| 【発明の名称】 |
きのこ栽培用種菌およびきのこの栽培方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】唐木田 郁夫
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| 【要約】 |
【課題】水により希釈して、きのこの栽培に用いられる希釈菌を簡単に得ることができるきのこ栽培用種菌およびこれを用いたきのこ栽培方法を提供する。
【解決手段】水により希釈し希釈菌として使用するきのこ栽培用種菌であって、2〜15mmの大きさの粒状に形成されたパルプの粒状材と栄養材とを用い、水分調整した培養基に、きのこの原菌を接種し、培養して得られる。培基材に希釈菌を接種する際には、きのこ栽培用種菌を、水により1次希釈し、次いで接種濃度にまで2次希釈して使用する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水により希釈し希釈菌として使用するきのこ栽培用種菌であって、 2〜15mmの大きさの粒状に形成されたパルプの粒状材と栄養材とを用い、水分調整した培養基に、きのこの原菌を接種し、培養して得られたことを特徴とするきのこ栽培用種菌。 【請求項2】 水により希釈し希釈菌として使用するきのこ栽培用種菌であって、 パルプと栄養材とを混合して2〜15mmの大きさの粒状に形成した粒状材を用い、水分調整した培養基に、きのこの原菌を接種し、培養して得られたことを特徴とするきのこ栽培用種菌。 【請求項3】 前記培養基に接種する原菌として、パルプと栄養材とを培基として培養した原菌、あるいは液体培地により培養して得た原菌を使用することを特徴とする請求項1または2記載のきのこ栽培用種菌。 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項記載のきのこ栽培用種菌を用いたきのこの栽培方法であって、 前記きのこ栽培用種菌を滅菌水を用いて所定の濃度にまで希釈して希釈菌を調製する希釈工程と、 希釈工程によって得られた希釈菌を、培基材に接種する接種工程と、 希釈菌が接種された栽培瓶を、所定の温度、湿度に管理して培養し、培基材から子実体を生長させる発芽生育工程とを備えることを特徴とするきのこの栽培方法。 【請求項5】 前記希釈工程では、きのこ栽培用種菌と滅菌水とを撹拌して、培基材への接種濃度よりも高濃度の液体状の希釈菌を調製する1次希釈工程と、 1次希釈工程で得られた希釈菌の全量を、培基材への接種濃度にまで希釈する2次希釈工程とを備えることを特徴とする請求項4記載のきのこの栽培方法。 【請求項6】 前記希釈工程では、きのこ栽培用種菌と滅菌水とを撹拌して、培基材への接種濃度よりも高濃度の液体状の希釈菌を調製する1次希釈工程と、 1次希釈工程で得られた1次希釈菌を順次、所要量ずつ接種装置側に供給し、前記1次希釈菌を培基材への接種濃度に希釈して接種することを特徴とする請求項4記載のきのこの栽培方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明はきのこ栽培用種菌およびきのこの栽培方法に関し、より詳細には、水によって希釈して得られた希釈菌を培基材に接種してきのこを栽培する栽培方法において用いるきのこ栽培用種菌およびこれを用いたきのこの栽培方法に関する。 【背景技術】 【0002】 きのこの人工栽培においては、おがこ等からなる培基材に種菌を接種し、所定の培養環境下で培養した後、培基材から子実体を生長させきのこを収穫している。このきのこの人工栽培で用いる種菌には、一般に、おがこを基材としたおがこ種菌が広く使用されてきた。このおがこ種菌は、きのこの栽培に使用する栽培瓶と同様な瓶に培養基を充填し、原菌を接種し培養して調製される。 【0003】 おがこ種菌はきのこ栽培で長年にわたって使用されており、自動接種装置も提供されている。しかしながら、おがこ種菌は培養瓶から瓶口に掻き落とすようにして接種されるから、瓶口部分に種菌が積み重なるようになって、培基材中で必ずしも効率的に培養されないという問題があり、従来は瓶口から培基材の底に向けて植菌孔をあけ、植菌孔に部分的におがこ種菌を落とし込み、培基材の内部からも培養が進むようにするといったことが行われている。 