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【発明の名称】 生分解性不織布による直播用パック
【発明者】 【氏名】黒住 福夫

【氏名】富樫 勝

【氏名】升水 輝雄

【要約】 【課題】田植機等の大型機械を用いずに、少ない労力で、また、鳥、貝などの食害を受けることなく、種子、特に稲種子を圃場に直播するのに適した直播用パックを提供する。

【解決手段】種子2を内包したコンパートメントAと、肥料3を内包するコンパートメントBが配置される、生分解性不織布からなる、テープ状またはシート状の直播用パック。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性不織布からなり、種子を内包したコンパートメントを有する直播用パック。
【請求項2】
種子を内包するコンパートメントが定間隔で配置される、請求項1に記載の直播用パック。
【請求項3】
肥料が、種子と同じコンパートメント内に内包される、請求項1または2に記載の直播用パック。
【請求項4】
肥料を内包するコンパートメントをさらに有し、種子を内包するコンパートメントと肥料を内包するコンパートメントが互い違いに配置される、請求項1または2に記載の直播用パック。
【請求項5】
該パックは、テープ状またはシート状である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の直播用パック。
【請求項6】
該生分解性不織布は、下記特性の少なくとも一を満たす、請求項1〜5のいずれか1項に記載の直播用パック:
(1)15日での好気性条件下での相対生分解率が30%以上である;
(2)28日での好気性条件下での相対生分解率が50%以上である;及び
(3)120日での嫌気性条件下での相対生分解率が50%以上である。
【請求項7】
該生分解性不織布は、ポリエチレンサクシネートおよび/またはポリエチレンサクシネート/アジペートを主成分として製造される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の直播用パック。
【請求項8】
乾田直播に使用される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の直播用パック。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、種子、特に稲種子を圃場に直播するのに適した直播用パックに関するものである。より詳しくは、本発明は、鳥、貝などによる食害を受けることなく任意の間隔でかつ一定の深さに播種でき、生分解性速度が速く乾田を主とした直播栽培に適した直播用パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
稲作は、日本固有の農業であり、自給できる数少ない農作物の代表である。従来、水稲栽培においては、床土を詰めた育苗箱に種籾を播き、その上に土を被せて潅水して育苗した後、この苗を手であるいは田植機を用いて、本田に移植し、田植えを行なうという移植栽培法が取られていた。この方法では、田植え以降の作業は、営農の規模や経済的事情などに応じて、人力または機械力のいずれかが選択できるものの、狭い水田では、機械に頼ることができず、多大な労力を必要とする。加えて、播種から田植えまでの作業は、面積の大きい水田でも、機械化された現在でさえ、人力作業に頼るところが多く、潅水等の育苗管理や苗運搬等に多大な労力を要するため、若者の農業離れが進み、農作業者の高齢化や後継者難が農家では大きな問題となっている。このため、水稲栽培における移植を省き、稲作の過重労働を解消し、生産コストを削減することが強く求められている。
【0003】
上記を目的として、種籾を直接土壌に播く直播栽培法が開発された。この直播栽培法は、初めから種籾を本田に直接播くため、水稲栽培における移植工程を必要とせず、稲作の過重労働が解消できるという利点がある。この直播栽培法には、主に、湛水直播と乾田直播があるが、いずれの方法にしても、除草作業に多大な労力がかかる、播種後に鳥や貝による食害が頻繁に起こる、栽培管理や収穫が難しいなどの問題がある。特に食害に関しては、湛水直播の場合では、ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)が種籾を食べてしまったり、カモが5cm位まで出芽した苗をそっくり食べてしまうなどの問題がおこる。双方の栽培方法とも、移植栽培法に比して約1ヶ月早い時期に播種する必要がある。特に、湛水播種は、この時期に湛水土壌にする必要があるが、湛水土壌にできる地域は限定され、水の利権は稲作農家にとっては重要な問題であるため、通常の播種時期(田植時期)より約1ヶ月も早く湛水土壌にすることは非常に頭の痛い問題である。
【0004】
これに対して、乾田直播は、播種時期に湛水土壌とする必要はなく、通常の移植栽培と同時期に湛水土壌にすればよく、種子を発芽及び出芽、出根させ、育成できるという点で、さらには湛水直播栽培より農作業の省労力化が可能であり、安定した発芽及び出芽、出根が可能である点で、湛水直播より好適である。しかしながら、乾田直播の場合であっても、スズメが出芽直後の若い苗を引き抜いたり、カラスが種やテープなどを掘り出してしまったりして、被害が甚大となる場合がある。また、従来の直播は、条播及び散播によるのが主流であり、点播は簡単には行なえなかったが、条播や散播は除草作業及び機械を用いた収穫作業などが困難であるのに対し、点播は群生が防止でき、根張りが良く、倒伏が少なく、また病害虫に強く、品質、食味の良い米が生産できるため、低コストでかつ高品質の米の生産が可能な種籾の点播が強く望まれていた。
【0005】
このような問題を解消することを目的として、生分解性の材料からなるものをテープやシート状物に加工したものを用いて籾を覆ったりまたはテープまたはシート状物に籾を付着して、これを土中に埋めたりすることによって、稲種子の直播に使用するという試みが報告された(例えば、特許文献1〜3参照)。これらのうち、特許文献1には、微生物によって分解されるバイオプラスチックによって作られたテープに種子を等間隔に付着させ、種子が容易に離脱しないように、種子の部分に同じ材質のカバーを掛け、さらにテープとカバーに、種子が水分を吸収し、芽を出し、根を下し易いように、細かい穴を多数開けた直播き用テープが開示される。
【0006】
また、特許文献2には、再生紙マルチシートに、前後左右に所定間隔で種子収容穴を穿設し、これら各種子収容穴に所定粒数の種子を上面側に生分解性メッシュ布、下面側に生分解性不織布を配して挟持し、この生分解性メッシュ布及び生分解性不織布の外周部を種子収容穴周囲の再生紙マルチシートに対して生分解性ホットメルト接着剤または機械的接合手段により接合して固定してなる再生紙マルチ直播シートが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、本質的に生分解性の素材からなり、土中での強度保持率の高い部分と低い部分が長さ方向に交互に存在し、土中での強度保持率の高い部分が目合いが高々3mmの筒状の繊維構造物で、強度保持率の高い部分に稲もみを少なくとも一粒包含させた稲の直播き用紐状繊維構造物が報告されている。
【特許文献1】特開平8−140416号公報
【特許文献2】特開平10−52176号公報
【特許文献3】特開2000−92922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び3に記載されるものは、直播用とはいっても、条播や散播に適し、点播には適さないという欠点があった。また、特許文献1では、テープに種子を付着させているが、テープに1個種子を付着させた場合には、すべての種子が100%の確率で発芽することはないので、等間隔で種子を付着させても、実際には、発芽する部分と発芽しない部分がでてしまい、十分な収穫量を確保することが難しい。また、テープに複数個の種子を付着させた場合には、種子が重なり合うことがあり、このような状態でテープに固着されると、種子の発芽や出根が阻害される恐れがある。
【0009】
