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【発明の名称】 |
軸の製造方法 |
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【氏名】國分 秀樹 【住所又は居所】神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 【氏名】沖田 滋 【住所又は居所】神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 |
【課題】「転がり軸受の内輪軌道面として機能する面を有する軸」の製造方法として、内輪軌道面として機能する面を所定の硬さとし、端部を「かしめ」可能な硬さにできる方法を提供する。
【解決手段】軸1の表層部に浸炭窒化処理を行った後、軸1の端部11a,11bのみを焼鈍する。次に、軸1の中央部12のみを高周波焼入れし、焼戻しを行う。これにより、端部11a,11bの硬さをビッカース硬さ(Hv)で300未満とし、中央部12の表面硬さをビッカース硬さ(Hv)で650以上とし、中央部12の表層部の残留オーステナイト量を15体積%以上40体積%以下とする。芯部の残留オーステナイト量を0にする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 転がり軸受の内輪軌道面として機能する面を有する軸の製造方法において、 所定の合金鋼からなる素材を軸の形状に加工した後、 前記面の表層部に窒素を導入して、その窒素含有率を0.05質量%以上0.4質量%以下にし、 次いで、焼入れを行わないで、軸の端部のみを焼鈍して前記面は焼鈍せず、前記端部の硬さをビッカース硬さ(Hv)で300未満とし、 次いで、前記面に対する高周波焼入れ、焼戻しを行うことにより、前記面の硬さをビッカース硬さ(Hv)で650以上とし、前記面の表層部の残留オーステナイト量を15体積%以上40体積%以下とし、芯部のオーステナイト量を0にすることを特徴とする軸の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、転がり軸受の内輪軌道面として機能する面を有する軸の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 ラジアル軸受においては、内輪を用いず軸の面を内輪軌道面として使用する(すなわち、軸に転動体を転がり接触させる)ことがある。特に、ニードル軸受では内輪を用いない場合が多い。従来より、内輪を用いないニードル軸受の軸としては、SUJ2等のずぶ焼き鋼に焼入れ、焼き戻しを施して、ビッカース硬さ(Hv)を650以上としたものが使用されている。具体的には、軸の表面硬さがHv300以下である状態で旋削等の加工を行った後に、高周波焼入れを施すことにより、表面硬さをHv650以上にしている。 【0003】 このような従来の「内輪を用いないニードル軸受」の軸には、転がり疲労特性を向上することと、衝撃荷重が大きい場合であっても塑性変形を生じ難くすることが課題となっている。 この課題を解決するために、下記の特許文献1には、内輪を用いないニードル軸受の軸を、0.5〜1.2wt%の炭素を含有する鋼で構成するとともに、芯部の残留オーステナイト量を0とし、表面層の窒素含有率を0.05〜0.4wt%とし、表面層の硬さをHv650以上とし、表面層の残留オーステナイト量を15〜40vol%とすることが開示されている。また、この文献には、前記構成の軸の製造方法として、高周波焼入れ後に、通常の加熱炉による焼戻しを行う方法が記載されている。 【0004】 一方、下記の特許文献2には、「転がり軸受の内輪軌道面として機能する面を有する軸」として、プラネタリアギア装置のピニオンシャフトが開示されている。 【特許文献1】特開2002−004003号公報 【特許文献2】特開2003−301933号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ここで、特に、径が小さかったり中空状に形成されていることで軸の熱容量が小さい場合に、処理時間の短い高周波焼入れを行うと、軸が十分に加熱され難いため、マトリックス中に固溶される炭素および窒素の量が不十分となって、焼入れ後の残留オーステナイト量を高くすることは難しい。 また、プラネタリアギア装置のピニオンシャフトは、端部がキャリアに「かしめ」によって固定される。そのため、ピニオンシャフトの場合、内輪軌道面として機能する面は硬くし、端部は「かしめ」可能な硬さにする必要がある。 