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【発明の名称】 水性ゲル培地、水性ゲル培地乾燥体、及び、植物の栽培方法
【発明者】 【氏名】西山 雄悟

【要約】 【課題】生産性が良好で、かつ、発芽や生長に障害を起こさない水性ゲル培地を提供する。

【解決手段】水性ゲルからなり、紐状あるいは帯状である水性ゲル培地であり、播種用孔などを設ける必要がなく、例えば容器内や平らな場所などに堆積すれば、その堆積体内の水性ゲル培地同士の間に形成された空間内の所定の深さに容易に種子を播種することができ、かつ、そのとき、灌水による水の供給や大気からの酸素の供給も妨げられることがないので、発芽や生長に障害を起こさず、また、水抜けが良好でありながら、堆積体内部に適当な量の水を保持することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ゲルからなり、紐状あるいは帯状であることを特徴とする水性ゲル培地。
【請求項2】
請求項1に記載の水性ゲル培地を乾燥させてなることを特徴とする水性ゲル培地乾燥体。
【請求項3】
請求項1に記載の水性ゲル培地を堆積してなる堆積体に播種することを特徴とする植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培に適した培地に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の栽培において、収量の向上や作業性向上、あるいは、管理上の利便性などの目的で、圃場に直播されずに育苗培土に播種され、発芽して苗となった状態で圃場に移植されることがある。
【0003】
このような用途に、特開平9−74919号公報(特許文献1)ではブロック状の水性ゲル培地がそれぞれ提案されている。
【0004】
しかしながら、このような水性ゲル培地は、水性ゲル体に播種用孔や水抜け穴を設ける手間がかかって生産性が低く、また、種を播種用孔部に入れた後では、灌水しても種子が播種用孔部への水の流入を妨げるので、発芽しにくくなる場合があるなどと云う問題点があった。
【特許文献1】特開平9−74919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、生産性が良好で、かつ、発芽や生長に障害を起こさない水性ゲル培地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水性ゲル培地は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、水性ゲルからなり、紐状あるいは帯状である水性ゲル培地である。
【0007】
また、本発明の水性ゲル培地乾燥体は請求項1に記載の水性ゲル培地を乾燥させてなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の植物の栽培方法は、請求項1に記載の水性ゲル培地を堆積してなる堆積体に播種することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性ゲル培地には播種用孔などを設ける必要がなく、例えば容器内や平らな場所などに堆積すれば、その堆積体内の水性ゲル培地同士の間に形成された空間内の所定の深さに容易に種子を播種することができ、かつ、そのとき、灌水による水の供給や大気からの酸素の供給も妨げられることがないので、発芽や生長に障害を起こさず、また、水抜けが良好でありながら、堆積体内部に適当な量の水を保持することもできる。
【0010】
本発明の水性ゲル培地は根の付いた植物の培地としても用い得るが、生け花(切り花)の培地としても用いることができる。
【0011】
さらに、紐状あるいは帯状であるため、連続的に、生産性良く生産することが容易であるとともに、互いに絡まり合うので、特開平6−276873号公報などで知られる粒状の水性ゲル培地に比べ、堆積体の厚さが薄い場合であっても植物はしっかりと自立でき、その効果は特に上記のように切り花用の培地として用いた場合に高い。
【0012】
