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【発明の名称】 おから由来の抑草剤および該抑草剤を用いた水稲栽培方法
【発明者】 【氏名】柴田 一義

【氏名】野田 勲

【氏名】森田 清和

【要約】 【課題】人体や環境に悪影響を与えず、かつ、優れた抑草効果を有する抑草剤を提供すること。

【解決手段】本発明の抑草剤は、生おからを好気性発酵させてなる。好ましくは、本発明の抑草剤は、水分含有量が5%以下であり、かつ、アミノ酸含有量が20%以上である。アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、トリプトファンおよびシスチンを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生おからを好気性発酵させてなる、抑草剤。
【請求項2】
前記好気性発酵に用いられる酵素が、エンドペプチターゼ、グルカナーゼ、アミラーゼ、ヒドロラーゼ、キシラナーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、およびプロテアーゼから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の抑草剤。
【請求項3】
水分含有量が5%以下であり、かつ、アミノ酸含有量が20%以上である、請求項1または2に記載の抑草剤。
【請求項4】
前記アミノ酸が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、トリプトファンおよびシスチンを含む、請求項1から3のいずれかに記載の抑草剤。
【請求項5】
前記好気性発酵が60℃〜70℃で行われる、請求項1から4のいずれかに記載の抑草剤。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の抑草剤を、田植え時に施肥する、水稲栽培方法。
【請求項7】
前記抑草剤を田圃10アール当たり30kg〜100kg施肥する、請求項6に記載の水稲栽培方法。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、おから由来の抑草剤、該抑草剤の製造方法、および該抑草剤を用いた水稲栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、水稲栽培をはじめとする農業分野においては、雑草を除去するために、合成化学物質(例えば、ピラゾール、スルホニルウレア)由来の除草剤および/または抑草剤が用いられることが多い。このような除草剤および/または抑草剤は、基本的には雑草を枯死させることにより除草および/または抑草する。したがって、当該薬剤が農作物に付着すると、人体への悪影響が懸念され得る。さらに、これらの薬剤を定常的に使用すると、土壌の汚染、裸地化による土壌流亡、景観の悪化等の問題が生じ得る。
【0003】
したがって、人体や環境に悪影響を与えない除草剤や抑草剤が強く求められている。
【特許文献1】特開2005−336175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、人体や環境に悪影響を与えず、かつ、優れた抑草効果を有する抑草剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の抑草剤は、生おからを好気性発酵させてなる。
【0006】
好ましい実施形態においては、上記好気性発酵に用いられる酵素は、エンドペプチターゼ、グルカナーゼ、アミラーゼ、ヒドロラーゼ、キシラナーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、およびプロテアーゼから選択される少なくとも1つである。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記抑草剤の水分含有量は5%以下であり、かつ、アミノ酸含有量は20%以上である。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、トリプトファンおよびシスチンを含む。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記好気性発酵は60℃〜70℃で行われる。
【0010】
本発明の別の局面によれば、水稲栽培方法が提供される。この方法は、上記の抑草剤を田植え時に施肥することを含む。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記方法は、上記抑草剤を田圃10アール当たり30kg〜100kg施肥することを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生おからを発酵させて用いることにより、人体や環境に悪影響を与えず、かつ、優れた抑草効果を有する抑草剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の抑草剤は、生おからを好気性発酵させてなる。本明細書において「好気性発酵」とは、空気(酸素)の存在下で活動する微生物の働きで有機物(ここでは、生おから)を分解させることをいう。生おからは、豆乳の絞りかすであれば特に限定されない。生おからの具体例としては、豆腐用おから、油揚げ生地用おから、高野豆腐用おから、飲用豆乳用おから、ゆば等が挙げられる。