また、上記特許文献2に記載される再生紙マルチシートは、点播用であるが、雑草の防止を最大の目的としており、また、湛水土壌にのみ使用でき、乾田直播には使用できないという問題がある。また、この再生紙マルチシートは、ダンボール古紙を主原料とし、これに、上面側に生分解性メッシュ布、及び下面側に生分解性不織布を配して挟持し、この部分に種子を内包している。すなわち、種子を入れる部分は上下面で異なる部材からなりかつこれをダンボール再生紙で挟持することを必須としているため、当該文献に記載の直播シートの製造は非常に複雑な工程を要する。また、上記文献2に記載される再生紙マルチシートは、ダンボール古紙を主原料としており、湛水状態で約40〜50日で自然に分解すると記載され、水の存在が必須である。このため、特許文献2に記載される再生紙マルチシートは、湛水土壌にのみ適用でき、乾田直播には適用できない。このため、用水路が引きにくく安定した湛水土壌が確保しにくい場所には使用できないという問題がある。また、湛水直播は、土壌に水を溜めた状態で種籾を播くため、稲苗は容易に水を吸収できるので、根が地中に向かって伸びずに横に伸び易いので、倒伏し易く、倒伏しないまでも弱い稲になってしまう上、水田での農作業は困難であり、機械を必要とする場合が多く、機械化できないような面積の狭い圃場には適用できないという問題がある。加えて、上記したように、再生紙マルチシートは、水の存在により分解し始めてしまうため、梅雨の時期や湿度の高い時には、貯蔵中など、分解が望ましくない時期でも、水の存在によって容易に分解してしまう恐れもある。上記に加えて、特許文献2は、土壌に水をわずかに張り、その水により土壌とシートとの密着性をはかり、種子を発芽、育成させると共に、雑草の生育を防止することを目的とする。このような場合には、再生紙は水とは密着するが、再生紙と土壌との間には水があるため、種子は浮き上がりやすくなり、土壌と種子との密着性が低下してしまう。
【0010】
さらに、上記特許文献3に記載された種子を収容するのに使用される強度保持率の高い部分に使用される材料としてはポリ乳酸を主成分とした繊維が例示されているが、このような繊維は、実施例によると6ヶ月経過後の強度が90%前後とこの生分解速度が非常に遅い。このため、実際にこのような生分解速度の遅い材料を使用すると、翌年の田植え時期にも、この繊維が土中に残存してしまい農作業や環境に悪影響を与える恐れがあり、また、発芽や出根の方が繊維の分解より早く起こるため、芽や根の生長が紐状繊維構造物に妨げられてしまう恐れがある。同時に、特許文献3による方法では、種子を置くための強度保持率の高い部分の目合いが高々3mmの筒状の繊維構造物(段落「0005」)とされているが、稲の茎は生長により3mm以上になり、最終的には8〜10mm程度にまで太くなる。このため、このような目合いの小さい構造物では、稲が生長しても、種子が収容される強度保持率の高い部分の分解がおいつかず、首締め状態となり、稲の生長に悪影響を及ぼす恐れがある。また、このような細い部分に籾を複数個おくと、種同士が接触する可能性が高く、稲の発芽や出根を阻害する恐れがある上、構造が紐状であるため、点播には不向きである。
【0011】
上記問題に加えて、上記特許文献1〜3に記載のテープ、シート、紐状構造物はいずれも、肥料を含んでいないため、施肥された土壌表面に敷設されるあるいはこれらを播種した後に追肥する必要がある。しかしながら、このような場合には、根は土中の肥料と接触して、根やけして根が腐ってしまうという問題が生じる。
【0012】
したがって、本発明は、上記諸問題を解決するものであり、田植機等の大型機械を用いずに、少ない労力で、種子、特に稲種子を圃場に直播する、特に乾田直播するのに適した直播用パックを提供することを目的とする。
【0013】
本発明の他の目的は、鳥、貝などによる食害を受けずに種子、特に稲種子を圃場に直播できる直播用パックを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、種子の発芽・出根を阻害せずに、播種と同時に施肥することができる種の直播用パック、特に稲種子の直播用パックを提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、種子の発芽・出根を阻害せずに、追肥の回数を減らすまたはなくすことのできる種の直播用パック、特に稲種子の直播用パックを提供することである。
【0016】
本発明のさらなる他の目的は、除草作業が容易である直播用パックを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、容易に製造できる直播用パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、生分解性材料に着目して上記諸目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、生分解性材料から不織布を作製し、この生分解性不織布で種籾(稲種子)をパックしたものを本田に乾田直播すると、生分解性不織布が土壌中の微生物の作用により籾の発育(発芽及び出根)を阻害しない速度で、素早く分解・崩壊でき、分解後の不織布は土に還り、稲の発育に役立つ要素となること、および種子は発芽・出根前は不織布に内包されているので、本田に播種された後も、鳥や貝などに食べられることはないことを見出した。上記生分解性不織布は、不織布表面には細かい無数の穴が開いているため微生物と接する面積が大きく、生分解性フィルムに比して高い分解速度を示し、不織布は出芽や出根を阻害しない速度で分解・崩壊すると同時に不織布表面に開いた無数の穴から出芽・出根できるため、図4に示されるように、出芽・出根方向が強制的に変更されることなく、芽は太陽にむかってまっすぐ伸びかつ根は地中深くはることができるため、植物は倒れることなくかつ十分な収穫量が期待できる。また、種子と肥料を仕切りを介して別のコンパートメントに詰めることによって、追肥の回数を減らしてまたはなくして省力化がさらに進みかつ肥料は根と接触することがないため、根やけを起すことがないことをも知得した。上記知見に加えて、直播用パックを生分解性不織布のみから形成しているため、その製造工程は非常に簡便であり、大量生産にも好適である。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、上記諸目的は、生分解性不織布からなり、種子を内包したコンパートメントを有する直播用パックによって達成される。この際、種子のコンパートメントと同一のあるいは異なるコンパートメントに肥料を内包させることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、生分解性不織布で種子を内包するコンパートメントを有する直播用パック、特に乾田直播用パックに関するものである。本発明によると、生分解性不織布で種子を内包してあるので、種子を、点播状、条播状及び散播状いずれの様式でも直播することが可能であり、水稲の育苗工程を省略することが可能であり、また、水稲の移植作業前に、種蒔きができ、作業をうまく分散でき、農作業にかかる労力を有意に軽減できる上、田植機等の大型機械を用いる必要がない。特に従来の直播用のテープ、シート、紐状構造物では非常に困難であった点播にも好適に使用できる。また、種子を内包するコンパートメントを定間隔で配置することによって、比較的面積の大きい圃場であっても田植機等の農業機械などを用いずとも、またはこのような農業機械が使用できないような狭い農地であっても、容易にかつ均一に播種することができ、農作業の省力化をも達成できる。加えて、種子は生分解性不織布に内包されており、かつこの不織布は種子の生長に合わせて分解・崩壊するため、播種が土壌表面付近で行なわれても、播種直後は種子は不織布内にあるので、鳥は不織布にさえぎられて種子を食べることができず、種子が発芽・出根する時期には、不織布が徐々に分解・崩壊して、芽や根の生長を妨げない。加えて、種子が生分解性不織布で内包されているので、保温/保湿効果(特に保温効果)が確保でき、これにより発芽率及び出芽が向上するため、収穫量の向上が期待でき、また、生産される米や野菜の食味も劣ることがないという利点に加えて、余分な種をパックする必要がなく、適量播種が可能であり、このため間引き作業が不要となり農作業の省力化をさらに進めることができる。また、本発明のパックは生分解性フィルムに比して高い分解速度を有する生分解性不織布で作製されるため、出芽や出根を阻害しない速度で分解・崩壊しかつ出芽・出根方向にかかわらず不織布表面に開いた無数の穴から出芽・出根が可能であるため、出芽・出根方向が強制的に変更されることなく、また、パックに内包された種子は同時期にほぼ同じ速度で成長するので、安定した出芽が達成できるため、出芽高さもほぼ一定となり、収穫を管理しやすく、十分な収穫量が期待できる。上記利点に加えて、本発明の直播用パックは生分解性不織布のみから形成しているため、その製造工程は非常に簡便であり、大量生産にも好適であり、経済的に非常に望ましい。
