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【発明の名称】 粉砕木質チップを用いた緑化基盤ならびに緑化基盤造成方法
【発明者】 【氏名】岡田 光芳

【氏名】遠藤 光弘

【氏名】寺坂 俊一

【氏名】岡部 雅子

【要約】 【課題】粉砕木質チップをそのまま発生土と混合して緑化基盤材として使用するにあたり、(1)窒素飢餓の問題、(2)植生期間中に生育基盤が侵食されるという問題、(3)基盤材の通気性の悪さ及び過剰固化の問題、(4)接合材から環境ホルモンが溶出する問題を、同時に解決する。

【解決手段】未分解木質チップと発生土等を混入した緑化基盤材に、セメント鉱物・粘土鉱物および植物育成助剤を含むことを特徴とする緑化基盤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粉砕木質チップを含む緑化基盤材、(B)セメント鉱物、(C)粘土鉱物および(D)植物育成助剤を含むことを特徴とする緑化基盤。
【請求項2】
前記(A)緑化基盤材が、さらに(E)発生土または客土を含むことを特徴とする、請求項1に記載の緑化基盤。
【請求項3】
前記(A)緑化基盤材が、さらに(F)厚層基材を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の緑化基盤。
【請求項4】
前記(F)厚層基材が、バーク堆肥、ピートモスおよび籾殻のいずれかの1または2種以上から選択されることを特徴とする請求項3に記載の緑化基盤。
【請求項5】
前記(A)緑化基盤材が、(G)アスペルギルス、ムコールおよびリゾープスから成る糸状菌ならびにハンセヌラである酵母菌を含有した珪藻土(土壌微生物肥効促進剤)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の緑化基盤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の緑化基盤材を法面に吹き付けることを特徴とする緑化基盤の造成方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の緑化基盤材を、法面にバックホウおよび/または油圧シャベルで転圧することを特徴とする緑化基盤の造成方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕木質チップにセメント鉱物、粘土鉱物および植生育成助剤を混合して、法面を緑化する緑化基盤ならびにそれを造成する工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題に対する意識の向上から環境負荷の低減と自然との共生を図る循環型社会の形成に向け早急な取り組みが求められている。特に、再生資源の有効利用が高まり、建設現場等で発生する伐採木や抜根を粉砕してチップ化し、堆肥化処理または堆肥化せずに有機高分子系接合剤もしくはアスファルト系接合剤を用いた厚層基材吹付などの法面緑化の基盤材として用いる試みがなされている(例えば、特許文献1)
【0003】
堆肥化には木質チップをヤードに運搬し、半年以上の日数を掛ける必要があった。さらに運搬、ヤード、運搬の作業が入る等、発生現場でのリサイクルというには問題がある。また、堆肥化していない未分解木質チップをそのまま用いる場合には、その木質チップを分解する微生物と植物体との間で窒素の奪い合いに起因する窒素飢餓が生じ、さらに、有機物分解時にはフェノール酸等の有害物質、発酵熱等が発生し、植物の育成が阻害される問題が生じている。
【0004】
逆に、木質チップをそのまま、あるいは現地発生土と混合すると、その中の埋土種子もしくは飛来種子が有効に利用できるため、外来種子の侵入を阻止でき、また周辺の環境に見合った緑化が可能になり、環境負荷の低減と自然との共生を図る等の利点も有する。
【0005】
【特許文献1】特開2006−20553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、木質チップをそのままもしくは現地発生土と混合して利用した場合、埋土種子からの発芽生育は牧草種などと比較して時間を要する場合が多い。さらに発芽率や種子の含有分布の偏りから植生が直ちに成立しない期間が想定されているため、この期間に生育基盤が侵食されないように保全する必要がある。
