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【発明の名称】 |
熱処理条件調整方法 |
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【氏名】沢津橋 精一 【住所又は居所】東京都千代田区丸の内3丁目3番1号 電気興業株式会社内 |
【課題】高周波直接通電方式の熱処理(焼入処理又は焼戻処理)において、熱処理ショット数が増大するのに伴って接触電極の摩耗量が増大しても、熱処理対象部に規格値内の良好な熱処理硬化層(焼入硬化層)を安定的に継続して形成することができるような熱処理条件調整方法を提供する。
【解決手段】高周波直接通電方式の熱処理において熱処理条件を調整するに際し、熱処理ショット数N、又は、熱処理対象部(例えば、ラックシャフト1の歯部2)と近接導体11との間の隙間Sに対応して複数の熱処理条件を予め定めておくステップと、熱処理時に熱処理ショット数N又は隙間Sを検出するステップと、この検出した検出値に基づいて複数の熱処理条件の中から検出値に対応する熱処理条件を選択するステップと、これにより選択された熱処理条件に基づいて熱処理を行うステップとを施行する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高周波熱処理対象物を一対の接触電極により支持して、前記一対の接触電極を介して高周波電流を前記高周波熱処理対象物の熱処理対象部に直接流すと共に、前記高周波熱処理対象物に近接して配置される近接導体に流れる高周波電流の誘導作用により前記熱処理対象部に誘導電流を流して、前記熱処理対象部を加熱し、次いで所要の焼入温度に加熱された前記熱処理対象部を冷却することにより、前記熱処理対象部を熱処理するようにした高周波直接通電方式の熱処理において、熱処理条件を調整するための方法であって、 (a) 熱処理ショット数、又は、前記熱処理対象部と前記近接導体との間の隙間に対応して複数の熱処理条件を予め定めておくステップと、 (b) 熱処理時に前記熱処理ショット数又は前記隙間を検出するステップと、 (c) この検出した検出値に基づいて前記複数の熱処理条件の中から前記検出値に対応する熱処理条件を選択するステップと、 (d) これにより選択された熱処理条件に基づいて熱処理を行うステップと、 を有することを特徴とする熱処理条件調整方法。 【請求項2】 前記熱処理条件が、前記熱処理対象部の焼入深さ,焼入幅,及び焼入焼戻硬さに関連するものであることを特徴とする請求項1に記載の熱処理条件調整方法。 【請求項3】 前記熱処理対象部が、ラックシャフトの歯部、又は、前記歯部に対応する前記ラックシャフトの背面部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱処理条件調整方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、高周波焼入や高周波焼戻のような熱処理を行う際の熱処理条件調整方法に関し、更に詳しくは、高周波直接通電方式の熱処理(高周波直接通電焼入・焼戻)における熱処理条件調整方法に関する。更に具体的に述べると、本発明は、例えば、ラックシャフト(ラックバー)の歯部やその歯部に対応する背面部を高周波直接通電方式で熱処理を行うに際し、所望の焼入深さ,焼入幅,及び焼入焼戻硬さを得るための熱処理条件調整方法に関する。 【背景技術】 【0002】 図2に示すようなラックシャフト1の歯部2やその歯部2に対応する背面部3などを高周波焼入する場合には、図2〜図4に示すような高周波直接通電焼入装置4が用いられる場合が多い。 【0003】 この高周波直接通電焼入装置4は、図2〜図4に示すように、電気的絶縁材5を介して重ね合わされている第一導体6及び第二導体7と、第一導体6に連結されると共に第二導体7側に連結されている(すなわち、第一導体6の一端部から両側に分岐して第二導体7の他端部に接続されている)分岐導体8(図3及び図4参照)と、電気的絶縁材5が介在されている位置において第一導体6上に載置されて固定されている第一接触電極9と、第二導体7上に載置されて固定されている第二接触電極10と、第二導体7上に載置されて固定されている近接導体11と、近接導体11に設けられている冷却手段12(図4参照)と、第一接触電極9及び第二接触電極10間に接続されている高周波電源部13(図2参照)と、第一接触電極9及び第二接触電極10にそれぞれ対応する位置に配設されている一対のラックシャフト押圧用の油圧シリンダ14とを備えている。 