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【発明の名称】 接木用苗木製造方法、接木用苗木製造装置ならびに接木用台木および接木用穂木
【発明者】 【氏名】西浦 芳史

【氏名】平 知明

【氏名】安栗 嘉雄

【氏名】安栗 嘉大

【要約】 【課題】接木作業の作業性を大幅に向上させることを可能にし、かつ、優れた活着率を得ることができるようにする。

【解決手段】先端面に形成された凹没面37を苗木Sの側面に押し当てる支持部材30には、苗木Sと対向した端面が開放端とされ、かつ、開放端から長尺方向に向けて延びる中央差込み溝34と、この中央差込み溝34の下端部から若干上方に離間した位置から左右対象に斜めに上方へ分岐して中央差込み溝34と平行に支持部材本体32の長手方向に延びる一対の分岐差込み溝35とからなる刃物受入れ溝33が設けられている一方、刃物本体22は、中央差込み溝34に差し込まれる中央刃物23と、この中央刃物23の両側面から左右対称に突設された各分岐差込み溝35に差し込まれる一対の分岐刃物24とを備えて構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切除部位がV字形の突状に形成された他方の接木用苗木と接合するべく、凹状の切除部位を有する接木用苗木の製造方法であって、苗木の中心を通って所定寸法の縦切れ目を入れる切れ目形成工程と、前記苗木を両側から側面視V字状に、かつ、前記V字の先端に前記縦切れ目の一部を所定寸法だけ残して切断するV字切断工程とを有することを特徴とする接木用苗木製造方法。
【請求項2】
前記切れ目形成工程は、切れ目形成刃物を前記苗木の側面から苗木内に差し込んで縦切れ目を形成するものであり、前記V字切断工程は、V字状の一対の切断刃を前記苗木の側面から苗木内に差し込んで苗木を切断するものであることを特徴とする請求項1記載の接木用苗木製造方法。
【請求項3】
切除部位がV字形の突状に形成された他方の接木用苗木と接合するべく、凹状の切除部位を有する接木用苗木の製造装置であって、苗木を側面から支持する支持部材と、前記支持部材に対して進退可能な切断刃部材とを有し、前記切断刃部材は、前記支持部材に向かう先端側に設けられ、かつ、前記苗木の中心に沿って縦断することにより苗木に所定寸法の縦切れ目を入れる切れ目形成刃物と、前記縦切れ目を挟み両側から前記縦切れ目の一部を所定寸法だけ残して苗木にV字状切れ目を入れるべく前記切れ目形成刃物に対し後方に位置設定されたV字状切断刃物とを備えて構成されていることを特徴とする接木用苗木製造装置。
【請求項4】
前記切れ目形成刃物は細身形状をなし、かつ前記支持部材に対する進退方向に長尺であり、前記V字状切断刃物は、前記切れ目形成刃物の両側面に一体形成されていることを特徴とする請求項3記載の接木用苗木製造装置。
【請求項5】
前記切断刃部材を前記支持部材に対して進退可能に支持する支持構造部を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の接木用苗木製造装置。
【請求項6】
前記支持部材は、前記切れ目形成刃物の進退方向と交差し、前記苗木の側面が接するための凹状の当接部が形成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の接木用苗木製造装置。
【請求項7】
前記支持部材は、前記切断刃部材の進退方向に、少なくとも前記切れ目形成刃物に対する第1の逃げ用切欠が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の接木用苗木製造装置。
【請求項8】
前記支持部材は、前記切断刃部材の進退方向に、前記V字状切断刃物に対する第2の逃げ用切欠が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の接木用苗木製造装置。
【請求項9】
前記第1、第2の逃げ用切欠は、前記当接部の凹状と平行な方向の一方側が開放されていることを特徴とする請求項8に記載の接木用苗木製造装置。
【請求項10】
前記切れ目形成刃物は、先端が先鋭に形成された切っ先を有し、前記V字状切断刃物は、先端から基端に向けて峰高さが漸増するように三角形状に形成されているとともに、側端縁に刃が形成されていることを特徴とする請求項3乃至9のいずれかに記載の接木用苗木製造装置。
【請求項11】
請求項3乃至10のいずれかに記載の接木用苗木製造装置により製造された接木用台木。
【請求項12】
請求項3乃至10のいずれかに記載の接木用苗木製造装置により製造された接木用穂木。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、台木に穂木を接木する接木用苗木製造方法、接木用苗木製造装置ならびに接木用台木および接木用穂木ならびにこの接木用苗木製造装置によって形成された接木用台木および接木用穂木に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているような接木方法が知られている。この接木方法は、接木用の苗木を切断した後、先端側の穂木になる方の切断片の接合端部に接木装置により先窄まりで多角錐状の接合用突部を形成させる一方、この穂木が接木される台木の切断面に前記接合用突部に対応した円錐状の接合凹孔を穿設し、この接合凹孔に前記接合用凸部を挿入することによって接木を行うものである。このような接合形状を採用すると、接合面を全周に満遍なく設けることができるため、接合の確実性が向上する。
【特許文献1】特開2003−79244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような特許文献1に記載の接木方法にあっては、一旦苗木を切断して得た穂木側の切断片の基端部に接木装置を用いて切削加工を施す作業が必要であり、また、台木用の苗木の切断面に接合凹部を凹設する必要があるため、穂木を台木に接木するまでに、穂木用苗木の切断工程と、切断された穂木用の切断片の基端部に切削加工を施して接合用突部を形成させる工程と、台木用の苗木を切断する工程と、台木用苗木の切断面に接合凹部を凹設する工程とを要してしまうことになる。
【0004】
また、穂木の先端には、多角錐状の接合用突部が形成されているため、この多角錐状の接合用突部を円錐状の接合凹部との高い製作精度が要求される。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであって、接木作業の作業性を大幅に向上させつつ接木用苗木を簡易に製造し得る接木用苗木製造方法、接木用苗木製造装置ならびにこの接木用苗木製造装置によって製造された接木用台木および接木用穂木を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、切除部位がV字形の突状に形成された他方の接木用苗木と接合するべく、凹状の切除部位を有する接木用苗木の製造方法であって、苗木の中心を通って所定寸法の縦切れ目を入れる切れ目形成工程と、前記苗木を両側から側面視V字状に、かつ、前記V字の先端に前記縦切れ目の一部を所定寸法だけ残して切断するV字切断工程とを有することを特徴とする接木用苗木の製造方法である。
