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【発明の名称】 育苗培地
【発明者】 【氏名】佐藤 敦

【氏名】金田 吉弘

【氏名】山内 秀文

【要約】 【課題】育苗箱を使用する必要のない育苗培地及びその製造方法を提供すること、床土を必要としない育苗培地及びその製造方法を提供すること、及びJAS有機認証をクリアする米を生産できる育苗培地及びその製造方法を提供すること。

【解決手段】牛ふん堆肥のような家畜ふん堆肥、ビール濾過残材のような醸造過程濾過残材及びバインダーよりなる育苗培地。さらに生分解性強度補強材を含有してなることが好ましい。本発明の育苗培地は、樹脂製の育苗箱が不要であり、育苗箱に関連する作業や保管スペースも不要となる。また、化学肥料を用いなくても育苗培地の材料となる家畜ふん等の肥料成分で十分育苗可能である。JAS有機米生産で最も苦労している育苗段階での無農薬及び無化学肥料による育苗が可能となる。さらに床土を必要としないので、作業量の軽減と土取場の環境保全が図られる等の特徴を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜ふん堆肥、醸造過程濾過残材及びバインダーよりなる育苗培地。
【請求項2】
さらに生分解性強度補強材を含有してなる請求項1の育苗培地。
【請求項3】
家畜ふん堆肥が牛ふん堆肥である請求項1又は2の育苗培地。
【請求項4】
醸造過程濾過残材がビール濾過残材である請求項1、2又は3の育苗培地。
【請求項5】
バインダーが樹脂接着剤又は天然系接着剤である請求項1〜4のいずれか1項の育苗培地。
【請求項6】
生分解性強度補強材が植物繊維である請求項2〜5のいずれか1項の育苗培地。
【請求項7】
家畜ふん堆肥、ビール濾過残材及びバインダーを混合し、加熱して加圧成型することを特徴とする育苗培地の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は育苗培地及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、家畜ふん堆肥を利用した育苗培地及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水稲の苗の育苗・移植技術としては、塩化ビニル等の樹脂製の育苗箱に、肥料や殺菌剤を混和した黒ボク土が主体の床土をいれて、灌水後催芽済み水稲種子を播種して覆土後、ビニールハウスに並べて育苗し、田植機で移植しているのが一般的である。
しかしながら、従来の技術では、以下のような問題点がある。即ち、移植作業後の育苗箱の洗浄・運搬・保管にかなりの労力及びスペースを要すこと、また使用済みの育苗箱は産業廃棄物となってしまうこと、床土としている山土は残存量が低下しており、年々入手が困難となってきていることなどである。さらに、灌水後の育苗箱は約7kgの重さがあり、持ち運び作業は高齢化している農業従事者にとっては重労働である。また、化学肥料や薬剤を使用するので生産される米はJAS有機対象とならない。
特許文献1には、樹皮を利用した育苗用培地が開示されている。しかしながら、育苗箱自体は従来のものを使用するので、上記の問題点の多くは解決されていない。
【特許文献1】特開2002−125455公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は育苗箱を使用する必要のない育苗培地及びその製造方法を提供することである。本発明の他の目的は床土を必要としない育苗培地及びその製造方法を提供することである。本発明のさらに他の目的はJAS有機認証をクリアする米を生産できる育苗培地及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記本発明の目的は以下により達成される。
1.家畜ふん堆肥、醸造過程濾過残材及びバインダーよりなる育苗培地。
2.さらに生分解性強度補強材を含有してなる前記1の育苗培地。
3.家畜ふん堆肥が牛ふん堆肥である前記1又は2の育苗培地。
4.醸造過程濾過残材がビール濾過残材である前記1、2又は3の育苗培地。
5.バインダーが樹脂接着剤又は天然系接着剤である前記1〜4のいずれか1項の育苗培地。
6.生分解性強度補強材が植物繊維である前記2〜5のいずれか1項の育苗培地。
7.家畜ふん堆肥、ビール濾過残材及びバインダーを混合し、加熱して加圧成型することを特徴とする育苗培地の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明の育苗培地は、養分としてN,P,Kを含んでおり、成型した板状の培地に直接播種しそのまま移植できるので、従来の樹脂製の育苗箱が不要であり、育苗箱に関連する作業や保管スペースも不要となる。また、化学肥料を用いなくても育苗培地の材料となる家畜ふん等の肥料成分で十分育苗可能である。成型は通常100〜240℃の高温で行うので、殺菌効果があり殺菌剤を用いる必要がない。従って、JAS有機米生産で最も苦労している育苗段階での無農薬及び無化学肥料による育苗が可能となる。さらに床土を必要としないので、作業量の軽減と土取場の環境保全が図られる。培地の自重が軽く、従来型育苗箱と床土を合わせた重量の約5分の1程度であることから、持ち運び作業が格段に軽労化される。さらに、畜産農家から排出される家畜排泄物による堆肥を活用することで地域資源の利用拡大にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる家畜ふん堆肥としては、牛ふん、鶏ふん、豚ふん、馬ふん等の堆肥を用いることができ、牛ふん堆肥が好ましい。家畜ふん堆肥は完熟堆肥が好ましい。
