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【発明の名称】 コークス炉ガス歩留りの推定方法及びコークスの製造方法
【発明者】 【氏名】野村 誠治
【住所又は居所】富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技術開発本部内
【氏名】中川 朝之
【住所又は居所】富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技術開発本部内
【氏名】山口 幸一
【住所又は居所】大分市大字西ノ州1番地 新日本製鐵株式会社大分製鐵所内
【氏名】岡西 和也
【住所又は居所】室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式会社室蘭製鐵所内
【氏名】植木 誠
【住所又は居所】北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵株式会社八幡製鐵所内
【氏名】菅野 有博
【住所又は居所】東海市東海町5−3 新日本製鐵株式会社名古屋製鐵所内
【氏名】小泉 聡
【住所又は居所】室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式会社室蘭製鐵所内
【課題】非微粘結炭の配合比率が高い場合においても、コークス炉ガス歩留りを十分に高い精度で推定する方法を提供し、コークス炉ガス歩留りの目標と実績との差異を小さくすることのできるコークス製造方法を提供する。

【解決手段】石炭の揮発分VM(質量%、乾燥)と石炭の酸素含有量O(質量%、乾燥)に基づき、VM及びVM×Oの関数として、4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留りY(Nm3/t石炭)を推定することを特徴とするコークス炉ガス歩留りの推定方法である。Yを下記(1)式を用いて推定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭の揮発分VM(質量%、乾燥)と石炭の酸素含有量O(質量%、乾燥)に基づき、VM及びVM×Oの関数として、4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留りY(Nm3/t石炭)を推定することを特徴とするコークス炉ガス歩留りの推定方法。
【請求項2】
前記Yを下記(1)式を用いて推定することを特徴とする請求項1に記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法。
Y=A×VM−B×VM×O+C (1)
ここで、A、B、Cは定数であり、15≦A≦20、0.5≦B≦1.2、−90≦C≦50の範囲とする。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いてコークス炉ガス歩留りを推定し、該推定したコークス炉ガス歩留りが予め定めた目標コークス炉ガス歩留りとなるように、配合炭を構成する各単味炭の配合比を調整することを特徴とするコークスの製造方法。
【請求項4】
非微粘結炭の配合率が30%以上であることを特徴とする請求項3に記載のコークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、室炉式コークス炉における4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留りの推定方法及びその推定方法を用いたコークスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭を室炉式コークス炉に装入してコークスを製造する際に、コークス炉ガスが発生する。コークス炉が一貫製鉄所の構内あるいは隣接地に配置されているときには、コークス炉ガスは製鉄所のエネルギー源として重要な位置を占めている。従って、コークス炉ガスの発生量やカロリーが予定外に変動すると、製鉄所内のエネルギーバランスに大きな影響を及ぼすため、常に計画通りの発生量及びカロリーを達成することが要求される。ガス発生量やカロリーに変動が生じる場合においても、事前に変動が予知され、その計画的な変動に応じて製鉄所内のエネルギーバランスに対処を加えることが必要である。
【0003】
コークス炉に装入する石炭の銘柄毎にコークス炉ガスの発生量が異なるので、配合する各単味炭の特性に基づいてコークス炉ガス発生量を精度良く予測することが要求される。コークス炉ガスの発生量とガス中のカロリーとを総合する指標として、石炭トン当たりに発生するコークス炉ガス発生量であって、カロリー4800kcal/Nm3換算したコークス炉ガス発生量(Nm3/t石炭)を、ここではコークス炉ガス歩留りと呼んで用いることとする。
【0004】
従来、コークス炉ガス発生量を予測する際には、石炭の揮発分VM(質量%、乾燥)の関数として推定していた。VMが多い石炭ほど、コークスガス発生量が増加する関係式を用いていた。