また、従来にない画期的な形状をしているので、室内や窓際での植物の栽培に応用でき、インテリア性が高く、また、一般に透明性の良好な水性ゲルから構成されているため、内部に染料や顔料などの着色体や色ビーズ等を配合することでインテリア性を高めることができる。
【0013】
本発明の水性ゲル培地乾燥体は上記水性ゲル培地を乾燥させてなり、水や各種水溶液に浸漬等の手段により接触させれば、再度給水して水性ゲル培地が形成されるので、保管性や運搬性が著しく向上するとともに、その時、上記水性ゲル培地が有する効果をすべて有する。
【0014】
本発明の植物の栽培方法によれば、水性ゲル培地同士の間に形成された空間内の所定の深さに容易に種子を播種することができ、かつ、そのとき、灌水による水の供給や大気からの酸素の供給も妨げられることがないので、発芽や生長に障害を起こさない。
【0015】
また、従来にない画期的な形状をしている水性ゲル培地を用いるので、室内や窓際での植物の栽培に応用でき、このとき、インテリア性が高く、また、一般に透明性の良好な水性ゲルから構成されているため、内部に染料や顔料などの着色体や色ビーズ等を配合することでインテリア性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の水性ゲル培地における水性ゲルは、水性ゲル培地やゲル被覆種子などに用いられる一般的な水性ゲルを用いることができる。
【0017】
そのような水性ゲルとしてはアルギン酸ナトリウム、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、ゼラチン、カラギーナン、ポリアクリル酸ナトリウム、及び、寒天などから選ばれる天然・合成ゲル形成性高分子の少なくとも1種類と水とによって形成されるものが挙げられる。なお、これらのうち、ゲル化のために金属イオンが併存することが必要なものがあり、それら金属イオンを供給する塩、アルカリなどを適宜添加する。さらに第三成分として各種防腐剤、肥料成分、成長促進剤等も適宜追加することができる。
【0018】
このような、金属イオンと共に水性ゲルを形成する水溶液としては、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶液が挙げられる。また、これらを水性ゲルとして硬化させる金属イオンとしてはカルシウム、バリウム等の2価金属やアルミニウムが用いられていて、これらは植物物体への悪影響を防止するため通常、塩化物水溶液として用いられる。
【0019】
また、水性ゲル形成性水溶液としてカルボキシメチルセルロース水溶液、凝固液として硫酸カリウムアルミニウム(カリウムみょうばん)水溶液を用いることもできる。
【0020】
本発明における水性ゲル体の水分率は90%以上となるようにすることが望ましい。水分率が低いと水性ゲル体が収縮し、ゲル体間の水分保持能力が低下する。
【0021】
本発明の水性ゲル培地は、例えばゲル形成性水溶液を、ゲル形成性水溶液を凝固させる作用を有する金属イオンを含む溶液(凝固液)に導入させることにより、凝固(ゲル化)させることにより得ることができる。
【0022】
なお、凝固後に凝固液の中に長時間浸漬したままに放置したり、あるいは、凝固液から引き上げた状態で放置するとゲル体の硬化が進行して硬くなってしまうので、必要に応じて水洗し、過剰の凝固成分を除去する。
【0023】
本発明の水性ゲル培地は上記のように製造された状態のまま用いることができるが、運搬、あるいは保存等のため、必要に応じ乾燥させても良く、その場合には、使用前に水に浸漬するなどの手段により、容易に紐状あるいは帯状の水性ゲル培地に復元する。なお、このような乾燥状態の水性ゲル培地(「水性ゲル培地乾燥体」と云う)も本発明に含まれる。
【0024】
乾燥方法としては一般的な乾燥方法を用いることができ、通風乾燥、温風乾燥、熱風乾燥、真空凍結乾燥、各種乾燥剤(消石灰、塩化石灰、シリカゲル、塩化リチウム等)を使用しての乾燥などが挙げられる。
【0025】
