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【発明の名称】 接木用台木、接木用穂木および接木処理済み苗木並びに接木用原木の切削装置
【発明者】 【氏名】西浦 芳史

【氏名】屋代 東

【要約】 【課題】作業性を向上させつつ穂木の台木に対する接合状態を良好なものにする。

【解決手段】接木用の原木Wに切削処理を施して長手方向に切削することにより、台木W1または穂木W2を形成させるものであり、原木Wを保持する原木保持台20を有し、この原木保持台20は、保持される原木Wの周方向で等間隔に備えられ、かつ、保持された原木Wに対し芯部に向けて原木Wの延びる方向に斜めに切り下ろす少なくとも3枚の切削刃物40を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接木用の原木に切削処理を施して長手方向に切削することにより得られる接木用台木であって、
所定の原木保持台に保持された原木に対し周方向で等間隔に備えられた少なくとも3枚の切削刃物が芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろされることによって形成されていることを特徴とする接木用台木。
【請求項2】
接木用の原木に切削処理を施して長手方向に切削することにより得られる接木用穂木であって、
所定の原木保持台に保持された原木に対し周方向で等間隔に備えられた少なくとも3枚の切削刃物が芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろされることによって形成されていることを特徴とする接木用穂木。
【請求項3】
請求項1記載の接木用台木に請求項2記載の接木用穂木を接木することによって形成されていることを特徴とする接木処理済み苗木。
【請求項4】
接木用の原木に切削処理を施して長手方向に切削することにより、台木または穂木を形成させる接木用原木の切削装置であって、
前記原木を保持する原木保持台を有し、
前記原木保持台は、保持される原木の周方向で等間隔に備えられ、かつ、保持された原木に対し芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろす少なくとも3枚の切削刃物を備えていることを特徴とする接木用原木の切削装置。
【請求項5】
前記切削刃物は、平行四辺形リンク構造における互いに平行な上下のリンクアームの内の下部のリンクアームが採用され、かつ、前記平行四辺形リンク構造のリンク運動によって刃先の延びる方向に向けてスライドしながら原木に対して切り下ろされるものであることを特徴とする請求項4記載の接木用原木の切削装置。
【請求項6】
前記原木保持台は、基台と、この基台の上部に当該基台と対向配置された、中央部に原木を通す装着孔の穿設された上部台と、この上部台の周縁に周方向に等間隔で固定された前記切削刃物を上下方向に向けて移動可能に保持する刃物保持部材とを備え、
前記切削刃物は、前記刃物保持部材に上下方向に向けて移動可能に保持される峰部と、この峰部の下端縁部に形成された切削刃と、前記峰部の上縁部に形成された操作部とを備え、
前記刃物保持部材は、前記切削刃物を上方位置へ向けて付勢する付勢部材を備えていることを特徴とする請求項4または5記載の接木用原木の切削装置。
【請求項7】
前記上部台は、前記装着孔に対して開閉可能な蓋体を有し、
前記蓋体は、前記装着孔を閉止した状態で原木の幹部が嵌り込む切欠きを有していることを特徴とする請求項6記載の接木用原木の切削装置。
【請求項8】
前記基台は、上面中央位置に原木の下端部が嵌り込む凹部を有していることを特徴とする請求項6または7記載の接木用原木の切削装置。
【請求項9】
前記切削刃物は3枚であることを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の接木用原木の切削装置。
【請求項10】
前記切削刃物は、上下で2段に形成され、下段の切削刃物は、台木用として調製された台木用原木に対し切削処理を施すものであり、上段の切削刃物は、穂木用として調製された穂木用原木に対し切削処理を施すものであることを特徴とする請求項4記載の接木用原木の切削装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、接木用の原木に切削処理を施して長手方向に切削することにより得られる接木用台木、接木用穂木および接木処理済み苗木並びに台木または穂木を形成させる接木用原木の切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているような接木用原木の切削装置(特許文献1では接木用切断機)が知られている。この接木用原木の切削装置は、蝶番により開閉自在とされた一対の基体と、各基体にそれぞれに上方から下方へ向かう斜めに設けられた刃物装着孔に上下動可能に装着される下端部に刃が形成された刃物と、各基体の各対向面に、上方から下方に向けてそれぞれ刃物装着孔と対応し、かつ、互いに対向した原木装着溝とを備えている。各刃物は、下端の刃先と反対側がコイルバネの付勢力で基体から突出する方向に向けて付勢されている。
【0003】
そして、一対の基体を開放して一方の基体の原木装着溝に原木の幹を嵌め込んだ状態で一対の基体を互いに閉止し、引き続き各刃物をコイルバネの付勢力に抗して押し下げることにより、原木の幹は、V字状に切断される。原木が接木の台木を目的とするものである場合、切断された原木の基端側が台木として使用される一方、原木が穂木を目的とするものである場合、切断された原木の先端側が穂木として利用される。
【0004】
かかる切削装置で原木が切断されることにより形成した台木の頂部にはV字溝が形成されている一方、同穂木には、V字溝に対応した先尖り部が形成されるため、穂木の先尖り部を台木のV字溝に嵌め込むことにより接木による苗木が形成される。
【0005】
また、特許文献2にも特許文献1のものと類似した切削装置(特許文献2では雌雄切削装置)が記載されている。この切削装置においては、台木の先端の周面にのみ切削刃により径方向に貫通しない状態で長手方向に延びる溝(雌型)が形成される一方、穂木の基端に前記雌型に対応した雄型が形成され、この雄型を雌型に嵌め込むことによって接木を行うようになされている。
【0006】
さらに、特許文献3には、台木の先端面にドリルで円錐凹孔を穿設する一方、穂木の基端部を刃物で切削することによって形成した前記円錐凹孔に対応する円錐突部を形成し、この円錐突部を円錐凹孔に挿入して接ぎ木する接木方法が記載されている。
【特許文献1】特公昭43−20207号公報
【特許文献2】特開昭48−13117号公報
【特許文献3】特開平6−339327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の接木用原木の切削装置にあっては、台木の上端面にV字溝が形成される一方、穂木の下端面に先尖り部が形成されるだけであるため、穂木の先尖り部を台木のV字溝に嵌め込んだだけでは、両者の接合状態が安定せず、従って、台木と穂木とが接合された状態で、接合位置にクリップを装着する操作が困難になって接木処理にその分手間がかかり作業性が劣るという問題点を有している。
【0008】
また、特許文献2に記載の切削装置にあっては、雌形が台木の周面にのみ設けられるだけであるため、穂木の雄型の雌型に対する接合状態がさらに不安定になるという問題点を有している。
【0009】
これらに対し、特許文献3に記載のものは、台木の先端面に形成された円錐凹孔に、穂木の円錐突部を挿入するようになされているため、台木と穂木との結合状態は安定したものになるが、台木の先端面にドリルで孔を明けて円錐凹孔を設けるとともに、穂木の基端部に切削加工を施して円錐突部を形成させなければならず、かかる作業は非常に面倒であり作業性が劣るという問題点を有している。
【0010】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであって、作業性を向上させつつ穂木の台木に対する接合状態を良好なものにすることができる接木用台木、接木用穂木および接木処理済み苗木並びに台木または穂木を形成させる接木用原木の切削装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、接木用の原木に切削処理を施して長手方向に切削することにより得られる接木用台木であって、所定の原木保持台に保持された原木に対し周方向で等間隔に備えられた少なくとも3枚の切削刃物が芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろされることによって形成されていることを特徴とする接木用台木である。
【0012】
かかる構成の接木用台木によれば、原木保持台に保持された原木に対して少なくとも3枚の切削刃物で芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろすことにより、切削刃物を境にして根がある側(根側)に多角錐状の凹部を有する接木用台木が形成される。
【0013】
かかる台木の多角錐状の凹部に、別途調製された穂木を差し込んだ状態で接合位置にクリップを装着することにより、台木および穂木の中心線が一致した状態で接木処理済みの苗木が形成される。
【0014】
このように、接木用台木には、原木保持台に保持された原木に対し周方向で等間隔に芯部に向けて原木の延びる方向に3枚の切削刃物で順次または同時に斜めに切り下ろすことにより多角錐状凹部が形成されているため、穂木の下端をこの多角錐状凹部に安定した状態で差し込むことが可能であり、両者の接合位置に対しクリップが容易に装着される。