【0005】
コークス製造用原料炭として安価な非微粘結炭を多量に使用することは、コークス製造コストの低減だけでなく、石炭資源選択自由度の拡大という観点からも極めて重要な課題である。そこで、例えばコークス炉用装入炭の事前乾燥プロセスを導入することにより、非微粘結炭の配合比率の向上が図られている。
【0006】
ところが、非微粘結炭を使用したときに、生成ガスの発熱量が予測値より低下する現象が見られた。このような非微粘結炭使用時の乾留生成物の生成率の推定方法として、特許文献1では、石炭の揮発分だけでなく、石炭が含有する酸素と炭素の原子数比(O/C)に基づいて推定する方法が開示されている。特許文献1に記載のものでは、コークス炉ガス発生量には言及されているものの、コークス炉ガスのカロリーについては考慮がなされていない。
【0007】
特許文献2においては、O/Cが0.12未満とそれ以上とでは発生ガス中の二酸化炭素生成量が異なるとし、O/Cが0.12未満とそれ以上のそれぞれについて、石炭の揮発分(VM)と酸素炭素の原子数比(O/C)とから4800kcal/Nm3換算ガス発生体積を推定することより、精度の良い推定が可能であることが示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平3−239794号公報
【特許文献2】特開平8−143867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非微粘結炭の配合比率が高くなるにつれ、特許文献2に記載の方法を用いた場合においても、コークス炉ガス歩留りの推定精度が十分に得られない場合が起きることがわかった。
【0010】
本発明は、非微粘結炭の配合比率が高い場合においても、コークス炉ガス歩留りを十分に高い精度で推定する方法を提供し、コークス炉ガス歩留りの目標と実績との差異を小さくすることのできるコークス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが種々の組成を有する石炭を用い、コークスの組成とコークス炉ガス歩留り実績との関係を調査したところ、コークス炉ガス歩留りは、VMとO/Cとによって推定するよりも、VMとVM×Oによって推定した方がより良好な推定精度が得られることがわかった。ここで、VMは石炭の揮発分(質量%、乾燥)、Oは石炭の酸素含有量(質量%、乾燥)である。
【0012】
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
[1]石炭の揮発分VM(質量%、乾燥)と石炭の酸素含有量O(質量%、乾燥)に基づき、VM及びVM×Oの関数として、4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留りY(Nm3/t石炭)を推定することを特徴とするコークス炉ガス歩留りの推定方法。
[2]前記Yを下記(1)式を用いて推定することを特徴とする上記[1]に記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法。
Y=A×VM−B×VM×O+C (1)
ここで、A、B、Cは定数であり、15≦A≦20、0.5≦B≦1.2、−90≦C≦50の範囲とする。
[3]上記[1]又は[2]に記載のコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いてコークス炉ガス歩留りを推定し、該推定したコークス炉ガス歩留りが予め定めた目標コークス炉ガス歩留りとなるように、配合炭を構成する各単味炭の配合比を調整することを特徴とするコークスの製造方法。
[4]非微粘結炭の配合率が30%以上であることを特徴とする上記[3]に記載のコークスの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、石炭の揮発分VM(質量%、乾燥)と石炭の酸素含有量O(質量%、乾燥)に基づき、VM及びVM×Oの関数として、4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留りY(Nm3/t石炭)を推定することにより、コークス炉ガス歩留りを十分に高い精度で推定することが可能となる。
【0014】
本発明はまた、上記コークス炉ガス歩留りの推定方法を用いたコークスの製造方法を採用することにより、推定したコークス炉ガス歩留りが予め定めた目標コークス炉ガス歩留りとなるように、配合炭を構成する各単味炭の配合比を調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