これを防ぐ手段として、有機高分子系接合剤またはアスファルト系接合材を使用する。しかし、これらを用いて施工しても造膜強化によって通気性が悪化したり、基盤剤が過剰に固化したりするため、飛来等の種子の供給があっても定着しないで流亡、飛散する例が多く、発芽が困難であるとされてきた。この他、有機高分子系接合剤またはアスファルト系接合剤からの環境ホルモン溶出等の問題も懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、粘土鉱物が粉砕木質チップの急速発酵を抑えて生育障害を防ぎ、基盤をやわらかく仕上げることを見出した。さらに、セメント鉱物および粘土鉱物を含む無機系の接合剤が緑化基盤に適度な粘性を与えて、緑化基盤が滑り落ちるのを防ぐことができる。
以上の知見に基づき、本発明は、(A)粉砕木質チップを含む緑化基盤材、ならびに(B)セメント鉱物、(C)粘土鉱物および(D)植物育成助剤を含むことを特徴とする緑化基盤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、建設現場で発生する粉砕木質チップを早期に有効利用することができ、ラス金網を用いなくても、法面等の緑化計画面に安定して緑化造成できる。また、地域の地盤や気象条件に合った埋土種子からの発芽生育や飛来種子等による植物の定着性が高いために外来種を用いることなく、地域の特性と環境を重視した植生群落を容易に成立でき、容易な管理維持によって永続性の高い緑化が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の(A)粉砕木質チップは、建設現場や開発現場等で発生する伐採木、抜根および剪定枝等の木質材を機械により粉砕する。粉砕する手段は、特に限定されず、通常当業者が使用する手段を用いることができる。粉砕木質チップは、堆肥化等の発酵させることは必要とせずそのまま用いるが、保管中に一部腐朽等が起こっていても使用することはできる。
【0010】
粉砕木質チップは、通常10〜70mmとなるように粉砕する。使用する粉砕木質チップのサイズは施工機械により異なる。例えば、スクイズポンプ式客土吹付機(ミニクリート)の場合は木質チップの粉砕サイズが10〜20mm、モルタルコンクリート吹付機の場合は30〜40mm、バックホウ等による法面へ転圧する場合は50〜70mm(この時70mm以上でも可能な場合がある)となる。
粉砕木質チップは、通常、施工前容積で本発明の緑化基盤材の20〜100容量%であり、好ましくは50〜100容量%である。
【0011】
本発明は、緑化基盤材に対して、(B)セメント鉱物、(C)粘土鉱物および(D)植物育成助剤を加えて、目的の緑化基盤を造成する。
本発明で使用するセメント鉱物は、Ca、Si、Alを主成分とする。具体的には、本願発明のセメント鉱物として、JISセメント、混合セメント、ソイルセメントを使用することができる。また、早期に強度を求める場合は超速硬セメントを使用することができる。
【0012】
本発明で使用する粘土鉱物は、モンモリナイト、バントナイト、イライト、カオリン、ハロイサイト、ゼオライト、バーキュライト、アロフェン等が挙げられる。
粘土鉱物における、例えばバーキュライト、アロフェンは粉砕木質チップの急速発酵を抑えて生育障害を防ぎ、また緑化基盤をやわらかく仕上げることができる。
【0013】
従来のように、接合材として樹脂系有機接合剤を使用した緑化基盤は、樹脂の造膜作用により基盤材料を結合させていくため、その基盤の保水性、通気性が悪くなって土壌微生物の繁殖を阻害し、木質チップや現地発生土に含まれる種子育成を阻害する。本発明のセメント鉱物を使用した場合は、その中に含有されるセメント水和物はアルカリ性を示すため土中のアルミニウムを不活性化させて作物根を育てる。さらに粘土鉱物から放出されるアルミニウムは粉砕木質チップと結合し、腐食分解能機能を抑制する。これらの二つの作用が、粉砕木質チップの急速な発酵を抑えて土中の窒素飢餓を防ぐ。さらに後述の土壌微生物肥効促進剤によって、土壌微生物の繁殖を促進させて緑化植物の育成を図ることができる。
【0014】
本発明で使用する植物育成助剤は、石粉、フライアッシュ、スラグ微粉末、シリカ微粉末、靭殻灰などを使用することができる。これらの植物育成助剤は、セメントと緩慢な反応により固化して、長期的な耐久性のある安定した法面土壌を作るものが望ましい。
【0015】
本発明の(B)セメント鉱物、(C)粘土鉱物および(D)植物育成助剤を混合して、無機系接合材として使用することができる。ここで使用する無機系接合材は、通常(B)セメント鉱物を5〜50質量%、粘土鉱物1〜30質量%および植物育成助剤1〜70質量%含むがこれに限定されない。また、この無機系接合材は、(A)緑化基盤材に対して、通常10〜30kg/mで使用し、15〜25kg/mで使用することが好ましい。
【0016】
石粉、フライアッシュ、シリカ微粉末等の植物育成助剤、モンモリロナイト、ベントナイト、イライト等の粘土鉱物、およびセメント鉱物を含む無機系接合剤が、商品名「エコスティブラー(商標)」(小野田ケミコ株式会社製)の名称で市販されている。