【0021】
本発明の直播用パックは、乾田直播のみならず、湛水直播にも適用できる。特に乾田直播に適用した場合には、根が水を求めて土中で垂直方向に伸び、茎も上方向に力強く生長するため、病気や倒伏を有効に防止できる。また、種子は十分な容積を有する空間内で生長するため、平面的に分散でき、種子同士が重なりあったり、発芽に必要な酸素が不足したりする恐れが非常に少ないあるいはそのような恐れがない。特に本発明のパックがテープ状である場合には、種子を内包したものを定間隔で配置することによって、点播にも十分対応することができる。また、本発明のパックが種子に加えて肥料をも内包する場合には、播種と施肥を同時に行なえるため、追肥を行なう回数を減らすまたはなくすことができる。この際、肥料と種子とを別のコンパートメントに内包する場合には、不織布分解と同時に肥料は分解し始め根と接触することがなく、根やけの心配がないので、肥料の種類や施肥場所を考慮する必要がない。また、肥料と種子とを同一のコンパートメントに内包する場合には、肥料が種子の根元付近に存在するため、出根後、すぐに根が肥料を吸収できるため、利用率が高く、施肥の量や回数を減らすことができると同時に、作物の生育状況に合わせて肥料を溶出パターンどおりに吸収させることができる。加えて、本発明のパックがシート状である場合には、播種とマルチングが同時に行なえるため、特に雑草による被害の大きい稲種子の発芽から稚苗期における除草作業がかなり軽減でき、また、除草剤の使用量も顕著に減らすことができ、経済的にも有利である。さらに、本発明のパックがテープ状あるいはシート状である場合には、ロールにより当該パックを貯蔵できるため、貯蔵場所が狭くてよく、また、貯蔵も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明は、生分解性不織布からなり、種子を内包したコンパートメントを有する直播用パックを提供するものである。本発明の直播用パック(以下、単に「パック」とも称する)は、テープ状、シート状等の所望の形態に加工した生分解性不織布で種子を内包することによって、種子を、点播状、条播状及び散播状いずれの様式で直播することも可能である。また、種子を内包するコンパートメントを定間隔で配置することにより、比較的面積の大きい圃場であっても田植機等の農業機械などを用いずとも、またはこのような農業機械が使用できないような狭い農地であっても、容易にかつ均一に播種することができ、農作業の省力化も達成できる。また、種子は生分解性不織布に内包されており、かつこの不織布は比較的早い分解速度を示すため、種子の生長に合わせて分解・崩壊するため、播種が土壌表面付近で行なわれる場合であっても、鳥、虫や貝による食害に会う可能性は非常に低い;芽や根の生長は妨げられない;保温/保湿効果(特に保温効果)が得られるので、発芽率及び出芽が向上し、適量播種が可能であるため、このため間引き作業が不要であり、農作業の省力化が進められる;安定した出芽が達成できるため、出芽高さもほぼ一定となり、収穫を管理しやすいなどの利点が得られる。また、根は老化した根毛細胞をつくりかえ、古い細胞などを分泌しており、これらの分泌物は微生物の格好のエサとなるため、植物の根の周り(根圏)には数多くの微生物が存在している。このため、一旦根が崩壊した生分解性不織布から出ると、根圏に微生物が多数存在するようになるため、この部分の不織布の微生物による分解・崩壊はさらに促進され、出根がよりスムーズに行なわれる。特に、本発明のパックは、表面に無数の細孔のある不織布で形成されているため、不織布の分解・崩壊が不十分な場合であっても、出芽・出根方向に必ず穴が存在することとなる。このため、本発明のパックを使用すれば、出芽・出根方向が強制的に変更されることなく、順調な成長で十分な収穫量が期待できる。
【0024】
これに対して、生分解性樹脂をフィルム状に成形して、この生分解性フィルムに細密目、細目、並目(φ1〜φ4mm位)の孔径で、穴を開けたものに稲種子を内包させたパックの場合には、これを土壌に播いて発芽及びパックよりの出芽、出根をみてみると、発芽方向にフィルムの穴がある場合には、芽はまっすぐに上垂直方向に伸び順調に出芽、生育して、芽の生長に歩調を合わせるように根の生育も活発となる反面、発芽方向にフィルムの穴がないと、斜めに出芽して、順調な稲の生長が望めないことが分かった(例えば、図5参照)。この現象は、根についても同様のことがいえ、出根方向にフィルムの穴がないと、垂直方向に根が伸びず、浅い土壌部分に根を張るため、稲が倒伏し易い状態となる。上記現象に加えて、出芽あるいは出根方向と穴とが合致しない場合には、芽や根はフィルムを破ってパック(フィルム)外に出ることができず、パック内で小さく固まったような状態となり、そのままパックの中で朽ちてしまうことが多い(例えば、図6参照)。生分解性フィルムに適宜穴を開けたものに種子を入れて土壌に播いた場合の稲の穂粒の状態は、出芽・出根方向に穴がある場合とない場合で大きさはあまり変わらないが、数は出芽・出根方向に穴がない場合の方が1/3〜1/2近く少なくなってしまい、収穫量に差がでてしまい、全体の収穫量も低下してしまう。これに対して、本発明のパックは、生分解性不織布の表面に細かい無数の穴があいているため、パックよりの種籾の順調な発芽及び出芽、出根が可能である。
【0025】
また、本発明のパックによると、生分解性不織布表面に無数の穴があるため、種子に対して、十分な通気性、通水性、吸水性、浸水性などが供給でき、かつ各々の種子に対する通気性、浸水性(含水性)などが均一に供給できるため、安定した発芽となり、稲の出芽、苗立ちが勢い良く揃い安定した収穫時期を迎えることができる。これに対して、生分解性フィルムの表面に穴を明けたもので種子を内包すると、フィルム表面の穴位置、または種子の位置により種子各々に対する通気性、浸水性(含水性)などが異なり、発芽の時間ずれが生じる。よって、稲の出芽、苗立ちが不揃いとなり、収穫に悪影響となる。
【0026】
また、パック内での種子の配置(種子との密着性)についても、本発明によるように不織布製パック内に種子(種籾)を配置する場合には、生分解性不織布表面には、無数の起毛があり、種籾表面の細かい起毛とうまく絡み合い、生分解性不織布パック内に種籾が複数個(例えば、4粒)あってもその分散状態にて維持することが可能であるが、生分解性フィルムに種籾をパックすると、種籾表面には細かい起毛があるが、フィルム表面(内表面)は起毛性が全くない平滑面であるため、種籾がパック投入時分散状態にあっても、パック内に団粒状態となってしまう。
【0027】
本発明のパックを湛水土壌に使用する場合には、生分解性不織布表面には、細かい無数の穴があり、通気性、通水性、吸水性、浸水性などがある程度得られるため、空気溜まりができにくく、また、生分解性不織布表面には、無数の起毛があるため、種籾表面の起毛と絡み合い、種子パック内に水が入って来て空気溜まりができたとしても、種籾は、パック内に固着することができる。このため、本発明のパックを湛水土壌に使用しても、種子とパック(不織布)との密着性を損なうことが非常に少なく、また、種子の出芽・出根時には、パック内に水が入り、空気溜まりができたとしても、土壌との密着性を損うことが少ない。これに対して、種籾を生分解性フィルム表面に穴を明けたものでパックし、土壌に敷設、湛水土壌とすると、フィルム表面に穴があっても、種子パック内に空気溜まりができやすい。このように空気溜まりができてしまうと、生分解性フィルムには、吸水性が無く、通気性、通水性もあまり得られないため、パック全体が土壌より浮き上がりの状態となり、種子と土壌との密着性(根の活着性)が非常に悪くなる(例えば、図7参照)。また、生分解性フィルムを用いた種子パックでは、中に水が入ってきて、空気溜まりができてしまうと、種子が出芽、出根状態であっても、パック内に固着できず、移動状態となり、種子が1ヶ所に集まり、稲の生育に悪影響を与える。
