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【発明の名称】 フルPC柱の吊り上げ方法および吊り治具
【発明者】 【氏名】山崎 忍
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設株式会社内

【要約】 【課題】パネルゾーンを一体化して梁筋を予め組み付けた構成のフルPC柱の設置に際し、それを効率的に吊り上げる。

【解決手段】少なくとも頭部両側に梁筋2aが突出しているフルPC柱1をクレーンにより吊り上げるに際し、それら梁筋の基端部を吊り支持点としてフルPC柱を吊り上げる。そのための吊り治具4としては、クレーンにより吊り支持される吊りフレーム5に2対4本のワイヤ6の一端を連結し、それらワイヤの他端を1対2本の吊りビーム7の両端部に着脱自在に連結して、吊りフレームからワイヤを介して各吊りビームをそれぞれほぼ水平姿勢として互いにほぼ平行な状態で吊り支持した構成のものが好適に採用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に予め梁筋が一体に組み付けられていて少なくとも頭部両側に梁筋が突出しているフルPC柱をクレーンにより吊り上げるに際し、前記梁筋の基端部を吊り支持点としてフルPC柱を吊り上げることを特徴とするフルPC柱の吊り上げ方法。
【請求項2】
請求項1記載の吊り上げ方法において用いる吊り治具であって、クレーンにより吊り支持される吊りフレームに2対4本のワイヤの一端を連結し、それらワイヤの他端を1対2本の吊りビームの両端部に着脱自在に連結して、前記吊りフレームから前記ワイヤを介して前記各吊りビームをそれぞれほぼ水平姿勢として互いにほぼ平行な状態で吊り支持し、フルPC柱の両側にそれぞれ突出している梁筋の基端部をそれら吊りビームによってそれぞれ支持してフルPC柱を吊り上げる構成としたことを特徴とするフルPC柱の吊り治具。
【請求項3】
請求項2記載の吊り治具であって、各吊りビームを吊り支持している2本のワイヤのうちの片方の一端をチェーンブロックを介して吊りフレームに連結したことを特徴とするフルPC柱の吊り治具。
【請求項4】
請求項2または3記載の吊り治具であって、各吊りビームの少なくとも一端部には床面上を転動可能なローラが取り付けられていることを特徴とするフルPC柱の吊り治具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は建物の施工法であるPC工法に関わり、特にパネルゾーンまで予め一体化したフルPC柱を設置するに際してそれを吊り上げるための方法、およびそれに用いる吊り治具に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、鉄筋コンクリート造の建物の施工に際して、柱や梁、スラブ等をプレキャスト(PC)化して予め製作したPC部材を現場にて組み立てることで建物を構築するPC工法がかねてより広く採用されており、たとえば特許文献1には中空柱型枠(PC型枠)としてのプレキャスト柱ユニットを用いる工法が開示され、特許文献2にはそれを吊り上げるための吊り治具が開示されている。
【特許文献1】特開平11−247450号公報
【特許文献2】特開平6−298487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種のPC工法においては現場労務の軽減と工期短縮を充分に図るためにはPC化を高度に進めることが好ましく、特に柱に関しては特許文献1に示されるようなPC型枠を採用するよりはそれ自体がそのまま柱となるPC柱を採用することが好ましく、さらにそのPC柱としては、パネルゾーン(柱梁接合部)を現場にて後打ちする単なるPC柱よりも、パネルゾーンまでも一体化して梁筋を予め組み付けておくフルPC柱の採用がより好ましいと考えられる。
【0004】
しかし、そのようなパネルゾーンまでも一体化したフルPC柱を採用する場合には、従来一般のPC型枠や、パネルゾーンを後打ちすることを前提とする単なるPC柱の場合よりもその設置が困難であるという問題がある。
【0005】