【0004】 一方、培基材に種菌を効率的に浸透させてきのこを栽培する方法として、液体種菌を使用する方法も提案されてきた。特許文献1は、針状に形成した管を培養基に差し込んで液体種菌を接種してきのこを栽培する方法に関するものであり、特許文献2は、培養後の種菌を水を用いて希釈し、この水溶菌を培養基に接種してきのこを栽培する方法に関するものであり、特許文献3は、きのこ栽培に用いる液体種菌として、いわゆる培養液中で種菌を液体培養して液体種菌としたものである。 【特許文献1】特開昭63−207328号公報 【特許文献2】特開2002−360064号公報 【特許文献3】特開2002−51639号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上述したおがこ種菌のような固形の種菌は体積がかさばり、種菌を輸送するといった取り扱いが煩雑であり、種菌接種時には頻繁に種菌の瓶を補充するために取り替えなければならないという問題があるのに対して、液体種菌、とくに培養菌(原種菌)を希釈して液体種菌とする方法の場合には、種菌を輸送したりする操作が簡単で多数本の栽培瓶に種菌を接種する場合でも、わずかな量の原種菌で足りるという利点がある。 【0006】 このように液体種菌には固形の種菌とくらべて利点はあるものの、液体培地を用いて液体種菌を培養して調製するから、培養装置が必要であったり、殺菌等の管理が難しかったりするという問題があり、専用施設が必要になるといった理由から、一般には普及しにくいという問題があった。また、種菌を希釈して液体種菌とする場合は、種菌が希釈しやすく、希釈して形成した液体種菌が取り扱いやすいものであることが必要であるが、従来の種菌を希釈して液体種菌とするものにあっては、希釈して液体種菌とした際に、液体種菌に固形物が残留して輸送管等で詰まってしまうといった問題があった。 【0007】 本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、水で希釈することによって所要の接種濃度に簡単に希釈することができ、接種装置で接種する際にも輸送管等で詰まったりすることがなく、容易に培基材に接種することができて、きのこ栽培に好適に使用することができる、きのこ栽培用種菌およびこれを用いたきのこ栽培方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。 すなわち、水により希釈し希釈菌として使用するきのこ栽培用種菌であって、2〜15mmの大きさの粒状に形成されたパルプの粒状材と栄養材とを用い、水分調整した培養基に、きのこの原菌を接種し、培養して得られたことを特徴とする。 なお、パルプの粒状材と栄養材とから培養基を調製する際には、パルプの粒状材と米ぬか等の栄養材とをあらかじめ混合してから水分調整することもできるし、栄養材に加水して液体状あるいは粘性をもった状態としてからパルプの粒状材と混合して水分調整することもできる。栄養材に加水してからパルプの粒状材と混ぜ合わせる方法の方が、パルプの粒状材と栄養材とを均一に混合できる場合がある。 また、栄養材に加水して得られた栄養水分のみをパルプの粒状材に加えることによって、培養基の水分調整とともに栄養材を添加するようにすることも可能である。また、パルプの粒状材にあかかじめ加水しておいてから栄養材と混合する方法も可能である。 【0009】 また、水により希釈し希釈菌として使用するきのこ栽培用種菌であって、パルプと栄養材とを混合して2〜15mmの大きさの粒状に形成した粒状材を用い、水分調整した培養基に、きのこの原菌を接種し、培養して得られたことを特徴とする。パルプに栄養材を添加した粒状材を使用する場合は、パルプの粒状材と栄養材とを混ぜ合わせる手間が省け、パルプに栄養材が均一に添加され、所定水分量に調整された培養基が簡単に得られるという利点がある。パルプの粒状材と混じり合いにくい栄養材を使用するような場合には、パルプと栄養材とをあらかじめ混合して形成した栄養材入りの粒状材が有効に使用できる。 なお、培養基に使用する栄養材としては、米ぬか、麦、コーン等の穀粒、豆類、芋類等の粉砕物、穀粒、豆類、芋類の加工物あるいはこれらを醸造等の加工に使用した残渣、が使用できる。