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【発明の名称】 トラクタの自動耕深制御装置
【発明者】 【氏名】吉田 貞治

【要約】 【課題】トラクタの自動耕深制御装置において、ロータリ耕耘装置のトラクタに対する高さにかかわらず、同じ設定耕深に対する実耕深を安定させることができるようにする。

【解決手段】リフトアーム4の上下揺動に連動して後カバー19と油圧制御機構10との連係状態を変更する連係変更手段を設け、同じ設定耕深に安定維持された時の後カバー19の姿勢が、リフトアーム4が上方に揺動されているほどロータリカバー18に対して下方に揺動変位した姿勢となるように、リフトアーム4の上下揺動姿勢とを後カバー19の姿勢とを連係してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後部にリフトアームによって駆動昇降されるリンク機構を介してロータリ耕耘装置を連結し、このロータリ耕耘装置に備えられたロータリカバーの後端部に、上下揺動可能に後カバーを連結し、前記後カバーの揺動変位に基づいて油圧制御機構を作動させてリフトアームを昇降制御するよう構成したトラクタの自動耕深制御装置において、
前記リフトアームの上下揺動に連動して前記後カバーと油圧制御機構との連係状態を変更する連係変更手段を設け、同じ設定耕深に安定維持された時の後カバーの姿勢が、リフトアームが上方に揺動されているほど前記ロータリカバーに対して下方に揺動変位した姿勢となるように、リフトアームの上下揺動姿勢とを後カバーの姿勢とを連係してあることを特徴とするトラクタの自動耕深制御装置。
【請求項2】
前記後カバーと油圧制御機構とをレリーズ式のセンサワイヤで連動連結するとともに、このセンサワイヤのアウタ端部を前記リフトアームの上下揺動に連動してワイヤ作動方向に変位させるよう構成してある請求項1記載のトラクタの自動耕深制御装置。
【請求項3】
前記リフトアームの基部にリフトアームと一体揺動する作動アームを設け、この作動アームに、前記センサワイヤにおける前方のアウタ端部を支持してある請求項2記載のトラクタの自動耕深制御装置。
【請求項4】
前記リンク機構を、ロータリ耕耘装置を一点回りに上下揺動自在に連結支持する2点リンク機構で構成してある請求項1〜3のいずれか一項に記載のトラクタの自動耕深制御装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの後部にリフトアームによって駆動昇降されるリンク機構を介してロータリ耕耘装置を連結し、このロータリ耕耘装置に備えられたロータリカバーの後端部に、上下揺動可能に後カバーを連結し、後部カバーの揺動変位に基づいて油圧制御機構を作動させてリフトアームを昇降制御するよう構成したトラクタの自動耕深制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ耕耘装置は、一般に、3点リンク構造あるいは2点リンク構造のリンク機構を介して連結されるので、上昇させるほどロータリ耕耘装置は前方に傾斜することになる。このために、ロータリカバーに対して後カバーの揺動姿勢を設定角度に制御する上記自動耕深制御では、設定耕深が同じであってもリフトアームの揺動姿勢によって実際の耕深に差異が発生する。
【0003】
例えば、図3に示すように、トラクタの後部に2点リンク構造のリンク機構2を介してロータリ耕耘装置3を連結した場合、同図(イ)に示すように、リフトアーム4が低い姿勢にある時に、ロータリカバー18に対する後カバー19の姿勢を所定の姿勢にするための耕深d1と、同図(ロ)に示すように、リフトアーム4が高い姿勢にある時に、ロータリカバー18に対する後カバー19の姿勢を所定の姿勢にするための耕深d2とを比べると、リフトアーム4が高い姿勢にあってロータリ耕耘装置3が前方に傾斜した時の耕深d2の方が大きくなる。
【0004】
従って、水分の多い圃場ではトラクタが沈下しやすいために、その沈下分だけロータリ耕耘装置は沈下の無い場合よりもトラクタに対して高い位置で使用されることになるので、上記理由から、同じ設定耕深に対する実際の耕深は沈下のある場合の方が沈下の無い場合よりも大きくなってしまう。また、水分の多い圃場では耕耘跡の土の盛り上がりが少なくて、土の盛り上がりによる後カバーの上方変位がもたらされ難いので、後カバーの上方揺動に基づく上昇制御が行われに難くなり、一層実耕深が大きくなる傾向がある。
【0005】
