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テロメラーゼ活性の電気化学的検出方法及びそれに用いる検出キット - 特開2006−223218 | j-tokkyo
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【発明の名称】 テロメラーゼ活性の電気化学的検出方法及びそれに用いる検出キット
【発明者】 【氏名】佐藤 しのぶ

【氏名】野島 高彦

【氏名】水元 一博

【氏名】大塚 圭一

【氏名】竹中 繁織

【要約】 【課題】TRAP法に代わる、高感度かつ迅速に行うことが可能で、大量の試料のスクリーニングにも応用可能なテロメラーゼ活性の検出方法を提供すること。

【解決手段】電極上に固定したテロメラーゼ伸長用プライマーをテロメラーゼにより伸長させて伸長産物を調製する。次いで該伸長産物と電気化学活性プローブとを電解液中で反応させ、該伸長産物に結合した電気化学活性プローブからの酸化又は還元電流を計測する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極上に固定したテロメラーゼ伸長用プライマーをテロメラーゼにより伸長させて伸長産物を調製し、次いで該伸長産物と電気化学活性プローブとを電解液中で反応させ、該伸長産物に結合した電気化学活性プローブからの酸化又は還元電流を計測するテロメラーゼ活性の検出方法。
【請求項2】
上記電気化学活性プローブが、電気化学的活性基を有する、インターカレータ、グルーブバインダ及びリン酸基と静電結合する物質から成る群から選択された少なくとも1種である請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
少なくともTTAGGGから成る塩基配列を3'末端に含むテロメラーゼ伸長用プライマーが固定された電極と、電気化学活性プローブとを含む検出キット。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の早期発見に有用なテロメラーゼ活性の検出方法に関し、さらに詳しくはテロメラーゼ活性の電気化学的検出方法及びそれに用いる検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、癌の早期発見法の一つとして、癌マーカーを用いた診断が行われている。癌マーカーは、癌細胞が産生する物質又は癌の存在に応じて非癌細胞が産生する物質であり、その測定が癌の存在を示唆し、臨床診断補助や転移・再発の早期発見に有用なものである。そして、近年、テロメラーゼが癌マーカーとして注目されている。テロメラーゼは、染色体の末端に存在するテロメア配列(ヒトの場合、6塩基からなる5'-TTAGGG-3'が数百回繰り返されている)を認識し伸長する酵素であり、鋳型RNAと触媒サブユニットタンパク質から構成されている。このテロメア配列は、正常細胞であれば細胞分裂の度に短くなることが知られている。しかし、癌に冒された場合、テロメラーゼは活性を有し、テロメア配列は逆に伸長されることが知られている。したがって、患者のテロメラーゼ活性を調べることは、癌の早期発見に極めて有用である。
【0003】
テロメラーゼ活性の検出方法としては、現在、TRAP(Telomeric Repeat Amplification Protocol)法(例えば、非特許文献1)が広く用いられている。TRAP法は大きく3つの工程からなる。最初の工程では、細胞から抽出したテロメラーゼの伸長反応を行う。すなわち、テロメラーゼは基質であるオリゴヌクレオチド(TS)の3'末端に相当数のテロメア配列(TTAGGG)を付加してTTAGGG鎖の伸長反応を行う。次の工程では、PCRにより、伸長生成物を2種類のプライマー(TSプライマーとRPプライマー)を用いてPCRにより増幅する。最後の工程では、増幅産物を電気泳動し、6塩基ずつ増加する生成物のラダーを生成させ、そのラダーを32Pを用いた放射性検出法や蛍光色素を用いた蛍光検出法により検出する。これにより、高感度のテロメラーゼ活性の検出が可能となっている。
【非特許文献1】Kim N.W. et al.,Science,266,2011,1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、TRAP法は、伸長反応、PCR、電気泳動という工程を必要とし、一連の操作に長時間を要するという問題がある。また、伸長生成物として、PCRにより伸長されたものやプライマーダイマーができることにより、偽陽性が生じる可能性があるという問題もある。
