| 【発明の名称】 |
ヨシの育苗システム |
| 【発明者】 |
【氏名】寺井 学
【氏名】内田 泰三
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| 【要約】 |
【課題】移植可能なヨシの苗を大量かつ短期間に確保する。
【解決手段】本発明に係るヨシの育苗システム1は、苗床2と、該苗床に水を供給する給水設備3と、発芽発根用貯水池4とから概ね構成してある。苗床2は、その底部に苗床資材16を敷設するとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水17を張って構成してある。給水設備3は、水源としての河川(図示せず)から導水された水を貯水する開放型貯水槽6と、該開放型貯水槽内と苗床2内とを連通させる給水管5とから構成してあり、苗床2及び発芽発根用貯水池4内では、かかる給水設備3から供給された水が流水するようになっている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の苗床資材が敷設されるとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床と、該苗床に水を供給する給水設備とから構成するとともに、該給水設備から供給された水で前記苗床内の水が流水するように前記苗床及び前記給水設備の少なくともいずれかを構成し、前記給水設備を、河川、湖沼等の水源から導水された水を貯水する開放型貯水槽と、該開放型貯水槽内と前記苗床内とを連通させる給水管とから構成するとともに、前記苗床内に設定された越流水位を前記苗床内の水位が上回ったときに該苗床内の水がオーバーフロー水として前記苗床の外に排水されるように前記苗床を構成したことを特徴とするヨシの育苗システム。 【請求項2】 前記オーバーフロー水を前記開放型貯水槽に循環させるようにした請求項1記載のヨシの育苗システム。 【請求項3】 前記苗床を直列に複数配置するとともに、該苗床のうち、互いに隣接する苗床同士を連通管で互いに連通させて該連通管内を前記オーバーフロー水が上流側の苗床から下流側の苗床に流入するようにし、前記各苗床のうち、最も上流側に位置する苗床に前記給水管を連通させた請求項1記載のヨシの育苗システム。 【請求項4】 所定の苗床資材が敷設されるとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床と、該苗床に水を供給する給水設備とから構成するとともに、該給水設備から供給された水で前記苗床内の水が流水するように前記苗床及び前記給水設備の少なくともいずれかを構成し、浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキを前記苗床資材としたことを特徴とするヨシの育苗システム。 【請求項5】 所定の苗床資材が敷設されるとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床と、該苗床に水を供給する給水設備とから構成するとともに、該給水設備から供給された水で前記苗床内の水が流水するように前記苗床及び前記給水設備の少なくともいずれかを構成し、水が貯留され該水の表面近傍にヨシの茎を浮上静置可能な発芽発根用貯水池を設けたことを特徴とするヨシの育苗システム。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、主として干潟などの湿地帯に移植するためにヨシの苗を育てるヨシの育苗システムに関する。 【背景技術】 【0002】 自然環境の保全や復元を行うため、水辺に干潟などの湿地帯を造成することによって、水生植物や野鳥、魚介類などの生育環境を作り出し、良好な水辺の景観をもたらすことが期待されている。 【0003】 湿地帯で良好な自然環境を作り出すためには、造成した湿地帯に水生植物を移植するのが有効である。かかる場合には、周辺地域に生育している水生植物の群落から植物を採取し、これを造成した湿地帯に移植する方法が望ましく、かかる植物としてヨシを用いることが多い。 【0004】 ヨシは湿地に群生するイネ科の多年草であり、毎年4月頃から地下茎より芽を出して葉を繁らせ、8〜10月に穂を出し実を結ぶ。その後、冬に地上部は枯れて、翌年の成長に備えて地下茎に養分を貯える。 【0005】 ヨシを移植するにあたっては、かかるサイクルに基づいて考えられており、従来、10月〜11月に種子を採取して播種し又は該種子を育苗して植える、11月〜3月に地下茎を掘り取って植える、4月〜10月に大株を地下茎ごと掘り取って植える、4月〜5月に地上部の茎を根元から切り取って植える、刈り取った茎を浸漬させるなどの方法で行われてきた。 