| 【発明の名称】 |
組換え低アレルゲン植物及び低アレルゲン植物マーカー |
| 【発明者】 |
【氏名】島田 浩章
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| 【要約】 |
【課題】遺伝子組換えを利用した遺伝子組換えを利用したflo2 変異体及び低アレルゲン植物の製造方法並びにflo2変異体及び低アレルゲン植物を同定するためのマーカーを提供すること。
【解決手段】floury-2遺伝子の機能を特異的に低下させた植物を作製すること。また、floury-2遺伝子の遺伝子関連物質を検出することにより、flo2変異体及び低アレルゲン植物を同定することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 遺伝子組換え低アレルゲン植物の製造方法であって、floury-2遺伝子の機能を特異的に低下させることを特徴とする製造方法。 【請求項2】 外来性核酸をゲノムに導入することにより、floury-2遺伝子の機能を低下させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 前記外来性核酸が、相同組換え用floury-2遺伝子、floury-2遺伝子に対するRNAi用またはアンチセンスRNA用核酸であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。 【請求項4】 floury-2遺伝子の発現を低下させることにより、floury-2遺伝子の機能を低下させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。 【請求項5】 前記floury-2遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するDNA、またはその相同領域に含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。 【請求項6】 前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。 【請求項7】 前記植物がイネであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。 【請求項8】 遺伝子組換え低アレルゲンイネの製造方法であって、配列番号1に示すDNAの第9981番目のGをAに置換することを特徴とする方法。 【請求項9】 floury-2変異植物の製造方法であって、floury-2遺伝子の機能を特異的に低下させることを特徴とする製造方法。 【請求項10】 floury-2遺伝子の発現を低下させることにより、floury-2遺伝子の機能を低下させることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。 【請求項11】 外来性核酸をゲノムに導入することにより、floury-2遺伝子の機能を低下させることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。 【請求項12】 前記外来性核酸が、相同組換え用floury-2遺伝子、floury-2遺伝子に対するRNAi用またはアンチセンスRNA用核酸であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。 【請求項13】 前記floury-2遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するDNA、またはその相同領域に含まれることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の製造方法。 【請求項14】 前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の製造方法。 【請求項15】 前記植物がイネであることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の製造方法。 【請求項16】 floury-2変異植物の製造方法であって、配列番号1に示すDNAの第9981番目のGをAに置換することを特徴とする方法。 【請求項17】 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法によって製造された遺伝子組換え低アレルゲン植物。 【請求項18】 請求項9〜16のいずれかに記載の製造方法によって製造されたfloury-2変異植物。 【請求項19】 請求項17または18に記載の遺伝子組換え低アレルゲン植物の種子。 【請求項20】 floury-2遺伝子の遺伝子関連物質である低アレルゲン植物のマーカー。 