| 【発明の名称】 |
多様なバキュロウイルス種によるタンパク質生産が可能なカイコ系統 |
| 【発明者】 |
【氏名】日下部 宜宏
【氏名】伴野 豊
【氏名】李 在 萬
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、AcNPV感受性カイコ及びバキュウロウイルスを用いることを特徴とする、組換えタンパク質の生産方法を提供する。
【解決手段】本発明に用いられるカイコは、好ましくは、下記i)〜iv)のいずれか一つの系統のカイコである。 i) AcNPV感受性であるc11系統のカイコ、又はc11系統と同一の生物学的特性を有するその変異体; ii) AcNPV感受性であるd17系統のカイコ、又はd17系統と同一の生物学的特性を有するその変異体; iii) AcNPV感受性であるf10系統のカイコ、又はf10系統と同一の生物学的特性を有するその変異体);及び iv) AcNPV感受性であるf38系統のカイコ、又はf38系統と同一の生物学的特性を有するその変異体。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 AcNPV感受性カイコ及びバキュウロウイルスを用いることを特徴とする、組換えタンパク質の生産方法。 【請求項2】 カイコか、下記i)〜iv)のいずれかである、請求項1に記載の生産方法: i) AcNPV感受性であるc11系統のカイコ、又はc11系統と同一の生物学的特性を有するその変異体; ii) AcNPV感受性であるd17系統のカイコ、又はd17系統と同一の生物学的特性を有するその変異体; iii) AcNPV感受性であるf10系統のカイコ、又はf10系統と同一の生物学的特性を有するその変異体);及び iv) AcNPV感受性であるf38系統のカイコ、又はf38系統と同一の生物学的特性を有するその変異体。 【請求項3】 下記の工程を含む、バキュウロウイルスを利用した組換えタンパク質生産用カイコのスクリーニング方法: 1)候補カイコを準備し、 2)該カイコにAcNPVを感染させてAcNPVに対する感受性を評価し、 3)該カイコがAcNPV感受性である場合に、そのカイコを選択する工程。 【請求項4】 請求項3に記載のスクリーニング方法により選択されたカイコ、およびバキュウロウイルスを用いることを特徴とする、組換えタンパク質の生産方法。 【請求項5】 バキュウロウイルスが、AcNPVである、請求項1〜3または5に記載の生産方法。 【請求項6】 下記の工程を含む、バキュウロウイルスを利用した組換えタンパク質生産用カイコの生産方法: 1)候補カイコを準備し、 2)該カイコにAcNPVを感染させてAcNPVに対する感受性を評価し、 3)該カイコがAcNPV感受性である場合に、そのカイコを選択し、 4)選択したカイコを、繁殖する。 【請求項7】 下記i)〜iv)のいずれか一つのカイコ系統: i) AcNPV感受性であるc11系統のカイコ、又はc11系統と同一の生物学的特性を有するその変異体; ii) AcNPV感受性であるd17系統のカイコ、又はd17系統と同一の生物学的特性を有するその変異体; iii) AcNPV感受性であるf10系統のカイコ、又はf10系統と同一の生物学的特性を有するその変異体);及び iv) AcNPV感受性であるf38系統のカイコ、又はf38系統と同一の生物学的特性を有するその変異体。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、組換えタンパク質の生産に適したカイコ系統に関する。本発明により提供されるカイコ系統はAcNPV感受性である。本発明は、組換えタンパク質の大量生産、及びタンパク質の機能解析の分野で有用である。 【背景技術】 【0002】 昆虫を利用した組換えタンパク質の生産は、哺乳類に近い修飾を受けたタンパク質を得られるというメリットがあり、関連する技術が種々開発されてきた。 昆虫個体を用いる生産系は、昆虫細胞を用いる場合に比較し、微生物汚染が少なく、生産条件の制御が容易であるという利点がある。中でもカイコは、天然には存在しない完全に家畜化された昆虫であり、幼虫も成虫も逃げ出すことがないため全段階において密閉された飼育容器を必要とせず、また大量飼育が容易であり、昆虫体も大きく、格好の組換えタンパク質の発現用宿主である。 【0003】 昆虫系へ組換え遺伝子を導入するベクターとしては、バキュロウイルス(Baculovirus)科に属する核多角体病ウイルス(nucleopolyhedrovirus: NPV)、特にカイコを宿主とするがカイコに対しては強い病原性のあるカイコガNPV(Bombyx mori NPV: BmNPV)とカイコを宿主としないAutographa californicaNPV(AcNPV)が利用されてきた。