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【発明の名称】 素子転写方法
【発明者】 【氏名】小嶋 健介
【住所又は居所】東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニー株式会社内

【要約】 【課題】転写に際して樹脂による貼り付けを行う必要がなく、素子転写を容易に行うことが可能な素子転写方法を提供する。

【解決手段】素子形成ウエハ13のサファイア基板14上に形成されたLED素子20を転写基板11に転写する素子転写方法である。転写基板11上に磁性金属パターン12を形成して帯磁させるとともに、サファイア基板14上に形成されたLED素子20のPバンプ電極22上に磁性体薄膜(Ni薄膜23)を形成し、転写基板11上の磁性金属パターン12とLED素子20に形成されたNi薄膜23間の磁気的結合力によりLED素子20を転写基板11に保持させ、この状態でサファイア基板14を剥離してLED素子20を転写基板11に転写する。次いで、転写基板11上の磁性金属パターン12を選択的に消磁し、磁気的結合力を選択的に解除して該当箇所のLED素子20を選択的に取り出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板上に形成された素子を第2基板に転写する素子転写方法において、
上記第2基板上に磁性金属パターンを形成して帯磁させるとともに、上記第1基板上に形成された素子の電極の少なくとも一部に磁性体薄膜を形成し、
上記第2基板上の磁性金属パターンと上記素子に形成された磁性体薄膜間の磁気的結合力により上記素子を第2基板に保持させ、この状態で第1基板を剥離して素子を第2基板に転写することを特徴とする素子転写方法。
【請求項2】
第2基板の磁性金属パターンを選択的に消磁し、上記磁気的結合力を選択的に解除して該当箇所の素子を選択的に取り出すことを特徴とする請求項1記載の素子転写方法。
【請求項3】
一定の素子間ピッチを保持するように上記素子を選択的に取り出すことを特徴とする請求項3記載の素子転写方法。
【請求項4】
第3基板上に転写することで素子を選択的に取り出すことを特徴とする請求項2記載の素子転写方法。
【請求項5】
上記消磁は、第2基板の磁性金属パターンの帯磁を打ち消す方向の磁界を発生する治具を、第2基板の磁性金属パターンが形成される面とは反対側の面に接触させて行うことを特徴とする請求項2記載の素子転写方法。
【請求項6】
上記素子を第2基板に保持した状態で通電試験を行うことを特徴とする請求項1記載の素子転写方法。
【請求項7】
上記通電試験は、上記第2基板の磁性金属パターンと各素子の裏面電極間で通電することにより行うことを特徴とする請求項6記載の素子転写方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)等の素子を転写配列する素子転写方法に関するものであり、特に、磁気的結合力を利用した新規な素子転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発光ダイオードをマトリクス状に配列した発光ダイオードディスプレイ(LEDディスプレイ)の製造においては、LED素子をダイシング後に個別に取り出し、これを回路基板に配列して実装するという方法が採用されている。この場合、発光素子であるLEDは高価であるため、1枚のウエハにできる限り数多くのLED素子を作り込むことにより、LEDディスプレイを低コストに作製できるものと考えられる。例えば、LED素子の大きさを、従来約300μm角程度であったものを数十μm角程度とすれば、1枚のウエハに作り込めるLED素子の数が飛躍的に向上し、それを再配列してLEDディスプレイを製造すれば、装置の価格を大幅に削減することができるものと期待される。
【0003】
前述の製造方法においては、回路基板上にはLED素子を画素ピッチに対応して配列する必要があるが、この画素ピッチは素子形成時の素子の配列ピッチとは無関係であり、したがって、製造に際しては、LED素子を再配列するための技術が必要になる。特に、上記のように1枚のウエハに多数のLED素子を作り込んだ場合、いわゆる拡大転写技術が必須である。
【0004】
