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【発明の名称】 焼結部品の熱処理治具及びそれを用いたリング状焼結部品の熱処理方法
【発明者】 【氏名】岡 久人
【住所又は居所】岡山県川上郡成羽町大字成羽2901番地 住友電工焼結合金株式会社内
【課題】リング状をなすインターナルギヤなどの焼結部品を、効率よく、かつ、歪を小さく抑えて熱処理するための熱処理治具を提供する。

【解決手段】リング状の焼結部品Aの穴に通し、その焼結部品の中心を通る垂線に対して線対称位置で部品の穴内周面を支える2本の平行配置の支持棒2、3を有し、この2本の支持棒を、吊り下げる焼結部品の中心でθ=85°〜95°の交差角をもって交わる線上に配置し、複数個並べて熱処理できる熱処理治具を構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状に形成された焼結部品の穴に通してこの部品を熱処理するときに吊り下げる平行配置の、前記焼結部品の中心を通る垂線に対して線対称位置で部品の穴内周面を支える2本の支持棒を有し、この2本の支持棒を、吊り下げた部品の中心でθ=120°以下の交差角をもって交わる線上に配置した焼結部品の熱処理治具。
【請求項2】
前記2本の支持棒を、吊り下げた部品の中心でθ=85°〜95°の交差角をもって交わる線上に配置した請求項1に記載の焼結部品の熱処理治具。
【請求項3】
前記2本の支持棒を、複数本の継ぎ棒で連結した請求項1または2に記載の焼結部品の熱処理治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の熱処理治具で部品を吊り下げて熱処理を行うことを特徴とするリング状焼結部品の熱処理方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、インターナルギヤなどのリング状焼結部品に焼き入れなどの熱処理を施すときにその部品を吊り下げて保持する焼結部品の熱処理治具とその熱処理治具を使用して行うリング状焼結部品の熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、量産されるギヤなどの機械部品を焼き入れする場合、その部品を耐火板(敷板)などに載せて加熱する方法が一般的に採られているが、この方法は、効率的な熱処理が望み難い。
【0003】
また、機械部品を多段に積み重ねて熱処理することもなされているが、この方法は、部品の均一加熱が望み難い。また、均一加熱のために下記特許文献1が開示しているような焼結用治具を用いて部品の局部支持を行うと、部品の大部分が宙に浮き、部品の各部に熱が通り易くなるが、この方法では部品が歪みやすくなる。
【特許文献1】特開2003−73728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、リング状焼結部品を吊り下げて効率よく熱処理することができ、また、その部品の熱処理による歪も小さく抑えることができる熱処理治具と熱処理方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、この発明においては、リング状に形成された焼結部品の穴に通してこの部品を熱処理するときに吊り下げる平行配置の、前記焼結部品の中心を通る垂線に対して線対称位置で部品の穴内周面を支える2本の支持棒を有し、この2本の支持棒を、吊り下げた部品の中心でθ=120°以下の交差角をもって交わる線上に配置した焼結部品の熱処理治具を提供する。
【0006】
この熱処理治具は、前記2本の支持棒を、吊り下げた部品の中心でθ=85°〜95°の交差角をもって交わる線上に配置したものや、2本の支持棒を、複数本の継ぎ棒で連結したものが特に好ましい。
【発明の効果】
【0007】
この発明の熱処理治具を使用すると、軸心が水平になる姿勢にした焼結部品を、2本の支持棒によって2点支持がなされるように吊り下げて複数個並べ、効率よく熱処理することができる。
【0008】
また、部品が2点で支持されて吊り下げられるので加熱もスムーズにムラなく行われ、不均一加熱による部品の歪が小さく抑えられる。
【0009】
さらに、この発明の熱処理治具は、吊り下げた部品の中心でθ=120°以下、より好ましくはθ=85°〜95°の交差角をもって交わる線上に2本の支持棒を配置して2点支持を行う。一本の支持棒で吊り下げる場合よりも歪を小さくすることができる。さらに、2本の支持棒を前述のθが85°以上、95°以下となる線上に配置した治具に部品を吊り下げる場合には、加熱された部品の自重による歪がさらに小さく抑えられる。
【0010】
なお、2本の支持棒を複数本の継ぎ棒で連結した熱処理治具は、部品の重量による支持棒の撓みが小さくなり、部品に与える悪影響が小さくなって部品の歪がより小さくなる。2本の支持棒を継ぎ棒で連結すれば熱の通りに支障がでず、部品の均一加熱がなされる。従って、2本の支持棒の連結は継ぎ棒を介して行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面の図1〜図4に基づいて説明する。図1の熱処理治具1は、リング状をなす鉄系焼結部品A(以下単に焼結部品A、又は部品Aと言う)を焼き入れする際に使用するものであって、支持棒2、3と、各支持棒2、3の両端を支える保持具4とから成る。
【0012】
支持棒2、3は、焼結部品Aの穴に通してその部品を吊り下げた図1の状態において、焼結部品Aの中心Oで角度θ(以下中心角度と言う)をもって交差する線L1 、L2 上に配置されている。このときの中心角度θが、120°以下、より好ましくは85°〜95°となるように、また、それぞれの支持棒の高さ位置が等しくなるように2本の支持棒2、3の位置が定められている。保持具4は、支持棒2、3の両端を支持してその支持棒2、3を設定位置に保つ。
【0013】
このとき、保持具4には、支持棒2、3を支える支持面4aに支持棒2、3の中心間ピッチPを保つ突起4bを設けてもよい。支持棒2、3は突起4bにより支持棒2、3の中心間ピッチPが一定になるので、焼結部品Aを吊り下げた状態で所定の中心角度θに保つことができる。
【0014】
さらに、支持面4aを平面にしているので、図2に示すピッチ変更ブロック4cを突起4bに取り付けて支持棒2、3の中心間ピッチPを変更することができ、大きさの異なる焼結部品Aを吊り下げるときにも、容易に型替え対応して適正な中心角度θでの吊り下げを行うことができる。
【0015】
図3は、2本の支持棒2、3を、長さの一定した複数本の継ぎ棒5を介して連結したものである。継ぎ棒5は、支持棒2、3の長手方向に適当な間隔を開けて設置されている。この図3の熱処理治具11は、継ぎ棒5を設けた点が図1の熱処理治具と異なるが、その他の構成は図1の熱処理治具1と同じであるので、同一部分の説明は省略する。
【0016】
図4は、この発明の熱処理治具1(又は11)に焼結部品Aを吊り下げた状態を示している。このように、焼結部品Aは複数個を横一列に並べて吊り下げる。このときの部品の総重量が大きいと支持棒2、3が撓み、使用を繰り返すとその支持棒2、3が曲がって復元しなくなり、2点での支持がアンバランスになって歪抑制の効果が低下することが考えられる。図3の熱処理治具11は、各支持棒2、3が継ぎ棒5によって補強されているので、その問題が起こり難い。
【0017】
支持棒2、3は互いの高さ位置を等しくしてあり、部品Aは図1に示すようにその部品の中心を通る垂線に対して線対称位置で穴内周面が2本の支持棒2、3により支えられる。この発明の熱処理治具は、このときの支持点が適正に設定されているので、1本の支持棒で1点支持する場合や、中心角度θを本発明の範囲外にした2本の支持棒で2点支持する場合に比べて熱による部品Aの歪が発生し難い。
【0018】
以下に、この発明の効果の確認試験結果を記す。試験は、直径φ8mmのシャフトを2本用意し、図5に示すようにそのシャフトを支持棒2、3として平行に配置し、その2本の支持棒2、3で外径φ68.85mm、内径55.75mm、重量100gの焼結部品Aを吊り下げ、このときの支持棒を配置する線の中心角度θを表1に示すように変化させ、焼結部品Aの熱処理(焼き入れ)前後の内径変化量(a点とb点間の距離)を調べた。 焼結部品Aの10個平均での熱処理前後の内径変化量の測定結果を表1と図6に示す。なお、1本の支持棒で焼結部品Aを吊り下げたときの部品の熱処理前後の内径変化量は、0.088mmであった。
【0019】
【表1】


