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【発明の名称】 魚釣用スピニングリール
【発明者】 【氏名】堤 わたる

【要約】 【課題】ピニオンギアと噛合するフェースギアの歯強度低下を防止しつつ効果的に両ギアの噛合状態を向上でき、以って円滑な巻き取り回転性能を得ることができる耐久性の高い魚釣用スピニングリールの提供を目的としている。

【解決手段】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールでは、ドライブギア3の逆転側歯面3bの外周側端部に、ピニオンギア13の逆転側歯面13bとの直接的な摺接を避けるための逃がし部22が形成されている。そのため、噛み合い誤差や高負荷巻取り時の変形発生に対しても、ピニオンギア13に対するドライブギア3の、特に、逆転側歯面側の径方向外側角部から径方向内側に向けての噛合状態が、逃がし部22で許容されてスムーズに移行される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸案内部を有するロータを回転駆動するためにハンドル軸に連結された駆動機構がリール本体に設けられて成る魚釣用リールにおいて、
前記駆動機構は、前記ハンドル軸に設けられ且つ前記ロータと一体的に回転するピニオンギアと噛合するフェースギアを有し、
前記フェースギアの各歯は、釣糸巻取り操作時における前記フェースギアの回転方向に面する第1の歯面と、前記第1の歯面と反対側に位置する第2の歯面とを有し、前記第2の歯面の外周側端部には、前記ピニオンギアの歯面との直接的な摺接を避けるための逃がし部が形成されていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記ハンドル軸は、前記ピニオンギアを装着するロータ軸に対してオフセットされ且つ直交する状態で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルの回転に連動して釣糸案内部を有するロータを回転させるための駆動機構を備えた魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣用スピニングリールの巻き取り駆動機構にあっては、リールボディと蓋体とによって構成されるリール本体に回転自在に支持されたハンドル軸上に、歯すじが湾曲して捩れた曲がり歯を外周端面に有するフェースギアが設けられるとともに、前記ハンドル軸に対してオフセットされ且つ直交した状態で配置されたロータ軸(回転軸)上のピニオンギアに対して前記フェースギアが噛合されており、これにより、ハンドルの回転によってロータが回転駆動するロータ駆動機構が構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上記構成において、前記フェースギアの歯形状は、歯形を備えた金型用電極を金型に対して放電加工して作成した成型用金型による成形法や、ホブ切りされたピニオンカッタによる切削法によって形成されており、ピニオンギアおよびフェースギアの両ギア部の回転軸芯間の距離(オフセット量)と、ピニオンギアのはすば歯の角度とによって決定される。
【0004】
【特許文献1】特開2002−17213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ピニオンギアに噛合して回転駆動するフェースギアは、ピニオンギアを装着するロータ軸に対してオフセットされ且つ直交する状態で配置されたハンドル軸上に設けられているため、ロータ軸やハンドル軸等の回転軸を支持するリール本体の製作時および組み込み時の寸法精度低下や誤差が、フェースギアとピニオンギアとの噛合状態に影響(噛合誤差)を及ぼし、円滑な回転性能を安定して得ることが難しい。また、高負荷巻き取り駆動によって歯形状が変化した場合にも同様に両ギアの噛合状態が悪くなる。
【0006】
また、このような製作段階の寸法誤差や高負荷巻き取り時の変形等の影響による噛合状態の悪化(例えば、歯面角部の衝突や、片当たりによる噛合円滑性の欠如など)を防止する改善方法の1つとして、歯すじ方向の歯幅を逃がす修整であるクラウニングが施されることがあるが、このクラウニングでは、歯すじが湾曲して捩れている前記ギアの特殊な歯面形状の影響もあり、実際のフェースギアにおけるピニオンギアとの噛み合い状態の修整効果を、特に、噛み合い時に不都合な直接的摺接をピニオンギアの歯面との間で引き起こす可能性があるフェースギアの部位、具体的には、釣糸巻取り操作時にピニオンギアと噛合するフェースギアの歯面(釣糸巻取り操作時におけるフェースギアの回転方向に面する歯面)とは反対側の歯面の歯先部位において十分に得ることが難しく、したがって、フェースギアとピニオンギアとの噛合状態を効果的に向上させることが難しい。また、前記クラウニングでは、必要以上に歯面を切削してしまうため、歯の強度を低下させてしまう虞もあり、高負荷巻き取り時の耐久性に劣るなどの課題が残されている。
