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【発明の名称】 水田作業車
【発明者】 【氏名】藤井 健次

【氏名】窪津 誠

【要約】 【課題】水田作業車において、油圧ポンプに駆動軸を接続して、エンジンの動力を駆動軸に伝達するように構成した場合、駆動軸や、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部を充分に潤滑することができるように構成する。

【解決手段】ミッションケース17の一方の横側部に油圧ポンプ59を備え、油圧ポンプ59に接続された駆動軸60を、ミッションケース17の内部に左右方向に沿ってミッションケース17の他方の横側部に延出して、エンジンの動力が駆動軸60に伝達されるように構成する。操縦ハンドルに連動連結されたステアリング軸65を、ミッションケース17の内部で駆動軸60に近接するように上下方向に通して配置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部にミッションケースを備えて、前記ミッションケースの一方の横側部に油圧ポンプを備え、
前記油圧ポンプに接続された駆動軸を、前記ミッションケースの内部に左右方向に沿ってミッションケースの他方の横側部に延出して、エンジンの動力が前記ミッションケースの他方の横側部から駆動軸に伝達されるように構成すると共に、
前記ミッションケースの上側に操縦ハンドルを備え、前記操縦ハンドルに連動連結されたステアリング軸を、前記ミッションケースの内部で駆動軸に近接するように上下方向に通して配置して、前記操縦ハンドルによりステアリング軸を介して右及び左の前輪を操向操作自在に構成してある水田作業車。
【請求項2】
前記ミッションケースの横側部に静油圧式無段変速装置を備えて、前記エンジンの動力が静油圧式無段変速装置の入力軸に伝達されるように構成し、前記静油圧式無段変速装置の入力軸と駆動軸とをミッションケースの内部で接続して、前記エンジンの動力が駆動軸に伝達されるように構成すると共に、
前記ステアリング軸がミッションケースの壁部と駆動軸との間に上下方向に通して配置されるように構成してある請求項1に記載の水田作業車。
【請求項3】
前記静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油を所定位置に戻す油路部材を、前記ミッションケースの内部に備えてある請求項2に記載の水田作業車。
【請求項4】
前記ミッションケースに前車軸ケースを連結し、前記前車軸ケースに前輪を操向自在に支持して、前記静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油を戻す所定位置を、前記前車軸ケースとしてある請求項3に記載の水田作業車。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等の水田作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業車の一例である乗用型田植機では、苗植付装置を昇降駆動する油圧シリンダや油圧式のパワーステアリング機構を備えており、油圧シリンダやパワーステアリング機構に作動油を供給する油圧ポンプを備えている。
この場合、特許文献1に開示されているように、機体の前部にミッションケース(特許文献1の図2,4,6の8)を備えて、ミッションケースの前側の外部に油圧ポンプ(特許文献の図6の90)を備え、油圧ポンプに接続された駆動軸(特許文献1の図2,4,6の92)に、エンジン(特許文献1の図2及び図6の15)の動力が伝動ベルトを介して伝達されるように構成されたものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−288150号公報(図2,4,6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧ポンプに駆動軸を接続する場合、一般にスプライン構造により接続するように構成することが多く、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部に充分に潤滑を施す必要がある。特許文献1ではミッションケースの外部に駆動軸が備えられているので、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部にもグリスを塗布することになる。
【0005】
しかしながら、特許文献1では駆動軸や、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部が外部に露出した状態に近いので、グリスが無くなり易く、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部でグリスが不足すると、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部に磨耗が急速に進展することがある。これにより、グリスを頻繁に補充する必要が生じている。
本発明は水田作業車において、油圧ポンプに駆動軸を接続して、エンジンの動力を駆動軸に伝達するように構成した場合、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部を充分に潤滑することができるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、水田作業車において次のように構成することにある。
