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【発明の名称】 移植機
【発明者】 【氏名】木色 健太

【要約】 【課題】植付作業機の軽量化や小型化が図れるだけでなく、フロートによるスペースの圧迫を解消し、整地装置などのレイアウトを容易にする。

【解決手段】走行機体1の後部に昇降自在に連結され、圃場に苗を植付ける植付作業機7と、該植付作業機7の前部に設けられ、苗植付位置の前方で整地を行う整地装置16とを備える乗用田植機において、整地装置16の後部に、植付作業機7の植付深さ変化に応じて上下回動するリヤカバー25を設けると共に、リヤカバー25の回動角を検出するリヤカバーセンサ25を設け、該リヤカバーセンサ25の検出値に基づいて植付作業機7を自動的に昇降制御することにより、植付作業機7の植付深さ(対地高さ)を一定に保つ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に昇降自在に連結され、圃場に苗を植付ける植付作業機と、該植付作業機の前部に設けられ、苗植付位置の前方で整地を行う整地装置とを備える移植機であって、
前記整地装置の後部に上下回動自在に設けられ、植付作業機の植付深さ変化に応じて上下回動するカバー体と、該カバー体の回動角に基づいて植付作業機の植付深さを検出する植付深さ検出手段と、該植付深さ検出手段の検出深さに基づいて植付作業機を昇降制御する植付深さ制御手段とを備えることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記植付深さ検出手段は、整地装置の後部に左右方向に並んで複数設けられるカバー体のうち、中央に位置するカバー体の回動角に基づいて植付作業機の植付深さを検出することを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
前記整地装置の後部に左右方向に並んで複数設けられるカバー体のうち、左右両端に位置するカバー体の回動角に基づいて植付作業機の左右傾斜を検出する傾斜検出手段と、該傾斜検出手段の検出傾斜に基づいて植付作業機を水平制御する水平制御手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の移植機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機などの移植機に関し、特に、植付作業機の前部に整地装置を備える移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用田植機などの移植機は、圃場に苗を植付ける植付作業機の下部に上下揺動自在なフロートを備えており、該フロートの浮沈に基づいて植付深さを検出すると共に、検出した植付深さに基づいて植付作業機を昇降制御することにより、苗の植付深さを自動的に調整している。
【0003】
また、植付作業機の前部に整地ロータなどの整地装置を備える移植機も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような移植機では、植付けと同時に整地ができるので、植付精度や作業効率の向上を図ることができ、特に、機体旋回によって田面が荒れやすい枕地では、整地装置による整地効果が顕著であり、植付精度を大幅に改善することができる。
【特許文献1】特開2004−65111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような移植機では、フロートや整地装置によって植付作業機の重量が増大するので、移植機全体の重量アップを招来するという問題がある。
また、植付作業機の前部に整地装置を設ける場合、フロートとの干渉を避ける必要があるので、スペースの圧迫が生じ、レイアウトが制限されるという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、走行機体の後部に昇降自在に連結され、圃場に苗を植付ける植付作業機と、該植付作業機の前部に設けられ、苗植付位置の前方で整地を行う整地装置とを備える移植機であって、前記整地装置の後部に上下回動自在に設けられ、植付作業機の植付深さ変化に応じて上下回動するカバー体と、該カバー体の回動角に基づいて植付作業機の植付深さを検出する植付深さ検出手段と、該植付深さ検出手段の検出深さに基づいて植付作業機を昇降制御する植付深さ制御手段とを備えることを特徴とする。このようにすると、フロートによる植付深さ検出が不要になるので、フロートを省くことができる。これにより、植付作業機の軽量化や小型化が図れるだけでなく、フロートによるスペースの圧迫を解消し、整地装置などのレイアウトが容易になる。