そこで、各素子を集積度高く形成し、ダイシングした後に転写等によって離間させながら広い領域へと移動させ、比較的大きな表示装置を構成する技術が提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献8等を参照)。
【特許文献1】特開2002−118124号公報
【特許文献2】特開2002−182580号公報
【特許文献3】特開2002−185039号公報
【特許文献4】特開2002−311858号公報
【特許文献5】特開2002−314053号公報
【特許文献6】特開2002−314123号公報
【特許文献7】特開2003−77940号公報
【特許文献8】特開2003−98977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の各特許文献記載の転写技術において、共通して言えることは、いずれも素子を転写する際に、転写基板の樹脂(接着剤)による貼り付け、樹脂(接着剤)からの転写基板の剥離が必要であり、転写プロセスが煩雑であるという大きな問題がある。
【0006】
例えば、従来の素子転写方法の一例について説明すると、従来の素子転写方法では、レーザの波長域で吸収する膜を形成した第2透明基板にエポキシ樹脂等を用いて第1透明基板上の素子形成面の貼り付けを行い、第1透明基板を剥離して、第1透明基板上に形成された素子を第2透明基板に転写する。その後、素子分離、電極作製を行い、第2透明基板の裏面から選択的にレーザを照射することで、上記レーザの波長域で吸収する膜を融解させ、第2透明基板から複数の素子を間引いて中継基板に転写する。さらに、中継基板に転写した素子を、埋め込み基板に押し当てて埋め込み転写する。この時点で素子裏面の配線を行い、配線を終えた素子裏面をディスプレイ基板に樹脂を用いて貼り合わせ、埋め込み基板をレーザで剥離する。剥離面からドライエッチングを行い、素子表側の樹脂を除去し、バンプに電気的な接続を行えるように頭出しをした後、配線する。
【0007】
このような転写プロセスを採用した場合、転写基板である第2透明基板に対して樹脂により素子を保持するようにしているので、剥離(分離)に手間を要し、またレーザの熱を利用する必要があることから、設備投資も必要で、コスト増にも繋がることになる。
【0008】
また、上記転写プロセスでは、例えば第2透明基板に転写された状態で素子に通電することはできず、転写過程において素子の不良を判別することはできない。したがって、実装基板(回路基板)に実装するまで不良箇所を判別することができず、歩留まり低下の原因となっている。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する不都合を解消することを目的に提案されたものである。すなわち、本発明は、転写に際して樹脂による貼り付けを行う必要がなく、素子転写を容易に行うことが可能で、転写の際のコストも削減することが可能な素子転写方法を提供することを目的とする。また、本発明は、実装基板に素子を転写する前に不良箇所を判別することが可能で、歩留まりを向上することが可能な素子転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明の素子転写方法は、第1基板上に形成された素子を第2基板に転写する素子転写方法において、上記第2基板上に磁性金属パターンを形成して帯磁させるとともに、上記第1基板上に形成された素子の電極の少なくとも一部に磁性体薄膜を形成し、上記第2基板上の磁性金属パターンと上記素子に形成された磁性体薄膜間の磁気的結合力により上記素子を第2基板に保持させ、この状態で第1基板を剥離して素子を第2基板に転写することを特徴とする。
【0011】
本発明の素子転写方法では、帯磁した磁性金属パターンと素子に形成した磁性体薄膜間の磁気的な結合力を利用して素子を中継基板(第2基板)に保持するようにしているので、樹脂(接着剤)による仮固定が不要である。したがって、剥離等の手間が不要であり、また、転写の際にレーザの熱等を利用する必要もない。
【0012】
さらに、本発明の素子転写方法では、第2基板上に形成された磁性金属パターンを利用することで、転写過程において素子の不良を判別することも可能である。これを規定したのが請求項6であり、上記素子を第2基板に保持した状態で通電試験を行うことを特徴とする。
【0013】
