| 【発明の名称】 |
コンバイン |
| 【発明者】 |
【氏名】里路 久幸
|
| 【要約】 |
【課題】簡単な構造からなる走行用HSTと旋回用HSTを備えた走行トランスミッションを具備するコンバインを提供すること。
【解決手段】左右一対の走行クローラ(3)へ走行駆動力を伝動する走行用無段変速手段(20)と該左右一対の走行クローラ(3)に速度差を与える旋回用無段変速手段(70)とを設ける。該走行用無段変速手段(20)及び旋回用無段変速手段(70)をポートブロック(22)に設置する。走行用無段変速手段(20)における走行用可変容量油圧ポンプ(21)と走行用油圧モータ(23)を結ぶ油圧回路(22a)と旋回用無段変速手段(70)における旋回用可変容量油圧ポンプ(71)と旋回用油圧モータ(73)を結ぶ油圧回路(22b)とをポートブロック(22)内に設ける。該走行用無段変速手段(20)と旋回用無段変速手段(70)とを単一のユニットとして走行トランスミッション(19)のケースに着脱自在に取り付ける。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体フレーム(2)の下部側に左右一対の走行クローラ(3)を設け、該車体フレーム(2)の前端側に刈取装置(6)を設け、該車体フレーム(2)の上方に脱穀装置(15)及びグレンタンク(16)を設けて構成したコンバインにおいて、前記左右一対の走行クローラ(3)へ走行駆動力を伝動する走行用無段変速手段(20)と該左右一対の走行クローラ(3)に速度差を与える旋回用無段変速手段(70)とを設け、該走行用無段変速手段(20)及び旋回用無段変速手段(70)をポートブロック(22)に設置すると共に、前記走行用無段変速手段(20)における走行用可変容量油圧ポンプ(21)と走行用油圧モータ(23)を結ぶ油圧回路(22a)と、前記旋回用無段変速手段(70)における旋回用可変容量油圧ポンプ(71)と旋回用油圧モータ(73)を結ぶ油圧回路(22b)とを前記ポートブロック(22)内に設け、該走行用無段変速手段(20)と旋回用無段変速手段(70)とを単一のユニットとして走行トランスミッション(19)のケースに着脱自在に取り付けたことを特徴とするコンバイン。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、コンバインに係るものである。 【背景技術】 【0002】 クローラを走行手段とする走行装置を備えたコンバインの従来の技術を説明する。コンバインはクローラを構成する無限履帯の接地面積を広くし、水田など軟弱な圃場でも自由に走行して刈取作業などの農業作業を可能としている。 【0003】 コンバインは動力源としてエンジンを搭載し、エンジンの発生する動力をコンバインの走行、刈取、脱穀などに使用するが、そのクローラは、エンジンの動力を走行トランスミッションにより変速して伝動して駆動する。走行トランスミッションは、静油圧式無段変速手段、歯車列機械的変速手段、逆転歯車手段、クラッチ手段、ブレーキ手段などにより構成されている。 【0004】 コンバインを直進走行させるときは、左右一対のクローラを等速で駆動し、コンバインを左右に旋回させるときは、左右のクローラに速度差を与えて駆動し、高速側のクローラを外側に、低速側、停止側または後退側のクローラを内側とする旋回が可能な構成としている。 【0005】 コンバインの走行方向変更と旋回は3種類に分類される。すなわち、いずれも一方のクローラは前進走行のまま、他方のクローラの速度を低下させる緩旋回、他方のクローラを制動停止する制動旋回および他方のクローラを逆転逆走させる急旋回の3種類である。 【0006】 これらコンバインの直進走行と旋回は、コンバインの操縦台に搭乗するオペレータが各種操縦レバーを操作して伝動する動力を変速し、制動あるいは逆転して、クローラを前進、停止または後退などに駆動してコンバインを前後進あるいは旋回させている。 【0007】 コンバインを用いて圃場に植立する穀稈の刈取及び脱穀などを行うことにより、収穫作業の省力化と能率化が進展してきた。コンバインは走行装置としてクローラを用いるために、その運転操作は必ずしも容易ではなかったが、コンバインの走行トランスミッションに無段階変速できる走行用HSTおよび旋回用のHSTを用いることにより、コンバインの走行、操舵の運転操作はきわめて容易になってきた。 