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【発明の名称】 高ルテイン含有大豆
【発明者】 【氏名】植松 芳彦

【氏名】喜多村 啓介

【要約】 【課題】高ルテイン大豆及び高ルテイン加工食品を提供する。

【解決手段】高ルテイン形質を有する高ルテイン含量大豆であって、完熟大豆でルテイン含量が3.0mg/100g以上であることを特徴とする高ルテイン大豆、普通大豆(実用大豆品種)に高ルテイン形質を導入することにより、高ルテイン形質を安定に備えた高ルテイン大豆を作出することを特徴とする高ルテイン大豆の作出方法、及び上記の高ルテイン大豆を原料として用いて作製された高ルテイン加工食品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテインが高含有の高ルテイン形質を有する高ルテイン大豆であって、完熟大豆でルテイン含量が3.0mg/100g以上であることを特徴とする高ルテイン大豆。
【請求項2】
普通大豆と高ルテイン系統の野生大豆(ツルマメ)の交配後代から選抜、育成された高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆である請求項1に記載の高ルテイン大豆。
【請求項3】
実用大豆品種と高ルテイン系統の野生大豆(ツルマメ)の交配後代から選抜、育成された高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆である請求項1に記載の高ルテイン大豆。
【請求項4】
普通大豆と高ルテイン系統の野生大豆(ツルマメ)の交配後代から、高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆を選抜、育成することを特徴とする高ルテイン大豆の育種方法。
【請求項5】
普通大豆に、高ルテイン形質を導入することにより、高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆を作出することを特徴とする高ルテイン大豆の作出方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の高ルテイン大豆を原料として用いて作製されたことを特徴とする高ルテイン加工食品。
【請求項7】
加工食品が、高ルテイン納豆、高ルテイン豆腐又は高ルテイン豆乳である請求項6に記載の高ルテイン加工食品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテイン含量が高い高ルテイン含有大豆に関するものであり、更に詳しくは、完熟大豆でルテインを3.0mg/100g以上含有する高ルテイン形質を安定に保持した高ルテイン含有大豆(以下、高ルテイン大豆と記載する。)及び当該高ルテイン大豆を加工して得られる高ルテイン大豆加工食品に関するものである。本発明は、多数の普通大豆と野生大豆(ツルマメ)の交配後代における分析から、遺伝的支配による高ルテイン形質を安定に保持した高ルテイン大豆を作出できることを実験的に実証すると共に、実用的な高ルテイン大豆作出のための育種技術を確立し、高ルテイン大豆関連技術として完成されたものであり、新規高ルテイン大豆及び当該高ルテイン大豆の育種方法を提供すると共に、当該高ルテイン大豆を原料として利用して作製した新規高ルテイン大豆加工食品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ルテインは、カロテノイドという色素の1種であり、カロテン系の二次代謝産物であるが、近年、眼の白内障や加齢黄斑変性症等に対して予防効果を持つ機能性成分として注目されている。このルテインは、例えば、ケール(青汁)やホウレンソウに多く含まれている。一方、これまで、普通大豆や野生大豆(ツルマメ)のルテイン含量の品種・系統間差については、ほとんど知られていない。
【0003】
従来、Shaoらにより、高ルテイン含有量の野菜として、上位からケール(400mg/100g)、ホウレンソウ(10mg/100g)、レタス・ブロッコリー(2.5mg/100g)について報告されている(非特許文献1)。また、大豆では、Monmaらにより、緑豆、登熟中の種子(枝豆時)にルテイン含量が多いことが報告されている(非特許文献2)。
【0004】