機体の前部にミッションケースを備えて、ミッションケースの一方の横側部に油圧ポンプを備える。油圧ポンプに接続された駆動軸を、ミッションケースの内部に左右方向に沿ってミッションケースの他方の横側部に延出して、エンジンの動力がミッションケースの他方の横側部から駆動軸に伝達されるように構成する。ミッションケースの上側に操縦ハンドルを備え、操縦ハンドルに連動連結されたステアリング軸を、ミッションケースの内部で駆動軸に近接するように上下方向に通して配置して、操縦ハンドルによりステアリング軸を介して右及び左の前輪を操向操作自在に構成する。
【0007】
(作用)
油圧ポンプに駆動軸を接続して、エンジンの動力を駆動軸に伝達するように構成した場合、本発明の第1特徴によると、駆動軸や、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部がミッションケースの内部に配置されることになる。
比較的大きな容積を持つミッションケースは一般に、内部に潤滑油を満たしてオイルバス化するので、本発明の第1特徴のように、駆動軸や、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部をミッションケースの内部に配置することにより、駆動軸や、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部が潤滑油によって充分に潤滑されるのであり、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部が外部に露出してグリス(潤滑油)が無くなり易いと言うような状態も生じない。
【0008】
水田作業車では、ミッションケースの上側に操縦ハンドルを備え、操縦ハンドルに連動連結されたステアリング軸を介して、右及び左の前輪を操向操作自在に構成したものがある。
本発明の第1特徴によると、ステアリング軸をミッションケースの内部で駆動軸に近接するように上下方向に通して配置している。このように、左右方向の駆動軸と上下方向のステアリング軸とを交差するように配置することにより、駆動軸を支持するベアリングとステアリング軸を支持するベアリングとの互いの干渉を避けながら、駆動軸とステアリング軸とを近接して配置することができる。
【0009】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、水田作業車において、油圧ポンプに駆動軸を接続して、エンジンの動力を駆動軸に伝達するように構成した場合、駆動軸や、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部が潤滑油によって充分に潤滑されるようにすることができ、油圧ポンプと駆動軸とを接続するスプライン部の磨耗を抑えることができるようになって、水田作業車の耐久性を向上させることができた。
本発明の第1特徴によると、前述の駆動軸とステアリング軸とを近接して配置することができ、駆動軸とステアリング軸との間の無駄な空間を小さくすることができて、ミッションケースのコンパクト化と言う面で有利なものとなった。
【0010】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業車において次のように構成することにある。
ミッションケースの横側部に静油圧式無段変速装置を備えて、エンジンの動力が静油圧式無段変速装置の入力軸に伝達されるように構成する。静油圧式無段変速装置の入力軸と駆動軸とをミッションケースの内部で接続して、エンジンの動力が駆動軸に伝達されるように構成する。ステアリング軸がミッションケースの壁部と駆動軸との間に上下方向に通して配置されるように構成する。
【0011】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
水田作業車では、ミッションケースの横側部に静油圧式無段変速装置を備えて、エンジンの動力が静油圧式無段変速装置の入力軸に伝達され、静油圧式無段変速装置の出力軸からミッションケースの内部の変速装置に伝達されるように構成したものがある。このように構成すると、静油圧式無段変速装置をミッションケースの横側部の端部に備えることによって、静油圧式無段変速装置の入力軸をミッションケースの壁部に近接して配置することが可能になる。
【0012】
本発明の第2特徴によると、静油圧式無段変速装置の入力軸と駆動軸とをミッションケースの内部で接続して、エンジンの動力が駆動軸に伝達されるように構成しており、ステアリング軸をミッションケースの壁部と駆動軸との間に上下方向に通して配置している。このように、ミッションケースの壁部と駆動軸との間の空間を有効に利用することによって、ミッションケースの内部の空間を無駄に使うことなく、ステアリング軸を適切に配置することができる。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、ミッションケースの横側部に静油圧式無段変速装置を備えて、静油圧式無段変速装置の入力軸と駆動軸とをミッションケースの内部で接続した場合に、ミッションケースの内部の空間を無駄に使うことなく、ステアリング軸を適切に配置することができるようになって、ミッションケースのコンパクト化と言う面で有利なものとなった。