磁気的結合力を利用して第2基板に素子が保持されている状態では、第2基板上に形成された磁性金属パターンが素子の一方の電極に形成された磁性体薄膜と接しており、したがって、上記磁性金属パターンが素子の一方の電極の取り出し電極として機能する。したがって、この磁性金属パターンと素子の反対側の面に形成された裏面電極との間で通電を行えば、個々の素子に通電して通電試験を行うことができ、素子を例えば実装基板に転写する前に不良箇所が把握される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写に際して樹脂による貼り付けを行う必要がなく、素子転写を容易に行うことが可能で、転写の際のコストを削減することが可能である。また、本発明によれば、実装基板に素子を転写する前に不良箇所を判別することが可能であり、歩留まりを向上することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用した素子転写方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
本実施形態では、LED素子を拡大転写することにより画像表示装置を作製する場合を例にして本発明の素子転写方法を説明するが、最初に拡大転写の概念について簡単に説明する。図1は選択転写による拡大転写の一例を示す図であり、この図1に示す選択転写においては、マトリクス状に配列された素子の一部を間引いて転写する間引き転写が行われる。間引き転写は、転写元の基板(転写基板)と転写先の基板(被転写基板)を対峙させて選択的に素子を転写することで行われるが、転写先の被転写基板を大きなサイズとすることで、転写元の転写基板上に有る素子の全部を転写先の被転写基板に離間して配置することが可能である。
【0017】
図1は、第一転写工程を拡大率3倍で行う場合の例を示しており、転写基板1を単位とすると被転写基板2は3の二乗の9倍の面積を有する。このため転写元の基板である転写基板1上に有る素子3の全部を転写するために、合計で9回の転写が行われる。転写基板1上にマトリクス状に配される素子3を3×3のマトリクス単位(この例では9組のマトリクス単位)に分け、1回に転写では、その中の1つのマトリクス単位を構成する素子3が被転写基板2に転写され、これを繰り返すことで最終的に全ての素子3が被転写基板2上に転写される。
【0018】
図1(a)は、転写基板1上の素子3のうち、第1番目のマトリクス単位を構成する素子3が被転写基板2に転写されるところを模式的に示しており、図1(b)は第2番目のマトリクス単位を構成する素子3が被転写基板2に転写されるところを模式的に示している。第2番目のマトリクス単位を構成する素子3の転写では、転写基板1の被転写基板2に対するアライメント位置が、第1番目のマトリクス単位を構成する素子3の転写におけるアライメント位置よりも図中垂直方向にずれており、同様の間引き転写を繰り返すことで、被転写基板2上の異なる領域に各マトリクス単位を構成する素子3を離間させて配置することができる。
【0019】
図1(c)は、第8番目のマトリクス単位を構成する素子3が被転写基板2に転写されるところを模式的に示しており、図1(d)は第9番目のマトリクス単位を構成する素子3が被転写基板2に転写されるところを模式的に示している。この第9番目のマトリクス単位を構成する素子3が転写された時点で、転写基板1には素子3がなくなり、被転写基板21に全ての素子3が転写基板1上よりも離間された状態でマトリクス状に保持されることになる。
【0020】
以下、具体的な素子転写プロセスについて説明する。本実施形態の素子転写方法では、先ず、図2に示すように、転写中継基板となる転写基板11(第2基板に相当する。)に、例えば磁性金属材料を蒸着し、これをパターニングすることにより、磁性金属パターン12を形成する。
【0021】
転写基板11は、後述の素子形成ウエハとほぼ合致した大きさ、形状を有し、上記磁性金属パターン12は、素子形成ウエハに形成される素子のピッチと一致するような帯状のパターンとして形成されている。本例では、素子ピッチ18.75μmと25μmの2種類のピッチで形成されている。
【0022】