【0007】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ピニオンギアと噛合するフェースギアの歯強度低下を防止しつつ効果的に両ギアの噛合状態を向上でき、以って円滑な巻き取り回転性能を得ることができる耐久性の高い魚釣用スピニングリールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、釣糸案内部を有するロータを回転駆動するためにハンドル軸に連結された駆動機構がリール本体に設けられて成る魚釣用スピニングリールにおいて、前記駆動機構は、前記ハンドル軸に設けられ且つ前記ロータと一体的に回転するピニオンギアと噛合するフェースギアを有し、前記フェースギアの各歯は、釣糸巻取り操作時における前記フェースギアの回転方向に面する第1の歯面と、前記第1の歯面と反対側に位置する第2の歯面とを有し、前記第2の歯面の外周側端部には、前記ピニオンギアの歯面との直接的な摺接を避けるための逃がし部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成は、前記ハンドル軸が、前記ピニオンギアを装着するロータ軸に対してオフセットされ且つ直交する状態で配置されている場合に特に有益である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ピニオンギアと噛合するフェースギアの歯強度低下を防止しつつ効果的に両ギアの噛合状態を向上でき、以って円滑な巻き取り回転性能を得ることができる耐久性の高い魚釣用スピニングリールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1および図2に示されるように、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリール1は、リール本体1aと、リール本体1aから延出する脚部1bと、脚部1bの端部に形成され且つ図示しない釣竿に取り付けられる竿取付部1cとを有している。リール本体1a内には、ハンドル5が固定されるハンドル軸2が回転可能に支持されている。ハンドル軸2にはフェースギアとしてのドライブギア3が固定されており、このドライブギア3には管状のピニオンギア13が噛合している。ピニオンギア13は、ハンドル軸2に対して直交する方向に延び且つリール本体1aに軸受19を介して回転可能に支持された管状のロータ軸27と一体に形成されており、ロータ軸27の先端部にはベール6および釣糸案内装置15を備えたロータ8が一体的に取り付けられている。
【0012】
ハンドル軸2と直交する方向に延在するスプール軸9がピニオンギア13およびロータ軸27を貫通している。この場合、スプール軸9は、ピニオンギア13と同心的に配されており、ハンドル軸2と直交する方向に沿って前後動できる。また、スプール軸9の先端部には釣糸が巻回されるスプール10が取付けられている。
【0013】
また、ドライブギア3にはピニオンギア13を介して図示しないオシレーティング機構19が係合している。このオシレーティング機構19は、ピニオンギア13と噛み合って回転するウォームシャフト(トラバースカム軸)19aと、このウォームシャフト19aの溝と噛み合い且つスプール軸9に対してその軸方向に移動不能に取り付けられたスライダ19bとからなり、ハンドル軸2がハンドル5の回転操作によって回転されると、スプール軸9を軸方向に沿って往復駆動(前後動)する。
【0014】
このような構成では、ハンドル5を回転操作してハンドル軸2を回転させると、オシレーティング機構19を介してスプール軸9に取り付けられたスプール10が前後に往復動するとともに、ドライブギア3およびピニオンギア13を介してロータ8が回転駆動する。したがって、スプール10には、釣糸案内装置15を介して、釣糸が均等に巻回される。
【0015】