【0028】
次に、出芽及び出根による生分解性種子パックのフクレ原因を鑑みると、生分解性不織布で種子を内包すると、不織布表面には細かい無数の穴があり、種籾の発芽及び出芽・出根を阻害することが非常に少なくなる。よって、発芽及び出芽、出根の影響によるパックのフクレが少ない。なお、発芽時の鞘葉(子葉)の影響でパックに若干フクレが生じる場合があるが、パック表面の無数の穴より順調に出芽、出根でき、根の土壌との活着性が良いので、パック内に空気溜まりなど、フクレ状態となったとしても、不織布表面の無数の起毛と種籾が絡み付くので、種子の固着性が良く、パックよりの出芽、出根が順調で、根の活着性も良い。したがって、本発明のパックを用いれば、出芽方向が横向きとなったり、種籾の位置が変わったりすることが殆んどない。これに対して、種籾を生分解性フィルム表面に穴を開けたもので内包し、土壌に敷設すると、水の影響による空気溜まりのフクレの他、発芽及び出芽がフィルム表面の穴と一致しない場合があり、種子パックのフクレ原因となる。また、出芽がフィルムの穴と一致した場合であっても、鞘葉(子葉)の影響により種子パックのフクレ原因ともなる(例えば、図8参照)。また、種子パックより発芽及び出芽したものの、フィルム表面の穴(フィルム下面)より出根できず、この根のパック内生長によりパックのフクレ原因となる場合も多く、種子パック自体、土壌との密着性が悪くなり、パック内の他の種子が発芽及び出芽、出根状態であっても、種子と土壌との密着性が悪くなる。上記に加えて、パックが種子の発芽及び出芽、出根によるフクレ状態で、水の影響などにより、パック内の種子が固着できず、出芽方向が横向きとなり、出根がパック上面となる場合もある(例えば、図9参照)。
【0029】
さらにまた、肥料をパックする場合には、本発明によるように生分解性不織布により種子をパックすると、不織布表面には、細かい無数の穴があり、通気性、通水性、吸水性、浸水性が容易に得られるので、肥料の分解がパックされた各部分で順調に起こり、土壌全体に安定して肥料が溶け出すことが可能であり、ゆえに、多数の植物栽培も、種子と同時に肥料を敷設しても、種子(植物)の生育に合わせ、肥料からの養分供給ができるので、安定した生育、収穫ができる。これに対して、生分解性フィルムで肥料をパックして、土壌に敷設すると、まずフィルムの分解が始まり、そのフィルムの腐食部分の穴よりパック内に、空気、水などが浸入して、これにより肥料の分解が起こり始め、パック外に養分として溶け出るが、このような状況では、種子と肥料を各々別にパックし、同時に敷設すると種子(植物)の生育に合うように肥料からの養分供給ができない。この問題を解決するために、生分解性フィルム表面に穴を開け、種子(植物)の生育に合うように肥料の分解が始まるようにすることも考えられるが、パック内に空気及び水などの浸入、放出(肥料分解時に出るガスの放出)が均一とならないため、肥料の分解も予定どおり進行しない。このため、肥料をパックした各部分によって肥料の分解が異なって起こるので、多数の植物栽培を行なう場合、順調な肥料、養分の供給ができず、安定した植物の生育、収穫とならない。
【0030】
本発明の直播用パックは、湛水直播のみならず、乾田直播にも適用できる。このため、根が水を求めて土中で垂直方向に伸び、茎も丈夫で力強く生長するため、病気や倒伏を有効に防止でき、収穫量の向上をも達成できる。種子は十分な容積を有する自由な空間に固着され、内包されているため、種子は平面的に分散し、種子同士が重なりあったりせず、種子の発芽や出根が阻害されない。また、本発明のパックは表面に多数の細孔のあいた不織布からなるため、通気用の穴を別途開ける必要がなく、そのままの状態で発芽に必要な酸素が十分供給できる。特に本発明のパックがテープ状である場合には、パックは、条播や点播に好適に使用できるばかりでなく、種子を内包したものを個々に分けることにより、散播にも十分対応することができる。また、本発明のパックがシート状である場合には、播種とマルチングが同時に行なえるため、特に雑草による被害の大きい稲種子の発芽から稚苗期における除草作業がかなり軽減でき、また、除草剤の使用量も顕著に減らすことができる。本発明のパックが種子に加えて肥料をも内包する場合には、播種と施肥を同時に行なえるため、追肥を行なう回数を減らすまたはなくすことができる。この際、肥料と種子とを別のコンパートメントに内包する場合には、どのような肥料を使用しても、生分解性パック分解と同時に肥料は分解し始め根と接触することがないため、根やけを起すことがない。また、肥料と種子とを同一のコンパートメントに内包する場合には、肥料が種子の根元付近に存在するため、出根後、すぐに根が肥料を吸収できるため、利用率が高く、施肥の量や回数を減らすことができると同時に、作物の生育状況に合わせて肥料を溶出パターンどおりに吸収させることができる。加えて、本発明のパックがテープ状あるいはシート状である場合には、ロールにより当該パックを貯蔵できるため、貯蔵場所が狭くてよく、また、貯蔵も容易である。
【0031】
本発明の直播用パックは、様々の種子の直播に使用でき、その播種様式は、点播状、条播状または散播状のいずれの様式を問わず、種子の種類や営農の規模などに応じて適宜選択できる。本発明の直播用パックが適用できる種子としては、稲種子、野菜種子または花種子などいずれの種でもよく、特に制限されない。具体的には、稲種子(種籾);キャベツ、コールラビ、ネギ、タマネギ、ニラ、チンゲンサイ、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、シソ、パセリ、モロヘイヤなどの葉菜類の種子;メロン、キュウリ、スイカ、カボチャ、ズッキーニ、トマト、ピーマン、シシトウ、なす、オクラ、スイートコーン、長れいし等の果菜類の種子;ダイコン、ハツカダイコン、ニンジン、カブ、ゴボウ等の根菜類の種子;インゲン、エダマメ、エンドウ、スナックエンドウ、ソラマメ等の豆類の種子などが挙げられる。これらのうち、稲種子(種籾)が特に好ましい。特に稲種子の場合には、発芽促進のために種子表面を、過酸化カルシウムを原料としてカルパー剤(酸素発生剤)などでコーティングしてもよい。
【0032】
また、本発明の直播用パックの形状は、特に制限されず、上記播種様式に基づいて、テープ状、シート状、紐状、球状、略球状、カプセル状、数珠状など適宜選択できるが、播種のし易さ、パックの成形のし易さなどを考慮すると、テープ状、シート状が特に好ましい。このようにテープ状やシート状をとる場合には、種子を内包したコンパートメント定間隔に配置することによって、一度の作業で大量の種子を容易にかつ均一に圃場に播くことができ、また、ロール状にまとめておくことができるため、播種するまでパックを貯蔵するのに必要な場所を大きくとる必要はなく、また、貯蔵も簡単であるからである。また、パックがテープ状またはシート状である場合には、仕切り部を切断するなどにより種子を内包したコンパートメントを個々に分けてもよく、このような場合には、パックは、点播や散播にも十分対応することができる。また、パックがシート状である場合には、シートで土壌を浅い位置で覆うことによって、播種とマルチングが同時に行なった状態になり、特に雑草による被害の大きい稲種子等の種子の発芽から稚苗期における除草作業がかなり軽減でき、また、除草剤の使用量も顕著に減らすことができ、経済的に有利である。なお、テープやシートの大きさ(幅や長さ)は、播種様式や種を播く圃場の大きさによって適宜決定される。また、テープやシートを構成する生分解性不織布の厚みは、特に制限されないが、生分解性などを考慮すると、目付けが、10〜50g/m、より好ましくは10〜20g/mであるような厚みである。なお、本発明において、テープやシートは、エンボス加工などにより、表面に凹凸のあるものであってもよい。このような構造を有するパックは、凸部によりテープやシートの強度を確保したまま、凹部の薄い部分は生分解性速度が速くでき、当該部分では種子の発芽や出根がより妨げられにくくなるため、好ましい。
【0033】