そこで、後カバーを枢支連結したロータリカバーを、ローター軸心を中心に前後に回動調節可能に構成して、ロータリ耕耘装置全体の前後傾斜姿勢の変化にかかわらずロータリカバーを圃場に対して所定の姿勢に修正することで、上記不具合を解消することができるようにした手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−214610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で示された上記手段によると、ロータリ耕耘装置がトラクタに対して高く持上げられて使用される場合に、ロータリ耕耘装置が前方に傾斜した分、ロータリカバーを後方に回動調節することで、ロータリカバーに対する後カバーの揺動姿勢を一定に維持するように昇降制御した際の実耕深を、ロータリ耕耘装置のトラクタに対する高さにかかわらず安定させることが可能となるのであるが、ロータリ耕耘装置の傾斜姿勢に応じてロータリカバーを手動で姿勢調節操作する必要があり、操作が煩わしいものになるとともに、調節量を間違えると所望の性能を発揮しなくなるものであった。また、ロータリカバーを前後に回動調節可能に装着する構造が必要になり、ロータリ耕耘装置自体のコストアップを招くことにもなる。
【0008】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、ロータリ耕耘装置のトラクタに対する高さにかかわらず、同じ設定耕深に対する実耕深を安定させることができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、トラクタの後部にリフトアームによって駆動昇降されるリンク機構を介してロータリ耕耘装置を連結し、このロータリ耕耘装置に備えられたロータリカバーの後端部に、上下揺動可能に後カバーを連結し、前記後部カバーの揺動変位に基づいて油圧制御機構を作動させてリフトアームを昇降制御するよう構成したトラクタの自動耕深制御装置において、
前記リフトアームの上下揺動に連動して前記後カバーと油圧制御機構との連係状態を変更する連係変更手段を設け、同じ設定耕深に安定維持された時の後カバーの姿勢が、リフトアームが上方に揺動されているほど前記ロータリカバーに対して下方に揺動変位した姿勢となるように、リフトアームの上下揺動姿勢とを後カバーの姿勢とを連係してあることを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、リフトアームを上方に揺動させた状態、つまり、ロータリ耕耘装置がトラクタに対して高く持ち上げられて作業する時にはロータリ耕耘装置の姿勢が前方に傾斜するが、制御中立時における後カバーのロータリカバーに対する姿勢は、リフトアームを上方に揺動させない時の制御中立時における後カバーのロータリカバーに対する姿勢よりも下方に揺動した姿勢に自動修正されることになり、ロータリ耕耘装置の下端から後カバーの後端接地点までの高さ(実耕深)は、上記自動修正がなされない場合より小さいものとなる。つまり、ロータリ耕耘装置の前方傾斜に伴う耕深の増大が抑制されることになる。
【0011】
従って、第1の発明によると、ロータリ耕耘装置のトラクタに対する高さにかかわらず、同じ設定耕深に対する実耕深を安定させることができるようになった。しかも、人為的な調整操作は不要であるので、調整忘れや調整間違いのおそれがなく、常に所望の自動耕深制御を良好に行うことができる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記後カバーと油圧制御機構とをレリーズ式のセンサワイヤで連動連結するとともに、このセンサワイヤのアウタ端部を前記リフトアームの上下揺動に連動してワイヤ作動方向に変位させるよう構成してあるものである。
【0013】
上記構成によると、センサワイヤの構造を有効に活用して所期の自動調整を機械的に行うことができ、上記第1の発明を好適に実施することができる。
【0014】
第3の発明は、上記第2の発明において、
前記リフトアームの基部にリフトアームと一体揺動する作動アームを設け、この作動アームに、前記センサワイヤにおける前方のアウタ端部を支持してあるものである。
【0015】
上記構成によると、一般にはトラクタの適所にセンサワイヤにおける前方のアウタ端部を支持するワイヤ受け金具を固設する構造を、リフトアームと一体揺動する作動アームにセンサワイヤにおける前方のアウタ端部を支持する簡単な構造に変更するだけで、所期の自動調整を機械的に行うことができ、上記第2の発明の特徴を一層顕著に発揮させることができる。
【0016】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記リンク機構を、ロータリ耕耘装置を一点回りに上下揺動自在に連結支持する2点リンク構造で構成してあるものである。
【0017】
