)の分析方法] 成分(α、β)については、未同定であるが、(1)−1 クロロゲン酸類の分析時に得られる検出波長260nmでのクロマトグラムを用いて各成分のピーク面積値を解析し、{α成分の面積/β成分の面積}×100で求められる面積比(α/β値)を算出した。 【0036】 【表3】
【0037】 α成分については、前記HPLC条件により保持時間2.217minに検出され、最大吸収波長が 257.9nmであり、焙煎することにより増加する成分であることが今回明らかになった。β成分については、前記HPLC条件により保持時間2.915minに検出され、最大吸収波長が263.8nmであり、焙煎することにより減少する成分であることが今回明らかになった。表3に、各原料豆で試作したコーヒー飲料の検出波長260nmにおけるクロマトグラムを示す。表3上段は浅煎り豆で試作したコーヒー飲料のα成分及びβ成分、表3中段は中煎り豆で試作したコーヒー飲料のα成分及びβ成分、表3下段は深煎り豆で試作したコーヒー飲料のα成分及びβ成分である。 【0038】 [(1)−3 ヒドロキシラジカルの測定方法] ラジカル(活性酸素)は品質劣化の指標となる物質であり、生成量が高まる程劣化が進行していることを示す。ヒドロキシラジカルの測定方法は、各試料を60℃にて加熱し、各時間毎に生成されるヒドロキシラジカルをESR法にて測定した。 (T. Am. Soc. Brew. Chem. 54(4): 198-205, 205-211, 1996に準ずる。) 試薬はスピントラップ剤:PBN(N-tert-Butyl-α-phenylnitrone)(和光純薬工業社製)を使用し、スピントラップ剤である試薬を50%エタノールで2.55Mに調整し、0.16mLを各試料8mLに添加後、よく撹拌した。この溶液を恒温浴槽内で60℃にて加熱を行い、各時間毎に生成されるヒドロキシラジカルをESRにより測定し、ヒドロキシラジカルのピーク高さ(PBN−OH)をMn(内標)に対する相対比として算出した。ESRの測定条件は表4の通りである。各試料を加熱したときに生成されるヒドロキシラジカルは、縦軸にラジカル生成量(Mnに対する相対比)を、横軸に加熱時間(min)を取った場合に、ある傾きを持った近似直線式で表すことができ、その直線式の傾き(ラジカル生成速度)をラジカルの生成量として評価した。 【0039】 【表4】
[実施例1] 【0040】 (焙煎度合いの異なる原料豆で試作したコーヒー飲料の比較) 焙煎度合いの異なる原料豆単独で試作したコーヒー飲料のクロロゲン酸類含有量、成分αとβとの面積比、及び加熱時におけるラジカル生成量を調査した。 【0041】 コーヒー豆の焙煎には5kgの釜を有する半熱風ドラム式サンプルロースターを使用した。バーナーに点火後、中火に調整し、ドラム内温度が200℃になった地点でブラジル生豆3kgを投入した。バーナーの火力を中火に保持したまま目的の焙煎度合いに達するまで焙煎し、焙煎後に排出、冷却を実施した。本検討に用いた各焙煎豆の焙煎時間と排出時のドラム内温度は表5の通りであった。焙煎したコーヒー豆はコーヒーカッターにて粉砕し、日本電色工業社の分光式色差計SE2000により表面色を測定した。 【0042】 【表5】
【0043】 コーヒー飲料の抽出は、300gの粉砕した焙煎コーヒー豆をコーヒー抽出機に投入した。豆表面を平らにならした後に抽出機上部より95℃の熱水をシャワーリングし、豆全体に熱水が浸透したのを確認した後にシャワーリングを継続しながら抽出液を回収した。その後、品質を保持するために得られた抽出液を30℃程度まで冷却した。また冷却した抽出液についてネル布を用いて濾過を行い、コーヒーの不溶性固形分を除去した。最終的にはコーヒー豆に対して5倍量にあたる約1500gの抽出液を得た。抽出効率想定は25%、シャワーリング開始から抽出液回収終了までの時間は30分だった。 【0044】 コーヒー抽出液の調製は、コーヒー固形量が1.0重量%になるように蒸留水で調整し、同時に重炭酸ナトリウム0.05重量%を添加してブラックコーヒーを調整した。 【0045】 充填および殺菌方法は、調製したブラックコーヒーを90℃まで加熱した後、缶に充填し巻き締めをした。その後121℃、10分の条件にてレトルト殺菌を行った。 【0046】 【表6】
【0047】 表6の結果から、焙煎度合いの異なる原料豆で試作したコーヒー飲料では、浅煎り豆を原料としたサンプル1ではクロロゲン酸類含有量が高くなり、且つα成分が少なくβ成分が多いため、面積比α/β値は低い値となった。また、サンプル1では加熱時におけるラジカル生成量も多いことが明らかになった。一方、深煎り豆を原料としたサンプル3ではクロロゲン酸類含有量が低くなり、且つα成分が増加しβ成分が減少するため、面積比α/β値は高い値となった。また、サンプル3では加熱時におけるラジカル生成量も少ないことが明らかになった。 [実施例2] 【0048】 (焙煎度合いの異なる原料豆をブレンドしたコーヒー飲料の比較) 焙煎度合いの異なる原料豆をブレンドして試作したコーヒー飲料のクロロゲン酸類含有量、成分α及びβの面積比、及び加熱時におけるラジカル生成量を調査した。 【0049】 生豆の焙煎方法、及びコーヒー飲料の製造方法は、実施例1と同様の方法で行った。焙煎度合いの異なる原料豆を下記のようにブレンドして、実施例1の製造方法によりコーヒー固形量が1.0重量%になるようにコーヒー飲料を製造し、クロロゲン酸類量、成分(α、β)、及びラジカル生成量を調査した。結果を表7に示す。 【0050】 【表7】