【0015】
請求項2記載の発明は、接木用の原木に切削処理を施して長手方向に切削することにより得られる接木用穂木であって、所定の原木保持台に保持された原木に対し周方向で等間隔に備えられた少なくとも3枚の切削刃物が芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろされることによって形成されていることを特徴とする接木用穂木である。
【0016】
かかる構成の接木用穂木によれば、接木用穂木には、原木保持台に保持された原木に対して少なくとも3枚の切削刃物で芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろすことにより、切削刃物を境にして葉がある側(葉側)に多角錐状の凸部を有する接木用穂木が形成される。
【0017】
かかる穂木の多角錐状の凸部を、別途調製された台木の切削面の凹部に差し込んだ状態で接合位置にクリップを装着することにより、台木および穂木の中心線が一致した状態で接木処理済みの苗木が形成される。
【0018】
このように、原木保持台に保持された原木に対し周方向で等間隔に芯部に向けて原木の延びる方向に3枚の切削刃物で順次または同時に斜めに切り下ろすことにより原木の葉側の切削面に多角錐状凸部が形成されるため、かかる多角錐状凸部を台木の切削面に形成された所定の凹部に差し込むことにより、両者の接合位置に対しクリップが容易に装着される。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の接木用台木に請求項2記載の接木用穂木を接木することによって形成されていることを特徴とする接木処理済み苗木である。
【0020】
かかる構成の接木処理済み苗木によれば、台木の多角錐状凹部に、同一多角錐に設定された穂木の多角錐状凸部を嵌め込むことにより、たとえ台木の太さと穂木の太さとが異なっているような場合であっても各切削面が互いに密着状態で接合されるため、両者は確実に接合され、結果として得られた苗木の活着率が向上する。
【0021】
請求項4記載の発明は、接木用の原木に切削処理を施して長手方向に切削することにより、台木または穂木を形成させる接木用原木の切削装置であって、前記原木を保持する原木保持台を有し、前記原木保持台は、保持される原木の周方向で等間隔に備えられ、かつ、保持された原木に対し芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろす少なくとも3枚の切削刃物を備えていることを特徴とする接木用原木の切削装置である。
【0022】
かかる構成によれば、接木用の原木を、原木保持台に周方向で等間隔に設けられた少なくとも3枚の切削刃物の刃の部分で囲まれた空間に差し込むことで原木を原木保持台に保持させ、この状態で各切削刃物を、原木に対し芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろすことにより、切削刃物を境にして根がある側(根側)には、その上端面に切削刃物の数に対応した多角錐状の凹部が形成される一方、切削刃物を境にして葉がある側(葉側)には、多角錐状凹部と対応した多角錐状凸部が形成される。
【0023】
そして、接木用の原木が台木用の場合、原木が切削刃物で切断されることにより分離された根側が台木として用いられる一方、原木が穂木用である場合、分離された葉側が穂木として用いられる。このようにして形成された穂木の多角錐状凸部を台木の多角錐状凹部に差し込むことにより、穂木は台木に極めて安定した状態で接合される。
【0024】
このように、原木を保持する原木保持台に、保持される原木の周方向で等間隔に備えられ、かつ、保持された原木に対し芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろす少なくとも3枚の切削刃物を備えることにより、特に面倒な操作を行うことなく各切削刃物を原木支持台に支持された原木に向けて切り下ろす切削処理によって切断された原木の根側には切削面に多角錐状凹部が形成される一方、切断された原木の葉側には切削面に多角錐状凸部が形成される。
【0025】
従って、台木側にV字溝を設ける一方、穂木側にV字突起を設けるようにした従来の接木用原木の切削装置にあっては、両者の接合状態が安定したものにならないため、たとえ接合位置にクリップ等の接合部材を装着しても、確実に安定した接合状態を得ることが難しいという不都合が存在するが、請求項4の発明にあっては、このような不都合が存在せず、低コストで、かつ、確実な接木処理が実現する。
【0026】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記切削刃物は、平行四辺形リンク構造における互いに平行な上下のリンクアームの内の下部のリンクアームが採用され、かつ、前記平行四辺形リンク構造のリンク運動によって刃先の延びる方向に向けてスライドしながら原木に対して切り下ろされるものであることを特徴とするものである。
【0027】
かかる構成によれば、平行四辺形リンク構造のリンク運動によって上下で互いに平行なリンクアームの内の下部のリンクアームとして機能する切削刃物は、刃先の延びる方向に向けてスライドしながら原木に対して切り下ろされるため、切削刃物をスライドさせることなく単に切り下ろす場合に比べて原木に対しより容易に、かつ、より確実に切削処理が施される。
【0028】
請求項6記載の発明は、請求項4または5記載の発明において、前記原木保持台は、基台と、この基台の上部に当該基台と対向配置された、中央部に原木を通す装着孔の穿設された上部台と、この上部台の周縁に周方向に等間隔で固定された前記切削刃物を上下方向に向けて移動可能に保持する刃物保持部材とを備え、前記切削刃物は、前記刃物保持部材に上下方向に向けて移動可能に保持される峰部と、この峰部の下端縁部に形成された切削刃と、前記峰部の上縁部に形成された操作部とを備え、前記刃物保持部材は、前記切削刃物を上方位置へ向けて付勢する付勢部材を備えていることを特徴とするものである。
【0029】
かかる構成によれば、接木用の原木は、それを根側を下にして上部台の装着孔に差し通すことにより根が基台に受けられた状態で原木保持台に装着される。この状態で切削刃物の峰部の上縁部に形成された操作部を付勢部材の付勢力に抗して下方へ向けて押し下げることにより、切削刃物は、当該切削刃物を保持する刃物保持部材に案内されつつ原木の芯に向かって斜めに下降し当該原木を切削する。かかる切削操作を複数の切削刃物について順次実行していくことにより、上下に切断された原木の根側の上端面に多角錐状凹部が形成される一方、原木の葉側の下端面に多角錐状凸部が形成される。
【0030】
このように、原木保持台が、基台の上方に対向配置され、かつ、中央部に原木を通す装着孔の穿設された上部台と、この上部台の周縁に固定された切削刃物を上下方向に向けて移動可能に保持するとともに、切削刃物を上方へ向けて付勢する付勢部材を備えた刃物保持部材とを備えることにより、保持された原木に対し切削刃物で原木の芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろす原木の切削装置が容易に製作される。
【0031】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記上部台は、前記装着孔に対して開閉可能な蓋体を有し、前記蓋体は、前記装着孔を閉止した状態で原木の幹部が嵌り込む切欠きを有していることを特徴とするものである。
【0032】
かかる構成によれば、蓋体を開放した状態で装着孔を介して原木を根側から装着孔に差し通し、引き続き蓋体を閉止することにより、原木は、その幹部が蓋体の切欠きに嵌り込み、これによって原木の切削装置に対する支持状態が安定するため、原木に対する切削操作が確実に行われる。
【0033】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明において、前記基台は、上面中央位置に原木の下端部が嵌り込む凹部を有していることを特徴とするものである。
【0034】
かかる構成によれば、原木が切削装置に装着された状態で、原木の下端部(例えば根)は、基台の上面中央位置凹設された凹部に嵌り込むため、原木の下端部が基台上で水平方向にずれることが防止され、これによって原木に対する切削処理が安定して行われる。
【0035】
請求項9記載の発明は、請求項4乃至8のいずれかに記載の発明において、前記切削刃物は3枚であることを特徴とするものである。
【0036】
かかる構成によれば、3枚の切削刃物によって台木の上面に三角錘状の凹部が形成されるとともに、穂木の下端部に三角錘状の凸部が形成されるため、切削刃物を最小限の枚数とした上で、切削処理により得られた台木に穂木が確実に接合される。
【0037】
請求項10記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記切削刃物は、上下で2段に形成され、下段の切削刃物は、台木用として調製された台木用原木に対し切削処理を施すものであり、上段の切削刃物は、穂木用として調製された穂木用原木に対し切削処理を施すものであることを特徴とする接木用原木の切削装置である。
【0038】
かかる構成によれば、予め台木用の原木および穂木用の原木を準備しておくことにより、これら台木用原木および穂木用原木に対し上下で2段の切削刃物を斜めに切り下ろすことで台木用原木には接合凹部が、穂木用原木には接合凸部が同時に形成され、切削処理の作業性が大幅に向上する。
【発明の効果】
【0039】