【0014】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の水田作業車において次のように構成することにある。
静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油を所定位置に戻す油路部材を、ミッションケースの内部に備える。
【0015】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
水田作業車では、前項[II]に記載のように静油圧式無段変速装置を備えた場合、ミッションケースの潤滑油を作動油として静油圧式無段変速装置に供給するように構成することが多い。この場合、静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油を所定位置に戻す油路部材(配管やホース等)を、ミッションケースの外部に備えると、油路部材から作動油が漏れないように、油路部材に充分なシール処理を施す必要がある。
【0016】
本発明の第3特徴によると、静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油を所定位置に戻す油路部材(配管やホース等)を備える場合、油路部材をミッションケースの内部に備えている。これにより、油路部材から作動油が漏れたとしても、ミッションケースの内部に戻るだけなので、油路部材に充分なシール処理を施す必要はない。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油を所定位置に戻す油路部材(配管やホース等)を備える場合、油路部材に充分なシール処理を施す必要がなくなり、構造の簡素化及び生産コストの低減の面で有利なものとなった。
【0018】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第3特徴の水田作業車において次のように構成することにある。
ミッションケースに前車軸ケースを連結し、前車軸ケースに前輪を操向自在に支持し、静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油を戻す所定位置を、前車軸ケースとしている。
【0019】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に前項[I]〜[III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油が油路部材を介して前車軸ケースに戻されるのであり、前車軸ケースからミッションケースに戻る。このように静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油をミッションケースに直ぐに戻すのではなく、前車軸ケースを介してミッションケースに戻すように構成することにより、特に前車軸ケースにおいて作動油の冷却が期待できる(前車軸ケースが細長い形状をしており、表面積が比較的大きなものであることによる)。
【0020】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第3特徴と同様に、前項[I]〜[III]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、静油圧式無段変速装置からオーバーフローした作動油の冷却が期待できるようになって、作動油の劣化を抑えることができ、水田作業車の耐久性を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[1]
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2を備えた機体の後部に、リンク機構3及びリンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられており、リンク機構3の後部に苗植付装置5が支持されて、水田作業車の一例である乗用型田植機が構成されている。
【0022】
図1に示すように、苗植付装置5は、伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された植付ケース7、植付ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、接地フロート9及び苗のせ台10等を備えて構成されている。これにより、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付ケース7が回転駆動され、苗のせ台10の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面に植え付ける。
【0023】
図1に示すように、肥料を貯留するホッパー12及び繰り出し部13が運転座席11の後側に固定されて、運転座席11の下側にブロア14が備えられている。接地フロート9に作溝器15が備えられて、繰り出し部13と作溝器15とに亘って、ホース16が接続されている。これにより、前述のような苗の植え付けに伴って、ホッパー12から肥料が所定量ずつ繰り出し部13によって繰り出され、ブロア14の送風により肥料がホース16を通って作溝器15に供給されるのであり、作溝器15を介して肥料が田面に供給される。肥料に代えて種籾をホッパー12に貯留することにより、ホッパー12から作溝器15を介して種籾を田面に供給する直播作業も行うことができる(この場合、苗植付装置5を停止させる)。
