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【発明の名称】 作業車の作業機昇降制御装置
【発明者】 【氏名】太田 真史

【要約】 【課題】安価な機械的ポジション制御バルブを用いて、昇降に関わるシステムを簡便で自由度の高い作業車の作業機昇降制御装置として提供する。

【解決手段】ポジションレバー20に制御リンク機構を介してポジション制御バルブ90と連繋し、走行機体に支持された作業機14を、ポジションレバー20の操作位置に対応してポジション制御バルブ90を切り換えて油圧アクチュエータを作動して昇降自在に制御する作業車の作業機昇降制御装置において、前記作業機14の昇降高さを検出する手段と、耕深の設定手段、作業機の耕深を検出する手段と、ポジション制御バルブ90にリンクを介して連繋した正逆転可能なモータ95と、昇降操作手段に設けた昇降スイッチとを制御手段60と接続し、前記ポジションレバー20に連繋された制御リンクと、モータ95に連繋したリンクを独立して回動可能とし、モータ95により作業機の昇降制御及び耕深制御を可能に構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジションレバーに制御リンク機構を介してポジション制御バルブと連繋し、走行機体に支持された作業機を、前記ポジションレバーの操作位置に対応して前記ポジション制御バルブを切り換えて油圧アクチュエータを作動して昇降自在に制御する作業車の作業機昇降制御装置において、
前記作業機の昇降高さを検出する手段と、耕深を設定する手段、作業機の耕深を検出する手段と、ポジション制御バルブにリンクを介して連繋した正逆転可能なモータと、昇降操作手段に設けた昇降スイッチとを制御手段と接続し、
前記ポジションレバーに連繋された制御リンクと、モータに連繋したリンクを独立して回動可能とし、モータにより作業機の昇降制御及び耕深制御を可能に構成したことを特徴とする作業車の作業機昇降制御装置。
【請求項2】
前記モータとポジション制御バルブとの間には、制御モータの回転角度によって上昇または下降方向の制御流量を規制するカムを介装し、ポジション制御リンクの状態に関わり無く、作業機の昇降速度を制御することを特徴とした請求項1に記載の作業車の作業機昇降制御装置。
【請求項3】
電源を投入して制御システム起動後に、昇降操作がされていない場合には、作業機の昇降高さを検出し、その高さを保持するべく前記モータを駆動することを特徴とした請求項1に記載の作業車の作業機昇降制御装置。
【請求項4】
電源を投入して制御システム起動後に、昇降操作がされていない場合には、作業機の昇降高さを検出し、作業機が接地高さにあれば、耕深を一定に制御することを特徴とした請求項1または請求項3に記載の作業車の作業機昇降制御装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の農用作業車の昇降制御装置に関し、詳しくはポジションレバーまたはモータを用いて、機械的に動作するポジション制御バルブを制御して作業車の作業機を昇降制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポジション制御バルブを機械的なリンクを介してポジションレバーを操作することによって昇降可能とし、また、モータを駆動して同様の機械的なリンク機構をポジションレバー側と連係させて融通機構の範囲内で独立して昇降可能とする技術は、例えば、特許文献1に開示されており公知となっている。
また、ポジション設定器とポジション制御リンクを独立させて電動モータによりポジション制御リンクを動作させて昇降速度を最適なものにする技術も、例えば、特許文献2に開示されており公知となっている。
また、トラクタ等の農用作業車は、対地作業機のリヤカバーを感知体として利用し、耕深を一定に保つ制御を行っている。一般的に機械的なポジション制御バルブを用いてこの耕深制御を行う場合には、ポジション制御バルブとリヤカバーをワイヤ等で連繋し、機械的なリンクのフィードバックによって昇降させるようにしている。
【特許文献1】特開2005−87169号公報
【特許文献2】特公平6−57082号公報
【特許文献3】特公平7−28569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の技術によれば、このポジション制御バルブにはポジションレバー、モータの出力軸に連結された操作具(モータ操作具)、耕深制御系の3つのリンクが連繋されることになる。そのため、システムが複雑になり、メンテナンス性も悪く、経済的でない。また、3つの目的を1つのポジション制御バルブで行うため、その調整が困難である。バルブが持つ機械的特性に耕深制御と昇降位置制御が共に依存するため、耕深位置を良好なものにする特性を持つバルブを用いた場合には、作業者の操作による昇降速度が良好でない(またはその逆も有り得る)など、動作速度の調整が困難である。
これに対して、特許文献1などのように、ポジション制御リンクの片側方向に融通機構を持たせて一方向にはポジションレバーと連繋させ、融通機構を持った方向にはモータ操作具と連係させる方法がある。同文献にモータを用いて耕深制御もモータ操作具を用いて行う例が示されているが、現実には耕深の変動により発生する耕深偏差をポジション位置の偏差に変換することは困難である。すなわち、同様のポジション位置においても作業圃場の耕深は異なることがあるため、適切なフィードバックが行えないからである。つまり、リヤカバーより検知される耕深の偏差と、リフトアーム角度などから検知される昇降位置の偏差は対象が異なるものであり、どちらか一方を調整するべく製作されたリンクで双方を良好に制御することは不可能である。
また、特許文献2のように、機械的制御バルブはモータに連繋されるが、ポジションレバーに直接連繋されず、代わりに電気的なポジション設定器を設けている。この場合、機械的に連繋されたリンクによりポジション制御を行うことを放棄するものであって、この方式では電気的に昇降速度を調整することが可能になるなど電気制御による状況に応じた自由な仕様での動作が可能になる反面、メンテナンス性が優れ故障が少ない機械的リンクによる構造の利点が損なわれる。
