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【発明の名称】 優れた機械的および腐食特性の低炭素鋼
【発明者】 【氏名】ギャレス トーマス
【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い強度で、耐腐食性で、強靭な合金炭素鋼を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
(a)鉄および少なくとも1つの合金化元素からなる合金組成物を形成する工程であって、該少なくとも1つの合金化元素は、該合金組成物に少なくとも約350℃のマルテンサイト開始温度Mを有するマルテンサイト転移範囲を提供するように選択された割合で炭素を含み。該割合は、さらに、カーバイドを形成することなく該マルテンサイト転移領域を通して該合金組成物の空気冷却を可能にするように選択される、工程;
(b)該合金組成物が、溶体の全ての合金化元素を含む均一なオーステナイト相該合金組成物を呈する条件下で、そのオーステナイト化を引き起こすのに十分に高い温度に該合金組成物を加熱する工程;および
(c)該均一なオーステナイト相を、該マルテンサイト転移領域を通して、自己焼きもどしの発生を回避するに十分な速度の冷却速度で冷却して、保持されたオーステナイトの膜と交互し、そして実質的にカーバイドを含まないマルテンサイトのラスを含むミクロ構造を達成する工程、
を包含する、プロセス。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
(1.発明の分野)
本発明は、鋼合金、特に、高い強度、靱性、耐腐食性、冷変形性の鋼合金に属し、そしてまた鋼に特定の物理的特性および化学的特性を提供するミクロ構造を形成するための、鋼合金の処理の技術に属する。
【背景技術】
【0002】
(2.先行技術の説明)
高い強度および靭性および冷変形性の鋼合金(これらのミクロ構造は、マルテンサイト相およびオーステナイト相の複合である)は、以下の米国特許(全て、Regents of the University of Calforniaに譲渡された)(これらの各々は、その全体が、本明細書中で参考として援用される)に開示される:
4,170,497(Gareth ThomasおよびBangaru V.N.Rao)(1977年8月24日に出願された出願であり、1979年10月9日発行)
4,170,499(Gareth ThomasおよびBangaru V.N.Rao)(1977年8月24日に出願された上記出願の一部継続出願として1978年9月24日に出願された出願であり、1979年10月9日発行)
4,619,714(Gareth Thomas,Jae−Hwan Ahn,およびNack−Joon Kim)(1984年8月6日に出願された出願の一部継続出願として1984年11月29日に出願された出願であり、1986年10月28日発行)
4,671,827(Gareth Thomas,Nack J.Kim,およびRamamoorthy Ramesh)(1985年10月11日に出願された出願であり、1987年6月9日発行)。
【0003】
ミクロ構造は、特定の鋼合金の特性を確立する際に重要な役割を示し、そして従って、その合金の強度および靭性は、合金化(alloying)元素の選択および量のみならず、存在する結晶層およびそれらの配置に依存する。特定の環境における使用を意図された合金は、より高い強度および靭性、ならびに、一般に、しばしば相容れない特性の組合せを必要とされる。なぜなら、1つの特性に寄与する特定の合金化元素は、別の特性を損ない得るからである。
【0004】
上記の特許に開示される合金は、炭素鋼合金であり、この合金は、オーステナイトの薄膜と交互に重なり、そして自己焼もどしによって生成されたカーバイドの微細な粒子を用いて分散されたマルテンサイトのラス(lath)からなる。一方の相のラスが、他方のラスの薄膜によって分離される配置は、「乱れたラス」構造といわれ、そして最初に、合金をオーステナイト範囲に加熱し、次いで、所望の形状の製品を達成し、そして交互するラスと薄膜の配置を改善するためのローリングをともなって、その合金を相転移温度より低く、オーステナイトがマルテンサイトに転移する範囲に冷却することによって形成される。このミクロ構造は、好ましくは、対になったマルテンサイト構造の交互である。なぜなら、ラス構造は、より強い靭性を有するからである。これらの特許はまた、ラス領域の過剰な炭素が冷却プロセスの間に沈澱して、「自己焼きもどし(autotempering」として知られる現象によって、セメンタイト(炭化鉄、FeC)を形成する。これらの自己焼きもどししたカーバイドは、鋼の靭性に寄与すると考えられる。