上記構成によると、2点リンク構造のリンク機構を介してロータリ耕耘装置を支持すれば、リフトアームの上下揺動によってロータリ耕耘装置の前後方での傾斜向姿勢が大きく変化して、実耕深が変動しやすいので、本発明の効果を特に有効に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に、ロータリ耕耘仕様に構成された農用トラクタの側面が示されている。この農用トラクタは、4輪走行するトラクタ本機1の後部にリンク機構2を介してロータリ耕耘装置3が連結され、トラクタ1の後部上方に配備された左右一対のリフトアーム4を内装されリフトシリンダ5で上下に駆動揺動することで、ロータリ耕耘装置3を昇降することができるようになっている。
【0019】
前記リンク機構2は、トタクタ1の後端に備えられたヒッチ6に、ロータリ耕耘装置3のロータリケース7から前方に突設された支持アーム8を横向きの支点P周りに一点で上下揺動可能に連結した2点リンク構造が採用されており、左右のリフトアーム4と支持アーム8とがそれぞれリフトロッド9で連結されている。
【0020】
前記リフトシリンダ5は、圧油の供給によって伸長作動してリフトアーム4を駆動上昇させ、排油によって短縮作動してリフトアーム4を自重下降させる単動型油圧シリンダが利用されており、油圧制御機構10に連通接続されている。
【0021】
詳細な構造は省略するが、図2に示すように、前記油圧制御機構10には機械式のポジション制御バルブ(図示せず)が含まれており、このポジション制御バルブにポジションレバー12、および、オートレバー13が連係されている。この油圧制御機構10では、ロータリ耕耘装置3をポジションレバー12で設定された高さにまで移動させるポジション制御と、ロータリ耕耘装置3をオートレバー13で設定された設定耕深に安定維持する自動耕深制御を実行することが可能となっており、以下、各制御の概略を説明する。
【0022】
「ポジション制御」
【0023】
ポジション制御においては、オートレバー13を前方の最深位置(オート切り)に操作保持した状態で、ポジションレバー12を任意の高さ位置に操作保持する。ポジションレバー12を後方(浅い)あるいは前方(深い)に操作すると、ポジション制御バルブが切換えられてリフトシリンダ5が上昇作動あるいは下降作動し、リフトアーム4の作動がフィードバックされてポジション制御バルブが中立側に復帰操作され、リフトアーム4がポジションレバー12の操作位置に対応した高さに至るとポジション制御バルブが中立に復帰して昇降作動が停止する。つまり、この「ポジション制御」においては、ロータリ耕耘装置3をポジションレバー12で設定された任意の高さに移動させて固定することができるのである。
【0024】
「自動耕深制御」
【0025】
自動耕深制御においては、オートレバー13の操作によって基準となる設定耕深が設定されるとともに、ロータリ耕耘装置3の実耕深が機械的に検出され、検出された実耕深が設定耕深から外れると、これを是正する方向にポジション制御バルブを操作するように作動するものであり、ロータリ耕耘装置3の実耕深が以下のようにして機械的に検出される。
【0026】
前記ロータリ耕耘装置3は、トラクタ1から取り出された作業用動力を受けるロータリケース7の下部に、ロータ軸15に多数の耕耘爪16を取付けてなる耕耘ロータ17が装備されるとともに、この耕耘ロータ17の上部を覆うロータリカバー18がロータリケース7に固着され、かつ、ロータリカバー18の後端部に後カバー19が支点q周りに上下揺動自在に連結された構造となっており、後カバー19が押圧バネ20によって下方に揺動付勢されて、耕起跡を適度な力で押圧して鎮圧整地するよう構成されている。
【0027】
前記後カバー19は、「自動耕深制御」における耕深検出用の接地センサとしての機能を備えており、ロータリカバー18の上面に支点r周りに揺動可能に装備された検知アーム21の下端部と後カバー19とがリンク22を介して連動連結されるとともに、検知アーム21の上端にレリーズワイヤを利用したセンサワイヤ23のインナ後端が連結されている。
【0028】
前記センサワイヤ23のアウタ後端部23rはロータリケース7の上部に備えたワイヤ受金具24に固定支持されており、耕深が深くなって後カバー19が上方に揺動するとセンサワイヤ23のインナ後端が後方に引き出され、耕深が浅くなって後カバー19が下方に揺動するとセンサワイヤ23のインナ後端が前方に引き込まれるようになっている。つまり、実耕深の変化がセンサワイヤ23におけるインナ変位として検知されて、前記油圧制御機構10のセンサアーム25に伝達されるようになっているのである。
【0029】
自動耕深制御を実行するに際しては、ポジションレバー12を最前方位置に切換え保持した状態で、オートレバー13を任意の深さ位置に操作保持する。ここで、ポジションレバー12はポジション制御バルブとの機械的な連係が断たれて昇降制御に無関係となる。
【0030】
