| 【発明の名称】 |
植物ウイルス病害の防除剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】岡 紀邦
【氏名】大木 健広
【氏名】本田 要八郎
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、植物ウイルス病害の防除剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、セルラーゼを含有することを特徴とする植物ウイルス病害の防除剤、並びに本防除剤を植物に施用することを特徴とする植物ウイルス病害の防除方法を提供する。上記セルラーゼはTrichoderma属又はAcremonium属に属する糸状菌に由来するセルラーゼであることが好ましい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 セルラーゼを含有することを特徴とする植物ウイルス病害の防除剤。 【請求項2】 セルラーゼがTrichoderma属又はAcremonium属に属する糸状菌に由来するセルラーゼである請求項1記載の防除剤。 【請求項3】 植物に、請求項1又は2記載の植物ウイルス病害の防除剤を施用することを特徴とする植物ウイルス病害の防除方法。 【請求項4】 植物ウイルス病害がトウガラシマイルドモットルウイルスの感染による植物病害である請求項3記載の方法。 【請求項5】 施用部位が植物の地上部である請求項3又は4記載の方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、植物ウイルス病害の防除剤に関する。 【背景技術】 【0002】 農業において、植物ウイルス病害の有効な防除方法が求められている。これまで、農業現場で植物病原性のウイルスの不活性化のために臭化メチル剤が用いられていた。しかしながら臭化メチル剤はモントリオール議定国会議においてオゾン層破壊物質と位置づけられ、不可欠用途と認定されたもの以外への適用が2005年以降禁止され、代替技術の模索が行われている。 【0003】 臭化メチル剤以外の植物ウイルス病害防除剤としてはスキムミルクなど種々のものが知られているが、実用化され現在も登録されているのは、シイタケ菌糸体抽出物(農薬登録番号15584及び17774)のみである。特許文献1には、茶サポニンを主成分とする抗植物ウイルス剤が記載されているが、農薬としては登録されていない。 【0004】 一方、セルラーゼはセルロースを分解する酵素である。セルラーゼは植物組織の崩壊や溶解などを目的に食品加工で利用されるほか、天然繊維の表面処理、衣料用洗剤などにも利用される。しかしながら、酵素反応以外の目的での利用例はない。 【特許文献1】特開平7−25718号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、植物ウイルス病害の防除剤を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明は以下の発明を包含する。 (1)セルラーゼを含有することを特徴とする植物ウイルス病害の防除剤。 (2)セルラーゼがTrichoderma属又はAcremonium属に属する糸状菌に由来するセルラーゼである(1)記載の防除剤。 (3)植物に、(1)又は(2)記載の植物ウイルス病害の防除剤を施用することを特徴とする植物ウイルス病害の防除方法。 (4)植物ウイルス病害がトウガラシマイルドモットルウイルスの感染による植物病害である(3)記載の方法。 (5)施用部位が植物の地上部である(3)又は(4)記載の方法。 【発明の効果】 【0007】 本発明により植物ウイルス病害が防除される。 【発明を実施するための最良の形態】 【0008】 本発明において「セルラーゼ」とは、セルロースのβ1→4グルコシド結合を加水分解する酵素の総称である。セルロースのβ1→4グルコシド結合を加水分解する酵素としては、詳細には、セルラーゼ(EC3.2.1.4)(これは、エンド−1、4−β−グルカナーゼとも呼ばれる)、セルロース 1、4−β−セロビオシダーゼ(EC.3.2.1.91)、グルカン 1、4−β−グルコシダーゼ(EC.3.2.1.74)、β−グルコシダーゼ(EC.3.2.1.21)が挙げられる。本発明には、高等植物、細菌、糸状菌など種々の生物に由来するセルラーゼを用いることができるが、糸状菌に由来するセルラーゼを用いることが好ましい。なかでも、Trichoderma属又はAcremonium属に属する糸状菌に由来するセルラーゼが特に好ましい。Trichoderma属に属する糸状菌に由来するセルラーゼとしては、Trichoderma reesei、Trichoderma viride、Trichoderma longibrachiatum、Trichoderma harzianum,Trichoderma insolens,Trichoderma koningiiに由来するセルラーゼが好ましい。Acremonium属に属する糸状菌に由来するセルラーゼとしては、Acremonium cellulolyticusに由来するセルラーゼが好ましい。本発明ではセルラーゼとして、上記の天然由来セルラーゼだけでなく、植物ウイルス病害の防除活性が実質的に等価な天然由来セルラーゼの誘導体を使用することもできる。例えば、上記の天然由来セルラーゼのアミノ酸配列において1〜数個(例えば1〜5個)のアミノ酸が置換、欠失、もしくは付加したアミノ酸配列からなり、且つ植物ウイルス病害の防除活性を有するタンパク質を本発明に好適に使用することができる。本発明の植物ウイルス病害防除剤には複数種のセルラーゼが組み合わされて含有されてもよい。