| 【発明の名称】 |
芳香性物質保持体の製造方法、芳香性物質保持体及び芳香製品 |
| 【発明者】 |
【氏名】掛樋 浩司
【氏名】三浦 正嗣
【氏名】加藤 嘉洋
【氏名】澤田 英夫
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| 【要約】 |
【課題】取り扱い性に優れ、芳香性物質の徐放性を確保し、かつ製品の意匠性を阻害しないようにできる芳香性物質保持体を提供する。
【解決手段】本発明の芳香性物質保持体の製造方法は、まず、核(C)と、低重合体(A)と、ヒノキ類から抽出された芳香性物質(D)とを用意する。低重合体(A)は、両末端にフルオロアルキル基を有しているとともに、核(C)の表面に結合可能な官能基を有するオリゴマー及び/又はコオリゴマーである。そして、核(C)、低重合体(A)及び芳香性物質(D)を混合する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 核と、両末端にフルオロアルキル基を有しているとともに、該核の表面に結合可能な官能基を有するオリゴマー及び/又はコオリゴマーである低重合体と、ヒノキ類から抽出された芳香性物質とを用意し、該核、該低重合体及び該芳香性物質を混合することを特徴とする芳香性物質保持体の製造方法。 【請求項2】 前記低重合体は、下記式1に示すオリゴマー(RFはフルオロアルキル基、R1は有機基、xは自然数である。)又は下記式2に示すコオリゴマー(RFはフルオロアルキル基、R2及びR3は有機基、x及びyは自然数である。)である請求項1記載の芳香性物質保持体の製造方法。 (式1)
(式2)
【請求項3】 前記低重合体は、下記式3に示すオリゴマー又はコオリゴマー(nは自然数である。)である請求項2記載の芳香性物質保持体の製造方法。 (式3)
【請求項4】 前記核と前記低重合体とを結合可能なアルコキシドをさらに混合する請求項1乃至3のいずれか1項記載の芳香性物質保持体の製造方法。 【請求項5】 アルカリ性条件下で混合する請求項1乃至4のいずれか1項記載の芳香性物質保持体の製造方法。 【請求項6】 前記芳香性物質はヒノキチオールであり、アルコール中で混合する請求項1乃至5のいずれか1項記載の芳香性物質保持体の製造方法。 【請求項7】 核と、両末端のフルオロアルキル基が自己との間又は他との間の分子間凝集力によって凝集しているとともに、該核の表面に官能基が結合しているオリゴマー及び/又はコオリゴマーである低重合体と、ヒノキ類から抽出され、該核と該低重合体との間に保持された芳香性物質とからなることを特徴とする芳香性物質保持体。 【請求項8】 前記低重合体は、下記式1に示すオリゴマー(RFはフルオロアルキル基、R1は有機基、xは自然数である。)又は下記式2に示すコオリゴマー(RFはフルオロアルキル基、R2及びR3は有機基、x及びyは自然数である。)である請求項7記載の芳香性物質保持体。 (式1)
(式2)
【請求項9】 前記低重合体は、下記式3に示すオリゴマー又はコオリゴマー(nは自然数である。)である請求項8記載の芳香性物質保持体。 (式3)
【請求項10】 前記核はSiO2からなり、該核と前記低重合体とは、官能基を介して結合している請求項8又は9記載の芳香性物質保持体。 【請求項11】 前記核と前記官能基との間にはシロキサン骨格が存在している請求項10記載の芳香性物質保持体。 【請求項12】 前記芳香性物質はヒノキチオールである請求項10又は11記載の芳香性物質保持体。 【請求項13】 請求項7乃至12のいずれか1項記載の芳香性物質保持体を含むことを特徴とする芳香製品。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、芳香性物質保持体の製造方法と、芳香性物質保持体と、芳香製品とに関する。 【背景技術】 【0002】 化学合成品のグルコン酸クロルヘキシジン(登録商標「ヒビテン」)と異なり、天然の抗菌剤であるヒノキオイルは幅広い分野に応用されており、例えば、養毛剤、歯磨剤、化粧品等に使用されている。ヒノキオイルはヒノキ類から抽出されるもので、その主成分はヒノキチオールである。