【0006】 浸漬法は、5月〜8月にヨシの茎を切り取り、これを水に浸漬させて茎の節から発芽発根させ、次いで発芽発根した茎を短く切り取ってポット等に植え替え、かかる状態で半年以上育苗し、しかる後、育った苗を移植する方法をいう。 【0007】 【特許文献1】特開平10−313715号公報 【特許文献2】特開平10−136771号公報 【特許文献3】特開平07−095818号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、種子を利用する方法では、土壌や気候等の条件によって発芽率にばらつきがあるうえ、育苗にも2年以上かかるという問題を生じ、地下茎や大株を植える方法では、地下から採取する際に大変な労力を要するうえ、ヨシが自生している採取地を攪乱することになるため、ヨシの生育環境を著しく損なうという問題を生じていた。 【0009】 また、茎を植える方法では、4月〜5月頃に陸上域に生育しているヨシを利用するのが望ましいと言われているが、適期が限られるうえ、ヨシの群落は、一般的には湿地帯に存在していることが多いため、実際には陸上域のヨシを利用するのが難しいという問題を生じていた。 【0010】 また、浸漬法では、採取の労力は比較的少ないが、ポットに植え替える作業が伴うのみならず、育苗するのに半年〜1年の期間を要するという問題を生じていた。 【0011】 なお、市販されている苗を用いることも考えられるが、これを大量に調達するにはコスト面で難があるという問題も生じていた。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、移植可能なヨシの苗を大量かつ短期間に確保することが可能なヨシの育苗システムを提供することを目的とする。 【0013】 上記目的を達成するため、本発明に係るヨシの育苗システムは請求項1に記載したように、所定の苗床資材が敷設されるとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床と、該苗床に水を供給する給水設備とから構成するとともに、該給水設備から供給された水で前記苗床内の水が流水するように前記苗床及び前記給水設備の少なくともいずれかを構成し、前記給水設備を、河川、湖沼等の水源から導水された水を貯水する開放型貯水槽と、該開放型貯水槽内と前記苗床内とを連通させる給水管とから構成するとともに、前記苗床内に設定された越流水位を前記苗床内の水位が上回ったときに該苗床内の水がオーバーフロー水として前記苗床の外に排水されるように前記苗床を構成したものである。 【0014】 また、本発明に係るヨシの育苗システムは、前記オーバーフロー水を前記開放型貯水槽に循環させるようにしたものである。 【0015】 また、本発明に係るヨシの育苗システムは、前記苗床を直列に複数配置するとともに、該苗床のうち、互いに隣接する苗床同士を連通管で互いに連通させて該連通管内を前記オーバーフロー水が上流側の苗床から下流側の苗床に流入するようにし、前記各苗床のうち、最も上流側に位置する苗床に前記給水管を連通させたものである。 【0016】 また、本発明に係るヨシの育苗システムは請求項4に記載したように、所定の苗床資材が敷設されるとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床と、該苗床に水を供給する給水設備とから構成するとともに、該給水設備から供給された水で前記苗床内の水が流水するように前記苗床及び前記給水設備の少なくともいずれかを構成し、浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキを前記苗床資材としたものである。 【0017】 また、本発明に係るヨシの育苗システムは請求項5に記載したように、所定の苗床資材が敷設されるとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床と、該苗床に水を供給する給水設備とから構成するとともに、該給水設備から供給された水で前記苗床内の水が流水するように前記苗床及び前記給水設備の少なくともいずれかを構成し、浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキを前記苗床資材としたものである。 【0018】 本発明に係るヨシの育苗システムにおいては、所定の苗床資材が敷設されるとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床と、該苗床に水を供給する給水設備とから構成してあり、ヨシの育苗を行う際は、苗床にヨシの茎を水平配置し、給水設備で苗床に水を流水供給しながら育苗する。 