オートレバー13を最深位置(オート切り)から後方に外れた任意の高さ位置に操作すると、その操作位置に対応して設定耕深が決められる。オートレバー13を最深位置(オート切り)から後方に操作することで、前記センサアーム25がポジション制御バルブに連係された状態となり、後カバー19の揺動によって検出された実耕深がオートレバー13で設定された設定耕深よりも深いと、センサワイヤ23のインナ前部が後方に変位されることでセンアアーム25上昇側に操作され、逆に、検出された実耕深が設定耕深よりも浅いと、センサワイヤ23のインナ前部が前方に変位されることでセンサアーム25が下降側に操作され、もって、実耕深が常に設定耕深(不感帯を含む)に安定維持されるのである。
【0031】
ここで、前記センサワイヤ23における前方のアウタ端部23fは、リフトアーム4の姿勢に応じて自動的にワイヤ作動方向に位置調整されるようになっている。つまり、リフトアーム4の基部には、リフトアーム4と一体揺動する作動アーム26が下方に向けて設けられ、この作動アーム26の先端部にセンサワイヤ23における前方のアウタ端部23fが連結支持されている。
【0032】
この構成において、オートレバー13によって設定された設定耕深を同じとして、リフトアーム4を下げて自動耕深制御した場合と、リフトアーム4を上げて自動耕深制御した場合とを比較した状態が図2に示されている。
【0033】
図2(ロ)に示すように、リフトアーム4が上方に揺動された状態、つまり、ロータリ耕耘装3がトラクタ1に対して高く持ち上げられて作業する時には、ロータリ耕耘装置3の姿勢が前方に傾斜するが、リフトアーム4の上方揺動によってセンサワイヤ23における前方のアウタ端部23fが、図2(イ)に示されるリフトアーム下降時よりも後方に変位されており、このために、制御中立時における後カバー19のロータリカバー18に対する姿勢は、図2(イ)に示される場合の後カバー19のロータリカバー18に対する姿勢よりも下方に揺動した姿勢に自動修正されることになり、耕耘ロータ17の下端から後カバー19の後端接地点までの高さ(実耕深)dは、アウタ端部23fが位置固定された場合〔図3(ロ)参照〕より小さいものとなる。つまり、リフトアーム4の高さが変わってロータリ耕耘装置3の前方傾斜が変化しても、同じ設定耕深に対応した実耕深dは略一定となるのである。
【0034】
〔他の実施例〕
【0035】
(1)上記実施例ではセンサワイヤ23の前方のアウタ端部23fをリフトアーム4の昇降に連動して位置調整しているが、センサワイヤ23の後方のアウタ端部23rを自動的に位置調節して同様な機能を発揮させることもできる。
【0036】
(2)リフトアーム4の上下揺動を検知する手段としては、上記のようにリフトアーム4から作動アーム26を延出する他に、リフトアーム4とリフトロッド9との相対角度変化、リフトロッド9と支持アーム8との相対角度変化、ヒッチ6と支持アーム8との相対角度変化、など、ロータリ耕耘装置3の昇降によって相対姿勢が変化する二部材を利用することも可能である。
【0037】
(3)前記後カバー19の揺動角度をポテンショメータなどの角度センサで検知して実耕深を検知し、その検知情報を電磁制御バルブを含む油圧制御装置10に伝達して自動耕深制御を行う形態のものに適用することもできる。この場合、リフトアーム4の揺動位置をポテンショメータなどの角度センサで検知し、この検知結果に基づいて後カバー19の検知角度情報を調整変更することで、上記と同様な機能を発揮させることができる。
【0038】
(4)前記リンク機構2にトップリンクとロアーリンクを備えた3点リンク構造を採用した仕様においても、リフトアーム4の揺動位置によってロータリ耕耘装置3の傾斜姿勢が変化して、2点リンク構造の場合と同様に、同じ設定耕深に対する実耕深が変化するので、本発明を適用すればリフトアーム4の高さにかかわらず同じ設定耕深に対する実耕深の変化を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】農用トラクタの全体側面図
【図2】リフトアーム高さを異ならせた自動耕深制御状態を示す側面図
【図3】従来構造によるリフトアーム高さを異ならせた自動耕深制御状態を示す側面図
【符号の説明】
【0040】
1 トラクタ
2 リンク機構
3 ロータリ耕耘装置
4 リフトアーム
10 油圧制御機構
23 センサワイヤ
23f アウタ端部
26 作動アーム
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成17年8月17日(2005.8.17)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎


【公開番号】 特開2007−49925(P2007−49925A)
【公開日】 平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願番号】 特願2005−236613(P2005−236613)