【0024】
[2]
次に、ミッションケース17における右及び左の前輪1、右及び左の後輪2への伝動構造について説明する。
図1に示すように、機体の前部にミッションケース17が固定され、ミッションケース17の前部に連結された支持フレーム18にエンジン19が支持されている。ミッションケース17の右及び左の横側部に右及び左の前車軸ケース20が連結されており、右及び左の前輪1が右及び左の前車軸ケース20の縦軸芯周りに操向自在に支持されている。
【0025】
図1及び図2に示すように、ミッションケース17の左の横側部における上部の前部に静油圧式無段変速装置21が連結されており、エンジン19の動力が静油圧式無段変速装置21の入力軸21aに伝動ベルト(図示せず)を介して伝達されている。静油圧式無段変速装置21は中立停止位置を備え、前進側及び後進側に無段階に変速自在に構成されている。図2及び図3に示すように、静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸2bがミッションケース17の内部に入り込んで、略同じ高さになるように前後(静油圧式無段変速装置21の入力軸21aが前側で、静油圧式無段変速装置21の出力軸2bが後側)に配置されており、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aがミッションケース17の前部の上部に位置してミッションケース17の前の壁部17aに近接している。
【0026】
図2及び図3に示すように、伝動軸22がベアリング23を介して回転自在にミッションケース17に支持されて、静油圧式無段変速装置21の出力軸21bと伝動軸22とがスプライン構造により接続されている。伝動軸22に低速ギヤ24及び高速ギヤ25が固定されており、伝動軸22と平行に配置された伝動軸26に、シフトギヤ27がスプライン構造にて伝動軸26と一体回転及びスライド自在に外嵌されている。これにより、シフトギヤ26をスライド操作して低速ギヤ24及び高速ギヤ25に咬合させることにより、伝動軸22の動力が高低2段に変速されて伝動軸26に伝達される。
【0027】
図2及び図3に示すように、ミッションケース17、右及び左の前車軸ケース20に亘って一対の伝動軸28が突き合わせて配置されて、一対の伝動軸28の間にデフ機構29が備えられており、デフ機構29のケース29aがベアリング33を介して回転自在にミッションケース17に支持されている。伝動軸26に伝動ギヤ30が固定されており、デフ機構29のケース29aに固定された伝動ギヤ31が伝動ギヤ30に咬合している。
【0028】
図2に示すように、円筒部材32がキー構造により一方の伝動軸28に一体回転及びスライド自在に外嵌されており、円筒部材32をスライド操作する操作軸41、及び操作軸41に連係されたデフロックペダル(図示せず)が備えられている。これにより、デフロックペダルを踏み操作すると、操作軸41が回転操作され、円筒部材32がスライド操作されてデフ機構29のケース29aの端部に咬合するのであり、円筒部材32をデフ機構29のケース29aの端部に咬合させることによって、デフ機構29をロック状態とすることができる。
【0029】
図2に示すように、ミッションケース17の後部に走行出力軸34が備えられて後向きに突出しており、デフ機構29のケース29aに固定されたベベルギヤ35が、走行出力軸34に備えられたベベルギヤ36に咬合している。図1に示すように、右及び左の後輪2を支持する後車軸ケース37が備えられて、走行出力軸34と後車軸ケース37の入力軸(図示せず)とに亘って伝動軸38が接続されている。
これにより、図1及び図2に示すように、静油圧式無段変速装置21の出力軸21bの動力が、伝動軸22,26、デフ機構29、伝動軸28を介して右及び左の前輪1に伝達され、デフ機構29のケース29a、走行出力軸34及び伝動軸38を介して右及び左の後輪2に伝達される。
【0030】
図2に示すように、ミッションケース17の内部の壁部と走行出力軸34との間に複数の摩擦板39が備えられ、円盤状の操作部材40が走行出力軸34に相対回転自在に外嵌されており、操作部材40をスライド操作する操作軸42、及び操作軸42に連係されたブレーキペダル(図示せず)が備えられ、ブレーキペダルと静油圧式無段変速装置21とが機械的に連係されている。これにより、ブレーキペダルを踏み操作すると、静油圧式無段変速装置21が中立停止位置に操作されて、操作軸42が回転操作され、操作部材40がスライド操作されて、操作部材49が摩擦板39を押圧し、走行出力軸34に制動が掛かる。走行出力軸34に制動が掛けられると、デフ機構29及び伝動軸28を介して右及び左の前輪1に制動が掛かるのであり、走行出力軸34及び伝動軸38を介して右及び左の後輪2に制動が掛かる。
【0031】
[3]
次に、ミッションケース17における苗植付装置5への伝動構造について説明する。
図2に示すように、円筒状の伝動ギヤ43がワンウェイクラッチ44を介して伝動軸22に外嵌されており、ワンウェイクラッチ44により静油圧式無段変速装置21の出力軸21bの前進の動力が伝動ギヤ43に伝達され、ワンウェイクラッチ44により静油圧式無段変速装置21の出力軸21bの後進の動力が伝動ギヤ43に伝達されないように構成されている。