本発明の直播用パックは、種子を内包するコンパートメントに分かれている。なお、本明細書において、「コンパートメント」は、種子(または以下に詳述するように、肥料や他の添加剤など)を内包するための個々の空間を意味する。図1に、テープ状である本発明の直播用パックの一実施態様を示す。図1に示されるように、本発明の直播用パック1は、種子2を内包するコンパートメントA、および以下に詳述する肥料3を内包するコンパートメントBを有し、当該コンパートメントA,Bは、仕切部4を介して互い違いに配置されている。また、各コンパートメントから種子や肥料がこぼれないように、パック1の周囲は、シール部5によって密閉されている。また、図2に、シート状である本発明の直播用パックの他の実施態様を示す。図2に示されるように、本発明の直播用パック1は、1段目には、種子2を内包するコンパートメントA及び速効性の肥料3’を内包するコンパートメントB’が仕切部4を介して互い違いに配置され、2段目には、種子2を内包するコンパートメントA及び遅効性の肥料3”を内包するコンパートメントB”が仕切部4を介して互い違いに配置され、この1,2段目が繰り返し配置されている。なお、図1、2では、肥料を内包するコンパートメントBが示されているが、コンパートメントBは必ずしも本発明では必須ではなく、図1,2で示される直播用パックは、種子を内包するコンパートメントAからのみからなるものであってもよい。また、上記図1及び2においては、仕切部4が各コンパートメントを互いに完全に分離する形態が示されているが、仕切部が各コンパートメントを完全に分離する必要はなく、コンパートメント同士で通気できるような構造を有する仕切部であってもよい。このような構造としては、例えば、仕切部が不完全に融着されている、仕切部に穴が設けられている、仕切部がメッシュ状になっているなどがある。この際、開孔部は、大きさなど特に制限されないが、種子や肥料等の他の添加剤が隣のコンパートメントに移らない程度の大きさであることが好ましい。同様にして、シール部5もまたコンパートメントを完全に密封する形態でなくともよく、通気できるような構造を有するものであってもよい。このような構造としては、例えば、シール部が不完全に融着されている、シール部に穴が設けられている、シール部がメッシュ状になっているなどがある。この際、開孔部は、種子がパックからこぼれない程度の大きさであることが好ましい。
【0034】
本発明において、コンパートメントの配置形態は、特に制限されず、不均一にまたは定間隔でのいずれでもよいが、均一に播種できるように、定間隔で配置されることが好ましい。また、コンパートメントの大きさは、特に制限されず、種子の大きさや入れる数、播種様式などに応じて適宜選択できるが、播種が均一に行なえると同時に、種子が平面的に分散して、種子同士の重なり合いを防ぎ、稲の発芽や出根が阻害されないような大きさであることが好ましい。例えば、稲種子を4粒入れる場合のコンパートメントの大きさは、3.0〜10.0cm×3.0〜12.5cm、より好ましくは3.5〜8.0cm×3.5〜10.0cm、さらにより好ましくは4.0〜6.0cm×4.5〜7.0cm、最も好ましくは約4.0cm×約5.0cmであることが好ましい。なお、上記コンパートメントの大きさは以下のシール部や仕切部の厚みを含むものである。この際、コンパートメントの大きさが大きすぎると、種子が十分平面的に分散できるが、一定長さ当たりのコンパートメントの数が少なくなり、十分な収穫量が確保できず、経済的に好ましくない場合がある。逆に、コンパートメントの大きさが小さすぎると、種子が十分平面的に分散できず、一部重なり合い、種子の発芽や出根が阻害される可能性がある。なお、各コンパートメントの大きさは、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、加工性などを考慮すると、好ましくは同一である。本発明において、シール部の幅は、特に制限されず、コンパートメントの大きさ、テープやシートの大きさなどによって、適宜選択される。例えば、2〜15mm、より好ましくは4〜12mm、さらにより好ましくは6〜10mm、最も好ましくは約8mmである。仕切部の幅は、特に制限されず、コンパートメントの大きさ、テープやシートの大きさなどによって、適宜選択される。例えば、4〜30mm、より好ましくは8〜24mm、さらにより好ましくは12〜20mm、最も好ましくは約16mmである。
【0035】
また、コンパートメントに入れる種子の数もまた、特に制限されず、種子の種類や土壌の状態などによって適宜選択される。例えば、稲種子以外の種子の場合には、1〜7粒、より好ましくは1〜5粒、最も好ましくは1〜3粒、特に1粒または2粒程度が好ましい。稲種子の場合には、1つのコンパートメント内に1〜8粒であり、より好ましくは2〜6粒、最も好ましくは2〜4粒である。従来、稲種子は、一箇所に5〜6粒播く場合が多いが、これでは米の味を決定するタンパク質含有量が増加して、生産される米の食味も劣る場合がある。これに対して、本発明のパックを用いると、高い発芽率及び出芽が達成できるので、2〜4粒の播種量であっても十分な稲の生育及び収穫量が達成でき、また、播種量を少なく抑えることができるため、米の味を決定するタンパク質含有量を減らすことができ、ゆえに生産される米は食味の良いものとなる。なお、各コンパートメントに入れる種の数は、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、収穫の管理や充填作業性などを考慮すると、好ましくは同一である。
【0036】
本発明において、種子呼吸のための通気穴を設けることも可能であるが、パックは表面に多数の細孔のある不織布で形成されるので、通常の通気性、通水性、吸水性、浸水性などは確保できるため、フィルム形態の場合と異なり、種子を内包するコンパートメントAに、種子呼吸のための通気穴を設ける必要は必ずしもない。種子がこの細孔を通して発芽・出根するため、苗の倒伏をも防ぐことができる。
【0037】
本発明において、種子を内包するコンパートメントAには、図3に示されるように、不織布由来の多数の細孔6が表面に開いている。このため、この細孔6を通して、種子は十分呼吸できる。このようにコンパートメントA表面に細孔6が開いているため、本発明のパックを土中に埋めると、土中の微生物は不織布表面のみならず細孔内にまで入り込むため、生分解が非常に効率よく起こる。また、種子はこの細孔6を通して発芽・出根するため、苗の倒伏をも有効に防止できる。
【0038】
また、本発明の直播用パックは、図1、2に示されるように、肥料をさらに内包するコンパートメントを有するものであってもよい。肥料をさらに内包したコンパートメントを配置することによって、播種と施肥とが同時に行なえるため、追肥を行なう回数を減らすまたはなくすことができ、また、不耕起直播(特に不耕起乾田直播)にも適用できるからである。特に本発明のパックを不耕起乾田栽培に使用すると、土壌を耕さないため、農作業の省力化がさらに促進できると同時に、肥料が根の近くにあるため、肥料の溶出に合わせて根が肥料を吸収できるため、肥料の利用率が向上でき、また、土壌を耕していないので、土が硬く、根はその土中にしっかりと伸びることができるため、根張りが良く、茎も太くかつ丈夫に成長でき、倒伏が少なく、また病害虫に強く、品質、食味の良い米が生産できる。この際、肥料は、種子を内包するコンパートメントと同一のあるいは異なるコンパートメントに内包されていてもよい。前者の場合には、根が肥料と接触しても根やけを起さないように肥料が特殊にコーティングされているものを使用することが好ましい。この際、肥料は、一般的な肥料を根やけを起さないような材料で予めコーティングしたものを使用してもあるいは種子(植物)の生育に合わせ長期間養分を供給できる市販品を使用してもよい。種子が稲種子である場合の市販品としては、湛水直播用の肥料では、例えば、チッソ旭肥料(株)製の苗箱まかせなどが挙げられ、また、乾田直播用の肥料では、例えば、朝日工業(株)製のBMコート、マイルドコート、チッソ旭肥料(株)製のLPコート、片倉チッカリン(株)製のシグマコートなどが挙げられる。また、肥料と種子とを別のコンパートメントに内包する場合には、肥料の種類にかかわらず、生分解性不織布分解と同時に肥料は分解し始め、根と接触することがないため、根やけを起すことがない。