前者は、培養細胞を用いる系のみならず、カイコの幼虫個体を用いる系にも適用されてきた。 【0004】 後者に関しては、次のような技術が知られている。非特許文献1は、AcNPVを用いて、ポリヘドリンプロモーターの制御下に組換えタンパク質の生産効率の向上を達成したことを報告する。ポリヘドリンの非翻訳領域を組み込んだ点が従来の方法と異なっており、この論文での因子の組み合わせが市販のシステムで使用されている。また、非特許文献2は、上記のシステムを用いて実際に異種タンパク質を生産したことに関する論文で、AcNPV-昆虫細胞宿主系でのタンパク質生産の応用例としてよく引用されている。非特許文献3は、 改変AcNPV(BmNPVのヘリカーゼ遺伝子を持つため、宿主依存性が変化している)とカイコ幼虫個体を用いて、組換えタンパクを作製したことを報告する。 【先行技術文献】 【0005】 【非特許文献1】Luckow VA, Summers MD. (1988) Signals important for high-level expression of foreign genes in Autographa californica nuclear polyhedrosis virus expression vectors. Virology 167, 56-71 【非特許文献2】V.A. Luckow, Cloning and expression of heterologous genes in insect cells with baculovirus vectors In: A. Prokop, R.K. Bajpai and C.S.Ho, Editors, Recombinant DNA Technology and Applications, McGraw-Hill, New York (1991), pp. 97-152. 【非特許文献3】Choudary PV, Kamita SG, Maeda S. (1995) Expression of foreign genes in Bombyx mori larvae using baculovirus vectors. Methods Mol Biol.39, 243-264. 【発明の開示】 【0006】 一般に、AcNVPはカイコには感染するが、増殖できず、AcNVP-カイコ系の高効率タンパク質発現は不可能であるとされてきた。しかしながら本発明者らは、従来、AcNVPが増殖できないとされてきたカイコ系統群のAcNVP感受性に関して大規模なスクリーニングを行い、その結果、AcNVP感受性を示すカイコ系統を複数見いだした。そして、このAcNVP感受性カイコ系統はAcNVPを用いた場合のみならず、BmNPVによるタンパク質生産においても高生産能を示したことから、本発明を完成した。 【0007】 すなわち、本発明は、cNPV感受性カイコ及びバキュウロウイルスを用いることを特徴とする、組換えタンパク質の生産方法を提供する。本発明の生産方法に用いられるAcNPV感受性カイコは、下記の工程を含むスクリーニング方法により選択することができる。 1)候補カイコを準備し、 2)該カイコにAcNPVを感染させてAcNPVに対する感受性を評価し、 3)該カイコがAcNPV感受性である場合に、そのカイコを選択する工程。 【0008】 本発明はこのようなスクリーニング方法も提供する。 本明細書で「カイコ」というときは、特別な場合を除き、カイコガ(Bombyx mori)の個体を指し、幼虫個体のみならず、卵、蛹、繭又は成虫である個体も含む。 【0009】 本明細書でカイコに関して「系統」というときは、その特性(卵、幼虫、蛹、繭、成虫の形質、遺伝子型)及び起源の全部又は一部によって他の系統の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一のカイコの集合をいう。本明細書における系統分類は、遺伝資源開発研究センターの方法に従っている。系統はまずその主要目的形質によってアルファベットで分類され、それに2位数を附して、また同一起源の分枝系は3位数を附して、系統を表す。 【0010】 本発明のスクリーニング方法へは、候補カイコとして、既存の種々の系統のカイコ、交雑系統のカイコ、突然変異体及びトランスジェニック体等、種々のカイコを供することができる。例えば、a分類の系統(胚子、幼虫致死によって特徴づけられる。)、同b(繭形・繭質)、同c(繭色)、同d(卵形・卵殻色)、同e(卵色)、同f(幼虫肢・斑紋)、同g(幼虫斑紋)、同i(幼虫眼紋・頭尾斑)、同k(幼虫体色)、同l(幼虫体色)、同m(モザイク・畸形)、同n(幼虫体形)、同o(油蚕)、同r(染色体異常・交叉率)、同t(発育・眠性)、同u(蛹・成虫)、同w(関連分析用合成系)、同x(分析未了の突然変異)等を供することができる。