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【発明の名称】 植生用保水マット及びこれを使用した植生地盤の構造
【発明者】 【氏名】桝井 宏之

【氏名】平尾 昇司

【要約】 【課題】吸水性及び保水性に優れた吸水性ポリマー等の吸水膨張体を使用して、水遣り作業の大幅な軽減及び節水を図りながら、しかも吸水膨張体の吸水時の膨張による地表面への悪影響を防止することができる植生用保水マットを提供する。

【解決手段】この植生用保水マット1は、芝生その他の植物を植生した植生層30の下側に敷き込まれるものであって、水を吸収して膨張する吸水膨張体4と、その吸水膨張体4の膨張部分が入り込む膨張吸収空間Sを形成する保形体5とが積層されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芝生その他の植物を植生した植生層(30)の裏面側に敷き込まれる植生用保水マット(1)であって、水を吸収して膨張する吸水膨張体(4)と、その吸水膨張体(4)の膨張部分が入り込む膨張吸収空間(S)を形成する保形体(5)とが積層されていることを特徴とする植生用保水マット。
【請求項2】
前記吸水膨張体(4)は、吸水性ポリマーを主素材とする不織布からなる請求項1記載の植生用保水マット。
【請求項3】
前記吸水膨張体(4)には、感温吸排水性樹脂(10)が混入されている請求項1又は2記載の植生用保水マット。
【請求項4】
前記保形体(5)は、複数の樹脂製の波状部材(11)・・を同一平面上に間隔をあけて並設してなり、それら波状部材(11)・・の凹部(15)・・及び波状部材(11)・・間の隙間が前記膨張吸収空間(S)とされている請求項1から3のいずれかに記載の植生用保水マット。
【請求項5】
一対の透水シート体(3)(3)を備え、これら透水シート体(3)(3)間に前記吸水膨張体(4)及び保形体(5)が挟み込まれている請求項1から4のいずれかに記載の植生用保水マット。
【請求項6】
前記保形体(5)の一部を覆うようにして前記吸水膨張体(4)を配置することで、マット(1)全面において保水領域(20)と排水領域(21)(21)が形成されている請求項1から5のいずれかに記載の植生用保水マット。
【請求項7】
前記保形体(5)の略全面を覆うようにして前記吸水膨張体(4)を配置することで、マット(1)略全面に亘って保水領域(20)が形成されている請求項1から5のいずれかに記載の植生用保水マット。
【請求項8】
可撓性を有する請求項1から7のいずれかに記載の植生用保水マット。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の植生用保水マット(1)を、芝生その他の植物を植生した植生層(30)の裏面側に敷き込んでなることを特徴とする植生地盤の構造。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、芝生その他の植物を植生した植生層の裏面側に敷き込まれる植生用保水マット及びこれを使用した植生地盤の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芝生や花壇等に植えた植物への水遣りは、面倒で手間のかかる作業であり、特に夏の渇水時などにおいては、暑くて大変な作業となり、また水源の確保が必要で、水の使用量も多くなって維持コストも嵩むといった問題がある。
【0003】
そこで、芝生等を植生した植生層の裏面側に保水層を設けて、水遣り作業等を軽減するといった試みがなされている。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
この種の保水層に用いられる保水材料としては、培養土等の土壌材、不織布、スポンジ等が挙げられるが、いずれも吸水能力が十分ではなく、依然として水遣り作業が必要となることが多く、水遣り作業の頻度を大幅に軽減するには至らなかった。
【0005】
近年では、自重の数百倍もの水を吸収し、保持する能力を有する吸水性ポリマーが研究開発されて、植生用の保水材料としても利用されるようになってきている。
【特許文献1】特開2000−4679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような吸水性ポリマーを備えた保水層を、芝生等を植生した植生層の裏面側に単に敷き込んだ場合、吸水性ポリマーが水を吸って膨張する空間がないため、保水量が制限されたり、また吸水性ポリマーが膨張したとしても、その膨張圧によって植生層が押し上げられて、芝生面(地表面)が要所要所で盛り上がって凹凸を生じるといった問題があった。
【0007】