【0019】 このようにすると、苗床に配置されたヨシの茎は、その節から発芽発根し、育苗資材へと根を伸ばして苗として成育するが、ここで、給水設備から供給された水で苗床内の水が流水するように苗床及び給水設備の少なくともいずれかを構成してあるので、従来の育苗方法を用いた場合よりもヨシの成育が早く、育苗を開始してから1,2ヶ月ほどで移植可能な状態となる。これは、苗床内の水を流水させることによって苗床に十分な酸素が供給されるためと思われる。 【0020】 また、苗床に予め苗床資材を敷設してあるため、従来のようにポットに植え替えをする工程を省略することができる。 【0021】 給水設備は、苗床に水を供給することができるのであればどのように構成するかは任意である。また、どのように苗床内の水を流水させるかも任意であり、地形の段差や斜面等を利用して苗床を作り、自然に流水させるように構成してもかまわないし、所定の給水ポンプや排水ポンプを用いて強制的に流水させるように構成してもかまわない。 【0022】 例えば、給水設備を、河川、湖沼等の水源から導水された水を貯水する開放型貯水槽と、該開放型貯水槽内と前記苗床内とを連通させる給水管とから構成するとともに、前記苗床内に設定された越流水位を前記苗床内の水位が上回ったときに該苗床内の水がオーバーフロー水として前記苗床の外に排水されるように前記苗床を構成することが考えられる。 【0023】 このようにすると、水源から導水された水を開放型貯水槽に貯水する際、水の中に多量の酸素が溶け込む。そして、このように酸素を多く含んだ水が給水管を介して苗床に流入し該苗床内を流水することとなるため、ヨシの育苗に必要な酸素が十分に苗床に供給されることとなる。 【0024】 また、所定の越流水位を上回った水が苗床の外に排水されることとなり、苗床内の水を確実に流水させることができるとともに、苗床の水位をヨシの育苗に適した水位に保つことが可能となる。 【0025】 開放型貯水槽は、水の流入時あるいは貯水時に該水の中に酸素を溶け込ませることができるよう、流入貯水される水が大気に接しあるいは大気に連通するようにしてあれば、どのように構成するかは任意であるが、苗床への給水を考慮して苗床よりも高い位置へ設置するのが望ましい。この場合には、開放型貯水槽と苗床とのヘッド差によって苗床内の水が自然に流水する。 【0026】 給水管は、開放型貯水槽内と苗床内とを連通させるものであれば、どのように構成するかは任意であるが、苗床への給水量を調整できるように流量調整バルブを設けておくのが望ましい。 【0027】 また、オーバーフロー水は、これをそのまま河川、湖沼、排水溝等に排水するようにしてもかまわないが、これに代えて、オーバーフロー水を開放型貯水槽に循環させるようにすることも考えられる。 【0028】 また、苗床の設置数については任意であるが、これを複数設ける場合において、前記苗床を直列に複数配置するとともに、該苗床のうち、互いに隣接する苗床同士を連通管で互いに連通させて該連通管内を前記オーバーフロー水が上流側の苗床から下流側の苗床に流入するようにし、前記各苗床のうち、最も上流側に位置する苗床に前記給水管を連通させたしてもかまわない。 【0029】 このようにすると、複数の苗床内の水を効率よく流水させることが可能となる。 【0030】 苗床資材は、ヨシを苗に成育させることができるのであればどのようなものを用いてもよく、例えば通常の砂や土、あるいは肥料を混ぜた土などを使用することが考えられるが、浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキを苗床資材としてもかまわない。 【0031】 かかる場合においては、浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキに栄養塩が多く含まれているため、ヨシの成育により適した環境となり、かくしてヨシの成長が促進され育苗期間がより短縮される。また、脱水ケーキは、通常、固化材を添加して盛土材等に利用されることが多いが、固化材を添加しない脱水ケーキや浚渫泥土については、これらを廃棄処分することなく、有効利用することが可能となる。 【0032】 また、水が貯留され該水の表面近傍にヨシの茎を浮上静置可能な発芽発根用貯水池を設けた場合においては、まず、発芽発根用貯水池にヨシの茎を浮かべて発芽発根させ、次に、発芽発根した節が含まれるように必要に応じてヨシの茎を短く切り取り、かかるヨシの茎を苗床に配置して育苗する。したがって、発芽発根したヨシの茎のみを選別して苗床に配置することができるので、苗床を効率よく使用することが可能となるとともに、ヨシの育苗効率を向上させることが可能となる。 【0033】 なお、ヨシの茎を浮上静置して発芽発根させる際は、ヨシの茎が水中に沈まないように複数本のヨシの茎を緩く束ねて水に浮かべるのが望ましい。 【0034】 また、発芽発根したヨシの茎を苗床に入れる際は、ヨシの根が苗床資材に定着して栄養分を苗床資材から吸収しやすいように、ヨシの茎を苗床資材に少し埋めるように入れるのが望ましい。 