組換えタンパク質生産用としては、飼育が比較的容易であるものがよく、また体が大きく、タンパク質産生能の高い系統のカイコを供するとよい。 【0011】 本明細書でウイルスに対して「感受性」というときは、特別な場合を除き、そのウイルスに感染することができ、かつ増殖させることができる能力をいう。本発明に用いられるカイコはAcNPV感受性であるが、AcNPV感受性であるか否かは、例えば、AcNPVの増殖を容易に評価可能とするようなタンパク質の遺伝子を組み込んだ組換えウイルス(例えば、ルシフェラーゼ組換えAcNPV、GFP組換えAcNPV)を作製し、対象とするカイコに感染させ、適切な時期にカイコ中の該タンパク質量を評価することにより、判断することができる。kxs系統(錦秋鐘和)のカイコは、AcNPVに感染せず、あるいはAcNPVを増殖させることができず、AcNPVに対して抵抗性であるといえ、また後述するc11、d17、f10、f38等の系統のカイコは、AcNPVの体内での増殖が認められ(実施例参照)、AcNPVに対して感受性であるといえる。ウイルスの増殖の程度が高いほどタンパク質生産にとって好ましく、したがって、本発明のスクリーニング方法としては、AcNPVを高頻度で増殖させることができるものを選択するような態様が好ましい。 【0012】 本発明のスクリーニング方法は、特定のカイコ個体の選択のみならず、カイコの系統を選択するのに適している。 本発明はまた、本発明のスクリーニング方法により選択されたAcNPV感受性である、カイコ系統を提供する。本発明によって初めてAcNPV感受性として提供される系統には、a49、c11、c51、c60、d17、e15、f10、f38、g05、g30、g32、l31、l311、l312、n41、r02、r21、t70、w601及びfyluがある。本発明はこれらの系統も提供する。 【0013】 本発明により提供され、かつ本発明の生産方法に特に適したカイコ系統c11、d17、f10、f38は、AcNPVに対して感受性であること以外に、下記の生物学的特性を有する。 【0014】 【表1−1】
【0015】 【表1−2】
【0016】 本発明の範囲には、カイコ系統c11、d17、f10及びf38、並びにc11、d17、f10又はf38系統の生物学的特性と同一の生物学的特性を有するそれらの変異体が含まれる。 これらの系統の飼育及び繁殖は、当業者に慣用の条件で行うことができる。 【0017】 本発明により提供されるカイコ系統は、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)の中核機関である九州大学・遺伝資源開発研究センター(九州大学大学院農学研究院;〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1;(Tel) 092-621-4991;(Fax) 092-624-1011)として、出願人より、特許法施行規則の第27条の3の規定に準じて、又はブタペスト条約に基づく規則の第11規則に準じて、分譲可能である(http://www.nbrp.jp/report/reportProject.jsp;jsessionid=BE73451C6E54680014762FD194C0F721?project=silkworm参照)。 【0018】 本発明のスクリーニング方法により得られたAcNPV感受性カイコは、BmNPVにも高い感受性を有しうる。そのため、AcNPV以外のバキュウロウイルス-昆虫系を利用した組換えタンパク質の生産においても有用でありうる。本発明の組換えタンパク質の生産方法において用いられるバキュウロウイルスは、バキュウロウイルスは、好ましくは核多角体病ウイルスであり、より好ましくはBmNPV又はAcNPV及びこれらの変異体である。 【0019】 本発明の生産方法は、通常、組換えウイルスを作製する工程、ウイルスをカイコへ感染させる工程、カイコ体内でウイルスを増殖させ、目的タンパク質を産生させる工程、及びカイコからの目的タンパク質を回収する工程が含まれる。 【0020】 組換えウイルスを作製する工程には、従来技術を用いることができる。バキュウロウイルスのゲノムは、通常130kbpの環状DNAであるため、直接目的遺伝子を導入することはできず、目的遺伝子を一旦トランスファープラスミドに組込み、相同組換えによって導入することとなるが、この点に関しては、種々の技術が開発されている。本発明においては、市販の構築システムを利用してもよい。 