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【発明の名称】 画像処理装置
【発明者】 【氏名】染谷 郁男
【住所又は居所】東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニー株式会社内

【氏名】菰田 昌博
【住所又は居所】東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニー株式会社内

【氏名】武智 彩
【住所又は居所】東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニー株式会社内

【要約】 【課題】エンハンス処理の周波数帯域を広げ、画質改善の効果を向上するとともに、簡単な回路構成で画像信号に対して2次元におけるエンハンス処理を実現できる画像処理装置を提供する。

【解決手段】エンハンサとして垂直ハイパスフィルタ、垂直ローパスフィルタ及び水平ハイパスフィルタ、水平ローパスフィルタ(100,160,110,120,170)をそれぞれ設け、垂直、水平方向にそれぞれ高周波成分と低周波成分を抽出する。第一水平フィルタ(110)のカットオフ周波数をサンプリング周波数の1/8以下にし、ロールオフ率を略1.0にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に対して垂直方向に高周波成分を抽出する第1の垂直フィルタと、
上記第1の垂直フィルタの出力信号に対して上記画像信号の水平方向に高周波成分を抽
出する第1の水平フィルタと、
上記第1の垂直フィルタの出力信号に対して上記画像信号の水平方向に低周波成分を抽
出する第2の水平フィルタと、
上記第1の水平フィルタの出力を選択的に出力する第1の選択回路と、
上記第1の選択回路の出力と上記第2の水平フィルタの出力とを加算する第1の加算回路と、
を備え、
上記第1の水平フィルタのカットオフ周波数は、信号処理のサンプリング周波数の8分の1以下の周波数であり、ロールオフ率が略1.0に設定されている
画像処理装置。
【請求項2】
上記第1の垂直フィルタのカットオフ周波数は、信号処理のサンプリング周波数の4分の1以下の周波数に設定されている
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記第1の垂直フィルタは、水平方向における上記画像信号の1ライン分のサンプリング値を蓄積する、直列接続されている複数の記憶手段と、
上記複数の記憶手段に蓄積された少なくとも1ライン前の画像信号と現在のラインの画像信号とを所定の重み係数値で加算する垂直フィルタ加算部とを有する
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記第1及び第2の水平フィルタは、水平方向における上記画像信号の複数のサンプリング値に所定の重み係数値を乗算して加算する水平フィルタ加算部を含む
請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記水平フィルタ加算部のタップ数は、上記垂直フィルタ加算部のタップ数より多く設けられている
請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記水平フィルタ加算部において、上記画像信号を水平方向に順次複数サンプリングした中央に位置するタップの入力値に対する重み係数値以外の重み係数値が負に設定されている
請求項4記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記画像信号に対して垂直方向に低周波数成分を抽出する第2の垂直フィルタと、
上記第2の垂直フィルタの出力信号に対して、上記画像信号の水平方向に高周波成分を抽出する第3の水平フィルタと、
上記第1の水平フィルタの出力を選択的に出力する第2の選択回路と、
上記第2の選択回路の出力と上記第3の水平フィルタの出力とを加算する第2の加算回路とをさらに有し、
上記第3の水平フィルタのカットオフ周波数は、信号処理のサンプリング周波数の8分の1以下の周波数であり、ロールオフ率が略1.0に設定されている
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項8】
上記画像信号を所定の遅延時間だけ遅らせて出力する遅延回路と、
上記第1および第2の加算回路の出力と上記遅延回路の出力とを加算する加算手段とを有する
請求項7記載の画像処理装置。
【請求項9】
上記遅延回路の出力と所定の基準信号とを比較する比較回路と、
上記比較回路の比較結果に応じて、上記第1の水平フィルタの出力を選択する選択手段とを有し、