本発明の水性ゲル培地において、紐状の水性ゲル培地の場合、その太さとしては使いやすさや強度とを勘案して決定するが、例えば、通常、1mm以上15mm以下である。太さが1mm未満であると取り扱い上求められる強度が得られず、また、15mm超であると一般に大きすぎて使いにくくなるが、例えば樹木等の水耕栽培(ハイドロカルチャー)などでは15mm超の太さの水性ゲル培地であっても使用することができる。断面形状は真円である必要はなく、略円形、長円、正方形、角の丸まった正方形、三角形や五角形などの多角形、あるいは、不定形(雲状)などであっても良い。
【0026】
帯状とする場合には通常、その幅は、厚さ(紐状の水性ゲル培地の太さと同じく1mm以上15mm以下とすることが好ましい。)の1.1(ほぼ紐状)〜10倍程度とすることが、取り扱い上好ましい。帯状の水性ゲル培地の断面は長方形以外に、長円、あるいは、角部が丸まった長方形、複数の円が連なった形状(フラット電線状)等が挙げられる。
【0027】
本発明の水性ゲル培地において、長尺方向の長さとしては取り扱いができ、栽培する植物を支持することができるような長さであれば特に制限はないが、例えば上記太さの10倍以上であれば、植物の支持と共に、植物の生育に必要な通気、透水性を確保できる。また1m程度以下であることが取り扱い上好ましいが、それ以上の長さであっても、リール等に巻き取る等の手段により取り扱い性を向上させることができる。
【0028】
本発明の水性ゲル培地に播種される種子としては、通常の種子、被覆種子、ゲル被覆種子あるいは、生育能力のある胚あるいは不定胚などの種子類似物(切片や塊茎などの組織を含む。)が挙げられ、本発明では、これらを併せて「種子」と云う。
【0029】
本発明の水性ゲル培地は、通常はランダムに堆積させて用いるが、例えば長さ方向を引き揃えて用いても良く、その場合、列を揃えて播種、生育させることが容易になる。また培地間を通過させる水の流れの制御が容易となる。
【0030】
本発明の水性ゲル培地には、必要に応じ、長手方向の強度を上げて操作性を向上させるために、内部に糸(ストランド、ヤーン)、紐など、あるいは、短繊維等の補強繊維体を配しても良い。
【0031】
本発明の水性ゲル培地で育った植物をそのまま培地ごと圃場に移植する場合にはこのような糸、紐などの補強繊維体としては自然分解される天然繊維や合成繊維からなることが、回収や廃棄などの手間が不要であるので好ましい。なお、短繊維による補強の場合には例えば水性ゲル培地の原料となるゲル形成性水溶液にこれら短繊維を混合することで実現でき、また、糸や紐による補強の場合にはゲル形成性水溶液の液流にこれら繊維体を供給した後凝固液に導入させることにより糸や紐による補強がなされた紐状あるいは帯状の水性ゲル培地を得ることができる。なお、紐や糸は1本だけでなく、複数本によって補強を行っても良い。
【0032】
本発明の水性ゲル培地は通常は透明な水性ゲル体からなり、このとき、通常は外部から種子の発芽の状況や根の生育状況をおおよそ観察することができるので、一般の植物栽培用途の他に、成長状態や健康状態をチェックする、例えば生物観察用途や教育分野、あるいは、試験栽培などの用途に用いることができる他、インテリア、水耕栽培(ハイドロカルチャー)分野などの広い分野に好適に応用できる。
【0033】
特にインテリア用途等では、本発明の水性ゲル培地の内部に染料や顔料などの着色体や色ビーズ等を配合することで、インテリア性をより高めることができる。
【0034】
以下、本発明について図面を用いて説明する。
図1(a)には本発明に係る水性ゲル培地のモデル図を示した。この例では断面が円形の、紐状の水性ゲル培地を示した。
図1(b)には本発明に係る水性ゲル培地を乾燥してなる本発明に係る水性ゲル培地乾燥体を示した。乾燥により本発明に係る水性ゲル培地は水分を失って細くなる。
図1(c)には本発明に係る水性ゲル培地を容器内に堆積させ、その堆積体内部に種子を播種した状態をモデル的に示した。
【0035】
このような水性ゲル培地は図2〜図5に示す装置を用いて製造することができる。
図2に示すように水性ゲル形成性水溶液タンク1内部の水性ゲル形成性水溶液2は空気導入口1aから導入される空気の圧力により、水性ゲル形成性水溶液タンク1底部から配管3によりノズル部4に供給される。
【0036】
