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大腸菌を利用するシリカ微粒子の製造方法 - 特開2006−197825 | j-tokkyo
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【発明の名称】 大腸菌を利用するシリカ微粒子の製造方法
【発明者】 【氏名】天田 啓

【要約】 【課題】珪藻のバイオミネラリゼーションを基礎とし、簡便で低コストにシリカ微粒子を得る技術を提供する。

【解決手段】発現すべきペプチドをコードする遺伝子として下記の塩基配列(配列番号1)とその相補的配列を含む発現ベクターで形質転換された大腸菌を、ケイ酸含有培地を用いて培養する工程を含むシリカ微粒子の製造方法。好ましいケイ酸含有培地として、テトラメトキシシランと希塩酸を添加して調製したもの、または、珪藻の生存している水を利用して調製したものを用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発現すべきペプチドをコードする遺伝子として下記の塩基配列(配列番号1)とその相補的配列を含む発現ベクターで形質転換された大腸菌を、ケイ酸含有培地を用いて培養する工程を含むことを特徴とするシリカ微粒子の製造方法。
【数1】


【請求項2】
ケイ酸含有培地として、テトラメトキシシランと希塩酸を添加して調製したものを用いることを特徴とする請求項1に記載のシリカ微粒子の製造方法。
【請求項3】
ケイ酸含有培地として、珪藻の生存している水を利用して調製したものを用いることを特徴とするシリカ微粒子の製造方法。
【請求項4】
配列番号1から成る塩基配列とその相補的配列を含む発現ベクターで形質転換された大腸菌。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオミネラリゼーションの応用分野に属し、特に、遺伝子工学の手法を用いてシリカ微粒子を製造する新規な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生物は微細加工を施した様々な鉱物の構造体を作ることができ、この作用はバイオミネラリゼーションと呼ばれている。
例えば、自然界に広汎且つ多量に分布している藻類である珪藻は、その細胞表面がシリカで覆われているが、これは数種類のタンパク質(ポリペプチド)が協調して作用することによりシリカを析出させるためであることがわかっている。そのようなポリペプチドの一種シラフィン(silaffin)はカチオン性のアミノ酸を多く含み、珪素アニオンの濃縮とシリカの析出を促進していると考えられている。例えば、シラフィン1A(sil1A)は、高度にリン酸化などで修飾されたポリペプチドであり、弱酸性下でケイ酸からナノスケールのシリカ微粒子(ナノシリカ球)を作ることが知られている〔例えば、N. Kroeger他、J. Biol.
Chem., 276, 26066-26070 (2001):非特許文献1〕。
【0003】
シラフィン1Aについては、化学合成された無修飾のR5ペプチドと呼ばれるシラフィン1Aの部分ペプチドは、ケイ酸と混合されると中性pH下に室温で数分以内にシリカ微粒子を生成することが知られている〔例えば、N. Kroeger他、Science, 286,
1129-1132 (1999):非特許文献2〕。さらに、R5ペプチドを用いれば、弱塩基性下でも翻訳後修飾を必要とすることなくシリカ微粒子の生成が可能であることも報告されている〔N. Kroeger他、Scinece, 298,
584-586 (2002):非特許文献3〕。
【0004】
そこで、如上の現象を利用してシリカ微粒子を製造することが試みられているが、現在までにシラフィンで行なわれている手法は、培養珪素から精製されたシラフィンタンパク質、あるいは化学合成されたシラフィン1Aポリペプチドを用いているものしかない。珪藻からの精製はシラフィンタンパク質がシリカ表面に結合しているなど非常に特殊な性質を有しているため、非常に煩雑な工程を必要とし、さらに、珪藻の培養が難しい場合が多い。また、化学合成では、スケールを大きくするなど大量生産の場合にコスト面などで非常に不利である。
【非特許文献1】N. Kroeger他、J. Biol. Chem., 276, 26066-26070 (2001)
【非特許文献2】N. Kroeger他、Science, 286, 1129-1132 (1999)
【非特許文献3】N. Kroeger他、Scinece, 298, 584-586 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、珪藻のバイオミネラリゼーションを基礎とし、簡便で低コストにシリカ微粒子(ナノスケールのシリカ粒子)を得ることのできる新しい技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、検討を重ねた結果、遺伝子工学的手法により前記R5ペプチドを大腸菌内に産生し得る発現系の構築に成功し、これをシリカ合成に利用することによって本発明を導き出したものである。
【0007】
かくして、本発明に従えば、発現すべきペプチドをコードする遺伝子として下記の塩基配列(配列番号1)とその相補的配列を含む発現ベクターで形質転換された大腸菌を、ケイ酸含有培地を用いて培養する工程を含むことを特徴とするシリカ微粒子の製造方法が提供される。
【0008】
【数1】


