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【発明の名称】 消音材用基布に適したスパンボンド不織布及び消音材
【発明者】 【氏名】田中 茂樹
【住所又は居所】滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡績株式会社総合研究所内

【氏名】坂本 浩之
【住所又は居所】滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡績株式会社総合研究所内

【氏名】足立 将孝
【住所又は居所】滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡績株式会社総合研究所内

【要約】 【課題】補強機能、形態保持機能、衝撃吸収機能共に優れた消音材基布に適したスパンボンド不織布を提案する。

【解決手段】目付が50g/m2〜1000g/m2、厚みが0.5mm〜10.0mmの長繊維が絡合した不織布において、該不織布が、緻密層とバルキー層とから構成されたスパンボンド不織布である。更に詳しくは、落球による最大衝撃力の吸収率が5%〜100%であるスパンボンド不織布である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付が50g/m2〜1000g/m2、厚みが0.5mm〜10.0mmの長繊維が絡合した多層不織布において、該不織布が、緻密層とバルキー層とから構成されたスパンボンド不織布。
【請求項2】
落球による最大衝撃力の吸収率が5%〜100%である請求項1記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
見掛密度が100kg/m3〜250kg/m3であって、緻密層とバルキー層が一体化して、緻密層面が凹凸形状を有し、凹面積が8%〜70%である請求項1又は2記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
緻密層がエンボス加工又は毛焼き加工で形成され、バルキー層がニードルパンチ加工又は水流交絡加工で形成されたことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の不織布を用いた消音材。
【請求項6】
ニードルパンチ加工又は及び水流交絡加工されたスパンボンド不織布を、エンボス加工する際に、緻密層を形成する側のエンボスローラー温度(Te:℃)が、不織布の繊維を構成する樹脂の融点(Tm:℃)としたとき、数式(Tm−8)≧Te≧(Tm−80)を満足し、かつバルキー層側のエンボスローラー温度を5℃〜100℃としてエンボス加工することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、消音材用基布に最適なスパンボンド不織布、及び当該スパンボンドを用いた消音材に関する。
【背景技術】
【0002】
吸音材、衝撃吸収材等の各種基布等に不織布を使用することが一般的に知られている。例えば、無機繊維ウエッブ又は無機物粉末を軟質合成樹脂で固めて消音機能を付与したシートを巻いたパイプが特許文献1で提案されている。しかしながら、かかる提案は外側をモルタルで固める方策をとるため汎用性に欠けるという問題がある。
【0003】
また、高比重金属を入れた遮音シートの内層に綿や軟質の発泡材を入れて吸音させる方法が特許文献2に提案されているが、この方法は、遮音シートを用いるため、汎用性に欠け、消音効果も不充分である。
【0004】
この方法を改良するため、内層に綿、フェルト、マット、筒状の繊維層で空気を保持させて吸音層機能を付与させ、外層を弾性のある樹脂を配して遮音層と制振層機能を果たす多層構造が特許文献3で提案されている。しかしながら、この方法は、厚みが大きく、不織布の吸音機能は軟質発泡体より機能が不足しているため、吸音効果が不充分であり、更に汎用性に欠けるという問題がある。
【0005】
更に不織布に音源と接触させて音を通過させ、外側の独立気泡樹脂体で吸音、遮断する方法が特許文献4で提案されている。しかし、使用する不織布としてポリプロピレン長繊維のエンボス加工したものであり、補強機能は別途に樹脂補強体を使用しており、不織布は補強効果を兼ね備えてはいない。
【0006】
その他、繊維集合体層と発泡樹脂層をニードルパンチ加工で接合し、接着層を介してパイル布帛などと接合させた積層材を壁面や床面等に貼りつけて、壁面や床面等に遮音、消音、断熱、結露防止等の機能を付与する方法が特許文献5で提案されている。しかし、この方法に用いる不織布は、特には限定されておらず、硬綿や開繊ウエッブも使用できる記載があり、カーペットの保温断熱層の交絡機能のみしか付与されていない。