【0005】
乱れたラス構造は、高強度鋼を作り出し、この鋼は、強靭および延性(亀裂伝播に対する耐久性および鋼からの工学成分の成功した製造のために必要とされる性能)の両方である。対になった構造よりもむしろ乱れたラス構造を達成するためにマルテンサイト相を制御することは、強度および靭性の必要なレベルを達成する最も有効な手段の1つであるが、保持されるオーステナイトの薄膜は、延性および変形性の品質に寄与する。あまり所望されない対になった構造よりむしろこの乱れたラスミクロ構造を達成することは、合金組成の注意深い選択を必要とする。なぜなら、合金組成は、マルテンサイト開始温度(通常、Mといわれる)に影響し、この温度は、マルテンサイト相が、最初に形成し始める温度である。このマルテンサイト転移温度は、対になった構造または乱れたラス構造が、相転移の間に形成されるか否かを決定する因子に1つである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの適用において、腐食に抵抗する能力は、鋼成分の成功のために非常に重要である。このことは、特に、コンクリートの多孔性の観点から鋼補強コンクリートにおいて、そして一般に湿気のある環境において使用される鋼において真実である。腐食に関する絶えず付きまとう関係の観点から、改良された耐腐食性を有する鋼合金を開発するための絶え間ない努力が存在する。腐食にもまた耐久性である高い強度および靭性の鋼の製造に関するこれらおよび他の問題は、本発明によって明示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
ここで、乱れたラス構造における腐食は、構造物(自己焼きもどしによって生成されるものを含み、そして異なる形態(組成、冷却速度、および合金化プロセスの他のパラメーターに依存する)のカーバイド、ニトリドまたはカルボニトリドを含むベイナイトおよびパーライトのような変態生成物もまた含む)からのカーバイド、ニトリド、およびカルボニトリドのような沈澱の存在を排除することによって減少され得ることが発見されている。これらの沈澱の小さな結晶と沈澱が分散されるマルテンサイト相との間の界面は、ガルヴァーニ電池として作用することによって腐食を促進し、そして鋼のピッチングが、これらの界面において始まることが発見されている。従って、本発明は、部分的に、カーバイド、ニトリドまたはカルボニトリドを含まない乱れたラスミクロ構造を有する鋼合金に属し、そしてこのミクロ構造の鋼合金を形成するための方法に属する。本発明はまた、このタイプのミクロ構造が、合金化元素の選択および量を制限することによって達成され得、その結果、マルテンサイト開始温度Mが、350℃であるか、それよりも高いという、発見に属する。なおさらに、本発明は、乱れたラス構造に置けるカーバイド、ニトリドまたはカルボニトリド沈澱の自己焼きもどしおよび他の手段が、急速な冷却速度によって回避され得るが、特定の合金組成が、一般に、単に空気冷却による自己焼きもどしされた生成物および沈澱のない、乱れたラス構造を作り出す。本発明のこれらおよび他の目的、特徴および利点は、以下の説明によってより良く理解される。
【0008】
本発明によれば、以下が提供される。
(1)高い強度で、耐腐食性で、強靭な合金炭素鋼を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
(a)鉄および少なくとも1つの合金化元素からなる合金組成物を形成する工程であって、該少なくとも1つの合金化元素は、該合金組成物に少なくとも約350℃のマルテンサイト開始温度Mを有するマルテンサイト転移範囲を提供するように選択された割合で炭素を含み。該割合は、さらに、カーバイドを形成することなく該マルテンサイト転移領域を通して該合金組成物の空気冷却を可能にするように選択される、工程;