【0009】
本発明の好ましい態様に従えば、ケイ酸含有培地として、テトラメトキシシランと希塩酸を添加して調製したものを用いる。本発明の別の好ましい態様に従えば、ケイ酸含有培地として、珪藻の生存している水を利用して調製したものを用いる。
さらに、本発明は、別の観点として、前記の配列番号1から成る塩基配列とその相補的配列を含む発現ベクターで形質転換された大腸菌を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従えば、常法に従い比較的簡単に実施できる大腸菌の培養によってシリカ微粒子を製造することができる。シリカ微粒子の生成反応は、培養液(培地)にシリカの原料を入れておくことにより自動的に反応が進み、特に、本発明は、シリカ源として珪藻の生存している水(例えば、既存の池の水)を利用することもできる点において、コスト的にも非常に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
既述のR5ペプチドと呼ばれるシラフィン1Aの部分ペプチドは、配列(SSKKSGSYSGSKGSKRRIL:配列番号2)の19個のアミノ酸から構成されていることが知られている(例えば、非特許文献2)。本発明において用いられる発現ベクターに含まれる前記配列番号1で表される塩基配列は、R5ペプチドが大腸菌で特異的に発現できるように本発明者により設計されたものであり、珪藻自体のR5ペプチドの塩基配列(遺伝子配列)とは異なる。
【0012】
本発明のシリカ微粒子の製造方法を実施するには、発現すべきペプチド(R5ペプチド)をコードする遺伝子として配列番号1の塩基配列とその相補的配列を含む発現ベクターを構築し、その発現ベクターで形質転換された大腸菌をケイ酸含有培地を用いて培養する。ここで、発現ベクターの構築、形質転換、大腸菌の培養などの手法そのものは、以下に記述するように、当該分野において周知の操作と材料を適宜採用して行なえばよい。
【0013】
例えば、発現ベクターを構築するには、配列番号1の塩基配列とその相補的配列から成る二本鎖DNAを含むDNA断片をクローニングベクターで増幅した後、これを別のベクターに挿入して発現ベクターとする。
【0014】
原料となる二本鎖DNA断片を得るには、配列番号1の塩基配列を含むオリゴヌクレオチド、および配列番号1の塩基配列に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドをDNAシンセサイザーで合成すればよい。実際には、それぞれのオリゴヌクレオチドの全長を合成する必要はなく、2つのオリゴヌクレオチドの一部の相補的部分が重なるようにそれぞれのオリゴヌクレオチドの一部を合成した後、DNAポリメラーゼによる伸長反応に供すれば所望の二本鎖DNAが得られる。
【0015】
また、本発明において用いられるクローニングベクターとしては、(1)ベクターを保持する宿主細胞(大腸菌)と保持しない細胞とを識別する選択マーカーを有し、(2)目的のDNA断片を組み込むための制限酵素部位を有し、且つ、(3)宿主細胞(大腸菌)において自分自身を多数複製する能力を有するものであれば、特に制限なく各種のものが使用可能である。例えば、本発明において用いられるのに好適なクローニングベクターとして、Bluescript II KS(+)〔東洋紡(株)〕が挙げられる。このベクターは、βガラクトシダーゼ遺伝子中に多数の制限酵素部位を有するので、カラーセレクション(外来DNAの挿入の有無をコロニーの白色と青色で識別する)ができ、抗生物質耐性による選択も可能であることで知られている。
【0016】
本発明において発現ベクターの起源ベクターとなるベクターとしては、プロモーターとターミネーターを含む各種のベクターが使用可能であり、特に誘導型プロモーターを含むものが好ましい。この点から本発明において発現ベクターの起源ベクターとして特に好ましいのはpET系ベクター、例えば、pET30c(タカラバイオ(株))を挙げることができる。このベクターは、誘導剤IPTG(イソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトシド)の添加により目的のタンパク質(オリゴペプチド)を大量生産することができる。また、このベクターにおける外来遺伝子(DNA)を組み込むための制限酵素部位は、基本的にはBamHI/Hind IIIであり、一般にヒスチジンタグ融合体として目的のオリゴペプチドを発現させるが、Nde Iを利用すれば開始コドンからはじまる通常のオリゴペプチドとして発現させることもできる。
【0017】
本発明において使用されるのに好適な大腸菌の種類は、用いるベクターの種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、既述のBluescript II KS(+)を起源とするベクターの調製には、形質転換効率が高くカラーセレクションを行なえるDH5α〔東洋紡(株)〕を用いるのが好ましく、また、既述のpET30c由来のベクターで形質転換され所望のオリゴペプチド(R5ペプチド)を発現させるための好適な大腸菌としてはBL21(DE3)pLysS〔タカラバイオ(株)〕を挙げることができる。
【0018】
クローニングベクターおよび発現ベクターを調製するための大腸菌の培養も、当該技術分野で知られた手法に従って実施すればよい。一般的には、大腸菌の培養に多用されているLB培地であってベクター中の耐性遺伝子に応じた抗生物質が添加された寒天培地を用いて培養を行なう。
【0019】