この問題を解決するために、機械的に作動するポジション制御バルブの代わりに電磁比例制御弁などを用い、ポジションレバー位置、昇降切換SW、対地高さ等の検知装置を制御装置(コントローラ)に接続し、状況に応じた制御動作を行うという手段があるが、これはコストが増大するという課題がある。また、このようなシステムは機械的なリンク構造を持つポジション制御バルブに比べて故障時の対応(原因の究明と修理)が困難である。
機械的ポジション制御バルブを用いてシステムを簡略化するには、特許文献2の如くポジションレバーを電気的な入力要素に置き換えて、モータ操作具を用いた機構に昇降制御を統一するか、または特許文献1の実施例に記載されるような耕深の感知体であるリヤカバーの動きを電気的な信号に置き換えてモータ操作具の働きによる昇降で耕深に関する制御を行うことが一般に考えられる。
ただし、前者はメンテナンスが簡便で故障の少ない機械的なポジションレバーの利点を放棄するものである。また、ポジションレバーを電気的な信号に変換する装置が必要となり経済的ではない。また、後者は、作業機の昇降位置を定めることを目的としたリンクを用いて、リヤカバーの動作を収束させる制御を行おうとするものであり、システムに矛盾が生じる。つまり、もともとモータは昇降位置を定めた位置に停止させようとする目的をもったリンクであり、常に変動するリヤカバーから検知される耕深の変動に対して追従動作を行うには無用に複雑になっている。よって、その昇降の動作量、動作速度が不安定になりやすく、現実的には用いられない。
本発明は、斯かる上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは安価な機械的ポジション制御バルブを用いて、昇降に関わるシステムを簡便で自由度の高い作業車の作業機昇降制御装置として提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、ポジションレバーに制御リンク機構を介してポジション制御バルブと連繋し、走行機体に支持された作業機を、前記ポジションレバーの操作位置に対応して前記ポジション制御バルブを切り換えて油圧アクチュエータを作動して昇降自在に制御する作業車の作業機昇降制御装置において、
前記作業機の昇降高さを検出する手段と、耕深を設定する手段、作業機の耕深を検出する手段と、ポジション制御バルブにリンクを介して連繋した正逆転可能なモータと、昇降操作手段に設けた昇降スイッチとを制御手段と接続し、
前記ポジションレバーに連繋された制御リンクと、モータに連繋したリンクを独立して回動可能とし、モータにより作業機の昇降制御及び耕深制御を可能に構成したものである。
【0006】
請求項2においては、前記モータとポジション制御バルブとの間には、制御モータの回転角度によって上昇または下降方向の制御流量を規制するカムを介装し、ポジション制御リンクの状態に関わり無く、作業機の昇降速度を制御するものである。
【0007】
請求項3においては、電源を投入して制御システム起動後に、昇降操作がされていない場合には、作業機の昇降高さを検出し、その高さを保持するべく前記モータを駆動するものである。
【0008】
請求項4においては、電源を投入して制御システム起動後に、昇降操作がされていない場合には、作業機の昇降高さを検出し、作業機が接地高さにあれば、耕深を一定に制御するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、比較的安価なポジション制御バルブをポジションレバーと直接電動モータで駆動するべく構成することで、機械的な昇降操作と、電気的な昇降制御と耕深制御とを簡便なリンク構造で行うことができる。つまり、従来技術に比べてモータの出力軸に繋がるリンクと耕深制御にかかるリンクを2重に配置することなく構成することができるため、メンテナンス性が良く経済的である。また、部品点数の削減によって組立性も向上する。
また、耕深制御を行う際に、機械的なリンクとバルブの特性に依存することなく、状況に応じた特性で動作させることが出来、制御精度が向上する。さらに、電磁比例制御などを用いて昇降制御や耕深制御を行うものに比べて、制御が簡単で経済的である。
また、機械的なリンク構造でポジションレバーを用いて高さ設定ができる為、故障が少なく、故障時の対応(原因の究明と修理)が容易であり、万が一に電気系の故障が発生した時もポジションレバーによる最低限の操作が可能である。よって、特許文献2で示されるような従来技術に比べてシステムの信頼性が増し、メンテナンス性が向上する。
また、モータに連繋される制御用リンクは従来の如く昇降位置を決定する機械的なリンクとは切り離して設けられて直接ポジション制御バルブを作動させることから、昇降の動作スピードを適切なものにすることが可能となり、昇降位置制御、耕深制御の精度が向上する。よって特許文献1で示されるような従来技術などに比べて制御精度が向上する。
また、モータに関わる制御用リンクが従来の昇降位置を決定するリンクとは切り離して直接油圧流量に関わることから、安価な機械式の油圧バルブを用いて最適な下降速度特性を得ることができ、作業精度が向上する。また特許文献3に示されるような機械的な減速構造を省くことができ、組立調整を容易化するとともに経済的なシステムを供給できる。
また、モータに関わる制御用リンクと耕深制御に関わるリンクを同一リンクとしたことによって、組立が容易化し、部品点数の削減による経済的な効果がある。
【0011】
請求項2においては、カムを半月形孔を持つ回転カムとして構成したことにより、モータにより駆動したリンク角度とスプール伸縮位置をカム形状によって任意に設定することが可能なため、モータの動作速度、制御精度に合わせて昇降システムを構成することが可能となり、昇降制御機能の制御精度が向上する。
更に、半月形孔を持つ回転カムを用いたことにより、摩擦を受けるリンク同士が接触する部分が広範囲であるため、耐磨耗性が向上し製品寿命を高める。
【0012】