【0007】
かかる製造方法によれば、切れ目形成工程において、苗木にその中心を通って所定寸法の縦切れ目を入れ、引き続きV字切断工程で苗木を両側から縦切れ目の一部を所定寸法だけ残すようにして縦切れ目に向かって斜めに例えば切り下げることにより、側面視がV字状の凹部が形成された接木用苗木が形成される。この接木用苗木のV字状を呈する凹部に別途製作された他方の接木用苗木の先端(V字状に形成されていることが好ましい)を嵌め込むことにより接木処理が完了する。
【0008】
そして、切れ目形成工程で苗木の一部が縦断されることによって形成された縦切れ目に対し、V字切断工程で苗木を両側から側面視V字状に切断することにより接木用苗木を得るようにしているため、単に当初から目標のない状態で苗木の両側からの斜め切りでV字状の凹部を形成する場合に比較し、均衡のとれた凹部を確実に形成することが可能になる。しかも、V字切断工程では、V字の先端(底部)に縦切れ目の一部を所定寸法だけ残すようにしているため、他の接木用苗木を凹部に接合するに際し、残った切れ目部分が各接合部位の形状不一致を解消するための緩衝となって機能し、他の苗木の先端の形状に応じて広がるため、両者のより確実な接合状態が得られる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記切れ目形成工程は、切れ目形成刃物を前記苗木の側面から苗木内に差し込んで縦切れ目を形成するものであり、前記V字切断工程は、V字状の一対の切断刃を前記苗木の側面から苗木内に差し込んで苗木を切断するものであることを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成によれば、切れ目形成工程において切れ目形成刃物を前記苗木の側面から苗木内に差し込むことにより苗木にまず縦切れ目が形成され、引き続きV字切断工程においてV字状の一対の切断刃を、縦切れ目を目掛けて側面から苗木内に差し込んでいくことにより苗木が切断されてV字状の凹部を有する接木用苗木が得られる。
【0011】
このように、苗木の側面から切れ目形成刃物およびV字状切断刃物を順次差し込んでいくというワンタッチ操作で即座にV字状の凹部が形成された接木用苗木を得ることができるため、従来のように特殊な接木装置を用い複数の操作で穂木に多角錐状の接合端を形成させたり、接木用苗木の端面に円錐状の凹部を設けたりすることに比較し、接木のための作業の工数が大幅に減少し、接木作業の作業性が大幅に向上する。
【0012】
請求項3記載の発明は、切除部位がV字形の突状に形成された他方の接木用苗木と接合するべく、凹状の切除部位を有する接木用苗木の製造装置であって、苗木を側面から支持する支持部材と、前記支持部材に対して進退可能な切断刃部材とを有し、前記切断刃部材は、前記支持部材に向かう先端側に設けられ、かつ、前記苗木の中心に沿って縦断することにより苗木に所定寸法の縦切れ目を入れる切れ目形成刃物と、前記縦切れ目を挟み両側から前記縦切れ目の一部を所定寸法だけ残して苗木にV字状切れ目を入れるべく前記切れ目形成刃物に対し後方に位置設定されたV字状切断刃物とを備えて構成されていることを特徴とする接木用苗木製造装置である。
【0013】
かかる構成によれば、支持部材の端面を苗木に相対的に押し当てて支持した状態で苗木における支持部材と対向した面に切断刃部材の切れ目形成刃物を対向させてから、当該切断刃部材をワンタッチ操作で苗木を介し支持部材に向けて押圧することにより、苗木は、切れ目形成刃物によって径方向に向けて軸心位置を貫通するような縦の切込みが形成されつつ、V字切断刃によって縦の切込みから斜めに分岐した一対のV字状切れ目が形成されていき、最終的に苗木は二分されて接木用苗木が形成される。
【0014】
そして、このような接木用苗木製造装置を採用することにより、苗木の太さに拘らずに切断刃部材を適用することができるという汎用性を確保した上で、請求項1および2の接木用苗木製造方法と同一の作用効果が得られる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記切れ目形成刃物は細身形状をなし、かつ前記支持部材に対する進退方向に長尺であり、前記V字状切断刃物は、前記切れ目形成刃物の両側面に一体形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
かかる構成によれば、細身形状の切れ目形成刃物が苗木を貫通することで苗木に縦切れ目が形成され、この切れ目形成刃物と一体のV字状切断刃物が苗木を貫通することで苗木にV字状の凹部が形成される。そして、切れ目形成刃物とV字状切断刃物とを一体にすることにより、ワンタッチ操作で苗木に縦の切れ目とV字状の凹部を形成させることが可能になる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4に記載の発明において、前記切断刃部材を前記支持部材に対して進退可能に支持する支持構造部を有することを特徴とするものである。
【0018】
かかる構成によれば、苗木を支持構造部に支持された支持部材の端面に押し当てた状態で支持構造部に支持された切断刃部材を苗木に向けて移動させることにより、切断刃部材を苗木の被切断位置に向けて正確に移動させることが可能になる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の発明において、前記支持部材は、前記切れ目形成刃物の進退方向と交差し、前記苗木の側面が接するための凹状の当接部が形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
かかる構成によれば、苗木を支持部材の凹状の当接部に当接させることにより、苗木は、凹状の当接部の凹面に抱え込まれた抱持状態になるため、苗木の支持部材に対する位置決め操作が容易に行われる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記支持部材は、前記切断刃部材の進退方向に、少なくとも前記切れ目形成刃物に対する第1の逃げ用切欠が形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
かかる構成によれば、切断刃部材を支持部材支持された苗木に向けて進行させることにより、切れ目形成刃物が苗木に縦切れ目を形成させた後、第1の逃げ用切欠に嵌り込んでいくため、縦切れ目の形成が確実になる。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記支持部材は、前記切断刃部材の進退方向に、前記V字状切断刃物に対する第2の逃げ用切欠が形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
かかる構成によれば、切断刃部材を支持部材支持された苗木に向けて進行させることにより、V字状切断刃物が苗木にV字状の切れ目を形成させた後、第2の逃げ用切欠に嵌り込んでいくため、V字状の切れ目の形成が確実になる。
【0025】
請求項9記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記第1、第2の逃げ用切欠は、前記当接部の凹状と平行な方向の一方側が開放されていることを特徴とするものである。