【0005】
また、以下のような問題もある。伸長されたテロメア配列は、特定の条件下では四本鎖Gカルテット構造を示すことが知られている。その四本鎖構造を形成すると、テロメラーゼがテロメア配列を認識できないため、伸長反応は起こらない。したがって、腫瘍細胞ではテロメラーゼ活性であるが、なんらかの条件により四本鎖構造を形成すると、テロメラーゼ活性が低下し、腫瘍細胞の活性が抑えられることになる。そこで、四本鎖構造を形成せる化合物、あるいは四本鎖構造に結合し、その構造を安定化するような化合物はテロメラーゼ阻害剤としての効果を有することになる。このようなテロメラーゼ阻害剤のスクリーニングをTRAP法で行おうとすると、その阻害剤がPCRを阻害するような場合、PCRの有無を確認するインターナルコントロール配列があるものの、テロメア増幅配列が伸長されていないために増幅されていないのか、あるいはテロメア増幅配列は伸長されたがPCRがうまくいかなかったのか、判断が容易でないという問題もある。そのため、PCRを用いない検出方法も必要とされている。
【0006】
そこで、本発明は、TRAP法に代わる、高感度かつ迅速に行うことが可能で、大量の試料のスクリーニングにも応用可能なテロメラーゼ活性の検出方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、高感度で迅速測定の可能な電気化学的手法をテロメラーゼの検出方法に適用すべく鋭意検討した結果、電極上でテロメラーゼの伸長反応を進行させることが可能であり、かつ電気化学活性プローブが伸長産物に結合することを見出して本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明のテロメラーゼの検出方法は、電極上に固定したテロメラーゼ伸長用プライマーをテロメラーゼにより伸長させて伸長産物を調製し、次いで該伸長産物と電気化学活性プローブとを電解液中で反応させ、該伸長産物に結合した電気化学活性プローブからの酸化又は還元電流を計測することを特徴とする。
【0008】
電気化学測定では、その測定溶液(以下、電解液という)中には支持電解質が含まれており、水溶液の電解液の場合、カリウムイオンやナトリウムイオン等のカチオンが汎用されている。これらのカチオンは、テロメア配列の四本鎖構造を誘起することが知られている。本発明は、電極上に形成させたこの四本鎖構造に、電気化学活性プローブを結合させて、この結合した電気化学活性プローブの酸化又は還元電流を計測することにより、テロメラーゼ伸長反応の有無を検出するもので、PCRや電気泳動の不要な新たな検出方法を提供するものである。
【0009】
本発明に用いる電気化学活性プローブは、電気化学的活性基を有し、伸長産物中のDNAと物理的あるいは化学的に結合する標識物質であり、インターカレータ、グルーブバインダ(小溝結合剤)又はリン酸基と静電結合する物質を用いることができる。
【0010】
また、電解液には、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩から成る電解質を含むものを用いることができる。さらに、電解質には、カチオンとして、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン又はアンモニウムイオンを用いることができる。
【0011】
また、電極には、金、白金又は銀からなる金属電極あるいは炭素電極を用いることができる。電極に金電極を用いる場合、末端をチオール化したテロメラーゼ伸長用プライマーを金電極に固定することが好ましい。
【0012】
また、電極上に固定するテロメラーゼ伸長用プライマーには、少なくともTTAGGGから成る塩基配列を3'末端に含むオリゴヌクレオチドを用いることができる。
【0013】