上記加算手段には、上記遅延回路の出力にさらに上記選択手段の出力信号が加算される
請求項8記載の画像処理装置。
【請求項10】
上記第1の水平フィルタから上記選択手段への出力信号を所定の上限値でクリップする非線形処理手段を有する
請求項9記載の画像処理装置。
【請求項11】
第1の加算回路からの出力信号を所定の上限値でクリップする第1の非線形処理手段と、
第2の加算回路からの出力信号を所定の上限値でクリップする第2の非線形処理手段を有する
請求項7記載の画像処理装置。
【請求項12】
上記画像信号の違いに応じて、上記第1の加算回路による上記第2の水平フィルタの出力信号への上記第1の水平フィルタの出力信号の加算、または、上記第2の加算回路による上記第3の水平フィルタの出力信号への上記第1の水平フィルタの出力信号の加算を選択的に行う、
請求項7記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、画像信号の所望の周波数成分、特に高周波成分を強調するエンハンサを用いて画質の改善をはかる画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像に鮮鋭感を出すために、画像信号の高周波成分(高域成分)を強調する、いわゆるエンハンス処理が有効な手段である。このように信号の高域成分を強調する回路は一般的にエンハンサと呼ばれている。
ディスプレイなどの画像表示装置において、表示前の画像信号に対してエンハンス処理を施すことによって、画像のシャープさが改善され、キラキラ感のある画質を実現できる。
【0003】
通常エンハンサは高域通過フィルタ(ハイパスフィルタ)によって実現される。ハイパスフィルタによって画像信号の高域成分を抽出し、抽出した高域成分をもとの画像信号に加えることによって、高域成分が強調された画像信号が得られる。
【0004】
図13は一般的に利用されているエンハンサの一構成例を示している。図示のように、このエンハンサは、ハイパスフィルタ10、非線形処理回路20、加算回路30及びリミッタ40によって構成されている。ハイパスフィルタ10は、遅延回路11、12及び加算回路13によって構成されている。
【0005】
ハイパスフィルタ10において、遅延回路11と12は、入力信号Sinに対してそれぞれ1または2サンプリング周期(TS または2TS )の時間で遅らせて出力する。加算回路13は、3つの信号入力端子(タップ)T1、T2及びT3を有し、これらのタップからの入力信号に対して、予め与えられた係数値で重み付けて加算する。加算回路13の係数値を制御することによって、フィルタの種類及びフィルタの特性を制御できる。
【0006】
ここで、入力信号Sinを時間関数s(t)として表記すると、タップT1,T2とT3の入力信号はそれぞれs(t)、s(t−ΔT)及びs(t−2ΔT)となる。なお、ここで、ΔT=TS またはΔT=2TS である。加算回路の係数値をw1 ,w2 及びw3 とすると、加算回路の出力信号sO (t)は、次式によって与えられる。
【0007】
[数1]
O (t)=w1 ・s(t)+w2 ・s(t−ΔT)
+w3 ・s(t−2ΔT) …(1)
【0008】
非線形処理回路20は、加算回路の出力信号sO (t)に対して非線形処理を施して、処理結果を加算回路30に出力する。
加算回路30は、遅延回路11の出力信号S2 と非線形処理回路の出力信号とを加算し、加算結果をリミッタ40に出力する。
リミッタ40は、入力信号の振幅レベルを所定のしきい値以下に制限して出力する。
【0009】
加算回路13の係数値w1 ,w2 及びw3 を適宜設定することによって、入力信号s(t)に対してハイパスフィルタ処理を実現できる。このため、図13に示す回路は、エンハンサとして機能する。
【0010】
ハイパスフィルタの特性を実現するための係数値の一例は、例えば、−1/4,1/2,−1/4である。即ち、加算回路13において、各タップに与えられた係数値は、図14に示すとおりである。この係数によって得られるハイパスフィルタの特性は、図15に示されている。
また、遅延回路11と12の遅延時間が2TS の場合、1サンプリング分の場合の係数値−1/4,0,1/2,0,−1/4に相当する。この係数によって得られるハイパスフィルタの特性は、図16に示されている。
なお、図15及び図16において、横軸は周波数を、縦軸はフィルタの利得を示している。横軸において、サンプリング周波数fS を単位に周波数を表示している。図示のように、最大周波数は0.5fS であり、即ち、サンプリング定理によって規定された最大周波数である。
【0011】