磁性金属パターン12は、上記の通り、磁性金属材料を蒸着やメッキ等の手法により成膜し、これをフォトリソ技術等によりパターニングすることにより形成される。磁性金属材料としては、例えばニッケル(Ni)等を使用することが可能である。本例では、ニッケルからなる磁性金属層とTiからなる下地層の2層構成とした。Niからなる素子吸着用磁石12aの厚さは3μm程度、Ti下地層12bの厚さは1μm程度である。
【0023】
上記磁性金属パターン12は、予め帯磁させておく必要があり、したがって、Ni蒸着、パターニングの後、第2の工程として帯磁工程を行う。この帯磁工程は、所定方向の磁界を印加することにより行えばよく、本例では、図中左側がN極、右側がS極となるように帯磁を行った。
【0024】
一方、転写対象となるLED素子は、図3に示すように、素子形成ウエハ13に形成される。素子形成ウエハ13は、例えば青色や緑色の発光ダイオードを形成する場合、サファイア基板14(第1基板に相当する。)上に下地成長層15を介して窒化ガリウム系結晶成長層16等が形成されてなるものであり、この窒化ガリウム系結晶成長層16に所定の元素の拡散等を行うことによって、LED素子20が形成される。本例では、Nクラッド層17、活性層18、及びPクラッド層19からなるダブルへテロ構造の発光ダイオードがLED素子20として形成されている。なお、上述の構成のLED素子20においては、各素子20間の領域が絶縁層21により埋められており、不用意な短絡等を防止するようになっている。
【0025】
また、各LED素子20のPクラッド層19上には、Pバンプ電極22が形成されており、このPバンプ電極22がLED素子20の一方の電極として機能する。このPバンプ電極22は、図3(b)に示すように、平面形状がほぼ円形であり、その中心点間のピッチがLED素子20の形成ピッチということになる。本例の場合、Pバンプ電極22の直径は7μmであり、先にも述べたように、18.75μmと25μmの2種類のピッチでLED素子20が形成されている。
【0026】
さらに、本実施形態では、上記転写基板11に形成される磁性金属パターン12に対応して、上記Pバンプ電極22上に磁性体薄膜、例えばNi薄膜23が形成されている。このNi薄膜23は、やはり蒸着やメッキ等の手法により形成することができ、これをPバンプ電極22上に形成しておくことで、上記磁性金属パターン12に対し、磁気的結合力により吸着させることが可能になる。
【0027】
上述の素子形成ウエハ13及び転写基板11を用意した後、図4に示すように、素子形成ウエハ13上に転写基板11を重ねる。このとき、素子形成ウエハ13のPバンプ電極22上に形成されたNi薄膜23に対して、磁性金属パターン12が対向するように重ね合わせる。これにより、Pバンプ電極22上のNi薄膜23と転写基板11上の磁性金属パターン12を構成する素子吸着用磁石12aとが接することになり、帯磁した磁性金属パターン12とNi薄膜23間の磁気的結合力により、Pバンプ電極22、すなわちLED素子20が転写基板11に対して密着固定される。
【0028】
このように転写基板11の磁性金属パターン12にNi薄膜23を利用してLED素子20を磁気的結合力により固定した状態で、図5に示すように、素子形成ウエハ13のサファイア基板14裏面側からエネルギービームを照射し、いわゆるアブレーション(エネルギービームとしてレーザ光を用いた場合には、レーザアブレーション)を起こさせてサファイア基板14を剥離する。
【0029】
アブレーションに用いるエネルギービームとしては、エキシマレーザやYAGレーザ等のレーザ光を使用することができる。例えば窒化ガリウム系のLED素子20の場合、上記サファイア基板14との界面で窒化ガリウム系結晶成長層16(下地成長層15)が金属のGaと窒素に分解され、サファイア基板14から容易に剥離される。
【0030】
なお、上記レーザアブレーションによりサファイア基板14を剥離した後、窒化ガリウム系結晶成長層16の表面には、アブレーションの際に発生した金属のGaが付着している。そこで、上記レーザーアブレーションの後には、窒化ガリウム系結晶成長層16の表面に析出した金属Gaをウエットエッチング等の手法により除去することが好ましい。例えば、塩酸と硝酸の混酸溶液を用いてウエットエッチングすれば、析出した金属Gaを容易に除去することができる。
【0031】
