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【発明の名称】 植物育成用照明装置
【発明者】 【氏名】太田 浩一

【要約】 【課題】照明装置を植物育成室の天井に固定した状態で主光である太陽光を非常に高い効率で取り入れると同時に必要に応じて植物に副光である人工光を照射することが可能で、静的な部品のみで構成可能な植物育成用照明装置等を提供する。

【解決手段】透明な側周壁11とその上方の天井を構成する天板12とを主体として構成した植物育成用家屋4内部に、前記側周壁11及び天部材12によって外気とほぼ気密に隔離された植物育成空間3が形成され、主として天板12に植物育成用照明装置5を設け、その照明装置5が、無色透明板6と、副光L2を発生する光源である複数の半導体レーザー7とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が外部からの主光の取り入れが可能なように配置され、その反対面が植物側に向けて配置される透明部材と、
副光を射出するものであってその副光を前記透明部材の端面から当該透明部材内に導入可能に配置した光源と、を備えていることを特徴とする植物育成用照明装置。
【請求項2】
前記透明部材が、板状をなすものであり、その一面を平滑鏡面仕上げ面とし、反対面を光拡散作用を営む荒仕上げ面としている請求項1記載の植物育成用照明装置。
【請求項3】
前記光源がレーザーである請求項1又は2記載の植物育成用照明装置。
【請求項4】
前記主光が太陽光である請求項1、2又は3記載の植物育成用照明装置。
【請求項5】
前記透明部材が植物の上方に配置される請求項1、2、3又は4記載の植物育成用照明装置。
【請求項6】
一端が前記透明部材の端面に臨み、他端が前記光源に臨む光ファイバをさらに備えている請求項1、2、3、4又は5記載の植物育成用照明装置。
【請求項7】
植物を育成するための植物育成空間を備えたものであって、
前記植物育成空間を形成する壁体のうち、植物よりも上方に位置する一部または全部が、外部から照射された主光を厚み方向に透過させて前記植物育成空間内に取り入れる透明部材であり、
副光を射出する光源を設け、その副光が前記透明部材の端面から当該透明部材内に導入されるように当該光源を配置していることを特徴とする植物育成設備。
【請求項8】
前記透明部材が、板状をなすものであり、その外面を平滑鏡面仕上げ面にするとともに、内面を光拡散作用を営む荒仕上げ面としている請求項7記載の植物育成設備。
【請求項9】
前記植物育成空間が、前記壁体により略完全に覆われて気密性を保持可能に構成されている請求項7及び8記載の植物育成設備。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育成に必要な光を供給するための植物育成用照明装置及び植物育成装置に関し、特に太陽光と人工光とを同時に供給することができる植物育成用照明装置及び植物育成設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のビニールハウスや露地栽培のような太陽光のみを利用する植物育成方法では、天候に左右されて光が制御できず、植物の生産にむらが生じるおそれがある。そこで近時、蛍光灯などによる人工光で植物を育成する植物育成装置が開発されつつある(特許文献1)。このようなものによれば、天候に左右されず、植物を生産することが可能である。ところが、人工光だけだと、電力消費が大きくなり、コスト的に不利になるという欠点がある。一方、前記二者の折衷案として、太陽光を随時取り入れて、電力消費効率を向上させることが考えられるが、このようにすると、照明装置が太陽光を遮り、太陽光を室内に効率よく取り入れるのを妨げる。もちろん特許文献2のように照明装置を可動式にすれば、必要に応じて照明装置を移動して太陽光を効率よく取り入れることが可能であるが、構造が大掛かりなものとなり、その建設費用が高額となる。
【特許文献1】特開2005−328702
【特許文献2】特開2005−27521
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上、従来は植物育成にあたり、光の制御性、採光、電力、及び、構造のいずれかに問題を生ずる。
【0004】
