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【発明の名称】 プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定化方法
【発明者】 【氏名】梶谷 香代子
【住所又は居所】福井県敦賀市東洋町10番24号 東洋紡績株式会社敦賀バイオ工場内
【課題】プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの保存安定性を向上させ酵素製品の長期保存を可能にする

【解決手段】次の(a)または(b)のうち少なくともいずれか一方を、安定化剤として添加する事を特徴とするプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定化方法。(a)L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質から選ばれる少なくとも1種、(b)有機酸および/または有機酸塩
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)または(b)のうち少なくともいずれか一方を、安定化剤として添加する事を特徴とするプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定化方法。
(a)L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質から選ばれる少なくとも1種
(b)有機酸および/または有機酸塩
【請求項2】
L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質、有機酸、有機酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む安定化されたプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ乾燥粉末組成物。
【請求項3】
L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質、有機酸、有機酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む安定化されたプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ液状組成物。
【請求項4】
L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質、有機酸、有機酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ水溶液を凍結乾燥することを特徴とする、安定化されたプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ凍結乾燥品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内のコリンエステラーゼは農薬・殺虫剤などの薬物に暴露した場合、活性が阻害されることが知られており、薬物中毒症の診断に有用なマーカーである。
【0003】
コリンエステラーゼを測定する方法は数種類知られているが、正確性、迅速性、経済性などの点で酵素法が優れており、特にp−ヒドロキシベンゾエート ヒドロキシラーゼ と プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ を使用した測定法が優れており、これら酵素の製造方法および酵素を用いた分析方法に関して多くの報告がある。
【0004】
上記のようにプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼはp−ヒドロキシベンゾエート ヒドロキシラーゼと共にコリンエステラーゼを測定する為に必要な酵素であるが、従来品は酵素製品粉末の安定性が悪く、乾燥状態で室温(25℃)保管した場合に2週間で初期活性の40%が失活し、乾燥状態で冷凍保存した場合でも一年間で20%程度失活する。
【0005】
酵素製品の安定性が不良である事は、派生する管理業務、分析業務が増える事を意味する。例えば、通常酵素製品粉末は冷凍保存されているが、使用時開封する場合、吸湿を避ける為に予め室温にまで製品温度を上昇させる必要がある。現在市販されているプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼはこの様な短時間の温度上昇によっても活性が低下してしまう事が知られており、酵素を分包した容器毎の温度履歴管理が必要になる。
【0006】
更に、酵素法で測定試薬を調製する際、添加すべき活性量は正確に秤量されなければならないが、活性変動が大きな酵素粉末を取り扱う場合、調合の都度、その時点の活性を測定し添加量を計算しなおさなければならない。酵素粉末の力価を正確に評価するためには、粉末の秤量・溶解、測定用試薬の調製を含め熟練した分析作業員でも半日が必要であり、作業負担が大きい。
【0007】
酵素の活性が低下していくことは、活性で評価される酵素製品の価値が低下するだけではなく、失活した酵素蛋白の析出による濁りの生成を招き、これを原料とした分析試薬の性能に致命的な欠陥を与える。
【0008】
このように酵素粉末の安定性の確保は重要な問題であるにも関らず、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの製品化条件について先行特許文献および非特許分析にも何ら記載が無く、酵素活性の安定化に関する技術情報は極めて乏しい状態であった。(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1及び2を参照。)
【特許文献1】特許2756800号
【特許文献2】特公平2−36237号
【特許文献3】特開昭60−153793号
【非特許文献1】衛生検査,vol.34,No.4,729−733,1985
【非特許文献2】Biochemistry,vol36,No.33,10052−10066,1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、安定化剤の選定によりプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの保存安定性を向上させ酵素製品の長期保存を可能にするとともに、活性変動により派生する管理業務・分析業務を低減させ、失活した酵素蛋白がコリンエステラーゼ測定試薬中で析出することによって生じる不具合を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ製品の安定性を向上させるために当該酵素の安定化剤となり得る物質を種々検討し、L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質、有機酸および/または有機酸塩にプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定化効果を有するものを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明は、以下のプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定化方法及び安定化された製品および/または組成物の製造方法に関する。すなわち、
項1.