請求項3においては、制御システムが起動後、人為的な昇降操作がなされていない場合には、システムの起動時の昇降位置を保持することで周囲に損傷を及ぼすような動作を回避することができる。
【0013】
請求項4においては、システム起動時に昇降高さが、作業機の落下などが無い状態であると確認された場合に、耕深制御を行うことでシステム再起動時に目的の作業が行われないという不具合を回避し、オペレータにとって扱いやすく作業性の良いシステムを供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0015】
図1は本発明の一実施例に係るトラクタ1の全体的な構成を示した右側面図、図2はトラクタ1の制御系に関するブロック図、図3はトラクタ1における油圧回路図である。
【実施例1】
【0016】
先ず、図1、図2および図3を用いて本発明の農用作業車の一例であるトラクタの概略構成について説明する。
1はトラクタで、機体の前後部に夫々前輪2・2と後輪3・3とを備え、ミッションケース4の後上部には油圧シリンダケース5を固着して設けている。
該油圧シリンダケース5内には、単動式油圧シリンダ6が設けられており、油圧シリンダケース5の左右両側には該油圧シリンダ6の伸縮により回動するリフトアーム7・7を配置している。
【0017】
また、トップリンク10、ロワーリンク11・11からなる3点リンク機構12の後端部には、対地作業機の一例であるロータリ耕耘装置14がリフトアーム7・7にて昇降自在に連結されている。
したがって、上記単動式油圧シリンダ6を伸縮させることによって、リフトアーム7・7に連結されるロータリ耕耘装置14が上昇又は下降制御されることになる。
リフトアーム7・7とロワーリンク11・11との間にはリフトロッド15と傾倒シリンダ18が介装されている。
【0018】
また、傾倒シリンダ18は複動式とし、後述する制御弁の切換で伸縮され、ロータリ耕耘装置14をローリング方向(左右方向)に傾動させることが可能となり、ロータリ耕耘装置14の水平(姿勢)制御を行うことが可能となる。
また、17は本機と作業機の間の左右相対を検出する手段であり、トラクタ1とロータリ耕耘装置14との間の相対的回動量を検出するストロークセンサで構成して、具体的には直線式のポテンショメータで構成されている。
このストロークセンサ17は、上記傾倒シリンダ18の横側部に配設され、該傾倒シリンダ18の伸縮量を検出することによって、上記相対的回動量を検出するものである。
16は、本機の任意位置、例えば、油圧シリンダケース5の横側部に取り付けられた傾斜センサであって、トラクタ1の左右の傾斜角度(即ち対地角度)を検出する対地検出手段の一例である。
【0019】
また、片側のリフトアーム7の回動基部にはポテンショメータからなるリフト角度センサ23(図2参照)が設けられている。該リフト角度センサ23は回転型のポテンショメータにより、ロータリ耕耘装置(作業機)14の高さと3点リンク機構12の状態を検出するようにしている。
【0020】
<ロータリ耕耘装置14に関して>
ロータリ耕耘装置14について簡単に説明すると、ロータリ耕耘装置14は、耕耘爪を回動して耕耘する耕耘部34と、耕耘部34の上方を覆う耕耘カバー35と、耕耘カバー35の後部にリヤカバー36を上下回動自在に枢支している。該リヤカバー36の回動基部には、ミッションケース4の側面に配置された耕深センサ37側にリヤカバー36の回動を伝達するプッシュプルワイヤ38の一端が取り付けられている。そして図11に示す如く、耕深センサ37は、前述のプッシュプルワイヤ38の他端と連係するレバー108の回転角度を検知することにより、リヤカバー36の回動量すなわち、耕深量を検知している。
【0021】
次に油圧回路について図3を用いて説明する。
<ロータリ耕耘装置14の左右の傾動に関する油圧系統>
油圧ポンプ25から送り出された作動圧油は、分流弁26により一部は上述した水平制御用の傾倒シリンダ18側に送られ、他はトラクタ1の後部に連結可能な作業機(例えば、上述したロータリ耕耘装置14)を昇降するためのリフトアーム7・7に連結される単動式油圧シリンダ6側に送油可能としている。
ロータリ耕耘装置14の水平制御用の切換弁27は、3位置4ポート式の弁にて構成され、左側のソレノイド27aが励磁されると傾倒シリンダ18は伸長し、逆に右側のソレノイド27bが励磁されると短縮する。
前記切換弁27は、制御装置60(図2参照)からパルス信号を受信した場合に、ソレノイド27a又はソレノイド27bにパルス信号を流すことによって、制御される比例式電磁弁であって、電流値に比例するものである。
また、上記切換弁27は常態においては中立位置を保っており、傾斜センサ16によってトラクタ1の傾斜が検出された場合に、制御装置60は、ロータリ耕耘装置14を水平に維持すべく、上記何れかのソレノイド(27a・27b)を励磁することによって切換弁27を切り替える。
【0022】
制御系の構成としては、トラクタ1においてロータリ耕耘装置14の相対角度のローリング制御等を行うための制御手段の一例である制御装置60には、図2に示すように、トラクタ1の左右の傾斜角度の変化速度を計測する角速度センサ19を具備している。
その他、制御装置60には、トラクタ1の後部に取り付けられるロータリ耕耘装置14等の対地作業機の取り付け幅等の連結状態に応じて切り替えを設定するための設定手段の一例である取付切替スイッチ59、作業機の下降時に下降減速を開始するタイミングを決定する下降速度設定器56、対地作業機の昇降を簡便に行うための運転操作部に配置する昇降レバーの基部に設ける昇降スイッチとしての上昇スイッチ81および下降スイッチ82が接続されている。(以下、「スイッチ」を「SW」と記する)
更に、トラクタ1とロータリ耕耘装置14との相対角度やトラクタ1の傾斜角度を予め設定するための傾斜設定器52も接続されている。
また、上記取付切替SW59、傾斜設定器52、上昇SW81、下降SW82等は、トラクタ1の運転席近傍のダッシュボードやメータパネルに設けられても良い。
【0023】
