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【発明の名称】 中空部材の焼き入れ装置及び焼き入れ方法
【発明者】 【氏名】岸本 篤典
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】坂上 秀幸
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】上野 行一
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】金井 則之
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号 新日本製鐵株式会社内

【要約】 【課題】中空部材に対して、焼き入れむら及び変形のおそれが少なく確実に焼き入れが可能な焼き入れ装置を提供すること。

【解決手段】両端部が開口する筒状の中空部材1の両端部のそれぞれの内周の形状と概ね対応する外形をもつ内部拘束冶具3の組及び外部拘束冶具2の組を備える端部拘束冶具と、中空部材1に一部を当接させて保持する当接冶具4及び5と、加熱した中空部材の両端部に内部拘束冶具3を挿入し且つ所定位置に当接冶具4及び5を当接した状態で冷却液を噴射して冷却を行う手段とを有することを特徴とする。つまり、中空部材の両端部に内部拘束冶具を挿入することで、中空部材の内部に冷却液が進入することを抑制して冷却むらを抑制するとともに、端部拘束冶具及び当接冶具により発生する歪みを抑制している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が開口する筒状の中空部材の該両端部のそれぞれの内周の形状と概ね対応する外形をもつ内部拘束冶具の組を備える端部拘束冶具と、
該中空部材に一部を当接させて、該中空部材を保持する当接冶具と、
加熱した該中空部材の両端部のそれぞれに該内部拘束冶具を挿入し且つ該中空部材の所定位置に該当接冶具を当接した状態で、該中空部材に流体を接触させることで冷却を行う冷却手段と、
を有することを特徴とする中空部材の焼き入れ装置。
【請求項2】
前記端部拘束冶具は前記中空部材の両端部のそれぞれの外周の形状と概ね対応する形状の当接部をもつ外部拘束冶具を更に備え、
前記冷却手段は該中空部材の両端部を該内部拘束冶具及び該外部拘束冶具にて内外から挟持した状態で冷却を行う手段である請求項1に記載の中空部材の焼き入れ装置。
【請求項3】
前記冷却手段は前記中空部材の外周面に冷却液を噴出する冷却液噴出ノズルを備える請求項1又は2に記載の中空部材の焼き入れ装置。
【請求項4】
両端部が開口する筒状の中空部材を所定温度にまで加熱する加熱工程と、
該両端部の開口を閉塞し且つ所定形状に拘束した状態で流体にて冷却する冷却工程と、
を有することを特徴とする中空部材の焼き入れ方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、中空部材に対して品質よく焼き入れができる焼き入れ装置及び焼き入れ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近自動車部品の軽量化が指向されており、中空部材が多用されている。例えば、中間ビーム部品として、これまでの鋼板を断面U字状に加工した部材に代えて、中空のパイプを用いるようなことが行われている。
【0003】
しかしながらこのような長尺の中空部材に対して焼き入れを行う場合に、従来のようなダイクエンチを適用すると、内部の冷却が遅れ焼き入れが十分でなかったり、焼入れ温度に加熱されて軟化している材料は内部が中空且つ長尺のためプレスにより容易につぶれてしまうという問題があった。
【0004】
従来、長尺部材の焼き入れ装置として、特許文献1が開示されている。特許文献1に開示された装置は、金型の内側が被焼入れ材の形状に一致した先端位置を持つ複数の凸部と金型の外部あるいは隣接する凹部と連通した凹部とにより構成され、上型、下型の少なくとも一方の前記凹部の1箇所以上には焼入れ液噴出口を有することを特徴とする拘束焼入れ装置である。