【特許文献1】特開2000−335458号公報(同一出願人の先願) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本出願人は先の出願発明(特願平11−151413号)で、コンバインなどのクローラを走行手段とする走行車両において、走行速度だけでなく、緩旋回、ブレーキ旋回、急旋回が無段階に、かつ円滑に選択できて、走行方向変更、旋回時の旋回半径を自由に選ぶことができ、操作性、走行性能を向上させることである走行用HSTと旋回用HSTを備えた走行トランスミッションを具備するコンバインを提案した。 【0009】 前記特願平11−151413号の発明は、旋回半径を緩旋回、制動旋回から急旋回まで無段階に自由に選ぶことができ、クラッチ切換は油圧を利用したので、時間遅れ、衝撃、噛み合い不能を発生することがなくなり、極めて容易かつ円滑に旋回操作でき、安全性が高く、操作性、操舵性能が優れたコンバインなどの走行装置を提供することができた。 【0010】 しかし、旋回用可変容量油圧ポンプから旋回用HSTへの油圧回路を走行トランスミッションのケースの外部に設けた構成であるため、構造的にその分かさばる欠点があった。 【0011】 そこで、本発明の課題は簡単な構造からなる走行用HSTと旋回用HSTを備えた走行トランスミッションを具備したコンバインを提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明の上記課題は次の構成によって解決される。 すなわち、車体フレーム(2)の下部側に左右一対の走行クローラ(3)を設け、該車体フレーム(2)の前端側に刈取装置(6)を設け、該車体フレーム(2)の上方に脱穀装置(15)及びグレンタンク(16)を設けて構成したコンバインにおいて、前記左右一対の走行クローラ(3)へ走行駆動力を伝動する走行用無段変速手段(20)と該左右一対の走行クローラ(3)に速度差を与える旋回用無段変速手段(70)とを設け、該走行用無段変速手段(20)及び旋回用無段変速手段(70)をポートブロック(22)に設置すると共に、前記走行用無段変速手段(20)における走行用可変容量油圧ポンプ(21)と走行用油圧モータ(23)を結ぶ油圧回路(22a)と、前記旋回用無段変速手段(70)における旋回用可変容量油圧ポンプ(71)と旋回用油圧モータ(73)を結ぶ油圧回路(22b)とを前記ポートブロック(22)内に設け、該走行用無段変速手段(20)と旋回用無段変速手段(70)とを単一のユニットとして走行トランスミッション(19)のケースに着脱自在に取り付けたことを特徴とするコンバインとしたものである。 【発明の効果】 【0013】 本発明によれば、走行用無段変速手段20と旋回用無段変速手段70とを用いることにより、旋回半径を緩旋回から急旋回まで無段階に選ぶことができるので、容易且つ円滑に旋回でき、安全性が高く、操作性、操舵性能が優れたコンバインを提供することができる。 【0014】 また、走行用無段変速手段20及び旋回用無段変速手段70をポートブロック22に設置すると共に、前記走行用無段変速手段20における走行用可変容量油圧ポンプ21と走行用油圧モータ23を結ぶ油圧回路22aと、旋回用無段変速手段70における旋回用可変容量油圧ポンプ71と旋回用油圧モータ73を結ぶ油圧回路22bとをポートブロック22内に設け、該走行用無段変速手段20と旋回用無段変速手段70とを単一のユニットとして走行トランスミッション19のケースに着脱自在に取り付けることにより、旋回用可変容量ポンプと旋回用油圧モータを結ぶ油圧回路を走行トランスミッションの外部に設ける構成に比べて構成が単純化でき、走行トランスミッションを小型化したコンバインを提供できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。本発明の一実施の形態を図1ないし図9に示す。図1はコンバインの左側面図であり、図2はコンバインの正面図であり、図3はコンバインの走行トランスミッションの一部切り欠き展開断面図であり、図4にパワステ機構とコンバインの油圧回路図を示し、図5には図4のA−A線矢視のパワステ機構の断面図を示し、図6には旋回用HSTの傾斜軸の回転角度調節部の正面図を示し、図7にはパワステレバーの案内溝のある制御盤101の平面図であり、図8は制御盤101の溝内のパワステレバーの位置により変化するクローラの回転状況を説明する図であり、図9はコンバインの走行制御装置を示す図である。 【0016】 図1および図2に示すように、コンバイン1の車体フレーム2の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3を有する走行装置本体4を配設し、車体フレーム2の前端側に刈取装置6が設けられている。