しかし、ヒノキチオールは昇華性がある芳香性物質であるため、これを有機高分子材料等の添加剤等に応用しようとすると、そのままでは抗菌特性等の寿命に問題を生じる。このため、ヒノキチオールの抗菌特性等の持続性を高めるため、ヒノキチオールを保持した保持体が望まれる。ヒノキ類から抽出された芳香性物質についても、同様にこれを保持した保持体が望まれる。 【0003】 従来、化1で表わされる化合物を含む担体が知られている(特許文献1)。ここで、Rf1及びRf2はフルオロアルキル基、R1は水素原子又はメチル基、R2は1価の有機基、AはCH2CR1COR2以外の単位、pは正の整数、qは0又は正の整数である。 【0004】 【化1】
【0005】 この担体がヒノキチオール等の芳香性物質を内包しておれば、その芳香性物質が徐々に昇華していくため、抗菌特性等、芳香性物質による特性を長期間に亘って発揮可能と考えられる。 【0006】 一方、塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶の管状凝集粒子からなる担体も公知である(特許文献2)。この担体に芳香性物質を保持させた芳香性物質保持体も芳香性物質による特性を長期間に亘って発揮可能であると考えられる。 【0007】 【特許文献1】特開2003−261403号公報 【特許文献2】特開2004−161600号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、特許文献1の担体は、両末端にフルオロアルキル基を有するオリゴマー及び/又はコオリゴマーである低重合体からなるだけである。 【0009】 すなわち、特許文献1の低重合体が例えば化2のものである場合、この低重合体を図17に示すように略記して説明する。ここで、RFはフルオロアルキル基である。また、O=CNHC(CH3)2CH2COCH3(N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド)をDOBAAとして標記する。 【0010】 【化2】
【0011】 この低重合体は、図18に示すように、両末端のフルオロアルキル基が自己との間又は他との間の分子間凝集力により互いに引き合い、内部に空間を形成した担体となる。このため、図19に示すように、この担体に芳香性物質を保持させ、芳香性物質保持体とした場合、芳香性物質としての例えば抗菌性物質(Antibac)は低重合体内に内包される。この際、抗菌性物質はDOBAAと水素結合又はエステル結合の相互作用を生じているに過ぎない。このため、この芳香性物質保持体は、そのままでは秤量、混合できない等、取り扱い性が十分でない。また、この芳香性物質保持体を有機高分子材料等の添加剤等に応用しようとしても、図20に示すように、芳香性物質保持体が抗菌性物質を剥き出しにしているため、抗菌性物質の徐放性を現実には確保し難い。 【0012】 一方、特許文献2の担体は塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶の管状凝集粒子であるため、この担体に芳香性物質を保持させた芳香性物質保持体は常に凝集粒子の大きさのものとなり、有機高分子材料等の添加剤等に応用しようとすると、製品の意匠性を阻害するおそれがある。 【0013】 本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、取り扱い性に優れ、芳香性物質の徐放性を確保し、かつ製品の意匠性を阻害しないようにできる芳香性物質保持体を提供することを解決すべき課題としている。 【課題を解決するための手段】 【0014】 発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行なった。そして、特定の低重合体は、両末端のフルオロアルキル基が分子間凝集力を有し、かつ官能基が特定の核の表面に結合可能な特性を有することを発見し、本発明を完成させるに至った。 