すなわち、従来一般のPC型枠やPC柱を設置する際には、特許文献1〜2に示されるようにそれらの側面に何らかの吊り金物を予め取り付けておき、その吊り金物にワイヤを掛けて吊り上げることが通常であるが、フルPC柱の場合には側面に梁筋が突出していることからワイヤに梁筋が干渉することがあるのでそのような従来の手法をそのまま採用することができない場合がある。勿論、そのような吊り金物を側面に取り付けた場合には、それを最終的には撤去しなければならないし、撤去後には当然に補修が必要となるので、その点においても好ましいことではない。
【0006】
また、従来の単なるPC柱では側面にではなく上面に吊り金物を取り付けておくことも可能であるが、フルPC柱ではそれも好ましくない。すなわち、従来の単なるPC柱では、その上面に取り付けた吊り金物はパネルゾーンに後打ちされるコンクリート中に自ずと埋設されてしまうからそれを撤去するような必要はないのであるが、フルPC柱の場合はその上面に上階のフルPC柱の下面がわずかなクリアランスが確保されるだけでそのまま接合されることになるから、その吊り金物を撤去するか、あるいは上階のフルPC柱の下面に吊り金物との干渉を避けるための凹部を形成しておくような対策が必要となり、いずれにしても単なるPC柱の場合に比べて面倒な手間とそのための費用が必要となる。
【0007】
なお、実開平6−56352号公報には、PC柱の上面に突出しているネジ鉄筋に対してシャックルを着脱可能に取り付けるようにした特殊な吊り治具が開示されているが、これは柱主筋としてネジ鉄筋を採用した特殊なPC柱を対象とするものであり、一般に適用可能なものではない。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明はパネルゾーンを一体化して梁筋を予め組み付けた構成のフルPC柱を対象として、それを設置するに際して効率的に吊り上げることが可能な吊り上げ方法と、それに用いて最適な吊り治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吊り上げ方法は、頭部に予め梁筋が一体に組み付けられていて少なくとも頭部両側に梁筋が突出しているフルPC柱をクレーンにより吊り上げるに際し、前記梁筋の基端部を吊り支持点としてフルPC柱を吊り上げることを特徴とする。
【0010】
本発明の吊り治具は上記方法において用いるものであって、クレーンにより吊り支持される吊りフレームに2対4本のワイヤの一端を連結し、それらワイヤの他端を1対2本の吊りビームの両端部に着脱自在に連結して、前記吊りフレームから前記ワイヤを介して前記各吊りビームをそれぞれほぼ水平姿勢として互いにほぼ平行な状態で吊り支持し、フルPC柱の両側にそれぞれ突出している梁筋の基端部をそれぞれ吊りビームによって支持してフルPC柱を吊り上げる構成としたことを特徴とする。
【0011】
本発明の吊り治具においては、各吊りビームを吊り支持している2本のワイヤのうちの片方の一端をチェーンブロックを介して吊りフレームに連結することが好ましく、また各吊りビームの少なくとも一端部には床面上を転動可能なローラを取り付けておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吊り上げ方法では、フルPC柱の頭部に予め組み付けられている梁筋を吊り金物として機能せしめてその基端部に吊り治具を係合させ、そこを吊り支持点としてそのまま吊り上げることにより、フルPC柱には従来一般のPC型枠やPC柱の場合のように格別の吊り金物を予め取り付けておいたりそれを最終的には取り外すような必要はなく、また梁筋の基端部に係合可能な吊り治具を用いることのみで何ら複雑な機構や操作を必要とせず、玉掛けおよび玉掛け外しも何ら面倒なく容易に行うことができ、極めて合理的であり有効である。
【0013】
本発明の吊り治具は、フルPC柱を自立させてその足元に吊りビームを配置し、その状態で吊りビームにワイヤを連結して吊り治具全体を吊り上げていくことのみで、吊りビームが自ずと梁筋に係合してフルPC柱をそのまま吊り上げることができから、この吊り治具によれば玉掛けを床面において行うことができることになるし、逆の手順で玉掛け外しも床面において行うことが可能であり、したがって高所作業をなくして安全かつ効率的な作業が可能であり、上記方法に適用するものとして最適である。特に、吊りビームに連結する2本のワイヤの片方にチェーンブロックを設けておくことにより、そのチェーンブロックの操作により吊り姿勢の微調整を容易に行うことができる。