請求項1記載の発明によれば、接木用台木には、原木保持台に保持された原木に対し周方向で等間隔に芯部に向けて原木の延びる方向に3枚の切削刃物で順次または同時に斜めに切り下ろすことにより原木の根側の切削面に多角錐状凹部が形成されているため、穂木の下端をこの多角錐状凹部に安定した状態で差し込むことが可能であり、両者の接合位置に対しクリップを容易に装着することができ、接木処理の作業性を向上させることができる。
【0040】
請求項2記載の発明によれば、原木保持台に保持された原木に対し周方向で等間隔に芯部に向けて原木の延びる方向に3枚の切削刃物で順次または同時に斜めに切り下ろすことにより原木の葉側の切削面に多角錐状凸部が形成されるため、かかる多角錐状凸部を台木の切削面に形成された所定の凹部に差し込むことが可能であり、両者の接合位置に対しクリップを容易に装着することができ、接木処理の作業性を向上させることができる。
【0041】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の接木用台木に請求項2記載の接木用穂木を接木することによって接木処理済み苗木が形成されているため、台木の多角錐状凹部に、同一多角錐に設定された穂木の多角錐状凸部を嵌め込むことにより、台木および穂木の各切削面を互いに確実に密着させることが可能であり、これによってたとえ台木の太さと穂木の太さとが異なっているような場合であっても接木処理済み苗木の活着率を大幅に向上させることができる。
【0042】
請求項4記載の発明によれば、原木を保持する原木保持台には、保持される原木の周方向に等間隔で備えられ、かつ、保持された原木に対し芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろす少なくとも3枚の切削刃物が備えられているため、特に面倒な操作を行わなくても各切削刃物を原木支持台に支持された原木に向けて切り下ろすことによって切断された原木の根側には切削面に多角錐状凹部を形成させることができる一方、切断された原木の葉側の切削面に多角錐状凸部を形成させることができる。
【0043】
従って、台木側にV字溝を設ける一方、穂木側にV字突起を設けるようにした従来の接木用原木の切削装置にあっては、たとえ両者の接合位置にクリップ等の接合部材を装着しても接合状態を確実に安定させることが困難であるという不都合が存在したが、請求項4記載の発明では、従来のかかる不都合を解消することができ、原木に対し低コストで、かつ、確実な接木処理を施すことができる。
【0044】
請求項5記載の発明によれば、切削刃物は、平行四辺形リンク構造における上下で互いに平行なリンクアームの内の下部のリンクアームが利用されているため、この平行四辺形リンク構造のリンク運動によって切削刃物は、刃先の延びる方向に向けてスライドしながら原木に対して切り下ろされるため、切削刃物をスライドさせることなく単に切り下ろす場合に比べて原木に対しより容易に、かつ、より確実に切削処理を施すことができる。
【0045】
請求項6記載の発明によれば、原木保持台が、基台の上方に対向配置され、かつ、中央部に原木を通す装着孔の穿設された上部台と、この上部台の周縁に固定された切削刃物を上下方向に向けて移動可能に保持するとともに、切削刃物を上方へ向けて付勢する付勢部材を備えた刃物保持部材とを備えることにより、保持された原木に対し切削刃物で原木の芯部に向けて原木の延びる方向に斜めに切り下ろすように構成された原木の切削装置を簡単な構造のものとすることができ、当該切削装置を容易に製作することができる。
【0046】
請求項7記載の発明によれば、蓋体を開放した状態で装着孔を介して原木を根側から上部台の装着孔に差し通し、引き続き蓋体を閉止することにより、原木は、その幹部が蓋体の切欠きに嵌り込み、これによって原木の切削装置に対する支持状態が安定するため、原木に対して切削処理を確実に施すことができる。
【0047】
請求項8記載の発明によれば、原木が切削装置に装着された状態で、原木の下端部は、基台の上面中央位置凹設された凹部に嵌り込むため、原木の下端部が基台上で水平方向にずれることが防止され、これによって原木に対し安定した確実な切削処理を施すことができる。
【0048】
請求項9記載の発明によれば、3枚の切削刃物によって台木の上面に三角錘状の凹部が形成されるとともに、穂木の下端部に三角錘状の凸部が形成されるため、切削刃物を最小限の枚数として装置コストの低減化に貢献することができるとともに、切削処理により得られた台木と穂木とを確実に接合することができる。
【0049】
請求項10記載の発明によれば、予め台木用の原木および穂木用の原木を準備しておくことにより、これら台木用原木および穂木用原木に対し上下で2段の切削刃物を斜めに切り下ろすことで台木用原木には接合凹部が、穂木用原木には接合凸部が同時に形成され、切削処理の作業性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
図1および図2は、本発明に係る接木用原木の切削装置の第1実施形態を示す斜視図であり、図1は、切削刃物が上方位置に位置設定された状態、図2は、1枚の切削刃物が下方位置に位置設定された状態をそれぞれ示している。
【0051】
図1に示すように、接木用原木の切削装置10は、接木用の原木Wに切削処理を施して長手方向に切削することにより、台木W1または穂木W2(図4)を形成させるものであり、原木Wを保持する原木保持台20と、この原木保持台20に固定された3つの刃物保持部材30と、これら3つの刃物保持部材30にそれぞれ移動可能に装着された3枚の切削刃物40とを備えている。
【0052】
前記原木保持台20は、平面視で正三角形状を呈した基台21と、この基台21の上方に配設される平面視で基台21と同一形状の上部台22と、これら基台21および上部台22間に介設される3本の支柱23とを有している。前記支柱23は、基台21の各角部に立設され、これら3本の支柱23の頂部に上部台22の各角部が支持された状態で当該上部台22が3本の支柱23に架設されている。
【0053】
前記基台21には、その上面中央部に原木Wの下端部(根の部分)を嵌め込む凹部211が設けられ、この凹部211に原木Wの下端部を嵌め込むことによって原木保持台20に装着された原木Wの下端部がずれることが防止されるようになっている。
【0054】
前記上部台22には、その中央部に当該上部台22と相似形の大きな三角孔(装着孔)221が設けられ、原木Wは、この三角孔221を介して原木保持台20に装着されるようになされている。上部台22にこのような大きな三角孔221を設けることにより、原木Wの根が少々大きくても、この三角孔221を通して原木Wを原木保持台20に装着することができる。
【0055】
また、上部台22には、互いに反対方向に向けてスライドさせることにより開閉自在とされた一対の直角三角形状を呈するスライド蓋(蓋体)222が設けられている。かかる一対のスライド蓋222は、互いに対向する方向に向かって正逆移動可能に上部台22に取り付けられ、互いに接近した状態で対向する縁部における上部台22の重心位置に近接した部分に互いに対向したV字状切欠き(切り欠き)223aがそれぞれ設けられている。そして、各スライド蓋222が互いに接近する方向に向けて移動されることにより、各V字状切欠き223aにより原木Wの幹を支持する平面視で略正方形状も支持部223が形成されるようになっている。
【0056】
前記上部台22には、前記各スライド蓋222の対向方向と交差する縁部にそれぞれ互いに平行な対向方向へ延びる一対の蟻溝225がそれぞれ設けられている一方、各スライド蓋222には、前記各蟻溝225に摺接状態で嵌り込む一対の蟻突起224がそれぞれ設けられ、蟻突起224が蟻溝225に嵌め込まれることにより、各スライド蓋222は、蟻突起224が蟻溝225に案内されつつ互いに対向方向に正逆移動し得るようになっている。
【0057】
なお、図示は省略しているが、一対のスライド蓋222間に所定のリンクアームを架設し、このリンクアームによって一対のスライド蓋222が互いに反対方向に向けて同一量だけ移動し得るようにしておけば、原木Wは、支持部223により支持された状態で常に上下方向に延びた中心線を原木保持台20の上下方向に延びる中心線と一致させるようにすることができる。
【0058】
従って、一対のスライド蓋222を開放した状態で、原木Wを、三角孔221を介して原木保持台20内に挿入し、その根の部分を基台21の凹部211へ嵌め込んだ状態で一対のスライド蓋222を閉止することにより、原木Wの幹が支持部223に差し通されて支持部223の周りのスライド蓋222の周縁部に支持された状態となり、これによって原木保持台20に装着された原木Wの装着状態が安定するようになされている。
【0059】
前記刃物保持部材30は、原木Wに切削処理を施す切削刃物40を移動可能に保持するものであり、上部台22の3つある各縁部の中央位置にねじ止めその他で固定されている。かかる刃物保持部材30は、上部台22に固定された状態で斜めに原木保持台20の平面視における中心方向へ向かう扁平な角筒状の刃物保持角筒体31と、この刃物保持角筒体31の上部台22と対向した側の縁部から上方に向けて突設されたブラケット32とを備えている。前記ブラケット32がねじ止め等で上部台22の縁部に固定されることにより刃物保持部材30が上部台22に装着されるようになっている。
【0060】
前記刃物保持角筒体31は、刃物保持部材30が上部台22に固定された状態で下端部が原木保持台20に装着された原木Wと干渉しないように長さ寸法が設定されている。このような刃物保持角筒体31の外面側の中央部には、上下方向に延びた長孔33が穿設されているとともに、この長孔33の下端部には、刃物保持角筒体31の長孔33に対応した部分の一部が切り起こされることによって形成した下部バネ支持突起34が外方に向かって突設されている。この下部バネ支持突起34は、前記切削刃物40に設けられた後述する上部バネ支持突起44との間で後述するコイルスプリング(付勢部材)46を挟持するためのものである。