刈取装置6は、車体フレーム2の上方の支点を中心にして上下動する刈取装置支持フレーム(図示せず)で支持されているので、コンバイン1に搭乗したオペレータが操縦台50のパワステレバー55を前後に傾倒操作することにより、刈取装置支持フレーム(図示せず)と共に上下に昇降する構成である。 【0017】 車体フレーム2の上方には、刈取装置6から搬送されてくる穀稈を引き継いで搬送して脱穀、選別する脱穀装置15と該脱穀装置15で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク16が載置され、グレンタンク16の後部にオーガ17を連接して、グレンタンク16内の穀粒をコンバイン1の外部に排出する構成としている。 【0018】 すなわち、コンバイン1は、オペレータが操縦台50において主変速HSTレバー51および副変速レバー52を操作し、図示しないエンジンの動力を図3に示す走行トランスミッション19の主変速機のHST20および副変速機25の歯車変速手段を介して変速し、左右のクローラ3に伝動して任意の速度で走行する。 【0019】 また、コンバイン1は、オペレータが操縦台50においてパワステレバー55を左右、前後に傾倒操作することにより各種旋回走行することができる。すなわち、パワステレバー55をコンバイン1を旋回させようとする方向に傾倒操作することにより、図3に示す走行トランスミッション19内のクラッチが作動し、後に詳述するように旋回用HST70の無段変速機で変速された回転動力がクローラ駆動スプロケットホイール左40L、またはクローラ駆動スプロケットホイール右40Rに選択的に伝動されるので、左右のクローラ3に速度差が与えられて走行方向の変更が行われる構成としている。 【0020】 図3に示す走行トランスミッション19の主要部は、主変速機(走行用HST)20、副変速機25、サイドクラッチ36L、36R、油圧クラッチ44L、44R、走行軸39L、39R、クローラ駆動スプロケットホイール40L、40Rなどからなり、エンジンからの駆動力の入力プーリ19aおよび刈取装置6(図1)への動力を伝動する刈取装置駆動プーリ27aなどを備えている。 【0021】 また、図3に示すように走行トランスミッション19には走行用HST20とともに入力プーリ19aで駆動される旋回用HST70を備え、旋回用HST70の出力はサイドクラッチ36L、36Rおよび油圧クラッチ44L、44Rを切り替えて、選択的に左または右のクローラ3に伝動する。 【0022】 エンジンから入力プーリ19aへ伝動された機械回転駆動力は、走行用HST20の可変容量油圧ポンプ21で油圧力に変換され、油圧モータ23で再び機械回転力に変換される。可変容量油圧ポンプ21を制御することにより油流量を無段階で0%からプラスマイナス100%に変更できるので、この油圧を受けて油圧モータ23の回転速度を無段階的に0%からプラスマイナス100%に変化することができる。 【0023】 エンジンから入力プーリ19aへ伝動された機械回転駆動力は、また、旋回用HST70の可変容量油圧ポンプ71を駆動して油圧力に変換され、旋回用油圧モータ73で再び機械回転力に変換される。旋回用の可変容量油圧ポンプ71を制御することにより油流量を無段階的に0%からプラスマイナス100%に変更できるので、この油圧を受けて旋回用油圧モータ73の回転速度を無段階的に0%からプラスマイナス100%に変化することができる。 【0024】 本実施の形態の特徴は、旋回用HST70が上記の走行用HST20と一体のポートブロック22に設置され、該ポートブロック22内に走行用可変容量油圧ポンプ21と走行用油圧モータ23を結ぶ油圧回路22aと旋回用可変容量油圧ポンプ71と旋回用油圧モータ73を結ぶ油圧回路22bがそれぞれ設けられていることである。 【0025】 このため、本発明者の先の特許出願(特開平11ー151413号)の旋回用可変容量油圧ポンプ71と旋回用油圧モータ73を結ぶ油圧回路72がトランスミッションの外部に設けられているのに比べて、構成が単純であり、トランスミッションの小型化に寄与する。 【0026】 油圧モータ23の出力軸24には油圧モータ出力延長軸26を延設し、該出力延長軸26には油圧モータ出力ピニオン26aが固設されていて、これに常時噛み合う副変速第一ギヤ31を駆動する。