【請求項21】 前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であることを特徴とする請求項20に記載のマーカー。 【請求項22】 前記植物がイネであることを特徴とする請求項20または21に記載のマーカー。 【請求項23】 低アレルゲン植物の同定方法であって、 floury-2遺伝子の機能の増減を調べることを特徴とする方法。 【請求項24】 低アレルゲン植物の同定方法であって、 floury-2遺伝子の発現を調べることを特徴とする方法。 【請求項25】 前記floury-2遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するDNA、またはその相同領域に含まれることを特徴とする請求項22または23に記載の方法。 【請求項26】 前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であることを特徴とする請求項25に記載の方法。 【請求項27】 前記植物がイネであることを特徴とする請求項23〜26のいずれかに記載の方法。 【請求項28】 floury-2遺伝子の遺伝子関連物質であるfloury-2変異植物のマーカー。 【請求項29】 前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であることを特徴とする請求項28に記載のマーカー。 【請求項30】 前記植物がイネであることを特徴とする請求項28または29に記載のマーカー。 【請求項31】 floury-2変異植物の同定方法であって、 floury-2遺伝子の機能の増減を調べることを特徴とする方法。 【請求項32】 floury-2変異植物の同定方法であって、 floury-2遺伝子の発現を調べることを特徴とする方法。 【請求項33】 前記floury-2遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するDNA、またはその相同領域に含まれることを特徴とする請求項31または32に記載の方法。 【請求項34】 前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であることを特徴とする請求項33に記載の方法。 【請求項35】 前記植物がイネであることを特徴とする請求項31〜34のいずれかに記載の方法。 【請求項36】 低アレルゲン植物またはfloury-2変異植物を同定するためのキットであって、 floury-2遺伝子の発現検出用PCRプライマーペア、またはfloury-2遺伝子産物の発現検出用抗体を含有していることを特徴とするキット。 【請求項37】 floury-2遺伝子産物の発現検出用抗体を用いたイムノクロマト法(Immunochromatography)によってfloury-2遺伝子産物を検出できる検出器を備えていることを特徴とする請求項36に記載のキット。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、組換え低アレルゲン植物及び低アレルゲン植物マーカーに関する。 【背景技術】 【0002】 食物アレルギーはアナフィラキシーやアトピー性皮膚炎等の原因となる。その対策としては、原因となる食品を避けることや薬物投与が挙げられるが、主食であるコメなどに関しては、完全に摂取を絶つことは難しい。そこで、低アレルゲン米の需要が高まっており、その開発が検討されている。 【0003】 米アレルゲンとしては、グロブリンなどの塩可溶性タンパク質が最もよく知られており、特に分子量16kDaのタンパク質が強くアレルギーを誘発する(例えば、非特許文献1参照)。塩可溶性タンパク質以外にも、ワキシイタンパク質(例えば、特許文献1参照)などが知られている。 【0004】 このような米アレルゲンを低減させた低アレルゲン米は、主要な米アレルゲンが塩可溶性であることから、例えば、高圧処理と塩水溶液洗浄でグロブリンなどを低減させたり(Aカット米)、通常より、精米率を高くし、タンパク質が多く含まれる米粒の周辺部を削り取ったり(高度精白米)することにより作製されている。また、遺伝子組換えなどにより低アレルゲン植物を作製する技術も開発されている(例えば、非特許文献2参照)。 【0005】 一方、日本型イネ「金南風(キンマゼ)」を化学的突然変異原(MNU、EMS、EI)で処理することにより、胚乳が紛質になる表現型を有する変異体flouryが得られた(例えば、非特許文献3参照)。このflouryは、その後、5番染色体上にあるfloury-1(flo1)、4番染色体上にあるfloury-2(flo2)、6番染色体上にあるfloury-3(flo3)などに分類された(例えば、非特許文献4,5参照)。