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【発明の名称】 マルチシート
【発明者】 【氏名】水野 卓也

【氏名】海野 朋行

【氏名】寺田 行宏

【要約】 【課題】廃棄物である製紙スラッジ灰を有効利用でき、日光を遮蔽するとともに紙の表面で乱反射し、植物の下部にも効率的に日光があたり、使用後は回収処分しなくとも生分解するマルチシートを提供する。

【解決手段】二酸化チタンの含有量が60%以上である製紙スラッジ灰、好ましくは未燃焼炭素を除去したもの、を、木材パルプを主成分とするパルプ100重量部に対し15〜120重量部内添し湿式抄紙する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタンの含有量が60%以上である製紙スラッジ灰を、木材パルプを主成分とするパルプ100重量部に対し15〜120重量部内添したマルチシート。
【請求項2】
製紙スラッジ灰が、未燃焼炭素を除去したものである、請求項1記載のマルチシート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用に使用されるマルチシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農産物を育成する際に、地温の保温、雑草の発生防止等のために、畑の土壌面に敷くマルチシートとして、ポリオレフィン系のプラスチックフィルムを黒く着色したものが用いられてきた。しかしながら、これらフィルムは生分解性がなく、使用後回収し、廃棄処分する必要があった。また、廃棄においても、焼却すれば有害なガスや化合物が発生するものもあり、大きな問題点となっていた。
【0003】
そこで、土壌中で腐植、分解する特性を有した紙を利用した生分解性を有するマルチシートが提案されている。例えば、特許文献1には、光触媒酸化チタンを防湿層に含有させた生分解性を持たせた紙マルチシートが、特許文献2には、紙からなる支持体にカーボンブラックを主とした光遮蔽剤とキトサンを塗布・含浸したマルチシートが、特許文献3には、生分解性プラスチックシートに紙シートを擬似接着させ特定の波長の光の透過率を低くしたマルチシートが、特許文献4には、紙基材中に天然素材より製造された多孔質炭粉が添加されたマルチシートが、それぞれ開示されている。
【0004】
一方、産業から発生する廃棄物の一つである製紙スラッジの再利用については、いくつかの方法が報告されている。例えば、特許文献5には、製紙スラッジと家畜糞尿を混ぜて発酵させた肥料、特許文献6には、製紙スラッジの焼却残渣をアルカリ溶液で処理して多孔質物質を製造する方法、特許文献7には、製紙スラッジ焼却灰に珪酸あるいはアルミニウム富化材を加えてアルカリ溶液中処理するゼオライト系資材を得る方法、がそれぞれ開示されている。しかし、製紙スラッジの中でも、化粧板原紙等の製造工場から排出されるものは二酸化チタンを多く含有しており、その回収、再利用が望まれているが、スラッジ中に無機顔料成分等も含まれているため精製が困難で、有効な再利用方法についての報告はない。
【特許文献1】特開2000―116250号公報
【特許文献2】特開平6―62680号公報
【特許文献3】特開2001−197837号公報
【特許文献4】特開平10−248409公報
【特許文献5】特開2004−43691号公報
【特許文献6】特開2003−81627号公報
【特許文献7】特開2001−179208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、製紙スラッジの有効利用を図ると共に、木材パルプを主原料とするため生分解性に優れ、雨で濡れても遮蔽力を維持でき、かつ、日光を乱反射することにより、植物の下の方の果樹や葉にも日光を効率よくあてる農業用のマルチシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる課題を解決するため、製紙スラッジ灰の中でも二酸化チタンの含有率の高いものに着目し、特に精製等することなくこれを紙に内添することにより、課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)二酸化チタンの含有量が60%以上である製紙スラッジ灰を、木材パルプを主成分とするパルプ100重量部に対し15〜120重量部内添したマルチシート、
(2)製紙スラッジ灰が、未燃焼炭素を除去したものである、上記(1)記載のマルチシート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のマルチシートは、二酸化チタンを多く含有する製紙スラッジを木材パルプを主成分とする紙に内添することにより抄造して得られる紙であるため、二酸化チタンの高い屈折率により、光の遮蔽力に優れ、雑草等の光合成を阻害しその発生防止をはかると共に、紙の表面で光を乱反射させることにより、目的とする植物の下の方の果樹や葉にもよく光があたり、果樹の着色ムラを防ぎ、植物の生育に寄与する。
また、雨に濡れたときにも遮蔽力を維持し、かつ、使用後はマルチシートの主成分が木材パルプであり生分解するので回収する必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるパルプは、木材パルプを主成分とするものであり、木材パルプ単独、あるいは木材パルプに一部非木材性繊維を混合したものである。
木材パルプとしては、NBKP、NBSP、LBKP、LBSP等が挙げられるが、特にNBKPとLBKPを混合して使用することが好ましい。
パルプは、600〜400mlCSFに叩解するのが望ましい。
【0009】
本発明で用いられる製紙スラッジ灰は、二酸化チタンを60%以上含むものである。二酸化チタンの含有量が60%未満だと、紙に内添したときに二酸化チタンの効果が十分に発現しない。
なお、製紙スラッジ灰とは、製紙スラッジ(工場廃液を凝集沈殿させた、パルプ、有機・無機顔料等を含むヘドロ状のもの)を、焼却炉で焼却処理し水と大部分の有機物を燃焼した後の焼却灰をいう。製紙スラッジ灰から、二酸化チタンを精製・回収することなく、そのまま使用できることも本発明の特徴の一つである。