副変速第二ギヤ30および副変速第三ギヤ29は第一ギヤ31と一体に形成され、副変速軸27に軸方向に摺動自在かつ相対回転不能に遊嵌される。副変速第一ギヤ31、副変速第二ギヤ30および副変速第三ギヤ29は、図2に示した操縦台50の副変速レバー52を操作すると、図示しない副変速シフタを介して軸方向にシフトされて、それぞれ第一ギヤ31と第一カウンタギヤ31’、第二ギヤ30と第二カウンタギヤ30’、第三ギヤ29と第三カウンタギヤ29’のいずれかの噛み合いが選択されて、カウンタシャフト28が高速、中速、低速のいずれかに副変速される。また副変速軸27は第一ギヤ31と共に回転して刈取装置駆動プーリ27aに動力を伝動する。 【0027】 第一カウンタギヤ31’は第二カウンタシャフト32に固着したギヤ32aと直接噛み合って、副変速されたカウンタシャフト28の回転を第二カウンタシャフト32に伝達し、第二カウンタシャフト32に固着されたピニオン32bは、センタギヤ軸33のセンタギヤ34に直接噛み合って(図3は展開図であるので、ピニオン32bとセンタギヤ34は噛み合ってないように見える。)動力を伝動する。 【0028】 センタギヤ軸33は、該センタギヤ軸33の左右の軸首部の外周を、サイドクラッチ軸左43Lおよびサイドクラッチ軸右43Rのそれぞれの内周に設けた円筒状凹部を軸受けとして回転自在に軸承される。センタギヤ34は、センタギヤ軸33の中央部に軸着され、該センタギヤ34のギヤ円盤の内周側左右両側面に円環状で軸方向に凸凹に突設する軸方向クラッチ歯形34L、34Rを刻設している。 【0029】 サイドクラッチ軸左43Lには軸方向クラッチ歯形34Lとは反対の軸方向に円環状で凸凹に突設するサイドクラッチ歯形左35Lを刻設したサイドクラッチ左36Lを軸方向摺動自在に遊嵌し、かつ常時はコイルバネ37L’に付勢されて軸方向クラッチ歯形左34Lとサイドクラッチ歯形左35Lとは相対回転不能に噛み合って、センタギヤ34の駆動力をサイドクラッチ左36Lに伝動する。 【0030】 サイドクラッチ軸右43Rには軸方向クラッチ歯形34Rとは反対の軸方向に円環状で凸凹に突設するサイドクラッチ歯形右35Rを刻設したサイドクラッチ右36Rを軸方向摺動自在に遊嵌し、かつ常時はコイルバネ37R’に付勢されて軸方向クラッチ歯形右34Rとサイドクラッチ歯形右35Rとは相対回転不能に噛み合って、センタギヤ34の駆動力をサイドクラッチ右36Rに伝動する。 【0031】 走行トランスミッション19には2個のクラッチシフタ41L、41Rを備え、それぞれプッシュシリンダータ83L、83R(図4参照)を作動させて回動することにより、上述のサイドクラッチ36L、36Rをそれぞれ接続し、開放する。 【0032】 クラッチ歯形左35Lはサイドクラッチギヤ37Lと一体的に構成され、内周側はサイドクラッチ軸左43Lに軸方向摺動自在かつ相対回転不能に遊嵌し、外周のサイドクラッチギヤ37Lは軸42に設けられた旋回ギヤ左42Lと噛み合い、該旋回ギヤ42Lと一体構成の旋回ピニオン42L’は走行ギヤ38Lに噛み合う。すなわちサイドクラッチギヤ37Lの駆動力は走行ギヤ左38Lに伝えられ、走行軸左39Lとクローラ駆動スプロケット左40Lを経て左クローラ3を駆動する。 【0033】 クラッチ歯形右35Rはサイドクラッチギヤ37Rと一体的に構成され、内周側はサイドクラッチ軸右43Rに軸方向摺動自在かつ相対回転不能に遊嵌し、外周のサイドクラッチギヤ37Rは旋回ギヤ右42Rと噛み合い、該旋回ギヤ42Rと一体構成の旋回ピニオン42R’は走行ギヤ38Rに噛み合う。すなわちサイドクラッチギヤ37Rの駆動力は、走行ギヤ右38Rに伝えられ、走行軸右39Rとクローラ駆動スプロケット右40Rを経て右クローラ3を駆動する。 【0034】 サイドクラッチ軸左43Lの外端には油圧クラッチ左44Lを装着し、該油圧クラッチ左44Lの外周にはクラッチ入力ギヤ左45Lが刻設されている。サイドクラッチ軸右43Rの外端には油圧クラッチ右44Rを装着し、該油圧クラッチ右44Rの外周にはクラッチ入力ギヤ右45Rが刻設されている。 【0035】 旋回用HST70は上記の走行用HST20と同一の構成で、エンジンの回転動力は走行用HST20の可変容量油圧ポンプ駆動軸21aと同軸上の可変容量油圧ポンプ71で油圧力に変換され、ポートブロック内に設けられた油圧回路22bを経由して油圧モータ73に輸送されて、油圧モータ73で再び機械回転力に変換される。 【0036】 可変容量油圧ポンプ71として斜板形油圧ポンプを用いる場合を例にして説明すると、ポンプ斜板制御軸71aを回動制御することにより図示しない斜板の角度を調節して、ポンプ吐出油流量を無段階で0%からプラスマイナス100%に調節する。