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【発明の名称】 溶融成形可能なセルロースエステル組成物
【発明者】 【氏名】梅本 浩一
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区新在家1239 ダイセル化学工業株式会社内

【氏名】鈴木 晋介
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区新在家1239 ダイセル化学工業株式会社内

【氏名】今西 慎一郎
【住所又は居所】兵庫県姫路市網干区新在家1239 ダイセル化学工業株式会社内

【要約】 【課題】溶融成形可能であって、可塑剤のブリードアウトがなく、変形に対する安定性(又は寸法安定性)に優れたセルロースエステル組成物及びその成形体を提供する。

【解決手段】前記組成物を構成する可塑剤を、(i)ラクチド類、(ii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体であって、重量平均分子量950以下の多量体、および(iii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体の誘導体であって、重量平均分子量950以下の誘導体から選択された少なくとも1種とする。前記セルロースエステル類と可塑剤との重量比は、前者/後者=99/1〜50/50程度であってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステル類と、このセルロースエステル類に対する可塑剤とで構成された組成物であって、前記可塑剤が、(i)ラクチド類、(ii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体であって、重量平均分子量950以下の多量体、および(iii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体の誘導体であって、重量平均分子量950以下の誘導体から選択された少なくとも1種である熱可塑性セルロースエステル組成物。
【請求項2】
可塑剤が、ラクチド、重量平均分子量900以下のポリラクチド又はその末端封鎖物、および重量平均分子量900以下のポリα−ヒドロキシ酸又はその末端封鎖物から選択された少なくとも1種で構成されている請求項1記載のセルロースエステル組成物。
【請求項3】
セルロースエステル類が、炭素数2〜10である脂肪酸のセルロースエステルで構成されている請求項1又は2に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項4】
セルロースエステル類が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートのうち少なくとも1種で構成されている請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースエステル組成物。
【請求項5】
セルロースエステル類が、酢化度40.03〜62.55のセルロースアセテートである請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースエステル組成物。
【請求項6】
セルロースエステル類が、炭素数2〜10である脂肪酸のセルロースエステルの残存水酸基に脂肪族化合物がグラフトしたグラフト化物であって、グラフト鎖の重量平均分子量が3000以下のグラフト化物である請求項1又は2に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項7】
セルロースエステル類が、セルロースアセテートの残存水酸基に脂肪族化合物がグラフトしたグラフト化物であることを特徴とする請求項6に記載のセルロースエステル組成物。
【請求項8】
セルロースエステル類と、可塑剤との重量比が、前者/後者=99/1〜50/50であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のセルロースエステル組成物。
【請求項9】
黄色度(YI値)が30以下、全光線透過率が85以上である請求項1〜8のいずれかに記載のセルロースエステル組成物。
【請求項10】
セルロースエステル類と、(i)ラクチド類、(ii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体であって、重量平均分子量950以下の多量体、および(iii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体の誘導体であって、重量平均分子量950以下の誘導体から選択された少なくとも1種の可塑剤とを混合し、請求項1に記載のセルロースエステル組成物を製造する方法。
