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【発明の名称】 ハタケシメジの栽培方法及びその子実体
【発明者】 【氏名】鮎澤 澄夫

【氏名】枝 克昌

【氏名】山内 隆弘

【氏名】吉田 和代

【要約】 【課題】本発明は、ハタケシメジの栽培にあって、芽出し工程を独立的に要することなく省力的に栽培を可能としたもので、省力化と栽培期間の短縮等を可能とする。

【解決手段】ハタケシメジの培養に際して、(1)培養に適した温度領域と原基形成に適した温度領域との重なる領域を温度域として設定し、(2)培養にあって栽培容器から菌床を取り出すことなく栽培容器内に菌床を封じたままで培養と芽出しを同時並行的に進行させ、(3)然る後に芽出しを伴う培養工程と生育工程との2段階でハタケシメジを生育させることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハタケシメジの培養に際して、
(1)培養に適した温度領域と原基形成に適した温度領域との重なる領域を温度域として設定し、
(2)培養にあって栽培容器から菌床を取り出すことなく栽培容器内に菌床を封じたままで培養と芽出しを同時並行的に進行させ、
(3)然る後に芽出しを伴う培養工程と生育工程との2段階でハタケシメジを生育させることを特徴とするハタケシメジの栽培方法。
【請求項2】
培養工程後半もしくは生育工程において、芽出しが行われた子実体を容器内で初期生育させ、容器を取り除く前に、容器の一部を開放状態とすることを特徴とする請求項1記載のハタケシメジの栽培方法。
【請求項3】
請求項1あるいは2記載の方法で生産したハタケシメジの子実体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ハタケシメジの栽培方法に関し、更に詳しくは、従来は培養工程と生育工程の間に芽出し工程が必要であったものを、本発明では芽出し工程を独立的に要することなく省力的に栽培を可能としたもので、省力化と栽培期間の短縮等を可能としたハタケシメジの室内栽培方法及びその子実体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハタケシメジ(Lyphyllum decastes)は、ハラタケ目、キシメジ科、シメジ連、シメジ属のきのこで、9〜10月に庭園、畑および林地竹藪などで株状に発生するきのこであり、子実体の形態がホンシメジと類似し、きのこ類の中でもとりわけ美味で、肉質はホンシメジより固くて歯触りに優れている。
これを菌床栽培する場合には、腐食土の中にハタケシメジ菌糸の蔓延した菌床を埋め込む作業が必要であり、作業そのものに労力を要し、又、得られる子実体にも腐食土が付着するため、商品性を低下させている。
そこで、近年、ハタケシメジの屋外および屋内における人工的な栽培方法について多くの試みがなされ、特に、安定的な生産が可能な屋内での栽培方法の開発が求められている。
【0003】
ハタケシメジは、図3に示す如く、培養工程と芽出し工程および生育工程の三つの工程から成り立っている。
(a)培養工程
先ず、培養工程では、樹木の樹皮に鶏糞、米糠等を混合させたバーク堆肥にハタケシメジの菌糸を播いて、菌糸を蔓延させて増殖する培養工程を踏んでいる。このときハタケシメジは、シイタケ等と比較して木材の分解能力が低いので分解の容易なバーク推肥等を用いる。又、培地全体をビニール等のプラスチック製の栽培容器(例えば袋体)に入れて、雑菌の浸入や繁殖を防いでいる。
【0004】
(b)芽出し工程
次に、芽出し工程に移って、上記栽培容器から菌糸の蔓延した菌床を取り出し、それを土中等に埋設しており、例えば、特許文献 1には、栽培容器から取り出した菌床を覆土により土中に埋め込み、付着土が少ない子実体を短期間で、かつ安定して収穫可能なハタケシメジの栽培方法が提案されている。具体的には、屋内で栽培するハタケシメジの栽培方法において、排水性の有する栽培容器内でハタケシメジの菌床を覆土により埋め込み、その後、該栽培容器内に菌床の上面が覆われるまで覆土を入れる覆土投入工程と、さらに該覆土上に、pH5〜8、粒径4mm以上の透水性を有する被覆土をかぶせる被覆工程とを備えた方法である。ここで、栽培容器から菌床を取り出すのは、新たな土に菌を蔓延させることで安定的な発生の量を確保する為である。