そこで本発明は、照明装置を植物育成室の天井に固定した状態で主光である太陽光を非常に高い効率で取り入れると同時に必要に応じて植物に副光である人工光を照射することが可能で、静的な部品のみで構成可能な植物育成用照明装置等を提供し、従来の問題点を一挙に解決することをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明にかかる植物育成用照明装置は、一面が外部からの主光の取り入れが可能なように配置され、その反対面が植物側に向けて配置される透明部材と、副光を射出するものであってその副光を前記透明部材の端面から当該透明部材内に導入可能に配置した光源と、を備えていることを特徴とする。ここで前記透明部材は、無色透明のものが好ましいが、着色透明のものであってもよい。
【0006】
このようなものであれば、外部から取り入れられた主光が前記透明部材をほぼそのまま透過するため、例えば前記植物育成用照明装置を植物育成室の天井などに固定した状態でも外部からの主光を室内に取り入れることが可能になる。また、発光部である透明部材の外部に光源が配置されているため、該光源の取替えが容易となり、必要に応じて様々な光源を利用することで光の制御性を向上できる。
【0007】
また、前記副光を植物側に効率よく放射するには、前記透明部材が、板状をなすものであり、その一面を平滑鏡面仕上げ面とし、反対面を光拡散作用を営む荒仕上げ面としているものが好適である。
【0008】
さらに、エネルギー効率を高めるためには、前記光源がレーザーであることが好ましく、特に電力‐光変換効率が高い半導体レーザーが好適である。レーザー光は、そのコヒーレンス性のために、出力の低いものであっても直視すると失明する危険性があり、従来はその利用は医療、工業など一定の分野に限られ、植物育成用照明に利用することは考えられていなかった。しかしながら、本発明によれば、透明部材に導入されたレーザー光は当該透明部材内を通って拡散反射し、その高いエネルギー効率を失うことなくコヒーレンス性のみを失い、安全な光となる。このようなレーザー光の性質を利用して植物育成用照明装置の光源としてレーザーを用いるという発想は全く新しいものである。
【0009】
また、具体的な実施態様としては、本植物育成用照明装置は、前記主光が太陽光であるものを挙げることができる。
【0010】
さらに、植物への主光及び副光の照射を効率よく行うためには、本植物育成用照明装置は、前記透明部材が植物の上方に配置されるものが好適である。
【0011】
光源の取替えを容易にするためには、本植物育成用照明装置は、一端が前記透明部材の端面に臨み、他端が前記光源に臨む光ファイバをさらに備えていることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、植物を育成するための植物育成空間を備えたものであって、前記植物育成空間を形成する壁体のうち、植物よりも上方に位置する一部または全部が、外部から照射された主光を厚み方向に透過させて前記植物育成空間内に取り入れる透明部材であり、副光を射出する光源を設け、その副光が前記透明部材の端面から当該透明部材内に導入されるように当該光源を配置していることを特徴とする植物育成設備であることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、室内であっても必要な主光及び副光を植物に照射することができ、天候条件に左右されずに植物を育成できる。
【0014】
具体的な実施形態としては、前記透明部材が、板状をなすものであり、その外面を平滑鏡面仕上げ面にするとともに、内面を光拡散作用を営む荒仕上げ面としているものであることが好ましい。
【0015】
さらに、植物育成空間の環境をより最適なものにするためには、前記植物育成設備は、前記植物育成空間が、前記壁体により略完全に覆われて気密性を保持可能に構成されているものが好適である。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、照明装置を植物育成室の天井に固定した状態で主光である太陽光を非常に高い効率で取り入れると同時に必要に応じて植物に副光である人工光を照射することが可能となり、植物育成用照明装置等は静的な部品のみで構成可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る植物育成設備8は、図1に模式的構造図を示すように、例えばビニールハウスのような壁体1が透明で、内部に植物2を育成するための植物育成空間3を形成する植物育成用家屋4と、その植物育成空間3内の植物育成環境を制御するための環境制御機構とを備えている。