また、制御装置60の入力側にはA/D変換器55が設けられており、該A/D変換器55を介して、モータ位置センサ85、傾斜設定器52、下降速度設定器56、耕深設定器51、リフト角度センサ23、ストロークセンサ17、傾斜センサ16、角速度センサ19、耕深センサ37等が制御装置60に接続されている。
なお、上記A/D変換器55を介さずに該制御装置60に接続されるものとしては、取付切替SW59、モードSW61、上昇SW81、下降SW82等がある。
また、上記制御装置60は、MPUやCPUやメモリや入出力装置等を備えるものである。
【0024】
<ポジションレバーリンクについて>
図4乃至図6に示す如く、油圧弁(ポジション制御バルブ)90が油圧シリンダ6を収納する油圧シリンダケース5近傍(本実施例では側面)に付設され、該油圧弁90は前後方向に伸縮動作可能とするスプール90aを具備しており、該スプール90aの一側が油圧弁90内に挿入されて油路を切換可能とし、他端にリンク機構を介して作業機14を昇降操作するポジションレバー20や昇降アクチュエータ(モータ95)と連結され、更に、フィードバックするためのリンク機構101を介してリフトアーム7に連結されている。
耕深はリヤカバー36の回動を検知してモータ95を作動させて油圧弁90を切り換える構成とし、後述するリンク動作に用いるモータ95と、モータ位置センサ85が制御装置60に接続される構成としている。
このスプール90aが後方に移動(短縮)したときにはリフトアーム7が下降方向に回動駆動され、また前方に伸長されたときにはリフトアーム7が上昇方向に油圧シリンダ6により回動駆動される。このスプール90aは油圧弁90に内蔵された図示しないバネの作用により、常時短縮方向に力が付勢されている。またスプール90aの先端にはトラクタ1の左右方向に貫通する孔90bが形成されており、この貫通孔90bに挿通したスプリングピン(第二リンク軸76)により後述する第一連動リンク91および第二連動リンク100を回動可能に枢支している。
尚、油圧弁90はスプール90aの短縮時または伸長時に、中立位置からの移動量が一定以内である場合は油圧シリンダ6に供給される油量が少なく、一定以上である場合は多く供給されるように製作されている。つまり、スプール90aの摺動量(切換位置)により作動油の流量が変更される構成としている。
【0025】
次に、図4乃至図6および図10を用いて、ポジションレバー20によってリフトアーム7を昇降回動する方法について説明をする。
図4乃至図6および図10に示す如く、油圧弁90の側面に取付プレート89が固設されて前方に突出され、該取付プレート89の上部に第一リンク軸75の一端が固定されている。そして、該第一リンク軸75上に前記ポジションレバー20が取り付けられるレバーアーム22中途部とモータ95に連繋される第二連動リンク100の上端が共通の軸心として回動自在に軸支されている。但し、レバーアーム22は第一リンク軸75上に外嵌した皿バネにより付勢されて、回動した位置を維持できるようにしている。前記レバーアーム22の下端には、枢支ピン22aが突設されており、該枢支ピン22aによって、第一連動リンク91の上部に形成したU字状の溝部を係合している。該第一連動リンク91の上下中途部が第二リンク軸76に枢支され、該連動リンク91の下部がリンクレバー92の上部に突設した枢支ピン92bに当接されている。
【0026】
また、前記リンクレバー92の上端部は、前記取付プレート89の略中央部に固定された第三リンク軸77(図10参照)を軸心として回動自在に枢支されており、該リンクレバー92の下端には第四リンク軸78を突設して第一リンクロッド93の前端を枢支している。一方、リフトアーム7の回動基部には軸支部7aが下方に突設されており、該軸支部7aにはピン孔7bが開口されている。そして、前記第一リンクロッド93後端に設けた枢支ピン93aの先端を前記ピン孔7bに挿入して回動自在に支持している。こうして、第一リンクロッド93の両端が各々回動自在に枢支されリンク機構101を構成している。このように構成することにより、第一リンクロッド93はリフトアーム7の上昇回動時には後方へ引っ張られ、反対にリフトアーム7の下降回動時には前方へ押されるようにしている。
【0027】
このような構成において、ポジションレバー20(即ちレバーアーム22)を図5の如く反時計回りに回動させた場合、即ち、上昇方向に回動すると、枢支ピン22aを介して第一連動リンク91を前方へ回動して、スプール90aをバネ力に抗して上昇側(前方)へ摺動させる。そして、このスプール90aの摺動により油圧弁であるポジション制御バルブ90が切り換えられてリフトアーム7が上昇回動して作業機14が持ち上げられる。このリフトアーム7の上昇回動に伴って、第一リンクロッド93が後方へ引っ張られ、リンクレバー92が後方へ回動され、該リンクレバー92に連結された第一連動リンク91も後方へ回動され、スプール90aが後方へ摺動され、油圧弁90が中立位置に切り換えられると、リフトアーム7の上昇回動が停止される。つまり、ポジションレバー20により設定した高さまでリフトアーム7は回動して停止されるのである。
また、図6に示す如く、ポジションレバー20(即ちレバーアーム22)を時計回り(下降側)に回動させた場合、第一連動リンク91が後方へ回動されて、該第一連動リンク91に連結されたスプール90aも後方へ摺動されて、油圧弁90が下降側に切り換えられる。
前記油圧弁90の切り換えによりリフトアーム7が、図5の如く、下降すると、第一リンクロッド93は前方に押され、リンクレバー92が前方へ回動され、第一連動リンク91も前方へ回動してスプール90aは中立側に摺動され、油圧弁90が中立位置となると、下降は停止され、ポジションレバー20により設定した高さで停止されるのである。
【0028】
<モータによる昇降動作について>
次に、図7乃至図9および図10を用いて、モータ動作による昇降の制御について説明する。