【0035】 発芽発根用貯水池は、水を溜めてヨシの茎を浮上静置できるのであればどのように構成するかは任意であるが、苗床の場合と同様、発芽発根用貯水池に水を供給する給水設備を備えるとともに、給水設備から供給された水で発芽発根用貯水池内の水が流水するように構成してもかまわない。 【0036】 本発明に係るヨシの育苗システムを用いてヨシを育苗するには、まず、所定の苗床資材が敷設されるとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床にヨシの茎を水平配置する。次に、かかる状態で該苗床に水を流水供給しながらヨシの茎からヨシを育苗する。 【0037】 このようにすると、苗床に水平配置されたヨシの茎は、その節から発芽発根し、育苗資材へと根を伸ばして苗として成育するが、ここで、苗床に水を流水供給しながらヨシの苗を育苗するので、従来の育苗方法を用いた場合よりもヨシの成育が早く、育苗を開始してから1,2ヶ月ほどで移植可能な状態となる。これは、苗床内の水を流水させることによって苗床に十分な酸素が供給されるためと思われる。 【0038】 また、苗床に予め苗床資材を敷設してあるため、従来のようにポットに植え替えをする工程を省略できる。 【0039】 苗床資材は、ヨシを苗に成育させることができるのであればどのようなものを用いてもよく、例えば通常の砂や土、あるいは肥料を混ぜた土などを使用することが考えられるが、浚渫泥土や該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキを苗床資材としてもかまわない。 【0040】 かかる場合においては、浚渫泥土や該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキに栄養塩が多く含まれているため、ヨシの成育により適した環境となり、かくしてヨシの成長が促進され育苗期間がより短縮される。また、脱水ケーキは、通常、固化材を添加して盛土材等に利用されることが多いが、固化材を添加しない脱水ケーキや脱水処理しない浚渫泥土については、これらを廃棄処分することなく、有効利用することが可能となる。 【0041】 また、苗床にヨシの茎を水平配置する前に、水が貯留された発芽発根用貯水池の水の表面近傍に該ヨシの茎を浮上静置し、該ヨシの茎から発芽発根させるようにしてもかまわない。 【0042】 かかる場合においては、まず、発芽発根用貯水池にヨシの茎を浮かべて発芽発根させ、次に、発芽発根した節が含まれるように必要に応じてヨシの茎を短く切り取り、かかるヨシの茎を苗床に配置して育苗する。したがって、発芽発根したヨシの茎のみを選別して苗床に配置することができるので、苗床を効率よく使用することが可能となるとともに、ヨシの育苗効率を向上させることが可能となる。 【0043】 なお、ヨシの茎を浮上静置して発芽発根させる際は、ヨシの茎が水中に沈まないように複数本のヨシの茎を緩く束ねて水に浮かべるのが望ましい。 【0044】 また、発芽発根したヨシの茎を苗床に入れる際は、ヨシの根が苗床資材に定着して栄養分を苗床資材から吸収しやすいように、ヨシの茎を苗床資材に少し埋めるように入れるのが望ましい。 【0045】 発芽発根用貯水池は、水を溜めてヨシの茎を浮上静置できるのであればどのように構成するかは任意であるが、苗床の場合と同様、発芽発根用貯水池に水を供給する給水設備を備えるとともに、給水設備から供給された水で発芽発根用貯水池内の水が流水するように構成してもかまわない。 【0046】 また、本発明に係るヨシの移植方法においては、まず、水辺にヨシが生育している水域の底泥を浚渫し、次いで、浚渫された浚渫泥土を脱水処理して脱水ケーキを生成する。 【0047】 次に、脱水ケーキが苗床資材として敷設され該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床を前記水域近傍に設け、該苗床に前記ヨシの茎を水平配置する。 【0048】 次に、かかる状態で該苗床内で水を流水させつつ前記ヨシの茎からヨシを育苗し、次いで該ヨシの苗を前記水域近傍に形成された干潟等の湿地帯に移植する。 【0049】 また、本発明に係るヨシの移植方法においては、まず、水辺にヨシが生育している水域の底泥を浚渫し、次いで、浚渫された浚渫泥土が苗床資材として敷設され該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水が張られてなる苗床を前記水域近傍に設け、該苗床に前記ヨシの茎を水平配置する。 【0050】 次に、かかる状態で該苗床内で水を流水させつつ前記ヨシの茎からヨシを育苗し、次いで該ヨシの苗を前記水域近傍に形成された干潟等の湿地帯に移植する。 