| 【発明の名称】 |
キノコ栽培用菌床の製造方法及びキノコ栽培用菌床 |
| 【発明者】 |
【氏名】北島 隆彦
【氏名】原 賢治
|
| 【要約】 |
【課題】竹を主体とする堆肥を用いて、食用あるいは薬用キノコ類の菌の成長を著しく促進させることが可能なキノコ栽培用菌床を提供すること、及び筍皮の廃棄物処理とその有効活用をはかることにある。
【解決手段】筍皮と竹のいずれか一方または両方を主とした堆肥原料に、放線菌、光合成菌、糸状菌、乳酸菌、酵母、麹菌から選択される少なくとも1種を含む有用微生物を混合する混合し、さらに必要に応じて発酵促進用助剤、水分調整剤、微生物の栄養剤から選択される少なくとも1つを添加して混合攪拌して発酵させ、発酵物に木質チップを混合することにより、筍皮や若竹に含まれる成長促進物質が含まれたキノコ栽培用菌床となり、キノコの成長促進に効果的である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 筍皮と竹のいずれか一方または両方を主とした堆肥原料に、有用微生物を混合して発酵させる発酵工程を含むことを特徴とするキノコ栽培用菌床の製造方法。 【請求項2】 前記有用微生物が放線菌、光合成菌、糸状菌、乳酸菌、酵母、麹菌から選択される少なくとも1種である請求項1記載のキノコ栽培用菌床の製造方法。 【請求項3】 前記発酵工程は、さらに、前記堆肥原料に発酵促進用助剤、水分調整剤、微生物の栄養剤から選択される少なくとも1つを添加する工程を含む請求項1または2記載のキノコ栽培用菌床の製造方法。 【請求項4】 前記発酵工程は、さらに、前記堆肥原料に木屑、穀物屑、穀物糠、サトウキビかす、おからから選択される少なくとも1種を添加することを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載のキノコ栽培用菌床の製造方法。 【請求項5】 前記竹は若竹と親竹とからなり、前記堆肥原料中の筍皮と若竹のいずれか一方または両方の占める割合が5%以上であり、さらに親竹を加えた割合が40%以上である請求項1から4のいずれかの項に記載のキノコ栽培用菌床の製造方法。 【請求項6】 筍皮と竹のいずれか一方または両方を主とした堆肥原料に、有用微生物を添加し、さらに発酵促進用助剤と水分調整剤と微生物の栄養剤の少なくとも1つを添加し、混合撹拌する第1次工程と、その後前記堆肥原料の追加混合と切り返し撹拌を複数回繰り返す第2次工程と、前記堆肥原料の追加を中止して切り返し撹拌を行う第3次工程と、その後常温で放置する第4次工程を含むキノコ栽培用菌床の製造方法。 【請求項7】 請求項1から6のいずれかの項に記載の方法で製造され、筍皮と竹のいずれか一方または両方の占める割合が20%以上であるキノコ栽培用菌床。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、食用あるいは薬用キノコ類の人工栽培に用いられるキノコ栽培用の菌床及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、シイタケ等のキノコ類の人工栽培では、楢や櫟等の広葉樹の原木を利用し、取扱いに便利な長さ1m程度に玉切りした、いわゆるホダ木にシイタケ等の種菌を植え付けて山林や人工日陰等の下に静置し、原木にシイタケ等の菌糸を伸長させる原木栽培が利用されてきた。このような原木栽培においては、2年後ぐらいにシイタケ等のキノコ類が原木上に発生し収穫が可能になる。 【0003】 しかしながら、ホダ木用原木が不足し、生産者の老齢化に伴う作業量の低減、栽培期間の短縮化等を図るべく、原木栽培に替わり、広葉樹のオガ粉(ノコ屑)を主とする菌床を用いた菌床栽培が行われるようになってきており、その生産量も増加している。例えば、シイタケの場合、楢や櫟等の広葉樹オガ粉(ノコ屑)と少量のフスマ、糖類等の栄養源を混合して固めたブロック状乃至円筒状の培地が用いられ、また、マイタケなどのきのこは木質チップを主体にした菌床をプラスチック瓶に入れて栽培されている。