【0004】 かくして、ラックシャフト1は、図2及び図3に示すように第一接触電極9及び第二接触電極10の頂部α,β上に載置されてその歯部2が前記頂部α,βに当接せしめられた状態で支持されると共に、油圧シリンダ14により第一接触電極9及び第二接触電極10の側に押圧されて前記歯部2と前記頂部α,βとの電気的接触状態が確保されるようになっている。また、このようにしてラックシャフト1が第一接触電極9及び第二接触電極10上に配置されると、このラックシャフト1の歯部2と近接導体11との間には図2及び図4に示すように隙間Sが形成され、歯部2が近接導体11に近接配置されるように構成されている。 【0005】 このような構成の高周波直接通電焼入装置4を用いてラックシャフト1の歯部2を焼入する際の動作について述べると、次の通りである、まず、高周波電源部13を通電状態にすると、高周波電流I1が第一導体6から第一接触電極9及び分岐導体8に流れ、ラックシャフト1内を通り、第二接触電極10及び近接導体11を通り、高周波電源部13に戻るように流れるか、またはその逆の経路で交互に流れる。すなわち、ある時点では、図2において矢印で示すようにラックシャフト1に高周波電流I1'が流れると共に、近接導体1に流れる電流の誘導作用にて誘導電流(うず電流)I1''が流れ、従ってラックシャフト1の歯部2の表面には(I1'+I1'')の電流が流れる。この際、高周波電源部13への戻る電流はI2となるが、それについての詳細な説明は省略する。 【0006】 なお、上述のような構造の高周波直接通電焼入装置4によるラックシャフト1(ラックバー)の高周波直接通電焼入に関する公知技術としては、特願平10-183234号(特許文献1)が挙げられる。 【特許文献1】特開平10−183234号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上述のような高周波直接通電焼入装置4を用いてラックシャフト1の歯部2などを焼入処理する場合、熱処理作業の初期(高周波直接通電焼入装置4の使用開始時期、すなわち、第一接触電極9及び第二接触電極10が未だ摩耗し始めていない時期)には、歯部2などの表面に所望の焼入硬化層を形成することができる。しかしながら、熱処理ショット数(ショット回数;熱処理の施行回数)Nが増大すると、これに伴って第一接触電極9及び第二接触電極10の頂部α,βがラックシャフト1との接触により次第に摩耗し、ラックシャフト1が近接導体11の側に次第に近づき、焼入対象部であるラックシャフト1の歯部2と近接導体11との間の隙間Sが小さくなる。そのままの状態を放置し、熱処理条件を変更することなく同一の熱処理条件で熱処理を進めると、図5及び図6に示すように、ラックシャフト1の焼入深さ,焼入幅,及び焼入(焼戻)硬さが大きく変化し、規格値を越えてしまう不具合を生じる場合がある。なお、既述の特開平10−183234号公報においても、このような不具合を解消するための対策は何ら提案されていない。 【0008】 本発明は、上述の如き不具合を解消するためになされたものであって、その目的は、高周波直接通電方式の熱処理(焼入処理又は焼戻処理)において、熱処理ショット数が増大するのに伴って接触電極の摩耗量が増大しても、熱処理対象部に規格値内の良好な熱処理硬化層(焼入硬化層)を安定的に継続して形成することができるような熱処理条件調整方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上述の目的を達成するために、本発明では、高周波熱処理対象物を一対の接触電極により支持して、前記一対の接触電極を介して高周波電流を前記高周波熱処理対象物の熱処理対象部に直接流すと共に、前記高周波熱処理対象物に近接して配置される近接導体に流れる高周波電流の誘導作用により前記熱処理対象部に誘導電流を流して、前記熱処理対象部を加熱し、次いで所要の焼入温度に加熱された前記熱処理対象部を冷却することにより、前記熱処理対象部を熱処理するようにした高周波直接通電方式の熱処理における熱処理条件調整方法において、 (a) 熱処理ショット数、又は、前記熱処理対象部と前記近接導体との間の隙間に対応して複数の熱処理条件を予め定めておくステップと、 (b) 熱処理時に前記熱処理ショット数又は前記隙間を検出するステップと、 (c) この検出した検出値に基づいて前記複数の熱処理条件の中から前記検出値に対応する熱処理条件を選択するステップと、 (d) これにより選択された熱処理条件に基づいて熱処理を行うステップと、 を有するようにしている。 