図7乃至図9に示す如く、第1リンク軸75軸上に第二連動リンク100の上部が回転自在に枢支されている。また、上下方向に配置した第二連動リンク100の上下略中央部には略長方形の孔100aが開口されており、該孔100aに前記油圧弁90のスプール90aに枢支される第2リンク軸76が挿通されている。孔100aは第2リンク軸76が前方向に所定量移動可能な大きさとしている。第二連動リンク100の下部はU字状の溝部を形成してモータアーム97の一端に固定されたピン97aを摺動可能に係合している。該モータアーム97は下端がモータ95の出力軸95a上に固設され、該出力軸95aを中心に上部が回転される。前記モータ95はミッションケース側面等油圧弁90の下方に配置されており、モータアーム97の回転角度はモータ95自体またはその近傍に設けた角度センサ等より構成したモータ位置センサ85により検知され、その出力信号は制御装置60に伝えられる。
このような構成において、モータアーム97を回動することにより前記スプール90aの前後位置を変更することができる。すなわち、モータアーム97の位置によって、第2リンク軸76を設けたスプール90aを長方形孔100aの端面により許容され、若しくは、規制されて上昇または下降方向に摺動させる。
まず、耕深設定器51により耕深を設定して、リヤカバー36の回動を耕深センサ37により検知して耕深制御を行う場合、ポジションレバー20は最下降位置に回動して、作業機14を下降させた状態では、図7の如く、スプール90aが中立状態にあり、リフトアーム7は停止した状態にある。昇降レバーを操作して上昇SW81がONされるとモータ95が駆動されてモータアーム97が、図8の如く時計方向に回転し、第2連動リンク100が反時計方向に回転すると、孔100aが前方に移動することによりスプール90aも前方まで移動する。その結果、油圧弁90が上昇側に切り換えられてリフトアーム7は上昇方向に動作する。逆に、昇降レバーの操作で下降SW82がONされると、図8から図9の如くモータ95が反時計方向に回転し、第2連動リンク100が時計方向に回転し、スプール90aはバネの付勢力により短縮し、第2リンク軸76は孔100a内の端面に規制されながら後方に移動する。その結果、油圧弁90が下降側に切り換えられてリフトアーム7は下降方向に回動する。
【0029】
<ポジションレバーリンクとモータリンクの関係について>
図4乃至図6に示す如く、ポジションレバー20に繋がるリンクは第一連動リンク91、第二連動リンク100の形状から、下降方向へのスプール90aの短縮を規制する。
すなわち、第一連動リンク91、第二連動リンク100は共に下降方向にスプール90aを規制し、上昇方向に伸長することを規制しない。つまり、作業機14の昇降はポジションレバー20にて設定した昇降高さを下限として、モータ95を動作させて昇降自在である。例えば、ポジションレバー20が最下降位置に設定されていれば、モータ95を駆動させて第二連動リンク100を回動すると、孔100aの後内面に当接した第2リンク軸76とともにスプール90aは自在に伸縮できる。ポジションレバー20が最上昇位置に設定されていれば、モータアーム97の位置が中立、または下降すべき位置にあろうとも第2連動リンク100の長方形孔100a中で第2リンク軸76が移動して、第二連動リンク100に接触することなく、作業機14は上昇位置となっている。
一般に、耕深制御を用いて耕耘作業を行う場合には前記ポジションレバー20は最下降位置に回動しておく。また、下降限界を設定する場合(土壌が軟弱でリヤカバーが耕耘圃場表面に安定しない場合には、耕耘深さの下限を設定する場合がある。)には、ポジションレバー20にて最下降位置を設定する。
これによって、ポジションレバー20により設定された最下降位置より上昇側の範囲において、昇降スイッチ、または、耕深設定値と耕深センサ値を制御装置60で比較演算して、モータ95を作動させてモータアーム97を回動して比較的安価なポジション制御バルブ90を切り換えて、耕深制御と昇降制御を行うことができる。また、モータアーム97を回動して直接スプール90aを伸縮させて位置を決定するため、従来のようなモータ95の駆動軸に繋がるリンクと耕深制御にかかるリンクを2重に配置することなく構成することができ、メンテナンス性が良く経済的である。さらに、部品点数の削減によって組立性も向上する。
また、ポジションレバー20に機械的リンク機構を介して油圧弁90を切り換える構成のため、故障が少なく、故障時の対応(原因の究明と修理)が容易であり、万が一に電気系の故障が発生した時もポジションレバー20による最低限の操作が可能である。
また、モータ95に関わる制御リンクが従来の昇降位置を決定する機械的なリンクとは切り離して直接油圧流量に関わることから、昇降の動作スピードを適切なものにすることが可能となり、昇降位置制御、耕深制御の精度が向上する。よって特許文献1で示されるような従来技術などに比べて制御精度が向上する。
また、モータ95に関わる制御リンクが従来の昇降位置を決定するリンクとは切り離して直接油圧流量に関わることから、安価な機械式の油圧弁90を用いて最適な下降速度特性を得ることができるため、作業精度が向上する。また特許文献3に記載されているような機械的な減速構造を省くことができ、組立調整を容易化するとともに経済的なシステムを供給できる。
また、モータ95に関わる制御リンクと耕深制御に関わるリンクを同じくしたことによって、組立が容易化し、部品点数の削減による経済的な効果がある。また、比例電磁弁等を用いたシステムに対しても同様に、部品点数を削減するとともに経済的な効果がある。
【0030】
<制御系が行う一連の処理>
図12及び図13は昇降制御処理の全体図、図14は作業機が接地状態か否かの判定処理のフロー図、図15は減速下降処理を解除するか否かの判定処理のフロー図、図16は減速下降のパラメータ演算処理のフロー図、図17はモータ出力処理のフロー図を示す。
本発明の昇降制御処理は「昇降位置(リフト角度位置)制御」、「下降減速制御」、「耕深制御」の3つの制御処理を選択して行う。
「昇降位置制御」は、目標の作業機昇降位置にリフトアーム7を動作させるために、リフト角度センサ23によってリフトアーム7の角度を検出してフィードバックし、所望の高さに昇降制御する処理である。