また、本発明は、テロメラーゼ活性の検出に用いる検出キットに関するものでもあり、その検出キットは、少なくともTTAGGGから成る塩基配列を3'末端に含むテロメラーゼ伸長用プライマーが固定された電極と、電気化学活性プローブとを含むことを特徴とする。電極が金電極であり、テロメラーゼ伸長用プライマーが金−硫黄結合を介して固定されたものを用いることができる。また、電気化学活性プローブには、電気化学活性基にフェロセンを有する縫い込み型インターカレータを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検出方法は、電極上にテロメラーゼ伸長用プライマーを固定して電極上で伸長反応を行い、次いで伸長産物に電気化学活性プローブを結合させ、その電気化学活性基からの酸化又は還元電流を計測してテロメラーゼ活性の有無を確認するようにしたので、TRAP法で必要とされていたPCRや電気泳動の工程が不要であり、迅速に検出を行うことができる。また、電気化学計測手法を用いるので、高感度の検出が可能である。これにより、大量の試料のスクリーニングを迅速に行うことができる。PCRを行わないので、PCRを阻害するようなテロメラーゼ阻害剤のスクリーニングには特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の検出方法は、電極上に固定したテロメラーゼ伸長用プライマーをテロメラーゼにより伸長させて伸長産物を調製し、次いで該伸長産物と電気化学活性プローブとを電解液中で反応させ、該伸長産物に結合した電気化学活性プローブからの酸化又は還元電流を計測し、その電流値に基づいて伸長反応の有無を確認する。以下、本発明の検出方法を具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明の検出原理を示す模式図であり、電気化学活性プローブにインターカレータを用いた例を示している。まず、電極上に少なくともTTAGGGから成る塩基配列を3'末端に含むオリゴヌクレオチドであるテロメラーゼ伸長用プライマーを固定する。ここでは、金電極を用いた例を示しており、金−硫黄結合を介して伸長用プライマーを電極に固定している(以下、伸長用プライマーを固定した電極をプライマー修飾電極という)(a)。次いで、テロメラーゼを添加し、所定時間テロメラーゼ伸長反応を行い、プライマー修飾電極上に伸長産物を生成させる(b)。次いで、このプライマー修飾電極を電解液に浸漬又は接触させ、伸長産物の四本鎖構造を形成させる(c)。次いで、電気化学活性プローブを添加し、このプローブを四本鎖構造に結合させる(d)。これにより、プローブが電極近傍に濃縮された状態となる。次いで、プライマー修飾電極の電気化学測定を行うが、伸長反応前にプローブを添加した状態で予め電気化学測定を行い、フリーのプローブによる酸化又は還元電流を測定し(以下、バックグラウンド電流値という)、このバックグラウンド電流とプローブ固定化後の電流値(試料電流値という)とを比較することにより、伸長産物の有無、すなわち、伸長反応の有無を確認する(e)。また、試料電流値とバックグラウンド電流値との差から伸長鎖の長さを評価することもできる。
【0017】
テロメラーゼの抽出に用いる細胞は、ヒト由来の細胞であれば特に限定されず、癌組織や癌細胞株を用いることができる。抽出は、抽出用緩衝液に被検細胞を懸濁させ、非イオン性界面活性剤を適宜添加した後、凍結融解又はホモジナイズ等の通常の生化学的手法を用いて行うことができる。
【0018】
プライマー修飾電極には、金、白金、銀、銅、チタン等の金属電極、グラファイト、グラッシーカーボン、パイロティックグラファイト、カーボンファイバー等の炭素電極、酸化チタン、酸化スズ、酸化マンガン、ITO等の酸化物電極、Si等の半導体電極を用いることができるが、金電極を用いることが好ましい。以下に説明するように、伸長用プライマーの末端をチオール化することにより、容易に固定することができるからである。また、電極には、ワイヤ、ディスク、プレート等の種々の形状のものを用いることができる。電極面積は特に限定されないが、円形の場合、直径は20μm〜10mm、より好ましくは1mm〜2mmである。
【0019】
また、プライマー修飾電極には、多数の電極が配列したアレイ電極を用いることもできる。例えば、特開2001-242116号公報に記載された、電気絶縁性の基板表面に規則的な間隔で蒸着された複数の金電極からなるチップをアレイ電極として用いることもできる。
【0020】
伸長用プライマーを電極上に固定するには、電極の種類に応じて、化学結合法や点着法等の、オリゴヌクレオチドの固定に用いる公知の方法を用いることができる。例えば、金電極を用いる場合、伸長用プライマーの末端をチオール化し、金−硫黄結合を介して伸長用プライマーを金電極に固定することができる。また、グラッシーカーボン電極を用いる場合、伸長用プライマーの末端をアミノ化する一方、グラッシーカーボンを過マンガン酸カリウムで酸化して表面にカルボキシル基を導入し、伸長用プライマーのアミノ基とアミド結合を形成させて固定することができる。