【0007】
また、合成繊維からなる厚みのあるフェルト又はマットとフィルムを積層し、ニードルパンチで交絡処理した防音断熱シートが特許文献6で提案されている。この場合に用いられている不織布は、目付が100〜1500g/m2で、厚み1〜15mmと開示されており、補強効果はフィルムが保持し、不織布は断熱層として機能するものと推測される。
【特許文献1】特開平05−215289号公報
【特許文献2】特公平06−089560号公報
【特許文献3】特開2001−214996号公報
【特許文献4】特開平09−089357号公報
【特許文献5】特開2001−214996号公報
【特許文献6】特表2003−535228号公報
【0008】
上述の通り、断熱性や吸音性をもつ不織布は開示されているが、補強機能、形態保持機能、衝撃吸収機能共に優れた消音材基布に適した不織布は開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、補強機能、形態保持機能、衝撃吸収機能共に優れた消音材基布に適したスパンボンド不織布を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究した結果、不織布のみでも特定の構造を形成することで、衝撃吸収機能を向上せしめることにより、結果として、補強機能や形態保持機能も向上し、優れた消音機能を発現せしめることができることを知見し、遂に本発明を完成するに到った。即ち本発明は、(A)目付が50g/m2〜1000g/m2、厚みが0.5mm〜10.0mmの長繊維が絡合した不織布において、該不織布が、緻密層とバルキー層とから構成されたスパンボンド不織布。(B)落球による最大衝撃力の吸収率が5%〜100%である(A)記載のスパンボンド不織布であり、(C)見掛密度が100kg/m3〜250kg/m3、緻密層とバルキー層が一体化して、緻密層面が凹凸形状を有し、凹面積が8%〜70%である(A)又は(B)記載のスパンボンド不織布であり、(D)緻密層がエンボス加工又は毛焼き加工で形成され、バルキー層がニードルパンチ加工又は水流交絡加工で形成されたことを特徴とする(A)〜(C)記載のスパンボンド不織布であり、(E)(A)〜(D)何れかに記載の不織布を用いた消音材であり、(F)ニードルパンチ加工又は及び水流交絡加工されたスパンボンド不織布を、エンボス加工する際に、緻密層を形成する側のエンボスローラー温度(Te:℃)が、不織布の繊維を構成する樹脂の融点(Tm:℃)としたとき、数式(Tm−8)≧Te≧(Tm−80)を満足し、バルキー層側のエンボスローラー温度を5℃〜100℃としてエンボス加工することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスパンボンド不織布は、不織布のみでも本発明要件を満たす特定の構造を形成することで、補強機能、形態保持機能、衝撃吸収機能共に優れた消音材基布に適したスパンボンド不織布として安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、目付が50g/m2〜1000g/m2、厚みが0.5mm〜10.0mmの長繊維が絡合した不織布において、該不織布が、緻密層とバルキー層とから構成されたスパンボンド不織布である。
【0013】
不織布を構成する繊維が連続繊維でない場合は、衝撃吸収と消音機能が半減して、基布が不織布のみから構成されるシートでは、充分な消音機能が得られないので、短繊維不織布などの連続繊維で構成されていない不織布は好ましくない。また、連続繊維から構成されていても、衝撃を受けて剛体機能が発現できない不織布、例えば、メルトブローン不織布なども好ましくない。
【0014】
本発明に係る不織布の目付は、50g/m2〜1000g/m2である。50g/m2未満では、見掛密度を本発明範囲に設定した場合に、衝撃吸収と消音機能が不充分な構造しかできない場合があり好ましくない。1000g/m2を越えると、消音シートとして重くなり過ぎる問題があり好ましくない。本発明の好ましい目付は、100g/m2〜500g/m2であり、より好ましくは、150g/m2〜300g/m2である。
【0015】
本発明不織布の厚みは、0.5mm未満では、衝撃を面で受け分散して下層のショックアブソーバーで消音する効果が不充分となる場合があり好ましくない。10.0mmを越える場合は、他の素材でも代替可能となり、本発明不織布の良さを生かせない場合があり好ましくない。本発明の好ましい厚みは、0.6mm〜5.0mm、より好ましくは、0.8mm〜2.5mmである。