【0032】
図2,3,5に示すように、伝動ギヤ45及び6枚の伝動ギヤ46が一体で回転するように互いに連結されて、伝動ギヤ45及び6枚の伝動ギヤ46が伝動軸26に相対回転自在に外嵌されており、伝動ギヤ43,45が咬合している。伝動軸26と平行に配置された伝動軸47に6枚の変速ギヤ48が相対回転自在に外嵌されて、6枚の伝動ギヤ46及び変速ギヤ48の各々が咬合しており、6枚の変速ギヤ48のうちの一つの変速ギヤ48を選択して伝動軸47に連結及び連結解除自在な操作ロッド49が備えられている。以上のように、6枚の伝動ギヤ46及び変速ギヤ48及び操作ロッド49等により、株間変速装置50が構成されており、操作ロッド49により6枚の変速ギヤ48のうちの一つの変速ギヤ48を選択して伝動軸47に連結することによって、伝動軸26の動力が6段に変速されて伝動軸47に伝達される。
【0033】
図5に示すように、ミッションケース17の後部の上部に出力軸51が備えられて後向きに突出しており、出力軸51に相対回転自在に外嵌されたベベルギヤ52が、伝動軸47に固定されたベベルギヤ53に咬合している。シフト部材54がスプライン構造により出力軸51と一体回転及びスライド自在に外嵌され、シフト部材54をベベルギヤ52との咬合側に付勢するバネ55が備えられて、シフト部材54をベベルギヤ52から離し操作する操作ロッド56が備えられており、伝動軸47の動力を出力軸51に伝動及び遮断自在な植付クラッチ57が構成されている。図1及び図5に示すように、出力軸51と苗植付装置5の入力軸(図示せず)とに亘って、伝動軸58が接続されている。
これにより、図1,2,5に示すように、伝動軸26の動力が、株間変速装置50、ベベルギヤ52,53、植付クラッチ57、出力軸51及び伝動軸58を介して苗植付装置5に伝達される。
【0034】
[4]
次に、ミッションケース17における油圧ポンプ59の伝動構造について説明する。
図2,3,4に示すように、ミッションケース17の右の横側部における上部の前部に油圧ポンプ59が連結されており、油圧ポンプ59の入力軸59aがミッションケース17の内部に入り込んでいる。静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと油圧ポンプ59の入力軸59aとが同芯状に配置されており、油圧ポンプ59の入力軸59aがミッションケース17の前部の上部に位置してミッションケース17の前の壁部17aに近接している。
【0035】
図2,3,4に示すように、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと油圧ポンプ59の入力軸59aとに亘って駆動軸60が配置されており、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと駆動軸60とが円筒状の連結部材61を介してスプライン構造により接続され、油圧ポンプ59の入力軸59aと駆動軸60とが円筒状の連結部材62を介して接続されている。これにより、駆動軸60がミッションケース17の内部に左右方向に沿って配置され、ミッションケース17の前の壁部17aに沿って配置される状態となる。これにより、前項[2]に記載のように、エンジン19の動力が静油圧式無段変速装置21の入力軸21aに伝達され、駆動軸60を介して油圧ポンプ59に伝達されて、油圧ポンプ59が駆動される。
【0036】
図2,3,4に示すように、ミッションケース17の内部に潤滑油が満たされて、ミッションケース17がオイルバス化されており、ミッションケース17のオイルレベルは静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21bよりも少し上側に設定されている。静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21bよりも低い位置に、伝動軸26,47及び株間変速装置50、出力軸51、デフ機構29及び伝動軸28、右及び左の前車軸ケース20、走行出力軸34が配置されている。後述する[5]に記載のように、油圧式のパワーステアリング機構63がミッションケース17の前部の上部に連結されており、上部に開口部76aを備えたブリーザパイプ76がパワーステアリング機構63の前側に備えられ、オイルレベルゲージ77がパワーステアリング機構63の後側に備えられている。
【0037】
図2,3,4に示すように、静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21bを囲むボス部17b,17cがミッションケース17に備えられ、油圧ポンプ59の入力軸59aを囲むボス部17dがミッションケース17に備えられており、ミッションケース17のボス部17bの内周部に一対の半円状の切欠き部17eが形成されている。
【0038】
これにより、図2,3,4に示すように、駆動軸60がミッションケース17の潤滑油に入った状態となっており、駆動軸60と連結部材61,62とを接続するスプライン部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。ミッションケース17の潤滑油がベアリング23を通ってミッションケース17のボス部17cの内部に入り込み、静油圧式無段変速装置21の出力軸21bと伝動軸22とを接続するスプライン部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。