【0021】
本発明に用いる電気化学活性プローブは、電気化学的活性基を有し、伸長産物中のDNAと物理的あるいは化学的に結合する標識物質であり、インターカレータ、グルーブバインダ(小溝結合剤)又はリン酸基と静電結合する物質を用いることができる。ここで、電気化学活性基は、酸化及び/又は還元可能であれば特に限定されないが、可逆的な酸化還元の可能な、アントラキノン、フェロセン、カテコールアミン、金属ビピリジン錯体、金属フェナンスリン錯体又はビオローゲン化合物を用いることが好ましい。インターカレータには、ナフタレンジイミドをコア部に有する縫い込み型インターカレータ、以下に構造式を示す、エチジウムブロマイド(EtBr)、2,6-ジアミドアントラキノン(BSU1051)、5,10,15,20-テトラ-(N-メチル-4-ピリジル)ポルフィン(TMPyP4)、5,10,15,20-テトラ-(N-メチル-2-ピリジル)ポルフィン(TMPyP2)、ペリレンジイミド誘導体(PIPER)を用いることができるが、ナフタレンジイミドをコア部に有する縫い込み型インターカレータが好ましい。また、グルー ブバインダには、以下に構造式を示す3,3'-ジエチルオキサジカルボシアニン(DODC)を用いることができる。また、リン酸基と静電結合する物質とは、カチオン性化合物であり、4級アンモニウム塩、好ましくはトリメチルアンモニウムメチルフェロセンを用いることができる。
【0022】
【化1】


【0023】
なお、好ましいインターカレータとしては、例えば特開平9-288080号公報や特開2001-165894号公報に記載されたフェロセン修飾縫い込み型インターカレータを挙げることができる。このフェロセン修飾縫い込み型インターカレータには、コア部にナフタレンジミド構造を有し、その両端にはフェロセン分子を有するものを用いることができる。以下の構造式で表されるN,N-bis (3-Ferrocenylamino-propyl)naphthalene- 1, 4, 5, 8-tetracarboxylic acid diimide (以下、FNDと略す)を用いることが好ましい。
【0024】
【化2】


【0025】
四本鎖構造に結合したインターカレータの酸化又は還元電流は、公知の電気化学測定法により計測することができる。すなわち、プライマー修飾電極を電解液に浸漬あるいは接触させて作用極とし、対極と基準極を加えて3電極とし、作用極に所定の電位を印加して、プライマー修飾電極に固定された電気化学活性基の酸化又は還元電流を測定可能なものであればいかなる方法も用いることができる。例を挙げればサイクリックボルタンメトリやデファレンシャルパルスボルタンメトリを用いることができる。また、基準極を省略して作用極と対極の2電極とし、その2電極間に所定の電位を印加する方法を用いることもできる。
【0026】
本発明の検出キットは、少なくともTTAGGGから成る塩基配列を3'末端に含むテロメラーゼ伸長用プライマーが固定された電極と、電気化学活性プローブとを含むものである。電極が金電極で、伸長用プライマーが金−硫黄結合により金電極に固定されており、かつプローブがフェロセン修飾縫い込み型インターカレータであることが好ましい。さらに、金電極がワイヤ電極であり、その一端面には伸長用プライマーが固定され、他端面には測定用リードが接続され、その外周面が絶縁された電極であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の検出方法をテロメラーゼ阻害剤のスクリーニング方法として用いることもできる。テロメラーゼ阻害剤は、テロメア配列に四本鎖構造を形成させ、あるいは四本鎖構造に結合して四本鎖構造を安定化させ、テロメラーゼの活性を低下させる化合物である。電極上に固定したテロメラーゼ伸長用プライマーを、テロメラーゼ阻害剤の候補化合物の存在下、テロメラーゼにより伸長させて伸長産物を調製し、次いで、その伸長産物と電気化学活性プローブ、例えばFND、とを電解液中で反応させ、そのプローブからの酸化又は還元電流を測定する。候補化合物のテロメラーゼ阻害能に応じて生成する四本鎖構造の数が変化するので、結合するプローブの分子数も変下するので、プローブからの酸化又は還元電流を測定することにより候補化合物の阻害能を評価することが可能となる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1.