【0016】
本発明の不織布における構造は、剛体として衝撃を面で受け、衝撃を分散して下層に伝達する緻密層と、伝達された衝撃波を構造変形と波動として空隙への閉じ込める効果で衝撃を消去するショックアブソーバー機能を持つバルキー層の少なくとも2層構造が必要である。2層構造を形成しない場合は、上記効果が発揮できないので好ましくない。
【0017】
本発明の不織布は、2層構造で、且つ、落球による最大衝撃力の吸収率が5%〜100%であるスパンボンド不織布であることが好ましい。落球による最大衝撃力の吸収率が5%未満では消音機能が不充分となる場合がある。本発明の落球による最大衝撃力の吸収率のより好ましい範囲は8%以上、最も好ましくは10%以上100%である。より効率よく消音するためには、目付と密度と厚みにより最適な各層の厚み設定を行うのが望ましい。 好ましい緻密層/バルキー層の厚み比は、0.5/0.5〜0.03/0.97である。緻密層比が0.5を超えると、バルキー層が薄くなり、バルキー層のショックアブソーバー効果が低減して、衝撃吸収と消音機能が低下する場合があり、緻密層比が0.03未満では、剛体の面で衝撃を受け分散伝達する機能が低下する場合があるのからである。より好ましい緻密層/バルキー層厚み比は、0.4/0.6〜0.05/0.95である。
【0018】
本発明不織布の見掛密度は、緻密層とバルキー層を合わせた平均の見掛密度で定義され、見掛密度が100kg/m3〜300kg/m3が好ましい。見掛密度が100kg/m3未満では、緻密層の見掛密度が低くなり、面で衝撃を受け止めるための面剛性が不充分となる場合があり好ましくない。300kg/m3以上では、バルキー層の密度が高くなり、緻密層のショックアブソーバー機能が不充分となる場合があり好ましくない。本発明のより好ましい見掛密度は、150kg/m3〜290kg/m3であり、最も好ましくは180kg/m3〜280kg/m3である。ちなみに、緻密層の好ましい見掛密度は200kg/m3以上、より好ましくは300kg/m3以上1000kg/m3以下である。バルキー層の好ましい見掛密度は80kg/m3〜300kg/m3、より好ましくは、100kg/m3〜250kg/m3である。
【0019】
本発明不織布の2層構造は、緻密層とバルキー層が接合一体化していると、衝撃吸収及び消音機能の効率が良好となるので好ましい実施形態である。積層接合処理簡略化のため、一体構造体を2層構造化するのが最も好ましいが、別々の2層を接合する方法でもよく、接合する場合は、公知の方法、例えば、ニードルパンチや接着などにより接合一体化していることが好ましい事例として挙げられる。
【0020】
更には、衝撃を受ける緻密層が、剛体機能に加えて、凹凸形状を有する表面形態を付与することにより、緻密層底面の剛体層に衝撃が伝達する前に、凸部を変形させて衝撃力を緩和させる衝撃吸収力をも併せ持つ構造とすることで衝撃吸収及び消音機能の効率が非常に良好となるため、最も好ましい事例として例示できる。剛体機能を発揮する凹部の潰し面積は、好ましくは8%〜70%である。8%未満では、剛体機能が不充分となり、衝撃力をソフト層へ分散して伝達できなくなる場合ある。70%を越える場合は、凸部が減少し、衝撃緩和効率が不充分となる場合がある。より好ましい凹部面積は16%〜60%、最も好ましくは20%〜50%である。
【0021】
底面に凹凸を有する場合は、下方の凸部に応力集中してソフト層への伝達が不均一となり、逆効果となるので、好ましくない。表面への凹凸付与は、例えば、緻密層面のみが凹凸を形成できる片面エンボス加工や、毛焼き加工などが推奨できる。また、バルキー層はニードルパンチ加工や水流交絡加工などで形成する方法が推奨される。2層構造形成は上述のように、ソフト層にエンボス加工や毛焼き加工で直接緻密層を形成する方法が特に推奨されるが、別々に作成された不織布を一体化したソフト層を2層化することもできる。
【0022】
本発明の不織布を構成する繊維の組成は、スパンボンド不織布を形成できる組成であれば特には限定されない。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が例示できるが、本発明の好ましい組成としては、耐熱性と耐久性に優れた芳香族ポリエステルが挙げられる。芳香族ポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート、トリメチレンテレフタレート、トリメチレンナフタレート、ブチレンテレフタレート、ブチレンナフタレート、シクロヘキシレンジメチルテレフタレートなどの芳香族ジカルボン酸とジオールのポリエステル単位を主成分として含有するポリエステルなどが例示できる。なお必要に応じて、他の第三成分としては、酸成分では、イソフタール酸、アジピン酸、セバチン酸、グルタル酸等の第三成分を共重合したものや、ジオール成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール/エチレングリコール、などのジオール成分を共重合したポリエステルなども例示できる。また、共重合した芳香族ポリエステル又は脂肪族ポリエステルを混合して溶融せしめた時点で共重合させてもよい。