「下降減速制御」は、作業機14を下降SW82の操作によって下降させる時に、緩やかなスピードで下降させる処理である。作業機14が下降する際には、作業機14と地面と接触するショックが起こる。そのため、ロータリ作業機などはその回転によって車体が前に押し出されること(ダッシング現象)が発生したり、耕耘開始時に作業圃場面を荒らしてしまったり、作業車両を操作するオペレータに過大な衝撃を与えるなどの不具合が生じる。そのため、作業機14と地面が接触するショックを軽減する為に、この制御を行う。
「耕深制御」は耕深設定器51によって設定された一定の耕耘深さを維持するべく、耕深センサ37(図11)から検知される耕深が深くなれば作業機14を上昇させ、浅くなれば作業機14を下降させる制御である。
【0031】
図12及び図13のフロー図に示す通り、制御装置60は、電源がONされて制御システムが起動後に、スイッチやセンサ類の出力を読み込む(ステップS10)。次に最後に操作されたのが(直近の操作が)下降SW82であるか、上昇SW81であるか、またはいずれの操作もなされていないか、を判別し(ステップS20〜S40)、上昇SW81が最後に操作されていた場合は、後述の下降減速モードのカウントをリセットし(ステップS−31)、リフト角度の目標値を再上昇位置にセットする。その後、ステップS100において目標リフト角度と現在のリフト角度との偏差に応じて、適切な昇降の速度を決定するべくモータの目標位置を決定する。
下降SW82が最後に操作されていた場合には、まず耕深設定器51と耕深センサ37の情報から耕深制御を行う場合の偏差を演算する(ステップS−60)。その後、後述の下降減速の処理を行っているか否かの判定を行い(ステップS−70)、行っているならば下降減速の処理を判定するべくステップS90に処理を移行する。もし現在、下降減速処理を行っていないならば、下降SW82が新たにOFFからONに変化したか否かを判定し(ステップS−80)、変化したのならば下降減速モードの処理を開始する。下降SW82が新たにOFFからONに変化していないならば、耕深制御を行うべく、ステップS60にて演算された耕深偏差に基づいてモータ位置を決定する。
ここで、ステップS100およびステップS120にて行われる各偏差に応じてモータ位置を決定する方法について述べる。図18に目標の昇降位置または耕深位置に対するモータの目標位置の一例を示す。横軸が昇降偏差、縦軸が目標モータ位置である。モータ位置は上部に行くほど時計方向であり、下部に行くほど反時計方向である。中央のモータ位置が変化しない部分では、ポジション制御バルブ90が上昇側にも下降側にも作動油を供給しないスプール90a位置に対応するモータ95の回転位置である。変化しない範囲が実質上の偏差に対する不感帯範囲である。図18では説明を平易にするため一つのパターンのみ示すが、偏差が昇降位置より演算されるものと耕深より演算されるものと特性を変えても良い。また、耕深制御において耕深設定器51によって設定される目標耕深や耕深センサ37の変化速度など、条件に応じてこの特性を変化させて最適化することが可能である。これにより、機械的なリンクの特性に依存する耕深制御に比べて動作特性を自由に変更することができるため制御精度が向上する利点がある。
ステップS80にて下降SW82が新たにOFFからONに変化したと判定された場合は、下降減速モードの処理を行うことを決定し、下降減速にかかる時間のカウントを行うためカウンタtのカウントを開始する(ステップS−85)。
下降減速モードがセットされた状態ならば、次に下降減速モードを継続するか否かを判定する。下降減速モードの解除条件に該当する状態であるならば、下降減速モードを解除した後、ステップS120に処理を移行し耕深制御を行う。解除条件に該当しない場合は、ステップS110にて下降減速を行うためのモータ位置を演算する。
【0032】
ここで、下降減速モードを解除する処理(ステップS−90)と、下降減速を行うべくモータ位置を演算する(ステップS−110)方法について説明する。
図15にステップS90の処理の詳細を記す。耕深偏差が上昇方向にあるか(ステップS−91)、もしくはリフト角度が閾値L2より下降している位置である(ステップS−92)場合には下降減速モードを解除しカウンタtをリセットする。つまり、耕深偏差が上昇方向にある場合は、すでに作業機14は地面と接触してリヤカバー36が上昇方向に回動したことになるので、目標の耕深に達している。そのためこれ以上は作業機14を下降させる必要が無いため、下降減速モードを解除する。また、リフト角度が閾値L2よりも下降している位置は、リフト角度が機械的に下降する限界付近の位置に達した位置なので、すでに作業機14が地面と接地していると判断し、下降減速処理を行う必要は無いと判断して耕深制御を開始する。これらのいずれかの条件にも当てはまらない場合は下降減速処理を行うべくステップS110に処理を移行する。
図16に下降減速処理を行うための処理の詳細、図18に下降減速処理を行うための時系列的なパラメータ特性を示す。図19はカウンタtにて計測される経過時間おきにモータ95の回転位置を変化させる特性図である。図18において縦軸が目標モータ位置で、上部が時計回り方向、下部が反時計回り方向のモータ位置になる。また図19において一点鎖線部が油圧弁90が上昇側にも下降側にも作動油を供給しないスプール90a停止位置に対応するモータ95の回転位置である。tが少ない場合、すなわち下降動作の最初は油圧弁90が最大流量位置となるMの位置となるようにモータ95を動作させ、比較的早い速度で作業機14を下降させる。その後徐々にスプール90aを中立位置に近い流量の少ない位置に動作させることで作業機14の下降速度を減速する。下降速度の処理を開始したとき、リフト角度の位置が高い時と比較的リフト角度が低い時ではMおよびMの位置にモータ95を動作させる時間W1、W2などの適切な量は異なる。すなわち、作業機14が下降を開始して圃場面と接触する時間が異なるためである。また、下降速度設定器56による設定によってこれらのパラメータを変更し、作業を行うオペレータが任意に下降速度減速の状態を変更することも可能である。