【0005】
また一方、同じく芽出し工程にあって覆土処理を必要とせず温度調節によりハタケシメジの原基形成を誘導する方法がある。例えば、特許文献2には、培養終了後、芽出し工程での温度変化、詳しくは時間的に上下する温度変化が繰り返し起こるように温度調節させ、また同様に湿度調節させる環境条件下で、原基を形成させる方法が提案されている。これは、培養終了後の温度変化がハタケシメジの原基形成に対して有効であることを利用したものである。
【0006】
(c)生育工程
ハタケシメジ子実体の生育には、17℃付近の温度が適している。また、このきのこは、乾燥に非常に弱く、生育時に多湿を好むため、生育室は高湿度を保つことが条件である。また、200lux程度の光がきのこの形状の優れたものを得るためには必要とされるが、これより暗いと柄の長い、これより明るいと柄が短くなる傾向にある。
【特許文献1】特開2005−185191号公報
【特許文献2】特開2004−267087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記土中への埋め込みによる方法では、埋設時に覆土処理が必須工程となり、この覆土作業は大変な手間と時間を必要とし、作業効率を悪くしている。
また、温度調節で芽出しを行う方法では、温度変化もしくは湿度変化を人為的につける該操作タイミングは培養終了後になるため、培養段階の異なる菌床が入っている培養室においては、他の菌床に悪影響を及ぼすために、この設定が不可能である。つまり、培養室および生育室とは別に、時間的に温度変化をつけることが可能な芽出し室が必要となる。その結果、培養室と芽出し室および生育室の三つの部屋が必要となり設備費が嵩むこととなる。
そこで本発明は、種々の研究の結果、ある一定(温度)条件では、特別な芽出し工程を設けることなく培養と芽出しとを並列的に進行させることができ、(1)作業効率の改善と、(2)設備費が安価で、(3)栽培期間の短縮できるハタケシメジの栽培方法を見出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明ハタケシメジの栽培方法は、ハタケシメジの培養に際して、(1)培養に適した温度領域と原基形成に適した温度領域との重なる領域を温度域として設定し、(2)培養にあって栽培容器から菌床を取り出すことなく栽培容器内に菌床を封じたままで培養と芽出しを同時並行的に進行させ、(3)然る後に芽出しを伴う培養工程と生育工程との2段階でハタケシメジ栽培を行うことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、培養工程後半もしくは生育工程において、芽出しが行われた子実体を容器内で初期生育させ、容器を取り除く前に、容器の一部を開放状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
培養初期にあっては、培養に適した温度にあるので従来と同様、菌床へハタケシメジの菌糸が蔓延していき、同時に培地からハタケシメジの菌糸に栄養が供給されていく。この培養に適した温度領域と原基形成に適した温度領域との重なる領域は、培養に適した温度であると同時に原基形成に適した温度でもあるので、ハタケシメジの菌糸には栄養が供給され続ける一方、一定時期を経ると菌床表面に原基が形成され、芽出しが始まる。菌床表面では原基が形成され、芽出しが進む一方で、菌床底部では、未だ培養が充分でないので、培養が進み、芽出しと培養が同時並行的に進む。やがて芽出しが進んで菌床表面のほぼ全てに及ぶと共に、菌床底部での培養もほぼ終了する。
この結果、本発明ハタケシメジ栽培は、特別な芽出し操作あるいは工程を必要とせず、培養工程と生育工程の2段階で成り立たせることができ、栽培工程を簡略化でき、省施設化が促され、さらに栽培サイクルも短縮される。
培養工程後半から生育工程においては、栽培容器を取り除く前に、容器の一部を開放状態とし、芽出しが行われた子実体を容器内で生育させると、湿度保持と共に栽培容器内への酸素の供給が可能になる。この結果、柄と傘の発育のバランスがとれ、肉質の充実した形質良好な商品価値の高いきのこを高収率で収穫することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