また、本発明では、前記熱処理条件が、前記熱処理対象部の焼入深さ,焼入幅,及び焼入焼戻硬さに関連するものであるようにしている。 また、本発明では、前記熱処理対象部が、ラックシャフトの歯部、又は、前記歯部に対応する前記ラックシャフトの背面部であるようにしている。 【発明の効果】 【0010】 請求項1に記載の本発明は、高周波直接通電方式の熱処理における熱処理条件調整方法において、熱処理ショット数、又は、熱処理対象部と近接導体との間の隙間に対応して複数の熱処理条件を予め定めておくステップと、熱処理時に熱処理ショット数又は隙間を検出するステップと、この検出した検出値に基づいて複数の熱処理条件の中から検出値に対応する熱処理条件を選択するステップと、これにより選択された熱処理条件に基づいて熱処理を行うステップとを施行するようにしたものであるから、本発明の熱処理条件調整方法によれば、接触電極の摩耗量が大きくなっても、熱処理ショット数の増大に伴って熱処理条件を適宜に変化させることにより、焼入対象部に所要の規格値内の熱処理硬化層(焼入硬化層)を常に安定的に継続して形成することができる。 【0011】 また、請求項2に記載の本発明は、熱処理条件が、熱処理対象部の焼入深さ,焼入幅,及び焼入焼戻硬さに関連するものであるようにしたものであるから、本発明の熱処理条件調整方法によれば、接触電極の摩耗量が大きくなっても、所要の焼入深さ,焼入幅,及び焼入焼戻硬さを常に安定的に継続して得ることができる。 【0012】 また、請求項3に記載の本発明は、熱処理対象部が、ラックシャフトの歯部、又は、歯部に対応するラックシャフトの背面部であるようにしたものであるから、本発明の熱処理条件調整方法によれば、ラックシャフトの歯部又は背面部に接触される接触電極が摩耗しても、ラックシャフトの歯部又は背面部に常に所望の硬化層深さ,硬化層幅,及び硬化層硬さの焼入(焼戻)硬化層を得ることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下、本発明の一実施形態に係る熱処理条件調整方法について図1を参照して説明する。ここでは、熱処理対象物(ワーク)として、例えば、ラックシャフトの歯部2を熱処理(焼入又は焼戻)する場合を例にとって説明する。なお、以下の説明においては、上記の説明並びに図2で使用した符号と同一の符号を用いることとする。 【0014】 熱処理対象物(ワーク)として、例えば、ラックシャフト1を採用した場合には、熱処理ショット数としては約10,000回まで第一接触電極9及び第二接触電極10などを交換する必要がない。しかし、少なくとも約2,000回毎に熱処理条件を変化させる必要がある。なお、本実施形態では、検出値として熱処理ショット数Nを採用しているが、これに代えて、ラックシャフト1の歯部2と近接導体11との間の隙間Sを検出値として用いてもよい。また、熱処理条件としては、焼入深さ,焼入幅や焼入焼戻硬さに対応するものが挙げられるが、以下の説明では焼入深さを選定しているが、これに限定するものではない。 【0015】 下記の表1は、熱処理ショット数Nと、予め定められた複数の熱処理条件との関係の一例を示したものである。 【0016】 【表1】
【0017】 上記の表1に示すように、熱処理ショット数Nが1〜2,000の範囲では、条件1による熱処理(たとえば、焼入)を行う。次に、熱処理ショット数Nが2,001〜4,000の範囲では、条件1とは異なる条件2による熱処理を行う。これにより、条件1の場合とほぼ同一の焼入深さを得ることができる。次に、熱処理ショット数Nが4,001〜6,000の範囲では条件3とし、熱処理ショット数Nが6,001〜8,000の範囲では条件4とし、熱処理ショット数Nが8,001〜90,000の範囲では条件5を採用する。なお、熱処理ショット数Nは、熱処理作業中にカウンタなどの簡単な計測器にて自動的に検出可能であり、熱処理条件の変更も手動又は自動により比較的安価にかつ正確に行なうことが可能である。従って、熱処理ショット数Nについての検出値に基づいて、予め定めた複数の熱処理条件の中から熱処理ショット数Nに応じて実際の熱処理作業時における最適な熱処理条件を選択して焼入(又は焼戻)の熱処理を行う。 