【0023】
なお、本発明では、性能を低下させない範囲で、その他の樹脂成分や防臭抗菌剤、消臭剤、防黴剤、着色剤、芳香剤、難燃剤、可塑剤、相溶剤等の添加により各種機能付与を行うことができる。
【0024】
本発明の不織布を構成する繊維は、特には限定されないが、繊度は、緻密層では強度と剛性が発現できる0.5dtex〜6dtexが好ましく、バルキー層では嵩高性が出せる2dtex〜10dtexが好ましい。断面形状は、緻密層では丸断面や扁平断面が好ましく、バルキー層では中空断面や特殊異形断面が好ましい。
【0025】
本発明の不織布構造の繊維配列は特には限定されないが、テープ用途では、直交配列や伸張方向に多く直列している繊維配列にすると、伸張時強力が高くできるので好ましい。シート用途では、直交配列かランダム配列として、全方向に伸張時強力を高くできる形態が好ましい。
【0026】
本発明不織布の強度や伸度及び引裂強さは特には限定されないが、取扱性や使用耐久性からの好ましい範囲は、強度は50N/50mm〜400N/50mm、伸度は40%〜100%、引裂強さは20N/50mm〜200N/50mmである。
【0027】
以下に本発明不織布の製法の一例を示す。
本発明不織布の緻密層とバルキー層の2層構造体は、緻密層とバルキー層を別々に作成し、積層一体化する方法でも得ることができる。又、ソフト層からなる単層不織布の片面を緻密構造化することもできる。単層不織布の2層構造化は、バルキー層を残して片面を剛体化するために、片表面部のみ加熱し、下層は冷却してバルキー層を剛直化しつつ片面を加熱エンボス加工する技術を用いることが特に好ましい。
【0028】
また、本発明に係る不織布は、別々に不織布化したソフト層を接合して2層とし、片面緻密構造化することもできる。
このような方法を採る場合は、緻密層は200kg/m3以上、バルキー層は200kg/m3未満であることが好ましい。
【0029】
以下に本発明の製造方法を例示する。
固有粘度0.68のポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)を用いて、常法により紡糸する。緻密層とする側は、スリットの吐出孔より扁平断面吐出糸を紡出するのが好ましい。本発明の好ましい繊度である0.5dtex〜6dtexとするためには、エジェクターによる引取速度を例えば5000m/分に設定する場合には、吐出量は0.25g/分孔〜3g/孔とするのが好ましい。この時、剪断速度は10000/秒以下に設定しないと、異常流動による繊維強力の低下を生じる場合がある。好ましい剪断速度は300/秒〜4000/秒であり、特にオリフィスがスリット形状や異形断面形状では、500〜3000/秒の範囲に設定するのが特に好ましい。
【0030】
吐出するノズルは多数列の小さなノズルを必要個数設置しても良いし、多列の孔を有する一枚のノズルを用いてもよい。吐出された溶融線条は、冷却しつつ細化させて引取る。スパンボンド法では、アスピレーター機能をもつエジェクターで引取り、搬送ネット上に振落として繊維配列をランダムな状態に開繊積層したウエッブを形成する。繊維が弾性回復限界内で遅延回復して不織布の形態保持性が低下して取扱性が悪くなる場合には、開繊積層したウエッブの遅延回復を直ちに抑制してウエッブ形態を固定する方法を推奨できる。
【0031】
固定方法は、引取りネットでの挟み込み固定化する方法や、押さえローラーによる固定化方法が例示できる。これにより、不織布の形態保持性が著しく向上する。振り落とす繊維量は、所望の目付けになるように引取ネット速度に応じて調整し振り落とす。振り落とし繊維本数が一定の場合では、引取ネット速度を早くしていくと、開繊された繊維は、ネットの進行方向(以下MDと略す)に配列する確率が多くなる傾向を示す。このような場合は振り落とす繊維本数を多くすることでランダムな状態を調整することが可能となり、より生産性も向上する。引取りウエッブ形成の工程では、必要な厚み調整も配慮する必要がある。
【0032】