【0026】
かかる構成によれば、切断刃部材の上下寸法が支持部材の上下寸法より長くても、切断刃部材を支持部材に差し込んでいくことにより、切断刃部材の切れ目形成刃物およびV字状切断刃物は、第1、第2の逃げ用切欠の開放されている部分から外部に突出した状態で支持部材内に侵入していくことができる。従って、一々切断刃部材のサイズに合わせて専用の支持部材を設ける必要がなくなり、支持部材の汎用性が向上する。
【0027】
請求項10記載の発明は、請求項3乃至9のいずれかに記載の発明において、前記切れ目形成刃物は、先端が先鋭に形成された切っ先を有し、前記V字状切断刃物は、先端から基端に向けて峰高さが漸増するように三角形状に形成されているとともに、側端縁に刃が形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
かかる構成によれば、切れ目形成刃物の切っ先を苗木の目標となる位置に差し込むことにより切断刃部材の苗木に対する位置決めが容易に行われる。また、切断刃部材を苗木に向けて押圧していくことにより、峰高さが漸増するように三角形状に形成されたV字状切断刃物の刃先が斜めに苗木を切断していくことになるため、苗木はより容易に切断処理される。
【0029】
請求項11記載の発明は、請求項3乃至10のいずれかに記載の接木用苗木製造装置により製造された接木用台木である。
【0030】
かかる構成によれば、得られた接木用台木は、切断面にV字状の凹部が形成されているとともに、苗木が縦断されることによって形成された縦切れ目の一部が凹部の底部に残っているため、穂木の接合が容易かつ確実に行われる。
【0031】
請求項11記載の発明は、請求項3乃至10のいずれかに記載の接木用苗木製造装置により製造された接木用穂木である。
【0032】
かかる構成によれば、得られた接木用穂木は、切断面にV字状の凹部が形成されているとともに、苗木が縦断されることによって形成された縦切れ目の一部が凹部の底部に残っているため、台木に対する接合が容易かつ確実に行われる。
【発明の効果】
【0033】
請求項1記載の発明によれば、切れ目形成工程で苗木が縦断されることによって形成された縦切れ目に対し、V字切断工程で苗木を両側から側面視V字状に切断することにより台木を得るようにしているため、単に当初から目標のない状態で苗木の両即からの斜め切りでV字状の凹部を形成する場合に比較し、均衡のとれた凹部を確実かつ容易に形成することができる。しかも、V字切断工程では、V字の先端(底部)に縦切れ目の一部を所定寸法だけ残すようにしているため、穂木を凹部に接合するに際し、残った縦切れ目が各接合部位の形状不一致を解消するための緩衝となって穂木の先端の形状に応じて広がるため、穂木の台木に対するより確実な接合状態を得ることができる。
【0034】
請求項2記載の発明によれば、苗木の側面から切れ目形成刃物およびV字状切断刃物を順次差し込んでいくというワンタッチ操作で即座にV字状の凹部が形成された台木を得ることができるため、従来のように特殊な接木装置を用い複数の操作で穂木に多角錐状の接合端を形成させたり、台木の端面に円錐状の凹部を設けたりすることに比較し、接木のための作業の工数が大幅に減少し、接木作業の作業性が大幅に向上させることができる。
【0035】
請求項3記載の発明によれば、支持部材の端面を苗木に相対的に押し当てて支持した状態で苗木における支持部材と対向した面に切断刃部材の切れ目形成刃物を対向させてから、当該切断刃部材をワンタッチ操作で苗木を介し支持部材に向けて押圧することにより、苗木は、切れ目形成刃物によって径方向に向けて軸心位置を貫通するような縦の切込みが形成されつつ、V字切断刃によって縦の切込みから斜めに分岐した一対のV字状切れ目が形成されていき、最終的に苗木が二分されることで先端にV字状の凹部を有する台木を得ることができる。
【0036】
そして、このような接木用苗木製造装置を採用することにより、苗木の太さに拘らずに切断刃部材を適用することができるという汎用性を確保した上で、請求項1および2の接木用苗木製造方法と同一の作用効果を得ることができる。
【0037】
請求項4記載の発明によれば、細身形状の切れ目形成刃物とV字状切断刃物とを一体にすることにより、ワンタッチ操作で苗木に縦切れ目とV字状の凹部を形成させることができ、作業性の向上に貢献することができる。
【0038】
請求項5記載の発明によれば、切断刃部材を前記支持部材に対して進退可能に支持する支持構造部が設けられているため、苗木を支持構造部に支持された支持部材の端面に押し当てた状態で支持構造部に支持された切断刃部材を苗木に向けて移動させることにより、切断刃部材を苗木の被切断位置に向けて正確に移動させることができ、作業性の向上に貢献することができる。
【0039】
請求項6記載の発明によれば、苗木を支持部材の凹状の当接部に当接させることにより、苗木は、凹状の当接部の凹面に抱え込まれた抱持状態になるため、苗木の支持部材に対する位置決め操作が容易に行われ、作業性の向上に貢献することができる。
【0040】
請求項7記載の発明によれば、支持部材には切断刃部材の進退方向に少なくとも前記切れ目形成刃物に対する第1の逃げ用切欠が形成されているため、切断刃部材を支持部材支持された苗木に向けて進行させることにより、切れ目形成刃物が苗木に縦切れ目を形成させた後、第1の逃げ用切欠に嵌り込んでいき、これによって苗木に縦切れ目を確実に形成することができる。
【0041】
請求項8記載の発明によれば、支持部材には切断刃部材の進退方向にV字状切断刃物に対する第2の逃げ用切欠が形成されているため、切断刃部材を支持部材支持された苗木に向けて進行させることにより、V字状切断刃物が苗木にV字状の切れ目を形成させた後、第2の逃げ用切欠に嵌り込んでいき、これによって苗木にV字状の切れ目を確実に形成することができる。
【0042】
請求項9記載の発明によれば、第1、第2の逃げ用切欠は、当接部の凹状と平行な方向の一方側が開放されているため、一々切断刃部材のサイズに合わせて専用の支持部材を設ける必要がなくなり、支持部材の汎用性を向上させることができる。
【0043】
請求項10記載の発明によれば、切れ目形成刃物の切っ先を苗木の目標となる位置に差し込むことにより切断刃部材の苗木に対する位置決めを容易に行うことができる。また、切断刃部材を苗木に向けて押圧していくことにより、峰高さが漸増するように三角形状に形成されたV字状切断刃物の刃先が斜めに苗木を切断していくことになるため、苗木をより容易に切断処理することができる。
【0044】
請求項11記載の発明によれば、接木用苗木製造装置により製造された接木用台木は、切断面にV字状の凹部が形成されているとともに、苗木が縦断されることによって形成された縦切れ目の一部が凹部の底部に残っているため、穂木の接合を容易かつ確実に行うことができる。
【0045】
請求項11記載の発明によれば、接木用苗木製造装置により製造された接木用穂木は、切断面にV字状の凹部が形成されているとともに、苗木が縦断されることによって形成された縦切れ目の一部が凹部の底部に残っているため、台木に対する接合を容易かつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