【0015】 本発明の芳香性物質保持体の製造方法は、核と、両末端にフルオロアルキル基を有しているとともに、該核の表面に結合可能な官能基を有するオリゴマー及び/又はコオリゴマーである低重合体と、ヒノキ類から抽出された芳香性物質とを用意し、該核、該低重合体及び該芳香性物質を混合することを特徴とする。 【0016】 本発明の製造方法では、核、特定の低重合体及び芳香性物質を混合する。図1に示すように、特定の低重合体1は、両末端にフルオロアルキル基1aを有しているとともに、官能基2a、2b、2c…を有するオリゴマー及び/又はコオリゴマーである。例えば、官能基2b、2cは、核2の表面に直接的又は間接的に結合可能である。 【0017】 例えば、図2に示すように、官能基2dは核2の表面に直接的に結合可能である。図3に示すように、低重合体1が他の官能基2eを有する場合も同様である。図4に示すように、低重合体1が複数の官能基2f、2g、2hを有し、これらの官能基2f、2g、2hのうち、ある官能基2h、2fが核2の表面に直接的に結合する場合もある。 【0018】 また、図1に示すように、官能基2b、2cと核2とは、低重合体1と核2とに相互作用する物質4a、4bによって間接的に結合され得る。例えば、図5に示すように、低重合体1が複数の官能基2a、2b、2cを有し、これらの官能基2a、2b、2cのうち、ある官能基2cが物質4aを介して核2の表面に間接的に結合可能である。図6に示すように、他の官能基2bが物質4bを介して核2の表面に間接的に同時に結合可能である場合もある。 【0019】 こうして、図7に示すように、低重合体1が物質4cを介し、又は介さずに、核2と相互作用し、核2の表面に低重合体1が修飾される。核2の表面に修飾された低重合体1の両末端に位置するフルオロアルキル基1aと、その周囲に存在する自己のフルオロアルキル基1a又は他のフルオロアルキル基1aとの間には分子間凝集力が働くため、複数の低重合体1と核2とによって空間が形成される。この空間は、周囲にフルオロアルキル基1aの殻を有する閉空間に近いものであると考えられる。各低重合体1と核2との間に物質4cが介在する場合もある。 【0020】 芳香性物質3aは、この空間内に取り込まれて抜け出し難くなっているものと考察される。また、芳香性物質3aは、低重合体1や核2若しくは物質4cの官能基から相互作用を受け、より強固に保持される。つまり、核2と低重合体1とからなる担体は、フルオロアルキル基1aと核2との間に場合によっては物質4cが存在する空間を確保したカプセルとなっており、その担体のその空間に芳香性物質3aが内包される。こうして、芳香性物質3aを徐放性とする芳香性物質保持体が得られる。 【0021】 本発明の芳香性物質保持体は、核と、両末端のフルオロアルキル基が自己との間又は他との間の分子間凝集力によって凝集しているとともに、該核の表面に官能基が結合しているオリゴマー及び/又はコオリゴマーである低重合体と、ヒノキ類から抽出され、該核と該低重合体との間に保持された芳香性物質とからなることを特徴とする。 【0022】 この芳香性物質支持体は、低重合体が結合した核を有するため、そのまま秤量、混合等でき、高い取り扱い性を発揮する。 【0023】 また、核が微細なものであれば、芳香性物質支持体も核と同程度の微細なものとなり、有機高分子材料等の添加剤等に応用するとしても、製品の意匠性を阻害しない。 【0024】 したがって、本発明の製造方法によれば、取り扱い性に優れ、芳香性物質の徐放性を確保し、かつ製品の意匠性を阻害しないようにできる芳香性物質保持体をを製造することができる。 【0025】 また、本発明の芳香性物質保持体は、高い取り扱い性を発揮し、芳香性物質の徐放性を確保し、かつ製品の意匠性を阻害しないようにすることが可能である。そして、この芳香性物質保持体は、芳香性物質を徐々に放出するため、芳香性物質が例えばヒノキチオールである場合、ヒノキ臭を長時間保持し、かつ抗菌性を長期間保持することのできる製品を製造することが可能になる。 【0026】 本発明において、低重合体は、両末端にフルオロアルキル基を有しているとともに、核の表面に結合可能な官能基を有するオリゴマー及び/又はコオリゴマーである。 【0027】 低重合体は、化3に示すオリゴマー(RFはフルオロアルキル基、R1は有機基、xは自然数である。)又は化4に示すコオリゴマー(RFはフルオロアルキル基、R2及びR3は有機基、x及びyは自然数である。)であり得る。 【0028】 【化3】
