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【発明の名称】 水田作業機のローリング制御装置
【発明者】 【氏名】吉川 浩司

【氏名】石見 憲一

【氏名】林 繁樹

【要約】 【課題】走行機体に連結された水田作業装置を、優れた応答性および高い精度でローリング制御する。

【解決手段】水田作業装置3に左右方向の傾斜角度θを検知する重力式の角度センサ31と、左右方向の傾斜角速度ωを検知する角速度センサ32とを装備し、角度センサ31および角速度センサ32からの検出情報に基づいて得られた検出傾斜角度θと、角速度センサ32で検出された角速度ωと、角速度センサ32で検出された角速度ωを微分して得られた角加速度dω/dtとを加算した演算値Eに基づいてアクチュエータ23の作動速度を決定する制御手段を備えてある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在かつ駆動ローリング自在に連結し、水田作業装置の左右方向での傾斜角度検出情報に基づいてローリング用のアクチュエータを作動制御して、水田作業装置を目標傾斜角度に近づけるよう構成した水田作業機のローリング制御装置において、
前記水田作業装置に左右方向の傾斜角度を重力式に検知する角度センサと、左右方向の傾斜角速度を検知する角速度センサとを装備し、
前記角度センサおよび前記角速度センサからの検出情報に基づいて演算取得された検出傾斜角度と、前記角速度センサで検出された角速度と、前記角速度センサで検出された角速度を微分して得られた角加速度とを加算した演算値に基づいて前記アクチュエータの作動速度を決定する制御手段を備えてあることを特徴とする水田作業機のローリング制御装置。
【請求項2】
前記演算値が所定の閾値を越えると前記アクチュエータを起動させるよう構成してある請求項1記載の水田作業機のローリング制御装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機や水田直播機などの水田作業機に利用されるローリング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機に利用されるローリング制御装置としては、水田作業装置を駆動昇降自在かつ駆動ローリング自在に連結し、水田作業装置の傾斜角検出情報に基づいてローリング用電動アクチュエータを作動制御して、水田作業装置の左右方向の傾斜角を目標傾斜角に安定維持するよう構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−146111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の上記ローリング制御装置においては、水田作業装置に装備した角度センサと加速度センサで左右方向の角度と加速度を検知し、これらセンサの検知情報に基づいてファジー制御を実行して水田作業装置の傾斜姿勢の安定化を図っているのであるが、ファジー制御を好適に実行するためには、種々の作業条件に対応したメンバーシップ函数を構築する必要がある。しかし、水田作業における作業条件は極めて広範であり、例えば、水田条件一つ採ってみても、土質、水量、耕盤深さ、耕盤の均平具合、田面の荒れ具合、など水田条件を決める要素は多くあり、かつ、機体走行の車輪間隔や走行速度がこれらに関係して水田作業装置の傾斜姿勢変化に影響を与えるものであり、多くのテストデータを収集解析した上でメンバーシップ函数を構築する必要があるとともに、機種ごとに異なった特性の制御を行う必要がある。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、合理的な傾斜検知に基づいて優れた応答性かつ高い精度で水田作業装置の左右方向での姿勢を安定維持することができるローリング制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在かつ駆動ローリング自在に連結し、水田作業装置の左右方向での傾斜角度検出情報に基づいてローリング用のアクチュエータを作動制御して、水田作業装置を目標傾斜角度に近づけるよう構成した水田作業機のローリング制御装置において、
前記水田作業装置に左右方向の傾斜角度を重力式に検知する角度センサと、左右方向の傾斜角速度を検知する角速度センサとを装備し、
前記角度センサおよび前記角速度センサからの検出情報に基づいて演算取得された検出傾斜角度と、前記角速度センサで検出された角速度と、前記角速度センサで検出された角速度を微分して得られた角加速度とを加算した演算値に基づいて前記アクチュエータの作動速度を決定する制御手段を備えてあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、角度センサで検出された傾斜角度、角速度センサで検出された角速度を積分して得られた傾斜角度、角速度センサで検出された角速度、検出された角速度を微分して得られた角加速度のいずれかが大ききなるほどアクチュエータの制御速度が速くなって苗植付け装置の傾斜修正方向への作動が速やかに行われる。
【0007】