(b)該合金組成物が、溶体の全ての合金化元素を含む均一なオーステナイト相該合金組成物を呈する条件下で、そのオーステナイト化を引き起こすのに十分に高い温度に該合金組成物を加熱する工程;および
(c)該均一なオーステナイト相を、該マルテンサイト転移領域を通して、自己焼きもどしの発生を回避するに十分な速度の冷却速度で冷却して、保持されたオーステナイトの膜と交互し、そして実質的にカーバイドを含まないマルテンサイトのラスを含むミクロ構造を達成する工程、
を包含する、プロセス。
(2)項目(1)に記載のプロセスであって、上記炭素が、上記合金組成物の約0.01重量%〜約0.35重量%を構成する、プロセス。
(3)項目(1)に記載のプロセスであって、上記炭素が、上記合金組成物の約0.05重量%〜約0.20重量%を構成する、プロセス。
(4)項目(1)に記載のプロセスであって、上記炭素が、上記合金組成物の約0.02重量%〜約0.15重量%を構成する、プロセス。
(5)項目(1)に記載のプロセスであって、上記少なくとも1つの合金化元素が、さらに、上記炭素鋼に耐腐食性を付与するのに十分な量でクロムを含む、プロセス。
(6)項目(5)に記載のプロセスであって、上記クロムが、上記合金組成物の約1重量%〜約13重量%を構成する、プロセス。
(7)項目(5)に記載のプロセスであって、上記クロムが、上記合金組成物の約6重量%〜約12重量%を構成する、プロセス。
(8)項目(5)に記載のプロセスであって、上記クロムが、上記合金組成物の約8重量%〜約10重量%を構成する、プロセス。
(9)項目(1)に記載のプロセスであって、上記少なくとも1つの合金化元素が、さらに、上記炭素鋼に耐腐食性を付与するのに十分な量でケイ素を含む、プロセス。
(10)項目(9)に記載のプロセスであって、上記ケイ素が、上記合金組成物の最大約2.0重量%を構成する、プロセス。
(11)項目(9)に記載のプロセスであって、上記ケイ素が、上記合金組成物の約0.5重量%〜約2.0重量%を構成する、プロセス。
(12)項目(1)に記載のプロセスであって、上記少なくとも1つの合金化元素がさらに窒素を含み、そして上記工程(c)の冷却速度が、保持されたオーステナイトの膜と交互し、そして実質的にカーバイド、ニトリド、またはカルボニトリドを含まないマルテンサイトのラスを含むミクロ構造を達成するに十分に速い、プロセス。
(13)項目(1)に記載のプロセスであって、工程(b)が、約900℃〜約1150℃の範囲の温度で実施される、プロセス。
(14)項目(1)に記載のプロセスであって、工程(b)が、最大約1150℃の温度で実施される、プロセス。
(15)項目(1)に記載のプロセスであって、上記保持されたオーステナイトの膜が、工程(c)の上記ミクロ構造の約0.5%〜約15%を構成する、プロセス。
(16)項目(1)に記載のプロセスであって、上記保持されたオーステナイトの膜が、工程(c)の上記ミクロ構造の約3%〜約10%を構成する、プロセス。
(17)項目(1)に記載のプロセスであって、上記保持されたオーステナイトの膜が、工程(c)の上記ミクロ構造の最大約5%を構成する、プロセス。
(18)項目(1)に記載のプロセスであって、上記炭素が、上記合金組成物の約0.05重量%〜約0.1重量%を構成し、そして上記少なくとも1つの合金化元素が、さらに、(i)少なくとも約2重量%の濃度で、ケイ素およびクロムからなる群から選択されるメンバー、および(ii)少なくとも約0.5重量%の濃度でマンガンを含み、そして工程(c)が、水中での急冷によって実施される、プロセス。
(19)項目(1)に記載のプロセスであって、上記炭素が、上記合金組成物の約0.05重量%〜約0.1重量%を構成し、そして上記少なくとも1つの合金化元素が、さらに、(i)約2重量%の濃度で、ケイ素およびクロムからなる群から選択されるメンバー、および(ii)約0.5重量%の濃度でマンガンを含み、そして工程(c)が、水中での急冷によって実施される、プロセス。