【0061】
前記切削刃物40は、長尺の刃物本体41と、この刃物本体41の上縁部に固定された円柱状の操作ハンドル(操作部)45とを備えている。前記操作ハンドル45は、切削刃物40を下方に向けて押圧操作するためのものであり、長手方向の中央部周面が刃物本体41の上縁部に固定されている。
【0062】
前記刃物本体41は、前記刃物保持角筒体31に摺接状態で移動可能に嵌挿される上下方向に長尺の峰部42と、この峰部42の下端部に形成された刃先が水平方向へ延びる平刃43と、前記峰部42の外面側から外方に向かって突設され上部バネ支持突起44とを備えている。前記平刃43は、原木保持台20に装着された原木Wの周面に対して斜めに切り下げる切削処理を施すものである。本実施形態においては、平刃43として上側に刃が付いた片刃が採用されている。
【0063】
前記上部バネ支持突起44は、刃物保持角筒体31に設けられた前記下部バネ支持突起34との間に圧縮状態でコイルスプリング46を装着するためのものである。上部バネ支持突起44と下部バネ支持突起34との間にコイルスプリング46が装着されることにより、当該コイルスプリング46の付勢力で刃物本体41が、図1に示すように上方位置に位置設定されるようになっている。
【0064】
そして、上部バネ支持突起44は、刃物本体41がコイルスプリング46の付勢力により上方位置に位置設定された状態で、平刃43の刃先が原木保持台20に装着された原木Wの周面に当接するか、あるいは僅かに離れたところに位置するように設置位置が設定されている。従って、原木Wが原木保持台20に装着された状態では、図3(A)に示すように、当該原木Wは、周方向に等間隔で3枚の刃物本体41によって取り囲まれた状態になる。
【0065】
また、刃物保持角筒体31に前節された長孔33は、刃物本体41が下方位置に位置設定された状態(すなわち、刃物本体41が最大限切り下げられた状態)において、刃物本体41の平刃43が原木Wの芯位置を僅かに超えるように設置位置および長さ寸法が設定されている。
【0066】
従って、原木Wを、図1に二点鎖線で示すように、原木保持台20に装着した状態で、各切削刃物40の操作ハンドル45をコイルスプリング46の付勢力に抗して順番に押し下げていく切削処理を原木Wに施すことにより、原木Wには、図2に示すような斜めの切り込みが三方から形成されることになる。
【0067】
図3は、第1実施形態の切削装置10の作用を説明するための説明図であり、図3(A)および図3(B)は、原木Wに切削処理を施す直前の状態、図3(C)および図3(D)は、1枚の切削刃物40により原木Wが切削処理された状態をそれぞれ示している。なお、図3(A)および図3(C)は平面図であり、図3(B)および図3(D)はそれぞれ図3(A)および図3(C)のI−I線断面図である。
【0068】
まず、原木Wが原木保持台20に装着されることにより、当該原木Wは、3枚の刃物本体41の平刃43の刃先によって三方から取り囲まれた状態になっている。この状態において、例えば、図3(A)および図3(B)に示す右側の刃物本体41に、刃物保持角筒体31(図1)に案内された押し下げ方向に向かう力が加えられると、原木Wにおける力の作用点Pに、図3(B)に示すように、斜めに下方へ向かう押し下げ力Fが作用することになる。
【0069】
そして、刃物本体41の押し下げ方向、すなわち押し下げ力Fの向かう方向と垂直線との間の角度をθとすると、作用点Pには、左方へ向かう分力F1(F1=Fsinθ)が生じる。この分力F1によって原木Wは、左方へ向けて撓もうとして図3(A)に示す左側の2枚の刃物本体41の平刃43に各当接点P1で当接する。各当接点P1における原木Wから左方に向かう力F2は、それぞれ分力F1の半分(F1/2)になっている。
【0070】
そして、これら原木Wから2枚の刃物本体41に加えられる力F2の反力として各当接点P1間を結ぶ直線の中点位置から右方へ向かって反力である−F1が原木Wに生じるため、分力F1と反力−F1とが相殺されて原木Wが撓むことはない。
【0071】
また、右側の刃物本体41の切り下げ方向は、図3(B)に示すように、左側の他の2枚の刃物本体41と干渉し合うことがないため、右側の刃物本体41を切り下げると、刃物本体41の平刃43が原木Wの幹を斜めに切削していく。そして、右側の刃物本体41が下方位置に到達すると、図3(C)および図3(D)に示すように、原木Wは、当該刃物本体41によって芯にまで切削処理が施された状態になる。
【0072】
原木Wに対するこのような切削処理を3枚の切削刃物40について順次実行していくことにより、原木Wは上下に分断されることになる。
【0073】
図4は、切削装置10によって切削処理されることにより形成された台木W1および穂木W2を示す拡大斜視図であり、図4(A)は、穂木W2を台木W1に接合する直前の状態、図4(B)は、穂木W2が台木W1に接合された状態をそれぞれ示している。
【0074】
まず、図4(A)に示すように、台木用の原木に切削装置10により切削処理が施されることによって形成した本発明に係る台木W1には、稜線がそれぞれ円弧状になった周方向に等間隔の3つの山部W11が形成されているとともに、各山部W11の内面側には、刃物本体41による切断面である傾斜面W12が形成されている。そして、これら3つの傾斜面W12に囲まれた空間によって三角錘状の接合凹部(多角錐状凹部)W13が形成されている。
【0075】
一方、穂木用の原木に切削装置10による切削処理が施されることにより形成した本発明に係る穂木W2には、刃物本体41の切断面である3つの傾斜面W21によって形成された先細りの三角錘状を呈した接合凸部(多角錐状凸部)W22が形成されている。かかる接合凸部W22は、台木W1に接合凹部W13を形成させたものと同一の切削装置10によって形成されているため、当然のことながら、前記接合凹部W13に対応したものになっている。
【0076】
従って、穂木W2の接合凸部W22を、台木W1の接合凹部W13に嵌め込むことによって、図4(B)に示すように、接木処理が完了した本発明に係る苗木W0が形成される。そして、このようにして形成された接木処理済みの苗木W0は、台木W1の接合凹部W13および穂木W2の接合凸部W22の各傾斜面W12,W21が互いに面接触した状態になっているため、両者の接合状態は極めて良好であり、かつ、接合凸部W22が接合凹部W13に嵌り込んでいることにより、接合部分を手で摘持するような面倒な作業を行うことなく両者の接合位置にクリップを容易に装着することが可能になり、これによってクリップ装着作業の作業性を向上させることができる。
【0077】
また、穂木W2が台木W1に接木され、かつ、両者の接合位置にクリップが装着された状態で、互いに当接した台木W1の傾斜面W12と穂木W2の傾斜面W21との当接状態が安定するため、接木処理済みの苗木W0は、高い活着率を得ることができる。
【0078】
因みに、原木Wを平刃43で切削することにより、台木W1に接合凹部W13が形成された状態で、当該台木W1の周面には、合計で6本の切り込みW14が形成されるが、接木を行う上で特に強度的に問題になるようなことはない。
【0079】
図5は、本発明に係る接木用原木の切削装置の第2実施形態を示す斜視図であり、円内は、刃物本体41の先端側の平面図である。また、図6は、第2実施形態の切削装置10aの作用を説明するための説明図であり、図6(A)および図6(B)は、原木Wに切削処理を施す直前の状態、図6(C)および図6(D)は、3枚の切削刃物40により原木Wが同時に切削処理された状態をそれぞれ示している。なお、図6(A)および図6(C)は平面図であり、図6(B)および図6(D)はそれぞれ図6(A)および図6(C)のII−II線断面図である。
【0080】
まず図5に示すように、第2実施形態の切削装置10aにおいては、切削刃物40′の刃物本体41′の下端部に形成された切削刃として先細りの三角形状に形成された片刃の三角刃43′が採用されている点が第1実施形態の切削装置10と相違している。第2実施形態の切削装置10aのその他の構成は、第1実施形態のものと同様である。
【0081】
切削刃として三角刃43′が採用されるのは以下の理由による。すなわち、第1実施形態のような平刃からなる平刃43が採用されると、各操作ハンドル45を同時に押圧操作して刃物本体41を押し下げると、3枚の刃物本体41の各平刃43が互いに干渉し合って原木Wを切削することができず、切削刃物40を1本ずつ順番に押し下げなければならないため、作業効率がその分劣るのである。
【0082】
そこで、かかる不都合を解消するべく、第2実施形態の切削装置10aにおいては、切削刃として三角刃43′が採用され、これによって3枚の切削刃物40′が同時に押し下げられても、原木Wに切削処理が施される過程において各三角刃43′が互いに干渉し合わないようになされているのである。かかる三角刃43′は、先端の角度が刃物本体41′の傾斜角度に応じて60°より小さく設定され(具体的には、刃物本体41′の水平面に対する角度をαとした場合、三角刃43′の先端角度x(°)=2arcsin(0.5cosα)となる。)、これによって3本の刃物本体41′により原木Wに切削処理が施された状態では、各刃物本体41′の三角刃43′は、隣接する刃先同士が互いに当接し合った状態になるようになされている。
【0083】