つまり、苗植付け装置の左右傾斜が大きくなるほど、あるいは、苗植付け装置が急速に左右傾斜するほどアクチュエータが傾斜復帰方向へ速く作動されることになり、目標傾斜姿勢から外れている時間が短いものとなる。
【0008】
この場合、苗植付け装置の左右傾斜は、角度センサで検出された傾斜角度と、角速度センサで検出された角速度を積分して得られた傾斜角度とに基づいて演算することができるので、重力式の角度センサによる検出遅れを角速度センサで補った応答性および精度の高い角度検出を実行することができる。
【0009】
また、アクチュエータの作動速度が角加速度の影響を受けるようにしてあるので、角速度が増加傾向にあると電動アクチュエータが更に速く作動され、逆に、角速度が減少傾向にあるとアクチュエータが速度を抑え気味に作動する。つまり、左右傾斜が激しさを増す状況にあるほど目標傾斜姿勢への修正制御が急速に実行され、左右傾斜が鈍化しかかる状況になるほど修正制御も穏やかに実行されてオーバーシュートが未然に回避されるのである。
【0010】
従って、第1の発明によると、走行機体が水田における耕盤の凹凸等によって左右に傾斜して、走行機体に連結された水田作業装置が同様に傾斜しかかっても、優れた応答性および高い精度の角度検知に基づくローリング制御が実行されて、水田作業装置を所定の傾斜角度に安定維持することができ、左右位置での植付け深さや播種深さを均一化することができる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記演算値が所定の閾値を越えると前記アクチュエータを起動させるよう構成してあるものである。
【0012】
上記構成によると、検出演算された傾斜角度が小さくても、急激に傾斜されようとするだけで演算値が閾値を越えてアクチュエータが起動されることになり、大きな傾斜への発展を未然に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に、本発明に係る水田作業機の一例として施肥装置付きの乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、機体前部にエンジン8が搭載されるとともに4輪駆動で走行可能に構成された走行機体1の後部に、平行四連リンク構造のリンク機構2を介して8条植え仕様の苗植付け装置(水田作業装置)3が昇降自在に連結され、機体後部に施肥装置4が装備されるとともに機体前部の左右に予備苗のせ台5を備えた構造となっており、前記リンク機構2を油圧シリンダ6で上下に駆動揺動することで苗植付け装置3を昇降制御することができるようになっている。また、苗植付け装置3は、リンク機構2の後端下部に前後方向支点P周りにローリング自在に連結されるとともに、リンク機構2の後端上部に備えた駆動機構7によって苗植付け装置3をローリング制御するようになっている。
【0014】
図1、2に示すように、前記苗植付装置3は、横向き角筒状の植付けフレーム11、走行機体1から取り出された作業用動力を受けるフィードケース12、一定ストロークで左右に往復横移動する苗のせ台13、回転式の植付け機構14、および、後部左右に2条分ずつの植付け機構14を備えて植付けフレーム11に並列連結された4個の植付けケース15、田面の植付け箇所を均平整地する5個の整地フロート16、等を備えている。なお、詳細な構造は省略するが、並列配備された整地フロート16群のうちの中央のものは、苗植付け装置3の田面に対する高さを検知する接地センサSFとして利用されており、この接地センサSFの上下揺動変位が電気的に検知され、その検知情報に基づいて前記油圧シリンダ6の制御弁を作動制御することで、苗植付け装置3の対地高さを一定に維持してを植付け深さを安定維持する自動植付け深さ制御が実行されるようになっている。
【0015】
図3に示すように、ローリング用の前記駆動機構7は、リンク機構2の後端上部に連結したブラケット20に前後向き支点Q周りに左右揺動可能な駆動アーム21と、これをギヤ減速機構22介して揺動駆動する電動モータ(アクチュエータ)23とから構成されており、図2に示すように、苗のせ台13を横移動可能に苗のせ面背部から支持するよう前記植付けフレーム11の左右から立設された支柱24を介して横架固定された苗のせ台支持枠25の上部左右箇所と、前記駆動アーム21の遊端とがバネ26を介して連結されている。つまり、苗植付け装置3は駆動アーム21に対して弾性融通をもって所定小範囲で自由ローリング可能に支持されており、苗植付け装置3が整地フロート16を介して接地している状態では、走行機体1が多少左右傾斜しても苗植付け装置3は田面に接地追従するようになっている。
【0016】
そして、前記駆動機構7の電動モータ23は、苗植付け装置3に装備された後述する傾斜角検出手段からの検出情報に基づいて作動制御され、走行機体1が耕盤の凹凸等によって左右に傾斜して苗植付け装置3が傾斜しかかっても、その傾斜を復元させる方向に苗植付け装置3がローリング制御されて、常に目標傾斜角度(一般に水平)に安定維持され、もって、左右の各植付け部位での植付け深さに差異の少ない植付けが行われるようになっている。
【0017】