本発明に従えば、以上のようにして調製された発現ベクターで形成された大腸菌をケイ酸含有培地を用いて培養することによってシリカ微粒子が得られる。ここで、培地としては液体培地が用いられ、大腸菌の培養に従来より用いられている各種の培地が適用可能であり、例えば、好適な培地として2×YT培地が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
さらに、本発明に従うシリカ微粒子の製造方法の特徴は、ケイ酸(珪酸)が含有されている培地を用いて培養を行なう工程を含むことにある。このための手段は2つに大別される。第1の手段は、あらかじめシラン(silanes)と希塩酸を混合しケイ酸を調製し、液体培地にその混合液(ケイ酸)を添加することにある。ここで、シランとは水素化ケイ素およびその誘導体を意味し、例えば、本発明において用いられるのに好ましいシランとしてテトラメトキシシランが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0021】
本発明の方法において培地中にケイ酸を含有されているようにする第2の手段は、液体培地を調製するための水として、珪藻の生存している水を使用することである。すなわち、珪藻の生存している水(例えば、池の水)の上澄み液を使って抗生物質を含む培地(例えば2×YT培地)を調製する。
【0022】
本発明の方法によって得られるシリカ微粒子は、一般に、100nm〜10μmの範囲にある球状粒子であることが電子顕微鏡による観察等により確認されている。
本発明の特徴を更に具体的に示すため以下に実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【実施例1】
【0023】
発現ベクターの構築
図1に従って発現ベクターを構築した。
DNAシンセサイザーで合成した2本のオリゴヌクレオチド(図1のオリゴヌクレオチド1および2)10μgずつを混合し、90℃に加熱した。更に40分かけて50℃まで冷却することによって、それらのオリゴヌクレオチドをアニーリング(相補する配列を結合させること)した。
次に、Blunting Kit〔タカラバイオ(株)〕を用いてDNAポリメラーゼによる伸長反応に供して、配列番号1の塩基配列とその相補的配列から成る二本鎖DNAを合成した。この二本鎖DNAをBluescript II KS(+)〔東洋紡(株)〕のEcoR Vサイト導入して、得られたプラスミド(クローニングベクター)をpBS−sil 1Aとした。
通常のクローニング法で一増幅した後、カラーセレクションにより所望のプラスミドベクターpBs−sil 1Aを得た。
次に、制限酵素BamH IとHind III〔タカラバイオ(株)〕を用いて、pBS−sil 1Aを消化し、アガロース電気泳動後、生じたDNA断片をゲルから回収した。回収したDNA断片を発現ベクターpET30c〔タカラバイオ(株)〕のBamH
IとHind III断片と結合し、得られたプラスミドを用いて、大腸菌DH5α〔東洋紡(株)〕を形質転換した。
形質転換された大腸菌からプラスミドをアルカリ法により精製して、発現ベクターが構築できたかを制限酵素処理およびPCR後、電気泳動にて確認した。すなわち、具体的には、約100bpのDNA断片を確認することにより、所望の発現ベクターが構築されているかを確認して、得られた発現ベクターをpET30c−sil 1Aとした。
【実施例2】
【0024】
シリカ微粒子の生成
実施例1で調製した発現ベクターpET30c−sil 1Aを用いて大腸菌BL21(DE3)pLysS〔タカラバイオ(株)〕を形質転換し、抗生物質(カナマイシン、クロラムフェニコール)を含むLB寒天培地上に現れたコロニーを、抗生物質(カナマイシン、クロラムフェニコール)を含む2×YT液体培地10mlで培養した。
一晩培養した培養液を1リットルの2×YT培地に植え継いだ。培養液の濁度が0.8程度になったら、IPTGを終濃度1mMになるように加え、さらに3時間半培養し続けた。培養停止15分前にテトラメトキシシランと希塩酸を使って調製した珪酸を加えたところ、約200nm〜1μmの直径のシリカ球が沈殿物として生成した。培養液を遠心分離機にかけ、菌体とシリカ球を回収した。
別の手法として、本発明者の勤務する大学の構内にあり珪藻の生存する天然の池の水を遠心分離した後の上澄みを使って、抗生物質(カナマイシン、クロラムフェニコール)を含む2XYT培地を調製し、上記の場合と同様に、発現ベクターpET30c−sil 1Aで形質転換された大腸菌BL21(DE3)pLysSを培養した(但し、培養停止直前のテトラメトキシシランと希塩酸の添加は行われない)。上記の場合と同様に、約200nm〜10μmのシリカ球の生成が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、電気・電子材料、光学材料、酵素固定化材料、各種バインダーもしくは充填材などとして広汎な用途が期待されるシリカ微粒子(ナノシリカ)の簡便で安価な製造技術に資するものとして、産業のいろいろな分野で利用展開され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明において用いられる発現ベクターの構築図である。
【出願人】 【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
【出願日】 平成17年1月19日(2005.1.19)
【代理人】 【識別番号】100087675
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 知

【公開番号】 特開2006−197825(P2006−197825A)
【公開日】 平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願番号】 特願2005−11019(P2005−11019)