それによると、大豆のルテイン含有量は、開花後25日の未熟種子で最も高く、2.4mg/100gという結果が得られている。しかし、大豆は、成熟するに従って、ルテイン含量が減少する傾向にあり、これまで、完熟大豆で高ルテイン含有量を示すものは知られていなかった。
【0005】
【非特許文献1】The science behind lutein,Toxicology Letters, 150 (2004) 57-60
【非特許文献2】Carotenoid Components inSoybean Seeds Varying with Seed Color and Maturation Stage, Biosci. Biotech.Biochem., 58 (5), 926-930 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、食品原料として重要な大豆に着目し、完熟大豆で高ルテイン含有量の高ルテイン大豆の作出及びその加工食品としての利用を可能とする新しい高ルテイン大豆及びその大豆加工食品を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、例えば、普通大豆(黄大豆)と野生大豆(ツルマメ)の交配後代や天然資源等から、高ルテイン形質を安定に備えた新規高ルテイン大豆が得られる可能性があること及び当該高ルテイン大豆から高ルテイン大豆加工食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、遺伝的な形質として高ルテイン形質を安定に保持する新規高ルテイン大豆を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記高ルテイン大豆を作出するための育種方法、作出方法を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、上記高ルテイン大豆を原料として用いて作製した高ルテイン大豆加工食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)ルテインが高含有の高ルテイン形質を有する高ルテイン大豆であって、完熟大豆でルテイン含量が3.0mg/100g以上であることを特徴とする高ルテイン大豆。
(2)普通大豆と高ルテイン系統の野生大豆(ツルマメ)の交配後代から選抜、育成された高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆である前記(1)に記載の高ルテイン大豆。
(3)実用大豆品種と高ルテイン系統の野生大豆(ツルマメ)の交配後代から選抜、育成された高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆である前記(1)に記載の高ルテイン大豆。
(4)普通大豆と高ルテイン系統の野生大豆(ツルマメ)の交配後代から、高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆を選抜、育成することを特徴とする高ルテイン大豆の育種方法。
(5)普通大豆に、高ルテイン形質を導入することにより、高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆を作出することを特徴とする高ルテイン大豆の作出方法。
(6)前記(1)から(3)のいずれかに記載の高ルテイン大豆を原料として用いて作製されたことを特徴とする高ルテイン加工食品。
(7)加工食品が、高ルテイン納豆、高ルテイン豆腐又は高ルテイン豆乳である前記(6)に記載の高ルテイン加工食品。
【0009】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、高ルテイン形質を有する高ルテイン含有大豆であって、完熟大豆でルテイン含量が3.0mg/100g以上であることを特徴とするものである。本発明では、上記高ルテイン大豆として、例えば、普通大豆と高ルテイン系統の野生大豆(ツルマメ)の交配後代から選抜、育成された高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆、納豆用、豆腐用等の実用大豆品種と高ルテイン系統の野生大豆(ツルマメ)の交配後代から選抜、育成された高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆、その他、遺伝資源や天然資源、任意の交配育種による高ルテイン大豆、高ルテイン形質を導入した高ルテイン大豆等が例示される。しかし、本発明の高ルテイン大豆は、これらに制限されるものではなく、本発明では、高ルテイン形質を安定に保持した高ルテイン大豆であれば全て本発明の対象とされる。