表1に示すような9種の石炭を用い、これら石炭を乾留したときに得られるコークス炉ガスの歩留りと石炭の組成との関係について調査した。石炭の乾留は試験乾留炉にて行い、精製したガスを捕集してガスの体積を測定するとともに組成を分析し、ガスの回収質量、ガスカロリー、ガス発生歩留り、4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留り(以下「換算ガス歩留り」ともいう。)を算出した。各石炭毎の回収ガス組成を表2に、ガスカロリー、ガス発生歩留り、換算ガス歩留りを表3に示す。なお、表1に示す石炭銘柄のうち、F,G,Hが非微粘結炭に該当する。
【0016】
【表1】


【0017】
【表2】


【0018】
【表3】


【0019】
図1にはVMと4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留りとの関係を示した。VMが高くなるほど換算ガス歩留りが高くなる傾向が示されているが、図中石炭銘柄F、Gについては、VMが高いにもかかわらず換算ガス歩留りが低い値となっていることがわかる。
【0020】
次に、図2にVMとガス組成の関係を、図3にVMとガスカロリーの関係を示す。図2から明らかなように、VMが高くなると、H2の割合が低下し、CH4、C26、CO、CO2の割合が増加する傾向にある。CO、CO2が増加するとガスカロリーは低下するが、CH4、C26の増加はガスカロリーを増加させる。結果としてVMが上がるとガスカロリーが増加する傾向となっている。しかしながら、図3に示すように、銘柄FとGは高VMにもかかわらずガスカロリーは低い。
【0021】
表1から明らかなように、石炭銘柄FとGは、銘柄Hに比較すると、VMは同程度であるが酸素含有率が高いという特徴がある。そして、図4に示すように、石炭中の酸素含有率が高いほど、発生ガス中のCO及びCO2比率が高くなることがわかる。以上より、石炭銘柄FとGとでガスカロリーが低い理由は、銘柄FとGの石炭中に含まれる酸素含有率が高いためと考えられる。
【0022】
そこで、特許文献1、2に記載のように、コークス炉ガスの換算ガス歩留りを、石炭の揮発分VM(質量%、乾燥)と石炭の酸素含有量O(質量%、乾燥)、炭素含有量C(質量%、乾燥)の値に基づいて算出することを試みた。ここでは以下の式を用いた。
Y=4.805×VM−567.4×O/C+230 (2)
【0023】
結果を図5に示す。図5の横軸は上記(2)式で計算した換算ガス歩留りであり、縦軸は実績の換算ガス歩留りである。図5から明らかなように、(2)式を用いて算出した換算ガス歩留りは、必ずしも実績換算ガス歩留りと良好な相関を得ることができないことがわかった。
【0024】
そこで、石炭の揮発分VMと酸素含有量Oが換算ガス歩留りに果たしている役割をより明確にするため、図6に示すように、VM当たりの換算ガス歩留り(換算ガス歩留り/VM)を縦軸に取り、酸素含有量Oとの関係を評価してみた。その結果、換算ガス歩留り/VMの値は、石炭中の酸素含有量Oと極めて良好な相関が存在することが明らかになった。
【0025】
以上の事実に基づき、VM(質量%、乾燥)とO(質量%、乾燥)から換算ガス歩留り(Nm3/t石炭)を推定するに当たり、VMとO/Cに基づいた推定式を構築するのではなく、VMとVM×Oに基づいた推定式を構築することとした。具体的には、
Y=A×VM−B×VM×O+C (1)
とし、(1)式のYの値が実績換算ガス歩留りと良好な相関を表すように、定数A、B、Cを最適化した。
【0026】
その結果、A=17.212、B=0.8275、C=0の値を用いることにより、好適な結果を得ることができた。図7において、横軸に上記(1)式で算出した換算ガス歩留り、縦軸に実績換算ガス歩留りをとって関係をプロットした。(2)式を用いた図5の場合の従来法と比較し、上記本発明方法によって極めて良好な相関が得られていることがわかる。
【0027】
VM(質量%、乾燥)とO(質量%、乾燥)から換算ガス歩留りY(Nm3/t石炭)を推定するに当たり、従来のようにVMとO/Cの関数としてYを求めるのではなく、VMとVM×Oの関数としてYを求めたときに良好な結果が得られた理由については、以下のように考えられる。
【0028】
即ち、Oが多い場合に換算ガス歩留りが低下する理由は、主にCO2含有量が高くなるためである。CO2含有量と結びつくのは、OとCの元素数比というよりも、VMとOの積、すなわち発生ガス量(VM)の中にどの程度Oが含まれるかと言うことを表すパラメーターであると思われる。
【0029】
(1)式を用いてYを算出するに際し、定数A、B、Cの具体的な数値としては、15≦A≦20、0.5≦B≦1.2、−90≦C≦50の範囲とすると好ましい結果を得ることができる。定数Aの値については、上限を超えると精度が低下するため、また下限を下回ると精度が低下するため好ましくない。定数Bの値については、上限を超えると精度が低下するため、また下限を下回ると精度が低下するため好ましくない。定数項であるCの値については、各作業所毎に発生するコークス炉ガスの処理方法や回収率が異なったり、また、コークス炉操業条件が異なったりするため、実績に応じて実測値に適した値となるよう各作業所毎に決定すればよい。