【特許文献1】特開平6−200320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに特許文献1に記載の装置は、中空であっても単純な形状をもつ部材やあるいは中実部材であるならば、ある程度有効である。しかしながら、部材の断面形状が長手方向で異形であるような複雑な形状をもつ中空部材に対しては、被焼入れ材の形状に一致させた凸部を有する複雑な形状をもつ金型を設計・作成しなければならないという不都合がある。また、いくら凸部を駒部材により形成しても、凹部の噴出口から噴出される焼入れ液は凸部材に相対する部分にはかかりにくく、焼き入れが不十分になる恐れがあった。
【0006】
本発明は上記実状に鑑み成されたものであり、中空部材に対して、焼き入れむら及び変形のおそれが少なく確実に焼き入れが可能な焼き入れ装置及び焼き入れ方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋼材等から構成される長尺の中空部材に対して焼入れする場合に発生する、長手方向の反り等の変形は、部材の冷却むらが原因の一つであると推測される。焼き入れを行う際には被焼き入れ部材である中空部材を加熱炉内に挿入し、所定温度まで加熱した後に加熱炉より取り出して、水等の流体(冷却液、焼き入れ液)が充填された槽内に被焼き入れ部材を浸漬して行うのが一般的である。
【0008】
ここで、両端部が開口した筒状の中空部材の場合には、焼き入れ用の冷却液などの流体は部材両端から内部に流入することで、開口部から近い両端部と、開口部から距離がある中央部とでは冷却のタイミングがずれることになる。そのために、長尺材になるほど冷却むらが大きくなり、反り等の変形が発生することが分かった。
【0009】
以上の知見に基づき本発明者らは焼き入れむらの発生を少なくするために中空部材内部への冷却用の流体の流入を抑制することに想到した。そして、内部に流体の流入を抑制するために、中空部材の両端部のそれぞれの内周の形状と概ね対応する外形をもつ内部拘束冶具を中空部材の両端部内に挿入することを発明した。この場合に、内部拘束冶具を両端部に挿入することで、中空部材の両端部を固定することも可能になり、更に中空部材の長手方向の中央部付近などに当接して中空部材に発生する歪みを矯正する作用をもつ当接冶具を組み合わせることが可能になった。
【0010】
すなわち、本発明の中空部材の焼き入れ装置は、両端部が開口する筒状の中空部材の該両端部のそれぞれの内周の形状と概ね対応する外形をもつ内部拘束冶具の組を備える端部拘束冶具と、該中空部材に一部を当接させて、該中空部材を保持する当接冶具と、加熱した該中空部材の両端部のそれぞれに該内部拘束冶具を挿入し且つ該中空部材の所定位置に該当接冶具を当接した状態で、該中空部材に流体を接触させることで冷却を行う冷却手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決する本発明の中空部材の焼き入れ方法は、両端部が開口する筒状の中空部材を所定温度にまで加熱する加熱工程と、該両端部の開口を閉塞し且つ所定形状に拘束した状態で流体にて冷却する冷却工程とを有することを特徴とする。
【0012】
つまり、中空部材の両端部に内部拘束冶具を挿入することで、中空部材の内部に冷却用の流体が進入することを抑制するとともに、両端部の内周の形状と概ね対応する外形をもつ内部拘束冶具を挿入することで、発生する歪みを抑制している。同時に、当接冶具によって、全体に生起する歪みを防止できる。なお、中空部材の形状である「筒状」とは円筒状に限られない。また、途中で断面形状が変化していてもよい。また、内部拘束冶具は両端部のほか、開口部に設けることもできる。また、開口部の1つあたりに1つずつ設けてもよいし、複数個組み合わせた状態で両端部(開口部)の内周の形状に一致するような形態としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の中空部材の焼き入れ装置及び焼き入れ方法は、冷却みらの発生を抑制できた結果、中空部材に焼き入れを行う際に変形のおそれが少なくなるとともに、充分に焼き入れすることができる。更に当接冶具によって、僅かに発生する歪みも効果的に除去できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(構成)