この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、吸水性及び保水性に優れた吸水性ポリマー等の吸水膨張体を使用して、水遣り作業の大幅な軽減及び節水を図りながら、しかも吸水膨張体の吸水時の膨張による地表面への悪影響を防止することができる植生用保水マット及びこれを使用した植生地盤の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の植生用保水マット1は、芝生その他の植物を植生した植生層30の裏面側に敷き込まれるものであって、水を吸収して膨張する吸水膨張体4と、その吸水膨張体4の膨張部分が入り込む膨張吸収空間Sを形成する保形体5とが積層されていることを特徴とする。
【0009】
具体的に、前記吸水膨張体4は、吸水性ポリマーを主素材とする不織布からなり、この前記吸水膨張体4には、感温吸排水性樹脂10が混入されている。
【0010】
また、前記保形体5は、複数の樹脂製の波状部材11・・を同一平面上に間隔をあけて並設してなり、それら波状部材11・・の凹部15・・及び波状部材11・・間の隙間が前記膨張吸収空間Sとされている。
【0011】
さらに、一対の透水シート体3、3を備え、これら透水シート体3、3間に前記吸水膨張体4及び保形体5が挟み込まれている。
【0012】
また、前記保形体5の一部を覆うようにして前記吸水膨張体4を配置することで、マット1全面において保水領域20と排水領域21、21が形成されている。
【0013】
さらにまた、前記保形体5の略全面を覆うようにして前記吸水膨張体4を配置することで、マット1略全面に亘って保水領域20が形成されている。
【0014】
さらに、上記のマット1は、例えば湾曲させたり屈曲させたりすることが可能な可撓性を有している。
【0015】
さらに、この発明の植生地盤の構造は、上記構成の植生用保水マット1を、芝生その他の植物を植生した植生層30の裏面側に敷き込んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明の植生用保水マットを植生層の裏面側に敷き込んだ植生地盤においては、降雨によって植生層からマットへ雨水が浸透して、吸水性ポリマー等の吸水膨張体が雨水を吸収して膨張しても、その膨張部分が保形体の膨張吸収空間に入り込んで、マットの全体形状は、吸水膨張体の雨水吸収前とほぼ同じでほとんど変化しない。このため、吸水膨張体が膨張しても、植生層を押し上げることがなく、地表面には吸水膨張体の膨張に伴う凹凸が生じることがない。
【0017】
従って、吸水性及び保水性に優れた吸水性ポリマー等の吸水膨張体を使用して、水遣り作業の大幅な軽減及び節水を図りながら、地表面への悪影響を防止することができる。
【0018】
また、吸水膨張体に感温吸排水性樹脂を混入させることで、地温が低いときには水を吸収して保持し、地温が高くなると水を自動的に排出させることができ、これによって植生層の植物に対して効率の良い水供給が可能となり、また植物の根腐れ等も防止することができる。
【0019】
さらに、複数の樹脂製の波状部材を同一平面上に間隔をあけて並設して保形体を構成することで、保形体の構造を簡単にして、マットの製造工程の簡略化を図ることができる。しかも、波状部材によって耐圧扁平強度を高めることができ、植生層によってマットが押し潰されることなく、膨張吸収空間を長期に亘って安定して確保して、信頼性の向上を図ることができる。
【0020】
また、透水シート体間に吸水膨張体及び保形体を挟み込んでいるので、マット内部への雨水の浸透を許容しながら、吸水膨張体の膨張吸収空間への土や小石等の異物の入り込みをなくすことができる。これによって、膨張吸収空間を長期に亘って安定して確保して、信頼性の向上を図ることができる。
【0021】
さらに、マット全面において保水領域と排水領域を形成することで、例えば梅雨時期等において大量に降雨があった際には、排水領域を通じて余剰分の雨水を植生地盤から速やかに排出させることができ、植生層の植物の根腐れ等を防止することができる。
【0022】
さらにまた、マット略全面に亘って保水領域を形成することで、マットの保水能力を高めることができ、特に渇水が頻繁に起こり得る植生地盤への適用に有効である。
【0023】
また、マットが可撓性を有していると、例えば工場出荷の際等にはマットをコイル状に巻いて梱包することができ、また現場においては植生地盤の形状等に追従させた柔軟な敷き込みが可能となるといったように、マットの取り扱いが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、この発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る植生用保水マットの分解斜視図、図2は植生用保水マットの斜視図である。
【0025】
植生用保水マット1は、図1及び図2に示すように、一対の透水シート体3、3と、水を吸収して膨張する吸水膨張体4と、マット1の耐圧扁平強度を維持する保形体5とを備えている。そして、吸水膨張体4と保形体5とが積層された状態で、一対の透水シート体3、3によって挟み込まれている。