バルキー層側の繊維断面は、丸断面又は異形断面や中空断面等が好ましいオリフィス形状として例示できる。本発明の好ましい繊度である2dtex〜10dtexとするには、エジェクターによる引取速度を例えば5000m/分に設定する場合、吐出量は1g/分孔〜5g/分孔とするのが好ましい。その他の条件は緻密層とする側の形成と同様の方法にて積層ウエッブを得ることができる。
【0033】
次いで、積層ウエッブは連続して、又は、非連続でニードルパンチ加工、又は水流交絡処理等の絡合処理を行い、バルキー層形成を行う。複層の場合はウエッブを積層して絡合処理を行う。ニードルパンチ加工では、緻密度と絡合強度に応じて針数密度や針形状を最適化するのが好ましい。水流交絡処理は、必要に応じ、片面又は両面に処理する。水流圧力は300N〜800Nが適当であり、あまり低圧では絡合効果が少なく、高過ぎると繊維の損傷を生じるので好ましくない。かくして得られたバルキー層は、次いで、緻密層とする側表面に緻密層を形成する。
【0034】
緻密層形成は、連続して、又は、非連続で、積層されたバルキー層の緻密層とする側表面に緻密化加工を行う。緻密化加工は、エンボス加工や毛焼き加工が推奨できる。エンボス加工は、本発明の好ましい実施形態では、凹凸加工ができるエンボス形状である折り目柄、格子柄、亀甲柄、横楕円柄などの形状で、潰し率は8%〜70%であることが好ましい。更に好ましくは16%〜60%である。線圧はPET繊維では、200N/cm〜900N/cmが好ましく、ローラー温度は、エンボス側は加熱し、反エンボス側は冷却するが望ましい。すなわち、ニードルパンチ加工又は及び水流交絡加工されたスパンボンド不織布を、エンボス加工する際に、緻密層を形成する側のエンボスローラー温度(Te:℃)が、不織布の繊維を構成する樹脂の融点(Tm:℃)としたとき、数式(Tm−8)≧Te≧(Tm−80) を満足し、バルキー層側のエンボスローラー温度を5℃〜100℃としてエンボス加工することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法が特に推奨できる。
【0035】
エンボスローラー温度が樹脂融点−8℃未満の高温では、溶融又は半溶融状態となり繊維形態が維持できない場合が避けるのが望ましい。融点−80℃以下では、繊維の塑性変形効果が不足して剛直面形成が不充分となる場合があり好ましくない。好ましいエンボスローラー温度(Te)は、Tm−10℃〜Tm−50℃、より好ましくは、Tm−15℃〜Tm−40℃である。反エンボスローラーは冷却してバルキー層の熱変形を防止して嵩高性を保持する必要から、5℃〜100℃とするのが好ましい。5℃以下では、技術的には望ましい条件であるが、冷却のためのエネルギー効率が悪くなりコスト面から不利である。100℃以上では、バルキー層が熱変形する場合があり好ましくない。
【0036】
かくして得られた本発明の消音材用スパンボンド不織布は、消音材用基布として提供できる。基布は、次いで、粘着剤が離型フィルムとラミネートされたものと接合され、消音シートが得られる。テープとするには、所望の幅に切断巻取りテープとして供給される。
【0037】
本発明では、性能を低下させない範囲で樹脂製造過程から成形体に加工し、製品化する任意の段階で防臭抗菌、消臭、防黴、着色、芳香、難燃等の機能付与剤等を付与しての加工処理ができる。なお、本発明における例示は、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
次に実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、実施例及び比較例中の特性値は以下の方法で測定した。
【0039】
<融点>
示差走査型熱量計にて、20℃から300℃まで、20℃/分にて昇温せしめたときの溶融により生じる吸熱現象の吸熱ピーク温度を融点とする。
<繊維の繊度>
JIS−L1015(1999)に準拠して測定。
<不織布の目付>
JIS−L1906(2000)に準拠して測定。
<不織布の厚さ>
JIS−L1906(2000)に準拠して測定。
<不織布の引張強度、伸度、及び5%伸張時応力>
JIS−L1906(2000)に準拠して測定。なお、5%伸張時応力は、引張強伸度測定時の5%伸張時応力とする。
<不織布の乾熱収縮率>
JIS−L1906(2000)に準拠して測定。
<凹部面積比>
ランダムに不織布1m2の10ヶ所を幅長さ10mm(1cm2)を選択して凹凸面を写真撮影して100倍に拡大した写真にて、個々に凹部を切り出して、全面積に対する面積比を求め、10ヶ所の平均値を%として示す。
<落球による最大衝撃力の吸収率>