サファイア基板14を剥離、除去した後、図6に示すように、LED素子20を分離する素子分離工程を行う。素子分離工程は、ドライエッチング等、エッチングにより窒化ガリウム系結晶成長層16を分断し、個々のLED素子20に分離する工程であり、これにより転写基板11上に多数のLED素子20が配列された状態となる。また、素子分離されたLED素子20は、それぞれNi薄膜23と磁性金属パターン12間の磁気的結合により転写基板11上に保持された状態が維持される。
【0032】
素子分離した後、先のPバンプ電極22とは反対側の面、すなわち窒化ガリウム系結晶成長層16上に、Nクラッド層17側のコンタクト電極24を形成する。コンタクト電極24は、金属等の導電材料を蒸着、あるいはメッキすることにより形成することができる。本例では、Ti10nm、Pt50nmを蒸着することにより上記コンタクト電極24を形成し、その形状は部分円弧状とした。各LED素子20は、このコンタクト電極24と上記Pバンプ電極22間に通電することにより発光する。
【0033】
以上により、LED素子20が個別に分離され、この段階でそれぞれ発光素子として機能することになるが、従来の拡大転写技術においては、配線が施され回路形成がなされた回路基板上に実装されるまで、LED素子20の不良を判別することができず、歩留まりを大きく低下する原因になっている。これに対して、本発明の素子転写方法では、例えばこの段階で各LED素子20の不良を判別することができ、歩留まり等を大幅に向上することが可能である。
【0034】
すなわち、本発明の素子転写方法では、分離後のLED素子20は、Pバンプ電極22上に形成されたNi薄膜23と転写基板11上の磁性金属パターン12との間の磁気的な結合力により転写基板11上に保持されており、この状態では、Pバンプ電極22上のNi薄膜23と磁性金属パターン12とが接触した状態となっている。ここで、Ni薄膜23も磁性金属パターン12も電気伝導性が良好な金属材料により形成されているため、Pバンプ電極22と磁性金属パターン12とは、電気的に導通された状態となる。
【0035】
そこで、上述のようにサファイア基板14の剥離後にコンタクト電極24を形成し、このコンタクト電極24と上記磁性金属パターン12の間で通電を行えば、個々のLED素子20に通電して良否を判別することができる。図7(a)及び図7(b)は、通電試験の様子を示すものであり、試験装置の一方のプローブP1をコンタクト電極24に接触させ、他方のプローブP2を磁性金属パターン12に接触させることで、LED素子20に通電することができ、例えばその発光状態を見ることによって不良を判別することができる。また、プローブP2を所定の列の磁性金属パターン12に接触させたまま、プローブP1を上記磁性金属パターン12に沿って配列されるLED素子20のコンタクト電極24に順次接触させることで、1列分のLED素子20の通電試験が可能である。したがって、プローブP2を接触させる磁性金属パターン12を選択し、上記のようにプローブP1を各磁性金属パターン12に沿って配列されるLED素子20のコンタクト電極24に順次接触させることで、全てのLED素子20について通電試験を行うことができる。
【0036】
各LED素子20について、この時点で不良を判別することができれば、不良品であるLED素子20を回路基板(ディスプレイ基板)に実装することがなくなる。その結果、製品の歩留まりを大幅に向上することができ、面倒な素子取り替え作業も不要になる。
【0037】
LED素子20の不良を判別した後、転写基板11上に配列されたLED素子20を選択的に取り出し、ディスプレイ基板(回路基板)上に再配列する。この再配列に際しては、先ず、転写基板11上のLED素子20をマトリクスの中から選択的に取り出す必要があり、本発明では、このLED素子20の選択的な取り出しを、選択的な消磁による磁気的結合力の解消を利用して行う。
【0038】
図8(a)及び図8(b)は、LED素子20の選択的な取り出し方法を示すものである。LED素子20の取り出しに際しては、図8(a)に示すように、各LED素子20と対向してシリコーン塗布層25を有する中継基板26を配置する。この状態で、転写基板11の背面側に磁性金属パターン12とは反対の磁極を有する治具27を接触させる。治具27は、本例の場合、ガラスマスク28上に磁石29を選択的に形成した構成とされている。また、磁性金属パターン12が例えばN極の場合、上記磁石29はS極が磁性金属パターン12と対向するようにする。
【0039】