次の(a)または(b)のうち少なくともいずれか一方を、安定化剤として添加する事を特徴とするプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定化方法。
(a)L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質から選ばれる少なくとも1種
(b)有機酸および/または有機酸塩
項2.
L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質、有機酸、有機酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む安定化されたプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ乾燥粉末組成物。
項3.
L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質、有機酸、有機酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む安定化されたプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ液状組成物。
項4.
L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質、有機酸、有機酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ水溶液を凍結乾燥することを特徴とする、安定化されたプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ凍結乾燥品の製造方法。
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において安定化の対象となるプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの由来は特に限定されない。例えば、シュードモナス属細菌由来の製品を使用することができる。
【0014】
本発明は、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定化に、次の(a)または(b)のうち少なくともいずれか一方を使用する。
(a)L−アミノ酸,L−イミノ酸、L−アミノ酸の誘導体、D−アミノ酸、D−イミノ酸、D−アミノ酸の誘導体、ベタイン類、オリゴペプチド、ポリペプチド、水溶性タンパク質から選ばれる少なくとも1種
(b)有機酸および/または有機酸塩
【0015】
α−アミノ酸は、α位の炭素が不斉炭素であるため対掌体が存在し光学活性を有する。これらはD体、L体として識別され、タンパク合成に利用されるのはL体のみである。天然物には19種類のL−アミノ酸と1種のL−イミノ酸が存在する。本発明ではD体とL体の混合比率を制限しない。両者の混合比は1対0から0対1まで任意である。当然、ラセミ体も安定化剤として使用可能である。
α位の炭素原子以外の炭素原子に側鎖が結合したβ−アミノ酸やγ−アミノ酸、また、ベタイン(四級アンモニウム塩)のようなアミノ酸の修飾体や誘導体、オルニチン、シトルリン、クレアチン、クレアチニン、ザルコシン(N−メチルグリシン)のようなアミノ酸代謝物も、本発明に利用出来る。
【0016】
オリゴペプチド・ポリペプチドは結合するアミノ酸の数により30個程度を境に便宜的に分類されているが、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質の何れも使用することが可能である。
【0017】
本発明で言うプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ組成物の形態は、乾燥粉末品、凍結乾燥品、懸濁液、溶液など形状を問わない。一般に、安定性の面からは乾燥品(とくに凍結乾燥品)が優れる。また、取扱いの面からは液状品(とくに溶液)が優れる。
また、別の面では、本発明の組成物は、例えば体外診断用医薬品向け酵素製剤や、コリンエステラーゼを測定するための体外診断用医薬品として製品化されうる。これらの製品形態としては、さらに必要なものを組み合わせてキット化したものであっても良い。
【0018】
本発明のプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼ組成物には、さらに必要によりその他の成分を含む場合がある。あるいは、必要によりその他の成分の含有量を制限する方が好ましい場合がある。
【0019】