【請求項11】
セルロースエステル類に、このセルロースエステル類に対する可塑剤として、(i)ラクチド類、(ii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体であって、重量平均分子量950以下の多量体、および(iii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体の誘導体であって、重量平均分子量950以下の誘導体から選択された少なくとも1種の可塑剤を混合し、得られた混合物又は組成物からの前記可塑剤のブリードアウトを抑制しつつ、セルロースエステル類を可塑化する方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載のセルロースエステル組成物で形成された成形体。
【請求項13】
シート、フィルム、または容器である請求項12に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融成形可能なセルロースエステル組成物、その製造方法、および前記組成物で形成された成形体(又は成形品)に関する。詳しくは、可塑剤をブリードアウトさせることがなく、物性バランスが良好な溶融成形可能なセルロースエステル組成物に関する。また、本発明は、機械的強度や色相・透明性に優れた溶融成形可能なセルロースエステル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは現在、我々の日常生活において非常に多種多様な用途に使用されている。このようなプラスチックの大量消費により、家庭や工場から廃棄されるプラスチックの量も急増している。これまで使用されてきているポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン等汎用プラスチックは、環境中に廃棄されると分解することなく残留し、環境を汚染する。また、これら汎用プラスチックは原料が石油由来であり、原料である原油は外国からの輸入に依存せざるを得ない、という不安定な要素がある。これらを解消するためには、国内資源から得られる再生可能な素材で、新たに汎用プラスチックの代替となるものを開発することが望まれる。
【0003】
かかる汎用プラスチックの代替として、生物由来のプラスチックの開発が進んでいる。このうち、セルロースエステルは木材やパルプが原料であり、国内資源から得られるものである。また、生分解性を有している場合も多く、環境負荷が小さい。更に、透明性や熱的・機械的強度に優れ、性能的にも従来の汎用プラスチックの代替となるに充分であるといえる。このように、セルロースエステルを汎用樹脂の代替とできれば、現在我々の日常生活の便利さを損なうことなく、持続可能な社会に貢献し、さらには、地球環境への負荷を大きく減らすことができると期待される。
【0004】
しかし、セルロースエステルは加熱して温度を上げても溶融せず、分解してしまう。また、溶解させることのできる溶剤も非常に少なく、いわゆるソルベントキャスト法のような加工もできない。つまり、セルロースエステルをそのまま現在の汎用プラスチックのような成型材料として使用することは困難であり、汎用プラスチックの代替とするためには、溶融成形可能とすることが必要である。
【0005】
これまで、セルロースエステルを溶融成形可能とするために、セルロースエステルに樹脂をグラフトさせて可塑化する内部可塑化や、可塑剤を加えて可塑化する外部可塑化等、様々な可塑化の手法が開発されてきた。例えば、内部可塑化手法については、ラクタイドとセルロースエステルとをエステル化触媒の存在下に開環グラフト重合させ、透明性と成形性とを有するグラフト共重合体を得る手法が開示されている(特許文献1)。しかし、加えるラクタイドの量が多いため、グラフト共重合体はラクタイドの性質が強く発現してしまい、成形品は脆いという欠点がある。また、触媒を加えて加熱している影響で、グラフト共重合体の着色が著しく、商品価値は低くなってしまう。
【0006】
一方、外部可塑化においては、可塑剤として一般的にはフタル酸エステル類等が多く使用される。かかるフタル酸エステル類は、ブリードアウトして成形品の変形を生じやすいため、その使用は好ましいものではない。フタル酸エステル類以外にも、例えばポリ乳酸を可塑剤として使用している例もあり(特許文献2)、重量平均分子量が1000〜20000のポリ乳酸を10〜50重量%セルロースエステルに加えることによりセルロースエステルを可塑化している。しかし、このように大きな分子量のポリ乳酸をセルロースエステルに加えると、成形品からのポリ乳酸のブリードアウトおよびそれに伴う成形品の変形や、セルロースエステルとポリ乳酸とが非相溶であるため、相分離が起こったり、さらには、セルロースエステルの透明性が損なわれる等という問題が発生し得る。
【0007】