すると、上記磁石29によって形成される磁界により、磁性金属パターン12より発生する磁界が打ち消され、磁石29と対向する部分の磁性金属パターン12は、帯磁された状態から消磁された状態になる。その結果、磁性金属パターン12による磁気的結合力が解消され、この部分に吸着していたLED素子20は、転写基板11から離脱し、中継基板26上へと移行する。したがって、上述の拡大転写において、例えば第1番目のマトリクス単位を構成するLED素子20に対応して、上記磁石29により磁気的結合力を選択的に解消すれば、第1番目のマトリクス単位を構成するLED素子20のみを中継基板26上に移行することができる。本例では、図8(b)に示すように、150μmピッチでLED素子20を取り出し、中継基板26に移行している。
【0040】
なお、上記磁性金属パターン12の選択的な消磁は、必ずしも治具27(磁石29)を用いて行う必要はなく、磁気ヘッドによる消磁や、電磁石による消磁等、選択的な消磁を行い得る方法であれば、如何なる方法によって行ってもよい。
【0041】
上記選択的な消磁を利用して中継基板26上に取り出されたLED素子20は、次に、図9(a)及び図9(b)に示すように、埋め込み基板30に押し当てて転写される。埋め込み基板30は、例えばサファイア基板からなるものであり、各LED素子20に対応して隔壁31によって区画化された領域を有し、各領域には樹脂32が充填されている。中継基板26上のLED素子20は、所定領域の樹脂32中に埋め込まれる。本例では、緑色に発光するLED素子20(G)と、青色に発光するLED素子(B)とが隣接して配置され、それぞれ異なる区画領域の樹脂32中に埋め込まれている。
【0042】
埋め込み基板30の樹脂32中にLED素子20を埋め込んだ後、図10(a)及び図10(b)に示すように、裏面のコンタクト電極24に対応して水平ライン(カソードライン)33を形成し、この水平ライン33とコンタクト電極24とを電気的に接続する。電気的な接続は、例えば永久レジスト34により所定領域を被覆した後、この永久レジスト34によって囲まれる領域内に透明導電インク(例えばITOインク)35を塗布することにより行う。なお、図10(a)は、先の図9(a)の90度回転方向から見た断面図であり、図10(b)は、底面側(コンタクト電極24形成面側)から見た平面図である。
【0043】
上記N側のコンタクト電極24を接続するための配線(水平ライン33及び透明導電インク35)を形成した後、図11(a)及び図11(b)に示すように、このコンタクト電極24形成側にディスプレイ基板36を貼り合わせる。ディスプレイ基板36の貼り合わせは、例えば熱硬化型接着剤37を用い、真空貼り合わせ装置により行う。熱硬化型接着剤37としては、例えばエポキシ系接着剤(商品名EPOTEK354)等を用いることができる。
【0044】
次に、図12(a)及び図12(b)に示すように、埋め込み基板30を剥離し、これを除去する。埋め込み基板30の剥離は、先のサファイア基板14と同様、レーザアブレーションを利用して行うことができる。すなわち、サファイア基板である埋め込み基板30の裏面側からレーザ光を照射する。これにより樹脂32をアブレーションし、樹脂32と埋め込み基板30の界面を剥離する。レーザ光としては、エキシマレーザ等を用いることができる。
【0045】
埋め込み基板30の剥離の後、図13(a)及び図13(b)に示すように、樹脂32を中途位置までエッチング除去し、各LED素子20のPバンプ電極22の頭出しを行う。それと同時に、先に形成した水平ライン33の引き出しビア38を形成する。
【0046】
最後に、図14(a)及び図14(b)に示すように、垂直ライン(アノードライン)39の形成を行い、LEDディスプレイを完成する。垂直ライン39の形成は、導電膜の成膜、及びエッチングによるパターニングにより行う。例えば、Ti及びCuをスパッタにより成膜し、これをウエットエッチングによりパターニングして、Pバンプ電極22に重なるように垂直ライン39を形成する。また、垂直ライン39の形成と同時に、先に形成した水平ライン33の引き出しビア38に対応して、水平ライン用引き出しパッド40を形成する。
【0047】
