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【発明の名称】 水滴又は氷粒の生成方法
【発明者】 【氏名】吉原 經太郎

【要約】 【課題】定常紫外光線を照射することによって水滴を生成させることが可能な方法を提供すること。

【解決手段】水蒸気を含む空気よりなる対象領域に、波長が380nm以下の定常紫外光線を照射することにより、上記対象領域内に水滴又は氷粒を生じさせる。定常紫外光線は、低圧水銀灯を光源とすることが好ましい。対象領域は、水蒸気の含有量が飽和水蒸気圧またはそれ以上であることが好ましい。対象領域の温度は、3℃以下であることが好ましい。定常紫外光線の照射は、上記対象領域内における照射位置を変更しながら連続的に行うことが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を含む空気よりなる対象領域に、波長が380nm以下の定常紫外光線を照射することにより、上記対象領域内に水滴又は氷粒を生じさせることを特徴とする水滴又は氷粒の生成方法。
【請求項2】
請求項1において、上記定常紫外光線は、低圧水銀灯を光源とすることを特徴とする水滴又は氷粒の生成方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記対象領域は、水蒸気の含有量が飽和水蒸気圧またはそれ以上であることを特徴とする水滴又は氷粒の生成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記対象領域の温度は、3℃以下であることを特徴とする水滴又は氷粒の生成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記定常紫外光線の照射は、上記対象領域内における照射位置を変更しながら連続的に行うことを特徴とする水滴又は氷粒の生成方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中において水滴又は氷粒を人工的に生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工的に雨を降らす方法、あるいは、空気中に人工的に水滴を形成する方法についての研究がなされている。
従来の方法としては、例えば、ヨウ化銀、塩化カルシウム、カルシウムカーバイト、酸化カルシウム、食塩、尿素などの微粒子、又はドライアイス氷の微粒子を空気中に散布し、これらの微粒子を核とし、その核を中心にして空気中の水を凝集させる方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記の核となる微粒子を大気中に散布する方法を実施すれば、上記微粒子よりなる異物によって大気環境に負荷がかかるおそれがある。
【0004】
また、特許文献1には、雲にレーザー光を照射する人工降雨方法が示されている。しかしながら、レーザー光を照射するには、そのレーザー光を発射する高価なレーザー発振装置が必要となるので、コスト面で問題となることが予想される。また、飛行機などで上空に運ぶ場合、重量や電力消費量などが問題となる。
そのため、レーザー光に頼らず、定常光を利用した降雨あるいは水滴、氷粒の生成が可能となれば、非常に有効である。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−25425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、定常光を照射することによって水滴を生成させることが可能な方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水蒸気を含む空気よりなる対象領域に、波長が380nm以下の定常紫外光線を照射することにより、上記対象領域内に水滴又は氷粒を生じさせることを特徴とする水滴又は氷粒の生成方法にある(請求項1)。
【0008】
本発明は、上記のごとく、照射する光として、波長が380nm以下の定常紫外光線を用い、この特定の範囲の波長を有する定常紫外光線を上記対象領域に照射する。これにより、対象領域内の水蒸気を含む空気そのものを、化学反応によって核に変化させることができる。そして、この核を中心に水分子が凝集することにより、水滴又は氷粒が生成する。
【0009】
このように、本発明の方法によれば、空気中に核となる微粒子等の異物を散布する必要が無く、水蒸気を含む空気そのものを光化学反応によって核に変化させることができる。そのため、環境に悪影響を与えることがない。
また、上記定常紫外光線は、レーザー光よりも比較的軽量安価な装置によって発生させることができるので、本発明を実施するコストを比較的安価とすることができる。そして、上記定常紫外光線をレーザーに比べて低い電力消費量で照射することができるので、その照射装置を、例えば、気球や飛行機に搭載して高い高度に運ぶことも比較的容易であり、高い高度における実施が容易である。
【0010】
また、上記特定の波長の定常紫外光線を照射することにより生じる核は、反応性の高い、原子、分子、分子ラジカル等よりなる。すなわち、OHラジカル、HO2ラジカル、水イオンなど、酸素の光解離によって生ずる酸素ラジカル反応生成物としてのオゾン、過酸化水素などが上記核となる。そのため、これらの反応性の高い核は、高い反応性や強い分散力によって中性の水分子をその周りに凝集させることができる。
【0011】
ここで、上記のごとく、本発明では、上記対象領域に照射する光線として、波長が380nm以下の定常紫外光線を用いる。この定常紫外光線の波長が380nmを超える場合には、上記核を効率よく生成させることが困難となる。一方、上記定常紫外光線の波長の下限値は、酸素の紫外光としての吸収限界である110nm以上である。
また、ここでいう定常光とは、時間的に連続して休みなく出る光を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明においては、上記のごとく、水蒸気を含む空気よりなる対象領域に上記特定の定常紫外光線を照射する。上記対象領域としては、いわゆる大気中の特定の領域を選択することができる。なお、水蒸気の含有量、温度についての好ましい範囲については後述する。