中でも、flo2の表現型が詳細に解析され、未成熟な種子において、RBE1(rice branching enzyme 1)をはじめとする、RBE3や顆粒結合型デンプン合成酵素(granule-bound starch synthase)などのデンプン生合成酵素の発現が低下していた(例えば、非特許文献6参照)。さらに、flo2変異体において、上記の16kDaアレルゲンタンパク質の発現が減少していること(例えば、特許文献2参照)から、flo2変異体が低アレルゲン米として有望であることが示されていた(例えば、特許文献2参照)。 【特許文献1】特開2001−204284 【特許文献2】特開2003−259750 【非特許文献1】T,Matsuda et al., Agri. Biol. Chem. 52, 1465-1470, 1988 【非特許文献2】Y. Tada et al. FEBS Lett. 391, 341-345, 1996 【非特許文献3】H. Satoh and T. Omura Japan J. Breed. 31, 316-326, 1981 【非特許文献4】R.P.Kaushik and G.S.Khush Theo. Appl. Genet. 83, 146-152, 1991 【非特許文献5】山下和宏、佐藤 光、西 愛子、浅川今日子 日本育種学会2000年春季講演会 口頭発表タイトル(250番)2000年4月3日「染色体6に座乗するイネの新たな粉質胚乳変異体遺伝子floury 3について」 【非特許文献6】T. Kawasaki et al. Plant Physiol. 110, 89-96, 1996 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、flo2 変異の原因遺伝子が単離されていなかったため、新たなflo2 対立遺伝子を有する変異体を作製するには、例えば、化学的突然変異原をもちいて膨大な変異体ライブラリーを作製し、その中から数少ないflo2変異体を同定しなければならなかった。また、flo2変異体のマーカーも存在しなかったため、flo2変異体を同定する際にも、例えば、相補性試験などにより、従来のflo2変異体と相補しない変異体を選択しなければならなかった。 【0007】 そこで、本発明は、より時間も労力も必要としない、遺伝子組換えを利用したflo2変異植物及び低アレルゲン植物の製造方法並びにflo2変異植物及び低アレルゲン植物を同定するためのマーカーを提供することを目的としてなされた。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、flo2変異の原因遺伝子のクローニングを目的として鋭意努力した結果、4番染色体のゲノム・ウォーキングによって、flo2遺伝子を同定することができ、本発明の完成に至った。 【0009】 本発明にかかる遺伝子組換え低アレルゲン植物またはfloury-2変異植物の製造方法は、floury-2遺伝子の機能を特異的に低下させることを特徴とする。ここで、「floury-2遺伝子の機能を特異的に低下させる」とは、突然変異ライブラリーからfloury-2遺伝子の機能が低下した植物を選択するという場合のように、機能を低下させるときに、特定の遺伝子ではなく不特定多数の遺伝子の機能を低下させるのではなく、特定の遺伝子の機能を狙って低下させることを意味する。製造する際、外来性核酸をゲノムに導入することにより、floury-2遺伝子の機能を低下させてもよい。例えば、前記外来性核酸が、相同組換え用floury-2遺伝子、floury-2遺伝子に対するRNAi用またはアンチセンスRNA用核酸であることが考えられる。また、floury-2遺伝子の発現を低下させることにより、floury-2遺伝子の機能を低下させてもよい。前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であってもよい。また、前記植物がイネであってもよい。 【0010】 本発明にかかる遺伝子組換え低アレルゲン植物は、上記いずれかに記載の製造方法によって製造されたものである。その植物の種子も本特許の権利の範囲内である。 【0011】 本発明にかかるfloury-2変異植物の製造方法は、floury-2遺伝子の機能を特異的に低下させることを特徴とする。「特異的に低下させる」の意味は、上記と同様である。その際、外来性核酸をゲノムに導入することにより、floury-2遺伝子の機能を低下させてもよい。例えば、前記外来性核酸が、相同組換え用floury-2遺伝子、floury-2遺伝子に対するRNAi用またはアンチセンスRNA用核酸であることが考えられる。また、floury-2遺伝子の発現を低下させることにより、floury-2遺伝子の機能を低下させてもよい。前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であってもよい。また、前記植物がイネであってもよい。 