【0051】 表7の結果から、焙煎度合いの異なる原料豆をブレンドしたコーヒー飲料でも、浅煎り豆のブレンド比が高いサンプル1及び2ではクロロゲン酸含有量が高くなり、且つα成分とβ成分の面積比が低い値となった。また、サンプル1及び2では加熱時におけるラジカル生成量も多いことが明らかになった。一方、深煎り豆のブレンド比が高いサンプル4及び5ではクロロゲン酸類含有量が低くなり、且つα成分とβ成分の面積比も高い値となった。また、サンプル4及び5では加熱時におけるラジカル生成量も少なくなることが明らかになった。これらの結果から、浅煎り豆を多くブレンドした原料豆で試作したコーヒー飲料では、クロロゲン酸類含有量が高く、且つα成分とβ成分との面積比が低くなり、加熱時におけるラジカル生成量も多くなることが明らかになった。 [実施例3] 【0052】 (クロロゲン酸類含有量、α成分/β成分の面積比、及び加熱時のラジカル生成量と加温保管後の官能評価の関係) 焙煎度合いの異なる原料豆をブレンドして試作したコーヒー飲料のクロロゲン酸類含有量、α成分とβ成分との面積比、及び加熱時のラジカル生成量が加温保管後(70℃2週間)の品質劣化に及ぼす影響を調査した。 【0053】 生豆の焙煎方法、及びコーヒー飲料の製造方法は、実施例1と同様の方法で行った。70℃2週間保管後の各試料に関して、官能評価、及び酸味の強度を5段階で評価した。尚、官能評価はコーヒーの香味に関して識別能力に優れた5人のパネラーにより実施した。 【0054】 実施例2と同様、焙煎度合いの異なる原料豆を表8のようにブレンドして、実施例1の製造方法によりコーヒー固形量が1.0重量%になるようにコーヒー飲料を製造し、クロロゲン酸類量、成分(α、β)、及びラジカル生成量を調査した。 【0055】 【表8】
【0056】 【表9】
【0057】 表8及び表9の結果から、これまでと同様、焙煎度合いの異なる原料豆をブレンドしたコーヒー飲料では、浅煎り豆のブレンド比が高くなると、クロロゲン酸類含有量が高く、且つα成分とβ成分の面積比が低い値となった。また、加熱時におけるラジカル生成量も浅煎り豆のブレンド比が高くなると多くなった。一方、深煎り豆のブレンド比が高くなると、クロロゲン酸類含有量が低くなり、且つα成分とβ成分の面積比も高い値となった。また、加熱時におけるラジカル生成量も深煎り豆のブレンド比が高くなると少なくなった。 【0058】 70℃2週間保存後の官能評価の結果、浅煎り豆のブレンド比が高いサンプル1及び2では、発酵様の劣化臭が強く感じられるようになり、サンプル1では雑味も多く感じられるようになった。一方、焙煎度合いが強い深煎り豆を用いたサンプル9及び10では雑味、焦げ臭、酸味等が強く感じられ、サンプル8でも酸味が強く感じられた。以上の結果から、浅煎り豆のブレンド比が高くなると、クロロゲン酸類含有量が多く劣化の原因の1つとされるラジカル生成量も多くなり、加温保管による劣化が起こり発酵臭等が強く感じられるものと思われた。また、深煎り豆では焙煎度合いが強くなるとクロロゲン酸類量も低く、ラジカル生成量も少なくなったが、加温保管後における雑味、焦げ味、酸味等が強くなる傾向になった。以上の結果から、サンプル3からサンプル8までが官能評価が良好でかつ総合評価も良かった。 【0059】 [実施例4] (中煎り豆で試作したコーヒー飲料と浅煎り豆と深煎り豆をブレンドしたコーヒー飲料の比較) クロロゲン酸類含有量を同程度にした中煎り豆のコーヒー飲料と浅煎り豆と深煎り豆をブレンドしたコーヒー飲料の加熱時におけるラジカル生成量、及び加温保管後(70℃2週間)の品質劣化状況を調査した。 【0060】 生豆の焙煎方法、及びコーヒー飲料の製造方法は、実施例1と同様の方法で行った。官能評価方法は、実施例3と同様の方法で行った。 【0061】 実施例2と同様、焙煎度合いの異なる原料豆を表10のようにブレンドして、実施例1の製造方法によりコーヒー固形量が1.0重量%になるようにコーヒー飲料を製造し、クロロゲン酸類量、成分(α、β)及びラジカル生成量を調査した。 【0062】 【表10】
【0063】 【表11】
【0064】 表10及び表11の結果より、中煎り豆単独で試作したサンプル1及び3では穀物感があり雑味、酸味等が強く感じられたが、深煎り豆と浅煎り豆をブレンドすることで、サンプル2では深煎り豆由来のビター感が感じられ風味良好であった。従って、同程度のクロロゲン酸類濃度であっても深煎り豆と浅煎り豆をブレンドした方が、風味良好であり加温保管後でも安定していた。しかし、浅煎り豆のブレンド比が高く、クロロゲン酸類量が多いサンプル4では、発酵臭が感じられるようになった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】591014972 【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
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| 【出願日】 |
平成17年12月30日(2005.12.30) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2007−181406(P2007−181406A) |
| 【公開日】 |
平成19年7月19日(2007.7.19) |
| 【出願番号】 |
特願2005−380686(P2005−380686) |
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