(試薬)
TSプライマーに用いるテロメアDNA配列には、カスタム合成したもの(Genenet Co.製)を用いた。また、インターカレータにはFNDを用いた。
【0029】
(UVスペクトルの測定)
UVスペクトル測定には、Hitachi 3300型分光光度計、SPR 10 温度コントローラを用いた。以下のテロメアDNA配列(以下、テロメアDNAという)を用いた。
5-CATGGTGGTTTGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGGTTACCAC-3
以下に示す測定溶液に400 μM テロメアDNAを数μlずつ添加したときのスペクトルを測定した。(A)FND 5.0 μM, MES 10 mM(pH6.2), EDTA 1 mM, (B) FND 5.0 μM, AcOK-AcOH 0.1 M(pH 5.6), KCl 0.1 M。測定温度 25℃である。
【0030】
(CDスペクトルの測定)
CD(円偏向二色性)スペクトル測定には、Jasco J820 を用いて波長220-440 nmの範囲を測定した。以下のテロメアDNAを用いた。
5-CATGGTGGTTTGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGGTTACCAC-3
以下に示す測定溶液に1 mM FNDを数μlずつ添加したときのスペクトルを測定した。(A)テロメアDNA 2.91 μM, MES 10 mM(pH6.2), EDTA 1 mM, (B) テロメアDNA 1.46 μM, AcOK-AcOH 0.1 M(pH 5.6), KCl 0.1 M。測定条件は、走査速度:20 nm/min、レスポンス:2 sec、データ間隔:0.1 nm、感度:100 mdeg、バンド幅:2 nm、積算回数:4、測定温度:25 ℃である。
【0031】
また、CDによるTm(融解温度)測定は、以下の条件で行った。測定溶液はFND 2.2 μM, 6.6 μMの二種類を用意した。そのほかの組成は、テロメアDNA 2.2 μM, MES 10 mM(pH6.2), EDTA 1 mM, KCl 50mMである。走査速度:10 nm/min、レスポンス:8 msec、データ間隔:0.2 nm、感度:100 mdeg、バンド幅:2 nm、積算回数:1、昇温速度:0.5 ℃/min, 検出波長: 288 nm。また、測定試料には、UVスペクトル測定、CDスペクトル測定で用いたテロメアDNAと同様の配列を用いた。
【0032】
(TRAPアッセイ)
試薬は、Intergen製 TRAPEZEテロメラーゼ活性検出キットを用いた。また、テロメラーゼは、TOYOBO製TeloChaser のポジティブコントロール(HeLa細胞のLysis solution処理上清<2.5×104cells/μl>))を用いた。
表1に調製サンプルの組成を示す。この調製サンプルにFNDを添加したものと、添加していないものとを用意した。添加後のFND最終濃度は、0.5 μM, 1.0 μM, 10 μMの三種類である。10×TRAP Reaction bufferの組成は、200 mM Tris-HCl(pH 8.5), 15 mM MgCl2, 630 mM KCl, 0.5% Tween 20, 10 mM EGTA、50×dNTP Mixの組成は各2.5 mM dATP, dTTP, dGTP, dCTP、TSプライマーは、0.2〜2.0 μMである。5 unit/μl TaqDNAポリメラーゼは、滅菌水で10倍希釈して用いた。テロメラーゼはLysis solutionで20倍に希釈して使用した。すべての操作の時にチューブは氷浴上に置いて操作を行った。
【0033】
【表1】


【0034】
表1に示す溶液をPCR用チューブに調製し、PCR装置にて20 ℃ で20分 インキュベートし伸長反応を起こさせた。反応終了後は、4℃で保持した。PCRチューブを氷浴に移し、TRAP Primer Mixを1 μl 添加し、よくピペッティングし、ミネラルオイルを一滴加えた。チューブをPCR装置に移しPCRを行った。94 ℃に昇温後、反応をスタートさせた[(94 ℃ 30s→50℃ 30s→ 72℃ 90s)×33サイクル]。反応終了後、Agilent バイオアナライザにてDNAチップ500を用いて反応を確認した。
【0035】
(QCM測定)
QCM測定は、AffinixQ(Initium Co., Japan)にて行った。水晶発振子は、AT-cutで、27 MHz(表面積4.9 mm2)のものを用いた。発振子は、ピランハ溶液で前処理を行い、その後ストレプトアビジンを修飾し、ストレプトアビジン修飾発振子を作製した。測定には、8 mlセルを用い測定の間は600 rpmで撹拌した。AcOK-AcOH 0.1 M(pH 5.6), KCl 0.1 M(25 ℃)で測定を行った。以下に示すビオチン修飾TSプライマーを50 pmol( 5 μMを10 μl)添加し、振動数が安定したのちに、0.5 mM FND水溶液を振動数変化がなくなるまで10 μlずつ添加した。