【0010】
本発明では、先ず、遺伝資源として保存されている多数の普通大豆(黄大豆)及び野生大豆(ツルマメ)の種子中のルテイン含量を調査し、ルテインを多く含有するツルマメを同定した。ルテイン含量の調査は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で種子のルテイン含量を測定することにより行った。その結果、普通大豆では、ルテイン含量は、約0.16〜0.31mg/100gであったが、ルツマメでは、約2.16〜3.28mg/100gであり、ルテイン含量が普通大豆品種の数倍以上に増大したツルマメが複数系統見出された。また、普通大豆はルテイン含量が低く、ツルマメはルテイン含量が高い傾向を有していた。
【0011】
次に、上記普通大豆及びツルマメの後代の増殖種子のルテイン含量を調べた結果、保存種子と同様のルテイン含量を有することが示された。即ち、ルテイン高含有性を示したツルマメ系統と普通大豆品種を温室と圃場で栽培し、増殖した種子のルテイン含量を調査したところ、いずれの品種・系統においても、増殖した種子は、遺伝資源として保存された種子と同程度のルテイン含量を示したことから、種子中のルテイン含量は、遺伝的支配の強い形質であると考えられた。そこで、これらの知見を基礎として、数倍〜10倍程度のルテイン含量差がある普通大豆品種とツルマメ系統の複数の組合せ交配後代を養成してルテイン高含量性の遺伝支配様式の解析を進めた。
【0012】
本発明では、上述のように、任意の普通大豆品種と任意のツルマメ系統の複数の組合せや交配で、組換え近交系(RIL)の育成を行ったが、ここでは、一例として、十系780号(♀)と日高4号(♂)を交配して組換え近交系(RIL)を育成した事例に基づいて説明する。しかし、本発明では、植物材料は、これらに制限されるものではなく、任意の植物材料を使用することができる。
【0013】
これらの交配後代において、F〜F世代では、例えば、任意に選んだ個体について、播種、栽培し、高ルテイン含量性を評価して個体を選抜し、F〜F世代では、各世代、例えば、高ルテイン含量性の家系から個体を選抜し、次世代を育成して、準同質遺伝子系統を育成するために、各世代、各家系の1個体より得られた種子3〜5粒を栽培して、組換え近交系(RIL)を育成した。本発明において、高ルテイン大豆とは、普通大豆の完熟大豆で、ルテインの含量が3.0mg/100g以上であるルテイン高含量性大豆を意味するものとして定義される。本発明の高ルテイン大豆は、高ルテイン含量性の形質が導入されて安定に保持されているルテイン高含量性の普通大豆であれば、その作出、育種過程の如何にかかわらず、本発明の範囲に含まれる。即ち、本発明の高ルテイン大豆としては、例えば、人為的手段により高ルテイン含量性が導入された大豆、通常の育種の過程で作出された大豆、遺伝資源や天然資源として見出された大豆、自然交配により高ルテイン含量性が保持された大豆等が例示される。しかし、これらに制限されるものではなく、適宜の形で高ルテイン含量の遺伝形質が導入された高ルテイン大豆であれば、本発明の範囲に含まれる。
【0014】
これらの植物材料の育成過程におけるルテイン高含量性と大豆形質の選抜、評価については、上記のものに制限されるものではなく、高ルテイン含量の形質で且つ農業適性に優れた形質を有する品種を選抜する観点から、任意の選抜及び評価方式を採用することができる。本発明では、後記する実施例に示されるように、高ルテイン系統と普通大豆の交配後代における分析から、完熟大豆で、ルテイン含量が約3.0〜4.0mg/100gの高ルテイン大豆が得られることが実証された。
【0015】
普通大豆では、完熟大豆のルテイン含量は、通常、約0.1mg/100gから最大でも約0.5mg/100gであることから、本発明により育成された高ルテイン大豆は、通常の5〜10倍のルテイン含量を有していることになる。また、この高ルテイン含量の形質は、後代に遺伝する遺伝的形質であることが実験的に確認された。このことから、本発明の方法により、食用(実用)大豆品種に、ルテイン高含量性の遺伝的形質を導入することが実現可能であることが分かった。
【0016】