【0039】
図2,3,4に示すように、ミッションケース17の潤滑油がミッションケース17の切欠き部17e、及びミッションケース17のボス部17bと連結部材61との間の隙間を通って、ミッションケース17のボス部17bの内部に入り込み、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと連結部材61とを接続するスプライン部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。ミッションケース17の潤滑油がミッションケース17のボス部17dと連結部材62との間の隙間を通って、ミッションケース17のボス部17dの内部に入り込み、油圧ポンプ59の入力軸59aと連結部材62とを接続するスプライン部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。
【0040】
[5]
次に、右及び左の前輪1の操向構造について説明する。
図2,3,4に示すように、油圧式のパワーステアリング機構63がミッションケース17の前部の上部に連結されており、ミッションケース17及びパワーステアリング機構63の上側に操縦ハンドル64(図1参照)が備えられて、パワーステアリング機構63と操縦ハンドル64とがステアリング軸(図示せず)を介して連動連結されている。
【0041】
図2,3,4に示すように、ミッションケース17の前の壁部17aに沿って、ステアリング軸65がミッションケース17の前の壁部17aと駆動軸60との間に上下方向に通して配置されており、ミッションケース17の内部において、左右方向に沿って配置され駆動軸60と、上下方向に沿って配置されたステアリング軸65とが交差する状態となっている。
【0042】
図3及び図4に示すように、ステアリング軸65の下部にギヤ65aが形成されて、ステアリング軸65の下部がベアリング66を介して回転自在にミッションケース17に支持されている。ステアリング軸65の上部にボス部65bがスプライン構造により接続されて、ステアリング軸65のボス部65bがブッシュ67を介してミッションケース17のボス部17fに回転自在に支持されており、パワーステアリング機構63の出力軸63aとステアリング軸65のボス部65bとがスプライン構造により接続されている。
【0043】
図3に示すように、ミッションケース17の下部に操向軸68が回転自在に支持され、操向軸68の上部に固定されたギヤ68aがステアリング軸65のギヤ65aに咬合しており、操向軸68の下部に固定された操向部材68bと右及び左の前輪1とに亘ってタイロッド(図示せず)が接続されている。これにより、操縦ハンドル64を操作すると、パワーステアリング機構63を介してステアリング軸65が回転操作され、操向軸68の操向部材68bが揺動操作されて、右及び左の前輪1が操向操作される。
【0044】
図4に示すように、ミッションケース17の右の横側部における下部の前部にフィルター70が連結されて、ミッションケース17の右の横側部(壁部)に形成された内部油路17gが、フィルター70から油圧ポンプ59に亘って接続されている。油圧ポンプ59とパワーステアリング機構63とに亘って油圧配管71が接続されており、油圧リシンダ4(図1参照)に作動油を給排操作する制御弁(図示せず)と、パワーステアリング機構63とに亘って油圧配管72が接続されている。
【0045】
これにより、図4に示すように、ミッションケース17の潤滑油が作動油として吸入口(図示せず)からフィルター70に吸入され、フィルター70からミッションケース17の内部油路17gを介して油圧ポンプ59に供給される。油圧ポンプ59の作動油が油圧配管71を介してパワーステアリング機構63に供給され、油圧配管72を介して制御弁に供給されるのであり、制御弁からミッションケース17に戻される。
【0046】
図3及び図4に示すように、ミッションケース17の内部において、静油圧式無段変速装置21からオーバーフローした作動油を排出する配管73から延出され、配管73がミッションケース17の左の横側部(壁部)の内面に沿って、駆動軸60と伝動軸26との間を下方に延出され後方に延出されて、左の前車軸ケース20に接続されている。ミッションケース17の左の横側部(壁部)の内面にコ字状の受け部17hが一体的に形成されて、配管73がミッションケース17の受け部17hに入れ込まれており、ボルト74及び座金75により配管73が固定されている。
これにより、図2,3,4に示すように、静油圧式無段変速装置21からオーバーフローした作動油が配管73を介して左の前車軸ケース20に戻されるのであり、左の前車軸ケース20の作動油がベアリング33を通ってミッションケース17の内部に戻る。
【0047】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、図2の静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21b、油圧ポンプ59の付近を図6に示すように構成してもよい。