ビオチン修飾TSプライマー
B-TS; biotin-5'-AAT CCG TCG AGC AGA GTT
B-TS5; biotine-5'-AAT CCG TCG AGC AGA GTT AGG GTT AGG GTT AGG GTT AGG GTT AGG G
【0036】
(電気化学測定)
プライマー修飾電極は以下の手順により作製した。
一端面に導線を取り付けた直径6mmの金ディスクを、導線を引き出した状態でPEEK樹脂により全面封止し、その他端面を表面積2 mm2となるように金ディスクを露出させて電極面とし、測定用電極とした。次いで、電極面を6 μm, 1 μmのダイヤモンドスラリー、0.05 μmのアルミナスラリーで研磨した後、MilliQ水で洗浄した。その後、2 MのNaOH水溶液に浸し、1時間加熱撹拌した後、MilliQ水で洗浄した。その後、濃硝酸溶液に浸し、30分間撹拌した後MilliQ水で洗浄した。
【0037】
金電極上に固定するテロメアDNAには、テロメラーゼが金電極上のTSプライマーにアクセスしやすいようにTSプライマーと金電極の間にチミン10 merが存在する以下の配列を用いた。
HS-5'-TTTTTTTTTT AATCCGTCGAGCAGAGTTAGGG
このテロメアDNAを、公知の方法(例えば、Takenaka S, at al., Anal.Chem., 2000,1334, 2000)により、その末端をチオール化した。次いで、1 pmol/mlの、末端をチオール化したテロメアDNAを1 μ1、上記の前処理を行った金電極の表面に載せ、37 ℃で2時間インキュベートして、テロメアDNAを金電極上に固定してプライマー修飾電極を得た。その後、1 mM 6-メルカプトヘキサノール1 μ1を電極表面に載せ45 ℃で1時間インキュベートし、電極表面をマスキングした。
【0038】
電気化学測定には、ALS model 600electrochemical analyzerを用いた。サイクリックボルタモメトリ(CV)測定とディファレンシャルパルスボルタモメトリ(DPV)は、参照電極:Ag/AgCl、対極:Pt電極、作用極:金電極の三極系で行った。CVおよびDPV測定は、0.1 M AcOK-AcOH buffer (pH 5.6), 0.1 M KCl(支持電解質), 50 μM FNDを含む電解液中35℃で行った。
【0039】
プライマー修飾電極について、FND存在下、伸長反応後で電気化学測定を行った。まず、伸長反応前、0.1 M AcOK-AcOH buffer (pH 5.6), 0.1 M KCl, 50 ・M FNDの組成を有する電解液で測定を行った。測定終了後、電極をジェンガード水、2×SSC、70%エタノール水、ジェンガード水で洗浄する。次いで、伸長反応溶液を1.0 μl電極表面に載せ、20 ℃で一時間インキュベーションすることで伸長反応を行った。伸長反応溶液の組成を表2に示す。テロメラーゼは1250 cells/mlに希釈したものを用いた。伸長反応溶液の最終buffer組成は20 mM Tris-HCl (pH 8.5), 1.5 mM MgCl2, 63 mM KCl, 0.05% Tween 20, 1.0 mM EGTAである。伸長反応後に電極をジェンガード水にて洗浄し、電極を測定溶液に浸し45℃で15分インキュベーション後、室温まで放冷し測定を行った。
【0040】
【表2】


【0041】
(結果)
(1)UV測定による相互作用解析
ナフタレンジイミド誘導体は、384 nm に吸収極大を持つが、二本鎖DNAと相互作用すると大きな淡色効果と小さなレッドシフトを示すことが知られている。これは二本鎖DNAに色素がインターカレートしたときに示す特有の挙動である。図2に、カリウムウムイオン存在下(A)と非存在下(B)で、5.0 μM のFND溶液に2 μMのテロメアDNAを添加したときのUV測定の結果を示す。カリウムイオン存在下とカリウムイオン非存在下では、FND溶液にテロメアDNAを添加した時の淡色効果はそれぞれ54 %と40 %であり、カリウムイオンが存在した方がより大きな淡色効果を示すことがわかった。このことは、カリウムイオン存在下でテロメアDNAが四本鎖構造を形成している状態でも、インターカレータが四本鎖構造にも結合することを示していると考えられる。なお、カリウムイオンが存在せずテロメアDNAが一本鎖状態にある場合でも淡色効果を示すのは、今回用いたテロメアDNA配列は、5'-CATGGTGGTTTGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGGTTACCAC-3' であり、ヒトテロメアDNA配列である(TTAGGG)配列を4回繰り返し、末端に二本鎖領域を4 bp有しているためと考えられる。