さらに、木質材料変性ポリオールを用いたポリウレタンフォームを利用する栽培技術も報告されている(特許文献1参照。)。また、栽培に用いられる培地として、アグリクス茸の場合に竹材を使用する技術が知られている(特許文献2参照。)。 【0004】 菌床を用いるキノコの菌床栽培方法としては、袋栽培、瓶栽培、箱栽培等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。栽培工程についても、例えば袋栽培の場合には、培地調製、袋詰め、殺菌、接種、培養、熟成、発生、収穫の工程を経ている。 【0005】 培地調製とは、菌床栽培に用いる各種基材を計量配合して水分調整する工程をいう。水分含量は、55〜65%が適当である。 袋詰めとは、調製した培地を1.2kg〜2.5kgの円柱状に固め、中央に2〜2.5cm程度の穴を開けて、フィルター付きのポリプロピレン製等の袋に詰める工程をいう。 殺菌とは、蒸気により培地中のすべての微生物を死滅させる工程であり、例えば、120〜125℃において、15〜30分間行われる。 接種とは、放冷された培地に種菌を植え付ける工程で、例えばシイタケ菌を培地で23〜25℃、2〜3週間培養したものを1袋当り30〜50mlを無菌的に植え付けるのが適当である。また、上記の工程で得られる液体種菌接種済みの培養基を、23〜25℃で20〜30日間培養し、培養基全体にシイタケの菌糸を蔓延させたものを固体種菌として用いることもでき、例えば、1袋当り10〜20gを無菌的に接種するのが適当である。 【0006】 培養とは、接種済みの培養基を20〜23℃、湿度65〜75%において菌糸を蔓延させる工程で、3ヶ月程度行われる。 熟成とは、袋内に繁殖した菌糸が培養基内の養分を吸収し菌糸内に蓄積することによって原基形成能力をもつ工程で、20〜30日間行われるのが好ましい。 発生とは、子実体原基を形成させ、更に子実体原基から成熟子実体を形成させる工程で、温度15〜17℃、湿度90〜95%、照度500〜1000ルクスの条件下で、10〜14日間行われる。発生のために、袋から培養基を出して表面を裸出させ、十分散水を行うのがよい。なお、シイタケの菌床栽培では90〜180日の発生期間中、2〜3回の子実体発生のピークがあり、各々収穫するのが適当である。 【0007】 【特許文献1】特開2004−65195号公報 【特許文献2】特開2004−173615号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 従来から用いられている菌床は、原料の入手難、および、菌床は約2ヶ月のキノコ栽培サイクルで毎回交換しなければならず、栽培後は産業廃棄物となることが問題となっている。 【0009】 また、特許文献2に記載のアガリクス茸用培地は、その原料として竹材、好ましくは生竹を使用しているが、筍皮を使用するものではなく、少量の実施例の記載があるのみである。 ここで、筍皮について説明する。筍は季節的な産品であり、ごく一部は掘り出した皮付きの状態で一般消費者に販売されるが、大部分は筍の水煮加工を行う事業所で皮を取り除いた水煮の状態で通年販売されている。筍の水煮加工を行う事業所においては、一度に大量の筍の皮が発生するので、この筍の皮の処理が大きな問題となる。 【0010】 筍の水煮加工工場においては、水煮前後に筍の皮、穂先および根元等の商品としない部分(本明細書ではこれらを総称して筍皮という)が取り除かれ、これらが不要物として廃棄処分されている。廃棄された大量の筍皮は、生竹に比べて発酵力が大きく、腐敗臭を発生して問題となる。また、季節的なものであるので廃棄処理に多くの経費をかけられないという問題もあり、筍の水煮加工工場で発生する大量の筍皮を発酵処理するなどして処分することは従来行われていない。 【0011】 本発明の課題は、竹を主体とする堆肥を用いて、食用あるいは薬用キノコ類の菌の成長を著しく促進させることが可能なキノコ栽培用菌床を提供すること、及び使用後は産業廃棄物とせず堆肥として土に返すことが出来るキノコ栽培用菌床を提供し、さらに、筍皮の廃棄物処理とその有効活用をはかることにある。