【0051】 このようにすると、苗床に水平配置されたヨシの茎は、その節から発芽発根し、育苗資材へと根を伸ばして苗として成育するが、ここで、苗床に水を流水供給しながらヨシの苗を育苗するので、従来の育苗方法を用いた場合よりもヨシの成育が早く、育苗を開始してから1,2ヶ月ほどで移植可能な状態となる。これは、苗床内の水を流水させることによって苗床に多くの酸素が十分に供給されるためと思われる。 【0052】 また、苗床に予め苗床資材を敷設してあるため、従来のようにポットに植え替えをする工程を省略することができる。 【0053】 また、苗床資材として使用する脱水ケーキや浚渫泥土には栄養塩が多く含まれているため、ヨシの成育により適した環境となり、かくしてヨシの成長が促進され育苗期間がより短縮される。なお、脱水ケーキを作製する際、わざわざ固化材を添加して所定の強度を確保する必要がなくなるとともに、そもそも、脱水処理して脱水ケーキを作製する必要もなくなる。 【0054】 また、底泥の浚渫を行っている水域近傍で、苗床資材の調達、苗床の設置、ヨシの育苗、ヨシの移植といった全ての作業を行うことができるため、ヨシを用いた自然修復作業の効率が向上するとともに、脱水ケーキ、特に固化材が添加されていない脱水ケーキや浚渫泥土を他の場所に移動して利用したり廃棄処分したりすることなく、その場で有効利用することができるため、経済性に優れた移植方法となるのみならず、固化処理や脱水処理を省略することで浚渫作業のコストを落とすことも可能となる。 【0055】 また、全ての工程をもともとヨシが水辺に生育していた水域で行うことができるため、ヨシの生育環境を変動させる懸念がなくなり、ヨシの育苗及び移植を大量かつ短期間に行うことが可能となる。 【0056】 なお、ヨシの苗を移植するにあたっては、これを周辺の苗床資材ごと袋詰めにして運搬することが考えられる。 【0057】 また、本発明に係るヨシの茎は、節を含んでいるのであればその長さは任意であり、育苗のしやすさや成長の度合い等を勘案して、苗床に配置する前又は発芽発根後に必要に応じて所望の長さに適宜切断することができる。 【0058】 また、苗床の水位は、低すぎてヨシの茎が乾燥したり、高すぎてヨシの茎が水没したりして発芽に悪影響を及ぼすことがないよう、苗床内の流水性も考慮して、水位が苗床資材の天端よりも高くなるように適宜設定すればよく、例えば、数cmとすることが考えられる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0059】 以下、本発明に係るヨシの育苗システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。 【0060】 (第1実施形態) 【0061】 図1は、本実施形態に係るヨシの育苗システムを示した図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。同図に示すように、本実施形態に係るヨシの育苗システム1は、発芽発根用貯水池4と、苗床2と、該発芽発根用貯水池及び苗床に水を供給する給水設備3とから概ね構成してある。 【0062】 発芽発根用貯水池4は、図2の詳細図でよくわかるように水17が貯留され該水の表面近傍にヨシの茎21を浮上静置できるように構成してある。かかる発芽発根用貯水池4は、地盤11を矩形状に掘削してピットとし、該ピットの内面側部に土留め用矢板14をめぐらせてこれを支持杭13に固定するとともに、防水シート12をピット内に敷き込み、かかる防水シート12が敷き込まれたピット内に水17を張って構成してある。 【0063】 苗床2は、図3の詳細図でよくわかるように、発芽発根用貯水池4と同様、地盤11を矩形状に掘削してピットとし、該ピットの内面側部に土留め用矢板14をめぐらせてこれを支持杭13に固定するとともに、防水シート12をピット内に敷き込んであるが、発芽発根用貯水池4とは異なり、かかる防水シート12が敷き込まれたピットの底部に苗床資材16を敷設するとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水17を張って構成してある。 【0064】 苗床資材16は、ヨシを苗に成育させることができるよう、通常の砂や土、あるいは肥料を混ぜた土などから適宜選択すればよい。 【0065】 ここで、苗床2内には、同図に示すように発芽発根したヨシの茎15が配置されることとなるが、該苗床内の水位(深さ)を設定するにあたっては、低すぎてヨシの茎15が乾燥したり、高すぎてヨシの茎15が水没したりすることで育苗に悪影響が出ないよう、なおかつ苗床2内の流水性が阻害されることがないよう留意する。例えば、ヨシの茎15が冠水する程度の深さ、具体的には数cmとすることが考えられる。 