本発明の中空部材の焼き入れ装置は端部拘束冶具と当接冶具と冷却手段とを有する。本発明装置が対象とする中空部材は内部が中空の部材である。そして、両端部が開口する筒状の部材である。特に長尺部材は焼き入れ時に大きな歪みが発生するおそれが大きいので本装置にて焼き入れを行うことが望ましい。
【0015】
端部拘束冶具は中空部材の両端部を拘束するとともに、両端部から冷却用の流体が流入することを抑制する部材である。端部拘束冶具は中空部材の両端部の内周の形状と概ね対応する外形をもつ内部拘束冶具の組を備える。両端部の内周の形状がそれぞれ異なる場合には内部拘束冶具の外形もその異なる形状に対応した形状とする。内部拘束冶具は中空部材の両端部に挿入されることで両端部を閉塞でき、後述する冷却手段にて用いられる冷却用の流体が中空部材の内部に浸入することを抑制する。
【0016】
ここで、内部拘束治具は中空部材両端部に後述する冷却用の流体が流入しないように閉塞するが、冷却用の流体が完全に流入しない程度にまで閉塞することは必須ではない。つまり、流体の流入をある程度阻止できる程度まで閉塞できれば効果を発揮することができる。例えば、中空部材が外周面から充分に冷却され焼き入れが終了したタイミングで、流体が両端部から中空部材の内部に流入する場合や、外周面から接触させられる流体の量よりも極めて少量の流体が中空部材の内部に流入する程度であれば大きな問題は生じないと考えられる。
【0017】
また、内部拘束冶具は両端部に対し内面から当接することで冷却時の両端部に発生する変形を抑制する。内部拘束冶具が中空部材の両端部内に挿入される長さは、中空部材の素材、板厚、大きさなどにより適正値が変化し限定できないが、自動車の中間ビーム部材などでは10mm程度以上あることが好ましい。挿入する長さが充分であると、冷却時に発生する歪みを充分に抑制できるとともに、内部拘束冶具の形状が中空部材の変形に伴い両端部に転写されるおそれが少ないからである。
【0018】
内部拘束冶具の外面(外形がなす面)と中空部材の両端部の内周との間には、内部拘束冶具の挿入性(両端部と内部拘束冶具との間でのこすり傷の発生を抑制できること)を確保する目的で、クリアランスを設けることが好ましい。クリアランスの大きさは特に限定しない。
【0019】
また、内部拘束冶具としては、両端部との間にクリアランスを設けることに加えて(又は代えて)、中空部材の両端部の断面を分割するように、分割した形態とすることもできる。分割した内部拘束冶具を組み合わせた形状としては、中空部材の両端部の内周の形状よりも小さな形状としておき、断面が小さい状態で中空部材の両端部に挿入した後、分割された各部分を中空部材の両端部の内周の面に当接する方向に向かって拡げるように移動させることで、密着させることができる。分割された内部拘束冶具の間にはテーパ状部分をもつ部材(ウェッジなど)を挿入するなどして密閉性を担保することが望ましい。また、内部拘束冶具の形状をテーパ形状にすることでも調芯が可能であって挿入性が確保できる。
【0020】
端部拘束冶具は更に外部拘束冶具を備えることが望ましい。外部拘束冶具は中空部材の両端部のそれぞれの外周の形状と概ね対応する形状の当接部をもつ冶具である。外部拘束冶具の当接部は、内部拘束冶具との間で中空部材の両端部を内外から挟持することで歪みの発生を抑制する部材である。つまり、内部拘束冶具は中空部材の両端部が内側方向に歪むことを効果的に抑制し、外部拘束冶具は外側方向に歪むことを効果的に抑制する。外部拘束冶具は複数個を組み合わせることで中空部材の両端部の外周面側に当接することが望ましい。外部拘束冶具は分割することで、両端部との間に大きなクリアランスを設けなくても容易に両端部の外周面に当接できる。
【0021】