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明者らは、長年の竹を原料とする堆肥の製造法に関する研究成果をキノコ菌床に応用し、上記問題を解決したものである。そして本発明者らは、筍皮は発熱発酵性が大きいこと、筍皮や竹(特に若竹)には竹の驚異的な成長を支えるジベレリンをはじめ、カイネチン、チロシンといった成長促進物質が含まれていることから、筍皮や若竹を主原料として堆肥化すれば、廃棄物対策と併せてキノコの生育に効果的な菌床となり得る、という知見に基づいて本発明を完成した。 【0013】 すなわち、本発明は、筍皮と竹のいずれか一方または両方を主とした堆肥原料に、有用微生物を混合して発酵させる発酵工程を含むことを特徴とするキノコ栽培用菌床の製造方法である。ここで、有用微生物は放線菌、光合成菌、糸状菌、乳酸菌、酵母、麹菌から選択される少なくとも1種以上を含むものとすることができる。また、発酵工程は、さらに堆肥原料に発酵促進用助剤、水分調整剤、微生物の栄養剤から選択される少なくとも1つを添加する工程を含むことが望ましい。ここで発酵工程は、さらに堆肥原料に木屑、穀物屑、穀物糠、サトウキビかす、おからから選択される少なくとも1種を添加することもできる。 【0014】 また本発明に係るキノコ栽培用菌床の製造方法は、筍皮と竹のいずれか一方または両方を主とした堆肥原料に、有用微生物を添加し、さらに発酵促進用助剤と水分調整剤と微生物の栄養剤の少なくとも1つを添加し、混合撹拌する第1次工程と、その後前記堆肥原料の追加混合と切り返し撹拌を複数回繰り返す第2次工程と、前記堆肥原料の追加を中止して切り返し撹拌を行う第3次工程と、その後常温で放置する第4次工程を含む製造方法とすることもできる。ここで、前記の第1次工程から第3次工程を分けることなく、最初から堆肥原料を所定の割合に配合して、複数回の切り返し攪拌を行うようにしてもよい。 【0015】 上記のいずれの製造方法においても、キノコの生長を助長する栄養分としての竹成分の効果を発揮させるためには、前記竹は若竹と親竹とに二分した場合に、堆肥原料中の筍皮と若竹のいずれか一方または両方の占める割合が5%以上、望ましくは20%以上、さらに親竹を加えた割合を40%以上とする。使用後の菌床をそのまま土へ廃棄できる点では竹の割合が多く、リグニンを多く含む木質成分が少ない方が良い。さらに、最終製品としての菌床中の筍皮と竹のいずれか一方または両方の占める割合が20%以上とすることが望ましい。なお、割合とは質量%を意味し、以下同様とする。 【発明の効果】 【0016】 本発明の特徴は、筍皮と竹のいずれか一方または両方を主とした堆肥原料に、放線菌、光合成菌、糸状菌、乳酸菌、酵母、麹菌から選択される少なくとも1種の有用微生物を添加し、必要に応じて発酵促進用助剤と水分調整剤と微生物の栄養剤から選択される少なくとも1つを添加し、混合して発酵させる発酵工程を含むキノコ栽培用菌床を製造することにある。これにより、筍皮や竹(好ましくは若竹)を主原料として発酵させて堆肥化すれば、筍皮や若竹に含まれる成長促進物質が含まれたキノコ栽培用菌床となるのと同時に発酵肥料にもなり、植物の成長促進に極めて効果的な菌床となる。また、キノコ類栽培の作業効率および栽培効率を高めることができる。 【0017】 筍皮を主原料とした場合は、筍水煮加工工場で大量に発生する筍皮を産業廃棄物として廃棄処理することなく、低コストでキノコ栽培用菌床とすることができ、筍水煮加工工場における廃棄物処理上の問題を解消するとともに、筍皮を有効活用することができる。 また、筍皮に竹(好ましくは若竹)を加えて主原料とした場合は、若竹に多く含まれる成長促進物質が、水煮によって筍皮中の成長促進物質が減少する分を補うという効果がある。 