〔菌床の作製〕
バーク堆肥を基本とし、培地重量あたりビール粕10%および米ぬか5%を加え、含水率を60〜68%に調整した培地を用意する。これを栽培容器に2.5〜2.7kg充填する。118〜120℃で70分間高圧蒸気殺菌、放冷後、ハタケシメジの種菌(亀山1号(種苗法登録品種:第6470号))を接種する。本工程は従来と同様である。
【0011】
〔培養工程〕
次いで、図2に示す如く、培養工程では、室温15〜20℃、相対湿度60〜95%に調整した室内で菌床を培養する。ただし、この時、15〜20℃の温度から任意の温度を選択し、その温度変化を±1℃程度とする。
即ち、旧来培養に適した温度領域は例えば図1に示す如く21〜24℃が最適温度領域とされ、一方原基形成に適した温度領域は17℃付近が最適とされていた。従って、培養工程と芽出し工程とは全く別々の工程として捉えられ、順序的には培養工程が終了してから芽出し工程へと移行する別途独立の段階とされていた。
しかし、本発明者が研究を進めるうち、培養に適した温度領域は21〜24℃より広範囲で、例えば15〜25℃、のぞましくは17〜23℃で培養が可能であることが判明した。即ち、上記最適温度領域に疑問を持ち、実験を行ったところ、培養に適した温度は21℃より低温も含まれ、むしろその低温側により適した温度領域が存在することを見出した。
一方、原基形成にあってその適した温度領域は17℃より広範囲で例えば15〜20℃の領域で原基形成が可能であることが確認できた。即ち、培養に適した温度領域と原基形成に適した温度領域には重なり部分が存在することを見出された。
そこで、この培養に適した温度領域と原基形成に適した温度領域の重なり合う温度領域で培養すると、培養が進行すると共に先ずは菌床内に菌糸が蔓延して一定期間を経ると原基が形成されてきた。
これは、菌糸の蔓延が可能である温度であると共に原基形成が可能である温度であるので、ハタケシメジの自己生長の過程で原基形成の条件の整った箇所では自発的に芽出しを行うと共に未だその条件のない箇所では培養を続行するという同時並行的に工程が進行する為である。
【0012】
例えば、種菌(例えば、亀山1号(種苗法登録品種:第6470号))を接種した菌床を温度19±1℃、相対湿度60〜95%に調整した培養室で培養を行うと、培養開始から約40日以降に、菌床上面に原基が確認できる。亀山1号の場合、19±1℃は、培養最適温度ではなくて、培養最適温度より低めであるが菌糸蔓延が可能な温度であり、原基形成に最適な温度より高めの領域となる。
ここでのハタケシメジの原基とは、隆起した白い粒状のもので、一次蔓延手前(培養開始から40日目以降)にみられる。この原基が肉眼で確認できれば、培養工程から生育工程に移行させる。つまり、原基形成確認、あるいは原基形成後の子実体生育初期段階を培養工程として捉える。
【0013】
そして、このとき、この培養と芽出しとは、栽培容器内で同時並行的に進行している。従って、従来の如く芽出し工程で栽培容器から菌床を取り出し、覆土し、又は芽出し室の温度変化を行う必要がなく、栽培容器内に菌床を封入させたままで上記工程を進ませることができる。即ち、従来の如く、培養工程と芽出し工程とが別途独立の段階とされている場合には、菌床にハタケシメジ菌糸が十分に蔓延し熟成された後に芽出し工程に入る為に、芽出しのために栽培容器から菌床を取り出し、それを土中に埋めるか、栽培容器から菌床を取り出さない場合でも、芽出し室での温度変化を行う必要があった。
ここで、栽培容器から菌床を取り出し、土中に埋めるのは、安定的なきのこの発生のためには、この方法が確実であったためである。詳しくは、ハタケシメジ菌床の皮膜は、非常に薄いため、内部の水分が蒸散し易い状況となるが、このきのこは乾燥に弱いので、土で覆って湿気を閉じ込めて、乾燥を防ぐために、この覆土作業を伴う。
また、芽出し工程において、温度変化を行うのは、一時的に原基形成温度を菌床が経験することで、確実に原基形成を誘導させるためである。
しかし、本発明にあっては、培養工程において、培養に適した温度領域と原基形成に適した温度領域との重なる領域で培養を行うため、特別な操作(芽出し工程)を必要としなくなり、栽培工程の簡略化、省施設化および栽培期間の短縮を可能にしている。