【0066】 給水設備3は、水源としての河川(図示せず)から導水された水を貯水する開放型貯水槽6と、該開放型貯水槽内と発芽発根用貯水池4内や苗床2内とを連通させる給水管5とから構成してあり、発芽発根用貯水池4及び苗床2内では、かかる給水設備3から供給された水が流水するようになっている。 【0067】 開放型貯水槽6は、水の流入時あるいは貯水時に該水の中に酸素を溶け込ませることができるよう、流入貯水される水が大気に接するように上面を開放して構成してある。かかる開放型貯水槽6は図1(b)でよくわかるように、苗床2及び発芽発根用貯水池4よりも高い位置へ設置してあり、苗床2や発芽発根用貯水池4とのヘッド差(高さに起因する水圧)によって苗床2及び発芽発根用貯水池4への給水がスムーズに行われるとともに、その結果として、苗床2や発芽発根用貯水池4内の水が自然に流水するようになっている。 【0068】 ここで、苗床2は、二つを直列に配置するとともに、互いに隣接する苗床2,2同士を連通管7で連通させてあり、該連通管内を上流側の苗床2(図1では右側)から下流側の苗床2(図1では左側)に水が流入するように構成してあるとともに、各苗床2のうち、上流側に位置する苗床には給水管5を連通させ、下流側に位置する苗床には排水管8を連通させてあり、給水設備3から給水された水が、給水管5、苗床2、連通管7、苗床2の順序で流れ、排水管8を介して河川、湖沼、排水溝等に排水されるようになっている。 【0069】 発芽発根用貯水池4についても同様であり、その上流側には給水管5を連通させ、下流側には排水管8を連通させることにより、給水設備3から給水された水を、給水管5を通じて発芽発根用貯水池4に流し、これを排水管8を介して河川、湖沼、排水溝等に排水するようになっている。 【0070】 ここで、連通管7及び排水管8は、図2及び図3でよくわかるようにそれらの上流側端部開口18が鉛直上方を向くように該上流側端部にてほぼL字状に曲げてあり、苗床2や発芽発根用貯水池4に張られた水17の水位が上流側端部開口18を上回ったとき、水17は、該上流側端部開口18を越流して連通管7や排水管8に流れ込むようになっている。すなわち、上流側端部開口18の設置高さは、苗床2や発芽発根用貯水池4内の水をオーバーフロー水として下流側に流しあるいは排水する越流水位となる。 【0071】 なお、給水管5の下流側端部には、苗床2や発芽発根用貯水池4への給水量を調整できるよう、流量調整バルブ19を設けてある。 【0072】 本実施形態に係るヨシの育苗システムを用いてヨシの育苗を行うには、まず、図2に示すように、水17が貯留された発芽発根用貯水池4の水の表面近傍にヨシの茎21を浮上静置し、次いで、該発芽発根用貯水池に給水設備3で水を流水供給しながら、ヨシの茎21から発芽発根させる。 【0073】 ヨシの茎21を浮上静置して発芽発根させる際は、必要に応じてヨシの茎21の頂部を切り取り、茎の長さ方向への成長を止めた上で、かかるヨシの茎21を複数本緩く束ね、これを水に浮かべるのが望ましい。 【0074】 このようにすると、ヨシの茎21が反って乾燥したり水没したりするのを防止することができるほか、発芽発根したヨシの茎21が倒れてしまうのを防止することも可能となる。 【0075】 なお、かかる工程により、1〜2週間でヨシの茎21から発芽発根させることができることを実験で確認済みである。 【0076】 次に、図3に示すように、発芽発根したヨシの茎21を節が含まれるように必要に応じて短く切り取り、次いで、かかるヨシの茎15を苗床2に水平配置する。 【0077】 発芽発根したヨシの茎15を苗床2に配置するにあたっては、ヨシの根が苗床資材16に定着し栄養分を苗床資材16から吸収しやすいように、ヨシの茎15を苗床資材16に若干埋設するように配置するのが望ましいと考えられるが、発根発芽の状況によっては、苗床資材16の上に置いたり、水17に浮かべたりといった態様も考えられる。いずれにしろ、ヨシの茎15の乾燥及び水没の防止並びに流水の確保には留意する。 【0078】 次に、給水設備3で苗床2に水を流水供給しながら、ヨシの茎15からヨシを育苗する。 【0079】 このようにすると、苗床2に水平配置されたヨシの茎15は、育苗資材16へと根を伸ばして苗として成育するが、苗床2に水を流水供給しながらヨシの苗を育苗するため、従来の育苗方法を用いた場合よりもヨシを早く成育させることができる。なお、ヨシが十分育苗した後は、適宜湿地帯へ移植したり、苗として出荷したりすることとなる。 【0080】 なお、かかる工程により、2〜3週間で移植可能な状態の苗に育てることができることを実験で確認済みである。 【0081】 以上説明したように、本実施形態に係るヨシの育苗システム1によれば、ヨシの育苗を行う際、苗床2にヨシの茎15を水平配置し、給水設備3で苗床2に水を流水供給しながら育苗するので、従来の育苗方法を用いた場合よりもヨシの成育が早く、育苗作業を開始してから1,2ヶ月ほどで移植可能な状態にすることができる。