また、リンク機構2の後端上部に連結した前記ブラケット20と苗のせ台13の背面における左右箇所とに亘ってローリング復帰用バネ27が張設されており、苗のせ台13の往復横移動によって移動方向側のローリング復帰用バネ27が伸ばされることで、苗のせ台横移動に伴う前後方向支点P周りの重量バランスの崩れを是正する方向の回動力がローリング復帰用バネ27によってもたらされるようになっている。
【0018】
前記傾斜角検出手段には、苗植付け装置3の左右方向の傾斜角度を検知する重力式の角度センサ31と、苗植付け装置3における左右方向の角速度を検知する振動ジャイロ型の角速度センサ32とが備えられており、両センサ31,32からの検出情報に基づいて苗植付け装置3をローリング制御するための検出傾斜角度θが以下のようにして算出されるものであり、その演算およびローリング制御を行うブロック図が図4に示されている。
【0019】
つまり、前記角度センサ31からの検出信号(θg)は、ローパスフィルタ33に通されてその低周波成分だけが取得され、また、角速度センサ32で検出された角速度(ω)は、ローカットフィルタ34を通されたのち積分処理されて傾斜角が算出され、この演算値が更にローカットフィルタ35に通されてその高周波成分だけが取得され、次に、角度センサ31からの検出信号(θg)に基づいて取得された低周波成分の傾斜角度(θ1)と、角速度センサ32からの検出信号に基づいて取得された高周波成分の傾斜角度(θ2)とが加算されて、この値が検出傾斜角度(θ)とされる。
【0020】
つまり、苗植付け装置3が急速に傾斜すると、角度センサ31からの検出信号(θg)には振動等による外乱が含まれるとともに、慣性の影響で逆方向の信号が出力されることがあるので、これらを含む高周波成分を除去した値が基本的な傾斜角度(θ1)として取得される。そして、除去された高周波成分を補うために、角速度センサ32で検出された角速度(ω)に基づいて演算取得された高周波成分の傾斜角度(θ2)が低周波成分の前記傾斜角度(θ1)加算され、全体として優れた応答性および高い精度で検出傾斜角度(θ)が算出されるのである。
【0021】
なお、角度センサ31からの検出信号(θg)はセンサ自体に備えられた平滑特性によって傾斜角信号の高周波成分の一部が外乱とともに除去されているので、この除去された高周波成分を補うために角度センサ31の特性に対応した特性のローカットフィルタ34が導入されている。また、ローパスフィルタ33で除去された高周波成分を補うようにローカットフィルタ35の特性が設定される。
【0022】
また、上記のようにして演算された検出傾斜角度(θ)、角速度センサ32で検出された角速度(ω)、および、これを微分処理した角加速度(dω/dt)が、それぞれ所定の係数Kp,Kd,Kddを乗じて加算処理される。
【0023】
上記のように加算演算された値E〔=Kp・θ+Kd・ω+Kdd・(dω/dt)〕は、予め設定された閾値(e)と比較され、この演算値(E)が閾値(e)を越えると電動モータ23が起動される。また、電動モータ23の作動方向は、検出傾斜角度(θ)と予め設定された目標傾斜角度(θ0)とを比較演算処理して決定される。
【0024】
また、前記電動モータ23は間欠制御(PWM制御)されるものであって、上記演算値(E)はそのデューティ比を設定する電圧となっており、この演算値(E)が増大するほどデューティ比が大きくなって電動モータ23の作動速度が速くなる。
【0025】
上記構成によると、角度センサ31からの検出信号(θg)に基づいて得られた傾斜角度(θ1)、角速度センサ32によって検出された角速度(ω)に基づいて得られた傾斜角度(θ2)、角速度センサ32で検出された角速度(ω)、これに基づいて得られた角加速度(dω/dt)、のいずれかが大きくなるほど電動モータ23の作動速度が速くなって、苗植付け装置3の傾斜修正作動が速やかに行われる。つまり、苗植付け装置3の左右傾斜が大きくなるほど、あるいは、苗植付け装置3が急速に左右傾斜するほど電動モータ23が速く作動されることになり、目標傾斜姿勢への復帰が速やかに行われるのである。また、検出演算された傾斜角度が小さくても、急激に傾斜されようとすると電動モータ23が起動されることになり、大きな傾斜への発展を抑制する機能が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】田植機の全体側面図
【図2】苗植付け装置の背面図
【図3】ローリング用駆動機構の縦断側面図
【図4】ローリング制御系のブロック図
【符号の説明】
【0027】
1 走行機体
3 水田作業装置(苗植付け装置)
23 アクチュエータ(電動モータ)
31 角度センサ
32 角速度センサ
θ 検出傾斜角度
E 演算値
θ0 目標傾斜角度
θ1 傾斜角度
θ2 傾斜角度
ω 角速度
dω/dt 角加速度
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成17年7月5日(2005.7.5)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎


【公開番号】 特開2007−14222(P2007−14222A)
【公開日】 平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願番号】 特願2005−196340(P2005−196340)