【0042】
(2)CDスペクトルによる相互作用解析
CDスペクトルは、化合物の溶液中における構造、例えばDNAではA型、B型、Z型などの構造に関する情報を得ることができる。図3は、テロメアDNA溶液にFND溶液を添加したときのCDスペクトルであり、(A)は酢酸buffer, 0.1 M KCl 水溶液を用いて四本鎖構造を形成させた場合の結果を示し、(B)はMES bufferを用いた一本鎖状態の場合の結果を示す。(A)の結果から、カリウムイオン存在下では、295 nmで正の強いコットン効果、265 nmに小さなピーク、240 nmで負のコットン効果が確認できた。これは、四本鎖構造が形成されたことを示している。この溶液にFND溶液を添加したところ、275 nmに等楕円点を示し288 nmの正のコットン効果に変化がみられた。一方、カリウムイオンが存在しない場合、四本鎖構造に特有の288nmのピークは確認できず、さらにFNDを添加してもその構造変化は確認できなかった。すなわち、CD測定の結果は、FNDはテロメア一本鎖とは相互作用しないのに対し、四本鎖構造とは相互作用することを示している。
【0043】
(3)結合比の算出
前述のように、テロメアDNA溶液にFND溶液を添加したところ、288 nmの正のコットン効果に変化が認められた。FND単独では288 nmでCDは示さないことから、この288 nmの正のコットン効果の変化は四本鎖構造の構造変化によるものである。そこで、添加したFND濃度に対する288 nmでの楕円率の変化をプロットした結果を図4に示す。これより、溶液中のテロメアDNA 1.46 μMに対し、FND 5.0 μMが結合して複合体を形成していると考えられる。これは、四本鎖構造を有するテロメアDNA1分子に対しおよそ3分子のFNDが結合していることを示している。従来の縫い込み型インターカレータの四本鎖構造への結合比はほとんど1:1であることを考慮すると、FNDは従来の縫い込み型インターカレータに比べ、四本鎖構造をより安定化する効果を有する。
【0044】
また、QCM測定からも結合比の算出を行った。図5に、B-TS(破線)とB-TS5(実線)を添加したときの振動数変化を示す。B-TSを添加したときの振動数変化は、152 Hzであり、これは0.77 pmolのB-TSが金表面に吸着したことを示している。しかし、FNDを添加しても、有意の振動数減少は確認できなかった、したがって、一本鎖にはFNDが吸着しないと考えられる。一方、TTAGGGを5回繰り返すB-TS5を同様に添加したところ、322 Hzの振動数変化が確認でき、0.65 pmolのB-TS5が発振子上に吸着していることがわかった。そこで、0.5 mM FNDを振動数変化がなくなるまで10 μlずつ添加したところ、62 Hzの振動数変化が確認できた。これは、2.3 pmolのFNDが発振子上に吸着したことを示している。そうすると、テロメア配列が四本鎖構造を一巻き形成しているとすれば、その四本鎖構造に対して約3.5分子のFNDが吸着していることになり、これはCDスペクトルより算出した結合比と概ね一致した。
【0045】
(4)Tm測定結果
CDによるTm測定では、288 nmでの楕円率の温度による変化を測定した。その結果を図6に示す。Normalized[θ]が0.5となる温度がTmである。テロメアDNAに対して、FNDを1当量又は3当量添加した。1当量添加すると約15℃、3当量添加すると約30℃のTmが上昇し、FNDの添加量とともに、テロメアDNAの四本鎖構造が安定化されることがわかった。また、比較のため、従来の標識色素であるtelomerase Inhibitor IをテロメアDNAに対して当量添加した時の結果も図6に示した。FNDを3当量添加した場合、上記の従来の標識色素のいずれよりも高い安定性を示した。
【0046】
(5)電気化学測定結果
電極上でテロメラーゼDNAの伸長反応を行った。結果を図7に示す。テロメラーゼ 100 cells/μl 15 μlを電極上に添加し伸長反応を行ったときでは、伸長反応後(実線)は、伸長反応前(破線)と比べ約75 %の電流値の増加が確認できた。この電流値の増加は、伸長産物に結合したFNDによるものである。
【0047】
次に、伸長反応溶液中のテロメラーゼ濃度(コピー細胞数)を変化させ、コピー細胞数と、伸長反応後の電流増加率との関係を測定した。具体的には、まず伸長反応前のプライマー修飾電極について電気化学測定を行い、得られた電流値をi0とした。そして伸長反応後のプライマー修飾電極について再度電気化学測定を行い、その電流値をiとした。以下の式で示される電流増加率Δiを算出した。

Δi = ( i i0 ) / i0 × 100