【0021】 通常、外来遺伝子をBmNPV又はAcNPVに組み込むことにより組換えウイルスが作製されるが、BmNPV又はAcNPVのみならずこれらの変異体、例えば、病症発現を抑制するために特定の遺伝子を欠損させたもの、細胞にエントリーしやすくするために特定の遺伝子を過剰発現させたもの等を、本発明において用いることができる。 【0022】 ウイルスゲノムに組み込むタンパク質遺伝子は、酵素、キナーゼ、プロテアーゼ、サイトカイン、ホルモン、レセプター、チャネル、転写因子、ウイルス構成タンパク質など、多種のものから選択することができ、また、哺乳類、ウイルス、昆虫、植物、酵母、ヒト、クラゲ、サンゴ等の多様な生物由来のものを選択することができる。 【0023】 組換えウイルスは、必要に応じ、培養細胞を用いて増殖させてから、次の感染工程に用いてもよい。また、必要に応じ、得られたウイルスを、懸濁液、凍結乾燥粉末等の形態としてもよい。 【0024】 目的遺伝子を導入した組換えウイルスの本発明のカイコへの感染は、概ね5齢の幼虫に対して行うことができる。接種量、感染経路等は当業者であれば適宜設定することができる。例えば、1×106 pfu/mlに調整した組換えウイルス液10μlを注射針を用いて胸部皮下に注射することによって実施することができる。接種労力を軽減する観点からは、人工飼料に混合して経口接種する方法(特許第3030430号等参照)も有用であろう。 【0025】 感染前の本発明のカイコの飼育、及び感染後にカイコ体内でウイルスを増殖させ、目的タンパク質を産生させる工程における本発明のカイコの飼育は、人工飼料を用いることもでき、桑の葉を用いることもできる。 【0026】 本発明のカイコから目的タンパク質を回収する時期は、カイコ体液中の組換えタンパク質濃度、カイコ一個体当たりの目的タンパク質の絶対量等により、決定することができる。通常、日が経つにつれ幼虫体が大きくなるので、1頭あたりのタンパク質生産の絶対量は増加する。しかし一方で、7日目以降は死亡する個体が出現することがある。回収時の本発明のカイコの状態は、外見上はウイルス感染させていない場合とほとんど同じであるが、カイコ系統によっては若干異なることがある。ウイルス感染したカイコは、通常、長期飼育しても通常蛹にならない。 【0027】 目的タンパク質は、個体のすべての組織から回収することができる。分泌系では、分泌されたタンパク質を含む体液を回収することもできる。 目的タンパク質の回収は、注射針等を使用して個体から直接体液を得る方法、必要に応じ適当な溶液を加えて個体を磨砕する方法、個体を凍結・融解することにより収縮現象を利用して体液を抽出する方法等を利用することができる。 【0028】 回収した目的タンパク質を含む液は、必要に応じ、分離、精製、凍結乾燥、結晶化等の工程に供してもよい。 本発明により、バキュロウイルス−カイコ系による組換えタンパク質生産が多様に実施可能となる。種々の生物由来のタンパク質の大量生産が、より簡便に実施可能となり、また非常に多くの種類のタンパク質の同時並列的な生産が、より簡便に実施可能となる。そのため、本発明は、組換えタンパク質の大量生産及びタンパク質の機能解析のために有用である。 【0029】 本発明により得られる組換えタンパク質の量は、用いる系統及び目的とするタンパク質に拠って異なるが、例えば、ルシフェラーゼの場合は75μg/1頭、GFPでは200μg /1頭であり得る。これは、従来の系統では、いずれも1μg /1頭以下であることに比較して、顕著に高く、また分泌系とすることにより、さらに産生量を上げることも可能である。但し、タンパク質の種類によっては(例えば、核タンパク質や膜タンパク質)分泌系では活性を失うものがあることには留意すべきである。また、カイコの繭としてタンパク質を産生させる場合も、失活やタンパク質の不溶化の問題に留意すべきである。毒性のあるタンパク質の場合は、産生量が低くなることがある。。 【0030】 本発明のカイコ系統は、各系統が純系交配を繰り返しているため、遺伝的背景が均一である。そのため、タンパク質生産能に関しては系統内での個体差はほとんど見られないという利点がある。 【0031】 本発明のカイコ系統は、バキュロウイルスを使用する発現系である限り、有用である。 【実施例1】 【0032】 1. 材料と方法 1.1 組換えウイルスの作製と増殖 ヨトウガ由来の培養細胞Sf9株とカイコ由来の培養細胞BmN4株は、10% FBSを含むGrace’s Insect Medium (Gibco BPL) を用いて23℃で培養したものを供試した。細胞の培養には、10%のFBSを含むGrace’s Insect Mediumを用い、インキュベーションは23℃で行った。操作はすべてクリーンベンチ内で無菌的に行った。