この油圧を受けて油圧モータ73の回転速度を無段階的(連続的に)に0%からプラスマイナス100%に変化させることができるとともに、可変容量油圧ポンプ71の油流量0において油圧モータ73はブレーキとして作用する。 【0037】 旋回用HST70の油圧モータ73の出力軸74は出力ピニオン74aを回転駆動し、該出力ピニオン74aは中間軸75に固着した中間ギヤ右75Rを駆動し、中間ギヤ右75Rはクラッチ入力ギヤ右45Rに噛み合って油圧クラッチ右44Rのハウジングを駆動する。中間軸75にはまた中間ギヤ左75Lが軸着されていて、中間ギヤ左75Lはクラッチ入力ギヤ左45Lに噛み合って油圧クラッチ左44Lのハウジングを駆動する。 【0038】 図4に示す(ハ)(ニ)の方向にパワステレバー55を傾倒して電磁ソレノイドバルブ82を作動させると、プッシュシリンダ83L、83Rのいずれかが作動し、クラッチシフタ41Lまたは41Rが作動すると共に、クラッチシフタが作動した側の油圧クラッチ44Lまたは44Rが接続する。すなわちサイドクラッチ左36Lまたはサイドクラッチ右36Rのいずれかが開放され、開放されたサイドクラッチ側の油圧クラッチ左44Lまたは油圧クラッチ44Rが接続される。 【0039】 図3および図4はサイドクラッチ左36Lが開放され、旋回用HST70の油圧モータ73の出力が出力ピニオン74a、中間ギヤ右75R、中間軸75、中間ギヤ左75L、クラッチ入力ギヤ左45L及び油圧クラッチ左44Lを経てサイドクラッチ軸左43Lに伝動され、サイドクラッチギヤ左37Lに噛み合う旋回ギヤ左42Lを駆動する場合を示す。 【0040】 この場合、サイドクラッチ右36Rは接続されたままであり、油圧クラッチ右44Rは開放されたままであるから、走行用HST20の油圧モータ23の出力がピニオン32b、センタギヤ34、サイドクラッチ右36Rを経て、サイドクラッチ軸右43Rに伝動され、サイドクラッチギヤ右37Rに噛み合う旋回ギヤ右42Rを駆動する。 【0041】 旋回ギヤ42Lまたは42Rは、該旋回ギヤ42Lまたは42Rとそれぞれ一体に固着して回転するピニオン42L’または42R’と噛み合う走行ギヤ38Lまたは38Rを経て、走行軸左39Lまたは走行軸右39R、クローラ駆動スプロケット左40Lまたはクローラ駆動スプロケット40R、したがって左または右のクローラ3に変速した動力を伝動する。 【0042】 以上のように走行トランスミッション19は、エンジンの回転動力を主変速HST20および副変速機25で変速して、サイドクラッチ36L、36Rが接続している場合は走行軸39L、39R、したがってクローラ駆動スプロケット40L、40Rを同一回転数で駆動して、コンバイン1を直進走行させる。また、パワステレバー55を左右に傾倒して旋回走行するときは、走行トランスミッション19は、エンジンの回転動力を旋回用HST70において変速して、左右いずれかのクローラ3に伝動して、左右のクローラに速度差を与えてコンバイン1を旋回させる。 【0043】 上記構成からなる走行トランスミッション(差動走行装置)19の作動を次に説明する。 まず、コンバイン1を直進走行させる場合は、パワステレバー55は左右どちらにも傾倒させない中立位置(直立位置)におく。リミットスイッチの電気接点61L、61R(図4)はともにOFFであるから電磁ソレノイドバルブ82、プッシュシリンダー83L、83Rは作動しない。そのため、クラッチシフタ41L、41Rは回動しないから、コイルスプリング37L’、37R’に付勢されたサイドクラッチ36L、36Rは接続状態を継続し、また油圧が供給されないから油圧クラッチ44L、44Rは開放状態(非接続状態)のままとなる。 【0044】 この場合、エンジンの発生動力は走行用HST20、副変速機25、サイドクラッチ36L、36R、走行軸39L、39R、クローラ駆動スプロケット40L、40Rを経て伝動され、左右のクローラ3が同一回転数で駆動されることによりコンバイン1は直進走行する。 【0045】 パワステレバー55を中立(直立)位置におき、コンバイン1が直進走行する間、旋回用HST70の可変容量油圧ポンプ71は駆動され、旋回用油圧モータ73は回転するが、油圧クラッチ44Lおよび44Rが開放されているので、コンバイン1の走行方向に影響を及ぼすことがなく、また旋回用HST70には動力負荷がかからない。 