これは、苗床2内の水を流水させることによって苗床2に十分な酸素が供給されるためと思われる。 【0082】 そのため、年間3〜4サイクルの育苗が可能となり、大量の苗を効率よく育てることが可能となる。 【0083】 また、苗床2に予め苗床資材16を敷設してあるため、苗として育ったヨシの茎15を苗床資材16とともに掘り出し、これを移植したり出荷用のポットに入れるだけで足りる。そのため、従来のように、育苗工程の中間段階においてポットに植え替えをする必要がなくなる。 【0084】 また、本実施形態に係るヨシの育苗システム1によれば、河川から導水された水を開放型貯水槽6に貯水する際、水の中に多量の酸素が溶け込むため、酸素を多く含んだ水を給水管5を介して苗床2に流入させ該苗床内の水を流水させることが可能となり、ヨシの育苗に必要な酸素を十分に苗床2に供給することが可能となる。 【0085】 また、所定の越流水位を上回った水が苗床2の外に排水されるため、苗床2内の水を確実に流水させることができるとともに、苗床2の水位をヨシの育苗に適した水位に保つことが可能となる。 【0086】 また、本実施形態に係るヨシの育苗システム1によれば、苗床2を直列に複数配置し、該苗床のうち、互いに隣接する苗床2,2同士を連通管7で連通させて該連通管内をオーバーフロー水が上流側の苗床2から下流側の苗床2に流入するようにするとともに、各苗床2のうち、最も上流側に位置する苗床2に給水管5を連通させたので、複数の苗床2内の水を効率よく流水させることが可能となる。 【0087】 また、本実施形態に係るヨシの育苗システム1によれば、水が貯留され該水の表面近傍にヨシの茎21を浮上静置可能な発芽発根用貯水池4を設けたので、発芽発根したヨシの茎のみを選別して苗床2に配置することが可能となり、苗床2を効率よく使用することができるとともに、ヨシの育苗効率を向上させることができる。 【0088】 本実施形態では、発芽発根用貯水池4でいったんヨシの茎21を発芽発根させ、しかる後、苗床2に移すようにしたが、刈り取り時期等の条件によっては、発芽発根用貯水池4での発芽発根工程を省略し、ヨシの茎21を必要に応じて適宜長さに切断した後、これらを直接苗床2に配置して発芽発根させるとともに、引き続いて育苗するようにしてもよい。この場合、発芽発根用貯水池1を省略することができることは言うまでもない。 【0089】 また、本実施形態では、給水設備3を構成する開放型貯水槽6の設置高さを高くすることによって、苗床2内の流水を確保するようにしたが、苗床内の流水を確保する手段は、かかる構成に限定されるものではなく、所定の給水ポンプや排水ポンプを用いた給水設備を用いて強制的に流水させるように構成してもかまわない。また、給水設備によって流水を確保するのではなく、苗床の構成によって該苗床内の流水を確保するようにしてもかまわない。例えば、地形の段差や斜面等を利用して苗床を作れば、該苗床に自然に流水させることができる。 【0090】 また、本実施形態では、オーバーフロー水は、これをそのまま河川、湖沼、排水溝等に排水するようにしたが、これに代えて、オーバーフロー水を開放型貯水槽6に循環させるようにしてもかまわない。 【0091】 また、本実施形態では、発芽発根用貯水池4を一つ、苗床2を二つ設けるように構成したが、発芽発根用貯水池や苗床の数が任意であることは言うまでもない。 【0092】 また、本実施形態では、苗床2を直列に配置するとともに隣接する苗床2,2同士を連通管7で互いに連通させるようにしたが、各苗床2に水が供給されるとともに該苗床内の水を流水させることができるのであれば、苗床2をどのように配置するかは任意であり、例えば、各苗床を直列に配置せずに並列に配置するようにしてもかまわないし、直列に配置した苗床を複数並列させるようにしてもかまわない。 【0093】 発芽発根用貯水池の数や配置についても同様である。また、発芽発根用貯水池と苗床を組み合わせる、例えば、これらを直列配置するとともに所定の連通管を介して互いに連通するように構成してもかまわない。 【0094】 また、本実施形態では、苗床資材16として砂や土などを使用するようにしたが、これに代えて、浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理して生成された脱水ケーキを苗床資材としてもかまわない。 【0095】 かかる場合においては、浚渫泥土又は該浚渫泥土を脱水処理した脱水ケーキに栄養塩が多く含まれているため、ヨシの成育により適した環境となり、かくしてヨシの成長が促進され育苗期間がより短縮される。