本酵素を製品化する場合、種々の緩衝液を添加することができる。緩衝液の種類は特に限定されず、生化学の分野で一般的なものを使用する事が出来るが、酵素の安定pH域に緩衝能のある物が好ましい。例えば、リン酸カリウム塩(K−リン酸)、リン酸ナトリウム塩、トリス塩、酢酸、りんご酸、マレイン酸などの有機酸塩、PIPES,TES,MOPS,HEPES、BisTris,Bicine等の各種Good bufferを使用出来る。本発明者らの検討によれば、例えば、シュードモナス属由来のプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの場合、この酵素のpH安定域から製品化時の下限は好ましくは6.0、さらに好ましくは6.5、最も好ましくは7.0である。pH上限は好ましくは10.5、さらに好ましくは10.0、更に好ましくは9.5である。
【0020】
緩衝液濃度は希薄過ぎると緩衝能が弱いため、酵素溶液のpHが変動し易く好ましくない。逆に高濃度緩衝液を用いて凍結乾燥する場合、酵素液を凍結する過程でその一部が不凍液となり、製品中酵素の失活や、粉末形状および溶解性の不良を招くため、過度に高濃度な緩衝液の使用は避けるべきである。これらのことより緩衝液濃度の下限は5mM以上、好ましくは10mM以上である。緩衝液濃度の上限は1000mM以下、好ましくは800mM以下、更に好ましくは600mM以下である。
【0021】
また、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼは金属酵素なので、EDTA、o−Phenanthrolineなどの金属キレート剤や,亜硝酸塩等の還元剤を添加しない事が望ましい。一方、これらの金属キレート剤を防腐などの目的で添加したほうが好ましい場合もありうるが、そのような場合、添加濃度は酵素の安定性を損ねない程度に最低限に留める事が望ましい。
【0022】
本発明で用いる安定化剤の添加量は酵素に対して少なすぎると効果が無く、逆に多すぎても製品中の酵素蛋白が希釈されてしまい失活を招くことがある。安定化剤の添加量と酵素の添加量の比率が同じであっても、安定化効果は、さらに酵素蛋白質の濃度によっても変動する。一般的に、酵素濃度が高いと、必要な安定化剤の添加濃度の範囲は低下する傾向にあると考えられる。
【0023】
プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼを凍結乾燥品にする場合、酵素溶液の蛋白濃度は、希薄過ぎると凍結乾燥投入時の液量が大きくなり乾燥に長時間を要し、精製する氷の結晶も大きくなるため乾燥中の活性低下の原因になり得る。逆に蛋白濃度が高すぎると乾燥品化した場合に溶解に長時間要するようになるとともに、蛋白質が析出して濁質を生成し易くなる。濁質生成量が大きい場合活性回収率の低下を招く。
【0024】
本発明において、凍結乾燥品を製造する場合、乾燥酵素タンパク質の乾燥重量1に対して安定化剤の添加重量の下限は0.02、好ましくは0.05、更に好ましくは0.1である。添加重量の上限は50、好ましくは30、更に好ましくは10である。
ただし、発明の効果を引き出すには、酵素タンパクと安定化剤の濃度比が全てではない。凍結乾燥に供する溶液の酵素タンパク、安定化剤、緩衝液成分を含めた固形分濃度も考慮の対象とすべきで、固形分が凍結乾燥に適した濃度に設定されることが重要である。固形分濃度の下限は3mg/ml、好ましくは5mg/ml、更に好ましくは10mg/mlである。固形物濃度の上限は、350mg/ml、好ましくは250mg/ml、更に好ましくは150mg/mlである。
酵素タンパク質の濃度と添加すべき安定化剤の濃度、選定した安定化剤の溶解性等から、最適な濃度条件を設定することは酵素を製品化するにあたって当然である。
【0025】
液状品では、安定化剤の添加量下限は溶液の重量に対して好ましくは0.05%(w/w)、さらに好ましくは0.1%(w/w)、最も好ましくは1%(w/w)である。添加量上限は酵素蛋白重量に対して好ましくは20%(w/w)、さらに好ましくは10%(w/w)、最も好ましくは5%(w/w)である。
もちろん、物質によって水に対する溶解度が異なっているため、安定化剤として選定した物質の溶解度を考慮し、酵素の安定化効果の高い、適切なタンパク濃度と安定化剤濃度の組み合わせを選ぶ事が重要である。
【0026】
酵素は蛋白質であるため本質的に保存中に徐々に劣化変性し活性が低下していくものであり、製品の安定化は、初期活性の完全保持を意味しない。本発明で言う安定化は製品保存後の活性残存率が高いことを言い、具体的には、25℃で2週間保管した場合の活性残存率が70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上保持する事を言う。乾燥品の場合は、好ましくは、乾燥品中の酵素蛋白含量が25%(w/w)から75%(w/w)である製品を、乾燥条件下で保管した場合である。また、液状品の場合は、好ましくは、液中のプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの酵素蛋白含濃度が0.1mg/mlから100mg/mlである製品を、保管した場合である。
【0027】
本発明で用いる安定化剤としての上記の試薬類、あるいは、本発明に必要により添加される上記の試薬類は、いずれも市販されているものを使用することができる。