図2に明確に示されているように、ドライブギア3を装着するハンドル軸2は、ピニオンギア13を装着するロータ軸9に対してオフセットされ且つ直交する状態で配置されているとともに、ハンドル5を左右で付け替え可能とするべく、リール本体1a内でスプール軸9と交差するように延びている。具体的には、ハンドル軸2の両側部は軸受41,42を介してリール本体1aに回転可能に支持されるとともに、ハンドル5が固定されるハンドル軸2の左右両端部2b,2cは、リール本体1aの左右両側に臨むべく、リール本体1aの左右両側に形成された開口部50,50に位置決めされている。なお、リール本体1aの開口部50,50には雌ネジ51が形成されており、この雌ネジ51には開口部50を閉塞するための蓋体40が螺合されるようになっている。
【0016】
図3〜図5に明確に示されるように、ドライブギア3は、外周に所定のピッチで複数の歯3Aを有している。また、同様に、ピニオンギア13も、ドライブギア3の各歯3Aと噛み合う複数の歯13Aを外周に所定のピッチで有している。また、ドライブギア3の各歯3Aは、釣糸巻取り操作時(ロータ8の正転時)におけるドライブギア3の回転(正転)方向Aに面する正転側歯面(第1の歯面)3aと、正転側歯面3aと反対側に位置する(釣糸繰り出し操作時におけるドライブギア3の回転(逆転)方向に面する)逆転側歯面(第2の歯面)3bと、歯先面3cと、歯底面3dとを有している。
【0017】
この場合、歯すじが湾曲して捩れているギア3,13の特殊な歯面形状に起因して、ドライブギア3の正転側歯面3aは、釣糸巻取り操作に伴うロータ8の正転時(ドライブギア3が正転方向Aに回転する際)に、その径方向外側の部位(外周側端部)からピニオンギア13の正転側歯面13aと噛み合い始め、その後、ドライブギア3の正転に伴ってその径方向内側の部位がピニオンギア13の正転側歯面13aに徐々に噛み込んでいく。一方、ドライブギア3の逆転側歯面3bは、釣糸繰り出し操作に伴うロータ8の逆転時(ドライブギア3が逆転方向に回転する際)に、その径方向内側の部位からピニオンギア13の逆転側歯面13bと噛み合い始め、その後、ドライブギア3の逆転に伴ってその径方向外側の部位がピニオンギア13の逆転側歯面13bに徐々に噛み込んでいく。
【0018】
ここで、釣糸巻取り操作に伴うロータ8の正転時(ドライブギア3が正転方向Aに回転する際)には、ドライブギア3の正転側歯面3aの径方向外側の部位がピニオンギア13の正転側歯面13aと噛み合い始める際に、ドライブギア3の逆転側歯面3bの径方向外側端縁(図3および図5にP1で示される部位)がピニオンギア13の逆転側歯面13bに接触するが、このままの状態で、以後、ドライブギア3の正転に伴ってドライブギア3の逆転側歯面3bがピニオンギア13の逆転側歯面13bと直接的に摺接し続けると、その後におけるドライブギア3の正転側歯面3aの径方向内側部位とピニオンギア13の正転側歯面13aとの噛み合い状態への移行がスムーズになされなくなり、両ギア3,13の噛合状態が悪くなるだけでなく、歯3A,13Aが経時的に急速に摩耗してしまう虞がある。
【0019】
そこで、本実施形態では、ドライブギア3の逆転側歯面3bの径方向外側端部(外周側端部)に、ピニオンギア13の逆転側歯面13bとの直接的な摺接を避けるための逃がし部22が形成されている。これにより、釣糸巻取り操作時の噛み合い始めにピニオンギア13の逆転側歯面13bと接触したドライブギア3の逆転側歯面3bの径方向外側端縁P1は、その後の正転方向Aの回転により、ピニオンギア13の逆転側歯面13bから離れる(図3にP2で示されている)。したがって、以後、ドライブギア3の正転に伴ってドライブギア3の逆転側歯面3bがピニオンギア13の逆転側歯面13bと直接的に摺接し続けるといった不都合はなくなる。
【0020】
本実施形態において、ドライブギア3の各歯3Aの逃がし部22は、図4および図5に明確に示されるように、ドライブギア3の径方向外側端部から径方向内側端部に向かって先細り且つ歯先面3cから歯底面3dに向かって先細る三角形状の切り欠きとして形成されている。この場合、歯3Aの歯幅Eに対する逃がし部22の歯幅方向寸法Dの比率D/E(図4参照)は、0.05(5%)以上0.5(50%)以下であることが好ましい。比率D/Eが0.05に近づけば近づくほど、加工が容易になるが、加工のばらつきによって十分な機能(スムーズな回転)が得られなくなるため、比率D/Eは0.4(40%)前後であることが特に好ましい。また、比率D/Eが0.5(50%)を越えると、ピニオン13とドライブギア3との間のクリアランスが大きくなってしまうため、ガタツキによりスムーズな回転が得られなくなる虞がある。また、歯3Aの歯丈Gに対する逃がし部22の歯丈方向寸法Fの比率F/G(図5参照)も、同様の理由により、0.1(10%)以上1(100%)以下であることが好ましく、0.5(50%)前後であることが特に好ましい。