【0017】
本発明の(A)緑化基盤材は、(E)発生土もしくは客土を使用することができる。これらは、開発現場および建設現場等で発生する土であり得る。例えば、表土(表層から10cm程度の土)を廃棄することなく有効に再利用する。表土を法面造成の生育基盤材として利用することで、主に埋土種子からの発芽育成により自生種主体の植生の回復を期待できる。発生土および客土は、通常、施工前容積で本発明の(A)緑化基盤材の10〜70容量%である。
【0018】
本発明の(A)緑化基盤材は、さらに(F)厚層基材を含むことができる。厚層基材として使用されるものであれば、特に限定されないが、好ましくは、バーク堆肥、ピートモスおよび籾殻のいずれを使用する。また、この厚層基材は、通常施工前容積で(A)緑化基盤材の20〜100容量%使用する。なお、厚層基材は吹付施工されることで圧縮されて縮小される場合があり、施工前の材料容積合計が100%越えることがある。
【0019】
本発明の(A)緑化基盤材は、さらに、(G)アスペルギルス、ムコールおよびリゾープスから成る糸状菌ならびにハンセヌラである酵母菌を含有した珪藻土を土壌微生物肥効促進剤として使用することができる。例えば商品名:三宝菌(株式会社三邦産業製)がこれに該当する。
これに含まれる糸状菌のアルペルギルス、ムコール、リゾープスや酵母菌のハンセヌラの胞子は、水分(有機物の30%質量比)、適度な温度(10℃から30℃)、酸素があれば発芽し、菌糸が伸びて繁殖する好気性菌である。この時菌は土中の窒素成分を分解し好気化されたアミノ酸化合物の前駆物質の形で植物に吸収させる。また、菌の成長過程で代謝産物として放出されるビタミンB1、B2、B6、B12と植物成長ホルモン(βインドール酢酸)、アミノ酸、酵素は土壌を膨軟肥沃化し、植物の育成を促進させる。
【0020】
またこの土壌微生物肥効促進剤を混合することによって、土壌を団粒化し、膨軟に肥沃化、酸性調整を図り、地温を高め冷害を回避し、過剰窒素を抑制すると共に、化学肥料の節約に寄与し、肥料の流亡や揮散を防止する。また、好気性菌によって、大量の窒素が菌に奪われて菌体タンパクとなる。菌体タンパクは法面斜面において雨で流亡することもなく、ガスとなって揮散することもない。植生生育中に温度がだんだん高くなったり、乾燥しすぎたり、分解する有機物が無くなったりすれば、徐々に胞子(種子)を作って菌体は死んで、自己分解して徐々にタンパクが無機の窒素となって植物に供給される。さらに土壌微生物促進剤に含まれる糸状菌のアスペルギルス、ムコール、リゾープスや酵母菌のハンセヌラは清酒、味噌などの醸造に用いられる安全な有機微生物なため、安全で環境に優しい菌である。
【0021】
本願で使用する土壌微生物肥効促進剤は、(A)緑化基盤材に対して通常0.05〜50.0kg/mの範囲で混合する。好ましくは0.4〜10.0kg/mの範囲で混合する。
【0022】
本発明は、前記(A)緑化基盤材を法面に吹付けて緑化基盤を造成する。この緑化基盤材を法面に吹き付ける方法は、当業者が通常行う方法を用いることができる。
例えば、(1)モルタルコンクリート吹付機を使用した場合は、所定サイズに破砕した木質チップ、エコスティブラー、肥料、土壌微生物肥効促進剤等、これらに加えて、場合によってはふるいにかけた発生土をそれぞれ所要量モルタル吹付機に一緒に投入し、ノズル先端で水と混合して法面に吹き付ける。
(2)ミニクリートを使用した場合は、所定サイズに破砕した木質チップ、エコスティブラー、肥料、土壌微生物肥効促進剤等、それに加えて、場合によってはふるいにかけた発生土及び混合水をそれぞれ所要量ミニクリートに投入し混合した後、法面に吹き付ける。
(3)転圧用バックホウ、油圧ショベルを使用した場合は、所定サイズに破砕した木質チップ、ふるいにかけた発生土、エコスティブラー、肥料、土壌微生物肥効促進剤等をバックホウ、油圧ショベル等の機械を用いて混合した後、混合物を法面に張り付ける。
さらに、(A)緑化基盤材を法面にバックホー、油圧ショベルで転圧して造成して緑化基盤とすることもできる。
【実施例】
【0023】
建設現場で発生した伐採木を50mm以下の大きさに粉砕した木質チップならびに発生土、厚層基材(バーク堆肥)、接合剤「商品名エコスティブラー(商標)」(小野田ケミコ株式会社製)、土壌微生物肥効促進剤「商品名三宝菌」、高度化成肥料(N:P:K=15:15:15)、種子(混合種:メドハギ、オーチャードグラス、クリーピングレッドフェスク)、比較として有機高分子系接合剤「商品名クリコート」を使用し、植物の発芽、生育状況を確認した。検討した配合を表1に示す。
【0024】
【表1】