図15及び図16に示す周波数特性を持つハイパスフィルタを用いることで、入力信号Sinに対して、高域成分を強調するエンハンサを実現できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述した従来のエンハンサにおいて、入力信号の有効帯域に対して強調される帯域は一部分であった。
図17は、例えば、高い解像度を有するHD(High definition )信号の周波数スペクトラムを示すグラフである。HD信号のサンプリング周波数fS が74.25MHzであるため、図17に示すように、37.125MHzの周波数成分まで表現できる。しかし、HD信号自体には、30MHz以上の周波数成分はほとんどなく、上記のフィルタ係数値−1/4,1/2,−1/4を用いたエンハンサの場合、エンハンス効果が限られている。
【0013】
一方、フィルタ係数値−1/4,0,1/2,0,−1/4を用いる場合は、中間の周波数帯域において信号成分が強調されるが、高域成分、例えば30MHz付近の周波数成分に対するエンハンス効果はほとんどない。
さらに、上述した係数値を用いた場合、ハイパスフィルタを通したあとの信号に、信号のエッジ部分に縁取りが発生してしまうという不利益がある。
【0014】
図18及び図19は、入力信号、フィルタの係数値及びエンハンサの出力信号のサンプリング値を示している。図18は、係数値として−1/4,1/2,−1/4を用いた場合を示し、図19は、係数値として−1/4,0,1/2,0,−1/4を用いた場合を示している。
図示のように、係数値として−1/4,0,1/2,0,−1/4を用いた場合出力信号に縁取りが発生してしまう。
【0015】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンハンス処理の周波数帯域を広げ、画質改善の効果を向上するとともに、簡単な回路構成で画像信号に対して2次元におけるエンハンス処理を実現できる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点の画像処理装置は、画像信号に対して垂直方向に高周波成分を抽出する第1の垂直フィルタと、上記第1の垂直フィルタの出力信号に対して上記画像信号の水平方向に高周波成分を抽出する第1の水平フィルタと、上記第1の垂直フィルタの出力信号に対して上記画像信号の水平方向に低周波成分を抽出する第2の水平フィルタと、上記第1の水平フィルタの出力を選択的に出力する第1の選択回路と、上記第1の選択回路の出力と上記第2の水平フィルタの出力とを加算する第1の加算回路と、を備え、上記第1の水平フィルタのカットオフ周波数は、信号処理のサンプリング周波数の8分の1以下の周波数であり、ロールオフ率が略1.0に設定されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の画像処理装置によれば、水平方向における通過帯域を広くとれ、エンハンス効果を向上でき、かつコントラストを改善できる。
また、本発明によれば、1次元のフィルタによって2次元のフィルタリング処理を簡単に実現でき、簡単な回路構成によってより高度なエンハンス効果を実現できる。
さらに、本発明によれば、あるレベル以上の信号に対してのみ垂直・水平両方に高域成分を強調することによって、違和感がなく画質のキラキラ感を回復できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明に係るエンハンサを用いた画像処理装置の一実施形態を示す回路図である。
図示のように、本実施形態の画像処理装置は、垂直ハイパスフィルタ100、水平ハイパスフィルタ110、水平ローパスフィルタ120、スイッチ130、加算回路140、非線形回路150、垂直ローパスフィルタ160、水平ハイパスフィルタ170、スイッチ180、加算回路190、非線形回路200,210、スイッチ220、遅延合わせ回路230、比較回路(コンパレータ)240、加算回路250及びリミッタ260によって構成されている。
【0019】
以下、本実施形態の画像処理装置の各構成部分について説明する。
垂直ハイパスフィルタ100及び垂直ローパスフィルタ160は、それぞれ入力画像信号Sinに対して、垂直方向における高周波数成分(垂直高域)SHHと低周波成分(垂直低域)SHLを出力する。
なお、ここで、画像信号Sinは水平方向のサンプリングデータとして一ラインずつ入力されるとすると、垂直フィルタリング処理のために、水平方向のサンプリングデータを垂直方向のサンプリングデータに変換する下記の変換回路が必要である。
【0020】
図2は、入力される水平方向のサンプリングデータから垂直方向のサンプリングデータを出力する水平−垂直変換回路を含む垂直フィルタの一例を示している。