【0018】 図1は、本発明に係る高周波直接通電焼入における熱処理条件調整方法を施行した場合の焼入深さの変化を示すものである。すなわち、図1は、横軸に熱処理ショット数Nとこれに対応して予め決められた条件1乃至5をとり、縦軸に焼入深さを表示したものである。図示のように熱処理ショット数Nが増加すると焼入深さは徐々に増大するが、夏処理条件を適宜に変えることにより、焼入深さが元の値(規格値内の値)に戻る。この調整を熱処理ショット数の最後の回数である10,000まで繰返して行い、条件1〜条件5を順次に変更して設定することにより焼入深さを極く狭い範囲の規格値内に入れることができる。 【0019】 条件1乃至5は、以上のように熱処理ショット数Nに対応したものであるが、ラックシャフト1の種類や第一接触導体9及び第二接触導体10の材質などに応じて熱処理ショット数Nの設定も上記表1に記載の数値とは異なることとなり、これに対応する熱処理条件は前記条件1乃至5に限定されるものではない。また、本実施形態では熱処理条件として焼入深さを選定しているが、焼入幅や焼入(焼戻)硬さに対応するものであってもよい。また、熱処理ショット数Nに限らず、ラックシャフト1と近接導体11との間の隙間Sを検出値として、これに対応して条件を決めてもよい。なお、隙間Sは、熱処理作業中に簡単な距離計測器にて自動的に検出可能である。 【0020】 このような熱処理条件調整方法によれば、ラックシャフトの歯部2(又は歯部2に対応する背面部3)を高周波焼入・焼戻の如き熱処理を行う場合に適用される高周波直接通電焼入・焼戻を施行する際に、熱処理ショット数N、或いは、ラックシャフト1の熱処理対象部(歯部2や背面部3)と近接導体11との間の隙間Sの増大に伴なう焼入硬化層の変化を狭い範囲に抑えることができ、常に安定した焼入硬化層を継続して形成することができる。 【0021】 以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態ではラックシャフト1の歯部2を熱処理する場合について述べたが、ラックシャフト1の背面部3を熱処理する場合にも本発明の熱処理条件調整方法を適用できる。さらに、ラックシャフト1以外の、高周波直接通電方式の熱処理が適用される各種の熱処理対象物に対しても、本発明の熱処理条件調整方法を適用できることは言う迄もない。 【図面の簡単な説明】 【0022】 【図1】本発明の一実施形態に係る熱処理条件調整方法による熱処理ショット数と焼入深さとの関係を示すグラフである。 【図2】高周波直接通電焼入装置の側面図である。 【図3】図3におけるA−A線拡大断面図である。 【図4】図3におけるB−B線拡大断面図である。 【図5】従来の熱処理条件調整方法による熱処理ショット数と焼入深さとの関係を示すグラフである。 【図6】従来の熱処理条件調整方法による熱処理ショット数と焼入(焼戻)硬さとの関係を示すグラフである。 【符号の説明】 【0023】 1 ラックシャフト 2 歯部 3 背面部 4 高周波直接通電焼入装置 9 第一接触導体 10 第二接触導体 11 近接導体 N 熱処理ショット数 S 隙間 α,β 頂部
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| 【出願人】 |
【識別番号】000217653 【氏名又は名称】電気興業株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区丸の内3丁目3番1号
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| 【出願日】 |
平成16年6月16日(2004.6.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100099623 【弁理士】 【氏名又は名称】奥山 尚一
【識別番号】100096769 【弁理士】 【氏名又は名称】有原 幸一
【識別番号】100107319 【弁理士】 【氏名又は名称】松島 鉄男
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| 【公開番号】 |
特開2006−2191(P2006−2191A) |
| 【公開日】 |
平成18年1月5日(2006.1.5) |
| 【出願番号】 |
特願2004−177877(P2004−177877) |
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