【0012】 本発明にかかるfloury-2変異植物は、上記いずれかに記載の製造方法によって製造されたものである。その植物の種子も本特許の権利の範囲内である。 【0013】 本発明にかかる低アレルゲン植物またはfloury-2変異植物のマーカーは、floury-2遺伝子の遺伝子関連物質である。前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であってもよい。前記植物がイネであってもよい。 【0014】 本発明にかかる低アレルゲン植物またはfloury-2変異植物の同定方法は、floury-2遺伝子の機能の増減または発現を調べることを特徴とする。前記floury-2遺伝子が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子、またはその相同遺伝子であってもよい。前記植物がイネであってもよい。 【0015】 本発明にかかる低アレルゲン植物またはfloury-2変異植物を同定するためのキットは、floury-2遺伝子の発現検出用PCRプライマーペア、またはfloury-2遺伝子産物の発現検出用抗体を含有していることを特徴とする。本キットは、前記floury-2遺伝子産物の発現検出用抗体を用いたイムノクロマト法(Immunochromatography)によってfloury-2遺伝子産物を検出できる検出器を備えていてもよい。 【発明の効果】 【0016】 本発明によって、遺伝子組換えを利用したflo2変異体及び低アレルゲン植物の製造方法並びにflo2変異体及び低アレルゲン植物を同定するためのマーカーを提供することが可能になった。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J.Sambrook, E.F.Fritsch & T.Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。 【0018】 なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。 【0019】 ==floury-2 (flo2)遺伝子== 実施例で示すように、本発明者らは、イネにおいて、4番染色体上に位置するfloury-2(flo2)変異の原因遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するDNAに含まれることを明らかにした。さらに、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子であることを明らかにし、本明細書では、この遺伝子(即ち、DNA上で、エクソン、イントロン、5’非コード領域、及び3’非コード領域からなる転写領域、並びにその転写領域の転写を調節するエンハンサー/プロモーター領域からなる領域のことをいう。)をイネfloury-2遺伝子と呼ぶ。また、他の植物において、配列番号1に示される塩基配列を有するDNAと相同領域に含まれ、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードする遺伝子の相同遺伝子を、その植物におけるfloury-2遺伝子と呼ぶ。また、配列番号2に示されるアミノ酸配列に対し、1〜数個のアミノ酸が挿入、欠失、置換されたアミノ酸配列を有するペプチドであって、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するペプチドと同じ機能を有するペプチドをコードする遺伝子も、floury-2遺伝子と呼ぶものとする。 【0020】 ==flo2 変異植物の製造方法== 本発明の一実施態様は、flo2変異植物の新規製造方法である。従来は、植物に変異源を投与して、ランダムに染色体DNAに変異を導入し、以前から知られていたflo2変異植物(例えば、イネの場合EM36系統やEM37系統)と交配させ、相補しない変異体を選ぶという相補性検定によりflo2変異体を選択していた。しかし、本発明の発明者らによりflo2変異体における原因変異、及びflo2変異の原因遺伝子であるfloury-2遺伝子が同定され、floury-2遺伝子の機能を特異的に低下させることができるようになった。 【0021】 すなわち、外来性核酸である組換えfloury-2遺伝子をゲノムに導入することにより、floury-2遺伝子の機能を特異的に低下させ、flo2変異体を作製することができる。flo2変異体の作製は、常法に従い、相同組換え法、siRNAやmsRNAなどのRNA干渉法、アンチセンスRNA法等に用いるための核酸をゲノムに導入すればよい。これらの方法は、いずれも、floury-2遺伝子の発現を減少させるために用いることができ、その結果として、floury-2遺伝子の機能が低下する。