【0029】 【化4】
【0030】 R1及びR2は水素結合し得る側鎖をもつものであることが好ましい。R3は、アルコキシドと相互作用し得る官能基又は核と相互作用し得る官能基を有するものであることが好ましい。このため、本発明の製造方法では、核と低重合体とを結合可能なアルコキシドをさらに混合することが好ましい。 【0031】 この低重合体は、化5に示すように、パーフルオロオキサイドと、ビニル基(−CH=CH2)を有する1種以上の物質から合成され得る。Ra、Rb、Rc等に該当する官能基を持つ物質は、1種類に限らず、複数種類であってもかまわない。また、Ra、Rb、Rc等の要件を同時に満たす1種類の物質でもよい。 【0032】 【化5】
【0033】 両末端のフルオロアルキル鎖はC及びFを含むアルキル鎖である。フルオロアルキル鎖は、特に、CF(CF3)OCF2CF(CF3)OC3F7、CF(CF3)OC3F7、C3F7、CF(CF3){OCF2CF(CF3)}2OC3F7が好ましい。このため、低重合体は、化6に示すオリゴマー又はコオリゴマー(nは自然数である。)でもあり得る。 【0034】 【化6】
【0035】 R1は水素結合を介して芳香性物質を保持する。また、アルコキシドや核によっては、R1はアルコキシドや核と水素結合し、担体を形成する。 【0036】 R1は、具体的には、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、リン酸基(−PO3H2)、シラノール基(SiOH)、ヒドロキシル基(−OH)、アミノ基(−NH2)、ニトロ基(−NO2)、カルボニル基(C=O)、アミド(C(=O)NH)等の官能基又はこれらの誘導体を含む分子鎖であり得る。 【0037】 R2は、アルコキシドが置換反応によって有するヒドロキシル基と相互作用(水素結合、配位結合、共有結合、イオン結合、エステル結合、ウレタン結合、脱水重縮合等)する有機基である。 【0038】 R2は、具体的には、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、シラノール基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、アミド等、これらの誘導体、アルコキシ基(M(OCnH2n+1)m(3-m);MはSi、Ti、Al等、nは1〜3の自然数、mは1〜3の自然数)、イソシアネート基(−N=C=0)等の官能基を含む分子鎖であり得る。 【0039】 また、R2は、アルコキシドを介さず、直接核と相互作用(水素結合、配位結合、共有結合、イオン結合、エステル結合、ウレタン結合、脱水重縮合、ビニル重合等)できる有機基でもよい。特に、R2は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、シラノール基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、アミド等、これらの誘導体、アルコキシ基、イソシアネート基、ビニル基等の官能基を含む分子鎖であり得る。 【0040】 核は芳香性物質保持体の定着部となる物質である。核は、低重合体のR1若しくはR2と直接相互作用、又はアルコキシドと相互作用(水素結合、配位結合、共有結合、イオン結合、エステル結合、ウレタン結合、脱水重縮合、ビニル重合等)する物質である。 【0041】 核は、具体的には、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、シラノール基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、アミド、アルコキシ基、イソシアネート基、ビニル基等の官能基又はこれらの誘導体を含む分子鎖を有する物質であり得る。 【0042】 特に、核は、1種類以上の金属元素を含む酸化物、窒化物、炭酸化物、水酸化物等が好ましい。 