図示のように、垂直フィルタは、水平−垂直変換回路と加算回路によって構成されている。そのうち、水平−垂直変換回路は、ラインメモリ101と102によって構成されている。これらのラインメモリ101と102は、例えば、シフトレジスタ、FIFO(First in first out)などによって構成され、画像信号の1ライン分のデータを記憶するデータ記憶容量を持つ。また、ラインメモリ101と102は、外部から供給されるサンプリングクロックCKS に応じて、クロック信号CKS の周期毎に入力データを出力側にシフトする。
【0021】
図2に示すように、入力データをD1とし、ラインメモリ101の出力データをD2、ラインメモリ102の出力データをD3とすれば、D1,D2とD3は、垂直方向に隣り合う3つのサンプリングデータとして出力される。
サンプリングデータD1,D2とD3は、図示のように、加算回路103に供給される。なお、加算回路103は、3つの入力タップT1,T2とT3を持ち、それぞれの入力タップにサンプリングデータD1,D2とD3が入力される。加算回路103は、予め設定された係数値で3つの入力データに対して重み付き加算処理を行うことによって、フィルタリング処理を行う。また、係数値を適宜設定することによって、ハイパスフィルタ及びローパスフィルタなど異なる通過帯域特性を持つフィルタを実現できる。
【0022】
ここで、一例として、加算回路103は図14に示す係数値を用いて、垂直方向においてハイパスフィルタリング処理を行うとする。この場合フィルタの周波数特性は図15に示すとおりである。図示のように、ハイパスフィルタのカットオフ周波数fC は約fS /4である。
加算回路103の係数値を変えることによって、垂直フィルタの周波数特性を変更でき、垂直ハイパスフィルタ及び垂直ローパスフィルタを実現できる。
【0023】
なお、上述した垂直フィルタは、2つのラインメモリ及び3つのタップを持つ加算回路によって実現される。本発明の画像処理装置では垂直フィルタの構成はこれに限られない。例えば、よりタップ数の多い加算回路で重み付け加算処理を行うことによって、カットオフ周波数fC がもっと低い垂直ハイパスフィルタを実現できる。しかし、この場合、ラインメモリの数を増やす必要があり、回路規模が大きくなる。このため、本実施形態の画像処理装置において、垂直フィルタの加算回路のタップ数は、水平フィルタの加算回路のタップ数よりも小さく設定される。
【0024】
次に、本実施形態の画像処理装置の水平フィルタについて説明する。図1に示すように、水平フィルタは、水平ハイパスフィルタ110、水平ローパスフィルタ120及び水平ハイパスフィルタ170を含む。
図1に示すように、垂直ハイパスフィルタ100の出力信号SHHは水平ハイパスフィルタ110及び水平ローパスフィルタ120にそれぞれ供給され、垂直ローパスフィルタ160の出力信号SHLは水平ハイパスフィルタ170に供給される。
水平ハイパスフィルタ110,170は、入力信号の高域成分を抽出し、水平ローパスフィルタ120は、入力信号の低域成分を抽出する。
【0025】
以下、図3を参照しつつ、水平ハイパスフィルタの一構成例について説明する。
図3に示すように、水平ハイパスフィルタは、カスケード接続された複数の遅延回路112−1,112−2,…,112−10及び加算回路113によって構成されている。各遅延回路は、入力信号を1サンプリング周期で遅延して出力する。加算回路113は、図示のように、例えば11の入力タップT1,T2,…,T11を有し、各入力タップから入力されるデータに対して所定の係数値を用いて重み付け加算処理を行う。係数値を適宜設定することによって、所望の通過帯域特性を持つフィルタを実現できる。
【0026】
図4は、係数値の一例を示している。この係数値を用いることによって、図5に示すハイパス(高域通過)特性を実現できる。
図5に示すように、本例のハイパスフィルタは、カットオフ周波数fC が低く(約fS /8)、広い通過帯域を持っている。
このように、本実施形態の画像処理装置において、水平ハイパスフィルタのカットオフ周波数fC を低くするので、強調する帯域、即ち利得が1.0付近となる帯域が広げられ、高い周波数成分から低い周波数成分まで強調され、エンハンス処理の効果を向上することできる。また、これによって、信号が低周波帯域から強調されるので、画像のコントラストの改善効果も得られる。
【0027】
また、本実施形態において、水平ハイパスフィルタを設計する際、ロールオフ率を大きくし、1.0付近にすることによってセンタのタップ以外の係数が正にならず、リンギングの発生を防止できる。これは、ロールオフ率を小さくすればするほど、センタのタップ以外の係数に負と正が混在し、値も大きくなるので、リンギングが目立つようになるからである。