【0046】 旋回用HST70の可変容量油圧ポンプ71は、斜板制御軸71a(図3)を回動することにより図示しない傾斜板の傾斜角度が変更され、傾斜板角度に応じた流量を吐出して旋回用油圧モータ73を駆動するので、たとえば、傾斜板を正方向で小角度に設定すれば、旋回用油圧モータ73は正方向で緩速度に変速されて回転伝動する。 【0047】 つまり、左に緩旋回する場合は、左クローラ3に対してエンジンの発生動力が、旋回用HST70、油圧クラッチ左44L、走行軸左39L、クローラ駆動スプロケット左40Lを経て、設定された正方向で緩速度に変速されて伝動される。この場合、右クローラ3に対して、エンジンの発生動力は主変速HST20、副変速機25、サイドクラッチ右36R、走行軸右39R、クローラ駆動スプロケット右40Rを経て、直進走行時と同じ速度で伝動される。したがってコンバイン1は、緩速度の左クローラ3と直進時と同じ速度の右クローラ3との速度差により、緩速度の左クローラ3を内側にして左に緩旋回する。右旋回する場合は上述と左右反対に作用する。 【0048】 旋回用HST70は正回転から逆回転まで無段階調節が可能であるから、左右のクローラ3にほとんどゼロから、前進速度のほとんど2倍の速度差を与えることができる。すなわち、旋回用HST70の出力回転速度を正回転高速にすれば、左右のクローラ3の速度差は小さく、旋回半径の大きな緩旋回となるように作用する。旋回用HST70の出力回転速度を正回転低速にすれば、左右のクローラ3の速度差は大きくなるので、旋回半径の小さな緩旋回となるように作用する。旋回用HST70の出力回転速度をゼロにすれば、旋回用HST70はブレーキとして作動して、一方のクローラ3が停止するから、停止側クローラ3を内側にして、コンバイン1は制動旋回するように作用する。 【0049】 旋回用HST70の出力回転速度を逆回転低速にすれば、左右のクローラ3の速度差はさらに大となり、コンバイン1は制動旋回よりも回転半径の小さい急旋回となるように作用する。旋回用HST70の出力回転速度を前進側と等速度で逆回転にすれば左右のクローラ3は等速度反対方向で走行するから、コンバイン1はその場で旋回する最も旋回半径の小さな急旋回となるように作用する。 【0050】 図4に示す揺動プレート57の下端部に車体に固定された支持軸102に回転自在に支持されたアーム103を設けており、該アーム103の下端にポテンショメータ105にパワステレバー55が図5に示す矢印(イ)、(ロ)の方向に回転するときの回転角度に比例した値を出力させるための補助アーム106を設けたことである。ポテンショメータ105の出力はCPU(図9)に入力される。 【0051】 図6に示すように制御命令に応じて駆動される制御モータ99と噛み合う制御軸作動板71bが斜板軸71aの傾斜角を変更する。制御軸作動板71bの傾斜角度はポテンショメータ107で測定される。 【0052】 旋回用HST70の初期回転数を任意に設定できる斜板軸71aの傾斜角度は図9に示すように、左リミットスイッチ61L又は右リミットスイッチ61Rの入力と、ポテンショメータ105、107の検出角度により制御される制御モータ99の所定の回転により設定される。 【0053】 また、斜板軸71aの初期回転数は制御モータ99で調整される。斜板軸71aの傾斜角度はパワステレバー55を前後(図5の矢印(イ)、(ロ)の方向)に傾斜させるポテンショメータ105の回転角度の検出値に基づき制御モータ99の出力値をCPUを介して調整することができる。 【0054】 このときポテンショメータ105が図5に示すパワステレバー55の前後方向の傾斜で測定されるアーム103の回転角度を検出し、検出角度に対応した斜板軸71aの傾斜角度が得られるように制御モータ99が回転するが、実際の斜板軸71aの傾斜角度はポテンショメータ107で実測され、所定の斜板軸71aの傾斜角度が得られるように制御モータ99の回転角度が微調整される。 【0055】 また、感度設定ダイヤル109は斜板軸71aの傾斜角度を予め正転側や逆転側に寄せてき、旋回用油圧モータ出力ピニオン74を空転させておき、クラッチ44L、44Rが係合すると同時に旋回用油量を多めに吐出させ、迅速に旋回駆動を行うためのものである。従って、感度設定ダイヤル109により斜板軸71aの傾斜角度を調整することで旋回応答性を調整することができる。 【0056】 パワステレバー55を図4の矢印(ハ)(ニ)の方向に傾斜させることで緩旋回(マイルドターン)ができ、パワステレバー55を図5の矢印(イ)(ロ)の方向に傾斜させることで図4に示すような制動旋回(ブレーキターン)、急旋回(スピンターン)と倍速ターンが可能である。 