かかる切削刃物40′による原木Wの切削処理の状態を図6に基づき説明すると以下のようになる。まず、原木Wが原木保持台20に装着された状態では、図6(A)および図6(B)に示すように、各刃物本体41′の三角刃43′の先端が原木Wの周面に対向した状態になっている。
【0084】
この状態において、3つの操作ハンドル45を同時に操作して3枚の刃物本体41′を同時に下降させると、各三角刃43′が先端から原木Wに入り込んでいき、ついには図6(C)および図6(D)に示すように、各三角刃43′の先端が原木Wの芯に到達し、これによって各三角刃43′の隣接するもの同士が互いに当接した状態になり、これによって原木Wの切削処理が完了する。
【0085】
そして、三角刃43′によって原木Wを切削すると、第1実施形態の刃先が水平方向に延びる平刃43によって切削した場合に形成される切り込みW14(図4)が形成されることがないため、台木W1に形成された各山部W11が構造的に丈夫なものになり、より確実な接木処理が実現する。
【0086】
図7および図8は、本発明に係る接木用原木の切削装置の第3実施形態を示す斜視図であり、図7は、切削刃物が上方位置に位置設定された状態、図8は、1枚の切削刃物が下方位置に位置設定された状態をそれぞれ示している。第3実施形態の切削装置10bは、切削刃物40″が操作ハンドル45′と、この操作ハンドル45′に敷設された四辺形リンク構造47とを備えて構成されている点が先の第1および第2実施形態の切削装置10,10aと相違している。その他の構成は先の実施形態と同様である。
【0087】
前記四辺形リンク構造47は、四辺形リンク構造47の四辺形が、図7に示すように、ひしゃげた形状になって下端の刃物本体(下部のリンクアーム)474が原木Wから離間した離間形状と、四辺形リンク構造47の四辺形が広がって下端の刃物本体474が原木Wを切削した切削姿勢との間で姿勢変更し得るようになっている。
【0088】
かかる四辺形リンク構造47は、上部台22の各縁部に固定された第1および第2実施形態のブラケット32に対応する板状のブラケット32′に水平方向へ延びるように固定された固定リンクアーム(上部のリンクアーム)471と、この固定リンクアーム471の平面視における反時計方向側の端部に第1リンク軸471a回りに回動自在に軸支された第1可動リンクアーム472と、固定リンクアーム471の平面視における時計方向に端部に第2リンク軸471b回りに回動自在に軸支された第2可動リンクアーム473と、前記第1可動リンクアーム472の下端部に第3リンク軸474a回りに回動自在に軸支されるとともに、第2可動リンクアーム473の下端部に第4リンク軸474b回りに回動自在に軸支された刃物本体474とを備えている。
【0089】
前記ブラケット32′は、上部台22より下部が原木保持台20の上下方向に延びる中心線に向けて傾斜している。従って、かかるブラケット32′に固定リンクアーム471を介して取り付けられた第1可動リンクアーム472の固定リンクアーム471より下方部分および第2可動リンクアーム473も原木保持台20の中心線に向かって傾斜している。
【0090】
前記第1可動リンクアーム472は、第1リンク軸471aを境にして上下に延設され、第1リンク軸471aより下方部分が四辺形リンク構造47の1つのリンク部材として機能する一方、第1リンク軸471aより上方に延びる部分の上端に前記操作ハンドル45が固定されている。
【0091】
また、前記固定リンクアーム471と刃物本体474とは水平方向に延びて互いに平行に設定されているとともに、第1可動リンクアーム472と第1可動リンクアーム472とも互いに平行に設定され、これによって四辺形リンク構造47は、平行四辺形リンク構造になっている。
【0092】
そして、このような四辺形リンク構造47は、当該四辺形リンク構造47が、図7に示すように、離間形状に設定された状態では、刃物本体474の刃先が原木Wから離間する一方、立直していた操作ハンドル45′を第1リンク軸471a回りに時計方向に倒すことにより、四辺形リンク構造47が、図8に示すように、切削形状に設定された状態では、刃物本体474がスライドしながら原木Wに向けて斜めに切り下ろされるようになっている。
【0093】
第3実施形態の切削装置10bによれば、刃物本体474は、単に原木Wの芯に向けて斜めに切り下ろされるだけではなく、原木Wに対し水平方向に向けてスライドしながら切り下ろされるため、原木Wに対しより確実に切削処理を施すことができる。
【0094】
図9〜図11は、本発明に係る接木用原木の切削装置の第4実施形態を示す斜視図であり、図9は、穂木摘持部材および台木摘持部材がそれぞれ上方位置および下方位置に位置設定されて処理前の穂木および台木を受入可能に待機させられた状態、図10は、穂木および台木がそれぞれ穂木摘持部材および台木摘持部材に摘持されて1つの切削刃物が切り下げられることにより穂木および台木の双方に切削処理が施された状態、図11は、穂木摘持部材の下降および台木摘持部材の上昇により切削処理後の穂木および台木が互いに接合されて接木処理済みの苗木が形成された状態をそれぞれ示している。因みに、図9〜図11において、X−X方向を左右方向、Y−Y方向を前後方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0095】
第4実施形態に係る切削装置10cは、予め葉の部分が切断された台木用原木W01と、予め根の部分が切断された穂木用原木W02とがそれぞれ調製され、これら台木用原木W01および穂木用原木W02に対して同時に切削処理を施すとともに、その場で直ちに切削処理後の台木W1と穂木W2とに対し接合処理を施し得るように構成された、いわば接木装置といえるものである。
【0096】
かかる切削装置10cは、図9に示すように、後述する各種の部材が装着されるフレーム体50と、このフレーム体50に昇降可能に装着された上下一対の摘持部材60と、これら一対の摘持部材60を互いに反対方向に向けて昇降させる昇降機構70と、摘持部材60によって摘持された台木用原木W01および穂木用原木W02に対して同時に切削処理を施す切削機構80とを備えている。
【0097】
前記フレーム体50は、平面視で矩形状を呈した前後方向に長尺の基台51と、この基台51の後半部分に立設された門構え状を呈する門型フレーム52と、基台51の後縁部から立設された側面視で鈎形を呈する鈎形フレーム53とからなっている。前記基台51の前方上面の適所には、カップCに植設された状態の台木用原木W01をカップCごと載置するための位置決め凹部511が凹設されている。従って、台木用原木W01に切削処理を施すに際し、カップCをこの位置決め凹部511内に載置することにより、台木用原木W01が切削処理を施すための適正な位置に位置決めされる。
【0098】
前記門型フレーム52は、左右方向一対の側板521と、これら一対の側板521の上縁部間に架設された天板522とを備えている。各側板521は、下端部が基台51の左右の縁部にねじ止めその他で固定されている。かかる門型フレーム52の天板522には、前後方向に延びた左右方向一対の長孔523が穿設されているとともに、天板522の中央部には、前後方向に並設された一対の円孔524が穿設されている。
【0099】
前記鈎形フレーム53は、基台51の後縁部の左右方向中央位置から立設され、天板522の後縁部を越えて上方へ延設された垂直フレーム531と、この垂直フレーム531の上縁部から前方に向けて突設された水平フレーム532とからなっている。垂直フレーム531は、基台51および天板522にそれぞれねじ止めその他で固定され、これによってフレーム体50が構造的に丈夫になっている。
【0100】
前記摘持部材60は、フレーム体50の天板522の下方に設けられて台木用原木W01を摘持する台木摘持部材601と、フレーム体50の天板522より上方位置に設けられて穂木用原木W02を摘持する穂木摘持部材602とを備え、上下一対で設けられている。かかる摘持部材60は、後述する案内円柱76に案内されつつ昇降する平面視で矩形状の昇降ブロック61と、この昇降ブロック61の前端縁面に固定されたアクチュエータ62と、このアクチュエータ62の前端縁に形成された前端開口621から前方に向かって突設された台木用原木W01または穂木用原木W02を摘持する一対の摘持アーム63とを備えている。
【0101】
前記アクチュエータ62には、空気圧もしくは油圧により、あるいは電磁気的に前記摘持アーム63を駆動させる図略の駆動機構が内装され、この駆動機構の駆動で一対の摘持アーム63が互いに離間した開放姿勢(図9)と、一対の摘持アーム63が台木用原木W01または穂木用原木W02を摘持した摘持姿勢との間で姿勢変更し得るようになっている。かかるアクチュエータ62は、オペレータが図略のスイッチを操作することにより駆動するようになっている。
【0102】
前記一対の摘持アーム63には、互いに対向した縁部に互いに対向したV字状切欠き631がそれぞれ設けられている。かかるV字状切欠き631は、平面視で前記位置決め凹部511の中心位置に対応するように設けられている。
【0103】
従って、摘持アーム63が開放姿勢に姿勢設定された状態でカップCを位置決め凹部511に載置することにより、台木用原木W01は、図9に二点鎖線で示すように、台木摘持部材601の一対の摘持アーム63における各V字状切欠き631に対向した状態になる。また、カップCを位置決め凹部511に載置した後に穂木用原木W02を台木用原木W01の直上位置に位置させることにより、当該穂木用原木W02は、図9に二点鎖線で示すように、穂木摘持部材602の一対の摘持アーム63のV字状切欠き631に対向した状態になる。
【0104】