また、前記植付深さ検出手段は、整地装置の後部に左右方向に並んで複数設けられるカバー体のうち、中央に位置するカバー体の回動角に基づいて植付作業機の植付深さを検出することを特徴とする。このようにすると、植付作業機の左右傾斜に起因する検出誤差が排除されるので、植付深さを高精度で検出することができる。また、カバー体を複数に分割すると、カバー体の間から泥水流を適度に逃がすことができるので、一体型カバーを用いた場合のごとく、カバー体が発生させる泥水流によって既植の苗が倒される不都合も回避できる。
また、前記整地装置の後部に左右方向に並んで複数設けられるカバー体のうち、左右両端に位置するカバー体の回動角に基づいて植付作業機の左右傾斜を検出する傾斜検出手段と、該傾斜検出手段の検出傾斜に基づいて植付作業機を水平制御する水平制御手段とを備えることを特徴とする。このようにすると、植付作業機の左右傾斜を精度良く検出できるだけでなく、植付作業機を水平に保ち、植付精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は乗用田植機の走行機体であって、該走行機体1は、機体前部に搭載されるエンジン(図示せず)、エンジン動力を変速するトランスミッション(図示せず)、トランスミッションから出力される走行動力を左右の前輪2に伝動するフロントアクスルケース(図示せず)、トランスミッションから出力される走行動力を左右の後輪3に伝動するリヤアクスルケース4、機体上に設けられる運転席5などを備えて構成されている。
【0007】
走行機体1の後部には、昇降リンク機構6を介して植付作業機7が昇降自在に連結されている。走行機体1と昇降リンク機構6との間には、昇降シリンダ8が介設されており、該昇降シリンダ8の伸縮に応じて植付作業機7の昇降動作が行われる。また、図2に示すように、植付作業機7は、ローリング支軸9を支点としてローリング(左右傾斜)自在となっており、昇降リンク機構6と植付作業機7との間に介設される水平制御モータ10の駆動に応じて植付作業機7のローリング動作が行われる。
【0008】
植付作業機7は、昇降リンク機構6の後端部にローリング自在に連結される作業機フレーム11、その上方に傾斜姿勢で設けられる苗載台12、作業機フレーム11から後方に延出する複数の植付伝動ケース13、各植付伝動ケース13の後端部に設けられる植付機構14などを備えて構成されており、伝動軸15を介してトランスミッションから入力した植付動力によって、苗載台12の横送り動作、植付機構14の苗植付動作などを行う。苗を植付ける圃場は、予め代掻き作業が行われており、平坦化された田面に対して植付機構14が苗を植付けるが、植付作業機7は、走行機体1の後方で植付作業を行う関係上、車輪跡などによる田面の荒れによって植付精度が低下する可能性がある。特に、機体旋回が行われる枕地は、車輪跡による田面の荒れが顕著であり、植付精度が低下しやすい箇所である。そこで、このような問題に対処するために、植付作業機7の前部には、整地装置16が設けられる。この整地装置16は、側面視における後輪3の後方位置で整地作業を行うことにより、車輪跡による田面の荒れなどを改善し、植付精度を高めることができ、特に、枕地において改善効果が顕著である。
【0009】
図3〜図5に示すように、整地装置16は、リヤアクスルケース4側から伝動軸17を介して動力を入力する入力ケース18、該入力ケース18から左右に延出するロータ軸19、該ロータ軸19に一体的に設けられる整地ロータ20、該整地ロータ20の上方を覆うロータカバー21、ロータ軸19を回転自在に軸支する左右一対の軸支部22、該軸支部22から上方に延出する左右一対のロータフレーム23などを備えて構成され、リヤアクスルケース4側から入力した動力で整地ロータ20を所定方向に回転させることにより、圃場の整地を行う。
【0010】
ロータカバー21の後端部には、植付深さ検知カバー(対地高さ検知カバー)及び均平カバーに兼用されるリヤカバー(カバー体)24が上下回動自在に設けられている。即ち、リヤカバー24は、先端側が田面に接地し、植付作業機7の植付深さ変化(対地高さ変化)に応じて上下回動するので、リヤカバー24の回動角検出により植付作業機7の植付深さや対地高さを検出することが可能になる。例えば、本実施形態では、ロータカバー21上にポテンショメータからなるリヤカバーセンサ(植付深さ検出手段)25を設けると共に、該リヤカバーセンサ25を、検知ロッド26及び検知アーム27を介してリヤカバー24に連結することにより、リヤカバー24の回動角を検出するようにしている。このようにすると、フロートによる従来の植付深さ検出を行うことなく、リヤカバーセンサ25の検出値に基づいて植付作業機7を自動的に昇降制御し、植付作業機7の植付深さを一定に維持することが可能になる。その結果、フロートを省いて植付作業機7の軽量化や小型化が図れるだけでなく、フロートによるスペースの圧迫を解消し、整地装置16などのレイアウトが容易になる。
【0011】