また、吊りビームの少なくとも一端部に床面上を転動するローラを設けておくことにより、玉掛けおよび玉掛け外しの際に吊りビームが床面上を滑らかに移動可能であるので作業性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図1〜図3に示す。図1に示すように、本実施形態が対象としているフルPC柱1はパネルゾーンを一体化してその頭部には予め3方向の梁筋2a、2bを組み付けたもので、梁筋2aがこのフルPC柱1の両側に突出しているとともに、その直交方向に梁筋3aが突出しており、また上面には柱筋3が突出しているものである。本実施形態では、そのようなフルPC柱1を吊り上げるに際して、図1に示す構成の吊り治具4を用い、その吊り治具4によってフルPC柱1の両側に突出している梁筋2aの基端部を吊り支持点として吊り上げるようにしている。
【0015】
本実施形態の吊り治具4は、吊りフレーム5と、その吊りフレーム5から2対4本のワイヤ6によってそれぞれ吊り支持されている1対2本の吊りビーム7から構成されている。吊りフレーム5はフルPC柱1の外形寸法よりもやや大きい矩形フレーム状のもので、角パイプ材等の鋼材がフレーム状に組まれてその上部にクレーンにより吊り上げるための主ワイヤ8が連結される連結具9が溶接され、下部の四隅には吊りビーム7を吊り支持するためのワイヤ6が連結される連結具10が溶接されているものである。
【0016】
吊りビーム7は、フルPC柱1の幅寸法に相当する長さの鋼材からなるもので、図3に示すようにその両端部には上記のワイヤ6が着脱自在に連結される連結具11が設けられ、両端部の下部には床面上を転動可能なローラ12が取り付けられ、また上面および側面にはそれぞれ硬質ウレタンゴム等の緩衝材13a、13bが取り付けられているものである。
【0017】
各吊りビーム7はそれぞれ上記の吊りフレーム5から2本のワイヤ6によりほぼ水平姿勢となるように吊り支持されるが、図1(c)に示すように各吊りビーム7を支持している2本のワイヤ6のうち、吊りビーム7の一端側を支持する一方のワイヤ6aは吊りフレーム5の連結具10に直接連結されているのに対し、他端側を支持する他方のワイヤ6bはチェーンブロック14を介して吊りフレーム7に対して連結されており、必要に応じてそのチェーンブロック14の手鎖14aを操作して吊りビーム7の他端側を上げ下げすることにより吊りビーム7の姿勢を微調整できるものとされている。
【0018】
上記の吊り治具4によりフルPC柱1を吊り上げるには、図2(a)に示すようにフルPC柱1を自立させておき、その上方から、各吊りビーム7の一端のみをワイヤ6aにより支持した状態とした吊り治具4を降下させる。(b)に示すように吊りビーム7の他端側のローラ12が床面に達したら、吊りビーム7を横方向に移動させつつさらに降下させて(c)に示すようにフルPC柱1の足元に配置する。その際、ローラ12が床面上を転動することで吊りビーム7の移動を容易にかつスムーズに行うことができる。そして、吊りビーム7をフルPC柱1の側面に押し付け、吊りビーム7の他端にワイヤ6bを連結し、図1(a)、(b)に示すように双方の吊りビーム7どうしをチェーン等の開き止め15により連結する。
【0019】
そのまま吊り治具4を上昇させていくと、吊りビーム7がフルPC柱1の側面に沿って上昇していき、図1(c)に示したようにそれが梁筋2aの最下段の位置に達したらその時点で自ずと玉掛けがなされることになり、そのままフルPC柱1を安定に吊り上げていくことができる。なお、吊りビーム7の側面には緩衝材13bが取り付けられているので、吊りビーム7がフルPC柱1の側面に沿って上昇していってもフルPC柱1に傷が付くようなことはない。また、フルPC柱1を吊り上げた状態でその吊り姿勢が傾いていたり不安定であったような場合には、床面からチェーンブロック14の手鎖14aを操作することで吊り姿勢を安定な鉛直姿勢となるように微調整すると良い。
【0020】
そのようにしてフルPC柱1を吊り上げて設置位置に導いたら、上記と逆の手順により吊り治具4を取り外す(玉掛け外しを行う)。つまり、図2(c)に示すように吊り治具4全体を降下させて吊りビーム7を床面まで下ろし、開き止め15を外すとともに、各吊りビーム7からワイヤ6bを外し、吊りフレーム5を上昇させれば、(b)に示すように吊りビーム7はローラ12の転動により自ずと横方向に移動しつつ一端側が引き上げられて起き上がっていくから、(a)に示すように吊りビーム7をフルPC柱1の上方位置まで退避させて次の作業に移れば良い。