図1および図2は、本発明に係る接木用苗木製造装置の一実施形態を示す斜視図であり、図1は、切断刃部材と支持部材とが分離された状態、図2は、切断刃部材が支持部材に差し込まれた状態をそれぞれ示している。また、図3は、切断刃部材の平面図であり、図4は、同側面図であり、図5は、図1に示す切断刃部材のA−A線断面図である。さらに、図6は、図1に示す支持部材のB線視図であり、図7は、支持部材の平面図である。
【0047】
まず、図1に示すように、接木用苗木製造装置10は、苗木Sを切断する切断刃部材20と、苗木Sを介して切断刃部材20と対向配置される支持部材30とを備えた基本構成を有している。
【0048】
前記切断刃部材20は、片手で把持し得る刃物用把手21の一方の端部に刃物本体22が装着されることによって構成されている。前記刃物用把手21は、本実施形態においては、円柱状のものが採用され、片手で安定的に把持し得るように径寸法および長さ寸法が設定されている。
【0049】
前記刃物本体22は、刃物用把手21の端面から軸心方向に延設された突設された中央刃物(切れ目形成刃物)23と、この中央刃物23の両側面から互いに反対方向に向けて分岐された、中央刃物23の長手方向に延びる一対の分岐刃物(V字状刃物)24とを備えて構成されている。
【0050】
前記中央刃物23は、長さ寸法が50mm〜150mmに設定されている。かかる寸法が設定されるのは、中央刃物23が50mm未満であると分岐刃物24に後述する緩やかな傾斜を形成させ得なくなるからであり、また、接木する苗木Sの径寸法を勘案して中央刃物23を150mm以上に設定する必要がないからである。因みに、本実施形態においては、中央刃物23の長さ寸法が略120mmに設定されているが、略120mmであることに限定されるものではなく、苗木Sの種類や太さに応じて適宜最適の長さ寸法が設定される。
【0051】
かかる中央刃物23は、刃物用把手21の端面から外方に向かって真っ直ぐに延びた峰部231と、この峰部231の先端に形成された切れ目形成刃232とからなっている。前記峰部231は、全長に亘って同一の峰高さ(峰部231の対向した縁部間の距離、本実施形態では略22mm)に設定されているが、峰高さが略22mmであることに限定されるものではなく、状況に応じて適宜の峰高さが設定される。
【0052】
前記切れ目形成刃232は、峰部231の上縁先端から先下がりに傾斜し外方へ向けて延設された両刃(峰部231の縁部両面に傾斜を設けて刃を形成したもの)の上部切れ目形成刃233と、峰部231の下縁先端から先上がりに傾斜し外方へ向けて延設された両刃(峰部231の縁部両面に傾斜を設けて刃を形成したもの)の下部切れ目形成刃234とを備えている。
【0053】
前記上下の切れ目形成刃233,234は、中央刃物23の長手方向に延びる中心線に対する傾斜角度α(図1)が、本実施形態においては、略30°に設定されているが、略30°であることに限定されるものではなく、状況に応じて各種の角度を設定することが可能である。
【0054】
そして、上部切れ目形成刃233は、峰部231の峰高さの略70%を占めるとともに、下部切れ目形成刃234は、峰部231の峰高さの略30%を占めるように設置位置が設定され、これによって上部切れ目形成刃233の方が下部切れ目形成刃234より長くなっている。かかる上下の切れ目形成刃233,234の交差位置には、外方に向かって先鋭に尖った切っ先235が形成されている。
【0055】
前記各分岐刃物24は、中央刃物23の両側面において中央刃物23の延びる方向に延びた切っ先235を通る上下の分岐線Lに沿い、かつ、互いに反対方向に向けて先上がりに傾斜した状態で中央刃物23に固定されている。かかる分岐刃物24は、長さ寸法が中央刃物23の長さ寸法より若干短めに設定され、かつ、先端側(切れ目形成刃232が設けられている側)に向けて先細りになるような直角三角状に形状設定されている。
【0056】
このような分岐刃物24は、所定の厚み寸法を有する直角三角形状の峰部241と、この峰部241の直角三角形状の斜辺に対応する縁部に形成された両刃のV字状切断刃242とからなっている。各峰部241と中央刃物23との間の角度β(図5)は、略30°に設定されているが、角度βが略30°であることに限定されるものではなく、苗木Sの種類や太さに応じて適宜の角度が設定される。また、直角三角形状の各分岐刃物24の底辺部分とV字状切断刃242の延びる方向との間に形成される角度γ(図4)は、略10°に設定されているが、角度γが略10°であることに限定されるものではなく適宜の角度が設定される。
【0057】
このように構成された切断刃部材20は、前記支持部材30が苗木Sの側部に押し当てられた状態で、切れ目形成刃232の切っ先235が支持部材30と対向するように苗木Sの周面に一旦差し込まれて位置決めされ、引き続き支持部材30に向けて押圧されることにより苗木Sを切断するようになっている。
【0058】
前記支持部材30は、片手で把持し得るように形状設定された支持部材用把手31と、この支持部材用把手31の端部に一体的に固定された支持部材本体32とを備えて構成されている。支持部材本体32は、長さ寸法が前記切断刃部材20の中央刃物23より若干長めに長細く形状設定されている。かかる支持部材本体32には、端面視でY字状を呈した刃物受入れ溝33が設けられている。この刃物受入れ溝33は、前記切断刃部材20の中央刃物23が差し込まれる中央差込み溝34と、切断刃部材20の一対の分岐刃物24が差し込まれる中央差込み溝34から分岐された一対の分岐差込み溝35とからなっている。
【0059】
前記中央差込み溝34は、支持部材本体32の苗木Sと対向した先端部分が開放端とされ、かつ、この開放端から支持部材本体32の長尺方向に向けて延びるように形成されている。かかる中央差込み溝34は、長さ寸法が切断刃部材20の中央刃物23の長さ寸法と略同一に設定されているとともに、一方面側(ここでは上面)は外部に向かって開放されている。
【0060】
前記一対の分岐差込み溝35は、中央差込み溝34の上下方向の中央部より若干下方の分岐位置36から互いに反対方向に向けて分岐され、苗木Sと対向される面が中央差込み溝34と同様に開放端とされているとともに、中央差込み溝34と同様に上面は外部に向かって開放されている。各分岐差込み溝35の長さ寸法は、前記切断刃部材20の分岐刃物24に対応するように中央差込み溝34の長さ寸法より若干短めに設定されている。
【0061】
また、前記中央差込み溝34における前記分岐位置36より下方部分には、切断刃部材20の中央刃物23の前記分岐線L(図1、図4)より下方部分が差し通される余裕溝341が形成され、この余裕溝341に中央刃物23の分岐刃物24より下方部分が差し通されるようになっている。
【0062】
さらに、支持部材本体32の苗木Sと対向する端面には、苗木Sを抱え込み得るように凹没されることによって形成した凹没面37が設けられている。この凹没面37は、中央差込み溝34の上下方向に延びる中心線を境にして左右に対称に形成された一対の傾斜端面371によって形成されている。従って、支持部材本体32の凹没面37を苗木Sに押し付けることにより、苗木Sは、一対の傾斜端面371によって抱持されるため、支持部材30の苗木Sに対する押し当て状態が安定する。