このような場合に使用できる肥料は、特に制限されず、公知の肥料が使用される種子の種類に応じて適宜選択でき、また、肥料の形状も、顆粒状、粉末状、ペースト状、液状など、いずれの形状であってもよい。また、追肥の回数を減らして、さらに省力化を進めるために、速効性の肥料と遅効性の肥料を、同一のコンパートメントあるいは異なるコンパートメントに内包することが好ましい。なお、肥料をコンパートメントに内包する量は、特に制限されず、種子の種類や土壌の状態などによって異なり、公知の量と同等の量が適用でき、適宜選択できる。また、肥料を内包するコンパートメントの大きさは、十分量の肥料を内包できかつ不織布分解すると同時にあるいはそれ以降に肥料が根と接触しないような大きさであれば特に制限されない。例えば、種子と肥料とを同一のコンパートメントに入れる場合の肥料のコンパートメントの大きさは、特に制限されず、上記と同様の大きさが適用できる。また、種子と肥料とを別のコンパートメントに入れる場合の肥料のコンパートメントの大きさもまた、特に制限されず、上記と同様の大きさが適用できる。この際、種子と肥料とを別のコンパートメントに入れる場合には、製造工程の簡略化などを考慮して、種子と肥料を内包するコンパートメントの大きさは同じであることがより好ましい。肥料を内包する量、肥料のコンパートメントの大きさは、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、充填作業性や加工性などを考慮すると、好ましくは同一である。
【0039】
本発明において、種子及び肥料が別のコンパートメントに内包される場合の、種子を内包するコンパートメント及び肥料を内包するコンパートメントの配置の仕方は、出根後に、根が十分量の肥料を吸収できるような配置であれば特に制限されない。例えば、パックがテープ状である場合には、(a)図1に示されるように、種子のコンパートメントと肥料のコンパートメントを互い違いに配置する方法;(b)種子のコンパートメント、速効性の肥料のコンパートメント、遅効性の肥料のコンパートメントを繰り返し配置する方法;(c)種子のコンパートメント、種子のコンパートメント、肥料のコンパートメントを繰り返し配置する方法などが挙げられる。これらのうち、種子のコンパートメントと肥料のコンパートメントを互い違いに配置する方法が好ましい。また、パックがシート状である場合には、(d)上記(a)〜(c)のいずれかを組み合わせる方法;(e)図2に示されるように、1段目には、種子を内包するコンパートメント及び速効性の肥料を内包するコンパートメントを互い違いに配置し、2段目には、種子を内包するコンパートメント及び遅効性の肥料を内包するコンパートメントを互い違いに配置し、この1,2段目を1セットとしてこのセットを繰り返し配置する方法などがある。
【0040】
なお、上記説明では、肥料を内包するコンパートメントについて説明してきたが、本発明の直播用パックは、このようなコンパートメントに代えてあるいはこのようなコンパートメントに加えて、他の添加剤を内包したコンパートメントをさらに有するものであってもよい。この際、他の添加剤としては、除草剤、雑草防除剤、病害虫駆除(防除)剤、殺菌剤、抗菌剤、防黴剤等が挙げられる。このような添加剤を内包するコンパートメントをさらにパックに設けることによって、生育した植物が菌、黴、虫により病気になることが防止できる、除草作業を軽減することができるなどの効果が達成できる。
【0041】
本発明において使用できる生分解性不織布は、生分解性を有していれば特に制限されないが、土壌と接触すると、微生物の作用により好気性および/または嫌気性条件下で速やかに分解し始める;分解後の不織布断片が地下水や河川等に流れ出しても容易に分解する;および土中に不織布断片が残っても、農作業や環境に悪影響を及ぼさないなどの特性を有することが好ましい。種子の生育(発芽や出根)を阻害しないような速度で、分解・崩壊し、分解後は土に還り、稲の発育に役立つ用途となるものがより好ましい。このため、本発明に用いる生分解性不織布は、下記特性の少なくとも一を満たすことが好ましい。
【0042】
(1)15日での好気性条件下での相対生分解率が30%以上である;
(2)28日での好気性条件下での相対生分解率が50%以上である;及び
(3)120日での嫌気性条件下での相対生分解率が50%以上である。
【0043】
本明細書において、「好気性条件下での相対生分解率」とは、化審法の生分解性試験(MITI法)で試験した際に、標準対象物質であるアニリンの所定時間における生分解率を100としたときの好気性条件下での相対生分解率を意味する。この好気性条件下での相対生分解率は、15日で、30%以上、より好ましくは40%以上、特に好ましくは50%以上であることが好ましい。または、28日での好気性条件下での相対生分解率が、50%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上であることが好ましい。また、「嫌気性条件下での相対生分解率」は、ASTM D.5511−94の試験法で試験した際に、標準対象物質であるセルロースの120日における生分解率を100としたときの相対生分解率を意味する。この嫌気性条件下での相対生分解率が、50%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上あることが好ましい。この際、好気性/嫌気性条件下での相対生分解率が上記範囲内であれば、好気性及び嫌気性条件下双方の条件下で、土中で速やかに不織布は分解・崩壊して、種子の発芽や出根を阻害することがない。このため、これらのような優れた生分解率を有する不織布からなるパックは、従来と同様の播種時期に使用しても、種子の発芽や出根前に少なくとも崩壊し始めるので、種子の発芽・出根を阻害することがなく、従来と同様の種子の直播に同様にして適用できる。なお、好気性および/または嫌気性条件下での相対生分解率が上記下限を下回る場合であっても、種子の発芽や出根時期に合わせて、従来の播種時期より早い時期に、直播することによって、十分適用可能である。このような場合には、いわゆる農閑期に、種子を播種することができるため、従来、野菜の育苗や収穫、果樹の摘花・受粉などの作業時期が水稲の育苗・移植の時期と重なり、非常に過酷になっていた農作業を軽減することができる。稲種子などの、従来であれば農繁期に他の野菜などの種子と同時期に播種しなければならない種子に対して、特に好適に使用できる。
【0044】
また、本発明において使用できる生分解性不織布は、表面に無数の細孔が開いているため、フィルム状のものに比して、生分解速度が速い。このため、一般的に、微生物の活動が悪くなるあるいは停止状態になり、生分解が急激に遅延すると考えられる気温20℃以下という低温条件下であっても、優れた生分解速度を発揮できる。これは、上述したように、生分解性不織布は、表面に無数の細孔が開いているため、細孔を通して微生物を密に接し、微生物による作用を表面全体に受け易いためであると考えられる。
【0045】
上記したような特性を有する本発明による生分解性不織布を構成する生分解性樹脂の好ましい例としては、ポリヒドロキシブチレート/バリレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエステルカーボネート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン及びポリ(2−オキセタノン)、デンプン、変性デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチン及び天然ゴム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール及びポリリンゴ酸などが挙げられる。また、上記例示に加えて、優れた加工性や経済性を有し、大量に入手できるなどを考慮すると、他の脂肪族ポリエステルもまた本発明による不織布を構成する生分解性樹脂として好ましく、更に好ましくは、炭素数2〜6の脂肪族ジカルボン酸成分と炭素数2〜4の脂肪族グリコール成分から得られる脂肪族ポリエステルが使用される。これらの脂肪族ポリエステルは、生分解性を有するものであれば特に制限されず、公知の脂肪族ポリエステルが使用できるが、好ましい例としては、特開平7−252354号及び特開平9−71641号公報などに開示されたものなどが挙げられる。