【0020】
この試験結果からわかるように、中心角度θを85°〜95°にした試料No.6〜10は、熱処理前後の内径変化量が極端に小さい。また、1本の支持棒で焼結部品Aを吊り下げたときの部品の熱処理前後の内径変化量は0.088mmであるので、中心角度θが120°以下なら1本吊りの場合よりも精度の良い焼結部品が得られることがわかる。
【0021】
熱処理時の歪が大きくなると製品の不良率が高まり好ましくない。中心角度θ=90°の位置に支持棒2、3を配置した熱処理治具(発明品)と、中心角度θ=60°の位置に支持棒2、3を配置した熱処理治具(比較品1)と、1本の支持棒で一点支持する熱処理治具(比較品2)を用いて熱処理の比較試験を行ったところ、比較品1使用時の部品の不良発生率は約8%、比較品2使用時の不良発生率は約10%であったのに対し、発明品使用時には、その不良発生率が約2%に低下した。
【0022】
また、図1の熱処理治具と図3の熱処理治具は、ほとんど差のない結果が得られたが、図3の熱処理治具の方が耐久性に優れ、歪抑制の効果が長期にわたって維持されることは明白である。
【0023】
この試験結果からもわかるようにこの発明の熱処理治具を使用することで焼結後に熱処理して作られる焼結部品の不良発生率を大きく低減させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)実施例の熱処理治具を使用状態にして示す断面図、(b)保持具の要部を示す斜視図
【図2】(a)熱処理治具の他の実施例を示す断面図、(b)保持具の要部を示す斜視図
【図3】(a)熱処理治具のさらに他の実施例を示す斜視図、(b)その治具の端面図
【図4】図1又は図3の熱処理治具に焼結部品を吊り下げた状態を示す側面視断面図
【図5】効果の確認試験における内径変化量測定点を示す図
【図6】試験結果における二本吊りでの中心角度と内径変化量の関係を示す図
【符号の説明】
【0025】
1、11 熱処理治具
2、3 支持棒
4 保持具
4a 支持面
4b 突起
4c ピッチ変更ブロック
5 継ぎ棒
A 焼結部品
【出願人】 【識別番号】593016411
【氏名又は名称】住友電工焼結合金株式会社
【住所又は居所】岡山県高梁市成羽町成羽2901番地
【出願日】 平成16年6月25日(2004.6.25)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二

【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博

【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久

【公開番号】 特開2006−9092(P2006−9092A)
【公開日】 平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願番号】 特願2004−187934(P2004−187934)