外部拘束冶具は後述する冷却手段との組み合わせによっては中空部材の両端部から冷却用の流体を流入することを防止する作用を発揮できる。この点については冷却手段と併せて後述する。
【0022】
当接冶具は中空部材に一部を当接させて保持する部材である。冷却時に中空部材に当接させることで歪みの発生を抑制する。当接冶具は中空部材の形状、素材、焼き入れ条件などから予想される歪みを抑制できる部位に当接するように配設される。例えば、ビーム状などの長尺部材では中央付近に対して当接冶具を当接させることが望ましい。当接冶具を設ける数は特に限定しない。歪みの発生の抑制が充分可能な数の当接冶具を設けることが望ましい。当接冶具の当接部の形状は中空部材の外形に対応する形状にする。
【0023】
冷却手段は、加熱した中空部材の両端部のそれぞれに内部拘束冶具を挿入し且つ中空部材の所定位置に当接冶具を当接した状態で、中空部材に流体を接触させることで冷却を行う手段である。冷却を行う流体は特に限定されず、液体、気体などが採用できる。具体的には一般的な焼き入れ用の冷却液などが使用できる。
【0024】
冷却手段が冷却用の流体に中空部材を接触させる方法は特に限定しない。例えば、冷却用の流体を中空部材に噴射する方法や、流体中に中空部材を浸漬する方法などが挙げられる。特に、中空部材に対する冷却をきめ細かく制御できるので、中空部材の外面に冷却用の流体を噴射する手段を採用することが好ましい。中空部材に行う焼き入れに応じて流体を噴射する部位を制御する。例えば、中空部材を均一に冷却(焼き入れ)する場合には中空部材の外面全体に均一に流体が噴射できるように冷却液噴射ノズルを配置するとともに、冷却液の噴射条件を設定する。
【0025】
冷却手段として冷却液噴射ノズルを採用する場合、前述した外部拘束冶具の当接部を中空部材の両端部に当接したときに鍔状に広がる形状とし且つ両端部に当接した一組の外部拘束冶具の間に冷却液噴射ノズルを配設することで、中空部材の両端部からの冷却液の流入を外部拘束冶具により抑制することができる。例えば、内部拘束冶具による閉塞性が充分でない場合でも、外部冶具により冷却液の流入を効果的に抑制できる。
【0026】
中空部材への加熱方法は特に限定しない。中空部材を加熱炉内に入れて加熱したり、中空部材を高周波加熱装置などの加熱手段にて直接加熱したりできる。中空部材を加熱する温度である所定温度は中空部材を構成する素材の種類や、焼き入れの目的などにより適正値が選択される。また、必要な焼き入れを達成するために、中空部材は全体が加熱される場合のほか局部的に加熱される場合もある。
【0027】
(作用効果)
本発明の中空部材の焼き入れ装置は以上の構成を有することから以下の作用効果を発揮する。中空部材は所定温度まで加熱される。所定温度にまで加熱された中空部材に対し、両端部の開口を閉塞し且つ所定形状に拘束する。両端部の閉塞は端部保持冶具(内部拘束冶具及び/又は外部拘束冶具)により達成できる。所定形状での拘束は端部拘束冶具及び当接冶具の組み合わせにより達成できる。つまり、端部拘束冶具にて中空部材の両端部を拘束し且つ当接冶具を所定位置に当接させることで行う。所定形状は、中空部材を焼き入れ後の変形を見越して矯正することができる形状である。このように、加熱された中空部材に対し、両端部の開口を閉塞し且つ所定形状に拘束した状態で、冷却用の流体を接触させることで冷却手段は中空部材を冷却する。
【0028】
端部拘束冶具により両端部は閉塞されているので、冷却用の流体は中空部材の内部に流入して冷却むら(焼き入れむら)が発生することを防止できる。また、端部拘束冶具及び当接冶具の組み合わせにより所定形状に拘束しているので、焼き入れの進行に伴い発生する変形力に対抗することが可能になり変形を抑制できる。
【実施例】
【0029】
断面楕円形の環状部材から成形された中空部材に焼き入れを行う焼き入れ装置について説明を行う。本実施例の中空部材の焼き入れ装置が対象とする中空部材は、図1(a)に示すように、両端部の断面が楕円であり、、端面より所定の長さの部位から中央に向けて徐々に断面形状が変化していき、中央部付近では楕円がほぼ完全に潰されて断面が「く」の字形状になっている。
