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【発明の名称】 育苗用構造体及びその製造方法
【発明者】 【氏名】村上 雅規

【要約】 【課題】種子をマット上に安定保持させて種子の発芽管理を容易に行うことができる育苗用構造体を提供する。

【解決手段】破砕分散された繊維分を結合剤により接着して板状に形成されたマット部11と、マット部11表面にでんぷん糊、合成樹脂糊などの接着剤成分をコーティングして形成され種籾が播種される種子保持層12と、を有するように育苗用構造体10を構成することにより、種子をマット上に安定保持させて種子の発芽管理を容易に行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕分散された繊維分を結合剤により接着して形成された板状のマット部と、前記マット部表面にでんぷん糊、合成樹脂糊などの接着剤成分をコーティングして形成され種籾などの種子が固定保持される種子保持層と、を有することを特徴とする育苗用構造体。
【請求項2】
前記マット部が植物繊維とこの植物繊維間に分散して結合剤としての役割をする化学繊維とからなる交絡組織を備え、前記植物繊維Aと前記化学繊維Bとの重量混合比率(A/B)が、10〜30の範囲であることを特徴とする請求項1記載の育苗用構造体。
【請求項3】
前記マット部には種子を発芽成長させるための肥料成分が含有されていることを特徴とする請求項1又は2記載の育苗用構造体。
【請求項4】
前記マット部の表面側又はその内部にネット状やシート状や糸状などの補強材が積層配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の育苗用構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の育苗用構造体の製造方法であって、
(a)紙質材をシュレッダや篩を用いて粉砕調整して所定サイズの植物繊維を得る粉砕調整工程と、
(b)前記植物性繊維をナイロンやポリエステルなどの化学繊維と撹拌気流中やスクリュー撹拌機中で混合して所定混合比率の繊維組成物を得る分散混合工程と、
(c)箱状に形成された充填型枠の上部開口に前記繊維組成物を分散供給するとともに前記充填型枠の底部に沈降堆積する繊維積層物をその積層方向に加熱しながらプレス成形してマット部を形成させる加熱プレス工程と、
(d)前記マット部に液状の肥料成分を含浸させて担持させる肥料成分担持工程と、
(e)種籾などの種子が播種される前記マット部の表面にでんぷん糊や合成樹脂糊などの接着剤成分をコーティングして種子保持層を形成させる被覆工程と、を有することを特徴とする育苗用構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の育苗用構造体の製造方法であって、でんぷん糊を含む水中に繊維分を加えて作成した液状物をスクリーン網で濾し取って前記繊維分を含むシート状に形成させる抄造工程により前記マット部とすることを特徴とする育苗用構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は稲、花等の種子を発芽させて水稲栽培用などの苗床を形成させるための育苗用構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、播種作業や成育用床土の調整作業を軽減して水稲栽培などを効率化するものとしてマット状に形成された育苗用構造体が用いられている。このような育苗用構造体は、種子を植物性繊維、合成樹脂発泡体、無機質材料、肥料、及び水溶性接着剤等と一緒に混入し、これを乾燥して固めたもの、或いはこれらを水に混入してスラリー状にし、シート状に形成し乾燥したもの等が製品化されている。さらに、このような苗床構造体の改良技術として例えば以下のようなものが知られている。
【0003】
特許文献1には、ロックウールを成型してなる育苗マットにメタン発酵液を坦持させ、さらに窒素、リン酸、カリ、マグネシウム等を含む粒状肥料または液状肥料を所定量添加するようにした育苗マットが記載されている。
【0004】
特許文献2には、紙を乾式で破砕または粉砕して得られる綿状パルプと、種子とを混在させて播種・成育床用材料として、播かれた種子の発芽を促進するようにしたものが開示されている。
【0005】
特許文献3には、ポリ乳酸繊維からなるステープルとポリカプロラクトンのステープルを所定の割合で均一に配合し、混合されたステープルがマットの上下表面に対して垂直方向に配置されたものを所定の温度で加熱し、ステープルを立体的に融着させた育苗マットとしたものが提案されている。