よって、図16の如く、tのカウントを開始した時のリフト角度センサ位置に応じて下降時に速度が最大となるモータ位置Mの値を決定し(ステップS−111)、Mの位置を保持する時間W1と徐々に減速位置に移動する時間W2を下降速度設定器56の状態によって決定する(ステップS−112)。その後、それらのパラメータに応じて現在のカウントtによって目標モータ位置を決定する。ここでは説明の簡略化のために下降速度減速を開始した時のリフト角度によってMを、下降速度設定器56による設定に応じてW1、W2を決定することとしたが、リフト角度と下降速度設定器56双方を変数とした関数によってこれらのパラメータを算出してもよく、限定するものではない。また、下降時最大流量位置Mのパラメータを、下降減速モードが選択されたステップS85にて決定されても良い。これらの下降減速処理は本発明特有の処理であり、例えば特許文献1で示されるようにモータ操作具の位置がリフト角度位置と対応する連繋機構であるならば、モータ操作具の位置に応じた動作速度に調整することで下降減速を行うことができるが、本発明はモータ95の位置はポジション制御バルブ90のスプール位置を決定するものであるため、時系列的にポジション制御バルブ90のスプール位置を変更することで下降減速を実現するものである。これにより、作業機14が下降して地面と接触する際のショックを軽減することができる。
以上、上昇SW81、下降SW82が操作された場合の処理について述べたが、以下に、この制御システムが起動してから上昇SW81、下降SW82のどちらも操作されていない場合について述べる。作業機14が上昇している状態の場合、何らかの人為的な操作がなされず作業機14が昇降することがあったならば、事故に繋がる場合がある。車体の昇降制御システムに電源が投入された瞬間には、モータ95およびスプール90aの位置はどのような状態にあるか分からない。モータ95およびスプール90aが作業機の昇降を停止させる位置に無かった場合、作業機14がスプール90aの位置によって任意の方向に動作することはトラブルの原因となる。よって電源起動時にオペレータが昇降に関わる操作を行っていない場合は、システムが起動した時のリフト角度を目標値にして作業機14の昇降状態を変更させないようにする。すなわち、電源投入時にリフト角度センサ23によりリフト角度を検知してメモリに読込み、そのリフト角度位置を目標値に設定し、上昇SW81または下降SW82のいずれかの操作が発生するまでは作業機14の上下動を禁止するようにする。このようにシステム起動時に処理を行うことで周囲へ損傷等を及ぼすことを回避できるが、条件によってはこの処理のために目的の作業が阻害される恐れがある。例えば耕耘作業の途中であり、システムは耕深制御動作を行っている状態で作業車両がエンジンストップを起こしてしまったような場合が考えられる。このような場合、オペレータは直ぐに作業車両をスタートさせて作業を継続しようとするが、前述の処理のため、そのままでは耕深制御が行われないことになる。このような場合には作業機14は圃場に接地しており、作業機の下降によって周囲のものを破壊する恐れも無く、システムの起動直後に耕深制御を行ってもよいと言える。よって、リフト角度センサ23の情報から作業機14が確実に接地していることが確認された場合は前述の処理による作業機14の昇降位置の保持は行わず、耕深制御を行うことを選択する。
【0033】
これらの処理を行うため制御装置60は次のような一連の処理を行う。
図14にステップS40での処理の詳細を示す。
制御システム起動後、上昇SW81、下降SW82のいずれの操作も無い場合は、先ずリフト角度センサ23の検知信号が下降位置となる閾値L1以下であり作業機14が接地している位置(リヤカバー36が下端から上昇方向に回動している状態)にあるか否かを判定する(ステップS−41)。次に耕深センサ37の検出値により作業機が地面に入り込んでいるか否かを閾値D以上であるかにより判定する(ステップS−42)。これらの判定により、作業機14が接地していることが確認された場合にはステップS60に処理を移行し耕深制御を行う。これらの判定により作業機14が接地していることが確認されない場合はステップS45に処理を移行し作業機14の上下動を禁止する。
【0034】
これらの処理より、システムが起動後人為的な昇降操作がなされていない場合には、システム起動時の昇降位置を保持することで周囲に損傷を及ぼすような動作を回避することができる。
また、システム起動時に昇降高さが、作業機14が接地している状態であると確認されたならば耕深制御を行うことでシステム再起動時に目的の作業が行われないという不具合を回避し、オペレータにとって扱いやすく作業性の良いシステムを供給することができる。
【0035】
このように、各制御モードに対応する目標モータ位置が演算される。これらの演算結果に基づいてステップS200においてモータ95を目標の位置に動作させる出力を行う。ステップS200の詳細処理を図17に示す。
モータ95の目標位置と現在位置の差からモータ位置の偏差を求めそれが不感帯以内であるかを判定する(ステップS−201)。不感帯以内であればステップS205に処理を移行しモータ95に出力信号を行わない。不感帯を超える偏差が発生しているならば偏差に対する出力量を演算し(ステップS−202)、出力方向によってモータに対する出力の電流方向を決定し(ステップS−203)、各方向へ出力を行う(ステップS−206、ステップS−207)。モータ95に対する出力量はPWM(Pulse Width Modulation)制御によって行う。図20にモータ位置の偏差とPWM出力量の関係を示す。ここでは偏差ごとに比例直線的に出力量が変化する特性を示すが、偏差に応じて非線形的に出力量を決定する特性を持たせても良く、限定するものではない。
【実施例2】
【0036】
本発明の第1実施例の昇降制御においては、「モータ95(モータアーム97)回転位置」→「スプール90a伸縮位置」→「バルブ90制御流量」→「作業機14昇降速度」と制御対象が多重に変換されて制御動作が行われることになる。目標の動作が行われるまでに制御に関わる要素の変換が多重に行われるために、制御の応答遅れが生じる恐れがある。つまり、目標の油圧流量を得るべくスプール90aを動作させるためにはモータ95が目標の位置に到達しなければならず、到達するまでの間は応答遅れが生じることになる。また、油圧バルブスプール90aの伸縮に対するモータ角度は引張側または短縮側でモータ角度の変化量が異なりモータ角度と油圧流量は直線性のない関係であるため、制御システムを複雑にしやすい。