【0021】
また、逃がし部22の表面形状は様々な形態が考えられる。図6には、逃がし部22の表面形状の一例が示されている。図6の(a)は逃がし部22の表面形状が凸状の円弧面(球面)を成しており、図6の(b)は逃がし部22の表面形状が凹状の円弧面(球面)を成しており、図6の(c)は逃がし部22の表面形状が平面(直線状)を成している。
【0022】
以上説明したように、本実施形態においては、ドライブギア3の逆転側歯面3bの外周側端部に、ピニオンギア13の逆転側歯面13bとの直接的な摺接を避けるための逃がし部22が形成されている。そのため、噛み合い誤差や高負荷巻取り時の変形発生に対しても、ピニオンギア13に対するドライブギア3の、特に、逆転側歯面側の径方向外側角部から径方向内側に向けての噛合状態が、逃がし部22で許容されてスムーズに移行される(したがって、ドライブギア3の正転側歯面3aの径方向外側部位とピニオンギア13の正転側歯面13aとの噛み合い始めから、ドライブギア3の正転側歯面3aの径方向内側部位とピニオンギア13の正転側歯面13aとの噛み合い状態への移行がスムーズになされる)ことになり、歯強度低下の防止(歯3A,13Aの経時的な摩耗の促進を防止)を図りながら効果的に噛合状態を向上でき、円滑な巻き取り回転性能が得られるとともに耐久強度を有する駆動機構の実現が可能になる。
【0023】
なお、ロータ8の逆転時(釣糸繰り出し時)においては、ドライブギア3の逆転側歯面3bがその径方向内側部位からピニオンギア13の逆転側歯面13bと噛み合い始めるため、逃がし部22が噛合状態および回転性能に悪影響を及ぼすことはない。
【0024】
また、本実施形態では、クラウニングによって必要以上に逆転側歯面3bを切削してしまうのではなく、噛合状態の改善に必要な噛み合い始めの径方向外側端部(歯先付近)のみをカットするようにしているため、歯3Aの強度を大きく低下させてしまうこともなく、高負荷巻き取り時の耐久性に優れている。
【0025】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、ドライブギア3の逆転側歯面3bに形成される逃がし部22が三角形状を成しているが、逃がし部22の形状は任意に設定できる。また、歯の強度を損なわない限り、逃がし部22は、逆転側歯面3bの外周側端部に加え、歯3Aの他の部位(例えば正転側歯面3a)にも形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一部断面を有する側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う要部拡大断面図である。
【図4】図2のX方向矢視図(拡大図)である。
【図5】ドライブギアの要部拡大斜視図である。
【図6】図4のC−C線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 魚釣用スピニングリール
2 ハンドル軸
3 ドライブギア(フェースギア)
3A 歯
3a 正転側歯面(第1の歯面)
3b 逆転側歯面(第2の歯面)
8 ロータ
13 ピニオンギア
13A 歯
13a 正転側歯面
13b 逆転側歯面
15 釣糸案内部
22 逃がし部
27 ロータ軸
【出願人】 【識別番号】000002495
【氏名又は名称】ダイワ精工株式会社
【出願日】 平成18年3月27日(2006.3.27)
【代理人】 【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司

【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章

【識別番号】100101889
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 俊郎

【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義

【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行

【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅


【公開番号】 特開2007−259713(P2007−259713A)
【公開日】 平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願番号】 特願2006−85623(P2006−85623)