【特許文献1】特開2002−153139号公報
【特許文献2】特開平6−141622号公報
【特許文献3】特開平11−206257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献に記載の従来の技術のものは以下のような課題があった。
種子を植物性繊維や無機質材料を水溶性接着剤等と一緒に混入し、これを乾燥して固めて形成したような従来の育苗用構造体では、その製造過程で熱や水分が加えられるため、種子が発芽不能になったり、逆に使用前に発芽したりして、製造後における種子の発芽管理に困難が伴うという問題があった。
【0007】
特許文献1の育苗マットでは、ロックウールを主成分とするためにその環境上の安全性が問われることに加えて、肥料分の添加処理やその後処理などの管理が難しく取り扱い性に欠ける場合があるという課題があった。さらにロックウール組織の強度が高いので発芽した種子の根がマットの上表面より下表面に向かって伸長しにいため、発芽率が低くなる傾向があるので好ましくない。
【0008】
特許文献2の播種・成育床用材料では、比重の異なる種子を綿状パルプ中に均一に分散させることが困難である。また、種子がマット内部に保持されているので発芽時期などのタイミングの調整がしにくいという課題があった。さらに、綿状のパルプを含む原料の種類によっては、その成分や性状にばらつきがあるため、マット状に形成された播種・成育床用材料の強度特性などのコントロールが困難である。したがってマット材を所定サイズに裁断して土中に植え込むような田植え機などではそのハンドリングに難があるという課題があった。
【0009】
特許文献3の生分解性の樹脂などを用いた育苗マットでは、ポリ乳酸繊維などの比較的高価な原料と複雑な製造工程を要するので、原料コスト面やその特性管理面で経済性に欠ける上に、種蒔きされた種子をマット上に安定保持させて、種子の定着化を図ることができないという課題があった。
【0010】
本発明は前記従来の課題を解決するためになされたもので、種子をマット上に安定保持させて種子の発芽管理を容易に行うことができる育苗用構造体を提供するとともに、複雑な製造工程を要することなく原料コスト面やその発芽性に優れた育苗用構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)前記従来の課題を解決するためになされた本発明の育苗用構造体は、破砕分散された繊維分を結合剤により接着して形成された板状のマット部と、前記マット部表面にでんぷん糊、合成樹脂糊などの接着剤成分をコーティングして形成され種籾などの種子が固定保持される種子保持層と、を有して構成される。
【0012】
(2)本発明の育苗用構造体は、前記(1)において、前記マット部が植物繊維とこの植物繊維間に分散接着する化学繊維とからなる交絡組織を備え、前記植物繊維Aと前記化学繊維Bとの重量混合比率(A/B)が、10〜30の範囲であることにも特徴を有している。
【0013】
(3)本発明の育苗用構造体は、前記(1)又は(2)において、前記マット部には種子を発芽成長させるための肥料成分が含有されていることにも特徴を有している。
【0014】
(4)本発明の育苗用構造体は、前記(1)〜(3)において、前記マット部の表面側又はその内部にネット状やシート状の補強材が積層配置されることにも特徴を有している。
【0015】
(5)本発明の育苗用構造体の製造方法は、前記(1)〜(4)に記載の育苗用構造体の製造方法であって、(a)紙質材をシュレッダや篩を用いて粉砕調整して所定サイズの植物繊維を得る粉砕調整工程と、(b)前記植物性繊維をナイロンやポリエステルなどの化学繊維と撹拌気流中やスクリュー撹拌機中で混合して所定混合比率の繊維組成物を得る分散混合工程と、(c)箱状に形成された充填型枠の上部開口に前記繊維組成物を分散供給するとともに前記充填型枠の底部に沈降堆積する繊維積層物をその積層方向に加熱しながらプレス成形してマット部を形成させる加熱プレス工程と、(d)前記マット部に液状の肥料成分を含浸させて担持させる肥料成分担持工程と、(e)種籾などの種子が播種される前記マット部の表面にでんぷん糊や合成樹脂糊などの接着剤成分をコーティングして種子保持層を形成させる被覆工程と、を有する。
【0016】