本発明の課題は、「転がり軸受の内輪軌道面として機能する面を有する軸」の製造方法として、内輪軌道面として機能する面を所定の硬さとし、端部を「かしめ」可能な硬さにできる方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題を解決するために、本発明の軸の製造方法は、転がり軸受の内輪軌道面として機能する面を有する軸の製造方法において、所定の合金鋼からなる素材を軸の形状に加工した後、前記面の表層部に窒素を導入して、その窒素含有率を0.05質量%以上0.4質量%以下にし、次いで、焼入れを行わないで、軸の端部のみを焼鈍して前記面は焼鈍せず、前記端部の硬さをビッカース硬さ(Hv)で300未満とし、次いで、前記面に対する高周波焼入れ、焼戻しを行うことにより、前記面の硬さをビッカース硬さ(Hv)で650以上とし、前記面の表層部の残留オーステナイト量を15体積%以上40体積%以下とし、芯部のオーステナイト量を0にすることを特徴とする。 【0007】 「高周波焼入れ」とは、高周波誘導加熱による焼入れであり、ワークに近接したコイルに高周波電流を流すことにより、渦電流を発生させて急速加熱する方法である。「高周波焼入れ」で使用する高周波電流の周波数は特に定義されていないが、例えば、商用周波数(50Hz)を超える周波数を使用する。 本発明において、使用可能な合金鋼としては、SUJ2、SK5、SCM440等が挙げられる。 【0008】 前記表層部への窒素の導入方法としては、浸炭窒化処理や窒化処理が挙げられる。 ここで、合金鋼からなる軸の表層部に対して浸炭窒化処理または窒化処理を行った後に焼鈍を行うと、前記表層部に炭化物が析出し、特に焼鈍温度が高いと炭化物が粗大化するため、次工程で高周波焼入れを行うと、前記表層部に炭素および窒素が固溶し難くなる。また、炭化物の粗大化を防止するために焼鈍温度を低くすると、端部の硬さを低く(Hv300未満)することが難しくなる。 【0009】 これに対して、本発明の方法によれば、合金鋼からなる軸の表層部に対して浸炭窒化処理または窒化処理を行った後に、焼入れを行わないで(A1 点以上の温度で保持する処理をした場合には、残留オーステナイト量を0にする処理を行った後に)、軸の端部のみを部分的に焼鈍し、内輪軌道面として機能する面を焼鈍しないため、前記面の表層部に存在する炭化物の粗大化が抑制される。よって、次工程である高周波焼入れ工程で、前記面の表層部に炭素および窒素が固溶し易くなるため、前記表層部の残留オーステナイト量を高くすることができる。また、芯部のオーステナイト量を0にすることができるため、軸の変形を抑えることができる。 【発明の効果】 【0010】 本発明の方法によれば、「転がり軸受の内輪軌道面として機能する面を有する軸」であって、前記面が所定の硬さとなり、端部が「かしめ」可能な硬さとなっているものを、低コストで得ることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 以下、本発明の実施形態について説明する。 SUJ2からなる棒状の素材を用意し、この素材から直径10mm、長さ50mmの軸を旋削加工により形成した。この軸に対して、下記の表1に示す構成で熱処理を行うことにより、軸のサンプルNo. 1〜5を得た。 各処理の条件は以下の通りである。 浸炭窒化:図1(a)に示すように、軸1を炉2内に入れ、軸1全体の表層部に浸炭窒化を行った。雰囲気ガスは「RXガス+エンリッチガス+アンモニアガス」とした。処理温度は800〜850℃、処理時間は2〜10時間とした。 【0012】 油焼入れ:浸炭窒化直後の軸1を焼入れ油に浸漬した。 徐冷後急冷:浸炭窒化直後の軸1を、加熱を止めた炉2内に600℃となるまで放置することにより徐冷し、600℃となった時点で、炉2内に10〜30℃の窒素ガスを導入して急冷した。 端部のみを焼鈍:図1(b)に示すように、軸1の両端部11a,11bにのみコイル3を配置して、周波数10kHz、電力5kW、昇温速度60℃/秒、最高温度650℃、放冷時間5〜10分の条件で、誘導加熱を行った後に水冷した。 【0013】 中央部のみを高周波焼入れ:図1(c)に示すように、軸1の下端部11bより上側にコイル3を配置し、その下に冷却ジャケット4を配置し、軸1を下側(矢印方向)に移動させながら、高周波焼入れを行った。この移動はAの位置がコイル3の上端になるまで行った。これにより、軸1の中央部12のみが高周波焼入れされた。各サンプルとも、周波数120kHz、電力25kW、冷却水流速35リットル/分とした。軸の送り速度は0.5m/分とした。また、Hv500以上で規定する硬化深さが1〜2mmとなるようにした。 加熱炉焼戻し:各サンプルとも160℃、2時間の条件で行った。 全体を焼鈍:軸1を真空焼鈍炉内に入れて、速度10℃/分で650℃まで昇温し、この温度に2時間保持した後、加熱を止めた炉内に10〜30℃の窒素ガスを導入して冷却した。 