製紙スラッジ灰は、目視で黒色〜灰色にある場合は、光の遮蔽性は十分であるものの、光の乱反射による植物の下方からの光が十分に確保されないため、例えば、700℃程度で30分〜数時間処理することにより、残留する有機物の未燃焼炭素を焼成し、未燃焼炭素1%未満、好ましくは0.1%未満まで取り除くことが望ましい。
【0010】
製紙スラッジ灰は、パルプ100重量部に対して、15〜120重量部添加される。
製紙スラッジ灰が15重量部以下だと、光の遮蔽性と乱反射が十分に得られない。また、120重量部以上にすると十分な紙の強度が得られない。
【0011】
本発明のマルチシートには、耐水性を付与するために、サイズ剤を内添あるいは外添することが望ましい。内添する場合のサイズ剤としてはアルキルケテンダイマーが望ましい。外添する場合のサイズ剤としてはアクリルスチレンのエマルジョンタイプが望ましい。
また、湿潤紙力増強剤であるポリアクリルアミドエピクロロヒドリン等の、公知の製紙薬品を内添することもできる。
【0012】
本発明のマルチシートは、木材パルプを主成分としたパルプに、製紙スラッジ灰、必要に応じて各種製紙薬品を添加した紙料を、公知の抄造法で抄紙することにより製造することができる。抄造法としては、長網抄紙機による抄造法が好ましい。
【0013】
本発明のマルチシートは、下記特性を有するものである。
(1)光を遮蔽する成分が製紙スラッジ灰由来の二酸化チタンでり、光の遮蔽力があり、かつ光を反射すること。
(2)パルプを主成分とする紙で生分解性があること。
【実施例】
【0014】
以下実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
本実施例、比較例における評価は、以下の方法によった。
(1)遮光性
自記分光光度計U―3200(日立製作所製)で、700nm、680nmで透過率(%)を測定し、遮光率=100―透過率とした。
数値が高い方が遮光性に優れる。
(2)湿潤遮光性
マルチシートを水に3分浸漬後、余分な水を濾紙で拭き取り、(1)と同様の方法で遮光率を測定した。
(3)光の反射性
光の反射性の指標としては、明度(L)をマクベス分光光度計CE―3100(サカタインクス製)で測定した。
明度は白い紙ほど光を反射し数値が高くなる。
(4)生分解性
マルチシートを土の中に埋め5ヶ月間放置後掘り出し形状を目視で確認した。
形状を維持しているものをX、ほとんど形状を維持していないものを○、とした。
【0015】
実施例1
針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)20重量部/広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)80重量部をDDRで叩解し、500mlCSFとした。これに湿潤紙力剤:ポリアクリルアミドエピクロロヒドリン2.5重量部を添加した。次いで、二酸化チタン分を67%含む製紙スラッジ灰(SiO:8.8%、MgO:5.7%、Fe:2.6%、TiO:67.0%、Al:10.4%、未燃焼炭素:5.3%)を700℃で2時間焼成して未燃焼炭素分を除いたスラッジ灰を100重量部添加し、更に紙力助剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.7重量部、てん料定着剤として硫酸アルミニウム3.5%重量部を添加し、pH調整剤:アルミン酸ナトリウムでPH8.5に調整した。これを原料として、手漉きシートマシンで米坪50.2g/m、灰分36.1%の本発明のマルチシートを得た。
【0016】
実施例2
米坪を30g/mで抄造した以外は実施例1と同様に実施し、米坪30.1g/m、灰分30.4%の本発明のマルチシートを得た。
【0017】
実施例3
実施例1において、700℃2時間燃焼したスラッジ灰の添加量を20重量部、米坪を60g/mで抄造した以外は実施例1と同様に実施し、米坪59.3g/m、灰分13.1%の本発明のマルチシートを得た。
【0018】
比較例1
市販の黒色に着色された30μmの厚さのポリエチレン製のマルチシート(米坪30g/m)。
【0019】
比較例2
実施例1において、スラッジ灰にかえて、製紙用黒顔料:KMB−110B(大日精化製)を対パルプ1.2%添加した以外は実施例1と同様に実施し、米坪50.9g/m、灰分3.4%のシートを得た。
【0020】
比較例3
実施例1において、700℃2時間燃焼したスラッジ灰にかえて、未燃焼炭素分を4.1%を含む製紙スラッジ灰(二酸化チタン分67%)を100重量部添加した以外は実施例1と同様に実施し、米坪46.1g/m、灰分26.9%のシートを得た。
【0021】
比較例4
実施例3において、700℃2時間燃焼したスラッジ灰にかえて、未燃焼炭素分を4.1%を含む製紙スラッジ灰(二酸化チタン分67%)を20重量部添加した以外は実施例3と同様に実施し、米坪62.6g/m、灰分14.9%のシートを得た。
【0022】
【表1】


【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明してきたように、本発明によると、廃棄物である製紙スラッジ灰を有効利用でき、日光を遮蔽するとともに紙の表面で乱反射し、植物の下部にも効率的に日光があたり、雨上がりで濡れているときでも日光を遮蔽し、使用後は回収処分しなくとも生分解するマルチシートが提供される。
【出願人】 【識別番号】000142252
【氏名又は名称】株式会社興人
【出願日】 平成18年1月25日(2006.1.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2007−195438(P2007−195438A)
【公開日】 平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願番号】 特願2006−16567(P2006−16567)