(6)本発明の育苗用構造体の製造方法は、前記(1)〜(4)に記載の育苗用構造体の製造方法であって、でんぷん糊を含む水中に繊維分を加えて作成した液状物をスクリーン網で濾し取って前記繊維分を含むシート状に形成させる抄造工程により前記マット部とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の育苗用構造体によれば、繊維分を結合剤により接着して形成されたマット部の表面に種子保持層を有するので、種子をマット上に安定保持させて種子の発芽管理を容易に行うことができる。
【0018】
また、本発明の育苗用構造体の製造方法によれば、植物性繊維を化学繊維と混合して得られる繊維組成物を充填型枠の上部開口に分散供給して充填型枠の底部に沈降堆積する繊維積層物をその積層方向に加熱プレス成形してマット部を形成させ、そのマット部表面に種子保持層を形成させるので、複雑な製造工程を要することなく原料コスト面やその発芽性に優れた育苗用構造体の製造方法を提供することができる。
【0019】
本発明の育苗用構造体の製造方法によれば、でんぷん糊を含む水中に繊維分を加えて作成した液状物をスクリーン網で濾し取って前記繊維分を含むシート状に形成させる抄造工程により前記マット部とするので、比較的簡単な設備を用いて、多様な成分形態のマット部を形成できるとともに、原料コスト面やその発芽性などに優れた育苗用構造体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本実施形態の育苗用構造体は、シュレッダや篩などによって破砕分散された繊維分を合成樹脂や糊剤などの結合剤により接着して形成されたマット部と、前記マット部表面にでんぷん糊、合成樹脂糊などの接着剤成分を所定厚みでコーティングして形成され、水稲などの種籾が播種される種子保持層と、を有する。これによって、所定の時期に種子を育苗用構造体に散布することで種子保持層に安定保持させることができ、種子の発芽管理を容易に行うことができる。
【0021】
マット部は、紙パルプなどの繊維分を結合剤を介して圧着してその厚みが約15〜25mmの矩形状や帯状にしたバルク部分である。これによって、種子が散布された育苗用構造体を田植え機などで把持したりハンドリングしたりするのに必要な所定の強度を付与する他に、散布された種子の発芽環境を保持させるための水分や栄養分を担持する機能を有している。
繊維分には古紙やパルプ(未さらしパルプ、半さらしパルプも含む)などを所定サイズに破砕した植物繊維や、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエチレンなどの化学繊維、又はこれらを所定混合比率で混合したものなどを適用することができる。
結合剤としては、でんぷん糊などの天然素材の他に、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエステル、などの合成樹脂バインダーなどを用いることができる。
【0022】
種子保持層は、マット部の片側表面にでんぷん糊、合成樹脂糊などの接着剤成分を所定厚みでコーティングして形成された厚みが約15〜25mmの部分である。この種子保持層に散布された種子は接着剤成分により捕捉されて接着もしくは埋没した状態で固定されるようになっている。
接着剤成分としてはでんぷん糊や、周知の合成樹脂製のものを適用することができるが、植えられる土壌と同化しやすく環境保護性にも優れたでんぷん糊を用いることが特に好ましい。
【0023】
本実施の形態の育苗用構造体は、前記マット部が植物繊維とこの植物繊維間に分散接着する化学繊維とからなる交絡組織を備え、前記植物繊維Aと前記化学繊維Bとの重量混合比率(A/B)を10〜30の範囲とすることもできる。このような植物繊維と化学繊維とが互いに絡みあって形成される交絡組織では、その繊維間に種子の発芽及び発芽後の栄養分や水分を供給するための空隙を保持することができ、しかも所定の耐久性を確保することができる。
化学繊維としてはナイロンやポリエステルなどが挙げられる。特にポリエステル繊維は、低融点で融けて植物繊維を強固に結合できるので好ましい。
【0024】
植物性繊維と化学繊維との重量混合比率(A/B)は、10〜30の範囲とすることが望ましい。これは重量混合比率が、10未満では、植物繊維Aが相対的に減少して、種子をマット上に安定保持させておくための十分な厚みや強度、耐久性のものが得られにくい。
逆に30を超えた配合は植物繊維Aが相対的に増加して化学繊維Bの割合が下がり、板状などに形成されるマット部の強度や耐久性などが低下する傾向が現れので、(A/B)は10〜30の範囲とする。
【0025】