【0014】
上記好気性発酵に用いられる酵素としては、本発明の効果が得られる限り任意の適切な酵素が採用され得る。酵素の具体例としては、エンドペプチターゼ、グルカナーゼ、アミラーゼ、ヒドロラーゼ、キシラナーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、およびプロテアーゼが挙げられる。これらの酵素は、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。特に好ましい酵素は、エンドペプチターゼである。非常に優れた触媒作用を有するので、好気性細菌(微生物)を別途添加しなくても、自然に存在する微生物によって発酵を進行させることができるからである。
【0015】
本発明の抑草剤は、水分含有量が好ましくは5%以下、さらに好ましくは4%以下である。水分含有量の実用的な下限は約3%である。さらに、本発明の抑草剤は、アミノ酸含有量が好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。アミノ酸含有量の実用的な上限は約40%である。生おからは、水分含有量が約77%で、かつ、アミノ酸含有量が約6.5%であるので、本発明の抑草剤は発酵により生おからとは全く異なる組成物になっている。とりわけ特徴的なこととして、成分中に遊離アミノ酸を含まない(検出限界2mg/100g以下である)ことが挙げられる。
【0016】
好ましくは、上記アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、トリプトファンおよびシスチンを含む。例えば、本発明の抑草剤は、アルギニンを1.2〜1.8%、リジンを1.1〜1.7%、ヒスチジンを0.4〜1.0%、フェニルアラニンを1.1〜1.7%、チロシンを0.5〜1.0%、ロイシンを1.8〜2.2%、イソロイシンを1.0〜1.4%、メチオニンを0.2〜0.4%、バリンを1.1〜1.6%、アラニンを1.1〜1.6%、グリシンを1.1〜1.6%、プロリンを1.2〜1.7%、グルタミン酸を4.5〜5.2%、セリンを1.1〜1.7%、スレオニンを0.9〜1.3%、アスパラギン酸を2.7〜3.2%、トリプトファンを0.1〜0.5%、およびシスチンを0.2〜0.6%含む。このような範囲でアミノ酸を含有することにより、収穫物(代表的には、米)の旨味が格段に改善され得る。さらに、本発明の抑草剤を飼料として使用することも可能となる。なお、本発明の抑草剤が上記以外のアミノ酸を含み得ることは言うまでもない。
【0017】
本発明の抑草剤は、窒素含有量が好ましくは3.0〜6.0%であり、リン酸含有量が好ましくは0.8〜1.2%であり、カリウム含有量が好ましくは1.5〜2.1%である。このような範囲で窒素、リン酸(リン)およびカリウムを含有することにより、本発明の抑草剤は、優れた抑草効果のみならず、肥料としても優れた効果を発揮し得る。実際、本発明の抑草剤は、普通肥料(豆腐かす乾燥肥料)として肥料登録可能である。
【0018】
以下、本発明の抑草剤の製造方法の好ましい一例について説明する。
【0019】
まず、温度制御された槽内に生おからと酵素とを投入する。槽内の温度は、好ましくは60℃〜70℃に制御される。酵素は、生おから100kgに対して、好ましくは50〜200cc、さらに好ましくは80〜120ccの割合で投入される。必要に応じて、生おからおよび酵素と共に、任意の適切な好気性細菌(微生物)(例えば、アゾトバクター)を槽内に投入してもよい。ただし、上記のように、酵素としてエンドペプチターゼを用いる場合には、好気性細菌(微生物)を別途投入しなくても発酵は良好に進行し得る。
【0020】
次に、槽内温度を60℃〜70℃に維持しながら、生おからと酵素の混合物を攪拌する。攪拌速度は、好ましくは1分間に2回〜6回、さらに好ましくは1分間に3回〜4回である。このような低速で攪拌することにより、混合物と空気が適切に接触するので、好気性発酵が良好に進行し得る。攪拌は、攪拌ペラを用いて行ってもよく、ドラム型の槽自体を回転させて行ってもよい。好ましくは、攪拌は、ドラム型の槽を回転させることにより行われる。混合物と空気が非常に好ましい状態で接触するので、好気性発酵が良好に進行し得るからである。
【0021】
温度および攪拌状態を維持し、発酵を進行させる。発酵時間は、好ましくは16〜24時間である。発酵時間が16時間未満である場合には、発酵が十分に行われず、所望の効果を有する抑草剤が得られない可能性がある。発酵時間が24時間を超えても、発酵がそれ以上進むことはないので、製造効率上意味がない。さらに、無意味な長時間処理は、エネルギーの無駄使いとなる。好ましくは、発酵は、空気循環状態の下で行われる。具体的には、発酵処理中に発生する蒸気やガスを排気し、かつ、(例えば60℃〜70℃に)温度制御された空気を送り込みながら発酵処理を継続する。