本発明により、普通大豆と高ルテイン系統の野生大豆(ツルマメ)の交配後代から、高ルテイン形質を備えた高ルテイン大豆を選抜、育成することを特徴とする高ルテイン大豆の育種方法が提供される。本発明においては、例えば、高ルテイン系統(ツルマメ)と納豆用、豆腐用等の実用大豆品種を交配して、これらの食用品種に、ルテイン高含量性の形質を導入することができる。本発明では、植物材料としては、任意の普通大豆と高ルテイン系統(ツルマメ)を使用することにより、例えば、北米大豆品種や中国大豆品種を含む任意の普通大豆にルテイン高含量性の形質を導入して、高ルテイン大豆を開発することが可能であり、本発明では、植物材料の種類、組合せ及び育成過程は、特に制限されるものではなく、これらは、その育成目的に応じて任意に設定することができる。
【0017】
次に、本発明では、上記高ルテイン大豆を原料に用いた高ルテイン加工食品を製造し、提供することが可能である。この場合、高ルテイン大豆加工食品としては、好適には、例えば、ルテインの含有量が高い納豆、豆腐、豆乳、味噌、醤油、テンペ、大豆もやし、枝豆、きな粉、ゆば、大豆タンパク質などの大豆加工食品あるいは大豆含有食品が例示されるが、これらに制限されるものではない。本発明は、あらゆる種類の大豆加工食品に適用されるものであり、また、本発明では、上記高ルテイン大豆加工食品の種類、その製造方法及び製造条件などは、特に制限されるものではなく、また、これらについては、加工食品製造の通常の技術を適宜使用することが可能である。
【0018】
本発明では、後記する実施例に示したように、種子のルテイン含量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、測定波長450nmで測定することにより、従来方法と比べて、大豆のルテイン含量を高精度に測定することができる。この方法は、これまでの方法を改良し、ごく少量からでもルテインを測定することができるようにした新しい測定方法である。本方法の開発により、種子のルテイン含量を高精度に分析可能になったことが本発明の高ルテイン大豆の開発を可能にしたものである。
【0019】
本発明の高ルテイン大豆を原料として用いることにより、ルテインを添加、配合することなしに、原料大豆の成分に由来するルテインを高含量で含有する、ルテインの生理学的機能性を保持した機能性食品を提供することが可能となる。この場合、本発明では、ルテイン高含有の機能性食品の形態としては、特に制限されるものではなく、例えば、液状、固体状、粉状など任意の製品形態の機能性食品を製造し、提供することが可能である。
【0020】
従来法では、例えば、大豆では、緑豆及び登熟中の種子(枝豆時)にルテイン含量が多いことが報告されており、開花後25日の未熟種子で最も高く、2.4mg/100gという結果が報告されていたが、完熟大豆では、これが大幅に減少する傾向にあり、従来、完熟大豆で高ルテイン大豆を利用して高ルテイン大豆加工食品を製造することは不可能であった。これに対して、本発明では、本発明の方法を用いることにより、通常の普通大豆に比べて、約5〜10倍以上のルテイン高含量性の遺伝形質が導入された高ルテイン大豆(完熟種子時)を創製することができると共に、当該高ルテイン大豆を原料として大豆加工食品を製造することにより、ルテインを添加、配合することなしに、高ルテイン大豆加工食品を製造し、提供することが実現できる。
【0021】
本発明は、完熟大豆において、ルテイン高含量性は、遺伝的形質であることを解明した点、ルテイン高含量性の遺伝形質を導入した新規高ルテイン大豆を作出し、提供することを実現可能にした点、及びルテイン高含量性原料大豆に由来するルテイン成分を利用して、高ルテイン加工食品を、ルテインを添加、配合することなく、製造し、提供することを実現可能にした点、に最大の特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)完熟大豆で高ルテイン形質を遺伝形質として備えた高ルテイン大豆を作出し、提供することができる。
(2)上記高ルテイン大豆を作出するための高ルテイン大豆の育種方法を提供することができる。
(3)上記育種方法により、高ルテイン大豆で且つ農業適性に優れた品種を選抜し、育成することができる。
(4)高ルテイン大豆を原料として用いることで、ルテインを添加、配合することなく、ルテイン含量が高い高ルテイン加工食品を製造し、提供することができる。