本実施の形態の育苗用構造体は、マット部に種子を発芽させ成長させるための肥料成分を含有させることもできる。これによって、種子の発芽後における成長を促進させることができ、生産性の向上を図ることができる。
肥料成分としては、りん(P)、窒素(N)、カリウム(K)などを含む固形状又は液状のものを適用することができる。肥料成分が液状の場合は、乾燥状態のマット部に液状肥料分を散布するかまたは、液状肥料分に含浸させることにより担持させる。また肥料成分が固形状の場合は、マット部の製造工程において、所定比率の固形状肥料分を、マット部を構成する繊維分中に分散混合することによって保持させることができる。
【0026】
本実施の形態の育苗用構造体は、前記マット部の表面側又はその内部にネット状やシート状、糸状などの補強材を積層配置することもできる。これによって、繊維分を樹脂や糊剤などの結合剤により接着して形成された比較的低強度のマット部に耐久性を付与することができ、田植機などで育苗用構造体を所定サイズにカットしたり、取り扱ったりする際のハンドリング性など向上させ、作業効率を高めることができる。
【0027】
補強材は、植物性繊維などで形成されるネット状やシート状、糸状などのものであって、前記ネット状のものとしては、5cm角程度の編み目を有して、しつけ糸程度の強度を有する繊維を用いたものなどが適用できる。このようなネット状の網をマット部内やその表面に配置してサンドイッチ状などに形成することができる。ネット状にした場合には、田植機などで育苗用構造体をカットする際に切れやすくなるようにその網のサイズや繊維の太さなどを調整することが望ましい。
【0028】
本実施の形態の育苗用構造体の製造方法は、紙質材をシュレッダや篩を用いて粉砕調整して所定サイズの植物繊維を得る粉砕調整工程と、前記植物性繊維をナイロンやポリエステルなどの化学繊維と撹拌気流中やスクリュー撹拌機中で混合して所定混合比率の繊維組成物を得る分散混合工程と、箱状に形成された充填型枠の上部開口に前記繊維組成物を分散供給するとともに前記充填型枠の底部に沈降堆積する繊維積層物をその積層方向に加熱しながらプレス成形してマット部を形成させる加熱プレス工程と、前記マット部に液状の肥料成分を含浸させて担持させる肥料成分担持工程と、種籾が播種される前記マット部の表面にでんぷん糊や合成樹脂糊などの接着剤成分をコーティングして種子保持層を形成させる被覆工程と、を有する。これによって、使用済みなどの安価な紙質原料を用いてボード状などの多様な形態の育苗用構造体を効率的に製造でき、しかも、その原料のばらつきに対しても植物性繊維と化学繊維との混合比率を調整して対応でき、吸着特性や耐久性、形状形態などの品質管理を容易に行うことができる。
【0029】
本実施の形態の育苗用構造体の製造方法で、でんぷん糊を含む水中に繊維分を加えて作成した液状物をスクリーン網で濾し取って前記繊維分を含むシート状に形成させる抄造工程により前記マット部とすることができる。
このような抄造工程に作成されたマット表面部にでんぷん糊などの接着剤をスプレーした後、これを乾燥して耐久性をさらに高めることもできる。
【0030】
(実施例1)
図1は本実施例1の育苗用構造体の斜視図である。
図示するように、本実施例の育苗用構造体10は、パルプ繊維分をでんぷん糊を結合剤として接着して得られたマット部11と、マット部11表面にでんぷん糊をコーティングして形成された種子保持層12とを有している。
【0031】
マット部11は縦580mm×横280mm×厚み25mmの略板状であり、紙やパルプを破砕した綿状の短繊維(植物繊維)と結合剤(ポリエステル短繊維。例えば、帝人株式会社製の商品名テピルス、登録商標)とを(パルプ=280〜300g、テピルス=10〜15g)の混合比率で混合して型枠に入れ、これを加熱温度160℃で1〜2分熱圧着(プレス)することによって形成した。
次に、このマット部11の片側表面にでんぷん糊を塗布して、厚みが2〜5mmとなる種子保持層12を形成することにより育苗用構造体10とした。
この育苗用構造体10の種子保持層12に、図示するように水稲などの種子を散布して種子散布層13を形成させた。そして、必要に応じてこの育苗用構造体10を所定サイズに裁断したマット分割体10aをビニールハウスや田圃などの培地に配置して種子を育成させるようにしている。
【0032】
実施例1の育苗用構造体10は以上のように構成されているので、種子保持層12に種子を所定タイミングで散布して安定保持させることができ種子の発芽管理や育成管理を効率的に行うことができるとともに、育苗用構造体10を取り扱うのに必要な強度と裁断性などにも優れており、その生産性を高めることができる。