【0043】 核は、具体的には、SiO2、CaCO3、Ti2O、ZrO2、CaO、ZrSiO4、Fe3O4、Fe2O3、FeO等の粒子、鉱物、粘土鉱物若しくはこれらをアルコキシドやシランカップリング剤等で処理したもの又は表面に上記有機基を有する樹脂ビーズ、繊維若しくはこれらを表面処理した物質も含まれ得る。 【0044】 ヒノキ類から抽出された芳香性物質としては、徐放性のヒノキオイルを採用することができる。ヒノキ類は、生物分類学上でヒノキ科に属する植物であり、一例として、タイワンヒノキ、ヒバ、アスナロ、サイプレス、杜松、西洋杜松、柏槇等が挙げられる。 【0045】 ヒノキ類由来の芳香性物質としては、具体的には、α−ツヤプリシン(α‐thujaplicin)、β−ツヤプリシン(ヒノキチオール:β‐thujaplicin))、γ−ツヤプリシン(γ‐thujaplicin)、β−ドラブリン、4−アセチルトロポロン、ヒノキチオールアセテート、α−ピネン(α-pinene)、β−ピネン(β-pinene)、テルピノレン(terpinolene)、セドロール(cedrol)、サビネン(sabinene)、テルピネン−4−オール(terpinen-4-ol)、α−セドレン(α-cedrene)、β−セドレン(β-cedrene)、δ−3−カレン(delta-3-carene)、ツヨプセン(thujopsene)等を採用することができる。 【0046】 ヒノキ類由来の芳香性物質を含むものは、ヒノキ類由来の芳香性物質単体だけでなく、その混合物を用いることもできる。例えば、ヒノキ類から抽出される精油でもよく、一例として、サイプレスオイル、ヒノキオイル、ヒバオイル、ジュニパーオイル等を用いても良い。 【0047】 この芳香性物質は、低重合体のR1、R2、アルコキシドの官能基の一部又は核の官能基の一部と相互作用する官能基を有する物が適している。この芳香性物質は、特に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、カルボニル基、アミド基、アルデヒド基又はこれらの誘導体を有する物質が好ましい。 【0048】 混合はアルカリ性条件下で行うことが好ましい。発明者らは、アルカリ性条件下で混合することにより、本発明の芳香性物質保持体の製造に成功した。 【0049】 また、発明者らの試験結果によれば、芳香性物質がヒノキチオールである場合、アルコール中で混合することが好ましい。 【0050】 なお、ヒノキチオール等の芳香性物質の他、カテキン、クアシン、カプサイシン、リモネン、グリチルリチン、グラブリジン、フィロズルリチン、ステビオサイド、モクロシドV、ケイヒアルデヒド、シンナムタンニン、スウェルチアマリン 、ゲンチオピクロシド、マトリン、ベルべリン、ピペリン、α−サンショオール、スピラントール、6−シンゲロール、タデオナール、ゴマリグナン、カテキン、イソフラボン、サポニン、アントシアニン、クルクミン、タンニン、シブオール、ケルセチン、ルチン、ヘスペリジン、シアニン、クリサンテミン、エニン、ナスニン、シソニン、シアニン、ペリラミン、ペラルゴニン、フラガリン、ケラシアニン、ヒアシン、イソフラボン、クロロゲン酸、ギ酸、酢酸などの低級脂肪酸、ポリフェノール類、イソフラボン類などの抗菌性物質、抗酸化性物質を担体に保持させることも可能である。 【0051】 核が微細なものであれば、芳香性物質保持体は、図8のようなナノ構造を有すると考えられる。この芳香性物質保持体は、核2と、低重合体1と、核2と低重合体1との間に保持された芳香性物質3とからなるナノコンポジットである。 【0052】 核2がSiO2からなる場合、核2と低重合体1とは、官能基を介して結合している。アルコキシドは、低重合体1及び核2と結合する物質として、シロキサン骨格4になる。アルコキシドとして、TEOS(テトラエトキシシラン)を混合した場合には、核2と官能基との間にはシロキサン骨格4が存在している。この場合、芳香性物質3を内包する空間が広がるとともに、芳香性物質3がシロキサン骨格4の一部や低重合体1の官能基と相互作用(水素結合等)し、芳香性物質3の徐放性がより一層高まる。 