この状態で図略のスイッチを操作することにより上下のアクチュエータ62の駆動で開放姿勢の摘持アーム63を摘持姿勢に姿勢変更させることにより、台木用原木W01および穂木用原木W02は、図10に示すように、いずれも上下の各一対の摘持アーム63のV字状切欠き631により摘持された状態になる。
【0105】
前記昇降機構70は、台木摘持部材601の摘持アーム63に摘持された台木用原木W01および穂木摘持部材602の摘持アーム63に摘持された穂木用原木W02にそれぞれ切削機構80による切削処理が施された状態で、台木摘持部材601を上昇させるとともに、穂木摘持部材602を下降させることによって台木用原木W01と穂木用原木W02とに接合処理を施すものである。
【0106】
かかる昇降機構70は、門型フレーム52に装着される回動ロッド71と、この回動ロッド71に設けられた操作レバー72と、前記回動ロッド71に固定された左右方向一対の回動アーム73と、この回動アーム73に連結された各左右方向一対の下部連結アーム74および上部連結アーム75と、前記台木摘持部材601および穂木摘持部材602の昇降を案内する前後方向一対の案内円柱76と、前記台木摘持部材601および穂木摘持部材602に対し互いに反対方向に向けて付勢する4本の第1コイルスプリング77とを備えている。
【0107】
前記回動ロッド71は、門型フレーム52の天板522の直下位置において門型フレーム52の一対の側板521の前後方向中央部間に軸心回りに回動可能に貫通した状態で架設されている。
【0108】
前記操作レバー72は、基端側が前記回動ロッド71の右端部に当該回動ロッド71の径方向に延びた状態で固定されている。かかる操作レバー72は、台木摘持部材601および穂木摘持部材602が互いに最大距離離間した状態(図9)で垂直になるように回動ロッド71の周面における設置位置が設定されている。このような操作レバー72の頂部には球状の操作球721が設けられ、オペレータは、この操作球721を握持した状態で操作レバー72を操作するようになっている。
【0109】
前記一対の回動アーム73は、前記操作レバー72と平行に略中央部が前記回動ロッド71に一体回転可能に外嵌されている。また、前記下部連結アーム74は、回動アーム73の下端部と台木摘持部材601の昇降ブロック61の左右の縁部間にそれぞれ相対回転可能に架設されている。また、前記上部連結アーム75は、各回動アーム73の上端部と穂木摘持部材602の昇降ブロック61の左右の縁部間にそれぞれ相対回転可能に架設されている。
【0110】
回動アーム73の下端部と下部連結アーム74の上端部とは、第1軸731回りに相対回転可能に連結されているとともに、回動アーム73の上端部と上部連結アーム75の下端部とは、第2軸732回りに相対回転可能に連結されている。また、下部連結アーム74の下端部は、第3軸741回りに回動可能に台木摘持部材601の昇降ブロック61に連結されているとともに、上部連結アーム75の上端部は、第4軸751回りに回動可能に穂木摘持部材602の昇降ブロック61に連結されている。
【0111】
前記前後一対の案内円柱76は、基台51の後部に立設され、台木摘持部材601および穂木摘持部材602の各昇降ブロック61に穿設された前記前後方向各一対の円孔524にそれぞれ摺接可能に貫通された状態で径寸法が若干細く設定された上端部が鈎形フレーム53の水平フレーム532に貫通され、この部分にボルトが螺着されて締結されることにより安定した立設状態が確保されるようになっている。
【0112】
前記4本の第1コイルスプリング77は、前記各案内円柱76における台木摘持部材601の昇降ブロック61と天板522との間および穂木摘持部材602の昇降ブロック61と天板522との間にそれぞれ圧縮状態で外嵌され、これによって台木摘持部材601を下方へ向けて付勢する一方、穂木摘持部材602を上方へ向けて付勢するようになっている。
【0113】
このように構成された昇降機構70によれば、普段、台木摘持部材601は、天板522より下部の第1コイルスプリング77の付勢力によって下方へ向けて付勢されて最下位にレベル設定されている一方、穂木摘持部材602は、天板522より上部の第1コイルスプリング77の付勢力によって最上位にレベル設定されている。そして、台木摘持部材601が最下位にレベル設定され、かつ、穂木摘持部材602が最上位にレベル設定された状態では、図9および図10に示すように、回動アーム73、下部連結アーム74および上部連結アーム75は、上下方向に一直線で並び、これがストッパの役割を果たすようになっている。
【0114】
この状態で操作レバー72を回動ロッド71回りに反時計方向に向けて回動操作すると、回動ロッド71が軸心回りに反時計方向に回転し、これによって回動アーム73が回動ロッド71回りに反時計方向に一体回転する。この一体回転によって下部連結アーム74は、第1軸731を介して上方へ引き上げられ、これによって台木摘持部材601は第3軸741を介し下部の第1コイルスプリング77の付勢力に抗して上方へ引き上げられるとともに、上部連結アーム75は、第2軸732を介して下方へ引き下げられ、これによって穂木摘持部材602は第4軸751を介し上部の第1コイルスプリング77の付勢力に抗して下方へ向けて引き下げられる。
【0115】
そして、操作レバー72が最大操作量(本実施形態では略45°)まで操作されると、台木摘持部材601および穂木摘持部材602は、図11に示すように、両者間の距離が最接近し、これによって台木用原木W01と穂木用原木W02とを互いに接合する接合位置にそれぞれ位置設定されるようになっている。
【0116】
因みに、本実施形態においては、天板522上の前方位置に穂木摘持部材602のアクチュエータ62が当止する円柱状のストッパ525が設けられている。このストッパ525は、台木摘持部材601が接合位置に位置設定された状態で当該台木摘持部材601のアクチュエータ62が当止するように上下寸法が設定されている。従って、回動ロッド71は、操作量が最大操作量に到達すると、上部のアクチュエータ62がストッパ525に当止し、これによってそれ以上の操作は行い得ないようになっている。
【0117】
前記切削機構80は、前記基台51の位置決め凹部511の直上位置であって、台木摘持部材601と穂木摘持部材602との間の略中間位置に設けられた平面視で正三角形状を呈する三角台座81と、この三角台座81の各頂点位置にそれぞれ設けられた3つの支持筒体82と、これら各支持筒体82に貫通されて支持された3本の二段切削刃物83と、各二段切削刃物83上方に向けて付勢する第2コイルスプリング84とを備えている。
【0118】
前記三角台座81は、一辺の縁面が左右方向に延びるとともに、この縁面と対向した頂点が当該縁面より前方に位置するように姿勢設定されている。かかる三角台座81は、左右方向に延びる縁面が前記門型フレーム52の天板522の前縁部から前方に向かって延設された側面視でL字状を呈するL字支持部材85の前縁部に固定されている。このような三角台座81の中央部には、穂木用原木W02および後述する穂木切削用平刃834を挿通するための上下方向に貫通した円孔811が設けられている。
【0119】
また、かかる三角台座81の前方右側の縁部には、得られた接木処理済みの苗木W0を円孔811から抜き出すための切欠き部812が設けられている。
【0120】
前記支持筒体82は、筒心が三角台座81の下部で当該三角台座81の上下方向に延びる中心線に向かうように傾斜した状態で三角台座81の各頂点位置に設けられている。かかる支持筒体82の中心位置には、二段切削刃物83を摺接状態で挿通するための挿通孔821が設けられている。
【0121】
前記二段切削刃物83は、前記支持筒体82の挿通孔821に摺接状態で差し通される円柱状の刃物支持円柱831と、この刃物支持円柱831の中間位置から三角台座81の中央部へ向けて突設された支持アーム832と、前記刃物支持円柱831の下端部に装着された台木切削用平刃833と、前記支持アーム832の下端部に装着された穂木切削用平刃834と、前記台木切削用平刃833の直上位置における刃物支持円柱831に外嵌されて固定された環状ストッパ835とを備えている。
【0122】
前記刃物支持円柱831の頂部には、押圧操作するための球状を呈した操作球830が設けられ、台木用原木W01および穂木用原木W02に切削処理を施すときは、この操作球830が握持されて下方に向けて押圧される。また、前記支持アーム832は、先端側が前記円孔811の上下方向に延びる中心線に向けて先下がりになるように曲折されている。
【0123】
前記台木切削用平刃833は、カップCが基台51の位置決め凹部511に載置された状態で水平方向に延びる刃先が台木用原木W01の周面に対向するように刃物支持円柱831の下端部に取り付けられているとともに、前記穂木切削用平刃834は、穂木用原木W02が穂木摘持部材602の摘持アーム63に摘持され、かつ、穂木用原木W02の下部が円孔811に挿通された状態で水平方向に延びる刃先が穂木用原木W02の周面に対向するように支持アーム832の下端部に取り付けられている。
【0124】
前記第2コイルスプリング84は、支持筒体82と支持アーム832との間において圧縮状態で刃物支持円柱831に外嵌されている。従って、刃物支持円柱831は、普段、図9に示すように、上方位置に位置設定されている一方、操作球830が押圧されることにより、刃物支持円柱831は、図10の前方の刃物支持円柱831で例示したように、下方位置に位置設定されるようになっている。
【0125】