【0019】
植物育成用家屋4は、前述したように透明な壁体1、すなわち側周壁11とその上方の天井を構成する天板12とを主体として構成したもので、主光である太陽光L1の降り注ぐ屋外に設置される。そしてその内部には、前記壁体1によって外気とほぼ気密に隔離された植物育成空間3が形成され、その植物育成空間3内では、その床に設置したプランタやあるいは露出させた地面上で、食用や観賞用の植物2を栽培可能である。ここで主光とは、植物を育成するために必要な主たる光のことである。
【0020】
環境制御機構は、温度や湿度、照射光等に係る植物の育成環境を制御するもので、そのうちの照射光制御機構として、本実施形態では以下に説明する植物育成用照明装置5(以下、照明装置ともいう。)を設けている。
【0021】
本実施形態では、この照明装置5は、図2、図3に示すように、例えばアクリル等の樹脂やガラスなどの空気よりも屈折率の大きい素材で構成した矩形平板状をなす等厚無色の透明部材である透明板6と、副光であるレーザー光L2を発生する光源である複数の半導体レーザー7とを備えている。ここで副光とは、基本的には前記主光に付加されて植物の育成を補助し、あるいは、制御する光のことである。
【0022】
透明板6は、図3にその断面拡大図を示すように、一面を平滑鏡面仕上げ面6bとするとともにその反対面を微細な凹凸を施した粗仕上げ面6cとして光拡散作用をもたせたものであり、本実施形態では前記一面を外側にして前記天板12として利用している。粗仕上げ面6cは、レーザー光L2の波長にもある程度左右されるが、100nm〜1mmの凹凸が好適である。
【0023】
半導体レーザー7は周知のものであり、本実施形態ではこれら半導体レーザー7を、図2に示すように、例えば透明板6の端面である外側周端面6aに臨むように一列に並べて配置し、射出されたレーザー光L2が当該透明板6の周端面6aから内部に導光されるようにしている。なお、図4に示すように、各半導体レーザー7の向きは、若干傾斜させてあり、レーザー光L2が透明板6内をどこにも反射されずにそのまま通り抜けてしまわないように構成している。
【0024】
次にこの照明装置5の作用を説明する。図4、図1に示すように、半導体レーザー7を点灯すると、レーザー光は、透明板内を一面6bと反対面6cとの間で反射されながら進行していくが、平滑鏡面仕上げ面である外面6bでは、空気と透明板6との屈折率差で全反射される一方、粗仕上げ面である内面6cでは拡散反射して一部が当該内面6cから植物育成空間3内に放出され、植物2に照射される。このときレーザー光L2のコヒーレンス性はほとんど失われる。
【0025】
このように構成したこの実施形態に係る植物育成設備及び植物育成用照明装置5によれば、図1に示すように、日中の晴天時には、主光である太陽光L1が透明部材6を厚み方向にほとんどロスなく透過して(粗仕上げ面の構成によって実際には85〜90%以上の効率で透過させることが容易にできる)植物に照射されることとなる。
【0026】
したがって基本的には、照明装置5は、曇天時や明け方、夕方等のように、太陽光L1が全体に亘ってあるいはある一部の波長の光が弱いときに、その弱い波長の光を補うように各色半導体レーザーL2を所定の比率や強さで点灯すればよい。そしてこのことから、植物育成を全て人工光で行うシステムに比べて、エネルギー消費を大幅に抑えてコスト削減を図れる。もちろん、夜間にこの照明装置5を点灯してもかまわないし、晴天日中であっても植物の育成等を促進すべく、所望の色彩を補充する目的(光制御の目的)で、この照明装置5を点灯してもかまわない。
【0027】
良好なエネルギー効率という点で言えば、光源に半導体レーザー7を用いていることも挙げられる。レーザーは高効率であるがそのコヒーレンス性から人体の目などに入ると危険であり、このような植物育成に実用的に用いられている例は従来皆無であったのを、本実施形態では、コヒーレンス性を打ち消してその危険性を見事に解消している。このことから本実施形態は、レーザーの新たな用途を切り開くものであると言える。
【0028】
また、構成においても、複雑な可動部品や機構部品を用いるわけではなく、単に天板12を内面がすりガラス状の透明板6にしてその周端面6aから副光L2を導入可能にすればよいだけであるので、非常に簡単である。既存のビニールハウス等に簡単な改造を施すだけでも実現可能なのである。