【0053】 本発明の芳香製品は本発明の芳香性物質保持体を含むことを特徴とする。この芳香製品は、芳香性物質保持体の高い取り扱い性により製造コストの低廉化を実現可能であり、芳香性物質の徐放性を発揮できる。また、微細な核を用いた芳香性物質保持体を採用した製品は、優れた意匠を呈することが可能である。特に、ヒノキチオールがカプセル化された芳香性物質保持体は有機高分子のマトリックスの表面に効率良く配向することから、得られる製品は表面にフルオロアルキル基に起因した高い撥油性(防汚性)を示す。 【0054】 芳香製品が例えば樹脂製の浴槽に本発明の芳香性物質保持体を担持させたものであれば、長時間ヒノキ臭を楽しむことができ、あたかもヒノキ材を用いた高級感のある浴槽の体感を得ることが可能になる。しかも、この浴槽は長期間に亘って抗菌性も発揮することが可能である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0055】 低重合体として、図9(A)に示すフルオロアルキル基含有オリゴマーを用意した。RFはCF(CF3)OCF2CF(CF3)OC3F7であり、RはNHC(CH3)2CH2COCH3であり、nは自然数である。 【0056】 また、アルコキシドとして、図9(B)に示すTEOS(テトラエトキシシラン)を用意した。 【0057】 さらに、微細な核として、図9(C)に示すSiO2からなるシリカナノ粒子(粒径11nm)を用意した。 【0058】 また、ヒノキ類から抽出された芳香性物質として、図9(D)に示すヒノキチオールと、市販のヒノキオイルとを用意した。図9の各成分を図10のように図示したものが上記図8の構造図である。 【0059】 (試験1) そして、酸性条件下における調製について検討するため、塩酸及びメタノールとともに、フルオロアルキル基含有オリゴマー、TEOS、シリカナノ粒子及びヒノキチオール又はヒノキオイルを表1に示す配合で混合し、室温で1日保持した。 【0060】 【表1】
【0061】 結果物の収量(mg)及び収率(%)並びに結果物中の芳香性物質の割合(%)を調べた。芳香性物質の割合はUV−visスペクトルによって決定した。これらの結果も表1に示す。 【0062】 結果物は最高収率25%で得られることがわかった。しかしながら、これらの結果物では、ヒノキチオール又はヒノキオイルは内包されていない。表1の試験1−1、1−2に示された結果物の熱重量分析(TGA)測定を行なった。結果を図11に示す。図11において、Aは試験1−1の結果物を示し、Bは試験1−2の結果物を示す。また、Cはヒノキチオールを示し、Dはフルオロアルキル基含有オリゴマーを示す。 【0063】 図11に示すように、ヒノキチオールを添加して得た試験1−2の結果物は、ヒノキチオールを添加しないで得た試験1−1の結果物と全く同一のTGAカーブを示すことから、表1に示された合成方法では、ヒノキチオールを内包した芳香性物質保持体を得られないことがわかった。 【0064】 (試験2) 上記試験1の結果から、酸性条件下ではなく、アルカリ性条件下における調製について検討するため、25%アンモニア水溶液及びメタノールとともに、フルオロアルキル基含有オリゴマー、TEOS、シリカナノ粒子及びヒノキチオール又はヒノキオイルを表2に示す配合で混合し、室温で4時間又は1日保持した。結果も表2に示す。なお、芳香性物質の割合はUV−visスペクトル又はTGAによって決定した。 【0065】 【表2】
【0066】 表2に示すように、触媒としてアンモニア水を用いることにより、目的とする芳香性物質保持体が収率30〜51%で得られることがわかった。この芳香性物質保持体はナノコンポジットである。ヒノキチオールを含む芳香性物質保持体は収量43〜109mgで得られた。また、ヒノキチオールはメタノール中に再分散後においても、仕込み量の21〜63%で存在することも分かった。ヒノキチオールに起因したλmax320nmの吸収は、調製を行なうと、Absが0.99から0.49へと低下することから、ヒノキチオールは芳香性物質保持体中に効率良くカプセル化されていることがわかった。