また、培養基を水分調整する際に、糖類、でんぷん、酵母エキス、麦芽エキス、ペプトン、ビタミン類、ミネラル類等の水に溶解する栄養材を添加した水を使用することができ、また、米ぬか、麦、コーン等の穀粒、豆類、芋類等の抽出液を使用することもできる。抽出液を用いたきのこ栽培用種菌は希釈した際に固形分を含まず、希釈しやすいという利点がある。 【0010】 また、前記培養基に接種する原菌として、パルプと栄養材とを培基として培養した原菌、あるいは液体培地により培養して得た原菌を使用したきのこ栽培用種菌は、これらの原菌の培基も水によって簡単に希釈されることから、水による希釈用の種菌として好適に使用することができる。 【0011】 また、前記きのこ栽培用種菌を用いたきのこの栽培方法であって、前記きのこ栽培用種菌を滅菌水を用いて所定の濃度にまで希釈して希釈菌を調製する希釈工程と、希釈工程によって得られた希釈菌を、培基材に接種する接種工程と、希釈菌が接種された栽培瓶を、所定の温度、湿度に管理して培養し、培基材から子実体を生長させる発芽生育工程とを備えることを特徴とする。 また、前記希釈工程では、きのこ栽培用種菌と滅菌水とを撹拌して、培基材への接種濃度よりも高濃度の液体状の希釈菌を調製する1次希釈工程と、1次希釈工程で得られた希釈菌の全量を、培基材への接種濃度にまで希釈する2次希釈工程とを備えることを特徴とする。 また、前記希釈工程では、きのこ栽培用種菌と滅菌水とを撹拌して、培基材への接種濃度よりも高濃度の液体状の希釈菌を調製する1次希釈工程と、1次希釈工程で得られた1次希釈菌を順次、所要量ずつ接種装置側に供給し、前記1次希釈菌を培基材への接種濃度に希釈して接種することを特徴とする。 【発明の効果】 【0012】 本発明に係るきのこ栽培用種菌によれば、水により希釈することによって、培基材に接種して用いる希釈菌を簡単に得ることができ、きのこ栽培に簡単に利用することができるきのこ栽培用種菌として提供できる。また、きのこ栽培用種菌を希釈して用いることにより、多数本の栽培瓶に接種することが可能となり、おがこ種菌のような固形の種菌とくらべて、輸送等の搬送操作が容易となり、効率的な菌接種を行うことが可能になる。また、本発明に係るきのこ栽培用種菌を用いてきのこを栽培する方法は、専門的な管理技術を必要とせず、菌接種も容易で、効率的なきのこ栽培を行うことが可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 本発明に係るきのこの栽培方法では、きのこ栽培用種菌を水(滅菌水)を用いて培基材への接種濃度にまで希釈し、瓶栽培による場合は栽培瓶に充填した培基材に希釈菌を接種してきのこを栽培し、菌床栽培による場合は栽培袋に収容した培基材に希釈菌を接種してきのこを栽培する。 本発明で使用するきのこ栽培用種菌は、水によって希釈した際に用いた培養基が簡単に水に溶解し、濾過することなく接種装置に供給しても接種管中で希釈菌が詰まったりせずに接種することができるように形成されたもので、このような水による希釈操作のみによって菌接種が可能となるように、、パルプの短繊維からなる小さな粒状材(2〜15mm程度の大きさ)と、米ぬか等の栄養材とから培養基を調製し、水分調整して原菌を接種し培養して得られたものである。 【0014】 (きのこ栽培用種菌の作製方法) きのこ栽培用種菌を作成する際に使用する培養基として、本実施形態では、パルプを乾燥させて粒状の小さな塊状に形成した粒状材と栄養材とを混合して調製したものを使用した。パルプの粒状材は、ペットの排泄物の処理材等として使用されており(たとえば、実公昭54-17675号公報)、吸湿性に富むとともに水溶性にすぐれ、トイレ等に流して処理することが可能である。とくに、添加剤を加えていないパルプは水溶性にすぐれ、パルプの短繊維を用いて形成したものは、種菌の接種装置で用いられる流路中で詰まったりせずに輸送することができる。本実施形態で使用した粒状材は、粒径2〜15mm程度の大きさのものである。粒状材は水によって簡単に溶解されるものであればよく、大きさはとくには限定されない。 【0015】 きのこ栽培用種菌は、上記のパルプの粒状材に栄養材を加えて調製した培養基を通常のきのこ栽培で使用している内容量850mlのプラスチック瓶に充填し、きのこの原菌を接種して培養することによって作成した。 表1にきのこ栽培用種菌の作成に使用した培養基の調製例を、従来のおがこ種菌の作成に使用する培養基とともに示す。なお、米ぬかおよびおがこ種菌に使用する杉おがは乾物重量ではない。 【表1】