【0030】
本実施例の焼き入れ装置は、図1(b)に示すように、1組の外部拘束冶具2及び1組の内部拘束冶具3から構成される端部拘束冶具と中空部材1の中央部に当接する1組の当接冶具4及び5と冷却手段としての冷却液噴射ノズル(図略)と加熱炉(図略)と搬送手段(図略)とを有する。
【0031】
外部拘束冶具2は、図2(a)に示すように、上側拘束冶具21及び下側拘束冶具22の上下2分割されており、組み合わせることで直方形の板状部材になる部材である。本実施例では中空部材1の両端部の外形が同一なのでそれぞれ両端部に対応する外部拘束冶具2も同一のものを用いる。上下2分割された外部拘束冶具2は上下方向から中空部材1を挟持することで外部から拘束できる。外部拘束冶具2は組合わさることで中空部材1の両端部の外周の形状と概ね同形状の当接部を形成する。両端部と当接部との間には一定のクリアランスが設けられている。外部拘束冶具2は中空部材1に噴射された冷却液を遮蔽する作用も併せ持つ。
【0032】
内部拘束冶具3は、図2(a)に示すように、両端部の断面方向に4分割されている。図2(a)に示すように、4分割された内部拘束冶具3は組み合わされると、中空部材1の両端部の内周の形状に対して概ね対応する形状で且つ一回り小さくしている。内部拘束冶具3は両端部内に挿入した後、図2(a)に示すようにその間隔を拡げて両端部の内周面に密着するようになっている。4分割された内部拘束冶具3の間隔を拡げる機構としては、図3に示すように、4分割された内部拘束冶具3が合わさる部分がなす隙間にテーパ状部分をもつ部材であるウェッジ31を挿入することで連続的に間隔を拡げることができる。ウェッジ31が軸方向に移動することで、内部拘束冶具3に対して相対的に移動し隙間が拡大する。4分割された内部拘束冶具3の間に生じる隙間から内部に冷却液が入る量はほとんど問題にならない。
【0033】
中空部材1の中央部は中空ではあるが、両端部からの距離が長いので、内部に治具を挿入して固定することは物理的に困難である。従って、中央部の外側から当接冶具にて固定する。中空部材の外側から過度の応力が加わらないように、中央部を当接冶具4及び5にて挟持する(図2(b))。中央部の断面形状が円形であれぱ固定する位置はどこでも構わないが、本実施例に用いる中空部材1は断面に凸状部分を有するので、その凸状部分を起点に変形(反り)が発生しやすくなる。従って、その凸状部分に当接冶具4及び5を当接させる。
【0034】
冷却液噴射ノズルは中空部材1の長手方向及び周方向にそれぞれ均等に配設されている。また、冷却液噴射ノズルは両端部の外部拘束冶具2の間に配設されている。冷却液噴射ノズルからは冷却液が霧状に噴出されることで中空部材1を均等に冷却できる。両端部の外部拘束冶具2の間に配設されることで、噴出する冷却液は外部拘束冶具2に遮蔽されて中空部材1の端面に到達しない。
【0035】
加熱炉は中空部材1全体が加熱できる大きさをもつ。搬送手段は加熱炉内の中空部材1を取り出し、内部拘束冶具3などを配設した場所まで搬送する手段である。
【0036】
本実施例の中空部材の焼き入れ装置は、以下のような作用効果を発揮する。すなわち、所定温度にまで加熱された中空部材1を加熱炉から取り出し搬送して、端部拘束冶具2及び3及び当接冶具4及び5にて所定形状に拘束する。まず、中空部材1の両端部から分割された内部拘束冶具3を挿入する。分割された内部拘束冶具3の各部は互いに密着した状態とする。
【0037】
そして、分割された内部拘束冶具3の各部の隙間を拡げて内部拘束冶具3を両端部の内周面に密着させる。その後、外部拘束冶具2により両端部を挟持することで両端部の壁を内部拘束冶具3及び外部拘束冶具2にて挟持する。そして、冷却液噴射ノズルから冷却液を噴射することで中空部材1を冷却する。
【0038】
端部拘束冶具2及び3により中空部材1の両端部は閉塞されているので、冷却液は中空部材の内部に流入して焼き入れむらが発生することを防止できる。更に、当接冶具にて中空部材1を所定形状に拘束しているので、焼き入れの進行に伴い発生する変形力に対抗することが可能になり変形を抑制できる。