【0028】
さらに、図4に示す係数値を変更することにより、異なる周波数特性を持つ水平ハイパスフィルタを実現できる。
図6は、係数値を変えることによって水平ハイパスフィルタの周波数特性の変化を示している。図示のように、係数値を変えることで、水平ハイパスフィルタにおける遮断帯域から通過帯域への過渡領域の勾配が変化するので、異なるエンハンス効果を実現できる。
本実施形態の画像処理装置において、例えば、画像表示装置の特性に応じて予め数種類の係数値を用意し、表示装置に応じて係数値を切り替えることでそれぞれ所望のエンハンス効果を実現できる。
【0029】
図1に示す本実施形態の画像処理装置において、水平ハイパスフィルタ170は、例えば上述した水平ハイパスフィルタ110と同じ周波数特性を持ってもよい。一方、水平ローパスフィルタ120は、水平ハイパスフィルタ110と逆に、低周波数成分を通過させ、高周波数成分を遮断する特性を持つ。
【0030】
図7は、本実施形態の画像処理装置において、水平ハイパスフィルタ110、水平ローパスフィルタ120及び水平ハイパスフィルタ170の出力信号の周波数成分を概念的に示している。図7において、横軸は水平方向の周波数成分(以下、水平周波数と表記する)を示し、縦軸は垂直方向の周波数成分(以下、垂直周波数と表記する)を示している。また、領域Aは、垂直方向において低域、水平方向において高域成分を示し、領域Bは、水平方向において低域、垂直方向において高域成分を示し、さらに領域Cは、水平・垂直両方において高域成分を示している。
【0031】
図1の画像処理装置において、水平ハイパスフィルタ110の出力信号は、垂直ハイパスフィルタ100の出力SHHに対してさらに水平方向にハイパスフィルタで処理した信号であり、即ち、図7における領域Cの周波数成分を持つ。水平ローパスフィルタ120の出力信号は、垂直ハイパスフィルタ100の出力SHHに対してさらに水平方向にローパスフィルタで処理した信号であり、即ち、図7における領域Bの周波数成分を持つ。一方、水平ハイパスフィルタ170の出力信号は、垂直ローパスフィルタ160の出力信号SHLに対してさらに水平方向にハイパスフィルタで処理した信号であり、即ち、図7における領域Aの周波数成分を持つ。
【0032】
本実施形態の画像処理装置は、入力画像信号Sinに対して垂直と水平フィルタを用いて、それぞれ水平と垂直方向においてエンハンス処理を行うことによって、画像信号に対して2次元のエンハンス処理を実現できる。そして、エンハンス処理された周波数成分を選択的に取り込むことによって、所定の周波数帯域の信号のみをエンハンスすることができ、所望のエンハンス効果を実現できる。
例えば、本実施形態の画像処理装置において、上述した3つの領域A、B及びCの周波数成分に対して、所定のモードで組み合わせることによって、画像信号に対して1次元のフィルタによって2次元でのフィルタリング処理を実現でき、所望の周波数帯域を強調するエンハンス効果を実現できる。
【0033】
以下、本実施形態の画像処理装置の動作について説明する。図1に示すように、画像処理装置に周波数成分を選択するためのスイッチ130,180及び220、さらに、これらのスイッチによって選択された周波数成分を加算するための加算回路140,190及び250が設けられている。
【0034】
スイッチ130は、制御信号Sc1に応じて水平ハイパスフィルタ110の出力信号(図7に示す周波数成分Cを持つ)を選択し、加算回路140に入力する。例えば、制御信号Sc1が「1」のとき、スイッチ130は、水平ハイパスフィルタ110の出力信号を加算回路140に出力し、逆に制御信号Sc1が「0」のとき、スイッチ130は水平ハイパスフィルタ110の出力信号を選択しない。
同様に、スイッチ180は、制御信号Sc2に応じて信号水平ハイパスフィルタ110の出力信号を選択し、加算回路190に入力する。例えば、制御信号Sc2が「1」のとき、スイッチ180は、水平ハイパスフィルタ110の出力信号を加算回路190に出力し、逆に制御信号Sc2が「0」のとき、スイッチ180は水平ハイパスフィルタ110の出力信号を選択しない。
【0035】
加算回路140は、水平ローパスフィルタ120の出力信号(図7に示す領域Bの周波数成分を持つ)とスイッチ130によって選択された信号とを加算し、加算結果を非線形回路150に出力する。このため、制御信号Sc1が「1」のとき、加算回路140から周波数成分(B+C)を持つ信号を出力する。逆に、制御信号Sc1が「0」のとき、加算回路140から領域Bの周波数成分のみを持つ信号を出力する。