図8に示すように、細胞数がおおよそ60〜130 cells/μl の範囲で、電流増加率が直線的に変化した。これは、プライマー修飾電極を用いることにより、テロメラーゼ活性が測定可能なことを示している。
【0048】
(テロメラーゼ伸長反応に及ぼすFNDの影響)
本発明の方法では、プライマー修飾電極をインターカレータ、例えばFND存在下、伸長反応の前と後で、電気化学測定を行う。そのため、FNDの存在がテロメラーゼの伸長反応に関与しないかどうかをAgilent バイオアナライザにてTRAPアッセイにより調べた。用いたテロメラーゼはTOYOBOのテロメラーゼで、TRAPアッセイサンプル中の細胞濃度は58.5 cells/μlである。サンプル中に、FNDが0 μM, 0.5 μM, 1.0 μM, 10 μMという濃度で存在するときのTRAPアッセイの結果を図5-14示す。図9(A)では、FND非存在下では、6 bp毎のピークが明確に確認できるが、FND存在下では伸長反応を示すピークが確認できなかった。FNDがテロメアDNAの四本鎖構造に結合して、テロメラーゼの伸長反応を防いだ可能性と、PCR反応の阻害剤となり、PCRが起こらなかった可能性とが考えられる。しかし、図9(B)に示すゲル電気泳動図では、すべてのサンプルで36 bpのインターナルコントロールのバンドが確認できた。このことは、TRAPアッセイにおけるPCR反応が阻害されることなく行われたことを示している。したがって、FNDはテロメラーゼの伸長反応を阻害する「テロメラーゼ阻害剤」として機能することがわかった。また、これより、伸長反応時にFNDが存在すると、伸長反応が起きない可能性があるため、伸長反応時にFNDが存在しないよう、予め、プライマー修飾電極を洗浄してFNDを除去しておく必要があることを示している。
【0049】
以上説明したように、本発明の検出方法によれば、電気化学的手法を用いてテロメラーゼ活性の測定を行うことができる。すなわち、電極上に固定されたTSプライマーは電極上でテロメラーゼにより伸長反応を行い、生成した伸長産物は、電解液中で四本鎖構造を形成し、その四本鎖構造に電気化学活性基を有するインターカレータが結合する。したがって、四本鎖構造に結合したインターカレータからの酸化又は還元電流を測定することにより、テロメラーゼの活性の有無そしてその強度を迅速に検出することができる。また、四本鎖構造に結合するというインターカレータの特性を利用し、四本鎖構造を形成させる化合物のテロメラーゼ阻害能のスクリーニング方法として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る検出方法の原理を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施例における、FND溶液をテロメアDNA溶液に添加した時のUVスペクトルの変化を示す図であり、(A)はカリウムイオンが存在する場合、(B)はカリウムイオンが存在しない場合の結果を示す。
【図3】本発明の一実施例における、FND溶液をテロメアDNA溶液に添加した時のCDスペクトルの変化を示す図であり、(A)はカリウムイオンが存在する場合、(B)はカリウムイオンが存在しない場合の結果を示す。
【図4】本発明の一実施例における、FND濃度とCD測定における288nmの楕円率との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施例における、FNDの添加に伴うQCM測定の振動数変化を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施例における、テロメアDNAのTm曲線を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施例における、テロメラーゼ伸長反応前後のFNDのディファレンシャルパルスボルタモグラムである。
【図8】本発明の一実施例における、テロメラーゼ濃度と電流増加率との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施例における、TRAPアッセイの結果を示す写真(A)と、電気泳動図(B)である。
【出願人】 【識別番号】505062570
【氏名又は名称】大塚 圭一
【識別番号】596057011
【氏名又は名称】竹中 繁織
【出願日】 平成17年2月18日(2005.2.18)
【代理人】 【識別番号】100086405
【弁理士】
【氏名又は名称】河宮 治

【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫

【公開番号】 特開2006−223218(P2006−223218A)
【公開日】 平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願番号】 特願2005−42552(P2005−42552)