【0033】
(実施例2)
図2は実施例2における育苗用構造体の製造方法及びその使用形態の説明図である。以下同図を参照しながら説明する。
実施の形態2の育苗用構造体20は、まず、苗床となるマット部21(図2(1))を以下のようにして作成する。
すなわち、古紙などの紙質材をシュレッダや篩を用いて粉砕調整して所定サイズの植物繊維(パルプ綿)を得る(粉砕調整工程)。
次に、得られた植物性繊維を、ナイロンやポリエステル(例えば、帝人ファイバー(株)のテピルス(登録商標))などの化学繊維(結合剤となる)と撹拌気流中やスクリュー撹拌機中で混合して所定混合比率の繊維組成物を得る(分散混合工程)。
そして、箱状に形成された充填型枠の上部開口に繊維組成物を分散供給するとともに充填型枠の底部に沈降堆積する繊維積層物をその積層方向に加熱しながらプレス成形することでマット部21が得られる(加熱プレス工程)。
なお、前記パルプ綿の状態時に、パルプ綿にでんぷん糊をスプレーして植物繊維をコーティングし、植物繊維の耐久性や強度を高めることもできる。
【0034】
次に図2(2)に示すように、マット部21に、リン、窒素、カリウムなどを含む液状の肥料成分を含浸させた後、必要に応じて乾燥させて肥料成分をマット部21中に担持させる(肥料成分担持工程)。
【0035】
そして、図2(3)に示すように、播種されるマット部21の表面にでんぷん糊などの接着剤成分をコーティングして種子保持層22を形成させる(被覆工程)。
【0036】
次に、水稲や花などの種子を種子保持層22に散布して種子を敷き詰めるように埋設させた状態もしくは載置させた状態で種子保持層22に種子層23を配置することができる(図2(4))。
【0037】
最後に、必要に応じて、田圃の土などからなる培地層24を種子の上から被せるように所定の厚みで被覆して保護する(図2(5))。
以上の製造方法によれば、使用済みなどの安価な紙質原料を用いてボード状などの多様な形態の育苗用構造体を効率的に製造できる。しかも、その原料のばらつきに対しても植物性繊維と化学繊維との混合比率を調整して対応でき、耐久性や形状形態などの品質管理を容易に行うことができる。
【0038】
(実施例3)
図3は実施例3の育苗用構造体に用いるマット部の製造方法の一例を示すフロー図である。以下図を参照しながらマット部の製造方法について説明する。
【0039】
まず、使用済みの紙管や古紙などの紙質材を、シュレッダを用いて綿状に粉砕して、これを篩により分級調整して短繊維となるサイズの綿状原料に調整した。
【0040】
次に、前記植物繊維からなる綿状物質をスクリュー式などの撹拌槽30内で所定時間撹拌分散させて、貯留槽30aに貯留させる。この処理物を必要に応じてスプレードライヤなどを用いて高温乾燥空気と接触させたり、ロータリキルン31中で発生させた熱風を乾燥機32に吹き込んだりすることで乾燥させる。
【0041】
こうして得られた綿状の植物性繊維を真空ポンプ33や送風機、コンベアなどの輸送手段を介して搬送して、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維(結合剤)とエアー撹拌機などの撹拌気流中やローラや撹拌羽根を撹拌槽内で回転させて混合するスクリュー撹拌機35中で混合することによって、その重量混合比率(植物性繊維/化学繊維)=0.5〜0.8となる繊維組成物を得た。
【0042】
この繊維組成物を箱状に形成された充填型枠36の上部開口に真空ポンプ33を介して供給する。なお、このとき繊維組成物を、圧縮空気などを用いて拡散させながら分散供給するとともに、その深さが1〜2mとなる充填型枠36の底部に沈降堆積せる。これによって、植物繊維と化学繊維の混合物からなる原料綿が充填型枠36内を降下する過程で、植物繊維と化学繊維とが均一分散した積層状態になる。この繊維積層物を充填型枠36の下部に設けた回転型枠37を水平方向に回転移動させることにより取り出す。
【0043】
次に、プレス機38を用いてその積層方向に加熱しながらプレス成形してボード状に形成させる。これによって、所定の強度と耐久性を備えたマット部39とすることができる。さらに、このマット底部にシート状の紙をでんぷん糊で接着し補強を施すことも出来る。
【0044】
(実施例4)
図4は実施例4の育苗用構造体に用いるマット部の製造方法の一例を示す説明図である。以下図を参照しながらマット部の製造方法について説明する。
【0045】