図6に示すように、駆動軸60がベアリング78を介して回転自在にミッションケース17に支持されており、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと駆動軸60とが連結部材61(図2参照)を介さずにスプライン構造により接続され、油圧ポンプ59の入力軸59aと駆動軸60とが連結部材62(図2参照)を介さずに小判構造により接続されている。
【0048】
これにより、図6に示すように、ミッションケース17の潤滑油がベアリング78を通ってミッションケース17のボス部17bの内部に入り込み、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと駆動軸60とを接続するスプライン部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。ミッションケース17の潤滑油がベアリング78を通ってミッションケース17のボス部17dの内部に入り込み、油圧ポンプ59の入力軸59aと駆動軸60とを接続する小判部にミッションケース17の潤滑油が入り込む。
【0049】
図6に示すように、駆動軸60に伝動ギヤ79が相対回転自在に外嵌され、駆動軸60にシフト部材80がスプライン構造にて駆動軸60と一体回転及びスライド自在に外嵌されている。静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21bの間に伝動ギヤ81が配置されており、伝動ギヤ81が低速ギヤ24及び伝動ギヤ79に咬合している。静油圧式無段変速装置21が、中立停止位置、中立停止位置から後進側の最高速位置、中立停止位置から前進側の最高速位置の手前の位置に操作されている状態では、シフト部材80は伝動ギヤ79から離間している(図6参照)。静油圧式無段変速装置21が前進側の最高速位置に操作されると、シフト部材80が図6の紙面左方にスライド操作されて伝動ギヤ79に咬合する。
【0050】
図6に示すように、静油圧式無段変速装置21を前進側の最高速位置に操作した場合、静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21bが同速度で同方向に回転するように、静油圧式無段変速装置21の内部が設定されているが、実際には作動油のリーク等により静油圧式無段変速装置21の入力軸21aよりも出力軸21bが僅かに低速で回転する。伝動ギヤ79,81から低速ギヤ24への減速比が「1」に設定されている。これにより、静油圧式無段変速装置21の前進側の最高速位置において、シフト部材80を伝動ギヤ79に咬合させることにより、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aに伝達された動力が、静油圧式無段変速装置21の内部の油圧回路を介して、静油圧式無段変速装置21の出力軸21bから伝動軸22に伝達されるのに加えて、伝動ギヤ79,81及び低速ギヤ24を介して伝動軸22に伝達される。
【0051】
静油圧式無段変速装置21の油圧ポンプ(図示せず)及び油圧モータ(図示せず)を接続する一対の油路(図示せず)において、一対の油路の中間部分同士を接続するバイパス油路(図示せず)(通常は閉操作されている)が備えられており、静油圧式無段変速装置21の前進側の最高速位置においてシフト部材80が伝動ギヤ79に咬合すると、バイパス油路が開操作(連通状態)に操作される。これにより、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aから伝動ギヤ79,81及び低速ギヤ24を介しての動力に伝達に対して、静油圧式無段変速装置21が抵抗にならないようにしている。
【0052】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]において、ミッションケース17の右の横側部に静油圧式無段変速装置21を備え、ミッションケース17の左の横側部に油圧ポンプ59を備えるように構成してもよい。パワーステアリング機構63を備えずに、操縦ハンドル64とステアリング軸65とを連動連結するように構成してもよい。エンジン19を機体の前部に備えずに、運転座席11の下側に備えるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】ミッションケースの横断平面図
【図3】ミッションケースの前部の縦断側面図
【図4】ミッションケースの前部の縦断正面図
【図5】ミッションケースの出力軸の付近の横断平面図
【図6】発明の実施の第1別形態におけるミッションケースの前部の横断平面図
【符号の説明】
【0054】
1 前輪
17 ミッションケース
17a ミッションケースの壁部
19 エンジン
20 前車軸ケース
21 静油圧式無段変速装置
21a 静油圧式無段変速装置の入力軸
59 油圧ポンプ
60 駆動軸
64 操縦ハンドル
65 ステアリング軸
73 油路部材
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成17年9月12日(2005.9.12)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎


【公開番号】 特開2007−74922(P2007−74922A)
【公開日】 平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願番号】 特願2005−263832(P2005−263832)