また、脱水ケーキは、通常、固化材を添加して盛土材等に利用されることが多いが、固化材を添加しない脱水ケーキや脱水処理しない浚渫泥土については、これらを廃棄処分することなく、有効利用することが可能となる。 【0096】 (第2実施形態) 【0097】 次に、本実施形態に係るヨシの移植方法について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。 【0098】 本実施形態に係るヨシの移植方法においては、まず、図4に示すように、水辺31にヨシが生育している水域32の底泥33を浚渫し、次いで、浚渫された浚渫泥土を脱水処理して脱水ケーキを生成する。 【0099】 かかる工程は、例えば、高濃度浚渫船で底泥33を浚渫し、これを土砂分離装置で土砂分離した後、そのオーバー泥水をいったん沈砂槽に静置し、次いで、その上澄み泥水を攪拌槽に移してから凝集剤を添加して攪拌混合した後、スクリューデカンタやフィルタープレス等の脱水装置で脱水し、そのアンダー分を脱水ケーキとして使用することができる。 【0100】 次に、かかる脱水ケーキを苗床資材16としたヨシの育苗システム1でヨシを育苗する。ヨシの育苗システム1については、上述の実施形態及びその変形例で詳細に説明したので、ここではその説明を省略する。なお、ヨシの育苗システム1は、水域32の近傍、例えば沿岸部に適当な育苗ヤードを造成し、該育苗ヤードに構築する。 【0101】 ヨシの育苗システム1にて移植可能な状態にヨシを育苗したならば、かかるヨシの苗を水域32に形成された湿地帯としての干潟34に移植する。干潟34は、自然に存在するものでもよいし、人工的に造成されたものでもよい。 【0102】 ヨシの苗を移植するにあたっては、育苗させたヨシの苗を苗床資材16ごと掘り出し、これを例えば袋詰めにして干潟34まで運搬すればよい。 【0103】 以上説明したように、本実施形態に係るヨシの移植方法によれば、底泥33の浚渫を行っている水域近傍で、脱水ケーキの生成、苗床2の設置、ヨシの育苗、ヨシの移植といった全ての作業を行うことができるため、ヨシを用いた自然修復作業の効率が向上するとともに、脱水ケーキを有効利用することによって、苗床2に使用する苗床資材16を別途用意する必要がなくなり、経済性に優れた移植方法となる。 【0104】 また、全ての工程をもともとヨシが水辺に生育していた水域32で行うことができるため、ヨシの生育環境を変動させる懸念がなくなり、ヨシの育苗及び移植を大量かつ短期間に行うことが可能となる。 【0105】 なお、ヨシの育苗システム1に係る作用効果については、第1実施形態と同様であり、ここではその説明を省略する。 【0106】 本実施形態では、苗床資材として脱水ケーキを使用したが、これに代えて浚渫泥土を使用するようにしてもかまわない。 【0107】 かかる構成においても、上述したと同様の作用効果を奏するほか、浚渫作業において脱水処理をする必要がなくなるという顕著な作用効果を奏する。 【図面の簡単な説明】 【0108】 【図1】第1実施形態に係るヨシの育苗システムを示した図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図。 【図2】第1実施形態に係るヨシの育苗システムを示した図で、図1(a)のC−C線に沿う断面詳細図。 【図3】第1実施形態に係るヨシの育苗システムを示した図で、図1(a)のB−B線に沿う断面詳細図。 【図4】第2実施形態に係るヨシの移植方法を実施している様子を示した概念図。 【符号の説明】 【0109】 1 育苗システム 2 苗床 3 給水設備 4 発芽発根用貯水池 5 給水管 6 開放型貯水槽 7 連通管 16 苗床資材 34 干潟(湿地帯)
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000549 【氏名又は名称】株式会社大林組 【識別番号】503407719 【氏名又は名称】内田 泰三
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| 【出願日】 |
平成19年3月22日(2007.3.22) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100099704 【弁理士】 【氏名又は名称】久寶 聡博
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| 【公開番号】 |
特開2007−167077(P2007−167077A) |
| 【公開日】 |
平成19年7月5日(2007.7.5) |
| 【出願番号】 |
特願2007−74960(P2007−74960) |
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