【0063】
そして、本実施形態においては、各傾斜端面371によって形成される角度δ(図7)は、直角に設定されているが、本発明は、角度δが直角であることに限定されるものではなく、対象とする苗木Sの太さや種類等に応じて適宜設定することができる。
【0064】
以下、本発明に係る接木用苗木製造装置10の作用について、図8を基に、苗木Sから台木S1を製作する場合を例に挙げて説明する。図8は、本発明に係る接木用苗木製造装置10の作用を説明するための説明図であり、(イ)は、切れ目形成工程において支持部材30が苗木Sの側面に押し当てられた状態で切断刃部材20が苗木Sに対し位置決めされた状態、(ロ)は、V字切断工程において支持部材30による苗木Sの切断操作が進行しつつある状態をそれぞれ示している。なお、(イ)および(ロ)において、添え字の「a」は、側面視の図であることを、添え字の「b」は、平面視の図であることをそれぞれ示している。
【0065】
また、図8の(ハ)は、(ロ)に示す状態を支持部材30の凹没面37に対面して示した切断刃部材20の断面図であり、(ニ)は、切断刃部材20が支持部材30の刃物受入れ溝33の最奥部にまで差し込まれた状態を支持部材30の凹没面37に対面して示した切断刃部材20の断面図である。さらに、図8の(ホ)は、接木用苗木製造装置10による切断処理が完了した台木S1を示す拡大斜視図である。
【0066】
苗木Sを切断して当該苗木Sから接木用の台木S1を製作するに際しては、まず、図8の(イ)に示すように、切れ目形成工程において支持部材本体32の凹没面37を苗木Sの側面に押し当てる。こうすることによって、苗木Sは、支持部材本体32の凹没面37の一対の傾斜端面371(図8の(イ)−「b」)によって抱持された状態になる。この状態で、切断刃部材20の刃物本体22における中央刃物23の切っ先235を、支持部材本体32の刃物受入れ溝33の分岐位置36と対向する支持部材本体32の周面に押し付け、これによって切断刃部材20の苗木Sに対する位置決めを行う。切っ先235を苗木Sに押し付けることにより、先鋭な切っ先235が苗木Sに差し込まれるため、切断刃部材20の前記位置決め状態が安定する。
【0067】
この状態において次のV字切断工程が実行され、一方の手で支持部材用把手31を把持し、刃物用把手21を把持している他方の手に力を込めて刃物本体22を支持部材本体32の凹没面37へ向け押圧する。こうすることによって、刃物本体22の中央刃物23が、図8の(ロ)示すように、苗木Sを貫通するとともに、苗木Sにおける中央刃物23が貫通した部分の両サイドが、図8の(ハ)に示すように、一対の分岐刃物24によって順次切り込まれていく。
【0068】
そして、刃物本体22が支持部材本体32の刃物受入れ溝33の最奥部にまで差し込まれることにより、苗木Sは、図8の(ニ)に示すように、一対の分岐刃物24によって切断されて二分され、この二分された下の部分によって接木用の台木S1が得られる。このようにして得られた台木S1には、図8の(ホ)に示すように、互いに対向した傾斜面によってV字接木凹部S11が形成されているとともに、このV字接木凹部S11の溝底からさらに下方に向かって切り込まれた緩衝切れ目S12が設けられている。また、台木S1におけるV字接木凹部S11の互いに対向した傾斜面には、平面視で同心円に沿うように形成された導管aおよび師管bが斜めに切断された状態で外部に露出している。
【0069】
このように本発明に係る接木用苗木製造装置10によれば、支持部材30の先端面に形成された凹没面37を苗木Sの側部に押し付けた状態で、切断刃部材20の刃物本体22を当該苗木Sを介して対向させた後、苗木Sを刃物本体22によって押し切るというワンタッチ操作を行うことで直ちに上端面にV字接木凹部S11を備えた台木S1を得ることができ、台木S1の製作作業の作業性を大幅に向上させることができる。
【0070】
また、刃物本体22によって苗木Sを切断するに際し、まず、中央刃物23が苗木Sに貫通されるため、一対の分岐刃物24は、この貫通によって形成された貫通孔に案内されて真っ直ぐに進行する中央刃物23に誘導されて真っ直ぐに進行し、これによって苗木Sが極めて安定した状態で分岐刃物24によって斜めに切断されるため、苗木Sを切断することによって得られた台木S1のV字接木凹部S11の対向した傾斜面が左右非対称になるような不都合の発生が確実に防止される。
【0071】
なお、接木における穂木については、本発明に係る接木用苗木製造装置10を用い、穂木用の苗木を対象として上記の台木S1を製作する場合と同様の作業を行うことによって製作することができる。この場合、切断された苗木の先端側のものが穂木として採用されることになる。
【0072】
ついで、図9を基に、接木用苗木製造装置10による苗木の切断操作によって製作された穂木S2の台木S1への接合作業について説明する。図9は、接木用苗木製造装置10による苗木の切断作業によって製作された穂木S2の台木S1への接合作業を説明するための説明図であり、(イ)は、穂木S2が台木S1に接合される直前の状態、(ロ)は、穂木S2が台木S1に接合された状態、(ハ)は、台木S1と穂木S2との接合部分がクリップCによって止められた状態をそれぞれ示している。また、(ニ)は、(ハ)に示す接木を軸心回りに90°回動させた状態を示している。
【0073】
なお、図9においては、台木S1に形成された緩衝切れ目S12および穂木S2に形成された縦切れ目S22の溝幅寸法については、図示の都合上誇張して示しており、通常は実質上幅寸法がほとんど存在しない切れ目のみであるが、中央刃物23の厚み寸法を相当厚く設定したり、中央刃物23を断面視で環状の刃物で形成することにより、苗木Sに図9に示すような厚みのある緩衝切れ目S12および縦切れ目S22を形成させることができる。
【0074】
台木S1に穂木S2を接木するに際しては、まず、図9の(イ)に矢印で示すように、穂木S2を上から降ろしてそのV字接合端S21を台木S1のV字接木凹部S11に嵌め込む。こうすることによって、V字接合端S21の各傾斜面が、図9の(ロ)に示すように、V字接木凹部S11の対応した各傾斜面に密着し、これによって穂木S2が台木S1に接合された状態になる。
【0075】
そして、この接合作業時に、穂木S2を台木S1に向けて押圧すると、穂木S2の縦切れ目S22(この縦切れ目S22は、穂木S2用の苗木を接木用苗木製造装置10による切断処理で製作した場合に中央刃物23が苗木に貫通されることによって形成された本発明に係る縦切れ目の下方の一部である)の下端部が幅狭になるようにV字接合端S21が弾性変形し、これによって先鋭になったV字接合端S21の下端が台木S1の緩衝切れ目S12に嵌り込んだ状態になる。
【0076】
一方、V字接合端S21の各傾斜面によって押圧された台木S1のV字接木凹部S11の各傾斜面は、外方に向かう力をV字接合端S21から受けるため、V字接木凹部S11の各傾斜面が互いに離間方向に向かうように台木S1が弾性変形する。この状態で、図9の(ハ)および(ニ)に示すように、台木S1と穂木S2との接合部分がクリップCによって止められ、これによって台木S1と穂木S2との接合作業が完了する。