【0057】 パワステレバー55が図7に示す中立位置にあるときは、コンバインは直進走行する。 次に、パワステレバー55を図7のA位置(図4の(ハ)方向)に回動させると、左リミットスイッチ61Lが入り状態となる。この時、図3のクラッチ36Lが切り状態となり、直進前進走行していたコンバイン1が左に緩旋回する場合の作動について図4を用いて説明する。 【0058】 パワステレバー55を進行方向の左側に傾倒させると、パワステレバー55が当接ピン58Lに当接し、同時にカムプレート56のカムが接触することでリミットスイッチ左61Lの接点がONになり、電磁ソレノイドバルブ82のソレノイドコイル左82Lが励磁されてスプール82’が作動し、作動油溜め80からポンプ81で汲み上げられた作動油がプッシュシリンダー83Lに供給される。 【0059】 プッシュシリンダー内のピストン84Lが油圧により押圧されて移動し、プッシュロッド86Lを介してクラッチシフタ41Lを回動させる。クラッチシフタ41Lの回動により、センタギア34の軸方向クラッチ歯形34Lとサイドクラッチ歯形左35Lとの噛み合いが解放されて、サイドクラッチ左36Lが開放される。 【0060】 パワステレバー55の図4の(ハ)方向への傾斜(図7の中立位置からA位置への移動)では斜板軸71aが中立位置のままであり、油圧クラッチ左44Lには旋回用HST70の油圧ポンプ71からの吐出油が供給されないので、左クローラ3には駆動力は伝達されない。その結果、クローラ駆動スプロケット40Lはフリーの状態(駆動力もブレーキも何も作用していない)であり、従って、図8のA欄に示す状態となる。このとき、左クローラ3はセンタギア33からの駆動力が伝達されている右クローラ3の回転に連れ回るだけである。その結果図8のA欄に示す左緩旋回がなされる。 【0061】 また、パワステレバー55を図5の(イ)方向への傾斜(図7のA位置からC位置への移動)をすると、ポテンショメータ105が、この動きを検出するので、モータ99(図6)が回転して旋回HST70の可変油圧ポンプ71の斜板軸71aを正転増速側に傾斜していく。これによって、中間ギヤ75Rと中間ギヤ75Lは斜板軸71aの傾斜角度に応じて回転を増していく。この時、電磁ソレノイドコイル82L(図4)による開度調整によりプッシュシリンダ83L内の油量が増えて、ピストン84Lが移動して、プッシュシリンダー83Lのサイドポート83L’が開口して、油圧が油圧クラッチ左44Lに供給され、クラッチプレートが移動して油圧クラッチ左44Lが接続される。これにより、中間ギヤ75Lの回転力はクローラ駆動スプロケット40Lに伝達されていく。 【0062】 パワステレバー55をA位置からC位置へ移動させると無段増速変速となる。このとき、油圧クラッチ44Rは接続してないので、中間ギヤ75Rは逆回転で空転している。 また、パワステレバー55が図5の(ロ)方向(図7のA位置からB位置)へ移動させると、ポテンショメータ105が、この動きを検出するので、モータ99が逆回転して旋回HST70の可変油圧ポンプの斜板軸71aを逆転増速側に傾斜していく。これによって、中間ギヤ75Rと中間ギヤ75Lは斜板軸71aの傾斜角度に応じて逆回転量を増していく。このとき、電磁ソレノイドコイル82Lによる開度調整によりプッシュシリンダ83L内の油量が増えて、ピストン84Lが移動して、プッシュシリンダー83Lのサイドポート83L’が開口すると、油圧が油圧クラッチ左44Lに供給され、クラッチプレートが移動して油圧クラッチ左44Lが接続される。 【0063】 これにより、中間ギヤ75Lの回転力はクローラ駆動スプロケット40Lに伝達されていく(図7のレバー位置Bのスピンターン)。このように、パワステレバー55を図7のA位置からB位置へ移動させると逆転の無段増速変速となる。このときにも油圧クラッチ44Rは接続していないので、中間ギヤ75Rは逆回転で空転しているだけである。 【0064】 前記スピンターンの場合は、図8のレバー位置がA位置からB位置となるが、矢印の向きが反対となっている。従って、いきなりスピンターンへ移行してもよいが、スピンターンの手前にブレーキターン(制動旋回)を設定できるようにしてもよい。 【0065】 ブレーキターンを入れるときは、パワステレバー55をA位置からB位置へ所定量移動させること(図7のR位置に移動させること)により実行させる。 