【0030】
以上の検討では単一石炭銘柄毎の石炭組成とコークス炉ガス歩留りの関係について述べてきたが、複数の石炭銘柄を配合してコークスを乾留するに際しても、同じ方法を用いることができる。即ち、コークス炉に装入する配合炭について、配合炭の平均組成としてのVMとOを算出し、この値を用いて本発明のコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いればよい。
【0031】
本発明のコークスの製造方法においては、上記本発明のコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いてコークス炉ガス歩留りを推定し、該推定したコークス炉ガス歩留りが予め定めた目標コークス炉ガス歩留りとなるように、配合炭を構成する各単味炭の配合比を調整することとすると好ましい。本発明のコークス炉ガス歩留りの推定方法を用いることにより、精度良くコークス炉ガス歩留り推定することができ、目標とするコークス炉ガス歩留りに近い実績コークス炉ガス歩留りが得られるからである。その結果、コークス炉ガスの換算ガス歩留りが予定外に変動することがなくなり、製鉄所内のエネルギーバランスを常に安定して保持することができるようになる。
【0032】
また、配合する石炭の銘柄の関係上、換算ガス歩留りにやむを得ず変動が生じる場合においても、本発明の推定方法を用いてコークスを製造することによって事前に変動が予知され、その計画的な変動に応じて製鉄所内のエネルギーバランスに対処を加えることが可能となる。
【0033】
本発明のコークスの製造方法において、非微粘結炭の配合率が30%以上であると特に優れた効果を発揮することができる。非微粘結炭の配合率が30%以上となると、従来のガス歩留り推定方法では精度良くガス歩留りを推定することができなかったのに対し、本発明を適用することによって推定精度を向上させることができ、特に顕著な効果を発揮することができるからである。
【実施例】
【0034】
A製鉄所のコークス工場における4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留り実績の推移を図8に示す。期間Aは本発明を実施する前、期間Bは本発明実施後である。本発明実施期間Bにおいては、コークス炉ガス歩留りの推定方法を用いてコークス炉ガス歩留りを推定し、該推定したコークス炉ガス歩留りが予め定めた目標コークス炉ガス歩留りとなるように、配合炭を構成する各単味炭の配合比を調整することとした。図8において、■は4800kcal/Nm3換算コークス炉ガス歩留り実績値を示し、□は期間Bにおける本発明に基づく推定値を示す。
【0035】
図8から明らかなように、期間Aにおいては、本発明のコークス炉ガス歩留りの推定方法を適用していないため、換算ガス歩留りは大きくばらつく結果となっている。一方、本発明のコークス炉ガス歩留りの推定方法を適用して各単味炭の配合比の調整を実施した期間Bでは、換算ガス歩留り目標値である300Nm3/tに近い値の実績を上げ、ばらつきを非常に小さくすることができた。このようにコークス炉ガスの発生歩留まりのばらつきが低減し、かつ推定目標通りのコークス炉ガス歩留まりを得ることができた結果、製鉄所内のエネルギー需給バランスに大きな影響を及ぼすことなく、エネルギー需給管理を計画通り順調に遂行することができるという効果を上げることができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】石炭の揮発分VMと実績換算ガス歩留りとの関係を示す図である。
【図2】石炭の揮発分VMとコークス炉ガス組成との関係を示す図である。
【図3】石炭の揮発分VMとガスカロリーとの関係を示す図である。
【図4】石炭の酸素含有量とガス組成との関係を示す図である。
【図5】従来の推定換算ガス歩留りと実績換算ガス歩留りとの関係を示す図である。
【図6】石炭の酸素含有量とVM当たり換算ガス歩留りとの関係を示す図である。
【図7】本発明の推定換算ガス歩留りと実績換算ガス歩留りとの関係を示す図である。
【図8】A製鉄所のコークス工場における実績換算ガス歩留りの推移を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
【出願日】 平成16年6月16日(2004.6.16)
【代理人】 【識別番号】100107892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 俊太

【識別番号】100105441
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 久喬

【公開番号】 特開2006−1994(P2006−1994A)
【公開日】 平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願番号】 特願2004−178126(P2004−178126)