この他、乳酸のオリゴマーやポリ乳酸を可塑剤として用いた例もあるが(特許文献3)、この中にセルロースエステルに関する記載やラクチドのオリゴマーに関する記載はなく、また、その示唆もされていない。
【特許文献1】特開平6−287279号公報
【特許文献2】特開2003−82160号公報
【特許文献3】特許第3290496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、可塑剤をブリードアウトさせることなく溶融成形可能なセルロースエステル組成物、その製造方法及び前記組成物で形成された成形体を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、溶融成形可能で、変形に対する安定性(又は寸法安定性)に優れた成形体を得るのに有用なセルローエステル組成物、その製造方法及び前記組成物で形成された成形体を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、可塑剤のブリードアウトがなく、種々の物性(機械的強度、耐衝撃性などの機械的特性)のバランスに優れたセルロースエステル樹脂組成物、その製造方法及び前記組成物で形成された成形体を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、簡便に溶融成形可能とすることができ、かつ生分解性を有し、機械的強度、色相や透明性に優れるセルロースエステル組成物、その製造方法及び前記組成物で形成された成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、セルロースエステルと、このセルロースエステルに対する特定の可塑剤とを組み合わせることにより、前記可塑剤自体をブリードアウトさせることなく、効率よくセルロースエステルを可塑化できること、また、ブリードアウトを抑制又は防止することにより成形品の変形安定性(寸法安定性)を向上できること、さらには、前記可塑剤を特定の割合とすることにより、セルロースエステルの優れた物性又は特性を損なうことなく有効に可塑化して溶融成形可能とできることを見出し、本発明に達した。
【0013】
すなわち、本発明は以下の1〜13に関する。
1.セルロースエステル類と、このセルロースエステル類に対する可塑剤とで構成された組成物であって、前記可塑剤が、(i)ラクチド類、(ii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体であって、重量平均分子量950以下の多量体、および(iii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体の誘導体であって、重量平均分子量950以下の誘導体から選択された少なくとも1種である熱可塑性セルロースエステル組成物。
2.可塑剤が、ラクチド、重量平均分子量900以下のポリラクチド又はその末端封鎖物、および重量平均分子量900以下のポリα−ヒドロキシ酸又はその末端封鎖物から選択された少なくとも1種で構成されている1に記載のセルロースエステル組成物。
3.セルロースエステル類が、炭素数2〜10である脂肪酸のセルロースエステルで構成されている1又は2に記載のセルロースエステル組成物。
4.セルロースエステル類が、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートのうち少なくとも1種で構成されている1〜3のいずれかに記載のセルロースエステル組成物。
5.セルロースエステル類が、酢化度40.03〜62.55のセルロースアセテートである1〜4のいずれかに記載のセルロースエステル組成物。
6.セルロースエステル類が、炭素数2〜10である脂肪酸のセルロースエステルの残存水酸基に脂肪族化合物がグラフトしたグラフト化物であって、グラフト鎖の重量平均分子量が3000以下のグラフト化物である1又は2に記載のセルロースエステル組成物。
7.セルロースエステル類が、セルロースアセテートの残存水酸基に脂肪族化合物がグラフトしたグラフト化物であることを特徴とする6に記載のセルロースエステル組成物。
8.セルロースエステル類と、可塑剤との重量比が、前者/後者=99/1〜50/50であることを特徴とする1〜7のいずれかに記載のセルロースエステル組成物。
9.黄色度(YI値)が30以下、全光線透過率が85以上である1〜8のいずれかに記載のセルロースエステル組成物。
10.セルロースエステル類と、(i)ラクチド類、(ii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体であって、重量平均分子量950以下の多量体、および(iii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体の誘導体であって、重量平均分子量950以下の誘導体から選択された少なくとも1種の可塑剤とを混合し、1に記載のセルロースエステル組成物を製造する方法