JIS B 1501に規定される玉軸受用鋼球の5/8並球を用い、下方500mmに設置した圧縮ロードセルの荷重受け面φ100mmの中心φ10mm内に落下させたときの最大衝撃荷重(σmax)を測定し、次いで、サンプルを荷重受け面φ100mmの中央に設置して、サンプル表面から500mm上方より、同鋼球を荷重受け面φ100mmの中心φ10mm内に落下させて最大衝撃荷重(σi)を測定し、下式にて、衝撃荷重の低下率を落球による最大衝撃力の吸収率(Δσ)として求める。(n=10)
Δσ(%)=1/nΣ(1−σi/σmax)×100
<形態保持機能>
形態保持性として、伸張変形の抵抗メジャーとして5%伸張時応力が40N/5cm以上、熱変形抵抗メジャーとして熱収縮率が2%以下を形態保持機能が合格と判断する。
<補強機能>
厚み2mmの板ガラスを、幅50mm、長さ200mmに切断したガラス板に、100mm点を幅方向にガラス切りで直線50mm全幅の切れ目をつけ、切れ目を下側にして、切れ目を中央にして150mm間隔に2点支持させて、上側にサンプルを装着して試験試料とし、100mm上から5/8並球をサンプル装着面の切れ目位置中央に落下させて、板ガラスが切れ目で割れた場合、補強機能不良(×)、割れなかった場合、補強機能合格(○)と判定した。なお、サンプルを装着しない場合は、n=10の全てが割れたことを確認する。n=10全てが割れない場合は、落下位置を高くして確実に割れる位置を落球位置に修正して評価した。サンプルを装着した場合、n=10のうち、7以上割れない場合はやや不良(△)とした。
<消音効果>
480mm角点にφ10mmのゴム面で4点支持できる台に、500mm角の鋼板(厚み5mm)を設置し、鋼板面150mm上から5/8並球を落下させたときの音を1級とし、鋼板面に5mmの軟質天然ゴム板を装着して、天然ゴム板面150mm上から鋼球を落下させた時の音を5級として、10名のパネラーにて、サンプルを装着した時と比較、官能評価で1級〜5級を判定させて、平均値(少数点以下切り捨て)を出し、3級以上を消音効果ありと判定した。
【0040】
(実施例1)
固有粘度0.68、融点265℃のPETを紡糸温度285℃にて、幅0.05mm、長さ0.2mmのオリフィスより、単孔吐出量0.5g/分にて紡糸し、ノズル下50mmより20℃の空気を風速0.5m/秒にて冷却しつつ、ノズル下0.8mの点に設置したエジェクターで糸速4900m/分の速度で吸引させつつ引取り、ノズル下1.5m点で、50m/分の速度で移動している引取ネット面へ繊維束を開繊させつつ振り落とし積層した。ネット面に積層されたウエッブは直ちに仮押さえローラーでプレ圧縮して引取ローラーにて繊維断面が扁平率(扁平率%=1/nΣ(短辺/長辺)×100〜n=20)35%の扁平断面で、繊度1dtex、目付60g/m2の緻密層用ウエッブAを巻き取った。
【0041】
オリフィス形状がφ0.3mmの丸断面を用い、単孔吐出量3g/分にて紡糸し、引取ネット速度を40m/分とした以外は不織布Aと同様にして得られた丸断面で繊度は6dtex、目付100g/m2のバルキー層用の積層ウエッブBを得た。
次いで、緻密層用ウエッブAとバルキ−層用ウエッブBを積層供給して、ペネ60でニードルパンチし、ニードルパンチしたスパンボンド不織布Cを得た。
次いで、ニードルパンチしたスパンボンド不織布Cを緻密層用不織布側ローラーは、0.8mmピッチで潰し率50%の格子柄エンボスローラーにて、温度240℃で、バルキー層側ローラーはプレーン表面で、ローラー温度20℃にてバルキー層側を冷却しつつ、線圧500Nfにて緻密層側表面をエンボス加工したスパンボンド不織布Dを得た。
【0042】
得られたスパンボンド不織布Dの緻密層の厚みは、0.08mm、で凹凸を有し、凹部面積比44%であり、バルキー層の厚みは0.71mmであり、不織布の目付160g/m2、見掛密度202kg/m3、厚み0.79mm、落球による最大衝撃力の吸収率10%、5%伸張時応力は、縦(MD)方向210N/5cm、横(CD)方向145N/5cm、乾熱収縮率は、MD方向1.2%、CD方向0.1%であった。
得られたスパンボンド不織布Dは、離型フィルムに粘着層をラミネートされたものの粘着層側と積層接合して、消音材を作成して機能評価を消音シート材として評価した。形状保持機能は合格、補強機能は合格、消音効果も4級で合格であった。すなわち、実施例1は発明要件を全て満たしており、本発明不織布を接合するだけで消音材として優れた性能を示すものであった。
【0043】
(実施例2)