【0022】
以上のようにして、本発明の抑草剤が得られる。
【0023】
本発明の抑草剤は、水稲栽培に特に好適に利用され得る。具体的には、本発明の抑草剤を田植えと同時に施肥する。雑草は、田植え後2日〜5日で発芽し発根するので、田植えと同時に施肥することにより、非常に効果的に雑草を抑草することができる。さらに、田植えと同時に施肥することにより、抑草効果のみならず、肥料としての効果も得られる。
【0024】
本発明の抑草剤は、田圃10アール当たり好ましくは30kg〜100kg、さらに好ましくは40kg〜60kgの割合で施肥される。このような割合で施肥することにより、水田のpHが非常に適切に(例えば、約4〜約5に)調整され、かつ、水田の酸化還元電位が非常に適切に(例えば、−200mV以下に)低下し、しかもその状態が継続する。酸化還元電位が低くなることにより、雑草の発芽が抑制される。pHが適切に調整されることにより、抑草効果が高まるのみならず、抑草剤中の三大栄養素(窒素、リン、カリウム)が効率よく稲に吸収され得るので、抑草剤が肥料としても良好に機能し得る。
【0025】
以下、本発明の作用について説明する。
本発明によれば、生おからを好気性発酵させることにより、人体や環境に悪影響を与えず、かつ、優れた抑草効果を有する抑草剤が得られる。本発明の抑草剤は、自然食品である生おから由来であるので、合成化学薬品を含有しない。したがって、本発明の抑草剤は、従来の除草剤や抑草剤のように雑草を枯死させて抑草するのではなく、土壌(水田)の状態を改善して雑草を抑草する。より具体的には、本発明の抑草剤は、水田のpHを適切に調整し、かつ、水田の酸化還元電位を適切に低下させ、しかもその状態を長期にわたって継続させることができる。その結果、田植え後の初期段階における雑草の発芽が顕著に抑制され得る。さらに、本発明の抑草剤を用いると、一定期間経過後に土壌の肥沃化が進むので、ミジンコやイトミミズなどが増殖し、かつ、浮き草が大量に生成し水面を覆う。これらの小型生物や浮き草の効果により、田植え後一定期間経過後も雑草の発芽伸長が抑制され得る。以上のように、本発明の抑草剤を用いると、土壌を汚染することなく、雑草を良好に抑草することができる。したがって、本発明の抑草剤は、草刈作業や管理労力を低減することができ、かつ、裸地化による土壌流亡を防ぎ、景観保持に貢献し得る。
【0026】
さらに、本発明の抑草剤は、抑草効果のみならず、肥料としても優れた効果を有する。すなわち、本発明の抑草剤には自然食品である生おから由来の栄養分が濃縮されて含有され、かつ、施肥後には、当該栄養分が水稲に非常に吸収されやすい環境が実現される。その結果、水稲の生育が非常に良好となり、かつ、収穫される稲(米)の旨味が格段に改善され得る。しかも、本発明の抑草剤は、生おから由来であるので、施肥された水田にも、収穫された米を食べる人間にも悪影響を与えない。むしろ、本発明の抑草剤は、家畜の飼料としても利用可能である。
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。
【実施例1】
【0028】
ドラム型の攪拌槽と加熱手段とを備える加熱攪拌装置(株式会社名庄プレス製、商品名:バイオブレンド)を用いた。この攪拌層を65℃に制御し、そこに生おから100kgとエンドペプチターゼ(株式会社名庄プレス製、商品名:MIT酵素)100ccとを投入した。温度を65℃に維持しながら、当該攪拌層を1分間に3回のスピードで回転させた。この操作を20時間維持し、好気性発酵を進行させた。なお、発酵処理は、空気を送り込みながら、かつ、発酵により発生するガスや蒸気を排気しながら継続した。このようにして、抑草剤を得た。得られた抑草剤の主成分の組成を、生おからの組成と共に表1に示す。
【0029】
【表1】


【実施例2】
【0030】
実施例1で得られた抑草剤を田圃10アールに対して50kgの割合で施肥し、抑草効果を確認したところ、抑草剤を施肥しない田圃に比べて、雑草が顕著に少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の抑草剤は、農業分野、特に水稲栽培に好適に利用され得る。
【出願人】 【識別番号】506020160
【氏名又は名称】柴田 一義
【識別番号】506019762
【氏名又は名称】野田 勲
【識別番号】506020182
【氏名又は名称】森田 清和
【出願日】 平成18年1月18日(2006.1.18)
【代理人】 【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文


【公開番号】 特開2007−191403(P2007−191403A)
【公開日】 平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願番号】 特願2006−9423(P2006−9423)