まず、培養細胞が入っているフラスコから、古い培地を取り除き、新しい培地を8 ml加え、ピペッティングにより細胞を分散させて単一細胞の状態にした。新しいフラスコに培地を7 ml分注し、分散させた細胞を1 ml加えて全体量を8 mlにした。フラスコをインキュベーターに移し、培養を行った。 【0033】 バックミドDNAの構築には、インビトロジェン社のBac-to-Bacシステムを用いた。まず、pENTR11/luciferaseとpFastBacA3(Gmr) を作製し、Gateway LR システム (Invitrogen) を用いて、部位特異的組換えを起こさせ、pFastBacA3/luciferaseを得た。pENTR11/luciferaseは、 pENTR11(Invitrogen) のNcoI-XhoI部位にホタルルシフェラーゼcDNAの全長を挿入したものであり、pFastBacA3は、カイコアクチンプロモーターの下流にDESTカセット(Invitrogen) を挿入してある。DESTカセットは Gateway LRによりpENTR11上の標的遺伝子を転移できる。また、pFastBacA3は、バックミドDNAに転移するためのattTn7認識配列と、選択マーカーとしてゲンタマイシン耐性遺伝子を有している。 【0034】 pFastBacA3/luciferase上のルシフェラーゼ発現カセットは、Bac-to-bac Baculovirus Expression System (Invitrogen) を用いてAcNPVゲノム上に導入した。まず、pFastBacA3/luciferaseをDH10Bacに形質転換し、37℃ 1時間インキュベートした後、カナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、Bluo-galならびにIPTGを含むLBプレートに接種した。37℃で1日静置し、白いコロニーを白金棒で採取して、1.5ml LB 培地で培養した。 【0035】 続いてBacmid DNA 抽出を行った。バックミドDNAの抽出は、アルカリ-SDS法を用いて行った。1.5ml の培養液を14,000×g 1 minで集菌したのち、菌を300 ilの10 mM EDTA、15 mM tris-HCl (pH 8.0)、100 mg/ml RNase A中で懸濁し、菌を完全に撹拌した。次に300 ilの0.2 N NaOH、1% SDSを加えて、穏やかに混合した後室温で5分間静置した。さらに300 il の3 M potassium acetate(pH 5.5)を加えて充分に混合した後、氷中に5分間静置した。その後4℃ 14,000 rpmで10分間遠心分離を行い、上清を回収しイソプロパノール沈澱を行った。40 ilの1 M Tris (pH 8.0) 、0.5 M EDTA(pH 8.0)溶液(TE)に溶解し、Bacmidサンプルとした。 【0036】 Sf9細胞、BmN4細胞へのトランスフェクションは以下の方法で行った。AcNPVの増殖にはSf9細胞を、BmNPVの増殖にはBmN4細胞を宿主細胞として用いた。トランスフェクションの前日に、細胞を分散させ、24-wellプレートに1×105個/wellになるよう播種しておき、23℃で1日培養した。1 well当たり、バックミドDNA 0.5 μgをHBSで10 μlになるように希釈しA液とした。同時に4 μlのCellFectin (GIBCO) に16 μlのHBSを加え、氷上で45分間インキュベートした。45分間待機中に細胞を一回SFM (GIBCO) で洗浄した。カチオン脂質とDNAの複合体を形成させるために、さらに氷中で15分間インキュベートした。混合液にSFM 170 μlを加えた後、 wellの培地を抜き、混合液を細胞に添加した。23℃で8時間培養した後、トランスフェクション混合溶液を除き、10% FBSを含むGrace’s Insect Medium (Gibco BPL) 1 mlを添加し、培養を継続した。3日間27℃で培養後、培養液を回収してフィルター滅菌し、バキュロウイルス含有液(P1ウイルス液)とした。このP1ウイルス液10 μlを5×105個の宿主細胞に感染し、3日後にウイルス液を回収した(P2ウイルス液)。同様にP2ウイルス液を再増幅したP3ウイルス液をカイコ幼虫への接種実験に用いた。 【0037】 1.2 ウイルスの接種 本実験には、九州大学農学研究院所有のカイコ系統163系統を用い、各系統10個体にウイルスを接種した。 【0038】 5齢3日目のカイコ幼虫に、1×106 pfu/mlに調整したP3ウイルス液10 μlを注射針によって接種した。体液中の組換えタンパク質濃度がプラトーに達する点として接種3日後を選択し、幼虫の足に針を刺し、体液を2滴得た。