リヤカバー24は、図4に示すように、整地装置16の左右幅に亘って一枚で構成してもよいが、図5に示すように、左右方向に並ぶ複数のリヤカバー24L、24C、24Rに分割すると共に、各リヤカバー24L、24C、24R間に所定の間隙を確保することが好ましい。このようにすると、リヤカバー24L、24C、24Rの間から泥水流を適度に逃がすことができるので、リヤカバー24を一枚で構成した場合のごとく、リヤカバー24が発生させる泥水流によって既植の苗が倒される不都合を回避できる。また、左右方向に並ぶ複数のリヤカバー24L、24C、24Rのうち、中央に位置するリヤカバー24Cの回動角に基づいて植付作業機7の植付深さや対地高さを検出するするようにすれば、植付作業機7の左右傾斜に起因する検出誤差を可及的に排除し、植付深さを高精度で検出できる。
【0012】
また、左右方向に並ぶ複数のリヤカバー24L、24C、24Rのうち、中央に位置するリヤカバー24Cの回動角だけでなく、左右両端に位置するリヤカバー24L、24Rの回動角も検出することが好ましい。このようにすると、リヤカバー24L、24Rの回動角を検出するリヤカバーセンサ25L、25Rの検出値の差に基づいて植付作業機7の左右傾斜を検出できるだけでなく、検出傾斜に基づいて植付作業機7を水平制御することが可能になり、その結果、植付作業機7を水平に保ち、植付精度を向上させることができる。
【0013】
また、植付作業機7の左右両側部には、図6及び図7に示すような境界板28を設けることができる。境界板28は、前後を向く内外二枚の板材28a、28bを所定の間隔を存して並設して構成されており、内外の板材28a、28b間に泥水流の流路を形成し、泥水流を植付作業機7の後方にスムーズに導く。つまり、左右両端に位置するリヤカバー24L、24Rが発生させた泥水流が植付作業機7の幅を越えて左右外側方に流出することを外側板材28bで抑制しつつ、当該植付作業機7が植付けた苗に対する泥水流の流れ込みを内側板材28aで抑制する。これにより、植付けた苗が泥水流で倒される不都合を効果的に防止することができる。
【0014】
図8に示すように、走行機体1には、マイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM、I/Oなどを含む)を用いて構成される制御部29が設けられている。制御部29の入力側には、前述したリヤカバーセンサ25L、25C、25Rの他に、植付深さ設定ボリューム30や植付レバースイッチ31が接続されており、また、制御部29の出力側には、前述した水平制御モータ10の他に、昇降シリンダ用電磁切換バルブ32の上昇ソレノイド32aや下降ソレノイド32bが接続されている。そして、制御部29は、ROMに書き込まれたプログラムに従い、植付深さ制御(植付深さ制御手段)や水平制御(水平制御手段)を実行する。植付深さ制御は、植付深さ(対地高さ)を一定に維持すべく植付作業機7を自動的に昇降制御する制御機能であり、水平制御は、水平姿勢を目標姿勢として植付作業機7を自動的に傾斜制御する制御機能である。以下、植付深さ制御及び水平制御の具体的な制御内容について、図9〜図11に示すフローチャートを参照して説明する。
【0015】
図9に示すように、制御部29は、植付レバースイッチ31のON/OFFに基づいて植付作業中であるか否かを判断し(S101)、該判断結果がYESの場合は、植付深さ制御を実行すると共に(S102)、タイマがセットされているか否かを判断する(S103)。タイマがセットされていない場合は、左側リヤカバーセンサ25L及び右側リヤカバーセンサ25Rの出力が変化しているか否かを判断し(S104、S105)、両リヤカバーセンサ25L、25Rの出力が変化している場合は、タイマセットを行う(S106)。タイマセット状態では、所定時間の経過を判断し(S107)、該判断結果がYESのとき、水平制御を実行する(S108)。つまり、左側リヤカバーセンサ25L及び右側リヤカバーセンサ25Rの出力が変化してから所定時間後に水平制御を実行することにより、瞬間的な出力変化に応じた過剰な制御動作を回避し、水平制御の安定性を高めている。
【0016】
図10に示すように、植付深さ制御では、まず、中央リヤカバーセンサ25Cの検出値と植付深さ設定ボリューム30の設定値を比較し、両値が一致しているか否かを判断する(S201)。この判断結果がYESの場合は、植付作業機7の昇降を停止させるが(S202)、判断結果がNOの場合は、中央リヤカバーセンサ25Cの検出値が植付深さ設定ボリューム30の設定値よりも大きいか否かを判断する(S203)。そして、この判断結果がYESの場合は、植付作業機7を上昇させる一方(S204)、判断結果がNOの場合は、植付作業機7を下降させる(S205)。これにより、中央リヤカバーセンサ25Cの検出値と植付深さ設定ボリューム30の設定値とが一致するように植付作業機7を自動的に昇降制御し、植付作業機7の植付深さ(対地高さ)を一定に維持することが可能になる。