これらのうち、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペートが好ましい。また、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペートがより好ましい。これらの樹脂は、好気性及び嫌気性双方の条件下での生分解性速度が速く、また、活性汚泥中でも良好な生分解性を示すためである。また、水によっては分解・崩壊せず、微生物の作用によって分解・崩壊し始めるため、土中に埋設した場合に初めて分解が始まるため好ましい。ポリエチレンサクシネートが特に好ましい。また、生分解性樹脂と、デンプン、変性デンプン、セルロース、キチン、キトサン、グルテン、ゼラチン、ゼイン、大豆タンパク、コラーゲン、ケラチンなどの天然物とのブレンド物もまた、本発明では特に好適に使用される。上記生分解性樹脂は、使用する種子の種類や種子の播種時期などの諸条件を考慮して望ましい生分解速度に応じて適宜選択できる。例えば、生分解速度の速いパックを目的とする場合には、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペートが特に好ましい。また、ポリエチレンサクシネートおよび/またはポリエチレンサクシネート/アジペートと、天然物との配合比は、十分な生分解性を発揮できるものであれば特に制限されないが、ポリエチレンサクシネートおよび/またはポリエチレンサクシネート/アジペート100質量部に対して、好ましくは1〜900質量部、より好ましくは20〜300質量部である。また、これらのうち、生分解速度のやや速いパックを目的とする場合には、ポリブチレンサクシネート/アジペートが特に好ましく;生分解速度のやや遅いパックを目的とする場合には、ポリブチレンサクシネートが特に好ましく;生分解速度の遅いパックを目的とする場合には、ポリ乳酸が特に好ましい。なお、上記生分解性樹脂は脂肪族ポリエステルであるため、混合(配合)が非常に容易であり、本発明による不織布の製造が簡便でありうる。
【0046】
または、本発明による生分解性不織布を構成する生分解性樹脂は、市販品を使用してもよい。このような市販品としては、例えば、昭和高分子社製の商品名ビオノーレ、三菱化学社製の商品名GS−Pla、日本合成化学工業社製の商品名マタービー、島津製作所社製の商品名ラクティ、三菱ガス化学社製の商品名ユーペック、カーギルダウ社製の商品名ネーチャーワークス、三井化学社製の商品名レイシア、ダイセル化学工業社製の商品名セルグリーン及び商品名プラセル(PCL)、モンサント社製の商品名バイオポール、BASF社製の商品名エコフレックス、デュポン社製の商品名バイオマックス、イーストマンケミカル社製の商品名イースターバイオ、日本触媒社製の商品名ルナーレ、チッソ社製の商品名ノボン、三菱ガス化学社製の商品名ビオグリーン、カネボウ合繊社製の商品名ラクトロン、大日本インキ化学工業社製の商品名プラメート及び商品名CPLA、東洋紡績社製の商品名バイオエコール、トヨタ自動車社製の商品名トヨタエコプラ、ダウ社製の商品名TONE、Ire Chemical社製の商品名Enpol、クラレ社製の商品名ポパール、日本合成化学工業社製の商品名ゴーセノール、アイセロ化学社製の商品名ドロンVA、帝人社製の商品名セルロースアセテート、アイセロ化学社製の商品名ドロン、Novamont社製の商品名Mater−Bi、日本食品化工社製の商品名プラコーン、日本コーンスターチ社製の商品名エバーコーンなどが挙げられる。なお、これらの生分解性樹脂は、単独で使用して生分解性不織布を製造してもあるいは2種類以上ブレンドしたものを用いて生分解性不織布を製造してもよい。
【0047】
本発明において、生分解性樹脂の分子量は、特に制限されないが、上記した好ましい特性を満たすものが好ましい。具体的には、生分解性樹脂の数平均分子量が、30,000〜3,000,000、より好ましくは50,000〜200,000、特に好ましくは60,000〜100,000である。この際、数平均分子量が30,000より小さい場合は、樹脂成形体を作製した場合に得られる不織布の強度が不十分となる場合がある。逆に、3,000,000より大きい場合には、不織布への加工性が不十分となることがある。本明細書において、「数平均分子量」は、下記条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で測定された値である。
【0048】
<測定条件>
移動層:クロロホルム
流量:0.6ml/分
温度:40℃
検出器:RI(屈折計)
本発明の直播用のパックに使用される生分解性不織布の製造方法は、特に制限されず、一般的な樹脂から不織布を製造するのに使用される方法と同様の方法を使用することができる。具体的には、生分解性樹脂繊維とパルプを製紙の方式で不織布に加工する湿式不織布製造方法;生分解性樹脂繊維ウエブを接着剤で結合させるケミカルボンド法、自己接着または接着生分解性樹脂繊維で結合させるサーマルボンド法、エアとバインダーで生分解性樹脂パルプを接着させるエアレイ法などを用いた、乾式不織布製造方法;生分解性樹脂繊維を高圧水流で絡み合わせ、機械的に結合させるスパンレース法を用いた不織布製造方法;生分解性樹脂繊維を紡糸直結により、主に自己接着で結合させるスパンボンド法を用いた不織布製造方法;ノーバインディングの超極細生分解性樹脂繊維をメルトブロー法により不織布とする方法;生分解性樹脂ウエブを特殊針でニードリングして交絡させるニードルパンチ法を用いた不織布製造方法;生分解性樹脂ウエブがほぐれないように糸の形態で縫い込むスティッチボンド法を用いた不織布製造方法などの、公知の方法または上記公知の方法を適宜修飾して単独であるいは組合わせて適用することによって同様にして製造できる。
【0049】
本発明の直播用パックの製造方法は、特に制限されず、上記方法により製造された生分解性不織布を用いて、公知の方法を同様にして使用できる。例えば、本発明の直播用パックがテープ状である場合には、(ア)上記したような生分解性樹脂不織布をチューブ状に成形して、このチューブ状の不織布の底をシールし、これに所定数/量の種子/肥料を充填した後、ヒートシールやインパルスシール等により封シールし、この工程を繰り返す方法;(イ)上記したような生分解性不織布を、所定の幅の倍の幅を有するようにカットし、この不織布を二つ折にし、所定の間隔をあけてヒートシールやインパルスシール等により縦シールして上部のみが開放している袋状物としながら、この袋状物に所定数/量の種子/肥料を充填した後、ヒートシールやインパルスシール等により横シールし、この工程を繰り返す方法などの方法が使用できる。また、上記方法では、生分解性樹脂のみを溶融したが、これに加えて、顔料や染料等の着色剤、除草剤、雑草防除剤、害虫忌避剤、抗菌剤、防黴剤、耐熱剤、耐候剤、キレート化剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、安定化剤、充填剤、強化材、難燃剤、可塑剤、界面活性剤、相溶化剤、アンチブロッキング剤などの添加剤を生分解性樹脂に一緒に混入してもよい。特に、土壌と同じ色にして鳥による食害を防ぐという観点から、生分解性不織布が土壌から露出しても目立たないように茶色の着色剤を生分解性樹脂に混入しておくことが好ましい。また、このように、本発明のパックを土壌と同じような色に着色しておくと、光の吸収により、種子に対する保温効果が得られるため、生分解性不織布の通気性、通水性、吸水性、浸水性と共に、様々な種子に対して、安定した発芽及び100%近い発芽率が達成できる。または、特にカラスによる食害を防ぐためには、赤色の生分解性樹脂に混入しておくこともまた有効である。上記に加えてまたは上記に代えて、除草作業や害虫の除去にかかる労力を軽減するという観点から、除草剤、雑草防除剤、害虫忌避剤、抗菌剤、防黴剤などから選ばれる少なくとも1種の添加材料を混入しておくこともまた好ましい。この際、添加材料の添加量は、特に制限されず、所望の効果を達成するのに十分な量が使用される。
【0050】