11.セルロースエステル類に、このセルロースエステル類に対する可塑剤として、(i)ラクチド類、(ii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体であって、重量平均分子量950以下の多量体、および(iii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体の誘導体であって、重量平均分子量950以下の誘導体から選択された少なくとも1種の可塑剤を混合し、得られた混合物又は組成物からの前記可塑剤のブリードアウトを抑制しつつ、セルロースエステル類を可塑化する方法。
12.1〜9のいずれかに記載のセルロースエステル組成物で形成された成形体。
13.シート、フィルム、または容器である12に記載の成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセルロースエステル組成物(及びその成形体)は、セルロースエステルと、このセルロースエステルに対する特定の可塑剤とを組み合わせるので、可塑剤をブリードアウトさせることなく溶融成形可能である。また、本発明のセルロースエステル組成物は、溶融成形可能で、可塑剤のブリードアウトを防止できるため、変形に対する安定性(又は寸法安定性)に優れた成形体を得るのに有用である。さらに、可塑剤の混合割合を調整することにより、可塑剤のブリードアウトがなく、セルロースエステルの種々の物性(機械的強度、耐衝撃性などの機械的特性)を損なうことなく、これらの特性のバランスに優れたセルロースエステル樹脂組成物及びその成形体を得ることができる。
【0015】
そして、本発明によると、特定の可塑剤を、セルロースエステルと混合するだけで、溶融成形可能なセルロースエステル組成物を簡便に得ることができる。更に、かかるセルロースエステル組成物は生分解性を有するのみならず、弾性率が高い等機械的強度に優れ、かつ着色もほとんどなく、透明性にも優れるものであり、従来使用されている汎用樹脂に代替しうるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明におけるセルロースエステル組成物は、セルロースエステル類と、このセルロースエステル類に対する特定の可塑剤とで少なくとも構成されている。
【0017】
前記セルロースエステル類としては、セルロースエステル、セルロースエステルのグラフト化物などが挙げられる。これらのセルロースエステル類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0018】
[セルロースエステル]
本発明におけるセルロースエステルとしては、例えば、セルロース有機酸エステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの炭素数2〜10程度の脂肪酸のセルロースエステル(又はセルロースC2−10脂肪酸エステル)、セルロースアセテートフタレートなどの炭素数2〜10程度の脂肪酸および芳香族カルボン酸のセルロース混酸エステル)、セルロース有機酸エステル・エーテル類(アセチルメチルセルロース、アセチルヒドロキシエチルセルロースなど)、セルロース有機酸・無機酸混合エステル(硝酸酢酸セルロースなど)などのセルロースアシレート、セルロース無機酸エステル(硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなど)、これらのセルロースエステル(特にセルロースアシレート)の誘導体(例えば、グラフト化物など)などを挙げることができる。
【0019】
この中でも入手しやすさやコストの面などから、セルロースC2−4アシレート、特にセルロースアセテートが望ましい。
【0020】
セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート)において、置換基(アシル基)の平均置換度は、例えば、1.5〜3.0の範囲から選択でき、通常2.7以下、好ましくは1.7〜2.7、さらに好ましくは1.8〜2.6(特に2〜2.5)程度であってもよい。生分解性の点からは、セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.7〜2.5、好ましくは1.8〜2.4、さらに好ましくは1.9〜2.3(特に2〜2.2)程度であってもよい。
【0021】
特に、セルロースアセテートの酢化度(平均酢化度)は、40.03〜62.55%のもの、つまりセルロースの繰り返し単位当たりのアセチル化度又は酢化度(平均アセチル化度)が1.5〜3.0のものが有用であるが、本発明では酢化度48.8〜61.5%、特に酢化度50.0〜60.0%のものが有用である。酢化度が62.55%より大きいと、可塑剤を溶融混練しても、ほとんど相溶せず、可塑化しなくなる虞がある。一方、酢化度が40.03%未満であるとセルロースアセテートとしての性質(例えば、流動性、透明性など)が現れなくなる虞がある。セルロースエステルの重合度は、フィルムや容器等の成形物として使用可能であれば特に制限されず、例えば、平均重合度80〜1000、好ましくは100〜500、さらに好ましくは120〜400程度であってもよい。