【0026】
透水シート体3は、図3に示すように、縦テープ状素材6・・と、横テープ状素材7・・とを平織りにて織り合わせて、多数の水透過孔8・・を有する例えば15〜20メッシュのネット状に形成されている。テープ状素材6、7・・としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の延伸処理を施した抗張力を有する熱可塑性合成樹脂等を使用することができる。
【0027】
吸水膨張体4は、例えば吸水性及び保水性に優れた高吸水性ポリマーを主素材とする帯状の不織布からなり、自重の数百倍もの水を吸収して膨張し、その吸収した水を保持する能力を有している。高吸水性ポリマーは、イオン性を有する基をもった水溶性の電解質ポリマーに、軽度の架橋結合を導入した3次元網目構造のものであり、例えばポリビニルアルコール系、アクリル系、ポリエーテル系等の合成高分子類、或いは、デンプン系、セルロース系等の天然高分子類を原料とするものが用いられている。
【0028】
そして、この吸水膨張体4には、感温吸排水性樹脂10が混入されている。この感温吸排水性樹脂10は、温度が低いときに水を樹脂中に吸収して、温度が上昇して感温点に達すると水を排出するもので、例えば商品名「サーモゲル」として市販されているものが用いられている。なお、この感温吸排水性樹脂10は、必ずしも吸水膨張体4に混入させる必要はないが、混入させることによって、植物の育成により有効な吸排水機能を発揮させることができる。
【0029】
保形体5は、図1及び図4に示すように、複数の樹脂製の波状部材11・・を同一平面上に間隔をあけて並設することによって構成され、吸水膨張体4の下側に配置されている。波状部材11は、所定ピッチに配設される上横辺部12・・と、所定ピッチに配設される下横辺部13・・と、上横辺部12と下横辺部13とを連結する縦辺部14・・とからなり、上方に開口する凹部15・・と、下方に開口する凹部16・・とが長手方向に沿って交互に配置されている。なお、この波状部材11は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を素材として押出成形等にて形成されている。
【0030】
この保形体5においては、植生層30等の重圧に耐え得る耐圧扁平強度を有している。すなわち、重圧に対する圧潰を防ぐために、波状部材11の肉厚寸法T(図4参照)に対する幅寸法W(図1参照)、波のピッチP(図4参照)が釣り合っていることが必要で、肉厚寸法Tを薄くした場合や波のピッチPを大きくすれば耐圧強度が低下する。また、肉厚寸法Tを厚くすればコスト高となる。このため、使用する材質によって相違するが、例えば、ポリエチレン樹脂等を使用した場合には、各波状部材11の肉厚寸法Tを0.5〜1.5mm程度、幅寸法Wを5〜20mm程度、波のピッチPを5〜20mm程度、波の高さHを10mm程度とするのが好ましい。
【0031】
そして、この保形体5の各波状部材11・・の凹部15・・及び波状部材11・・間の隙間によって、膨張吸収空間Sが構成されており、この膨張吸収空間Sに、吸水時の吸水膨張体4における膨張部分が入り込むようになっている。
【0032】
次に、上記植生用保水マット1の製造方法を説明する。まず、多数の波状部材11・・を同一平面上に間隔をあけて互いに平行に配列して保形体5を構成し、この保形体5を一方の透水シート体3の上に載置して、両者の接触部分を融着固定する。
【0033】
続いて、保形体5の上に吸水膨張体4を載置するとともに、この吸水膨張体4を覆うように他方の透水シート体3を載置する。このとき、吸水膨張体4は、図1及び図2に示すように、その幅方向の寸法が透水シート体3、3や保形体5の幅方向の寸法よりも小さく設定されており、保形体5の幅方向中央部を覆うようにして長手方向に連続して配置されている。
【0034】
そして、保形体5の両端部と他方の透水シート体3の両端部の接触部分、さらに場合によっては透水シート体3、3の両端部同士を融着固定することで、内部に吸水膨張体4が収納された上記の植生用保水マット1を形成することができる。なお、上記植生用保水マット1は長尺体として製造され、現場の状況等に応じて所定寸法に切断されて使用されるようになっている。
【0035】
この植生用保水マット1においては、保形体5の中央部を覆うようにして吸水膨張体4が配置されているので、図2に示すように、マット1全面において、その中央部に保水領域20が形成され、その両端部に吸水膨張体4が存在しない排水領域21、21が形成されている。
【0036】
なお、吸水膨張体4は、必ずしも保形体5の中央部を覆うように配置する必要はなく、例えば図6に示すように、保形体5の略全面を覆うようにして配置しても良い。この場合、マット1の略全面に亘って保水領域20が形成され、保水性を高めることができる。さらに、複数の吸水膨張体4・・を所定の間隔をあけて配置することで、排水領域21・・を増やして、排水性を高めるようにしても良い。