固有粘度0.78、融点266℃のPETを紡糸温度285℃にて、オリフィス形状がφ0.25mmの丸断面を用い、単孔吐出量2g/分にて紡糸し、ノズル下50mmより20℃の空気を風速0.5m/秒にて冷却しつつ、ノズル下0.8mの点に設置したエジェクターで糸速5400m/分の速度で吸引させつつ引取り、ノズル下1.5m点で、100m/分の速度で移動している引取ネット面へ繊維束を開繊させつつ振り落とし積層した。ネット面に積層されたウエッブは直ちに仮押さえローラーでプレ圧縮して引取り、連続して、ペネ50でニードルパンチし、繊維断面は丸断面で繊度は3.7dtex、不織布の厚みは1.4mm、目付80g/m2のニードルパンチ加工したスパンボンド不織布Eを得た。次いで、スパンボンド不織布Eを、不織布片面はプレーンローラー面を10℃に冷却しつつ、片面の加熱エンボスローラーは、0.8mmピッチで潰し率30%の格子柄エンボスローラーで、エンボス温度235℃、線圧500N/cmにて、他の片面表層のみエンボス加工したスパンボンド不織布Fを得た。
【0044】
得られたスパンボンド不織布Fは、緻密層の厚み0.08mm、で凹凸を有し、凹部面積比24%であり、バルキー層の厚みは0.42mmであり、不織布の目付80g/m2、見掛密度160kg/m3、厚み0.5mm、落球による最大衝撃力の吸収率12%、5%伸張時応力は、MD方向160N/5cm、CD方向85N/5cm、乾熱収縮率は、MD方向0.6%、CD方向1.8%であった。
得られたスパンボンド不織布Fは、離型フィルムに粘着層をラミネートされたものの粘着層側と積層接合して、消音材を作成して機能評価を消音シート材として評価した。形状保持機能は合格、補強機能は合格、消音効果も3級で合格であった。すなわち、実施例2は発明要件を全て満たしており、厚みがやや薄い本発明不織布を接合するだけで消音材として優れた性能を示すものであった。
【0045】
(実施例3)
ノズル孔数を増孔し、引取ネット速度を変更し、積層ウエッブをペネ45でニードルパンチした以外、実施例2と同様の方法にて得た、繊維断面は丸断面で繊度は3.6dtex、不織布の厚みは6.2mm、目付450g/m2のニードルパンチ加工したスパンボンド不織布Gを得た。次いで、エンボスを1.2mmピッチで潰し率72%の格子柄を用い、エンボス温度258℃、線圧800N/cmとした以外、実施例2と同様にして得たスパンボンド不織布Hは、緻密層の厚み0.15mm、で凹凸を有し、凹部面積比61%であり、バルキー層の厚みは2.5mmであり、不織布の目付450g/m2、見掛密度170kg/m3、厚み2.65mm、落球による最大衝撃力の吸収率15%、5%伸張時応力は、MD方向1260N/5cm、CD方向925N/5cm、乾熱収縮率は、MD方向0.7%、CD方向1.9%であった。
【0046】
得られたスパンボンド不織布Hは、離型フィルムに粘着層をラミネートされたものの粘着層側と積層接合して、消音材を作成して機能評価を消音シート材として評価した。形状保持機能は合格、補強機能は合格、消音効果も4級で合格であった。すなわち、実施例3は発明要件を全て満たしており、厚みがやや厚い本発明不織布を接合するだけで消音材として優れた性能を示すものであった。
【0047】
(実施例4)
実施例1で得たウエッブAのみを実施例1と同様の方法でエンボス加工して得た緻密層用スパンボンド不織布Lは、厚み0.09mm、見掛密度670kg/m3、凹凸を有し、凹部面積比44%であった。
【0048】
実施例1で得たウエッブBとスパンボンド不織布Lを積層して、ペネ60でニードルパンチを施し、積層スパンボンド不織布Mを得た。得られた不織布の目付160g/m2、見掛密度160kg/m3、厚み1.00mm、落球による最大衝撃力の吸収率15%、5%伸張時応力は、縦(MD)方向195N/5cm、横(CD)方向153N/5cm、乾熱収縮率は、MD方向1.1%、CD方向0.2%であった。
得られたスパンボンド不織布Dは、離型フィルムに粘着層をラミネートされたものの粘着層側と積層接合して、消音材を作成して機能評価を消音シート材として評価した。形状保持機能は合格、補強機能は合格、消音効果も4級で合格であった。すなわち、実施例4は発明要件を全て満たしており、本発明不織布を接合するだけで消音材として優れた性能を示すものであった。
【0049】
(比較例1)
実施例1の積層ウエッブBをペネ60でニードルパンチして得たスパンボンド不織布Iは、緻密層が無く、表面に凹凸も無く、バルキー層のみの単層であり、不織布の目付100g/m2、見掛密度84kg/m3、厚み1.2mm、落球による最大衝撃力の吸収率4%、5%伸張時応力は、MD方向18N/5cm、CD方向11N/5cm、乾熱収縮率は、MD方向4.7%、CD方向3.5%であった。