本発明に使用できるセルラーゼの具体的な商品名を挙げれば、Sigma C−8546(Trichoderma reesei由来セルラーゼ,Sigma−Aldrich社製)、Sigma C−9422(Trichoderma viride由来セルラーゼ,Sigma−Aldrich社製)、スノーラクトLアクレモスプレー(Acremonium属糸状菌由来セルラーゼとTrichoderma属糸状菌由来セルラーゼとの混合物,雪印種苗株式会社製)、セルラーゼ(トリコデルマ属由来)(製品コード番号036−18751)(Trichoderma viride由来セルラーゼ,和光純薬工業株式会社製)、セルソフト(Trichoderma reesei由来セルラーゼ、ノボザイムズ・ジャパン株式会社製)等が挙げられるがこれらには限定されない。市販のセルラーゼ製剤にはセルラーゼ以外の他の成分が含まれる場合があるが、本発明の植物ウイルス病害防除剤にはこうした他の成分が含まれていてもよい。 【0009】 本発明の植物ウイルス病害防除剤中にセルラーゼは、植物ウイルス病害防除効果を奏することができる有効量含有される。 【0010】 セルラーゼを含有する本発明の植物ウイルス病害防除剤は、種々の形態に製剤化されたものであってよい。例えば、セルラーゼを農業用途に許容される担体、賦形剤、補助剤等と組み合せて、種々の形態(例えば粉剤、顆粒剤、水和剤、乳剤、液剤、フロアブル剤、塗布剤等の形態)に製剤化することができる。製剤が固体である場合は、植物への施用前に水等の溶媒に溶解又は懸濁させて植物に施用することもできる。 【0011】 本発明の植物ウイルス病害防除剤は、セルラーゼに加えて、抗ウイルス活性が知られている他の成分を更に有効成分として含んでいてもよい。 【0012】 本発明により防除され得る植物ウイルス病害としては、例えば、トウガラシマイルドモットルウイルス、トマトモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、アブラナモザイクウイルス、タバコマイルドグリーンモザイクウイルス、パプリカマイルドモットルウイルス、キュウリ緑斑モザイクウイルス、スイカ緑斑モザイクウイルス、キュウリ斑紋ウイルス、オドントグロッサムリングスポットウイルス、などのTobamovirus属ウイルス(トバモウイルス)の植物への感染により引き起こされる病害が挙げられる。 【0013】 本発明の植物ウイルス病害防除剤又は植物ウイルス病害防除方法は、例えば、ナス科植物(ピーマン、トウガラシ、トマト、タバコなど)、ウリ科植物(キュウリ、スイカ、メロンなど)、アブラナ科植物(ワサビなど)、リンドウ科植物(トルコギキョウ)、ユリ科植物(ニンニクなど)、ラン科植物(シンビジウム、エビネなど)におけるトバモウイルス病害に対し有効である。 【0014】 本発明の植物ウイルス病害防除剤の植物への施用方法は、防除しようとする植物ウイルス病害の種類、植物ウイルス病害の発生状況、施用対象である植物の種類、製剤形態などの諸条件に応じて適宜選択することができる。例えば、植物の地上部への施用、根周辺の土壌への施用、種子表面への施用等が可能である。なかでも、植物の地上部への施用が好ましい。 【0015】 本発明の植物ウイルス病害防除剤は、未だ病原性ウイルスには感染していないが、今後感染する可能性がある植物に施用して、ウイルスの感染を防ぐことにより、ウイルス病害による被害を抑制するために用いることができる。すなわち本発明の植物ウイルス病害防除剤は植物ウイルス病害の感染を予防する作用を有する。 【実施例1】 【0016】 本実施例では、トウガラシマイルドモットルウイルス(本明細書及び図面において「PMMoV」と略記する)の検定植物として用いたNicotiana glutinosa葉への感染に対する、Trichoderma reesei由来セルラーゼ(Sigma C−8546,Sigma−Aldrich社製)、Trichoderma viride由来セルラーゼ(Sigma C−9422,Sigma−Aldrich社製)、Acremonium属糸状菌由来セルラーゼとTrichoderma属糸状菌由来セルラーゼとの混合物(スノーラクトLアクレモスプレー,雪印種苗株式会社製)、及び、Aspergillus niger由来セルラーゼ(ICN 150583、MP Biomedicals社(旧ICN Biomedicals社)製)による抑制効果を確認した。また、ポジティブコントロールとして、同感染に対する、シイタケ菌糸抽出物(レンテミン、野田食菌工業株式会社)、及びスキムミルク(Bacto Skim Milk、Difco Laboratories社)の抑制効果を確認した。 【0017】 試験方法は、以下の通りである。検定植物として用いたNicotiana glutinosaは、ガラス温室で栽培し、接種3日前に展開葉2〜4枚を残して他の葉を切り落とし、接種前日から暗処理を施した。接種は、切り取ってきた検定植物の葉にカーボランダム(400mesh)を振りかけ、左半葉に既知濃度(100ng/mL)のPMMoV・50μLを、右半葉に同じ濃度(100ng/mL)のPMMoV液に種々の濃度で各剤を加えて撹拌したもの50μLを、葉の全体になすりつけて行った。湿らせたペーパータオルを敷いたバットに接種した葉を並べ、ビニール袋に入れて人工気象室内(22℃・約3000lx)に置いた。3〜4日後に両半葉の病斑を計数した。なお、各試験とも8葉以上の葉を使って試験を行った。 