【0039】
(試験)
・操作
焼き入れ後の中空部材1の形状と物性とを評価した。図1(a)に示す中空部材1として、TS490MPaクラス級の部材を用いた。具体的には、板厚2.6mmの部材及び2.9mmの部材で、長さ1.2mの鋼材からなる部材で、両端部の断面が短径70mm×長径100mmの楕円とし、長手方向の中央部近傍は断面形状が両端部をなす楕円の短軸方向に突出する「く」の字形状となっている。くの字形状部分の両翼の長さはそれぞれ70mmである。
【0040】
この中空部材1を加熱炉に挿入して950℃で6分保持した。そして、加熱炉より取り出し、両端部を内部拘束冶具3(両端部から20mm挿入)及び外部拘束冶具2(両端部から10mmの部位にて挟持)にて拘束し、当接冶具4及び5を中央部に当接させる。その後、冷却液噴射ノズルから冷却液を噴射させ、中空部材1の温度を50℃にまで急冷して焼き入れを行う。冷却液噴射ノズルは、中空部材1の長手方向に12ヶ所の組を、外周方向に3組均等に設けており、冷却液を合計500Nm3/分の速度で1分間噴射させた。焼き入れ後の中空部材を実施例1の試験部材とした。
【0041】
また、比較例1として、加熱後の中空部材1をそのまま、冷却液中に浸漬して焼き入れを行った。比較例2として、金型の内側が中空部材1の形状に一致した先端位置を持つ複数の凸部と金型の外部あるいは隣接する凹部と連通した凹部とにより構成され、上型、下型の少なくとも一方の前記凹部の1箇所以上には焼入れ液噴出口を有する拘束焼き入れ装置内に加熱後の中空部材1を挿入した状態で焼き入れを行った。それぞれ比較例1及び2の試験部材とした。
【0042】
・結果
表1に焼き入れ後の形状(反り量)と物性(ビッカース硬度)を示す。反り量とは長手方向両端部を結ぶ線と中央部の頂部の高さの差を測定したもので、土2mm以下を合格とする。ビッカース硬度は中空部材1を長手方向中央部で切断し、その断面で表層より0.2mmの部位にてビッカース硬度計を用いて硬度を測定した。400Hv以上を合格として評価を行った。
【0043】
【表1】


【0044】
表1に示すように実施例1の試験部材は形状と物性ともに良好な結果を示した。比較例1の試験部材は物性は良好であったが、形状が適正範囲を超えるものであった。。また、比較例2の試験部材は形状は良好であったものの、物性のばらつきが大きかった。
【0045】
つまり、比較例1では充分な冷却速度が達成できるので物性には優れるものの焼き入れに伴う変形が発生した。比較例2では変形は抑制できたものの充分な冷却速度を達成できない場合もあって充分な焼き入れが達成できない場合があった。それに対して、実施例1では充分な冷却速度を実現できるとともに、焼き入れに伴う変形も効果的に抑制できた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例で用いた中空部材の形状(a)及び実施例で用いた焼き入れ装置(b)の概略図である。
【図2】図1(b)におけるa-a断面図(a)及びb-b断面図(b)である。
【図3】図1(b)における分割された内部拘束冶具の間隔を拡げる機構を示した概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1…中空部材
2…外部拘束冶具
3…内部拘束冶具 31…ウェッジ
4、5…当接冶具
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【出願日】 平成16年11月12日(2004.11.12)
【代理人】 【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏

【公開番号】 特開2006−137997(P2006−137997A)
【公開日】 平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願番号】 特願2004−329213(P2004−329213)