このように構成された切削機構80によれば、台木摘持部材601と穂木摘持部材602とが最大距離離間され(すなわち、操作レバー72が立直姿勢に姿勢設定され)、かつ、台木用原木W01が台木摘持部材601の摘持アーム63に摘持され、かつ、穂木用原木W02が穂木摘持部材602の摘持アーム63に摘持された状態で、各操作球830を順番に下方に向けて押圧していくことにより、台木用原木W01には各台木切削用平刃833によって順番に切削処理が施されるとともに、穂木用原木W02には各穂木切削用平刃834によって順番に切削処理が施され、これによって台木用原木W01の頂部に接合凹部W13(図4)が形成されるとともに、穂木用原木W02の下端部に接合凸部W22(図4)が形成される。
【0126】
因みに、切削処理がほどこされることにより形成する台木用原木W01および穂木用原木W02の切り屑は、自然と外れる場合もあるが、安全を期して手作業で取り除くようにすればよい。
【0127】
ついで、操作球721が操作されて回動ロッド71が前方へ向けて倒される。こうすることで台木摘持部材601が下部の第1コイルスプリング77の付勢力に抗して上昇されるとともに、穂木摘持部材602が上部の第1コイルスプリング77の付勢力に抗して下降され、これによって、図11に示すように、穂木W2の接合凸部W22が台木W1の接合凹部W13に嵌め込まれ、両者が接合されて接木処理済みの苗木W0が形成される。そして、台木W1と穂木W2との接合処理が完了した時点で、図略のクリップが両者の接合部分に装着され、これによって台木W1と穂木W2とが外れ止めされる。
【0128】
そして、苗木W0にクリップが装着された後、図略のスイッチの操作により上下のアクチュエータ62が駆動されて摘持アーム63が摘持姿勢から開放姿勢に姿勢変更される。これによって上下の摘持アーム63による苗木W0の摘持状態が解消されるため、当該苗木W0を三角台座81の切欠き部812を介して切削装置10cから取り出すことができる。
【0129】
なお、苗木W0が切削装置10cから取り出された後、操作レバー72は、つぎの接木処理に備えて元の立直姿勢に戻される。
【0130】
以上詳述したように、本発明に係る接木用の台木W1は、接木用の原木W(第3実施形態の台木用原木W01を含む)に切削処理を施して長手方向に切削することにより得られるものであり、原木保持台20(第4実施形態の三角台座81を含む)に保持された原木Wに対し周方向で等間隔に備えられた少なくとも3枚の切削刃物40(第3実施形態の刃物本体474を含む)が芯部に向けて原木Wの延びる方向に斜めに切り下ろされることによって形成されているため、原木保持台20に保持された原木Wに対して少なくとも3枚の切削刃物40で芯部に向けて原木Wの延びる方向に斜めに切り下ろすことにより、切削刃物40を境にして根がある側(根側)に多角錐状の接合凹部W13を有する接木用台木W1が形成される。
【0131】
かかる台木W1の多角錐状の接合凹部W13に、別途調製された穂木を差し込んだ状態で接合位置にクリップを装着することにより、台木W1および穂木の中心線が一致した状態で接木処理済みの苗木が形成される。
【0132】
このように、接木用台木W1には、原木保持台20に保持された原木Wに対し周方向で等間隔に芯部に向けて原木Wの延びる方向に3枚の切削刃物40で順次または同時に斜めに切り下ろすことにより多角錐状接合凹部W13が形成されているため、穂木の下端をこの多角錐状接合凹部W13に安定した状態で差し込むことが可能であり、両者の接合位置に対しクリップを容易に装着することができ、得られた接木処理済みの苗木の活着率を向上させることができる。
【0133】
また、本発明に係る穂木W2は、接木用の原木Wに切削処理を施して長手方向に切削することにより得られるものであり、所定の原木保持台20に保持された原木Wに対し周方向で等間隔に備えられた少なくとも3枚の切削刃物40(第4実施形態の穂木切削用平刃834を含む)が芯部に向けて原木Wの延びる方向に斜めに切り下ろされることによって形成されているため、接木用穂木W2には、原木保持台20に保持された原木Wに対して少なくとも3枚の切削刃物40で芯部に向けて原木Wの延びる方向に斜めに切り下ろすことにより、切削刃物40を境にして葉がある側(葉側)に多角錐状の接合凸部W22を有する接木用穂木W2が形成される。
【0134】
かかる穂木W2の多角錐状の接合凸部W22を、別途調製された台木の切削面の接合凹部に差し込んだ状態で接合位置にクリップを容易に装着することができる。
【0135】
このように、原木保持台20に保持された原木Wに対し周方向で等間隔に芯部に向けて原木Wの延びる方向に3枚の切削刃物40で順次または同時に斜めに切り下ろすことにより原木Wの葉側の切削面に多角錐状接合凸部W22が形成されるため、かかる多角錐状接合凸部W22を台木W1の切削面に形成された所定の接合凹部W13に差し込むことにより、両者の接合位置に対しクリップが容易に装着され、得られた接木処理済みの苗木の活着率を向上させることができる。
【0136】
さらに、本発明に係る接木処理済みの苗木W0は、切削刃物40が斜めに切り下ろされることによって形成した接合凹部W13を有する接木用の台木W1に、切削刃物40が斜めに切り下ろされることによって形成した接木用の穂木W2を接木することによって形成されているため、台木W1の多角錐状接合凹部W13に、同一多角錐に設定された穂木W2の多角錐状接合凸部W22が嵌め込まれることにより、たとえ台木W1の太さと穂木W2の太さとが異なっているような場合であっても各切削面が互いに密着状態で接合され、これによって両者は確実に接合されて得られた苗木W0は、活着率が向上したものにすることができる。
【0137】
そして、本発明に係る第1〜第3実施形態の接木用原木Wの切削装置10,10a,10cは、接木用の原木Wに切削処理を施して長手方向に切削することにより、台木W1または穂木W2を形成させるものであり、原木Wを保持する原木保持台20を有し、この原木保持台20は、保持される原木Wの周方向で等間隔に備えられ、かつ、保持された原木Wに対し芯部に向けて原木Wの延びる方向に斜めに切り下ろす少なくとも3枚の切削刃物40,40′を備えているため、接木用の原木Wを、原木保持台20に周方向で等間隔に設けられた少なくとも3枚の切削刃物40,40′の刃の部分で囲まれた空間に差し込むことで原木Wを原木保持台20に保持させ、この状態で各切削刃物40,40′を、原木Wに対し芯部に向けて原木Wの延びる方向に斜めに切り下ろすことにより、切削刃物40,40′を境にして根がある側(根側)には、その上端面に切削刃物40,40′の数に対応した多角錐状の凹部(上記の実施形態においては三角錐状の接合凹部W13)が形成される一方、切削刃物40,40′を境にして葉がある側(葉側)には、多角錐状凹部と対応した多角錐状凸部(上記の実施形態においては接合凸部W22)が形成される。
【0138】
そして、接木用の原木Wが台木W1用の場合、原木Wが切削刃物40,40′で切断されることにより分離された根側が台木W1として用いられる一方、原木Wが穂木W2用である場合、分離された葉側が穂木W2として用いられる。このようにして形成された穂木W2の接合凸部W22を台木W1の接合凹部W13に差し込むことにより、穂木W2は台木W1に極めて安定した状態で接合される。
【0139】
このように、原木Wを保持する原木保持台20には、保持される原木Wの周方向に等間隔で備えられ、かつ、保持された原木Wに対し芯部に向けて原木Wの延びる方向に斜めに切り下ろす少なくとも3枚の切削刃物40,40′が備えられているため、特に面倒な操作を行わなくても各切削刃物を原木支持台に支持された原木Wに向けて切り下ろすことによって切断された原木Wの根側には切削面に接合凹部W13を形成させることができる一方、切断された原木Wの葉側の切削面に接合凹部W13を形成させることができる。
【0140】
従って、台木W1側にV字溝を設ける一方、穂木W2側にV字突起を設けるようにした従来の接木用原木Wの切削装置にあっては、両者の接合状態が安定したものにならず、両者の接合位置にクリップ等の接合部材を装着しなければならず、接木作業の作業性が劣るばかりか、接合部材のためにコストが嵩むという従来の不都合を解消することができ、原木Wに対し低コストで、かつ、確実な接木処理を施すことができる。
【0141】
また、原木保持台20は、フロアに載置される基台21と、この基台21の上部に対向配置された、中央部に原木Wを通す三角孔221の穿設された上部台22と、この上部台22の周縁に周方向に等間隔で固定された切削刃物40,40′を上下方向に向けて移動可能に保持する刃物保持部材30とを備えている。
【0142】
また、切削刃物40,40′は、上下方向に長尺の刃物本体41とこの刃物本体41の頂部に固定された操作ハンドル45とを備え、刃物本体41は、刃物保持部材30に上下方向に向けて移動可能に保持される峰部42と、この峰部42の下端縁部に形成された平刃43または三角刃43′とを備え、刃物保持部材30は、切削刃物40,40′を上方位置へ向けて付勢するコイルスプリング46を備えている。
【0143】
このように構成された原木保持台20および切削刃物40によれば、接木用の原木Wは、それを根側を下にして上部台22の三角孔221に差し通すことにより根が基台21に受けられた状態で原木保持台20に装着される。この状態で切削刃物40,40′の峰部42の上縁部に形成された操作ハンドル45をコイルスプリング46の付勢力に抗して下方へ向けて押し下げることにより、切削刃物40,40′は、上下方向に向けて移動可能に当該切削刃物40,40′を保持する刃物保持部材30に案内されつつ原木Wをその芯に向かって斜めに下降し平刃43または三角刃43′によって切削される。
【0144】
そして、切削刃が平刃43の場合(第1実施形態)、かかる切削操作を複数の切削刃物40について順次実行していくことにより、上下に切断された原木Wの根側の上端面に接合凹部W13が形成される一方、原木Wの葉側の下端面に接合凸部W22が形成される。