【0028】
この様な試薬として、アミノ酸には標準アミノ酸としてアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、セレノシステイン、バリン、トリプトファン、チロシン、及び非標準アミノ酸として、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、2−アミノブタン酸、2,4−ジアミノブタン酸、2−アミノヘキサン酸、6−アミノヘキサン酸、β−アラニン、2−アミノペンタン酸、2,3−ジアミノペンタン酸、2,3−ジアミノプロパン酸、2−アミノピメリン酸、シトルリン、システイン酸、2,4−ジアミノブタン酸、2,6−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロパン酸、4−カルボキシグルタミン酸、5−オキソプロリン(ピログルタミン酸)、ホモシステイン、ホモセリン、ホモセリンラクトン、5−ヒドロキシリシン、アロヒドロキシリシン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、アロイソロイシン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、サルコシン、アロトレオニン、チロキシンが挙げられ、グリシンを除くアミノ酸のL体またはD体、及びD体とL体の混合物が挙げられる。オリゴペプチドとしてグリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、グルタミルグリシン、グルタミルグルタミン酸、グリシルロイシン、グリシルプロリン、グリシルグリシルヒスチジン、ロイシルグリシルグリシンなどが、タンパクとしてBSA、カゼイン、オボアルブミン等が、有機酸としては、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酢酸、乳酸等が挙げられる。
【0029】
有機酸やある種のアミノ酸やオリゴペプチド、好適な例としてはグリシルグリシンが挙げられるが、それ自体が水溶液中で塩を形成した時に緩衝液となるものがある。この場合、例えばグリシルグリシン緩衝液に別の安定化剤を添加することなく、緩衝液そのものを安定化剤として使用することも可能である。
【0030】
酵素の安定化剤として使用するためには、一般に市販され容易に入手可能である事が望ましいが、やむを得ず市販品が得られない場合や、コスト削減などの事情により、種々の公知の手段により合成しても良い。
【実施例】
【0031】
以下実施例を挙げて発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【0032】
プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼはシュードモナス属細菌由来の製品(東洋紡績製)を使用した。
【0033】
プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの酵素活性は、プロトカテキュ酸を基質とし、その消失量を290nmの吸光度の変化で測定することにより測定した。具体的方法を以下に示す。
0.4mM、プロトカテキュ酸溶液、50mM、トリス酢酸緩衝液(pH7.5(25℃))を調製し、以下の測定のための原液とした。また、測定試料(酵素溶液)は、予め氷冷した50mM、トリス酢酸緩衝液(pH7.5(25℃))で1.0mg/ml以上溶解し、分析直前に同緩衝液で0.2〜0.8U/mlに希釈した。
各反応は、0.4mM、プロトカテキュ酸溶液を3.0ml取り、37℃で約5分間予備加温した後、測定試料(酵素溶液)0.05mlを添加し、混和後、37℃に制御された分光光度計で290nmの吸光度を3〜4分間記録し、その初期直線部分から1分間当たりの吸光度変化を求めた(ΔODtest)。盲検(blank)は酵素溶液の代わりに50mM、トリス酢酸緩衝液(pH7.5(25℃))を0.05ml加え上記同様に操作を行って1分間当りの吸光度変化量を求めた(ΔODblank)。
得られた吸光度変化量より下記計算式に基づきプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの酵素活性を算出した。なお上記条件下で1分間に1マイクロモルのプロトカテキュ酸を酸化する酵素量を1単位(1U)とする。
計算式
活性値(U/ml)={ΔOD/min(ΔODtest−ΔODblank)×3.05(ml)×希釈倍率}/{3.8×1.0(cm)×0.05(ml)}
3.05ml=反応混液液量
3.8=プロトカテキュ酸の上記測定条件下でのミリモル分子吸光係数
1.0cm=セルの光路長
0.05ml=酵素サンプル液量
【0034】
[実施例−1]
プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼを10mMのリン酸カリウム緩衝液 pH7.5で15mg−protein/mlの濃度に調製し、アミノ酸、アミノ酸誘導体、オリゴペプチド、水溶性蛋白質、有機酸塩をそれぞれ20mg/mlになるように添加溶解し、これを凍結乾燥により粉末化した。