【0018】 図1にはTrichoderma reesei由来セルラーゼの施用濃度と病斑数との関係を、図2にはTrichoderma viride由来セルラーゼの施用濃度と病斑数との関係を、図3にはAcremonium属糸状菌由来セルラーゼとTrichoderma属糸状菌由来セルラーゼとの混合物の施用濃度と病斑数との関係を、図4にはAspergillus niger由来セルラーゼの施用濃度と病斑数との関係を、図5にはシイタケ菌糸抽出物の施用濃度と病斑数との関係を、図6にはスキムミルクの施用濃度と病斑数との関係を、それぞれ示す。図中縦軸の「病斑数の相対値」とはPMMoVのみを接種した左半葉の病斑数を100とした時の右半葉(各剤を加えて接種した方)の病斑数である。図中横軸は試験品の濃度(mg/mL)の対数値(常用対数)である。図1〜6に示される通り、Trichoderma reesei由来セルラーゼ、Trichoderma viride由来セルラーゼ、及びAcremonium属糸状菌由来セルラーゼとTrichoderma属糸状菌由来セルラーゼとの混合物は、公知の植物ウイルス病害防除剤であるシイタケ菌糸抽出物及びスキムミルクと同程度あるいはそれ以上に強力にウイルス感染を抑制することが可能であった。Aspergillus niger由来セルラーゼには、植物ウイルス感染抑制効果がほとんど認められなかった。 【実施例2】 【0019】 本実施例では、実施例1で用いたのと同じセルラーゼ(ただし、Aspergillus niger由来セルラーゼとしてSigma C−1184(Sigma−Aldrich社製)を使用)及びポジティブコントロールをピーマン葉に施用した後に、PMMoVを接種した場合の病害防除効果を確認した。 【0020】 播種後5〜6週間のピーマン苗(ニュー土佐ひかり)を各試験区ごとに24株用意した。このピーマン苗の葉に、表1に示す各剤を表1所定の濃度で含有し、且つ0.02%の展着剤ダイン(住化タケダ園芸株式会社製)を含有する水溶液100mLを24株に噴霧処理した。噴霧処理後3時間後の時点で、PMMoVを含む液(10μg/mL)を指で葉にこすりつけた(3葉/株)。PMMoVの接種から3週間後に、病徴調査を行った。また、ピーマン葉を採取してELISA検定を行った。 【0021】 同様の実験は、異なる条件下で計4回行った。試験1は、2005年1月24日から2005年3月23日までの間、ガラス温室内で平均気温24.4℃の条件下で行った。試験2は、2005年5月9日から2005年7月19日までの間、網室内でPMMoV接種後の平均気温26.7℃の条件下で行った。試験3は、2005年6月21日から2005年8月11日までの間、網室内でPMMoV接種後1週間の平均気温29.7℃の条件下で行った。試験4は、2005年7月22日から2005年9月9日までの間、網室内で8月29日から9月9日の間の平均気温28.5℃の条件下で行った。 【0022】 結果を表1に示す。表1の感染株数は、ELISA検定の結果、PMMoVが検出された株数を示す。表1中、---は、試験を行っていないことを示す。 【0023】 【表1】
【0024】 表1に示される通り、Trichoderma reesei由来セルラーゼ、Trichoderma viride由来セルラーゼ、及びAcremonium属糸状菌由来セルラーゼとTrichoderma属糸状菌由来セルラーゼとの混合物は、公知の植物ウイルス病害防除剤であるシイタケ菌糸抽出物及びスキムミルクと同程度あるいはそれ以上に強力にウイルス病害を防除することができた。 【図面の簡単な説明】 【0025】 【図1】Trichoderma reesei由来セルラーゼの施用濃度と病斑数との関係を示す。 【図2】Trichoderma viride由来セルラーゼの施用濃度と病斑数との関係を示す。 【図3】Acremonium属糸状菌由来セルラーゼとTrichoderma属糸状菌由来セルラーゼとの混合物の施用濃度と病斑数との関係を示す。 【図4】Aspergillus niger由来セルラーゼの施用濃度と病斑数との関係を示す。 【図5】シイタケ菌糸抽出物の施用濃度と病斑数との関係を示す。 【図6】スキムミルクの施用濃度と病斑数との関係を示す。
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| 【出願人】 |
【識別番号】501203344 【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
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| 【出願日】 |
平成18年1月17日(2006.1.17) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091096 【弁理士】 【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183 【弁理士】 【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773 【弁理士】 【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100101904 【弁理士】 【氏名又は名称】島村 直己
【識別番号】100130443 【弁理士】 【氏名又は名称】遠藤 真治
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| 【公開番号】 |
特開2007−191401(P2007−191401A) |
| 【公開日】 |
平成19年8月2日(2007.8.2) |
| 【出願番号】 |
特願2006−8783(P2006−8783) |
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