また、もう一つの問題としてモータリンク(第二連動リンク)100は第2リンク軸76とは、スプール90aのバネ力で繰り返し擦り合わせられるたびに磨耗し、適切な流量調整ができなくなる恐れがある。図7から図9に示されるモータリンク100では長方形孔100aの端面の短い領域で第2リンク軸76と接触するため、モータリンク100の材質が磨耗性に優れなければ使用するごとに初期のモータ位置とスプール90aの位置関係を維持できなくなるおそれがある。
よって、以上のような問題を鑑みて、以下のようにリンクを構成することが可能である。
【0037】
図21乃至図25に示す如く、ポジションレバーリンクについては、基本的な構成は、実施例1と同様である。第1リンク軸75はポジションレバーアーム22のみを枢支する。
【0038】
<モータによる昇降動作について>
次に、図21乃至図25を用いて、モータ動作による昇降の制御について説明をする。
取り付けプレート89−2に固設された第5リンク軸79を追加する。該第5リンク軸79を回転軸としてモータリンク(カム)100−2の中央部が枢支される。該モータリンク100−2の一側には半月形の孔100−2aが開口されており、この開口部に第2リンク軸76が挿通されている。該半月形の孔100−2aの外周側面、つまり、第2リンク軸76が摺接する面は、第5リンク軸79に対して徐々に半径が大きくなるように構成している。モータリンク100−2の他側には第5リンク軸79を挟んで半月形孔100−2aの反対側に軸受け100−2bが固設されている。該軸受け100−2bはリンクロッド98の一端98bを枢支している。リンクロッド98の他端98aはモータ95の出力軸に固設したモータアーム97に枢支され、リンクロッド98を介してモータアーム97の回転をモータリンク100−2に伝達している。
このような構成において、モータリンク100−2の回転位置によって半月形孔100−2aと第2リンク軸76との接触位置が変化し、スプール90aを前後に伸縮することができる。スプール90aを伸長させるときの状態を図22に、スプール90aを短縮させるときの状態を図23に示す。半月形孔100−2aの内縁はスプール90aが任意に伸長できる位置まで開口しており、これによりポジションレバー20による上昇操作を阻害しない構造になっている。
なお、本実施例では回転カム100−2とリンク軸76が直接接触する構造であるが、例えばリンク軸76に円形のベアリングやカラー等を介して耐磨耗性を向上させてもよい。また、ポジションレバーリンクとモータリンク100−2の関係については、上述した実施例1と同様である。
【0039】
これにより半月形孔100−2aを持つ回転カムとしてモータリンク100−2を用いたことにより以下の効果がある。
モータ角度とスプール伸縮位置をカム形状によって任意に設定することが可能なため、モータ95の動作速度、制御精度に合わせて昇降システムを構成することが可能なため、昇降制御機能の制御精度が向上する。また、リンクが接触する部分が制御位置によって広範囲であるため、耐磨耗性が向上し製品の寿命を高める。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例に係るトラクタ1の全体的な構成を示した右側面図。
【図2】トラクタ1の制御系に関するブロック図。
【図3】トラクタ1における油圧回路図。
【図4】トラクタ1のポジションリンク図。
【図5】トラクタ1の上昇操作時ポジションリンク図。
【図6】トラクタ1の下降操作時ポジションリンク図。
【図7】トラクタ1のモータリンク図。
【図8】トラクタ1の上昇操作時モータリンク図。
【図9】トラクタ1の耕深リンク図。
【図10】トラクタ1の耕深リンク図。
【図11】トラクタ1の耕深検出手段の一例を示すシリンダケース側面図。
【図12】制御系が行う一連の処理の一例を示したフロー図。
【図13】制御系が行う一連の処理の一例を示したフロー図。
【図14】図12及び図13に示したフロー図における処理の詳細なフロー図。
【図15】図12及び図13に示したフロー図における処理の詳細なフロー図。
【図16】図12及び図13に示したフロー図における処理の詳細なフロー図。
【図17】図12及び図13に示したフロー図における処理の詳細なフロー図。
【図18】制御装置60が昇降偏差に対して決定する目標モータ位置を表したグラフ図。
【図19】制御装置60が作業機下降の際時系列的に目標モータ位置を変更する方法を示したグラフ図。
【図20】制御装置60がモータ95に出力するPWM出力量の一例を示したグラフ図。
【図21】トラクタ1の第2実施例におけるポジションリンク及びモータリンク図。
【図22】トラクタ1の第2実施例における上昇操作時のモータリンク図。
【図23】トラクタ1の第2実施例における下降操作時のモータリンク図。
【図24】トラクタ1の第2実施例におけるリンク機構の正面図。
【図25】トラクタ1の第2実施例におけるリンク機構の正面図。
【符号の説明】
【0041】
1 トラクタ
14 作業機
20 ポジションレバー
23 リフト角度センサ
37 耕深センサ
60 制御装置
90 ポジション制御バルブ
91 第一連動リンク
95 モータ
100 第二連動リンク
101 リンク機構
100−2 モータリンク
【出願人】 【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIシバウラ
【出願日】 平成18年5月1日(2006.5.1)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎


【公開番号】 特開2007−295868(P2007−295868A)
【公開日】 平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願番号】 特願2006−127808(P2006−127808)