【0077】
台木S1と穂木S2とが互いに接合された状態では、穂木S2におけるV字接合端S21の弾性変形と、台木S1におけるV字接木凹部S11部分の弾性変形とに起因した復元力によって、V字接合端S21の傾斜面と、V字接木凹部S11の傾斜面とが確実に押圧当接された状態になるため、穂木S2の台木S1に対する活着率が極めて良好なものになる。
【0078】
そして、本発明に係る接木方法は、上記接木用苗木製造装置10を用いて苗木Sに切断処理を施すことにより得られた台木S1に、別の接木用の苗木に切断処理を施すことにより得られた穂木S2を接合するものであり、支持部材30の支持部材用把手31を把持しながら苗木Sの側部に支持部材本体32の凹没面37を押し当てた状態で、切断刃部材20の刃物用把手21を把持しながら刃物本体22を支持部材本体32の凹没面37に向けて押圧するワンタッチ操作で苗木Sに切断処理を施し、これによって台木S1に刃物受入れ溝33を形成し、予めこの刃物受入れ溝33の上部のV字状を呈する部分に対応するように穂木の基端側をV字状に形成することにより形成されたV字接合端S21を嵌め込むことによって穂木を台木S1に接合するものである。
【0079】
かかる接木方法によれば、支持部材本体32を苗木Sの側面に押し当てた状態で、切断刃部材20の中央刃物23を苗木Sを介して支持部材本体32に向けてワンタッチ操作で押圧することにより、中央刃物23と支持部材本体32とに挟持された状態の苗木Sは、刃物本体22によって側面視でY字状に切断され、これによって苗木Sの切断位置より基端側に台木S1が形成される。そして、切断面に刃物受入れ溝33の形成された台木S1の先端のV字溝に、他の苗木Sを二分することによって得た穂木の切断部分をV字溝に対応するように加工することによって形成されたV字接合端S21を挿入することにより、接木処理が完了する。
【0080】
このように、切断刃部材20によるワンタッチの切断操作で切断位置に刃物受入れ溝33の形成された台木S1を得ることができるとともに、穂木S2の被切断位置を台木S1のV字接木凹部S11に対応するように斜めに削ることにより穂木S2に容易にV字接合端S21を形成させることができるため、従来の上記特許文献1に記載されているような特殊な接木用苗木製造装置10を用い複数の操作で穂木S2に多角錐状の接合端を形成させたり、台木S1の端面に円錐状の凹部を設けたりすることに比較し、接木のための作業の工数が大幅に減少し、接木作業の作業性を大幅に向上させることができる。
【0081】
また、穂木S2のV字接合端S21を面接触で台木S1のV字接木凹部S11の溝壁に接合させることができるため、台木S1と穂木S2との間でそれぞれの導管aや師管b等の通道組織が互いに確実に連絡され、これによって高い活着率を得ることができる。
【0082】
さらに、刃物本体22により台木S1に形成されたY字溝には、その上部のV字接木凹部S11の溝底からさらに下方へ切り込まれたY字状の縦棒に対応する緩衝切れ目S12が形成され、この緩衝切れ目S12がV字接木凹部S11とV字接合端S21との形状の不一致を吸収する緩衝となって拡幅するため、V字接木凹部S11とV字接合端S21との多少の形状不一致に拘らず穂木S2を台木S1に確実に接合することができる。
【0083】
そして、上記の実施形態においては、穂木S2を本発明に係る接木用苗木製造装置10の刃物本体22により接木対象とされる別の苗木を切断することにより得るようにしているため、台木S1の製作に用いたのと同一の刃物本体22により穂木S2を製作することになり、台木S1のV字接木凹部S11に確実に対応したV字接合端S21を有する穂木S2をワンタッチで容易に製作することができ、結果として全体的な接木作業の作業性を大幅に向上させることができる。
【0084】
また、以上詳述したように、本発明に係る接木用苗木製造装置10は、予め穂木S2の基端をV字状に削ることにより形成したV字接合端S21を台木S1に嵌め込むべく、該台木S1に側面視でY字状を呈したV字接木凹部S11と緩衝切れ目S12とからなるY字溝を形成させるものであり、先端面に形成された凹没面37を苗木Sの側面に押し当てる支持部材30と、苗木Sを介して凹没面37に対向される切断刃部材20とを備えた基本構成を有している。
【0085】
そして、支持部材本体32には、苗木Sと対向した端面が開放端とされ、かつ、開放端から長尺方向に向けて延びる中央差込み溝34と、この中央差込み溝34の下端部から若干上方に離間した位置から左右対象に斜めに上方へ分岐して中央差込み溝34と平行に支持部材本体32の長手方向に延びる一対の分岐差込み溝35とからなる刃物受入れ溝33が設けられている一方、刃物本体22は、中央差込み溝34に差し込まれる中央刃物23と、この中央刃物23の両側面から左右対称に突設された各分岐差込み溝35に差し込まれる一対の分岐刃物24とを備えて構成されている。
【0086】
かかる構成の切断刃部材20によれば、支持部材本体32の凹没面37を苗木Sに押し当てた状態で苗木Sにおける前記凹没面37と対向した面に刃物本体22の刃の切れ目形成刃232を対向させてから、当該刃物本体22をワンタッチ操作で支持部材本体32に向けて押圧することにより、苗木Sは、刃物本体22の中央刃物23によって径方向に向けて軸心位置を貫通するような縦の切込みが形成される。かかる押圧操作を継続することにより、刃物本体22の一対の分岐刃物24によって縦の切込みから斜めに分岐した一対の斜めの切込みが形成されていく。
【0087】
そして、中央刃物23の切れ目形成刃232の切っ先235がが支持部材本体32における刃物受入れ溝33の分岐位置36に到達すると、以後、中央刃物23が支持部材本体32の中央差込み溝34に差し込まれていくとともに、各分岐刃物24が対応した各分岐差込み溝35に差し込まれていくため、苗木Sは刃物本体22によって確実に二分されることになる。
【0088】
このような接木用苗木製造装置10を採用することにより、苗木Sの太さに拘らずに刃物本体22を適用することができるという汎用性を確保した上で、前記の接木方法と同一の作用効果を得ることができる。
【0089】
そして、支持部材本体32には、苗木Sと対向する先端面に苗木Sを抱え込み得るように凹没された凹没面37が設けられているため、苗木Sを支持部材本体32の凹没面37に嵌め込むことにより、当該苗木Sは、凹没面37に抱え込まれた状態になり、これによって苗木Sの支持部材本体32に対する位置決め操作を容易に行うことができ、結果として接木作業の作業性を向上させることができる。
【0090】
また、中央差込み溝34および分岐差込み溝35は、上面が外部に向けて開放されているため、刃物本体22の上下寸法が支持部材本体32の上下寸法より長尺であっても、刃物本体22を支持部材本体32に差し込んでいくことにより、刃物本体22の中央刃物23および各分岐刃物24の上部が中央差込み溝34および分岐差込み溝35の各上面の開放部分から外部に突出した状態で支持部材本体32内に侵入していくことができる。従って、一々刃物本体22のサイズに合わせて専用の支持部材本体32を設ける必要がなくなり、支持部材本体32の汎用性を向上させることができる。