(5)上記方法により、高ルテイン納豆、高ルテイン豆腐等の高ルテイン加工食品を提供することができる。
(6)ルテインの生理学的機能性を具備した高ルテイン含量の機能性食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
本実施例では、遺伝資源として保存されている多数の普通大豆(黄大豆)及び野生大豆(ツルマメ)の種子中のルテイン含量を調査し、ルテインを多く含有するツルマメを同定した。すなわち、ジーンバンク等(農業生物資源研究所ジーンバンク及び北海道大学)に保存の大豆(490系統)とツルマメ(610系統)を試料として用い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で種子のルテイン含量を調査した。
【0025】
種子のルテイン含量の測定方法は、次の方法に従った。即ち、種子粉25mgをアセトン:エタノール(1:1)に分散し、超音波処理、撹拌・遠心した上層液20μlをアセトニトリル/エタノール(90/10)を移動層として逆相カラムで分離した。測定波長450nmによりルテインを検出し、内部標準β−apo−8’−carotenalの溶出ピーク面積との比較によりルテイン含量を算出した。
【0026】
その結果、ルテイン含量が普通大豆品種の数倍以上に増大したツルマメを複数系統見出した。これらの結果を表1に示す。また、大豆は、総じてルテイン含量が低く、一方、ルツマメはルテイン含量が高い傾向を示した。図1に、高ルテイン含有のツルマメ系統09092と大豆品種ツルムスメのHPLC分離パターンを示した。
【0027】
次に、ルテイン高含有量性を示したツルマメ系統と普通大豆品種を温室と圃場で栽培し、増殖した種子のルテイン含量を調査した。その結果、いずれの品種・系統においても、増殖した種子は、遺伝資源として保存された種子と同程度のルテイン含量を示したことから、種子中のルテイン含量は、遺伝的支配の強い形質であることが分かった。これらの結果を表1に示した。ツルマメの高ルテイン形質は、大豆の栄養機能性を高める上で重要な特性であると考えられる。
【0028】
【表1】


【実施例2】
【0029】
本実施例では、野性大豆(ツルマメ)のルテイン高含有性の遺伝的支配様式の解析を進めるために、数倍〜10倍程度のルテイン含量差がある大豆品種とツルマメ系統の複数の組合せ交配後代を養成した。材料の交配及びF種の採種は、試験農場で行われ、また、F世代以降の栽培は、圃場で行われた。尚、材料は、北海道大学で保管されていた実験集団、十系780号X日高4号を用いた。
【0030】
材料として、普通大豆のG.max subsp.max(十系780号、♀)と、野生大豆(ツルマメ)のG.max subsp.soja(日高4号、♂)を用いた。F種子は、3個体のFよりバルクで採種し、採種後の種子についてルテイン高含量性を評価した。F種子は、153個体を圃場で栽培し、個体別に採種後ルテイン高含量性を評価した。
【0031】
種子は、153個体中、任意に選んだ81個体(家系)について、家系あたり1個体より得られた任意の種子3〜5粒を圃場で栽培し、得られた個体を採種後、ルテイン高含量性を評価した。
【0032】
〜F世代についても、各世代において、各家系の1個体より得られた種子3〜5粒を栽培して、81個体(家系)を維持した。このようにして育成された組換え近交系(Recombinant Inbred Line: RIL)を用いて、ルテイン含量を評価した。図2に、植物材料の育種過程を示す。
【0033】
図3に、十系780号(普通大豆)と日高4号(野生大豆)の交配後代から得られた組換え近交系RILs(n=85)の種子に含まれるルテイン含量の分布(Distribution)を示す。また、図4に、組換え近交系RILs(n=83)のルテイン含量の年次間相関について示す。
【0034】
以上により、これまで完熟大豆では見られなかった高ルテイン含有系統の高ルテイン大豆を作出できることが分かった。普通大豆のルテイン含量は、通常、0.1〜0.5mg/100gであるが、本発明の高ルテイン系統では、ルテイン含量は、3.0〜4.0mg/100gであり、5〜10倍のルテインを含有することが分かった。また、高ルテイン形質は、後代に遺伝することが確認された。
【実施例3】
【0035】