【0016】 表1に示すように、原菌を接種して培養する培養基は、適宜、水分調整して使用する。実施例の培養基の場合は、パルプの粒状材を培養基に使用しているから、水分調整には注意を要する。すなわち、培養基を水分調整する際には、パルプの粒状材と米ぬか等の栄養材とを所定の分量比でよく混合した後、所定の水分量になるように加水し、培養基全体が均一の水分量となり、栄養材も均一に混合されるようにする。 【0017】 米ぬか等の栄養材を加える際に、あらかじめ栄養材に加水して栄養材を液状にしてからパルプの粒状材と混合する方法も有効である。この場合は、栄養材を加えることによって栄養材の添加と培養基の水分調整とを同時に行うことも可能であるし、栄養材を添加した後に加水して最終的に水分調整してもよい。また、パルプの粒状材に若干加水してから栄養材と混合する方法も可能である。 いずれの方法による場合も、パルプの粒状材と栄養材とが均一に混じり合うようにすることが重要である。 なお、パルプの粒状材に加える栄養材としては、米ぬか以外に、麦、コーン等の穀粒、豆類、芋類の粉砕物等が使用できる。 【0018】 表2は、米ぬか以外の栄養材を使用して培養基を調製した例である。 【表2】
【0019】 表2に示す栄養材のように、水に溶解しやすい栄養材を使用する場合は、水に栄養材を加えておいてから、栄養材を添加した水を水分調整に用いることで、栄養分の添加と培養基の水分調整ができて効果的である。 【0020】 なお、パルプの粒状材と栄養材とから培養基を調製する方法として、パルプの粒状材に栄養材を添加した栄養材入りの粒状材を使用することも可能である。すなわち、パルプの粒状材をつくる際に、パルプに栄養材を添加して混練した材料から塊状(2〜15mm程度)の粒状材を作製して栄養材入りの粒状材とする。この栄養材入りの粒状材によれば、水分調整するだけで培養基とすることができ、きわめて取り扱いが簡便である。パルプに添加する栄養材としては、上述した米ぬか、穀粒等の固形材の他、水溶性の栄養材を使用することもできる。 【0021】 上述した方法によって調製した培養基に原菌を接種した後、室温15〜17℃、湿度70〜80%に管理して培養する。えのき茸の場合、培養日数20日程度で培養が完了する。培養基にパルプの粒状材を使用しているから、培養瓶に培養基を充填した状態でパルプの粒状材の間に空間(隙間)が形成され、培養基中での空気の流通と保湿作用が好適になされ、好適に菌培養することができ、菌体量を増加させることができる。培養基中で培養が進むと、パルプの粒状材の間の隙間が菌糸によって塞がれた状態になる。また、パルプの粒状材自体は白色であるが、米ぬかを栄養材として加えると培養基が茶色になる。培養基中で菌糸が蔓延して培養がすすむと培養基の色が白色に変化するから、培養基の色を見ることによって培養完了時がわかる。 【0022】 なお、培養基に接種する原菌に用いる培基についても、きのこ栽培用種菌を水で希釈した際に簡単に希釈できて希釈菌中に固形物が残らないようにする必要がある。すなわち、原菌を接種して培養する培基も水によって簡単に希釈されるものを使用するのがよい。この培基としては、上述したパルプの粒状材と栄養材からなるもの、あるいは栄養材を含むパルプ粒状材からなるもの、液体培地等が使用できる。これらの培基を用いて得られた原菌を、きのこ栽培用種菌を調製する培養基に接種する際に、原菌を水により希釈して接種することもできる。 【0023】 (希釈菌の調製方法) 培養基を用いて培養が完了したきのこ栽培用種菌は、滅菌水を用いて希釈することにより、培基材に接種してきのこを生育させる希釈菌として使用する。本実施形態では、重量比できのこ栽培用種菌を約100倍に希釈して使用した。きのこ栽培用種菌の希釈比は接種用の種菌の濃度を規定することになるから、きのこ栽培用種菌を希釈する際には、きのこの発生に必要な濃度となるように希釈して使用する。 