【0025】
発芽ならびに生育状況写真を示した。以下の事項について検討した。
(1)樹脂系接合剤と無機系接合材の植物生育比較
(2)粉砕木質チップと厚層基材を無機系接合材で接合させた基盤とさらに土壌微生物肥効促進剤を添加した場合の植物生育比較
比較例は粉砕木質チップに有機高分子系接合剤を使用している。
【0026】
【表2】


【0027】
注)◎:良好
○:普通
×:不良
*1:配合した種子以外の品種であり、飛来種子または埋土種子による植生
【0028】
【表3】


【0029】
実施例ならびに比較例の結果から、無機系接合材(エコスティブラー)を使用した植生基盤材においては、発芽状況、植生状況において良好な結果が得られた。飛来種子または埋土種子による植生についても生育が確認できた。
また、試験の結果、接合材料としては、エコスティブラーが優れていること、土壌微生物肥効促進剤の添加効果を確認した。
一方、有機高分子系接合剤を使用した場合には、発芽状況、植生状況、飛来種子の育成状況については、いずれも不良であった。
【出願人】 【識別番号】000185972
【氏名又は名称】小野田ケミコ株式会社
【識別番号】506195550
【氏名又は名称】株式会社三邦産業
【識別番号】597134544
【氏名又は名称】岡部産業株式会社
【出願日】 平成18年6月7日(2006.6.7)
【代理人】 【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治

【識別番号】100084010
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 秀利

【識別番号】100094695
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 憲七

【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順

【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏


【公開番号】 特開2007−325527(P2007−325527A)
【公開日】 平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願番号】 特願2006−158532(P2006−158532)