相同組換え法に関しては、変異を導入し機能の低下した組換えfloury-2遺伝子を用いることにより、発現レベルは同じままで、機能を低下させることも可能である。ここで、変異の種類は特に限定されないが、具体的な変異の例としては、実施例に示すように、配列番号1に示すDNAの第9981番目のGをAに置換すれば、アンバー突然変異を有するflo2変異体を作製することができ、それ以外にも、プロモーターに変異を導入する、機能ドメインに機能を失わせるような変異を導入する、など、様々な実施形態が可能である。 【0022】 ここで、対象となる植物は、特に限定されないが、flo2変異の表現型の一つが低アレルゲン種子を生産することなので、種子を食用とするイネ、麦、ソバ等の植物が好ましい。 【0023】 ==遺伝子組換え低アレルゲン植物の製造方法== 本発明の他の実施態様は、遺伝子組換え低アレルゲン植物の新規製造方法である。 flo2変異イネでは、食物アレルギーの主因である16kDaアレルゲンタンパク質の発現が減少していることが明らかになっている(上記特許文献2参照)。従って、上記のようにflo2変異植物を製造することにより、遺伝子組換え低アレルゲン植物を製造することができる。 【0024】 ==低アレルゲン植物またはfloury-2変異植物のマーカー== 本発明のさらに別の実施態様は、floury-2遺伝子の遺伝子関連物質である低アレルゲン植物またはfloury-2変異植物のマーカーである。ここで、遺伝子関連物質とは、DNA、RNA、タンパク質、またはそれらの一部を含み、遺伝子が転写されてから最終産物になるまでの過程に関係する分子であって、さらに、機能の低下を検出するために用いることができる物質のことをいう。 ここでも、対象となる植物は、特に限定されないが、低アレルゲン植物の開発が期待されている、イネ、麦、ソバ等の植物が好ましい。 【0025】 例えば、floury-2遺伝子にhypomorphやamorphの変異を有するが、発現は正常であるような植物の場合、floury-2遺伝子を含有するゲノムDNAを抽出し、floury-2遺伝子をPCRで増幅して塩基配列を調べたり、RFLPを検出するために適切な制限酵素で切断したりして、当該変異を検出することができる。floury-2遺伝子の転写産物であるmRNAを単離し、直接配列を決定してもよい。特定の変異を検出する場合には、その変異を含むプライマーを作製してPCRを行なうことにより、変異を検出してもよい。 【0026】 また、floury-2遺伝子の発現が低下している植物の場合、ゲノムDNAやmRNAの配列を調べてもよいが、floury-2遺伝子の発現の低下がfloury-2遺伝子内の変異によらない可能性があるため、floury-2遺伝子のmRNAやタンパク質の量を測定するほうが好ましい。例えば、組織化学的手法(個体や切片を用いて、in situでmRNAやタンパク質を検出する方法等)や分子生物学的手法(ノーザン・ブロッティング、ウエスタン・ブロッティング、定量的RT−PCR、ELISA等)を用いて、floury-2遺伝子の発現を調べることができる。 【0027】 この場合、floury-2遺伝子の発現を容易に検出するために、発現検出に必要な試薬(例えば、floury-2遺伝子の発現検出用PCRプライマーペア、またはfloury-2遺伝子産物の発現検出用抗体など)を、反応バッファー等とともにキット化してもよい。また、最近は、インフルエンザウイルス検出キットなどにも広く用いられているように、発現検出用抗体を用いたイムノクロマト法(Immunochromatography)によって検出できる検出器をキットに含めれば、floury-2遺伝子産物を容易に検出できるようになる。 【0028】 このようにして低アレルゲン植物またはfloury-2変異植物のマーカーが検出できれば、例えば、ランダムに変異を導入した植物を大規模に作成し、その中から、floury-2遺伝子の機能や発現が低下している低アレルゲン植物またはfloury-2変異植物を容易に同定することができる。また、交配によって生じた低アレルゲン植物の候補植物の中から、低アレルゲン植物を容易に検出することができるようになる。 【実施例】 【0029】 <実施例1>floury-2 (flo2)遺伝子のクローニング ==flo2遺伝子座の詳細なマッピング== これまでに、flo2遺伝子座は、4番染色体上にあることが明らかになっていた。そこで、DNAマーカーを用い、flo2遺伝子座の詳細なマッピングを行った。 【0030】 まず、イネ日本型品種Japonica(flo2変異型EM37)とインド型品種Indica (野生型カサラス)を交配し、得られたF1を自家受粉させることにより、約4000個体のF2を得た。このうちのflo2の表現型を示す劣性ホモ系統の種子を選抜し、これらflo2変異体のうちの約800個体からゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを用い、以下のようにflo2遺伝子座のマッピングを行った。 