体液を遠心分離し、沈殿した血球細胞のみを回収した。なお、カイコ幼虫は、実験期間を通じて、桑の葉を使用した通常の飼育方法で飼育した。 【0039】 1.3 ルシフェラーゼを指標としたカイコ幼虫におけるウイルスの増殖 回収した体液を1.5 mlエッペンドルフチューブに移した。これを4℃ 2,000 rpmで1分間遠心し、体液中の血液細胞を回収した。培養液を除き、PBSで1回洗浄を行った。100 μlの細胞溶解液を添加し、室温で15分以上放置した。その後、4℃ 10,000 rpmで30秒間遠心を行い、細胞抽出液80 μlに発光基質液100μlを加え、ルミノメーターでルシフェラーゼの発光量を測定した。残り20 μlの細胞溶解液はタンパク質の定量を行い、ルシフェラーゼ活性を補正した。 【0040】 2. 結果 結果を図1に示した。複数の系統(例えば、a49、c11、c51、c60、d17、e15、f10、f38、g05、g30、g32、l31、l311、l312、n41、r02、r21、t70、w601及びfylu系統)がAcNPV感受性であり、特にc11、d17、f10及びf38系統に、高いタンパク質生産能が認められた。 【0041】 なお、4系統について、最初のスクリーニングの際に得られたデータを下表に示した。 【0042】 【表2】
【0043】 また、感受性2系統と抵抗性2系統について追試した際の、各個体毎のデータを下表に示した。 【0044】 【表3】
【0045】 各カイコ系統において、個体間差が少ないことが確認できた。 【実施例2】 【0046】 d17系統及びp50系統(標準系統)で、組換えBmNPVを用いて蛍光タンパク質であるDsRedを発現させた。方法は、実施例1に準じた。 結果を図2A及び図2Bに示した。蛍光タンパク質であるDsRedを発現させた場合、d17(本発明の系統)においては p50系統(標準系統)と比較して体内のいずれの組織においても高いタンパク質生産能が認められた。このことは本発明のカイコ系統が、バキュロウイルスを使用する発現系である限り、有用であることを明示している。 【図面の簡単な説明】 【0047】 【図1】図1は、カイコの各系統におけるルシフェラーゼ活性を示したグラフである。5齢3日目のカイコの各系統にルシフェラーゼ発現カセットを組み込んだAcNPVを接種した後、3日後に回収した体液から、血液細胞を回収した。細胞抽出液のルシフェラーゼの発光量を測定した。 【図2A】図2Aは、蛍光タンパク質であるDsRedを発現させた場合の、d17(本発明の系統)とp50系統(標準系統)を比較した写真である。 【図2B】図2Bは、蛍光タンパク質であるDsRedを発現させた場合の、d17(本発明の系統)とp50系統(標準系統)の、解剖後の各組織を比較した写真である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】504145342 【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
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| 【出願日】 |
平成17年12月9日(2005.12.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089705 【弁理士】 【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100140109 【弁理士】 【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270 【弁理士】 【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137 【弁理士】 【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013 【弁理士】 【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100113309 【弁理士】 【氏名又は名称】野▲崎▼ 久子
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| 【公開番号】 |
特開2007−159406(P2007−159406A) |
| 【公開日】 |
平成19年6月28日(2007.6.28) |
| 【出願番号】 |
特願2005−355871(P2005−355871) |
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