【0014】 得られた各軸1の中央部12について、表層部(表面から50μmの位置で)の窒素含有率(N)と、表面硬さ(Hv)と、表層部の残留オーステナイト量を測定した。端部11については、表面硬さ(Hv)を測定した。また、芯部の残留オーステナイト量を軸1の端部11で測定した。窒素含有率は電子線マイクロアナライザーを用いて、表面硬さはビッカース硬度計を用いて、残留オーステナイト量はX線回折装置を用いて、それぞれ測定した。その結果を表1に併せて示す。 【0015】 また、No. 1〜5と同じ方法で、図2に示すニードル軸受の軸10を作製して寿命試験を行った。 このニードル軸受は、軸10と外輪5の間に、複数のニードルローラ6が転動自在に介装されており、軸10の中央部12の表面が内輪軌道面として機能する。ニードルローラ6の外径は2mmで長さは15mmである。なお、この軸10の内部には、長さ方向の一端から中央部12の周面に向けて潤滑油を供給する給油路が設けてある。この給油路は、軸線に沿って延びる平行路10aと、軸の長さ方向中心位置で、軸の径方向に沿って延びる垂直路10bとからなる。これにより、平行路10aの開口端から導入された潤滑油が、垂直路10bの開口端から軸10とニードル6との間に供給される。 【0016】 試験条件は、軸の回転速度:10000min-1、ラジアル荷重:4200N、潤滑油:合成油、潤滑油の温度:150℃とした。そして、軸10を回転させ、剥離が生じるまでの試験を寿命として測定した。なお、ラジアル荷重は、図示しないサポート軸受を介して外輪5に加えた。 この結果も下記の表1に併せて示す。 【0017】 【表1】
【0018】 この表に示すように、浸炭窒化後に軸の端部のみを焼鈍したNo. 1と2の軸は、中央部の表層部の残留オーステナイトが22体積%と高かった。これらのうち、本発明の方法(浸炭窒化後に、焼入れせずに、軸の端部のみを焼鈍)で熱処理されたNo. 2の軸は、芯部の残留オーステナイト量が0であったが、No. 1の軸は芯部の残留オーステナイト量が10体積%であった。 また、浸炭窒化後に軸の全体を焼鈍したNo. 3と4の軸は、中央部の表層部の残留オーステナイトが12体積%以下と低かった。 【0019】 また、No. 2の軸を使用したニードル軸受は、No. 1、3、4の軸を使用したニードル軸受よりも寿命が長かった。No. 1の軸を使用したニードル軸受は、芯部の残留オーステナイト量が10体積%であるため、軸の変形が生じて寿命が短くなった。No. 3と4の軸を使用したニードル軸受は、軸の内輪軌道面(中央部の表層部)の残留オーステナイト量が低かったため、寿命が短くなった。 【0020】 なお、No. 5の軸は、中央部の表層部の残留オーステナイト量がNo. 1および2と同等であったが、端部の硬さが硬いため、プラネタリアギア装置のピニオンとして使用した場合に端部を「かしめ」でキャリアに固定することができない。これに対して、No. 1および2の軸は、プラネタリアギア装置のピニオンとして使用した場合に端部を「かしめ」でキャリアに固定することができる。 【図面の簡単な説明】 【0021】 【図1】実施形態で行った軸の熱処理方法を説明する断面図である。 【図2】実施形態で行った寿命試験で使用したニードル軸受を示す断面図である。 【符号の説明】 【0022】 1,10 軸 11a,11b 軸の端部 12 軸の中央部(内輪軌道面として機能する面) 2 炉 3 コイル 4 冷却ジャケット 5 外輪 6 ニードル
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004204 【氏名又は名称】日本精工株式会社 【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目6番3号
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| 【出願日】 |
平成16年6月16日(2004.6.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100066980 【弁理士】 【氏名又は名称】森 哲也
【識別番号】100075579 【弁理士】 【氏名又は名称】内藤 嘉昭
【識別番号】100103850 【弁理士】 【氏名又は名称】崔 秀▲てつ▼
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| 【公開番号】 |
特開2006−2194(P2006−2194A) |
| 【公開日】 |
平成18年1月5日(2006.1.5) |
| 【出願番号】 |
特願2004−177995(P2004−177995) |
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