【0018】 筍の産出と若竹の伐採は季節的に限られるが、水煮した筍や伐採した若竹を保存しながら筍皮と若竹を堆肥原料として逐次使用することで、発酵肥料製造ラインとしての年間操業を可能とすることができる。一般に筍水煮加工工場では、春先に採掘された筍を水煮して大容量の缶に詰めて保存し、それを必要に応じて開缶して加工パック詰め商品とすることで年間操業を行っている。この加工パック詰め工程でその都度あらたに不要物となる筍皮が発生するので、これを菌床原料として使用することができる。また、予め取り除いた筍皮をまとめて乾燥保存し、これを逐次使用するようにすることもできる。また、伐採した若竹はサイロ等に初期状態を確保しながら保存し、これを逐次使用するようにすることもできる。労働面からみれば、筍を掘るのは短時日でかつ重労働であるのに対して、若竹の伐採は軽作業で作業期間にも余裕があるので、竹林管理が容易になるという効果もある。 【発明を実施するための最良の形態】 【0019】 以下、本発明を詳細に説明する。本発明の最大の特徴は、筍皮と竹のいずれか一方または両方を堆肥原料の主原料とすることにある。筍皮と若竹のいずれか一方または両方の堆肥原料中に占める好ましい割合は5%以上、望ましくは20%以上、さらに親竹を加えた場合には40%以上が良い。これにより、キノコの生長を助長する栄養分としての竹成分の効果を発揮させることができる。また、使用後の菌床をそのまま土へ廃棄できる点では竹の割合が多く、リグニンを多く含む木質成分が少ない方が良い。 【0020】 本発明におけるキノコとしては、シイタケ、セミタケ、シメジ、ナメコ、ヒラタケ、マイタケ、エノキタケ、キクラゲ、タモギタケ、マンネンタケ、マッシュルーム、エリンギ等、担子菌や子嚢菌等の菌の種類は問わず種々の食用又は薬用キノコ類が挙げられる。当然、栽培するキノコの種類によっても栽培条件は異なるものであるが、菌糸の生育に影響を与える因子としては、温度、湿度、光、通気、pH、栄養源等が挙げられる。また、栽培方法についても、袋詰め、瓶詰め、成形体菌床等いろいろなものがある。 【0021】 また、筍皮や竹以外の堆肥原料としては、野菜屑、食品絞り粕、食品屑、籾殻、草木その他の有機物原料を少量使用することができる。また、必要に応じて貝殻、骨粉、水産加工廃棄物等の肥料成分としての物質を添加してもよい。堆肥原料の50%以上を筍皮や竹のいわゆる竹成分とすることで、他の竹成分以外のものを堆肥原料とする発酵肥料との差別化ができ、トレーサビリティの点からも安心な発酵肥料からなるキノコ栽培用菌床となる。また、堆肥原料に最適の発酵方法、とくに混合する有用微生物群のなかの最適な微生物を選定することができる。 【0022】 ここで、竹は、若竹と親竹に大別される。若竹とは、親竹となる以前の成長過程の竹を指し、食用筍として掘らずにおいたため成長して食用にはならなくなったもので、およそ1年生までの竹質が柔らかいものである。また、およそ2年生以上の竹質が硬いものを親竹という。このように分類法は定まったものではなく、竹の性状から呼ぶことが多い。 【0023】 本発明において用いる有用微生物は、有害物質を含まず、前記発酵プロセスにおいて活性を示すものであればよい。例えば、筍皮を主原料に多く含む配合では発酵が早期に始まって約75℃に上昇し、切り返し攪拌が不足すると約45℃に低下するので、高温好気性菌を主体にして、嫌気性菌を含む2種以上の微生物を組合せて使用することが望ましい。 【0024】 実際に用いる有用微生物としては、嫌気性微生物と好気性微生物が共存した有用微生物で、放線菌、光合成菌、乳酸菌、糸状菌、酵母、麹菌から選択される少なくとも1種以上を含むものであることが好ましい。