【0024】 きのこ栽培用種菌を希釈する方法としては、1次希釈工程で、きのこ栽培用種菌を10倍程度に希釈し、2次希釈工程で、いったん所要の希釈比(本実施形態では100倍)にまで希釈してから培基材に接種する方法と、1次希釈工程で10倍程度に希釈した後、希釈菌を接種装置側に順次供給して、所要の希釈比として培基材に接種する方法がある。 【0025】 図1は、1次希釈工程と2次希釈工程によって希釈菌を調製して培基材に接種する装置構成を示す。図示例の装置は、培養瓶10で培養されたきのこ栽培用種菌を1次希釈として10倍に希釈する撹拌槽20と、撹拌槽20で希釈された希釈菌を2次希釈としてさらに10倍に希釈して貯溜するための貯溜槽30とを備える。撹拌槽20と貯溜槽30には滅菌水を貯溜する滅菌水タンク40が、バルブ41、42、43を介して配管接続される。貯溜槽30は希釈菌を接種する接種装置のポンプ50にバルブ51を介して接続され、ポンプ50には培基材が充填された栽培瓶60に希釈菌を接種する接種管52が接続されている。 【0026】 撹拌槽20の底部には撹拌羽根22が設けられており、撹拌槽20に投入されたきのこ栽培用種菌は、滅菌水タンク40から供給される滅菌水を加えて撹拌することによって希釈される。きのこ栽培用種菌(えのき茸)は培養瓶1瓶あたりで約500gであり、撹拌槽20に培養瓶1瓶のきのこ栽培用種菌を投入する際には、滅菌水タンク40から滅菌水5リットルを撹拌槽20に供給し、きのこ栽培用種菌を少しずつ投入しながら撹拌して希釈する。 この1次希釈工程は、きのこ栽培用種菌を水によって希釈して液体状とすることを目的とするものである。きのこ栽培用種菌は、パルプの粒状材を培養基として用いていることにより、水によって簡単に溶解され、白濁した液体状になる。培養基に加えた米ぬか等の栄養材は菌糸の生長に利用されたことにより、種菌の希釈に影響を与えることはない。撹拌槽20内で十分に撹拌した後、バルブ42を開けて貯溜槽30に移し、貯溜槽30でさらに10倍に希釈する。 【0027】 貯溜槽30は、培瓶に接種する希釈比まで希釈菌を希釈して用意するためのものである。滅菌水タンク40から500リットルの滅菌水を貯溜槽30に供給し、撹拌羽根32により撹拌しながら希釈することによって100倍の希釈菌(2次希釈菌)が得られる。 2次希釈菌は、栽培瓶60に対し、1本あたり、平均25ミリリットル接種する。したがって、貯溜槽30での希釈菌100ミリリットルは、栽培瓶60の4本に接種できる分量に相当する。1つのコンテナに収容されている栽培瓶にまとめて希釈菌を接種する場合、たとえば1コンテナあたり16本の栽培瓶が収容されているとすると、1コンテナあたりでは貯溜槽30から400ミリリットルの希釈菌を供給すればよい。 本実施形態のように、500gのきのこ栽培用種菌を100倍に希釈して使用する場合は、50000ミリリットルの希釈菌が得られるから、きのこ栽培用種菌の1本あたりで2000本の栽培瓶60に希釈菌を接種することが可能となる。 【0028】 本実施形態においては、1次希釈工程と2次希釈工程により、きのこ栽培用種菌を接種用の濃度にまで希釈し、希釈菌を貯溜槽30に貯溜して使用する形態をとっている。したがって、一度に大量の栽培瓶に対して種菌を接種する場合には、貯溜槽30を複数個用意しておき、きのこ栽培用種菌を順次希釈してこれらの貯溜槽30に順次希釈菌を貯溜していって使用するようにすればよい。 【0029】 接種装置では、貯溜槽30から供給される希釈菌をポンプ50により接種管52から栽培瓶の瓶口に吐出させるようにして供給する。きのこ栽培用種菌は希釈されて粘性のない液体状となるから、ポンプ50を用いて栽培瓶60に接種する際に、希釈菌が接種管52中でつまったりすることはない。 【0030】 図2は、1次希釈工程できのこ栽培用種菌を10倍程度に希釈した後、希釈菌を貯溜槽30に貯溜せず、順次、接種装置側に供給しながら、栽培瓶60に接種する場合の装置構成を示す。 本実施形態においては、撹拌槽20と接種装置側の希釈ポンプ53とを接続し、希釈ポンプ53と滅菌水タンク40とを接続する構成とする。