【0022】
[セルロースエステルのグラフト化物]
本発明におけるセルロースエステルのグラフト化物とは、前記セルロースエステルの残存水酸基にグラフト成分(例えば、脂肪族化合物)がグラフトしたものをいい、ここにいう脂肪族化合物とは、グリコール酸、乳酸やヒドロキシカプロン酸等のオキシカルボン酸やそのオリゴマー、ラクトン類(β−プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなど)やラクチド類(グリコリド、ラクチドなど)等の環状エステルやそのオリゴマー等が挙げられる。
【0023】
なお、このようなグラフト化物において、グラフト鎖の重合度は、比較的小さいのが好ましく、例えば、グラフト化物におけるグラフト鎖の重量平均分子量は、例えば、3000以下(例えば、100〜2000)、好ましくは1000以下(例えば、200〜950)、さらに好ましくは900以下(例えば、300〜800)程度であってもよい。また、グラフト鎖の平均重合度は、例えば、1〜50(例えば、2〜30)、好ましくは2〜20、さらに好ましくは3〜10程度であってもよい。なお、グラフト鎖の末端基(通常ヒドロキシル基)は、後述の保護基により保護されていてもよい。
【0024】
これらのセルロースエステル類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0025】
[可塑剤]
本発明の組成物では、前記セルロースエステル類に対する可塑剤として、(i)ラクチド類、(ii)ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体[ポリラクチド類(ラクチド類のオリゴマー)又はポリα−ヒドロキシ酸(α−ヒドロキシ酸のオリゴマー)]であって、重量平均分子量950以下の多量体(又はオリゴマー)、および(iii)前記多量体(すなわち、ラクチド類又はα−ヒドロキシ酸類の多量体)の誘導体であって、重量平均分子量950以下の誘導体から選択された少なくとも1種を使用する。
【0026】
本発明におけるラクチド類(i)としては、α−ヒドロキシ酸を2分子脱水して生じる環状ジエステル(α−ヒドロキシ酸の環状ジエステル)、例えば、L−ラクチド、D−ラクチド、D,L−ラクチド、グリコリドまたはこれらの混合物のいずれでもよい。好ましいラクチド類(i)には、ラクチド(L−ラクチド、D―ラクチド、又はこれらの混合物)が挙げられる。
【0027】
また、多量体(オリゴマー)(ii)又はその誘導体(iii)において、α−ヒドロキシ酸類(α−ヒドロキシ酸)としては、例えば、グリコール酸、乳酸(L−乳酸、D−乳酸)、α−ヒドロキシ酪酸(2−ヒドロキシ酪酸)などのα−ヒドロキシC2−10アルカンカルボン酸(好ましくはα−ヒドロキシC2−6アルカンカルボン酸、さらに好ましくはα−ヒドロキシC2−4アルカンカルボン酸)などが挙げられる。好ましいα−ヒドロキシ酸類には、乳酸(L−乳酸、D―乳酸、又はこれらの混合物)が含まれる。また、多量体(ii)又はその誘導体(iii)において、ラクチド類としては、前記ラクチド類(i)で例示のラクチド類(例えば、ラクチド)が挙げられる。
【0028】
また、多量体(ii)又はその誘導体(iii)において、具体的な多量体(オリゴマー)としては、例えば、L−ラクチド単独のオリゴマー(又はポリL−ラクチド)、D−ラクチド単独のオリゴマー(又はポリD−ラクチド)、D,L−ラクチド単独のオリゴマー、これらのラクチドが共重合したオリゴマー、L−乳酸単独のオリゴマー(又はポリL−乳酸)、D−乳酸単独のオリゴマー(又はポリD−乳酸)、これらの乳酸が共重合したオリゴマーなどが挙げられる。
【0029】
なお、前記多量体(オリゴマー)は、鎖状構造であってもよく、環状構造(例えば、末端のヒドロキシル基とカルボキシル基とがエステル結合した環状構造)を有していてもよい。
【0030】
また、前記多量体(オリゴマー)の重合度(重量平均重合度)は、例えば、α−ヒドロキシ酸単位(例えば、ラクチドでは乳酸単位)で、2〜13、好ましくは3〜11、さらに好ましくは4〜9程度であってもよい。例えば、前記多量体は、ラクチド単位で2〜6量体、乳酸単位で3〜13量体、好ましくは重量平均分子量800以下、ラクチド単位で2〜5量体、乳酸単位で3〜11量体の化合物であってもよい。重量平均分子量が1,000を超えるとセルロースエステルとの相溶性が悪くなり可塑化効果の低下、強度の低下、透明度の低下による外観不良などが起こるので好ましくない。