得られたスパンボンド不織布Iは、離型フィルムに粘着層をラミネートされたものの粘着層側と積層接合して、消音材を作成して機能評価を消音シート材として評価した。形状保持機能は不合格、補強機能は不合格、消音効果も2級で不合格であった。すなわち、比較例1は発明要件を全て満たしておらず、厚みはあるが単層のため、消音材として劣る性能を示すものであった。
【0050】
(比較例2)
ノズル孔数と引取速度を変更し、0.8mmピッチで潰し率50%の格子柄エンボスローラーを用いた以外、実施例2と同様にして得たスパンボンド不織布Jは、繊維断面は丸断面で繊度は3.7dtex、緻密層の厚み0.05mm、で凹凸を有し、凹部面積比46%であり、バルキー層の厚みは0.25mmであり、不織布の目付45g/m2、見掛密度110kg/m3、厚み0.3mm、落球による最大衝撃力の吸収率3%、5%伸張時応力は、MD方向64N/5cm、CD方向41N/5cm、乾熱収縮率は、MD方向0.2%、CD方向0.1%であった。
得られたスパンボンド不織布Jは、離型フィルムに粘着層をラミネートされたものの粘着層側と積層接合して、消音材を作成して機能評価を消音シート材として評価した。形状保持機能は合格、補強機能は不合格、消音効果も2級で不合格であった。すなわち、比較例2は発明要件を全て満たしておらず、厚みがやや薄いため消音材として劣る性能を示すものであった。
【0051】
(比較例3)
ノズル孔数と引取速度を変更し、エンボスローラーの温度を262℃、線圧を400N/cmとした以外、比較例2と同様にして得たスパンボンド不織布Kは、繊維断面は丸断面で繊度は3.7dtex、緻密層の厚み0.02mm、で凹凸を有し、凹部面積比47%であり、バルキー層の厚みは0.78mmであり、不織布の目付140g/m2、見掛密度175kg/m3、厚み0.8mm、落球による最大衝撃力の吸収率3.5%、5%伸張時応力は、MD方向194N/5cm、CD方向180N/5cm、乾熱収縮率は、MD方向0.2%、CD方向0.1%であった。
得られたスパンボンド不織布Jは、離型フィルムに粘着層をラミネートされたものの粘着層側と積層接合して、消音材を作成して機能評価を消音シート材として評価した。形状保持機能は合格、補強機能は不合格、消音効果も2級で不合格であった。すなわち、比較例3は発明要件を全て満たしておらず、消音材として劣る性能を示すものであった。
【0052】
(比較例4)
PETからなる中空断面で6.7dtexのステープル綿と熱接着成分として、融点110℃のポリエステル共重合体をシース成分とし、PETをコア成分とした3.4dtexの熱接着繊維を、65%/35%混綿して開繊したウエッブを140℃の熱風にて圧縮成形し、目付100g/m2、厚み1mm、見掛密度100kg/m3、落球による最大衝撃力の吸収率3%、5%伸張時応力は、MD方向11N/5cm、CD方向10N/5cm、(乾熱収縮率は、熱接着成分が溶融するため測定できない)の硬綿を得た。得られたスパンボンド不織布Jは、離型フィルムに粘着層をラミネートされたものの粘着層側と積層接合して、消音材を作成して機能評価を消音シート材として評価した。形状保持機能は不合格、補強機能は不合格、消音効果も2級で不合格であった。すなわち、比較例4は発明要件の連続繊維から構成されておらず、消音材として劣る性能を示すものであった。
【0053】
実施例1〜4、比較例1〜4により明らかなように、本発明のスパンボンド不織布は、不織布のみでも本発明要件を満たす特定の構造を形成することで、補強機能、形態保持機能、衝撃吸収機能共に優れた消音材基布に最適なスパンボンド不織布が提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のスパンボンド不織布は、補強機能、形態保持機能、衝撃吸収機能共に優れた消音材基布に最適なスパンボンド不織布として安価に提供することができる。さらには、目付や厚みを所望のものとすることで、消音材基布以外の用途、例えば、粗密層を必要とするフィルター用途にも有用な不織布として提供できるので、産業界に寄与することが大である。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜2丁目2番8号
【出願日】 平成16年7月5日(2004.7.5)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−16738(P2006−16738A)
【公開日】 平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願番号】 特願2004−197778(P2004−197778)