同様に、加算回路190は、水平ハイパスフィルタ170の出力信号(図7に示す領域Aの周波数成分を持つ)とスイッチ180によって選択された信号とを加算し、加算結果を非線形回路200に出力する。このため、制御信号Sc2が「1」のとき、加算回路190から領域(A+C)の周波数成分を持つ信号を出力する。逆に、制御信号Sc2が「0」のとき、加算回路190から領域Aの周波数成分のみを持つ信号を出力する。
【0036】
非線形回路150は、加算回路140の出力信号に対して非線形処理を施し、処理結果を加算回路250に出力する。非線形回路200は、加算回路190の出力信号に対して非線形処理を施し、処理結果を加算回路250に出力する。なお、非線形回路150と200における非線形処理は、例えば、入力信号に対してコアリング量、クリッピング量、エンハンス量及びリミット量などをそれぞれ調整する処理が含まれる。
【0037】
さらに、図1に示すように、水平ハイパスフィルタ110の出力信号が非線形回路210に入力され、ここで非線形処理が施された出力信号がスイッチ220によって選択されて、加算回路250に出力される。
【0038】
非線形回路210は、非線形回路150及び200とほぼ同じ機能を有する。即ち、非線形回路210は、入力信号に対してコアリング量、クリッピング量、エンハンス量及びリミット量などをそれぞれ調整する。
【0039】
図8は、非線形回路210の入出力特性を例示している。(但し、非線形回路210については負側の入出力特性がゼロであるが、非線形回路210と同等の機能の非線形回路150及び200については負側の入出力特性が原点Oに対して点対称である)。図示のように、ここで2つの特性(特性1と特性2)が示されている。特性1では、入力信号のレベルがあるしきい値Sth1 以下のとき、入力信号レベルに対して所定の傾きで出力信号レベルが決まる。入力信号レベルがしきい値Sth1 を越えた場合、出力信号レベルがあるクリッピング値(上限値)でクリップされる。
一方、特性2では、入力信号レベルがあるしきい値Sth2 を越えたとき、所定の負の傾きで出力レベルが低減し、入力信号レベルが所定のリミッタ値SLTを越えたとき、出力信号が0レベルに保持される。
また、図8に示すように、特性1及び特性2の何れの場合に、入力信号レベルがあるコアリング量以下のとき、出力信号レベルが0に保持される。
【0040】
スイッチ220は、コンパレータ240の出力信号に応じて非線形回路210の出力を選択して加算回路250に出力する。例えば、コンパレータ240の出力信号が「1」のとき、スイッチ220は、非線形回路210の出力信号を選択して加算回路250に出力する。逆に、コンパレータ240の出力信号が「0」のとき、スイッチ220は、非線形回路210の出力信号を選択しない。
【0041】
コンパレータ240は、遅延合わせ回路230の出力信号SDLと所定のしきい値Sthとを比較し、信号SDLがしきい値Sthより大きいとき、「1」を出力し、逆に信号SDLがしきい値Sthより小さいとき、「0」を出力する。
遅延合わせ回路230は、入力信号Sinに所定の遅延を与えた遅延信号SDLを出力する。なお、遅延合わせ回路230の遅延時間Δtは、垂直ハイパスフィルタ100、水平ハイパスフィルタ110などのフィルタ回路の処理時間に応じて設定される。また、垂直ハイパスフィルタ100の処理時間には、ラインメモリによる信号遅延も含まれる。
【0042】
コンパレータ240、非線形回路210及びスイッチ220によって、遅延合わせ回路の出力信号SDLがしきい値Sthより大きいとき、水平ハイパスフィルタ110の出力信号を非線形処理した結果、即ち、領域Cの周波数成分を持つ信号が選択され、加算回路250に出力される。逆に、遅延合わせ回路230の出力信号SDLがしきい値Sthより小さいとき、水平ハイパスフィルタ110の出力信号が選択されない。
【0043】
図9は、スイッチ220によって選択された信号領域を示している。図9において、領域Kには垂直高域・水平高域の信号、即ち、図7に示す領域Cの周波数成分が含まれる。
このように、本実施形態の画像処理装置において、所定のしきい値レベルを越えた信号に対して、垂直高域かつ水平高域の信号成分、即ち、図9に示すK領域の信号を加えて画面上斜め方向におけるエンハンス処理が行われる。これによって、輝度レベルの高い白信号に対して画面上斜め方向においてエンハンス処理が施されるので、表示画像のキラキラ感を回復できる。
【0044】
次に、スイッチ130と180の選択によって実現可能なエンハンスモードについて、図10を参照しつつ説明する。
図10において、4つのエンハンスモードが示されている。また、各モードに対応する制御信号Sc1とSc2の状態も示されている。