本実施例では、植物材料として高ルテインツルマメ(♂)と実用大豆品種(♀)を交配、育種して、実用品種として有用な高ルテイン大豆を作出した。高ルテインツルマメ(ルテイン含有量3.0mg以上)と実用大豆品種(ルテイン含有量0.5mg以下)を交配、栽培した。得られた個体より、10粒のFを採種し、圃場で栽培した。次いで、500個体のFを任意に個体別に採種し、全個体のルテイン含有量を測定し、ルテインが高含量の個体を選抜(選抜基準:3.0mg以上を目標)した。
【0036】
次に、高含量個体から得た種子500粒を播種、栽培し、得られた個体を個体別に採種し、ルテイン含量を測定し、同様にして、ルテインが高含量の個体を選抜した。同様に、これらの育種過程をF世代まで繰り返した。
【0037】
次に、ルテイン高含量個体から得たF世代の種子500粒を播種、栽培し、得られた個体を個体別に採種し、ルテイン含量を測定した。ルテインが高含量で、且つ農業的に優れた形質を持った100個体をルテイン含量が3.0mg以上を目標として選抜した。
【0038】
次に、1個体を1系統として、選抜した100系統を播種、栽培し、得られた個体を系統別に収穫し、ルテイン含量及び農業形質を評価した。その結果、ルテインが高含量(3.0mg以上)で、且つ農業的に優れた形質を持った10系統を選抜できた。
【0039】
続いて、選抜した10系統を播種、栽培し、得られた個体を系統別に収穫し、同様にして、ルテイン含量及び農業形質を評価した。その結果、ルテインが高含量(3.0mg以上)で、且つ農業的に優れた形質を持った1系統を選抜できた。得られた系統を評価した結果、ルテイン含有量は、3.0〜4.0mg/100gであり、ルテイン高含量の形質を保持し、且つ農業的に優れた形質を有しており、実用的な高ルテイン大豆として有用であることが確認された。
【実施例4】
【0040】
本実施例では、上記により開発された高ルテイン大豆を原料として用いて、納豆を製造した。即ち、吸水した原料大豆(高ルテイン大豆)を高圧で蒸し、納豆菌を接種した煮豆を発酵させるという工程で納豆を製造した。15〜20℃で18〜24時間水に浸漬した浸漬大豆を、加圧釜に入れ、20分前後で蒸煮した。菌の接種は、市販納豆菌を使用し、10〜10個/蒸煮大豆gになるように接種した。これを、納豆用PSP容器に充填した後、表面を有孔ポリエチレンフィルムで覆い、蓋をかぶせ、温度38〜42℃で14〜20時間発酵させた。その結果、粘り、香り、外観が良好であり、ルテインの含量が高い高ルテイン納豆が得られた。
【実施例5】
【0041】
本実施例では、上記により開発された高ルテイン大豆を原料として用いて、常法の豆腐製造工程により、高ルテイン豆腐を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上詳述したように、本発明は、高ルテイン大豆及びその加工食品に係るものであり、本発明により、完熟大豆で高ルテイン形質を安定に備えた高ルテイン大豆を作出し、提供することができる。また、本発明は、上記高ルテイン大豆を原料として用いた高ルテイン加工食品を提供することができる。ルテインの効能としては、加齢性網膜黄斑変性症や白内障の眼病の予防効果が示唆されているが、本発明の高ルテイン大豆及びその高ルテイン加工食品により、それらの機能を有する機能性食品を提供することが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ツルマメ系統09092と大豆品種ツルムスメのHPLC分離パターンを示す。
【図2】植物材料の育成過程を示す。
【図3】組換え近交系RILs(n=85)の種子中のルテイン含量の分布を示す。
【図4】組換え近交系RILs(n=83)のルテイン含量の年次間相関を示す。
【出願人】 【識別番号】000108616
【氏名又は名称】タカノフーズ株式会社
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人 北海道大学
【出願日】 平成17年8月16日(2005.8.16)
【代理人】 【識別番号】100102004
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 政彦


【公開番号】 特開2007−49915(P2007−49915A)
【公開日】 平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願番号】 特願2005−236179(P2005−236179)