得られた凍結乾燥粉末を乾燥条件下25℃で2週間保存し、初期活性を100%として活性残存率を求めた。結果を(表1)に示す。
【0035】
【表1】


【0036】
この結果から解る様に、アミノ酸、アミノ酸誘導体、オリゴペプチド、水溶性タンパク質、有機酸塩と共に凍結乾燥した場合、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定化効果がみられる。
安定化効果はL体アミノ酸あるいはD体アミノ酸のどちらかに偏っておらず、本発明ではどちらでも使用可能である事が明かである。
【0037】
[実施例−2]
プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼを10mMのリン酸カリウム緩衝液pH7.5で15mg−protein/mlになるように調製し、酵素蛋白当りのグリシンの添加濃度を0:1から20:1の範囲で変化させ、凍結乾燥により粉末化した。得られた凍結乾燥粉末を乾燥条件下25℃で2週間保存し、初期活性を100として活性残存率を求めた。結果を(表2)に示す。
【0038】
【表2】


【0039】
この結果より、グリシンは広い添加濃度範囲でプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼを安定化することが分る。上記条件で凍結乾燥した場合、添加範囲として、グリシン:蛋白の比率が0.2:1以上が好ましく、0.5:1から20:1である事がより好ましく、1.5:1から10:1である事が更に好ましい。
【0040】
[実施例−3]
プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼを20mMのリン酸カリウム緩衝液pH7.5で3.5mg−protein/mlから20mg−protein/mlになるようにそれぞれ調製し、グリシンを20mg/ml濃度に添加溶解して凍結乾燥粉末化した。得られた凍結乾燥粉末を乾燥条件下25℃で2週間保存し、初期活性を100として活性残存率を求めた。その結果を(表3)に示す。
【0041】
【表3】


【0042】
凍結乾燥時の酵素蛋白濃度が低い場合は活性低下し易いが、蛋白濃度が3.5mg/mlといった希薄な条件下においてもグリシンの安定化効果が示された。
【0043】
[実施例−4]
プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼを10mMから1000mMのリン酸カリウム緩衝液pH7.5でそれぞれ15mg−protein/mlになるように調製し、グリシンを20mg/ml濃度に添加溶解して凍結乾燥粉末化した。得られた凍結乾燥粉末を乾燥条件下25℃で2週間保存し、初期活性を100として活性残存率を求めた。その結果を(表4)に示す。
【0044】
【表4】


【0045】
この結果から解る様に、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの凍結乾燥粉末化時の緩衝液濃度は1000mMまで使用することが出来るが、製品粉末の溶解性を考慮すれば800mM以下が好ましく600mM以下の濃度が更に好ましい。
【0046】
[実施例−5]
プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼを、各種バッファーを用いて15mg−protein/mlになるように調製し、それぞれグリシンを20mg/mlになるように添加溶解して凍結乾燥粉末化した。得られた凍結乾燥粉末を乾燥条件下25℃で2週間保存し、初期活性を100として活性残存率を求めた。その結果を(表5)に示す。
【0047】
【表5】


【0048】
この結果から分るように、グリシンを安定化剤としたプロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの製品化において広い選択肢の中からbuffer種を選定して使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、プロトカテキュ酸ジオキシゲナーゼの安定性が向上することにより、臨床検査等における実用性が向上し、産業上多大の効果をもたらす。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜2丁目2番8号
【出願日】 平成16年10月6日(2004.10.6)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−101777(P2006−101777A)
【公開日】 平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願番号】 特願2004−293566(P2004−293566)