ブレーキターンは、もちろん、クラッチ36Lは切り状態である。旋回HST70の可変油圧ポンプの斜板軸71aは、中立の位置(正転増速側でなく、逆転増速側でもない)である。この状態で、油圧クラッチ44Lを接続すると、ブレーキターンとなる。 【0066】 図7のパワステレバー位置Eはレバー位置Aと正反対のクローラ旋回を行うものであり、レバー位置Dはレバー位置Cと正反対のクローラ旋回を行い、またレバー位置Fはレバー位置Bと正反対のクローラ旋回を行う。 【0067】 こうして走行用HST20と旋回用HST70を用いた走行装置で、旋回用HST70のHST斜板軸71aの傾斜角の設定位置からHSTモータ73の前進増速操作、後進増速操作等により、旋回動作を変更することができる。従来の走行装置は減速又はスピン旋回のみ可能であったが、以上説明した図4〜図9に示す構成で、増速操作による旋回も可能となり、旋回速度のスピード化が図れる。 【0068】 また、本実施の形態の特徴は、旋回用HST70が上記の走行用HST20と一体のポートブロック22に設置され、該ポートブロック22内に走行用可変容量油圧ポンプ21と走行用油圧ポンプ23を結ぶ油圧回路22aと旋回用可変容量油圧ポンプ71と旋回用油圧ポンプ73を結ぶ油圧回路22bがそれぞれ設けられているため、本発明者の先の特許出願(特開平11ー151413号)の旋回用可変容量油圧ポンプ71と旋回用油圧モータ73を結ぶ油圧回路72がトランスミッションの外部に設けられているのに比べて、構成が単純であり、トランスミッションの小型化に寄与する。 【0069】 また、本発明では図3に示すように、油圧クラッチ44Lおよび44Rを、それぞれ油圧クラッチ軸43Lおよび43Rの外端側に取り付ける構成としたので、磨耗部材を有して定期的に点検、交換、修理を要する油圧クラッチのメンテナンスに際して、走行トランスミッション19を分解することなく、点検作業等を容易に行うことができるといる特徴も得られる。 【0070】 さらに、本発明実施の形態の図4の左端に示すように、プッシュシリンダー83L、83Rおよび油圧クラッチ44Lおよび44Rに圧力油を供給する油圧ポンプ81の作動油溜め80と、走行用HST20および旋回用HST70のそれぞれの作動油溜めとを共用にして、可変容量油圧ポンプ21および71から汲み上げた作動油をそれぞれの油圧モータ23および73に供給することにより、作動油溜め80が一つになり、小形コンパクト化できるとともに、プッシュシリンダ83および油圧クラッチ44の作動油として走行トランスミッション19のギヤボックスオイルを用いる場合に比べて、作動油の汚染が少なく、したがって故障の少ない油圧システムを構成できるという特徴が得られる。 【図面の簡単な説明】 【0071】 【図1】本発明の実施の形態のコンバインの左側面図である。 【図2】本発明の実施の形態のコンバインの正面図である。 【図3】本発明の実施の形態のコンバインの走行トランスミッションの一部切り欠き展開断面図である。 【図4】本発明の実施の形態のコンバインの走行トランスミッションのパワステ機構および油圧回路図である。 【図5】図4のA−A線矢視のパワステ機構の側面図である。 【図6】図4のHST正面図である。 【図7】図4のパワステ機構の変速用パワステレバーの案内溝のある制御盤の平面図である。 【図8】図4のパワステ機構の変速の種類を示す図である。 【図9】図4のコンバインの走行装置の旋回用HST制御モータの制御ブロック図である。 【符号の説明】 【0072】 2 車体フレーム 3 走行クローラ 6 刈取装置 15 脱穀装置 16 グレンタンク 19 走行トランスミッション 20 走行用HST(走行用無段変速手段) 21 走行用可変容量ポンプ 22 ポートブロック 22a 油圧回路 22b 油圧回路 23 走行用油圧モータ 70 旋回用HST(旋回用無段変速手段) 71 旋回用可変容量油圧ポンプ 73 旋回用油圧モータ
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000125 【氏名又は名称】井関農機株式会社
|
| 【出願日】 |
平成19年2月26日(2007.2.26) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2007−143558(P2007−143558A) |
| 【公開日】 |
平成19年6月14日(2007.6.14) |
| 【出願番号】 |
特願2007−45222(P2007−45222) |
|