まず、使用済みの紙管や古紙などの紙質材を、シュレッダを用いて綿状に粉砕して、これを篩により分級調整してパルプを作成しておく。
【0046】
次に、図4(a)に示すように水にでんぷん糊を加えて所定濃度(例えば、水1kgに対して0.1〜0.2kgとなるようなでんぷん糊溶液)の水溶液を調整して、抄造タンク40に貯留する。
【0047】
この抄造タンク40内のでんぷん糊溶液に前記パルプを所定量(例えば、でんぷん糊溶液1kgに対して0.1〜0.2kgのパルプ)加えて撹拌する(図4(b))。
【0048】
次に、網目サイズが約5〜10mmとなる紙すき(スクリーン網)41を抄造タンク40の底部から漉き上げる(図4(c))。
なお、紙すき41の面上に植物繊維などからなるネットや糸を補強材として配置することで、抄造されるマット部を強化することもできる。
【0049】
こうして、紙すき41上にパルプなどの繊維分がでんぷん糊で粘着された湿潤状態のシート体42を得ることができる(図4(d))。
【0050】
最後に図4(e)に示すようにシート体42を、例えば100℃×10分 の条件で予備乾燥した後、200℃×5分の条件で本乾燥して、マット部43とすることができる。
なお、必要に応じて原料となるパルプ綿にテピルスなどの合成繊維を混合し、さらにこの綿状態時にでんぷん糊をスプレーして、それを乾燥してから加熱及びプレスなどの方法によりその耐久性や強度を高めることも可能である。
【0051】
図5は、マット部に補強材を介在させた実施例の育苗用構造体の断面図を示し、(A)は、マット部11の中間内部にネット状の補強材51、及びマット部11の下部にシート状の補強材52を積層配置したものである。
また、(B)は、マット部11の中間内部に3mm長さのしつけ糸の補強材53を混合したものである。マット部11の下部にシート54(例えばトイレットペーパー等の薄紙など)の補強材を積層配置したものである。
前記ネット状の補強材としては、しつけ糸を5cm角の編み目状にしたものを適用した。
【0052】
以上本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれら実施例1〜4のものに限定されるものではない。すなわち、本発明は育苗用構造体のマット部表面に種子保持層を設けて種子を安定保持させるようにしたことを要旨とするものであり、これに属するものは本発明の権利範囲である。例えば本実施形態では、肥料成分を液状にしてマット部に含浸させるようにしているが、マット部製造工程における繊維分の混合撹拌時に粒状または粉状の肥料成分を混合して均一分散させるようにしてもよい。さらに、稲などの他に芝生類、カイワレ、花等の種子を本発明の育苗用構造体に適用することもできる。また、リグニン含有量の上限値のみならず下限値を設定することで、マット部の形態保持に必要な粘結性や強度を確保しつつ、育苗用構造体の切断加工時の加工性を良好に維持することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1の育苗用構造体の斜視図である。
【図2】実施例2の育苗用構造体の製造方法の説明図である。
【図3】実施例3のマット部の製造方法のフロー図である。
【図4】実施例4のマット部の製造方法の説明図である。
【図5】実施例5のマット部の断面構造の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 実施例1の育苗用構造体
11 マット部
12 種子保持層
20 実施例2の育苗用構造体
21 マット部
22 種子保持層
23 種子層
24 培地層
30 撹拌槽
30a 貯留槽
31 ロータリキルン
32 乾燥機
33 真空ポンプ
35 スクリュー撹拌機
36 充填型枠
37 回転型枠
38 プレス機
39 実施例3のマット部
40 抄造タンク
41 紙すき(スクリーン網)
42 シート体
43 実施例4のマット部
50 実施例5のマット部
51〜54 補強材
【出願人】 【識別番号】505190105
【氏名又は名称】村上商事株式会社
【出願日】 平成17年11月2日(2005.11.2)
【代理人】 【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所


【公開番号】 特開2007−124941(P2007−124941A)
【公開日】 平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願番号】 特願2005−320165(P2005−320165)