醸造過程濾過残材とは、例えばビール濾過残材が例示できる。ビール濾過残材とはビールの製造過程で生じる麦芽残渣と珪藻土のような使用済みの濾過助剤の混合物であり、粗繊維とケイ酸が主な成分である。
バインダーとしては、ウレタン系、尿素樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系等の樹脂系接着剤、米デンプン、馬鈴薯デンプン、とうもろこしデンプン等のデンプン、ニカワ、大豆タンパク、カゼイン、獣血等の天然系接着剤を用いることができる。
【0007】
本発明においては、好ましくは生分解性強度補強材が培地の強度の改善、成型性の改善、通気・通水性の制御、材料の崩壊性の制御などの目的で用いられる。生分解性強度補強材としては、例えば稲藁、ケナフ、木繊維、パルプ等の植物繊維が例示できる。
本発明における家畜ふん堆肥と醸造過程濾過残材の混合比(家畜ふん堆肥:醸造過程濾過残材)は特に制限はないが、通常重量比で1:0.2〜1.5である。また、バインダーは特に制限はないが、通常家畜ふん堆肥と醸造過程濾過残材の混合物100重量部に対して3〜30重量部添加する。また、生分解性強度補強材は最大10重量%用いることができる。
【0008】
本発明の育苗培地は、例えば次のようにして製造できる。
家畜ふん堆肥、醸造過程濾過残材を乾燥する。乾燥は自然乾燥あるいは機械乾燥により、また、これらを組み合わせてもよい。乾燥は水分含量が約15重量%以下となるようにするのが好ましい。乾燥した家畜ふん堆肥、醸造過程濾過残材、及び必要に応じて生分解性強度補強材を所定割合で混合し、さらにバインダーを混合した後、成型する。成型は通常プレス成型で行う。混合した材料を所望の型に入れて、加熱・加圧する。成型条件は、配合処方に応じ適宜実験等により容易に定められるが、通常温度100〜240℃、圧力0.1〜5Pas、時間0.2〜30分である。得られる育苗培地の密度は、0.4g/cm以上であることが強度の面で好ましい。
【0009】
本発明の育苗培地の形状は、特に制限はないが、水稲用の場合は田植機にそのままセットできるような形状が好ましい。例えば、厚さ0.3〜2cmの板状でよい。均一に播種できるように板上に溝を切ってあってもよい。
本発明の育苗培地を使用して、育苗するには、水稲の場合は例えば次のようにして行う。ビニールハウス内で、育苗培地に催芽籾を播種し、覆土し、灌水する。所望の大きさの苗になったら、培地ごと田植機にセットし、田圃に移植する。播種後約25日目の培地の状況は膨軟で崩壊性があり、苗の引き抜きに支障はないことから田植機での一連の機械作業も問題なく行うことが可能である。培地は田圃でそのまま分解し、肥料となる。
【実施例】
【0010】
以下に、本発明を実施例で説明する。
実施例1
4ヵ月程度管理し完熟させた牛ふん堆肥とビール濾過残材を、天然乾燥後105℃の恒温機にて24時間乾燥した。乾燥後、それぞれを重量比で1:1の割合で混和した。さらにこの混合物に対してフェノール・ホルムアルデヒド樹脂接着剤を全乾重量比で9:1の割合で噴霧塗布した。
次に、この混合物を用いて、断面鋸刃状の溝を有する波板状の培地を製造した。正方形の枠の内側に、断面上側が鋸状の山と谷の線条を有する下型をセットし、その上に上記混合物を撒き、その上に断面下側が鋸状の谷と山の線条を有する上型をセットし、圧縮した。溝底部の目標密度は0.7g/cm(全乾)とした。成型用の型はアルミ材質で、削り出しにて雌雄一組のものとし、溝深さは7mm、ピッチを15mm、底厚3mmで設計した。圧縮条件は160℃、5分間とし、初期圧縮圧力は2Paとした。
得られた育苗培地は持ち運び等の作業において十分な強度を有していた。
ビニールハウス内で、この育苗培地に、催芽籾を50g播種し、溝中に培土を加え0.7L程度を潅水した。追肥も薬剤散布も無く、播種後25日目の9月13日には健苗状態で3.5葉に達した。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明の育苗培地は、従来の育苗箱が不要で、水稲をはじめとする各種植物の育苗用として、使用できる。材料となる家畜ふん堆肥は安価で、製造工程も簡単であることから、商品を安価に供給することができる。
【出願人】 【識別番号】506106062
【氏名又は名称】由利本荘市
【出願日】 平成18年3月29日(2006.3.29)
【代理人】 【識別番号】100098556
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 紘造


【公開番号】 特開2007−259768(P2007−259768A)
【公開日】 平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願番号】 特願2006−89893(P2006−89893)