【0091】
また、中央刃物23は、先端が先鋭に形成された切れ目形成刃232を有し、分岐刃物24は、先端から基端に向けて峰高さが漸増するように三角形状に形成されているとともに、側端縁にV字状切断刃242が形成されているため、中央刃物23の切れ目形成刃232を苗木Sの目標となる位置に差し込むことにより刃物本体22の位置決め操作を容易に行うことができる。また、刃物本体22を苗木Sに向けて押圧していくことにより、峰高さが漸増するように三角形状に形成された分岐刃の刃先が斜めに苗木Sを切断していくことになるため、苗木Sをより容易に切断処理することができる。
【0092】
そして、上記の接木方法および接木用苗木製造装置10により得られた接木用の台木S1には、切断位置にV字接木凹部S11の溝底から下方に延びる緩衝切れ目S12が形成されているため、得られた接木用台木S1は、この緩衝切れ目S12の存在で穂木S2の接合を容易、かつ、確実に行うことができる。
【0093】
加えて、台木S1に接合される穂木S2は、本発明に係る接木用苗木製造装置10により切断処理されることにより同一の接木用苗木製造装置10によって製作された台木S1に確実に接合させることができる。
【0094】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0095】
(1)上記の実施形態においては、支持部材30の支持部材本体32の端面に形成された凹没面37は、平面からなる一対の傾斜端面371が平面視で略直角になるように交差されて形成されているが、本発明は、凹没面37が平面を交差させて形成されたものであることに限定されるものではなく、平面視で円弧状であってもよいし、放物線などの二次曲線状であってもよい。
【0096】
(2)上記の実施形態においては、分岐刃物24はV字状切断刃242が峰部241の両面で研がれて両面に刃が形成された両刃とされているが、本発明は、分岐刃物24が両刃であることに限定されるものではなく、分岐刃物24の一方の面が峰部241と面一の片刃であってもよい。
【0097】
(3)上記の実施形態においては、分岐刃物24のV字状切断刃242が直線状に形成されているが、本発明は、分岐刃物24のV字状切断刃242が直線状であることに限定されるものではなく、外部に向かって膨出した円弧状に形成してもよいし、逆に峰部241に向かって凹没下した円弧状に形成してもよい。
【0098】
(4)上記の実施形態においては、穂木S2についても本発明に係る接木用苗木製造装置10を用いて製作するようにしているが、本発明は、穂木S2を接木用苗木製造装置10により製作することに限定されるものではなく、台木S1のV字接木凹部S11の形状に合わせて穂木S2の端部をナイフ等で削り、V字接合端S21を形成させてもよい。
【0099】
(5)上記の実施形態においては、接木用苗木製造装置10による苗木Sの切断処理で台木S1側にV字接木溝S11を形成させる一方、穂木S2側にV字接合端S21を形成させるようにしているが、こうする代わりに苗木Sの根の方を上にして当該苗木Sに切断処理を施すことで台木S1側にV字接合端を形成される一方、穂木S2側にV字接木溝を形成させるようにしてもよい。
【0100】
(6)図10は、接木用苗木製造装置10′の他の実施形態を示す一部切り欠き斜視図である。この実施形態における接木用苗木製造装置10′は、先の実施形態の切断刃部材20に対応する切断刃部材20′と、先の実施形態の支持部材30に対応する支持部材30′と、これら切断刃部材20′および支持部材30′を固定するための枠体40とを備えて構成されている。
【0101】
切断刃部材20′は、先の実施形態のものと同様の刃物本体22と、この刃物本体22の基端部に固定される前記刃物用把手21と対応したピストンロッド25と、このピストンロッド25が摺接状態で貫通される直方体状のシリンダブロック26とからなっている。前記ピストンロッド25は、円柱体によって形成され、軸心が刃物本体22の長手方向に延びる中心線と一致した状態で刃物本体22の基端面に固定され、前記シリンダブロック26に穿設された貫通孔261に貫通されることにより切断刃部材20′がシリンダブロック26に対し孔心方向に正逆移動可能になっている。
【0102】
かかるピストンロッド25には、刃物本体22と反対側の端部に径寸法がピストンロッド25のそれより大きく設定された円形の操作端部251が設けられているとともに、この操作端部251とシリンダブロック26との間にはピストンロッド25に外嵌されたコイルスプリング27が介設され、このコイルスプリング27の付勢力によって普段は刃物本体22がシリンダブロック26の方向へ引き寄せられた状態になっている。
【0103】
前記支持部材30′には、本実施形態では先の実施形態の支持部材用把手31に対応するものが設けられておらず、先の実施形態のものと同様の支持部材本体32のみによって構成されている。
【0104】
前記枠体40は、平面視で細長い直方体状を呈する台座41と、この台座41の四隅部に立設された4本の支柱42と、台座41の長手方向で互いに対向した各一対の支柱42の上部位置間に架設された台座41の幅方向一対の細長い挟持板43と、一対の挟持板43間に架設された、刃物本体22の移動をガイドするためのガイド部材44とを備えて構成されている。前記各支柱42の高さ寸法は、切断処理が施される苗木Sの根の部分と切断位置との間の距離と略同等になるように設定されている。
【0105】
前記シリンダブロック26および支持部材30′は、一対の挟持板43間に所定の離間距離(具体的にはシリンダブロック26および挟持板43の対向面間の距離が刃物本体22の長さ寸法より相当長めの離間距離)だけ離された状態でねじ止めその他で固定され、これによって刃物本体22は、その切っ先235を支持部材本体32の凹没面37に対向させた状態で挟持板43間の空間に位置するようになされている。
【0106】
そして、刃物本体22は、ピストンロッド25の付勢力によって切っ先235が支持部材本体32の凹没面37から所定距離だけ離間したホーム位置と、コイルスプリング27の付勢力に抗してピストンロッド25が操作端部251を介して押圧されることにより支持部材本体32の刃物受入れ溝33に侵入した切断位置との間で位置変更し得るようになっている。刃物本体22がホーム位置に位置設定された状態で、当該刃物本体22の中央刃物23の切っ先235と支持部材本体32の凹没面37との間には、切断処理が施される苗木Sを挿通させるための苗木挿通空間Vが形成されている。
【0107】
前記ガイド部材44は、刃物本体22の直進を案内するためのものであり、前記苗木挿通空間Vと干渉しないように隣接した位置に設けられている。かかるガイド部材44は、上部で一対の挟持板43間に架設された上部ガイド45と、下部で前記上部ガイド45と対向するように一対の挟持板43間に架設された下部ガイド46とを備えて構成されている。
【0108】
前記上部ガイド45は、一対の挟持板43の上縁部間に架設される天板451と、この天板451の中央部下面から下方に向けて突設された一対のガイド突片452と、前記天板451から下方に向けて突設された一対の側板453とからなっている。これら一対の側板453がそれぞれ一対の挟持板43の外面側にねじ止めその他で固定されることにより、上部ガイド45が挟持板43に装着されるようになっている。