【0013】
また、上記定常紫外光線を発する光源としては、後述する低圧水銀灯(点灯中の水銀蒸気圧が1〜10Pa程度のもの)の他に、例えば、高圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、キセノンランプ、希ガスエキシマランプ、重水素ランプ、ホローカソードランプ等がある。
【0014】
また、照射する定常紫外光線して、上述した範囲の波長を有する定常紫外光線を用いるが、より具体的には、低圧水銀灯を光源とすることも好ましい(請求項2)。この場合には、主に、およそ185nmと254nmなどの発光が得られる。これにより、185nmの定常紫外光線による酸素分子の光解離の作用と、254nmの定常紫外光線によるオゾンの光解離の作用とが相俟って、効率よく水滴の核を形成することができる。
【0015】
また、上記対象領域は、水蒸気の含有量が飽和水蒸気圧またはそれ以上であることが好ましい(請求項3)。この場合には、水滴又は氷粒の生成を効率よく行うことができる。水蒸気の含有量が飽和水蒸気圧未満の場合には、水分子の凝集が起こりにくく、水滴又は氷粒の生成効率が低くなるおそれがある。
【0016】
また、上記対象領域の温度は、3℃以下であることが好ましい(請求項4)。上記対象領域の温度が3℃〜0℃の場合には、水滴(雨あるいは霧)が生じ、0℃以下の場合には氷粒(雪)を生ずる。一方、上記対象領域の温度が3℃を超える場合には、水滴又は氷粒が生じにくくなるおそれがある。
【0017】
また、上記定常紫外光線の照射は、上記対象領域内における照射位置を変更しながら連続的に行うことが好ましい(請求項6)。この場合には、上記対象領域内に水分子凝集の核を多数形成することができ、水滴の生成を効率よく行うことができる。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例に係る水滴の生成方法につき、図1〜図3を用いて説明する。
本例では、水蒸気を含む空気よりなる対象領域を実験的に形成し、複数種類の光を照射して、水滴が生じるか否かを観察した。
実験を行った実験装置1は、図1に示すごとく、円筒状の石英管10と、その下端開口部を閉塞する底板部12と、その上端開口部を閉塞する上皿部11とを有している。底板部12は架台部13に支持されていると共に、裏面にヒータ14を備えている。また、底板部12の上面には、水を備蓄する水盤15が配設されている。
【0019】
水盤15内には、水8をほぼ一杯に備蓄しており、これをヒータ14によって温度制御するようにしてある。また、上皿11内には、氷と水又はドライアイスとエタノールを入れることにより温度制御するようにしてある。これらの温度制御によって、石英円筒10内の温度、水蒸気含有量を制御し、図1に示した対象領域2の条件を調整する。
【0020】
また、石英円筒10の外部には、対象領域2への光3を照射する光照射手段30と、参照用可視光4を照射する可視光照射手段40が配設されている。光照射手段30は、照射する光の種類により取り替えることが可能でてあり、いずれも、照射位置を調整する集光レンズ等(図示略)を具備している。さらに、光照射手段30を石英円筒10の内部に設置することによって、光利用効率が高まる。
また、対象領域2は、上限を示す波線S1と下限を示す波線S2に囲まれる領域に設けてあり、参照用可視光4を照射する領域は、上記の対象領域2よりも広い範囲の上限を示す波線S3と下限を示す波線S4に囲まれる領域29である。
【0021】
(実施例1)
実施例1では、照射する光として、主に波長が185nmと254nmの定常紫外光線を発する低圧水銀灯からの光を採用した。つまり、光照射手段30としては、低圧水銀灯を用いた。照射条件は、低圧水銀灯の放射出力を2.5ワットとする条件とした。
【0022】
また、対象領域2の条件は、水蒸気含有量:飽和水蒸気圧、温度:0〜2℃という条件に設定した。これは、水盤15内の水8の温度を25℃〜28℃、上皿11内の温度を0℃とすることにより実現した。
実験の結果、実施例1では、上記定常紫外光線の照射後、対象領域内に水滴(霧)が観察され、確実に水滴が生成したことが、水滴(霧)の光散乱によりわかった。
【0023】
(実施例2)
実施例2では、対象領域2の温度を−3〜0℃に設定した以外は上記実施例1と同じ条件で実験を行った。なお、この温度の設定は、上皿11内の温度を−63℃、水盤15内の温度を20℃とすることにより実現した。
実験の結果、実施例2では、定常紫外光線の照射後、対象領域内に小さな氷となった氷粒(雪)が観察され、確実に氷粒が生成したことがわかった。
【0024】
(比較例1)
比較例1では、照射する光として、タングステン光源による波長500nmを中心とする連続光の定常光線を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で実験を行った。
実験の結果、比較例1では、全く水滴が生じなかった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例における実験装置の構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0026】
1 実験装置
2 対象領域
3 光
30 光照射手段
【出願人】 【識別番号】596049164
【氏名又は名称】財団法人豊田理化学研究所
【出願日】 平成17年12月6日(2005.12.6)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰

【識別番号】100110700
【弁理士】
【氏名又は名称】岩倉 民芳

【識別番号】100130155
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥起


【公開番号】 特開2007−151466(P2007−151466A)
【公開日】 平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願番号】 特願2005−351756(P2005−351756)