撹拌槽20で10倍程度に希釈された1次希釈菌は接種装置の希釈ポンプ53に供給され、希釈ポンプ53では滅菌水タンク40から供給される滅菌水と1次希釈菌とを所定の希釈濃度(100倍)に希釈し、接種管52から栽培瓶60に希釈菌を接種する。 【0031】 上述したように、あらかじめ1次希釈を行い、さらに2次希釈を行って希釈する方法は、1回の操作で所要の濃度にまで希釈する方法とくらべて、きのこ栽培用種菌を確実に撹拌することができ、均一に希釈することができるという利点がある。また、2次希釈工程によって所定の濃度にまで希釈して貯溜する方法は、希釈菌を確実に所定濃度に希釈できるという利点がある一方、大形の貯溜槽30を用意しなければならないという不利がある。この点で、図2に示す希釈方法および接種方法は、大形の装置を使わずに栽培瓶に希釈菌を接種することができる。 【0032】 なお、図1に示す希釈装置では、容積850ミリリットルの培養瓶で得られたきのこ栽培用種菌を、全量希釈しているが、貯溜槽30が大きくなりすぎるような場合には、きのこ栽培用種菌を100g程度に小分けしながら希釈して使用してもよい。、従来のおがこを培養基とした種菌の場合には、培養瓶1本あたりで栽培瓶40〜50本程度接種できるのみであるのに対して、本発明に係るきのこ栽培用種菌を使用する方法であれば、100g程度にきのこ栽培用種菌を小分けして使用しても、十分な本数の栽培瓶に接種することができる。 【0033】 (希釈菌の接種方法) 栽培瓶に希釈菌を接種する場合には、栽培瓶の瓶口に希釈菌を吐出させるようにするが、実際には、栽培瓶に培基材を充填した後、培基材に植菌孔をあけ、植菌孔内に希釈菌が吐出されるようにするのがよい。 図3は、栽培瓶に希釈菌を吐出させる際に使用する接種管55の例を示す。この接種管55は吐出部55aの先端に複数の吐出ノズル55bを設けたものである。図3に示す吐出部55aは底面が平皿状に形成され、前記吐出ノズル55bは吐出部55a内に連通して吐出部55aの底面から突出するように設けられる。 【0034】 図4は、栽培瓶60を瓶口60a側から見た状態を示す。培基材にはA〜Eの5つの植菌孔が設けられている。接種管55に設ける吐出ノズル55bはこれらの植菌孔に希釈菌が吐出されるように吐出部55aに配置するのがよい。本実施形態では、培基材の中央部に設けられる植菌孔Aの位置に吐出ノズル55bを配置し、植菌孔B〜Eの位置に合わせて周方向に8個所の吐出ノズル55bを配置している。 【0035】 本実施形態の接種管55は吐出ノズル55bから希釈菌を流下させて栽培瓶に接種する方式のものであるが、吐出ノズルから希釈菌を噴霧させるようにして接種する方法ももちろん可能である。吐出ノズルから希釈菌を噴霧して接種する場合には、希釈菌の噴霧方向を可変とし、また噴霧位置を調節できるようにすることで、培基材に確実に希釈菌を接種することができる。 【0036】 (希釈菌を用いたきのこの栽培例) 上述した希釈菌を培基材に接種して、えのき茸を実際に栽培した結果について以下に説明する。 表3は、栽培瓶に充填した培基材の調製方法を示す。なお、栽培瓶としては内容積900ml、瓶口径が65φのプラスチック瓶を使用した。 【表3】
【0037】 【表4】
【0038】 表4は、上記培基材を充填した栽培瓶に、前述した本発明に係るきのこ栽培用種菌を希釈した希釈菌を接種した場合(実施例)と、従来のおがこ種菌を接種した場合(比較例)について、えのき茸を栽培した結果を示す。 表4で、菌まわり日数とは、栽培瓶に種菌を接種し、培養室で培養を開始した後、培基材に菌糸が蔓延して培養が完了するまでの日数である。発芽日数とは、培基材の表面を削り取ってきのこが発芽する発生面を形成する処理を行ってからきのこの芽が出揃うまでの日数である。抑制〜生育日数とは、発芽完了から収穫までの日数である。 実際の栽培条件としては、培養工程:温度15〜16℃、湿度75%程度、発芽工程:温度15〜16℃、湿度90〜98%、抑制工程:温度5℃程度、湿度75〜85%、光照射、風、生育工程:温度5〜7℃、湿度75〜85%とした。 【0039】 表4に示すように、希釈菌を接種した場合も、おがこ種菌を接種した場合も、全栽培日数は同じであり、平均収量についても、また収穫した茸の品質についても同等であった。この栽培結果は、パルプの粒状材を培養基として用いたきのこ栽培用種菌が、きのこの栽培に好適に使用できることを示している。 【0040】 表5は、パルプの粒状材と米ぬかを培養基として調製するきのこ栽培用種菌について、米ぬかの分量を変えて調製し、原菌を培養基に接種した後のきのこ栽培用種菌の菌まわり日数と、希釈菌を培基材に接種した後の栽培瓶の菌まわり日数を観察した結果を示す。使用したきのこ菌はえのき茸である。 【表5】