【0045】
図10に示すように、制御信号Sc1とSc2がともに「0」のとき、モード1に示すエンハンス処理が行われる。この状態において、スイッチ130と180が水平ハイパスフィルタ110の出力信号を選択しない。このため、モード1におけるX領域には図7に示す領域Aの周波数成分、即ち、垂直低域、水平高域の信号成分が含まれ、Y領域には図7に示す領域Bの周波数成分、即ち、水平高域、水平低域の信号成分が含まれる。
【0046】
次に、制御信号Sc1が「0」、制御信号Sc2が「1」のとき、モード2に示すエンハンス処理が行われる。この状態において、スイッチ130が水平ハイパスフィルタ110の出力信号を選択しないが、スイッチ180がそれを選択する。このため、モード2におけるX領域には領域(A+C)の周波数成分が含まれ、Y領域には領域Bの周波数成分が含まれる。
【0047】
次いで、制御信号Sc1が「1」、制御信号Sc2が「0」のとき、モード3に示すエンハンス処理が行われる。この状態において、スイッチ130が水平ハイパスフィルタ110の出力信号を選択するが、スイッチ180はそれを選択しない。このため、モード3におけるX領域には領域Aの周波数成分が含まれ、Y領域には領域(B+C)の周波数成分が含まれる。
【0048】
最後に、制御信号Sc1とSc2がともに「1」のとき、モード4に示すエンハンス処理が行われる。この状態において、スイッチ130とスイッチ180がともに水平ハイパスフィルタ110の出力信号を選択する。このため、モード3におけるX領域には領域(A+C)の周波数成分が含まれ、Y領域には領域(B+C)の周波数成分が含まれる。即ち、モード4では、X領域とY領域の一部分が重なり、この周波数成分に対して2重のエンハンス処理が行われる。
【0049】
上述したように、モード1では、垂直高域・水平高域の領域Cの周波数成分が選択されないので、画面上斜め方向においてエンハンスの効果が低い。一方、モード4では、領域Cの周波数成分が2重にエンハンスされるので、他の周波数成分とのバランスが悪くなる。このため、本実施形態の画像処理装置において、モード1、モード2及びモード3を適宜選択し、さらに入力の輝度レベルに応じて、垂直高域・水平高域の領域Cの周波数成分を選択して加算することによって、所望のエンハンス効果を実現できる。
【0050】
以下、画像信号に応じてエンハンスモードの選択について説明する。
エンハンスモードの選択は、例えば、画像信号の走査線の違いによって異なる。画像信号が表示装置に表示されるとき、垂直方向がなまっていると見かけ上画質の劣化がより目立つ。このため、斜め方向の周波数成分をモード3によって垂直方向でエンハンスすると画質の改善効果が顕著に現れる。
【0051】
図11と図12は、それぞれインターレース走査とプログレッシブ走査の場合における垂直及び水平方向のエンハンス処理を示す図である。
図11(a)に示すように、インターレ−ス走査の場合、奇数ラインの走査と偶数ラインの走査が別々に行われ、奇数フィールド(図17に示す第1フィールド)と偶数フィールド(図17に示す第2フィールド)がそれぞれ表示される。第1のフィールドと第2のフィールドの走査線が画面上1ライン分ずれているので、これらのフィールドが合わせて1フレーム分の画像が表示される。
一方、図12(a)に示すように、プログレッシブ走査の場合、すべてのラインが順次走査される。即ち、一回の走査で1フレーム分の画像が表示される。
【0052】
図11に示すインターレース走査の場合、斜め方向の成分を垂直方向にエンハンスすると、奇数フィールドと偶数フィールドにおいてそれぞれエンハンス処理が行われるので、画面上垂直方向に1ラインおきにサンプルされた複数の画素に対してフィルタがかけられる。このため、図11(b)に示すように、エンハンス処理の結果、縁取りが広がってしまう。
一方、図12に示すプログレッシブ走査の場合、奇数フィールドと偶数フィールドの区別がなく、一フレームの画像信号の各ラインが連続して入力される。このため、図12(b)に示すように、垂直方向のエンハンス処理には、画面上垂直方向に連続した複数の画素信号に対してフィルタ処理が行われるので、エンハンス処理の結果、インターレース走査のように縁取りが広がることがない。
【0053】
なお、図11(c)に示すように、インターレース走査の場合、奇数フィールドまたは偶数フィールドに関係なく、水平方向に画像信号が連続して入力されるので、水平方向のエンハンス処理は、プログレッシブ走査の場合とほぼ同じ効果が得られる。
【0054】