ヒノキチオールに対して高い溶解性を示すメタノール中へ芳香性物質保持体を再分散させても、ヒノキチオールが21〜63%の割合で担体中へカプセル化されていることから、この結果は特に興味深い。ここで、担体は、核と低重合体とからなる。 【0067】 動的光散乱法(DLS)により、ヒノキチオールがカプセル化された芳香性物質保持体のメタノール溶液中での粒子サイズの測定を行なった。この結果は表2に示すとともに、図12〜14に示す。図12は試験2−1の結果を示し、図13は試験2−3の結果を示し、図14は試験2−6の結果を示す。 【0068】 図12〜14に示すように、ヒノキチオールを担体中へカプセル化させることにより、その芳香性物質保持体は粒子サイズが73nmから117nm若しくは563nmに増加しており、ヒノキチオールが担体中へ確実にカプセル化されていることが理解される。特に、得られた芳香性物質保持体の粒子サイズは、反応時間を4時間から1日と長くすることにより、117nmから563nmへと増加しており、カプセル化が反応時間の増加とともにより大きく進行することが示唆される。 【0069】 担体及び試験2−1、2−7の芳香性物質保持体のTGA測定の結果を図15に示す。Aは担体を示し、Bは試験2−1の芳香性物質保持体を示し、Cは試験2−7の芳香性物質保持体を示す。 【0070】 図15に示すように、ヒノキチオール又はヒノキオイルがカプセル化された芳香性物質保持体B、Cの耐熱性は、対応するヒノキチオール又はヒノキオイルを含まない担体Aに比べ、低下する結果が得られた。これは、芳香性物質保持体B、C中に確実にヒノキチオール又はヒノキオイルがカプセル化されていることを示唆している。UV−visスペクトルにより求められた値と大きく異なっている点は、ヒノキチオール又はヒノキオイルの高い昇華性によるものと推定される。 【0071】 (試験3) 試験2で製造した試験2−2〜2−6の芳香性物質保持体の抗菌活性について、検討を行なった。結果を表3に示す。抗菌試験はシェーク法に基づく。 【0072】 【表3】
【0073】 表3に示すように、試験2−2〜2−6の芳香性物質保持体は、黄色ブドウ球菌の菌体数を106個レベルから102個レベル以下へと低減できる高い抗菌活性を示すことがわかった。また、ヒノキチオールの含有量が増すにつれて抗菌性が向上していることもわかる。 【0074】 (試験4) 芳香性物質保持体をPMMAのマトリックスに添加し、PMMAの表面改質等について検討を行なった。 【0075】 まず、試験2−2、2−3の芳香性物質保持体とPMMAとを均一に分散させた1,2−ジクロロエタン溶液を調製し、この溶液より膜厚200μm程度のキャストフィルムを製造した。次いで、得られたキャストフィルムについて、空気に触れる面である表面と空気に触れない面である裏面とのドデカンの接触角(deg)の測定を行なった。結果を表4に示す。 【0076】 【表4】
【0077】 表4に示すように、芳香性物質保持体により改質されキャストフィルムは、ドデカンの接触角が表面で33°又は27°であるのに対し、裏面で3°又は0°であり、キャストフィルムの改質が強く発揮されている。これは、図16に示すように、キャストフィルムにおいて、ヒノキチオールがカプセル化された芳香性物質保持体10がPMMAのマトリックス11の表面に効率良く配向し、キャストフィルムの表面にフルオロアルキル基に起因した高い撥油性(防汚性)を示すからである。 【0078】 このため、こうして改質したキャストフィルムにおいては、フルオロアルキル基に起因した高い防汚性以外に、ヒノキチオールに起因した高い抗菌活性も付与されることが大いに期待できる。 【0079】 このキャストフィルムが発するヒノキ臭の持続期間を官能評価した。実施品は試験2−4の芳香性物質保持体を用いたものであり、比較品はPMMAにヒノキチオールのみを添加したものである。結果を表5に示す。○はヒノキ臭がすることを示し、×はヒノキ臭がしないことを示す。 【0080】 【表5】