【0041】 きのこ栽培用種菌に使用した培養基のサンプルは、表5に示すように、米ぬか量を20gから120gまで変えた6種類のものである。表中で、きのこ栽培用種菌の菌まわり日数とは培養基に原菌を接種した後、培養基中で菌まわりするまでの日数であり、栽培瓶の菌回り日数とは、希釈菌を栽培瓶に接種した後、栽培瓶中で菌糸が菌まわりするまでの日数である。また、重量比は、培養基に用いたパルプの重量に対する米ぬかの重量比を示す。 表5に示す実験結果は、原菌を培養基に接種してきのこ栽培用種菌を作製する際には、米ぬかの量が少ないサンプルの方が短日数で菌まわりすることを示す。一方、希釈菌を栽培瓶に接種して培養する際には、米ぬかの重量比を40〜50%としたサンプルがもっとも早く菌回りすることを示す。米ぬかの添加量が少ない場合は、希釈菌中の菌糸量が少なくなるために菌まわりまでの日数がかかるものと考えられる。 【0042】 きのこ栽培においては、実栽培サイクルを短縮することが重要であることを考慮すると、米ぬかを栄養材とする培養基を使用して希釈用のきのこ栽培用種菌を作成する際には、米ぬかの重量比を40〜50%とすることが好適であるということができる。もちろん、表5に示すように、米ぬかを栄養材として使用する場合に米ぬかの重量比を10〜60%として栽培することも可能である。 【0043】 以上説明したように、パルプの粒状材を培養基に使用して培養して得られたきのこ栽培用種菌は、水により希釈して使用することによって、850ミリリットルの培養瓶1本で、約2000本もの栽培瓶に接種してきのこを生育させることが可能である。したがって、本発明に係るきのこ栽培用種菌は、おがこ種菌にくらべて輸送等の取り扱いが簡単で輸送コストが低減できるという利点があり、使用に際しても、栽培農家で水により希釈して使用するだけであるから、とくに専門技術を必要とせず、手軽に利用することができ、きのこの栽培コストを下げることが可能になる。 【図面の簡単な説明】 【0044】 【図1】希釈菌を調製する装置の概略構成を示す説明図である。 【図2】希釈菌を調製する他の装置の概略構成を示す説明図である。 【図3】栽培瓶に接種する接種管の側面図である。 【図4】培基材に形成された植菌孔と吐出ノズルとの配置を示す説明図である。 【符号の説明】 【0045】 10 培養瓶 20 撹拌槽 22 撹拌羽根 30 貯溜槽 32 撹拌羽根 40 滅菌水タンク 50 ポンプ 52 接種管 53 希釈ポンプ 55 接種管 60 栽培瓶
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| 【出願人】 |
【識別番号】000147969 【氏名又は名称】株式会社千曲化成
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| 【出願日】 |
平成17年10月19日(2005.10.19) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100077621 【弁理士】 【氏名又は名称】綿貫 隆夫
【識別番号】100092819 【弁理士】 【氏名又は名称】堀米 和春
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| 【公開番号】 |
特開2007−110942(P2007−110942A) |
| 【公開日】 |
平成19年5月10日(2007.5.10) |
| 【出願番号】 |
特願2005−304620(P2005−304620) |
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