これらの微生物のなかで、放線菌としてはStreptomyces、Streptoverticillium、Nocardia、Micromonospora、Rhodococcus、Actinomyces、Corynebacterium、光合成菌としてはChlorobium、Chromatium、Chloroflexus、Rhodospirillum、Rhodopseudomonas、Rhodobacter、Acetobacter、Azotobacter、Rhizobium、Methlomonas、乳酸菌としてはPropionibacterium、Lactobacillus、Pediococcus、Streptococcus、Micrococcus、Leunostoc、糸状菌としてはAspergillus、Mucor、Trichodema、酵母に属するものとしてはPichia、Saccharomyces、Candida、細菌としてはBacillus、Cellulomonas、Celluribrio、Cytohaga、Clostridium、Desuifotomaculumのなかから選定して使用するのが望ましい。 【0025】 現在市販品として、EM、トーマス、オーレス、アクトTG、サイオン、バイムフード、ウロンC、NK−52、コフナ、アーゼロン、バイオファーティ、リーワンなどの商品名で多数の堆肥化促進剤が販売されている。しかしこれらの市販品は、その主成分である微生物の内容に関して、例えば有用微生物、グラム陽性、グラム陰性、好気性、嫌気性、拮抗性など種々の表現があり、学術的、定量的表現は十分でないものが多い。本発明では堆肥原料の主原料が筍皮や竹(特に若竹)と特定されているので、堆肥原料を分解発酵させる環境に最適な微生物を選定することが可能である。そして、上述のそれぞれの微生物が活性を示すための空気、温度、湿度等の条件を考慮して、堆肥原料の分解発酵に最適な原料処理条件を設定するのがよい。例えば、一般にpHが5以下、10以上では堆肥化の反応速度は小さいので、中性に近い領域とするのが好ましい。 【0026】 さらに、筍皮や竹を主原料とする堆肥原料に、有用微生物とともに、発酵促進用助剤、水分調整剤、微生物の栄養剤から選択される少なくとも1つ以上を添加することもできる。本発明において好適に使用できる発酵促進用助剤としては家畜糞や木酢液、竹酢液があり、水分調整剤としては竹細片、木屑、炭化物、酢酸あるいはプロピオン酸含有材等があり、微生物の栄養剤としては米糠等が挙げられ、さらに木屑、穀物屑、穀物糠、サトウキビかす、おからから選択される少なくとも1種を添加しても同様の効果が得られる。 ここで鶏糞、米糠、おからは窒素分の補給を兼ねて微生物の活性化を助け、竹細片は水分調整と脱臭の作用があり、木酢液や竹酢液は肥料成分の添加のほかに難分解性有機物の細胞外皮を軟化させ、pHの低下の防止と発酵促進、悪臭物質分解の作用がある。 【実施例1】 【0027】 以下、エノキ茸の瓶詰め栽培の実施例1をもって本発明を更に詳細に説明するが、これは単なる実施例であって本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更させてもよい。以下、従来技術であり対照として用いた比較例と、本発明の配合例(表1)について比較試験を行い、工程は次のとおりとした。 (1)プラスチック製広口瓶(口径約20cm,高さ約30cm)に菌床(比較例および配合例1〜15(表1))を充填する。 (2)高温殺菌して、エノキ菌を撒き、植え付ける。 (3)18℃の冷暗所で約1月置いて培養する(瓶の下まで白い菌が成長する)。 (4)その後約1月でエノキが瓶の上へ約15cm成長し、これを採取する。 【0028】 ここで、前記菌床について説明する。比較例においては、従来のエノキ茸の瓶詰め栽培方法とするために、重量比で木質チップ85%、米糠5%、とうもろこしチップ10%の混合物を菌床とした。 また実施例においては、表2に示す配合例の堆肥原料を混合して、約1〜2週間発酵させたもの(以下、竹チップ(表1参照))を得る。そしてこの竹チップに、木質チップ(木屑)、米糠を表1に示す配合割合で混合したものを菌床として使用した。 【0029】 ここで、竹チップについて説明する。