水性ゲル形成性水溶液2はノズル部4の下部の開口4aから液流となってノズル4下方の凝固液槽5に向かって流れ落ちる。
【0037】
上記装置において、ノズル4下端はこの例では凝固液槽5の凝固液5cの液面上方に位置しているが、ノズル4下端が凝固液5cの中に位置するようにさせても良い。ただし、ノズル4下端が凝固液槽5の凝固液5cの液面上方に位置させた場合には、ノズル4の内部での詰まりが発生するおそれがない。
【0038】
凝固液槽5の凝固液5cは凝固液槽5に付属する管路5a及びポンプ5bによって循環されているため、水性ゲル形成性水溶液の凝固斑が発生しないようになっている。凝固液内に滞在する時間により、凝固液との接触時間が決定されるので、凝固液槽5の長さの調整や、後述するローラ6による凝固液槽5からの取り出し速度の調整などにより、適切な凝固状態が得られるように調整する。
【0039】
この装置の凝固液槽5の川下側端部には板5dが斜めに置かれており、その先に、ローラ6が設けられ、図示しないモータにより回転されている。得られる水性ゲル培地の紐状の被覆ゲル体の太さは、ノズル4の径、及び、ノズル4に供給される水性ゲル形成性水溶液2の量、及び、ローラ6の回転数によって決定される。なお、凝固液槽5の川下側端部に置かれた板5dにより紐状の水性ゲル培地は傷つくことなくローラ6に供給されるが、板5dの代わりに、凝固液槽5の川下側端部を斜めにしてもよい。
【0040】
ローラ6の下方には、受けざる9と水洗槽8とがあり、水洗槽8にはその底部から流水が供給されて、他の側の底部の排水口8aから排水されるようになっていて、受けざる9に入った紐状の水性ゲル培地はこの水によって水洗されるとともに、過剰の凝固成分は水洗槽8底部へ沈み、排水口8aから排出されるので、洗浄効率が高い。
【0041】
ローラ6と水洗槽8との間には図中左右に往復動する振り分け板7があって、受けざる9へ供給される紐状の水性ゲル培地が受けざる9内で偏在しないようになっているため、効率的に水洗が行われる。
【0042】
振り分け板7の上部には図中左右に刃が付いた諸刃のカッター7aが設けられ、振り分け板7の左右往復運動時に、紐状の水性ゲル培地を適切な長さ(例えば2m)に切断するようになっている(図3参照)。なお、このカッター7aは必須なものではなく、受けざる7内で水洗された紐状の水性ゲル培地は長尺のまま、例えばリールで巻き取っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)本発明にかかる紐状の水性ゲル培地を示すモデル図である。(b)図1(a)の水性ゲル培地を乾燥してなる紐状の水性ゲル培地乾燥体を示すモデル図である。(c)図1(a)の水性ゲル培地を容器内に堆積させ、その堆積体内部に種子を播種した状態をモデル的に示す図である。
【図2】本発明に係る水性ゲル培地の製造装置を示す図である。
【図3】凝固液槽5の川下側端部付近のモデル拡大図である。
【符号の説明】
【0044】
1 水性ゲル形成性水溶液タンク
2 水性ゲル形成性水溶液
3 配管
4 ノズル
4a ノズル4の外管の下部の開口
5 凝固液槽
5c 凝固液
6 ローラ
7 振り分け板
7a カッター
8 水洗槽
9 受けざる
【出願人】 【識別番号】597041747
【氏名又は名称】アグリテクノ矢崎株式会社
【出願日】 平成18年2月8日(2006.2.8)
【代理人】 【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄

【識別番号】100097858
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 浩史

【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男

【識別番号】100075421
【弁理士】
【氏名又は名称】垣内 勇


【公開番号】 特開2007−209234(P2007−209234A)
【公開日】 平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願番号】 特願2006−30928(P2006−30928)