【0031】
前記可塑剤は、前記多量体が誘導体化された誘導体(iii)であってもよい。誘導体としては、前記多量体の末端(又は末端基)が修飾(又は封鎖又は保護)された修飾物(末端修飾物、末端封鎖物)などが挙げられる。すなわち、可塑剤(ラクチド類以外の可塑剤)の末端は、通常、ヒドロキシル基、カルボキシル基などの末端基(親水性末端基)である場合が多いため、このような可塑剤の末端(又は末端基)が、封鎖基(又は保護基又は修飾基)により封鎖(又は保護)されていてもよい。また、末端封鎖物は、可塑剤が分子内で縮合した(例えば、末端ヒドロキシル基と末端カルボキシル基とでエステル結合した)末端封鎖物であってもよい。なお、このような末端(親水性末端基)としては、重合末端(ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基)の他、開始剤由来の末端(例えば、開始剤としてポリオール類を用いた場合のヒドロキシル基末端など)などが挙げられる。
【0032】
保護基(又は封鎖基又は修飾基)としては、末端基の種類に応じて、例えば、ヒドロキシル基に対する保護基{例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−シクロヘキシル−2−プロピル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などの置換基(ハロゲン原子など)を有していてもよいC1−20アルキル基(好ましくはC1−14アルキル基、さらに好ましくはC1−10アルキル基)など]、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などの置換基を有していてもよいC−8シクロアルキル基)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ナフチル基などの置換基を有していてもよいC6−12アリール基、ベンジル基などのアラルキル基など)、架橋環式炭化水素基(デカリニル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基などの置換基を有していてもよい2乃至4架橋環式C6−30炭化水素基)などの炭化水素基;オキサシクロアルキル基(例えば、テトラヒドロフラニル基などの5〜8員オキサシクロアルキル基);アルコキシアルキル基(例えば、1−メトキシエチル基、1−エトキシプロピル基、1−メトキシ−イソプロピル基などのC1−6アルコキシ−C1−6アルキル基)などのアセタール系保護基;アルキルカルボニル基(アセチル、プロピオニルなどのC1−10アルキルカルボニル基、好ましくはC2−8アルキルカルボニル基、さらに好ましくはC2−6アルキルカルボニル基)、シクロアルキルカルボニル基(シクロヘキシルカルボニル基などのC5−8シクロアルキルカルボニル基)、アリールカルボニル基(ベンゾイル基などのC6−10アリール−カルボニル基など)などのアシル基(前記例示のアシル基など)など}、カルボキシル基に対する保護基[例えば、上記例示のヒドロキシル基に対する保護基(例えば、アルキル基などの炭化水素基など)など]が挙げられる。
【0033】
これらの保護基は、単独で又は2種以上組みあわせて、末端基を保護してもよい。
【0034】
前記可塑剤は、これらの保護基のうち、疎水性保護基(特に、アルキル基などの炭化水素基)で保護されているのが好ましい。例えば、前記可塑剤(又はその末端基)は、疎水性保護基によりエーテル化(特に、アルキルエーテル化)及び/又はエステル化(特に、アルキルエステル化)されているのが好ましい。疎水性保護基で保護することにより、前記組成物の吸湿性を低減することができ、組成物(又はその成形体)の変形を高いレベルで抑制又は防止できる。
【0035】
なお、可塑剤の末端が保護されている場合、末端の一部又は全部が保護されていてもよく、特に全部が保護されていてもよい。例えば、可塑剤の末端は、末端基(例えば、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基)全体に対して、平均20モル%以上(例えば、30〜100モル程度)、好ましくは40モル%以上(例えば、50〜95モル%程度)、さらに好ましくは60モル%以上(例えば、70〜90モル%程度)保護されていてもよい。
【0036】
多量体(ii)又はその誘導体(iii)の重量平均分子量は950以下(例えば、200〜940、好ましく250〜920程度)であればよく、例えば、900以下(例えば、300〜870程度)、好ましくは850以下(例えば、350〜830程度)、さらに好ましくは800以下(例えば、400〜780程度)、特に750以下(例えば、450〜730程度)、通常450〜800(例えば、500〜750)程度であってもよい。
【0037】