【0145】
また、切削刃が三角刃43′の場合(第2実施形態)、上記のような切削操作を3枚の切削刃物40′について同時に実行することにより、上下に切断された原木Wの根側の上端面に接合凹部W13が形成される一方、原木Wの葉側の下端面に接合凸部W22が形成される。
【0146】
このように、原木保持台20が、基台21の上方に対向配置され、かつ、中央部に原木Wを通す三角孔221の穿設された上部台22と、この上部台22の周縁に固定された切削刃物40,40′を上下方向に向けて移動可能に保持するとともに、切削刃物40,40′を上方へ向けて付勢するコイルスプリング46を備えた刃物保持部材30とを備えることにより、保持された原木Wに対し切削刃物40,40′で原木Wの芯部に向けて原木Wの延びる方向に斜めに切り下ろす原木Wの切削装置を容易に製作することができる。
【0147】
また、上部台22に設けられた三角孔221は、原木Wの根を貫通させ得る寸法に設定され、上部台22は、三角孔221に対して開閉可能な一対のスライド蓋222を有し、各スライド蓋222は、三角孔221を閉止した状態で原木Wの幹部が嵌り込むV字状切欠き223aを有し、各V字状切欠き223aによって縁部で原木Wを支持する支持部223が形成されるようになされているため、スライド蓋222を開放した状態で原木Wの根を貫通させ得る寸法に設定された三角孔221を介して原木Wを根側から三角孔221に差し通し、引き続きスライド蓋222を閉止することにより、原木Wは、その幹部が各スライド蓋222のV字状切欠き223aからなる支持部223に支持され、これによって原木保持台20に対する支持状態が安定するため、原木Wに対して切削処理を確実に施すことができる。
【0148】
また、基台21の上面中央位置には、原木Wの根が嵌り込む凹部211が設けられているため、原木Wが原木保持台20に装着された状態で、原木Wの根は、基台21の上面中央位置凹設された凹部211に嵌り込む。これにより原木Wの根が基台21上で水平方向にずれることが防止されるため、原木Wに対し確実な切削処理を施すことができる。
【0149】
そして、上記の実施形態においては、切削刃物40,40′は3枚とされているため、3枚の切削刃物40,40′によって台木W1の上面に三角錘状の凹部211が形成されるとともに、穂木W2の下端部に三角錘状の凸部が形成されるため、切削刃物40,40′を最小限の枚数として装置コストの低減化に貢献することができるとともに、切削処理により得られた台木W1と穂木W2とを確実に接合することができる。
【0150】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0151】
(1)上記の実施形態においては、3枚の切削刃物40,40′が採用されているが、本発明は、切削刃物40,40′が3枚であることに限定されるものではなく、4枚以上であってもよい。但し、切削刃物40,40′の数があまり多くなると、部品点数が増加するばかりか、操作性が悪くなるため、実用的には最大でも略6枚程度に留めるのが得策である。但し、切削刃物40による切削処理を機械化して原木Wに対し自動的に切削処理を施すような場合には、切削刃物40,40′を6枚以上設けてもよい。
【0152】
(2)上記の第1実施形態において、切削刃物40を1枚ずつ操作するに際し、原木Wが当該切削刃物40の平刃43により押圧されて撓むような場合には、操作ハンドル45の押し下げ動作に連動して原木Wを反対側から支持するような機構を採用してもよい。こうすることによって、平刃43の刃先と原木保持台20に装着された原木Wとの間に余裕の隙間を形成させることが可能になり、原木Wの原木保持台20への装着作業が容易になるとともに、各種の原木Wの幹の太さに対応することが可能になり、切削装置10の汎用性を向上させることができる。
【0153】
(3)上記の実施形態においては、平刃43および三角刃43′として片刃が採用されているが、本発明は、平刃43および三角刃43′が片刃であることに限定されるものではなく、両刃であってもよい。
【0154】
(4)上記の実施形態において、切削刃物40,40′に代えて軸心回りに駆動回転し得るように構成された丸鋸を採用してもよい。
【0155】
(5)上記の第4実施形態に係る切削装置10cにおいては、台木W1を台木摘持部材601の摘持アーム63によって位置決めするとともに、穂木W2を穂木摘持部材602の摘持アーム63によって位置決めするようになされているが、これに加えて台木切削用平刃833の近傍位置にさらに台木W1用の位置決め部材を設けるとともに、穂木切削用平刃834の近傍にさらに穂木W2用の位置決め部材を設け、これによって台木W1および穂木W2を上下2個所で位置決めするようにしてもよい。こうすることで台木W1および穂木W2がより安定した状態で位置決めされるため、切削処理がより安定した状態でより確実に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明に係る接木用原木の切削装置の第1実施形態を示す斜視図であり、切削刃物が上方位置に位置設定された状態を示している。
【図2】図1に示す切削装置において、1枚の切削刃物が下方位置に押し下げられた状態を示している。
【図3】第1実施形態の切削装置の作用を説明するための説明図であり、(A)および(B)は、原木に切削処理を施す直前の状態、(C)および(D)は、1枚の切削刃物により原木が切削処理された状態をそれぞれ示している。なお、(A)および(C)は平面図であり、(B)および(D)はそれぞれ(A)および(C)のI−I線断面図である。
【図4】切削装置によって切削処理されることにより形成された台木および穂木を示す拡大斜視図であり、(A)は、穂木を台木に接合する直前の状態、(B)は、穂木が台木に接合された状態をそれぞれ示している。
【図5】本発明に係る接木用原木の切削装置の第2実施形態を示す斜視図であり、円内は、刃物本体の先端側の平面図である。
【図6】第2実施形態の切削装置の作用を説明するための説明図であり、(A)および(B)は、原木に切削処理を施す直前の状態、(C)および(D)は、3枚の切削刃物40により原木が同時に切削処理された状態をそれぞれ示している。なお、(A)および(C)は平面図であり、(B)および(D)はそれぞれ(A)および(C)のII−II線断面図である。
【図7】本発明に係る接木用原木の切削装置の第3実施形態を示す斜視図であり、切削刃物が上方位置に位置設定された状態を示している。
【図8】図7に示す切削装置の切削刃物が上方位置に位置設定された状態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係る接木用原木の切削装置の第4実施形態を示す斜視図であり、穂木摘持部材および台木摘持部材がそれぞれ上方位置および下方位置に位置設定されて処理前の穂木および台木を受入可能に待機させられた状態をそれぞれ示している。
【図10】図9に示す切削装置において、穂木および台木がそれぞれ穂木摘持部材および台木摘持部材に摘持されて1つの切削刃物が切り下げられることにより穂木および台木の双方に切削処理が施された状態を示す斜視図である。
【図11】図9に示す切削装置において、穂木摘持部材の下降および台木摘持部材の上昇により切削処理後の穂木および台木が互いに接合されて接木処理済みの苗木が形成された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0157】
10,10a,10b,10c 切削装置
20 原木保持台 21 基台
211 凹部 221 三角孔(装着孔)
222 開閉蓋(蓋体) 223 支持部
223a V字状切欠き(切欠き)
224 蟻突起 225 蟻溝
22 上部台 23 支柱
30 刃物保持部材 31 刃物保持角筒体
32 ブラケット 33 長孔
34 下部バネ支持突起 40,40′,40″ 切削刃物
41,41′ 刃物本体 42 峰部
43 平刃(切削刃) 43′ 三角刃(切削刃)
44 上部バネ支持突起 45,45′ 操作ハンドル(操作部)
46 コイルスプリング(付勢部材)
47 四辺形リンク構造 50 フレーム体
60 摘持部材 70 昇降機構
80 切削機構 W 接木用原木
W0 苗木 W01 台木用原木
W02 穂木用原木 W1 台木
W11 山部 W12 傾斜面
W13 接合凹部(多角錐状凹部)
W14 切り込み W2 穂木
W21 傾斜面 W22 接合凸部(多角錐状凸部)
【出願人】 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
【識別番号】506173488
【氏名又は名称】屋代 東
【識別番号】592202170
【氏名又は名称】農事組合法人三国バイオ農場
【出願日】 平成18年5月22日(2006.5.22)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司

【識別番号】100096150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝夫

【識別番号】100099955
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 次郎


【公開番号】 特開2007−306894(P2007−306894A)
【公開日】 平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願番号】 特願2006−141910(P2006−141910)