【0109】
前記一対のガイド突片452間の内寸法は、刃物本体22の中央刃物23の厚み寸法より僅かに広めに設定され、これによって中央刃物23は、その上縁部が一対のガイド突片452間に挟持されることにより幅方向への振れがない状態で移動し得るようになっている。
【0110】
前記下部ガイド46は、中央部に凹設された、中央刃物23の下縁部が摺接状態で嵌め込まれるガイド溝461を有している。かかるガイド溝461は、分岐刃物24と干渉しないように溝深さが設定されている。従って、中央刃物23は、その下縁部がこのガイド溝461に嵌め込まれることにより、幅方向への振れが規制された状態で移動し得るようになっている。
【0111】
そして、刃物本体22は、このような上部ガイド45および下部ガイド46に上下から摺接状態で挟持されることにより、上下方向および幅方向への振れが防止された状態で、支持部材30′に対し真っ直ぐに進退し得るようになっている。
【0112】
このように構成された接木用苗木製造装置10′によれば、刃物本体22がホーム位置に位置設定された状態で、根の部分を下にして上から苗木Sを苗木挿通空間Vに差し通し、かつ、支持部材30′の凹没面37に押し当てた状態で、コイルスプリング27の付勢力に抗して操作端部251を押圧操作すると、刃物本体22は、これによるピストンロッド25の移動により苗木挿通空間V内の苗木Sの茎に向かって前進し、当該苗木Sを中央刃物23および分岐刃物24によって切断し、これによって切断面にV字接木凹部S11および緩衝切れ目S12(図9)が形成された台木S1(あるいは、縦切れ目S22の形成された穂木S2)が形成される。
【0113】
切っ先235が苗木Sに当たった後の刃物本体22は、刃物本体22の前進に伴って苗木Sを切断しつつ中央刃物23および分岐刃物24がそれぞれ支持部材30′の中央差込み溝34および分岐差込み溝35に差し込まれていくことになる。
【0114】
この実施形態の支持部材30′によれば、苗木Sを苗木挿通空間Vに差し通した後に、操作端部251をワンタッチ操作でプッシュするという簡単な操作で苗木Sに対し切断処理を施すことができ、先の実施形態の接木用苗木製造装置10のように、支持部材本体32の凹没面37を苗木Sに押し当てた状態で刃物本体22の切っ先235を凹没面37の分岐位置36に対向した位置に押し付ける位置決め操作を行う必要がなく、その分、台木S1または穂木S2を製作するための苗木Sの切断作業の作業効率の向上に貢献することができる。
【0115】
(7)上記の実施形態においては、接木用苗木製造装置10,10′は、苗木Sに対して横から刃物本体22を差し込んで当該苗木Sを切断するようにしているが、こうする代わりに、苗木Sを一旦横断方向に切断して平らな切断面を形成し、この切断面に対して中心位置を通るように切れ目を入れてからこの切れ目に向かって斜めに切込みを入れてV字接木溝を形成させるように構成された接木用苗木製造装置を採用してもよい。
【0116】
(8)上記の実施形態においては、苗木Sを支持部材30,30′の凹没面37に当接させた状態で切断刃部材20,20′により苗木Sに切断処理を施すようにしているが、こうする代わりに、苗木Sを両サイドから押圧挟持して固定し、この状態の苗木Sに対して切断刃部材20を前進させることにより当該苗木Sに切断処理を施すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明に係る接木用苗木製造装置の一実施形態を示す斜視図であり、切断刃部材と支持部材とが分離された状態を示している。
【図2】本発明に係る接木用苗木製造装置の一実施形態を示す斜視図であり、切断刃部材が支持部材に差し込まれた状態を示している。
【図3】切断刃部材の平面図である。
【図4】切断刃部材の側面図である。
【図5】図1に示す切断刃部材のA−A線断面図である。
【図6】図1に示す支持部材のB線視図である。
【図7】図1に示す支持部材の平面図である。
【図8】本発明に係る接木用苗木製造装置の作用を説明するための説明図であり、(イ)は、支持部材が苗木の側面に押し当てられた状態で切断刃部材が苗木に対し位置決めされた状態、(ロ)は、支持部材による苗木の切断操作が進行しつつある状態をそれぞれ示している。なお、(イ)および(ロ)において、添え字の「a」は、側面視の図であることを、添え字の「b」は、平面視の図であることをそれぞれ示している。
【図9】接木用苗木製造装置による苗木の切断作業によって製作された穂木の台木への接合作業を説明するための説明図であり、(イ)は、穂木が台木に接合される直前の状態、(ロ)は、穂木が台木に接合された状態、(ハ)は、台木と穂木との接合部分がクリップによって止められた状態をそれぞれ示している。また、(ニ)は、(ハ)に示す接木を軸心回りに90°回動させた状態を示している。
【図10】接木用苗木製造装置の他の実施形態を示す一部切欠き斜視図である。
【符号の説明】
【0118】
10,10′ 接木用苗木製造装置 20,20′ 切断刃部材
21 刃物用把手 22 刃物本体
23 中央刃物(切れ目形成刃物)
231 峰部 232 切れ目形成刃
233 上部切れ目形成刃 234 下部切れ目形成刃
235 切っ先 24 分岐刃物(V字状切断刃物)
241 峰部 242 V字状切断刃
25 ピストンロッド 251 操作端部
26 シリンダブロック 261 貫通孔
30,30′ 支持部材 31 支持部材用把手
32 支持部材本体 33 刃物受入れ溝
34 中央差込み溝 341 余裕溝
35 分岐差込み溝 36 分岐位置
37 凹没面 371 傾斜端面
40 枠体 41 台座
42 支柱 43 挟持板
44 ガイド部材 45 上部ガイド
451 天板 452 ガイド突片
453 側板 46 下部ガイド
461 ガイド溝 a 導管
b 師管 C クリップ
L 分岐線 S 苗木
S1 台木 S11 V字接木凹部S11(V字溝)
S12 緩衝切れ目(V字の先端に前記切れ目の一部を所定寸法だけ残した部分)
S2 穂木 S21 V字接合端
S22 縦切れ目
【出願人】 【識別番号】592202170
【氏名又は名称】農事組合法人三国バイオ農場
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
【出願日】 平成17年7月11日(2005.7.11)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司

【識別番号】100096150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝夫

【識別番号】100099955
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 次郎


【公開番号】 特開2007−14313(P2007−14313A)
【公開日】 平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願番号】 特願2005−202139(P2005−202139)