(20)項目(1)に記載のプロセスであって、上記炭素が、上記合金組成物の約0.03重量%〜約0.05重量%を構成し、そして上記少なくとも1つの合金化元素が、さらに、(i)約8重量%〜約12重量%の濃度で、クロム、および(ii)約0.2重量%〜約0.5重量%の濃度でマンガンを含み、そして工程(c)が、空気冷却によって実施される、プロセス。
(21)項目(1)のプロセスによって製造された生成物。
(22)項目(1)のプロセスによって製造され、そして約0.05重量%〜約0.2重量%の炭素および約6重量%〜約12重量%のクロムを含む、生成物。
(23)項目(1)のプロセスによって製造され、そして約0.05重量%〜約0.2重量%の炭素および約2重量%までのケイ素を含む、生成物。
(24)項目(1)のプロセスによって製造された生成物であって、工程(b)が約1150℃の最大温度で実施され、そして上記保持されたオーステナイト膜が、工程(c)の上記ミクロ構造の最大約5%を構成する、生成物。
(25)項目(18)のプロセスによって製造された生成物。
(26)項目(19)のプロセスによって製造された生成物。
(27)項目(20)のプロセスによって製造された生成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(特定の実施形態の説明)
合金化元素での過飽和に起因する応力下にある相が、得られた化合物が相を通して分散された分離領域に属すが、相の残りが飽和条件に戻るような様式で、過剰量の合金化元素を合金組成物の別の元素を含む化合物として沈澱させることによってその応力を解放する場合に、合金組成物の自己焼きもどしは起こる。従って、自己焼きもどしは、過剰の炭素を炭化鉄(FeC)として沈澱させる。クロムが、さらなる合金化元素として存在する場合、過剰炭素のいくつかはまた、トリクロミウムジカーバイド(Cr)として沈澱し得、そして類似のカーバイド他の合金化元素とともに沈澱し得る。自己焼きもどしはまた、過剰の窒素を、ニトリドまたはカルボニトリドのいずれかとして沈澱させる。これらの沈澱のすべては、本明細書中で、「焼きもどし(または焼きもどしされた)生成物」と集合的にいわれ、そして、それは、合金の腐食に対する感受性を低下させるその目的を達成する手段として、本発明によって達成される、沈澱を含むこれらの生成物および他の変態生成物の回避である。
【0010】
一般に、自己焼きもどしされた生成物ならびにカーバイド、およびニトリドおよびカルボニトリドの形成の回避は、合金組成物およびマルテンサイト領域を通る冷却速度の適切な選択によって、本発明に従って達成される。オーステナイト相から合金を冷却する際に起こる相転移は、冷却の任意の特定の段階における、冷却速度によって支配され、そして転移は、縦軸として温度を、そして横軸として時間を用いる相変態速度論的ダイヤグラムによって、一般に表され、ダイヤグラムの異なる領域において異なる相を示し、1つの相から別の相への転移が起こる条件を表す領域間の線を示す。相図の境界線の位置、従って、境界線によって規定される領域は、合金組成とともに変化する。
【0011】
このような相図の例は、図1に示される。マルテンサイト転移範囲は、水平線11(これは、マルテンサイト開始温度Mを表す)より下の領域によって表され、そしてこの線より上の領域12は、オーステナイト相が主要である領域である。M線より上の領域12内のC形の曲線13は、オーステナイト領域を2つの小領域に分割する。「C」の左側の小領域14は、合金が、全く、オーステナイト相のままである領域であり、一方で、「C」の右側の小領域15は、自己焼きもどし生成物および他の変態生成物(種々の形態のカーバイト、ニトリド、カルボニトリドを含む)(例えば、ベイナイトおよびパーライト)がオーステナイト相内に形成する領域である。M線の位置ならびに「C」曲線の位置および曲率は、合金化元素の選択およびそれぞれの量とともに変化する。
【0012】
自己焼きもどし生成物の形成の回避は、従って、自己焼きもどしされた生成物小領域15(「C」の曲線の内部)を交差または横切ることを回避する冷却形式を選択することによって達成される。例えば、一定の冷却速度が使用される場合、冷却形式は、時間0でオーステナイト領域14に進入し、そして一定(負)の傾きを有する。自己焼きもどしされた生成物小領域15を回避する冷却速度の上限は、「C」曲線に対する接線である図中の線16によって表される。一般に、自己焼きもどし生成物またはカーバイドの形成を回避するために、極限線16の左側の線(すなわち、同じ時間0点で始まるが、しかしより急な勾配を有する線)によって表される冷却速度が使用されなくてはならない。