上述したように、インターレース走査の場合、プログレッシブ走査の場合に較べて、着目する画素から離れたところにエンハンスの波形ができてしまい、縁取りが広がってしまう。そこで、インターレース走査の場合には、モード2を選択して斜め方向の周波数成分のエンハンスを水平方向で行い、プログレッシブ走査の場合、モード3を選択して斜め方向の周波数成分のエンハンスを垂直方向で行う。これによって、それぞれの異なる走査方式に最適なエンハンスモードでエンハンス処理を実現でき、画質の改善効果をさらに向上できる。
【0055】
また、何らかの理由で信号帯域が狭くなると、画像信号の波形が鈍って、白ピーク付近の高輝度信号、例えば、ネックレスなどの画像においてキラキラ感がなくなる。このような場合、上述したように、非線形回路210、スイッチ220及びコンパレータ240によって、あるしきい値レベル以上の信号に対してのみ正側にエンハンスする。これによって、エンハンスする部分が他の部分に較べてより強調したい白信号に限られ、それ以外のレベルの信号がエンハンスされないので、斜め方向の帯域が2重にエンハンスされ、強調されすぎることを防止できる。こうすることによって、白信号のみをより強調でき、違和感なくキラキラ感を回復することが可能である。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の画像処理装置によれば、所望の周波数帯域の信号をエンハンス可能である。
また、本実施形態によれば、垂直、水平方向にそれぞれ1次元のフィルタを用いて、2次元におけるフィルタリング処理が実現可能である。さらに、画像信号の走査線の構造に応じて最適なエンハンスモードを選択することによって、エンハンス効果の改善を実現できる。
また、本実施形態の画像処理装置において、あるレベル以上の信号に対して垂直かつ水平高域におけるエンハンス処理を行うことによって、違和感なく画質のキラキラ感を回復できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る画像処理装置の一実施形態を示す回路図である。
【図2】ラインメモリを含む垂直ハイパスフィルタの一構成例を示す回路図である。
【図3】水平ハイパスフィルタの一構成例を示す回路図である。
【図4】水平ハイパスフィルタの係数値の一例を示す図である。
【図5】水平ハイパスフィルタの周波数特性の一例を示す図である。
【図6】係数値を変えることによってフィルタの特性の変化を示す図である。
【図7】画像信号の周波数成分を示す図である。
【図8】非線形回路の入出力特性を示す図である。
【図9】垂直高域かつ水平高域信号成分の領域を示す図である。
【図10】エンハンスモードを示す図である。
【図11】インターレース走査におけるエンハンス処理を示す図である。
【図12】プログレッシブ走査におけるエンハンス処理を示す図である。
【図13】従来のエンハンサの一構成例を示す回路図である。
【図14】エンハンサを構成するハイパスフィルタの係数値の一例を示す図である。
【図15】従来のハイパスフィルタの周波数特性の一例を示す図である。
【図16】従来のハイパスフィルタの周波数特性の他の例を示す図である。
【図17】HD映像信号の周波数成分の一例を示す図である。
【図18】入力信号、フィルタ係数値及びエンハンサの出力信号のサンプリング値の一例を示す図である。
【図19】入力信号、フィルタ係数値及びエンハンサの出力信号のサンプリング値の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10…ハイパスフィルタ、11,12…遅延回路、13…加算回路、20…非線形回路、30…加算回路、40…リミッタ、100…垂直ハイパスフィルタ、110…水平ハイパスフィルタ、120…水平ローパスフィルタ、130…スイッチ、140…加算回路、150…非線形回路、160…垂直ローパスフィルタ、170…水平ハイパスフィルタ、180…スイッチ、190…加算回路、200…非線形回路、210…非線形回路、220…スイッチ、230…遅延合わせ回路、240…コンパレータ、250…加算回路、260…リミッタ。
【出願人】 【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【住所又は居所】東京都品川区北品川6丁目7番35号
【出願日】 平成18年6月19日(2006.6.19)
【代理人】 【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久

【公開番号】 特開2006−304352(P2006−304352A)
【公開日】 平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願番号】 特願2006−169378(P2006−169378)