【0037】
また、この植生用保水マット1では、保形体5が間隔をあけて配置した複数の波状部材11・・にて構成されているので、湾曲させたり屈曲させたりすることが可能な可撓性を有し、これによって例えば工場出荷の際等にはコイル状に巻いて梱包することができ、また現場においては植生地盤の形状等に追従させた柔軟な敷き込みが可能となっている。
【0038】
図7は、上記の植生用保水マット1を使用した植生地盤の構造を示しており、植生用保水マット1は、芝生やその他の植物を植生した植生層30の裏面側に敷き込まれている。図中31は、土壌層を示している。なお、この敷き込みに際しては、植生層30の下面全面を覆うように複数のマット1・・を隙間なく配置したり、或いは、植生層30における植物の配置等に対応させて複数のマット1・・を要所要所に配置しても良い。
【0039】
このようにマット1・・を敷き込んだ植生地盤においては、降雨によって植生層30からマット1へ雨水が浸透すると、その吸水膨張体4が雨水を吸収して膨張し、その雨水を保持する。また、吸水膨張体4に混入した感温吸排水性樹脂10も、雨水を吸収して保持する。このとき、図5に示すように、吸水膨張体4の膨張分が保形体5の膨張吸収空間Sに入り込むので、マット1の全体形状は、吸水膨張体4の雨水吸収前とほぼ同じでほとんど変化しない。このため、吸水膨張体4が膨張しても、植生層30を押し上げることがなく、地表面には吸水膨張体4の膨張に伴う凹凸が生じることはない。
【0040】
そして、昼間の高温時や夏の渇水時等において、植生層30が乾燥してくると、吸水膨張体4や感温吸排水性樹脂10において保持していた雨水が徐々に放散されて、植生層30へ生育に十分な量の水分が供給される。このように、本来であれば土壌層31に浸透する雨水を蓄えて有効利用することで、面倒な水遣り作業の頻度を大幅に減らすことができ、また水の使用量を減らして維持コストの低減を図ることができる。
【0041】
一方、大量に雨が降って地下水位が上昇した場合には、植生用保水マット1の排水領域21、21を通じて余剰分の雨水を植生地盤から速やかに排出するので、植生層30の根腐れ等を防止することができる。
【0042】
以上にこの発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。透水シート体3、3としては、例えば透水性を有する防根シートを用いるようにしても良い。また、上側の透水シート体3に対して透水性を有する防根シートを重ね合わせるようにしても良い。このように防根シートを用いることで、植生層30における芝生等の根が吸水膨張体4へ侵入するのを防止することができ、根腐れ等を防止することができる。また、保形体5としては、複数の波状部材11・・を並設したものだけに限らず、少なくとも植生層30の荷重によって押し潰されることのない耐圧扁平強度を有し、膨張吸収空間Sを形成したものであれば良い。さらに、これら透水シート体3、3や保形体5の材質としても、融着性等を考慮して種々選択することができる。さらに、マット1を形成する場合、透水シート体3、3と保形体5と吸水膨張体4とを熱融着にて一体化したが、各部材の材質等を考慮して、例えば接着剤による接着等の他の固定手段を用いても良い。接着剤等を使用すれば、透水シート体3、3と吸水膨張体4との接合も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の一実施形態に係る植生用保水マットの分解斜視図である。
【図2】同じくその斜視図である。
【図3】透水シート体の平面図である。
【図4】植生用保水マットの縦断面図である。
【図5】植生用保水マットの吸水時の縦断面図である。
【図6】他の実施形態に係る植生用保水マットの斜視図である。
【図7】植生用保水マットを使用した植生地盤の構造の縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1・・植生用保水マット、3・・透水シート体、4・・吸水膨張体、5・・保形体、10・・感温吸排水性樹脂、11・・波状部材、15・・凹部、20・・保水領域、21・・排水領域、30・・植生層、S・・膨張吸収空間
【出願人】 【識別番号】000221502
【氏名又は名称】東拓工業株式会社
【出願日】 平成17年9月20日(2005.9.20)
【代理人】 【識別番号】100084629
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 正博

【識別番号】100133950
【弁理士】
【氏名又は名称】向井 尚子


【公開番号】 特開2007−82409(P2007−82409A)
【公開日】 平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願番号】 特願2005−271536(P2005−271536)