【0014】
本発明では、隆起した白い粒状(泡粒状)の芽が肉眼で見えるものとなったら、芽出しが完了し、芽出しが行われた子実体が20mm程度になったら、芽が揃った状態となり生育初期段階に至るまでを培養工程としている。
【0015】
〔生育工程〕
次いで、生育工程では、上記培養に適した温度と原基形成に適した温度の重なった領域での温度より低温の温度領域を設定する。その中でも、17℃付近でゆっくり育てると、柄と傘の発育のバランスがとれ、肉質の充実した品質の良好なきのことなる。
【0016】
また、この生育工程、その中でも生育工程初期においては、芽出しが行われた子実体の傘が肉眼的に分化するまで、栽培容器の一部のみの開放に留まるように管理する。これは、袋(栽培容器)全てを切除すると、菌床全体が乾燥してしまい、生育時によりたくさんの湿度を吸収して大きく育つハタケシメジにとって、湿度保持が困難となるからである。このように、生育工程初期段階に限っては、栽培容器の一部を切除して容器内へ必要な酸素のみを供給することが、ボリューム感のある子実体が得られる条件となる。尚、袋を切除する時期は、酸素供給が目的であるので、生育工程初期又は培養工程後半のいずれであっても良い。
【実施例1】
【0017】
バーク堆肥を主体とした従来の方法により、ハタケシメジ菌床を作製し、ハタケシメジ菌(亀山1号)を接種した。接種した菌床は、19±1℃の培養室で培養を開始した。接種から55日目に菌床上面に原基が確認でき、59日目には大きいもので20mm程度に生長したため、培養工程から生育工程に移行することにした。
生育工程では、生育室を温度17℃、湿度95〜100%(RH)に設定した。菌床を生育室に移動した後は、栽培容器の一部を開放状態とし、芽出しが行われた子実体の優良な生育を促した。その状態で4日間置くと、子実体の傘が分化を始め、栽培容器に接触する部分があったため、その時点で、菌床と同じ高さになるように栽培容器の上部のみを切り取り、子実体を生育させた。
そして、発生管理7〜14日後に子実体の収穫が可能となり、具体的には10〜14日後に良質のハタケシメジが収穫できた。なお、1菌床あたり平均710gの収量が得られた。
【0018】
栽培工程を2段階とした本発明と、従来の技術である3段階の場合について、収穫までの所要日数および収量を表1に示し、比較した。本発明は、ハタケシメジ栽培における栽培期間の短縮のみならず、栽培工程を3段階から2段階に簡略化することに成功した。また、本発明を採用することにより、省力化、省施設化、また安定したハタケシメジの発生を可能にしている。
【表1】


【0019】
上記の結果から明らかなように、ハタケシメジ栽培は、培養工程、芽出し操作あるいは工程、生育工程といった従来の3段階であったものを、この発明にあるように芽出し操作あるいは工程を必要としない、つまり培養工程と生育工程の2段階で成り立たせたことから、栽培工程を簡略化できることが実証できた。つまり、省力化、省施設化は当然のことながら、培養から収穫までが62〜74日と短期間のうちに、安定したハタケシメジの発生量の確保を可能にした。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、省力化と栽培期間の短縮等を可能としたハタケシメジの室内栽培方法及びその子実体に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施時期を示すグラフ図。
【図2】本発明の工程の流れを示す図。
【図3】従来の工程の流れを示す図。
【出願人】 【識別番号】000242024
【氏名又は名称】株式会社北研
【出願日】 平成18年1月25日(2006.1.25)
【代理人】 【識別番号】100095739
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 俊夫


【公開番号】 特開2007−195432(P2007−195432A)
【公開日】 平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願番号】 特願2006−16158(P2006−16158)