上記したようにして得られる本発明の直播用パックの使用方法は、特に制限されず、公知の直播方法と同様にして使用できる。以下、稲種子を用いた場合の、テープ状である本発明の直播パックの使用方法の好ましい一実施態様を、簡単に説明する。すなわち、施肥され、耕耘・代掻された乾田に、幅6〜8cm、深さ2〜3cm程度の溝を掘り、手押車のような簡単な播種(敷種)機を用いて、この溝に本発明のパックを溝中に敷設して、この上に覆土する。すると、コンパートメント内の種子の生長に合わせて不織布が分解・崩壊していくため、種を鳥に食べられることがなく、また、不織布が種子の発芽・出根を阻害することもない。また、上記したように、乾田に播種した場合には、根が水を求めて、土中に深く伸び、また、茎も丈夫に生長するため、倒伏の心配がない。さらに、種子を内包するコンパートメントを定間隔で配置した場合は、パックを単に溝に敷設するという簡単な作業によって、均一に播種することができる。なお、パックが肥料を内包したコンパートメントを有する場合には、上記したように予め施肥しておく必要が必ずしもない。または、本発明の直播用パックは、耕運機や田植え機などを用いて播種する場合には、アタッチメント/アダプターなどを用いることにより、やはり簡単に播種(敷種)することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を、実施例を参照しながらより詳細に説明する。
【0052】
実施例1
ポリエチレンサクシネート(数平均分子量:78000)、ポリエチレンサクシネート/アジペート(数平均分子量:65000)、ポリブチレンサクシネート(数平均分子量:80000)、及びポリブチレンサクシネート/アジペート(数平均分子量:82000)のペレットを、それぞれ、粉砕し、100メッシュで篩分けして、粉末試料をそれぞれ作製した。この粉末試料を、メルトブローによって、不織布(厚み:目付け 30g/m)とした。この際、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート、及びポリブチレンサクシネート/アジペートの不織布試料を、それぞれ、PES、PES/A、PBS、及びPBS/Aと称する。
【0053】
上記各不織布試料[大きさ:5cm×10cm、0.15g]を地上より5cmの深さ(地中温度:11.5℃〜19.5℃)に、一般の屋外土壌中に埋設した。22日後、上記各不織布試料を取り出し、その重さ(W(g))を秤量し、その生分解率(%)[=(0.15−W)/0.15×100]を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0054】
【表1】


【0055】
表1から示されるように、ポリエチレンサクシネートおよびポリエチレンサクシネート/アジペートからなる不織布が、60〜90%の生分解率を示し最も早い分解速度を示した。
【0056】
実施例2
ポリエチレンサクシネート(数平均分子量:78000)のペレットを粉砕し、100メッシュで篩分けして、粉末試料をそれぞれ作製した。この粉末試料をメルトブローによって、不織布(厚み:目付け 30g/m)とした。次に、このようにして得られた不織布を、ヒートシーラーを用いて、所定の大きさ(3.5cm×4.5cm)のパックにした。
【0057】
比較例1
ポリエチレンサクシネート(数平均分子量:78000)のペレットを用いて、ダイリップ径150mm、リップギャップ2mmのLDPE用インフレーション成形機にてフィルム形成を行なった。この際、成形温度は150℃、ブローアップ比は1.9で、厚み25μmのフィルムを得た。次に、このようにして得られたフィルムを、ヒートシーラーを用いて、所定の大きさ(3.5cm×4.5cm)の比較用パックにした。
【0058】
実施例3
実施例2で製造したパック(大きさ:3.5cm×4.5cm)と、比較例1で製造した比較パック(大きさ:3.5cm×4.5cm)を、それぞれ用意した。この際、比較例1で製造した比較パックには、パンチを用いて直径約3.0mmの穴を約5mm間隔で穴をあけた。
【0059】
これらのパックに、種籾を4個ずつ入れて、上部をヒートシールでシールした。次に、これを、土壌の入ったポットに、深さが約2cmになるように、播種した。なお、本実験は、各パックについて、6連で行なった。これらのポットを、土が乾かない程度に水をやりながら、野外に置き、種子の発芽及び出芽状況を観察した。
【0060】
その結果、実施例2のパックは、図10に示されるように、種籾4粒すべてについて、発芽及び出芽が順調であり、出芽4本がすべて元気であり、かつその高さ(生育速度)が揃った状態でまっすぐに生長しており、また、根もしっかりと張っていることが分かる。これに対して、比較パックでは、図11に示されるように、種籾4粒との順調に発芽しているものの、出芽がフィルムの穴と一致しないものが多く、このような場合では、芽は光に向かって伸びるため、斜め方向に曲がった状態で生長しているものがかなり見受けられた。また、種籾の生育状態も、元気の良さが感じられず、根もしっかりと張っていないものが多く見受けられた。
【0061】
以上の結果から、本発明のパックを使用することによって、出芽及び出根が穴の位置によって左右されず、自由に出芽及び出根できるため、生育が順調で、出芽の高さもほぼ一様に揃い、根もまっすぐに地中へ長く伸びることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のパックは、様々な種子、特に稲種子を圃場に直播する、特に乾田直播するのに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】テープ状である本発明の直播用パックの好ましい一実施態様を示す概略図である。
【図2】シート状である本発明の直播用パックの好ましい他の実施態様を示す概略図である。
【図3】本発明の直播用パックの断面図である。
【図4】本発明の直播用パックから種子が光に向かって出芽した様子を示す写真である。
【図5】フィルム状の直播用パックから出芽した様子を示す写真である。
【図6】フィルム状の直播用パック内に芽や根が出芽、出根できず留まっている様子を示す写真である。
【図7】フィルム状の直播用パックが土壌より浮き上がりの状態になっている様子を示す写真である。
【図8】鞘葉(子葉)が種子パックのフクレの原因となる部分の写真である。
【図9】フィルム状の直播用パック内の種子が固着できず、出芽方向が横向きとなり、出根がパック上面となる様子を示す写真である。
【図10】実施例3において、本発明のパックを用いた場合の種籾の発芽・出芽状態を示す写真である。
【図11】実施例3において、比較対照としてのパックを用いた場合の種籾の発芽・出芽状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0064】
1…直播用パック、
2…種子、
3…肥料、
3’…速効性の肥料、
3”…遅効性の肥料、
4…仕切部、
5…シール部、
6…細孔、
A…種子を内包するコンパートメント、
B,B’,B”…肥料を内包するコンパートメント。
【出願人】 【識別番号】506142668
【氏名又は名称】黒住 福夫
【識別番号】506142680
【氏名又は名称】升水 輝雄
【出願日】 平成18年4月25日(2006.4.25)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄

【識別番号】100110995
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰男

【識別番号】100114649
【弁理士】
【氏名又は名称】宇谷 勝幸

【識別番号】100129126
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 健

【識別番号】100130971
【弁理士】
【氏名又は名称】都祭 正則

【識別番号】100134348
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 俊弘


【公開番号】 特開2007−289061(P2007−289061A)
【公開日】 平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願番号】 特願2006−120390(P2006−120390)