以上の素子転写方法によれば、LED素子20を素子形成基板であるサファイア基板14から転写基板11に転写する際に、樹脂による転写基板11の貼り付けを行う必要がなく、後の工程で転写基板11からLED素子20を容易に分離することができる。また、上記の通り樹脂を用いた貼り合わせを行わないため、実装基板(ディスプレイ基板36)にLED素子20を実装した後に、転写基板11への貼り合わせのために素子の表側に付着した樹脂を除去する必要がなく、工程を簡略化することができる。
【0048】
さらに、LED素子20の転写基板11からの選択的な取り出しに際しては、転写基板11のLED素子20吸着面の裏側から磁性金属パターン12と反対の磁極を持つ磁石、磁気ヘッド等を接触させ、LED素子20を吸着している磁力を選択的に消磁することで、特定の位置にある多数個のLED素子20を一定の素子ピッチを保持しつつ選択的に取り出すことが可能である。また、この選択的な取り出しに際して、レーザ光等を用いる必要がなく転写プロセスが行えるので、大幅なコスト削減を実現することができる。
【0049】
さらにまた、転写基板11へLED素子20が転写、保持された状態で、磁性金属同士(Ni薄膜26と磁性金属パターン12)が接触しているので、磁性金属パターン12を利用して各LED素子20へ通電することができ、実装基板にLED素子20を転写する前に不良を判別することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】拡大転写の概念を説明する模式的な平面図である。
【図2】磁性金属パターンを形成した転写基板の概略平面図である。
【図3】(a)は素子形成ウエハの要部拡大断面図、(b)は概略平面図である。
【図4】素子形成ウエハ上に転写基板を重ねた状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】サファイア基板の剥離工程を示す要部拡大断面図である。
【図6】(a)は素子分離工程及びコンタクト電極形成工程を示す要部拡大断面図、(b)は概略平面図である。
【図7】(a)は通電試験工程を示す要部拡大断面図、(b)は概略平面図である。
【図8】(a)は選択的な消磁による素子取り出し工程を示す要部拡大断面図であり、(b)は概略底面図である。
【図9】(a)は埋め込み基板への転写工程を示す要部拡大断面図であり、(b)は概略底面図である。
【図10】(a)はN側電気接続工程を示す要部拡大断面図であり、(b)は概略底面図である。
【図11】(a)はディスプレイ基板への埋め込み基板の貼り合わせ工程を示す要部拡大断面図であり、(b)は概略底面図である。
【図12】(a)は埋め込み基板の剥離工程を示す要部拡大断面図であり、(b)は概略平面図である。
【図13】(a)はPバンプ電極の頭出し工程を示す要部拡大断面図であり、(b)は概略平面図である。
【図14】(a)はP側配線形成工程を示す要部拡大断面図であり、(b)は概略平面図である。
【符号の説明】
【0051】
11 転写基板、12 磁性金属パターン、13 素子形成ウエハ、14 サファイア基板、15 下地成長層、16 窒化ガリウム系結晶成長層、17 Nクラッド層、18 活性層、19 Pクラッド層、20 LED素子、21 絶縁層、22 Pバンプ電極、23 Ni薄膜、24 コンタクト電極、25 シリコーン塗布層、26 中継基板、27 治具、28 ガラスマスク、29 磁石、30 埋め込み基板、31 隔壁、32 樹脂、33 水平ライン、34 永久レジスト、35 透明導電インク、36 ディスプレイ基板、37 熱硬化型接着剤、38 引き出しビア、39 垂直ライン、40 引き出しパッド
【出願人】 【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【住所又は居所】東京都品川区北品川6丁目7番35号
【出願日】 平成16年11月15日(2004.11.15)
【代理人】 【識別番号】100122884
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 芳末

【識別番号】100113516
【弁理士】
【氏名又は名称】磯山 弘信

【公開番号】 特開2006−140398(P2006−140398A)
【公開日】 平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願番号】 特願2004−330572(P2004−330572)