【0031】 まず、Rice genome Integrated Map database(INE)(http://rgp.dna.affrc.go.jp/giot/INE.html)を利用して、JaponicaとIndicaの4番染色体の塩基配列を比較し、多型を検索してSNIP(single nucleotide polimorphism)を同定し、その位置にプライマーを作成した。ここでは、72.4cMの位置にある以下のプライマーを用い、94℃で5分変性した後、94℃ 30秒-55℃ 30秒-72℃ 30秒のサイクルを30サイクル行った後、72℃ 7分処理する、という条件(条件1)で、300サンプルのF2に対しPCRを行ったところ、組み替え率が33%であったので、flo2遺伝子座は39.4cMまたは105.4cMの付近にあることが明らかになった。 72.4-5-1(In): ATGTGTGGTGTTTGAGCATC(配列番号3) 72.4-3-1(In): TTCTCGAATGCAATAGCGCC(配列番号4) 72.4-5-1(Jp): CTGTGTGGTGTTTGTGCACC(配列番号5) 72.4-3-1(Jp): TTCTCGTACGCGATTGCGAC(配列番号6) 【0032】 次に、85cMの位置にある以下のプライマーを用い、アニーリングを60秒にする以外は上記と同じ条件(条件2)で、同様に300サンプルのF2に対しPCRを行ったところ、組み替え率が22%であったので、flo2遺伝子座は62.5cMまたは106.5cMの付近にあることが明らかになった。 85-5-1(In):CCAGGATCTTGGGGCCTTCA(配列番号7) 85-3-4(In):CTCCGGCTCTCTGTCGTCAC(配列番号8) 85-5-1(Jp):CCAGGATCTTGGGGCCTTGA(配列番号9) 85-3-4(Jp):CTCCGGCTCTCTACCGTCGC(配列番号10) これらの結果より、flo2遺伝子座は105cM付近にあることが示唆されたので、その近傍でPCRを行うことにより、より詳細なマッピングを行った。 【0033】 まず、106cMの位置にある以下のプライマーを用い、条件2で、同様に500サンプルのF2に対しPCRを行ったところ、組み替え率が3.87%であったので、flo2遺伝子座は102cMまたは109.7cMの付近にあることが明らかになった。 106-5-3(In):ACCGTTGACTTTTTAGCACA(配列番号11) 106-3-2(In):CCATGCCAACGTTTGACTAT(配列番号12) 106-5-3(Jp):ACCGTTAACTTTTTAGCATA(配列番号13) 106-3-2(Jp):CCGTGCTAACGTTTGACTGT(配列番号14) 【0034】 さらに、105cMの位置にある以下のプライマーを用い、条件2で、同様に270サンプルのF2に対しPCRを行ったところ、組み替え率が4.66%であったので、flo2遺伝子座は100.1cMまたは109.5cMの付近にあることが明らかになった。 105-5-3(In):CTTGTGTTTTGCAATCCTCT(配列番号15) 105-3-1(In):CCTTAGATGAACTTATTCTT(配列番号16) 105-5-3(Jp):CTTGTGTTTTTCAATCCTTT(配列番号17) 105-3-1(Jp):CCTTAGATAAACTTATTCCT(配列番号18) 【0035】 これらの結果より、flo2遺伝子座は109.6cM付近にあることが示唆された。 【0036】 さらに、110cM近傍のSSR(マイクロサテライト)マーカーを用いてより精密なマッピングを行った。多数のflo2の表現型を示すF2個体に対し、109.6cM付近にあるSSRマーカー(217951、218042、218345、RM8217、218767、218787、218801)(詳細は表1に示す)を調べたところ、図1に示すように(白抜きの領域がJaponica由来であり、斜線の部分がIndica由来である。)、218042〜218787のDNA領域の由来と表現型が常に一致し、この結果、flo2遺伝子座はこの領域の約37kbの範囲に存在することが明らかになった。 【0037】