【0081】 表5に示すように、ヒノキチオールのみを添加したキャストフィルムは数日でヒノキ臭が判別できなくなったが、本発明に係る芳香性物質保持体を添加したキャストフィルムは数ケ月間に亘ってヒノキ臭を保持できる。 【0082】 以上のことから、この芳香性物質支持体は、低重合体が結合した核を有するため、そのまま秤量、混合等でき、高い取り扱い性を発揮することが明らかである。 【0083】 また、核が微細なものであれば、芳香性物質支持体も核と同程度の微細なものとなっていることから、有機高分子材料等の添加剤等に応用するとしても、製品の意匠性を阻害しない。 【0084】 したがって、本発明の製造方法によれば、取り扱い性に優れ、芳香性物質の徐放性を確保し、かつ製品の意匠性を阻害しないようにできる芳香性物質保持体をを製造することができる。 【0085】 また、本発明に係る芳香性物質保持体を用いた有機高分子材料は、フルオロアルキル基に起因した高い防汚性、さらには抗菌活性をその表面に付与させることができる以外に、天然のヒノキ臭のただよう木材感覚の新しいフッ素系機能性材料として大いに興味深い。 【0086】 以上において、本発明を上記試験に即して説明したが、本発明は上記試験品に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。 【産業上の利用可能性】 【0087】 本発明は、浴槽、カウンタ等の樹脂製品、建材等に利用可能である。 【図面の簡単な説明】 【0088】 【図1】低重合体と核との結合状態を示す模式図である。 【図2】低重合体と核との他の結合状態を示す模式図である。 【図3】低重合体と核との他の結合状態を示す模式図である。 【図4】低重合体と核との他の結合状態を示す模式図である。 【図5】低重合体と核との他の結合状態を示す模式図である。 【図6】低重合体と核との他の結合状態を示す模式図である。 【図7】低重合体と核との他の結合状態を示す模式図である。 【図8】本発明に係る芳香性物質保持体の模式図である。 【図9】本発明に係る製造方法を示す構造式である。 【図10】本発明に係る製造方法を示す模式の構造式である。 【図11】試験1に係り、TGA測定の結果を示すグラフである。 【図12】試験2に係り、試験2−1の芳香性物質保持体の粒子サイズを示すグラフである。 【図13】試験2に係り、試験2−3の芳香性物質保持体の粒子サイズを示すグラフである。 【図14】試験2に係り、試験2−6の芳香性物質保持体の粒子サイズを示すグラフである。 【図15】試験2に係り、TGA測定の結果を示すグラフである。 【図16】本発明に係る芳香製品の模式断面図である。 【図17】公知の低重合体を示す模式の構造式である。 【図18】公知の担体を示す模式の構造式である。 【図19】公知の芳香性物質保持体を示す模式の構造式である。 【図20】公知の芳香製品の模式断面図である。 【符号の説明】 【0089】 2…核 1…低重合体 1a…フルオロアルキル基 2a〜2h…官能基 3、3a…芳香性物質 4…シロキサン骨格、物質
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000479 【氏名又は名称】株式会社INAX 【識別番号】504229284 【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
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| 【出願日】 |
平成18年6月6日(2006.6.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100109069 【弁理士】 【氏名又は名称】中村 敬
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| 【公開番号】 |
特開2007−326785(P2007−326785A) |
| 【公開日】 |
平成19年12月20日(2007.12.20) |
| 【出願番号】 |
特願2006−156838(P2006−156838) |
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