【0013】
従って、合金組成に依存して、この要求に適合する十分に大きな冷却速度は、水冷却を必要とするものであり得るか、または空気冷却で達成され得るものであり得る。一般に、空気冷却可能なであり、そしてなお十分に高い冷却速度を有する合金組成物中の特定の合金化元素のレベルが低い場合、空気冷却を使用する能力を保持するための、他の合金化元素のレベルを上げることが必要である。例えば、合金化元素(例えば、炭素、クロム、またはケイ素)の1以上の低下は、マンガンのような元素のレベルを上昇させることによって補償され得る。
【0014】
例えば、(i)約0.05重量%〜約0.1重量%の炭素、(ii)少なくとも約2重量%の濃度のケイ素またはクロム、および(iii)少なくとも約0.5重量%の濃度のマンガン(残りは鉄である)を含む合金組成物は、好ましくは、水急冷によって冷却される。これらの合金組成物の特定の例は、(A)合金化元素が、2重量%ケイ素、0.5重量%マンガンおよび0.1重量%炭素である合金、ならびに(B)合金化元素が、2重量%クロム、0.5重量%マンガンおよび0.05重量%炭素(残りは鉄である)である合金である。空気冷却によって冷却され得るが、自己焼きもどし生成物の形成をなおも回避する合金組成物の例は、合金化組成物として約0.03重量%〜0.05重量%の炭素、約8重量%〜約12重量%のクロム、および約0.2重量%〜約0.5重量%のマンガン(残りは鉄である)を含むものである。これらの合金組成物の特定の例は、(A)0.05%炭素、8%クロム、および0.5%マンガンを含むものであり、そして(B)0.03%炭素、12%クロム、および0.2%マンガンを含むものである。これらは単に例であることが強調される。他の合金化組成物は、鋼合金の当業者および鋼相変態速度論的ダイヤグラムに精通した者に明らかである。
【0015】
上記のように、相転移の間の対形成の回避は、約350℃か、またはそれより高い温度のマルテンサイト開始温度Mを有する合金組成物を使用して達成される。この結果を達成する好ましい手段は、約0.01重量%〜約0.35重量%、より好ましくは約0.05%〜約0.20重量%、または約0.02%〜約0.15%の濃度で合金元素としての炭素を含む合金組成物を使用することによってである。また含まれ得る他の合金化元素は、クロム、ケイ素、マンガン、ニッケル、モリブデン、コバルト、アルミニウム、および窒素であり、各々単独かまたはそれらの組合せである。クロムは、鋼に耐腐食性を付与するさらなる手段としてのその不動態化能力について特に好ましい。クロムが含まれる場合、その含量は変化し得るが、ほとんどの場合において、クロムは約1重量%〜約13重量%の範囲の量を構成する。クロム含量の好ましい範囲は、約6重量%〜約12重量%であり、より好ましい範囲は、約8重量%〜約10重量%である。ケイ素が存在する場合、その濃度は、同様に変化し得る。ケイ素は、好ましくは、最大約2重量%の濃度で存在し、最も好ましくは、約0.5重量%〜約2.0重量%である。
【0016】
既存のバーミルおよびロッドミルの実施を含む、上に参照された4つのThomasらの米国特許に記載される処理手順および条件は、合金組成物のオーステナイト相への加熱、合金のオーステナイト相からマルテンサイト転移領域を介する冷却、および1つ以上の段階のプロセスでの合金の圧延のために、本発明の実施において使用され得る。これらの手順に従って、合金組成物のオーステナイト相への加熱は、好ましくは、約1150℃までの温度で、またはより好ましくは約900℃〜約1150℃の範囲内で実施される。次いで、その合金は、オーステナイト相の結晶構造に従って、元素の実質的に完全な配向を達成するのに十分な時間の間、このオーステナイト化温度に維持される。圧延は、結晶粒子を変形させそして歪みエネルギーを粒子に貯蔵させ、そして保持されたオーステナイトの薄膜によって分離されたマルテンサイトラスの乱れたラス配置にマルテンサイト相を新たに形成させることを導く、オーステナイト化および冷却手順の間の1以上の段階での制御様式で実施される。オーステナイト化温度での圧延は、均一なオーステナイト結晶相を形成するために、合金化元素の拡散を補助する。これは、一般に、10%または10%を超える変形への圧延、および好ましくは約30%〜約60%の範囲の変形の圧延によって達成される。