【0038】 ==flo2遺伝子の同定== 37kbのDNAに対し、ORFの検索を行ったところ、(A)OSJNBa0033G05.19(297)、(B)OSJNBa0033G05.20(802)、(C)OSJNBa0033G05.21(575)、(D)OSJNBa0070011.2(1721)の4つの遺伝子(A)〜(D)が37kb 内に存在し、flo2遺伝子の候補になった(カッコ内はアミノ酸数)。そこで、flo2変異型EM37変異体の塩基配列を決定したところ、(D)OSJNBa0070011.2遺伝子において、配列番号1に示すDNAの第9981番目のGがAに置換し、その結果、本来828番目のトリプトファンをコードするコドンが、ストップコドンに変異していた(図2)。一方、他の3つの遺伝子には、変異は無かった。 【0039】 また、野生型イネとEM37変異体において、RNAを単離し、RT−PCRによってこれらの4つの遺伝子の発現を調べた(図3)。逆転写酵素はReverTraAce(TOYOBO社)を用い、条件は添付のプロトコールに従った。プライマーペアは、それぞれ、 A:GTCATGGGCGGGTCCAAG(配列番号31) GGCAGGCTCTGTCGAAAC(配列番号32) B:TTGGTTATGCTGGTCCTT(配列番号33) TGGGCTCTAAGAACTAGAC(配列番号34) C:GAAGATCTGCCAGCAATGG(配列番号35) GCGAATCACGGAAGATTGG(配列番号36) D−1:CTCAATACTCGGAGTGGTT(配列番号37) TATTGGCAGGCATGTTCTC(配列番号38) D−2:TTAGGCCGTGTGGTAGAG(配列番号39) GGACCACAAACTGCTACA(配列番号40) を用い、94℃で30秒−55℃で30秒−72℃で3分のサイクルを30サイクル行なった。図3に示すように、野生型と比べ、EM37においては、OSJNBa0070011.2遺伝子(D)の発現は低下していた。他の遺伝子に関しては、遺伝子AはEM37の方が発現量が高く、遺伝子Bは両者とも発現が極めて低く、遺伝子B、遺伝子Cともに発現量に変化がなかった。 【0040】 これらの結果より、OSJNBa0070011.2遺伝子が目的のflo2変異の原因遺伝子(floury-2遺伝子)であることが明らかになった。従って、配列番号1に示すDNAの第9981番目のGがAに置換した変異植物や、floury-2遺伝子の機能を低下させた変異植物を作製すれば、低アレルゲン性イネであるflo2変異体を作製することができる。また、上記floury-2遺伝子の遺伝子関連物質は、低アレルゲン植物やflo2変異体のマーカーとなり得る。 【図面の簡単な説明】 【0041】 【図1】本発明の実施例において、SSRマーカーを用いて作製されたマップを表す図である。I(斜線)はIndica由来のDNA、JはJaponica由来のDNAを表す。 【図2A】本発明の実施例において、OSJNBa0070011.2遺伝子近傍の塩基配列と、OSJNBa0070011.2遺伝子がコードするアミノ酸配列を並列させた図である。白抜きで表したGは、EM37変異体において、Aに置換している塩基である。ここでは、連続した配列を図2A〜図2Jに分けて示した。 【図2B】図2Aに示した配列の続きである。 【図2C】図2Bに示した配列の続きである。 【図2D】図2Cに示した配列の続きである。 【図2E】図2Dに示した配列の続きである。 【図2F】図2Eに示した配列の続きである。 【図2G】図2Fに示した配列の続きである。 【図2H】図2Gに示した配列の続きである。 【図2I】図2Hに示した配列の続きである。 【図2J】図2Iに示した配列の続きである。 【図3】本発明の実施例において、SSRマーカーを用いて行なったマッピングで特定された37kbの領域内に存在する4つの遺伝子の発現をRT−PCRで検出した結果を示す図である。WTは野生型のイネ、EMはEM37のイネにおける発現を示す。矢印は、EM37変異体において、野生型イネで検出されるバンドが検出されないことを示している。
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| 【出願人】 |
【識別番号】803000115 【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
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| 【出願日】 |
平成18年1月31日(2006.1.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000176 【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
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| 【公開番号】 |
特開2007−202427(P2007−202427A) |
| 【公開日】 |
平成19年8月16日(2007.8.16) |
| 【出願番号】 |
特願2006−22248(P2006−22248) |
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