【0021】
以上のような吊り治具4を用いて以上のような手順で吊り上げ作業を行うことにより、フルPC柱1には格別の吊り金物を設けておく必要がないのでその製作コストや製作手間を軽減できるし、玉掛け作業や玉掛け外し作業も上記のように床面での作業のみで極めて簡単かつ安全に行うことができ、したがってフルPC柱1の設置に係わる作業時間の短縮と作業効率の向上、クレーン稼働率の向上、ひいては躯体工事全体の工期短縮や工費削減に大きく寄与することができる。
【0022】
勿論、梁筋2aのフルPC柱1に対する組み付け強度は、従来のPC型枠やPC柱に対する通常の吊り金物の取り付け強度に比べて当然に遙かに高いものであり、その梁筋2aを吊り金物として利用することには何ら支障はないばかりか、吊り上げ時の安全性と信頼性をより高めることができる。ただし、吊りビーム7が梁筋2aの基端部から先端側にずれてしまうと梁筋2aが撓んで安定に吊ることができないことも想定されるから、それを防止するために、上記のように吊りビーム7をフルPC柱1の側面に押し付けておき、かつ双方の吊りビーム7をチェーン等の開き止め15により連結して、吊り支持点が確実に梁筋2aの基端部となってそこからずれることがないように留意する必要はある。
【0023】
なお、本実施形態の吊り治具4では、吊りビーム7の上面に緩衝材13aを取り付けているので、フルPC柱1を吊り上げた状態では梁筋2aがその緩衝材13aに食い込んでしまって吊り支持点がずれる懸念はほとんどない。また、吊りビーム7が支持する各梁筋2a(下端筋)は図示しているように横一列に同レベルで設けられていることが通常であるので、通常はそれらの梁筋2aの全てに均等に吊り荷重がかかることになるが、それら梁筋2aの位置が上下方向に多少のずれがあったとしても、上記のような緩衝材13aを取り付けておくことで多少の位置ずれは緩衝材13aの変形により吸収することができ、したがって特定の少数の梁筋のみに吊り荷重がかかってしまうようなことを有効に防止することができる。
【0024】
以上で本発明の一実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例に過ぎず、本発明は吊り上げ対象のフルPC柱の形態や寸法、重量等を考慮して、具体的な作業工程や吊り治具の具体的な構成については様々な設計的変更が可能であることはいうまでもない。たとえば、本発明の吊り上げ方法には上記実施形態の吊り治具4を用いることが最適であるが、それに限るものでもなく、梁筋の基端部を吊り支持点として吊り上げることができるものであれば他の吊り治具を採用することを妨げるものではない。また、本発明の吊り治具4には上記実施形態のようにチェーンブロック14やローラ12を備えておくことが好ましく、また吊りビーム7には緩衝材13a、13bを取り付けておくことが好ましいのであるが、それらが不要であれば省略して差し支えなく、特にローラ12は上記実施形態のように吊りビーム7の両側に設けることに代えて片側(玉掛け、玉掛け外しの際にワイヤ6bが着脱されて床面上を転動する側)にのみ設けることでも充分である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態である吊り上げ方法および吊り治具を示す図である。
【図2】同、玉掛けの作業手順を示す図である。
【図3】同、吊り治具における吊りビームの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 フルPC柱
2a 梁筋
4 吊り治具
5 吊りフレーム
6(6a、6b) ワイヤ
7 吊りビーム
12 ローラ
13a、13b 緩衝材
14 チェーンブロック
15 開き止め(チェーン)
【出願人】 【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番3号
【出願日】 平成16年8月18日(2004.8.18)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【公開番号】 特開2006−57266(P2006−57266A)
【公開日】 平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願番号】 特願2004−238005(P2004−238005)