【0029】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば前記透明板6は、前記天板12のように、植物より上方に位置するものだけでなく、植物の側方又は下方に位置する側周壁の一部または全部に用いても構わないし、透明板をドーム型やかまぼこ型の湾曲したものにしてもよい。その他、前記植物育成家屋4内に植物を載せられる棚を設置し、各棚の上部に前記透明板を配置する構造であってもよい。
【0030】
透明板は、必ずしも一面が平滑鏡面仕上げ面、その反対面が微細な凹凸を施した粗仕上げ面としたものでなくてもよく、植物への光照射効率が上るような構造であれば、例えば、透明板内部に光散乱微粒子を分散させたものであってもよい。また、一面を微細な凹凸を施した粗仕上げ面、その反対面を平滑鏡面仕上げ面としたものであってもよい。
【0031】
さらに、植物育成用照明装置の発光部は透明板に限られず、透明部材であれば、例えば、ライトガイドと呼ばれる側面漏光性の光ファイバを敷き詰めたものであってもよい。コアとクラッドで構成されるプラスチックファイバの中を通過する光は全反射によって伝播するが、ファイバの屈曲やクラッドへの凹凸加工等の散乱要因を与えることによって臨界角を超えた角度を持った光が漏出する。この原理に従って、例えばイルミネーションに用いられる側面発光タイプのプラスチックファイバ側面に垂直方向からレーザー光を照射すると、その90%以上が透過するため、前記透明板と同様に、本発明に係る植物育成用照明装置の発光部として利用できる。
【0032】
また、本発明は、主光と副光の加算が可能なシステムであるが、主光を使用しない場合(夜間等)には、副光の反射光が植物に照射されるように植物の周囲を反射板や反射フィルムなどで覆うことで容易に光利用率を向上することが可能である。
【0033】
上記同様に主光としての太陽光の不要な波長成分を選択的に取り除く作業も、フィルター板やフィルムで植物の周囲を覆うことで簡便に行うことが可能である。
【0034】
主光は太陽光に限られず、この設備を屋内に設置して主光に人工光を用いてもよく、副光は、透明板のどの周端面から導入してもよい。
【0035】
半導体レーザーは赤、青、黄色等の複数色が利用可能であるが、そのうち青、黄色のものを利用するには現状ではコスト的に問題があるので、他の種類のレーザーであってもよい。さらに、光源は半導体レーザーに限られず、効率を重要視しないのであれば、LEDや蛍光灯でも代用可能である。
【0036】
また、光源からの光を直接透明板に照射するもののみならず、光源を透明板から離れた場所に設置し、光ファイバ等のライトガイドで副光を透明板の周端面まで導くようにしたものでも良い。このような透明板に光ファイバにより光を供給するシステムにおいては、2つの透明板からファイバーを個々に引き、1つの光源からの光を光路切り替えミラーなどで切り替えることで、明期、暗期を交互に切り替えることにより、コスト低減を図ることも可能になる。
【0037】
植物育成設備の壁体は、側周壁が開口部を持つものであっても、天板のみのものであってもよく、その植物育成用家屋が天板とそれを支える柱からなるものであってもよい。
【0038】
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態における植物育成設備の模式的構造図。
【図2】前記形態における植物育成用照明装置。
【図3】前記形態における透明部材の一部断面拡大図。
【図4】前記形態における植物育成用照明装置のレーザー光照射の模式図。
【符号の説明】
【0040】
1 ・・・壁体(側周壁、天板)
2 ・・・植物
3 ・・・植物育成空間
5 ・・・植物育成用照明装置
6 ・・・透明部材(透明板)
6a ・・・端面(周端面)
6b ・・・一面(外面、平滑鏡面仕上げ面)
6c ・・・反対面(内面、粗仕上げ面)
7 ・・・光源(半導体レーザー)
8 ・・・植物育成設備
L1 ・・・主光(太陽光)
L2 ・・・副光(レーザー光)
【出願人】 【識別番号】505125945
【氏名又は名称】学校法人光産業創成大学院大学
【出願日】 平成18年3月29日(2006.3.29)
【代理人】 【識別番号】100118717
【弁理士】
【氏名又は名称】梅井 美佐


【公開番号】 特開2007−259796(P2007−259796A)
【公開日】 平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願番号】 特願2006−91146(P2006−91146)