筍皮と竹(好ましくは若竹)のいずれか一方または両方を主とした堆肥原料に、有用微生物を添加し、さらに発酵促進用助剤と水分調整剤と微生物の栄養剤の少なくとも1つを添加し、混合撹拌する第1次工程と、その後前記堆肥原料の追加混合と切り返し撹拌を複数回繰り返す第2次工程と、前記堆肥原料の追加を中止して切り返し撹拌を行う第3次工程と、その後常温で放置する第4次工程を含む製造方法により製造されている。 【0030】 上記の竹チップの製造工程について、さらに詳しく説明する。水煮後2〜3日自然放置で乾燥した筍皮650kg、鶏糞240kg、竹細片360kg、米糠36kgを堆肥原料とし、これにBacillus、Pseudomonas、Rhodobacter、Streptomyces、Pichia、Saccharomycopsis、Aspergillusを主構成とする微生物14kg(1×108個/g)を混合し撹拌した。 【0031】 約2日すると堆肥床の温度が約75℃に上がるので、最初の筍皮と同量の650kgの筍皮を追加混合して切り返し攪拌した。堆肥床の温度は約45℃に下がるが、切り返しによる発酵が進んで再び昇温する。1日後に堆肥床の筍皮と同量の1300kgの筍皮を追加混合して切り返し攪拌した。さらに1日後に堆肥床の筍皮と同量の2600kgの筍皮を追加混合して切り返し攪拌した。さらに1日後に堆肥床の筍皮と同量の5200kgの表2に示す配合物(筍皮、若竹、親竹、米糠、微生物を配合)を追加混合して切り返し攪拌した。以上の4回の筍皮等の追加混合で、堆肥床全量のなかの筍皮の占める割合は、表2の配合割合によって変動するが、約88%〜94%となり、筍皮を主体とした堆肥を得る。また、初期に投入した竹細片を考慮すれば、筍皮と竹(若竹+親竹)の合計の堆肥床に占める割合は約97%となるが、初期に投入した動物糞や米糠は微生物の栄養剤を目的として添加しているため、易分解成分が分解されて、相対的に分解の遅い竹の堆肥床に占める含有率は、さらに100%に近くなっていると考えられる。 ここで、表2に示す配合比になるように最初から原料を配合し、必要に応じて切り返し攪拌(混合して数日は1日に1回程度、1週間経過後は1週間に1回程度)を行う方法をとることも出来る。 【0032】 次に、菌床組成について説明する。 表1に示すように、配合組成(質量%)を変えて菌床を製造し、配合例1〜4および配合例15とした。これらの配合例の竹チップとなる堆肥原料は、表2の配合例1〜4および配合例15の配合組成(質量%)とした。 また、配合例5〜14については、配合例3と同じ配合組成(質量%)とし、竹チップとなる堆肥原料の組成を変え、表2の配合例5〜14の配合組成(質量%)とした。 【表1】
注:配合例15においては、木質チップの他に穀物屑を添加したものを「木質チップ」と称して試験を行った。 【0033】 【表2】
【0034】 キノコ栽培の結果は、いずれも従来の木質チップ菌床の比較例に劣らぬ菌の成長を示し、約1月置くと瓶の下まで白い菌が蔓延し、その後約1月でえのきが瓶の上へ約15cm生長し良好な収量を得た。 収量は、比較例に比べて配合例1ではやや少なく、配合例2では同等、配合例3,4では同等以上であった。また、成長、収量の傾向としては、竹の種類としては親竹だけより若竹、筍皮を含んだ方が、熟成程度は完熟より半熟成(半発酵状態)の方がきのこ菌の成長が早い傾向を示した。なお、堆肥成分、温湿度、切り替えし条件等を変えると、採取までの期間は短縮することが出来る。 以上より、菌床中の竹チップ(堆肥原料としての筍皮、若竹、親竹)が40%以上、熟成期間が7〜10日間とすることにより、良質なキノコ栽培用菌床となる。 【0035】 ここで、原料堆肥中の筍皮と竹の最低必要量について説明する。配合例15において、キノコ栽培用菌床中の竹チップを40%とし、堆肥原料として竹チップ中の割合を若竹5%、親竹55%、その他(穀物野菜屑等)20%として試験を行った結果、キノコの生育は良好であった。従って、堆肥原料中の筍皮と竹のいずれか一方または両方の占める割合が5%以上で、さらに親竹を加えた割合が40%以上とすれば、キノコ栽培用菌床として効果がある。