【0017】
図11に示すように、水平制御では、まず、左側リヤカバーセンサ25Lの検出値と、右側リヤカバーセンサ25Rの検出値との差を算出し(S301)、算出した検出値の差が通常目標範囲内(水平範囲内)か否かを判断する(S302)。この判断結果がNOの場合は、通常目標範囲から外れた度合を判断し(S303)、外れた度合が大きい場合は、範囲が大きい大目標値範囲を適用すると共に(S304)、モータ駆動速度を高速にするための大デューティ比を適用する(S305)。また、外れた度合が中程度の場合は、範囲が中程度の中目標値範囲を適用すると共に(S306)、モータ駆動速度を中速にするための中デューティ比を適用する(S307)。また、外れた度合が小さい場合は、範囲が小さい小目標値範囲を適用すると共に(S308)、モータ駆動速度を低速にするための小デューティ比を適用する(S309)。その後、サブルーチンのモータ駆動を実行し(S310)、左右リヤカバーセンサ25L、25Rの検出値を一致させるべく、水平制御モータ10を駆動させる。
【0018】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、走行機体1の後部に昇降自在に連結され、圃場に苗を植付ける植付作業機7と、該植付作業機7の前部に設けられ、苗植付位置の前方で整地を行う整地装置16とを備える乗用田植機において、整地装置16の後部に、植付作業機7の植付深さ変化に応じて上下回動するリヤカバー25を設けると共に、リヤカバー25の回動角を検出するリヤカバーセンサ25を設け、該リヤカバーセンサ25の検出値に基づいて植付作業機7を自動的に昇降制御することにより、植付作業機7の植付深さ(対地高さ)を一定に保つので、フロートによる植付深さ検出(対地高さ検出)が不要になる。その結果、フロートを省いて植付作業機7の軽量化や小型化が図れるだけでなく、フロートによるスペースの圧迫を解消し、整地装置16などのレイアウトが容易になる。
【0019】
また、整地装置16の後部に左右方向に並んで複数設けられるリヤカバー24L、24C、24Rのうち、中央に位置するリヤカバー24Cの回動角に基づいて植付作業機7の植付深さを検出するので、植付作業機7の左右傾斜に起因する検出誤差を排除し、植付深さを高精度で検出できる。また、リヤカバー24を複数に分割すると、リヤカバー24の間から泥水流を適度に逃がすことができるので、一体型カバーを用いた場合のごとく、リヤカバー24が発生させる泥水流によって既植の苗が倒される不都合も回避できる。
【0020】
また、整地装置16の後部に左右方向に並んで複数設けられるリヤカバー24のうち、左右両端に位置するリヤカバー24L、24Rの回動角に基づいて植付作業機7の左右傾斜を検出し、該検出傾斜に基づいて植付作業機7を水平制御するので、植付作業機7の左右傾斜を精度良く検出できるだけでなく、植付作業機7を水平に保ち、植付精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】乗用田植機の全体側面図である。
【図2】(A)、(B)はリヤカバーの作用を示す説明図である。
【図3】植付作業機及び整地装置の側面図である。
【図4】一体型リヤカバーを備える整地装置の平面図である。
【図5】分割型リヤカバーを備える整地装置の平面図である。
【図6】植付作業機に境界板を備える乗用田植機の全体側面図である。
【図7】境界板の作用を示す整地装置の平面図である。
【図8】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図9】制御部の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】植付深さ制御の制御手順を示すフローチャートである。
【図11】水平制御の制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1 走行機体
7 植付作業機
8 昇降シリンダ
10 水平制御モータ
16 整地装置
24 リヤカバー
25 リヤカバーセンサ
29 制御部
30 植付深さ設定ボリューム
【出願人】 【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
【出願日】 平成17年12月16日(2005.12.16)
【代理人】 【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫


【公開番号】 特開2007−159529(P2007−159529A)
【公開日】 平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願番号】 特願2005−363253(P2005−363253)