【0017】
次いで、部分的な冷却、続くさらなる圧延を実施し得、粒子および結晶構造を乱れたラス配置に導き、次いで、上記のように、自己焼きもどしまたは変態生成物が形成される領域を回避する冷却速度を達成する様式で最終冷却する。マルテンサイトおよびオーステナイト膜の乱れたラスの厚さは、合金組成および処理条件とともに変化し、そして本発明に重要でない。しかし、ほとんどの場合において、保持されたオーステナイト膜は、ミクロ構造の約0.5容量%〜約15容量%、好ましくは約3容量%〜約10容量%、および最も好ましくは最大約5容量%を構成する。図2は、マルテンサイト相結晶の粒子からなる実質的に平行なラス21を有する、合金の乱れたラス構造の図であり、ラスは、保持されたオーステナイト相の薄膜22によって分離されている。この構造において、一般に、カーバイドおよび沈澱(ニトリドおよびカルボニトリドを含む)が存在しないことは、注目すべきであり、これらは、乱れたマルテンサイトラスを通して示されそして分散される2つの相よりもかなり小さなサイズスケールの針状構造として、先行技術の構造において現れる。これらの沈澱が存在しないことは、合金の耐腐食性に有意に寄与する。所望のミクロ構造はまた、このような鋼をキャスティングすることによって、そして上記のように図2に示されるミクロ構造を達成するに十分に速い速度で冷却することによって得られる。
【0018】
図3は、本発明の範囲内の4つの合金のミクロ構造に対する応力対歪みのプロットであり、これらの4つ全ては、乱れたラス配置であり、自己焼きもどし生成物がない。各合金は、種々の量のクロムとともに、0.05%の炭素を有し、ここで、四角は2%のクロム、三角は4%のクロム、丸は6%のクロム、滑らかな線は8%のクロムである。各応力−歪み曲線の下の面積は、鋼の靭性の尺度であり、そしてクロム含量の各々の増加は面積を増加させ、従って、靭性を増加させ、そしてなお全ての4つのクロムレベルは、下部に実質的な領域を有する曲線を示し、従って、高い靭性を示す。
【0019】
本発明の鋼合金は、高い引張り強さを必要とし、そして冷形成操作(cold forming operation)を含むプロセスによって製造される製品において特に有用である。なぜなら、合金のミクロ構造は、それ自身を、冷形成に特に十分に役立たせるからである。このような製品の例は、自動車のためのシートメタル、および例えば、放射状に補強された自動車タイヤのためのワイヤおよびロッドである。
【0020】
上の記載は、例示の目的のために主として提供される。本発明の基本的かつ新規な概念をなおも具体化する、合金組成物の種々のパラメータおよび処理手順および条件の改変および変化が、なされ得る。これらは、当業者に容易に着想され、そして本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の合金処理手順および条件を説明する相変態速度論的ダイヤグラムである。
【図2】図2は、本発明の合金組成物のミクロ構造を示す図である。
【図3】図3は、本発明に従う4つの合金についての応力対歪みのプロットである。
【出願人】 【識別番号】502014743
【氏名又は名称】エムエムエフエックス スティル コーポレイション オブ アメリカ
【出願日】 平成17年7月26日(2005.7.26)
【代理人】 【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策

【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明

【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹

【公開番号】 特開2006−9155(P2006−9155A)
【公開日】 平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願番号】 特願2005−216547(P2005−216547)