そして、このときのキノコ栽培用菌床に占める、筍皮と若竹と親竹の合計は24%となる。すなわち、キノコ栽培用菌床において、筍皮と竹のいずれか一方または両方の占める割合が20%以上であることが望ましい。なお、配合例15において、若竹を筍皮に置き換えても、良質な菌床ができると考えられる。 【0036】 また、従来の木質菌床は水であく抜きが必要であり、さらに、1回栽培したら廃棄するが、リグニンが多く出るのでそのまま捨てられないという問題があった。しかし、本発明のキノコ栽培用菌床はこのような問題点を解決することが出来る。もちろん、木質を少量含む配合にすることで解決可能である。 本発明の菌床は、例えば振動を加えれば簡単に瓶から取り出すことが出来、そのまま畑に堆肥として使用することもできる。 【0037】 また、きのこの種類を変えて、博多ぶなしめじ(温度15℃、湿度90%)、シイタケ(23℃で)、マイタケ、エリンギ菌でも接種、培養させた。その結果、菌糸が安定して蔓延・成長し、品質の良いキノコが得られた。 【実施例2】 【0038】 次に、本発明の実施例2について説明する。前述の実施例1における竹チップの製造工程において、筍皮(650kg)の代わりに、筍皮、若竹、親竹の配合量を適宜調整して以下のように製造した。配合割合は、製造時期(時期により筍皮、若竹の入手容易性が異なる)により変化するものであり、それにより熟成期間を調整して製造することができる。例えば、筍皮を使用しない例として、次の工程により製造することもできるが、これに限定されるものではない。 【0039】 すなわち、筍皮、若竹、親竹からなる合計量(以下、竹合計と称す)650kg、鶏糞240kg、米糠36kgを堆肥原料とした。ここで竹合計を表3の竹混合例1〜4となるように混合し、4種類の試験区とした。なお、竹合計の各割合は、表2の配合例6,8,10,12の筍皮、若竹、親竹の配合比に基づくものであり、表3に示す竹混合例(kg)およびその割合(%)とした。 【表3】
【0040】 これらの竹混合例1〜4のぞれぞれの区に、Bacillus、Pseudomonas、Rhodobacter、Streptomyces、Pichia、Saccharomycopsis、Aspergillusを主構成とする微生物14kg(1×108個/g)を混合し撹拌し、約2日(配合比によって変動)すると各区の堆肥床の温度が約75℃に上がるので、最初の竹合計と同量の竹合計(竹混合例1〜4)650kgを各試験区毎に追加混合して切り返し攪拌した。各区の堆肥床の温度は約45℃に下がるが、切り返しによる発酵が進んで再び昇温する。これ以降の作業は実施例1と同様に順次竹合計を添加するが、筍皮、若竹、親竹の比率が、各試験区毎で一定となるように混合する。すなわち、1日後には、各区の堆肥床の竹合計と同量の竹合計1300kg(表3の竹混合例の2倍量)を、各区毎に追加混合して切り返し攪拌した。さらに1日後に各堆肥床の竹合計と同量の竹合計2600kg(表3の竹混合例の4倍量)を各区毎に追加混合して切り返し攪拌した。さらに1日後に各区の堆肥床の竹合計と同量の竹合計5200kg(表3の竹混合例の8倍量)として表2に示す配合例6,8,10,12の配合物を各区毎に追加混合して切り返し攪拌した。 【0041】 このように製造した堆肥(竹チップ)、特に、筍皮の使用割合を低くした竹チップを菌床に使用しても、品質の良いキノコが得られた。従って、筍皮が大量発生する時期には、筍皮を多量に使用した菌床を製造でき、筍皮の入手が困難な時期においては、竹(若竹、親竹)を主体とした菌床を製造することができるため、時期によって原料の配合割合を調整しながら菌床を製造することができる。 【実施例3】 【0042】 次に、実施例3として、使用する微生物について説明する。 微生物として下記の方法で採取培養した土着菌(以下、竹土着菌という)を用い、これに同量の鶏糞を加えたものを発酵剤として用いた。 (1)竹土着菌の採取 竹林で親竹(3〜4年物)を地表約15cmの高さで切断し、筒の中に栄養剤を投入して約1ヶ月置くと、白く菌種が増殖してくるのでこれを採取する。同定はしていないがいわゆる好気性微生物と考えられる。これを採取して竹土着菌として種床で培養する。 (2)竹土着菌の培養 米糠6lと竹土着菌30mlの混合物に、黒蜜6mlを600mlのぬるま湯で溶解した水溶液を散布して水分を調整し(手で握り締め開くと、数個に分散する程度が理想的)、数日置に攪拌する(水分不足のときは前記水溶液で調整する)。これを繰り返すと約1ヶ月で菌が蔓延し、温度も常温に低下して培養が完了する。その後、乾燥保存して種菌とする。 この竹土着菌を表2の微生物として用い、表2の配合例6,8,10,12で、実施例1,2と同様に試験を行った。その結果、良好な竹チップとなってキノコ栽培用菌床を得ることができ、キノコの生育は良好であった。 【実施例4】 【0043】 次に、実施例4として、堆肥(竹チップ)の製造工程について、説明する。 実施例4においては、実施例1および実施例2において製造された発酵生成物(堆肥)を次回の堆肥製造時の微生物原料(種菌)として用いて堆肥を製造した。すなわち、本発明の実施例1および実施例2により堆肥を一旦製造すれば、それ以降の製造に際しては実施例1,2のような製造工程を経なくても、発酵生成物を種菌として使用し続けることができる。本発明においては、配合組成を変えた表2に示す配合例6,8,10,12において、実施例1,2の有用微生物を用いて製造した堆肥を種菌として用いたところ、良質な竹チップが得られ、これを菌床に使用した結果、キノコの成育は良好であった。この場合、厳密に言えば微生物、米糠等の栄養成分の割合が最初の値とは少し変動するので、必要に応じて、原料配合、温度、湿度、切り返し回数などの発酵条件を選定すればよい。 【実施例5】 【0044】 以上の各配合例の製造プロセスは、堆肥原料を多段階に分けて投入した例であるが、原料の量、ラインスペース、コスト等から異なった条件が有利な場合も考えられる。そこで、最初から所定の割合に配合した全原料を投入する方法で、全量5.2トンの量産実験を行った。原料配合比は表2の配合例で、微生物としては実施例3または実施例4で得られた種菌を用いた。これとは別に、最初から全原料を投入する方法ではなく、表2の配合例8で、3時間間隔で3回に分けて原料を投入する実験も行った。必要に応じて切り返し攪拌を行った結果、良質な竹チップが得られ、これを菌床に使用した結果、キノコの成育は良好であった。 【0045】 また、本実施例1〜5においては、最終的には発酵物(竹チップ)に木質チップを混ぜてキノコ栽培用菌床として使用している(表1)が、竹チップ単独でも使用できると考えられる。また、表1の配合例15のように木質チップに穀物屑を使用してもキノコの成育は良好であったため、木屑、穀物屑、食物屑等も使用できると考えられる。 【産業上の利用可能性】 【0046】 本発明は、筍皮や若竹、親竹を主原料にして堆肥化し、キノコ栽培用菌床とする方法であり、筍の水煮加工工場で発生する筍皮や竹林管理に付随して生じる若竹、親竹の廃棄物処理と有効活用することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】504136915 【氏名又は名称】キタジマ食品株式会社
|
| 【出願日】 |
平成17年10月4日(2005.10.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100099508 【弁理士】 【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100116296 【弁理士】 【氏名又は名称】堀田 幹生
|
| 【公開番号】 |
特開2007−97487(P2007−97487A) |
| 【公開日】 |
平成19年4月19日(2007.4.19) |
| 【出願番号】 |
特願2005−291635(P2005−291635) |
|