特に、前記誘導体(iii)の重量平均分子量は、例えば、400以上(例えば、450〜1000程度)、好ましくは500以上(例えば、550〜980程度)、さらに好ましくは600以上(例えば、650〜900程度)であってもよい。前記誘導体は、親水性末端基の保護により、前記多量体に比べて比較的低い融点又は軟化点を有している場合が多いため、上記のような範囲の重量平均分子量を有していると、前記組成物又はその成形体からのブリードアウトや、溶融混合時における揮発を効率よく防止又は抑制できる。
【0038】
尚、前記可塑剤の酸価については特に制限はないが、生成物の加水分解を抑制する必要がある場合は低酸価のものが好ましい。酸価は通常20以下(例えば、0〜15)、通常10以下(例えば、0.1〜8)、好ましくは5以下、さらに好ましくは1以下である。酸価が低ければ低いほど、溶融混練時の加水分解を抑制する事が出来る。
【0039】
なお、前記多量体(オリゴマー)は、慣用の方法、例えば、開始剤{水、アルコール類[例えば、アルカノール類(メタノールなどのC1−10アルカノール)などのモノオール類;ジオール類(例えば、1,4−ブタンジオールなどのC2−10アルカンジオールなど)、3官能以上のポリオール(例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)などのポリオール類]などの活性水素を有する化合物}を用いたラクチド類の開環重合反応、α−ヒドロキシ酸の脱水エステル化反応、ポリラクチド又はポリα−ヒドロキシ酸の解重合反応などにより製造できる。前記開環重合反応では、慣用の開環重合触媒、例えば、有機酸類、無機酸類、スズ化合物[例えば、有機スズ化合物又は有機酸スズ塩(ジブチルチンラウレートなど)、塩化スズ]、アルカリ金属、有機アルカリ金属化合物、有機アルミニウム化合物(アルキルアルミニウム塩など)、有機チタン化合物(テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネートなどのテトラアルコキシチタンなど)、有機ジルコニウム化合物などを用いてもよい。
【0040】
また、可塑剤の末端は、例えば、前記可塑剤(多量体又はオリゴマー)と前記保護基に対応する化合物(又は保護剤、例えば、金属アルコキシド、アシル化剤など)とを反応させることにより保護できる。
【0041】
なお、前記可塑剤は、ラクチド類(i)および特定の重量平均分子量を有する多量体又はその誘導体(ii)で構成されていればよく、通常、実質的に重量平均分子量950を越えるポリラクチド(又はポリα−ヒドロキシ酸)を含まない。例えば、本発明の組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析したとき、ポリラクチド(又はポリα−ヒドロキシ酸)由来のピークであって、重量平均分子量950を越えるピークを実質的に有しない。このような高分子量のポリラクチド(又はポリα−ヒドロキシ酸)は、前記のように、セルロースエステル類の可塑化効果を低下させるだけでなく、セルロースエステルに対する相溶性が低い。
【0042】
上記セルロースエステル類と、可塑剤との代表的な組合わせとしては、入手しやすさや製造の容易さの点から、セルロースアセテートとL−ラクチドとの組み合わせ、セルロースアセテートと重量平均分子量950以下のL−ラクチドのオリゴマー又はその末端封鎖物との組み合わせもしくは重量平均分子量950以下のL−乳酸オリゴマー又はその末端封鎖物との組み合わせなどの組み合わせが特に好ましい。
【0043】
なお、耐湿性などの観点からは、末端封鎖物を用いるのが好ましい。
【0044】
上記セルロースエステル類と可塑剤との割合(重量比)は、前者/後者=99.5〜35/65(例えば、99/1〜45/55、好ましくは99/1〜50/50程度)の範囲から選択できるが、通常、97/3〜55/45(例えば、95/5〜60/40)、好ましくは93/7〜65/35(例えば、90/10〜70/30)、通常85/15〜60/40程度である。なお、上記割合は、両成分の混合割合であってもよく、例えば、前記樹脂組成物が、後述するように、セルロースエステル類と可塑剤とが溶融混練などにより一部において結合を形成した結合形成物を含む組成物である場合、上記割合は、セルロースエステル類と可塑剤との混合割合(仕込み割合)であってもよい。上記のような割合で前記組成物を構成すると、セルロースエステル類の優れた特性を高いレベルで保持でき、前記可塑剤自体のブリードアウトをより一層効率よく抑制できる。可塑剤の割合が少なすぎると可塑剤としての性能を発揮できず、セルロースエステルが溶融成形可能とならない。一方、可塑剤の割合が多すぎると、機械物性の低下、可塑剤のブリードアウト、熱変形温度の低下が顕著になり、好ましくない。
【0045】
本発明にかかるセルロースエステル組成物には、必要に応じて慣用の添加剤、例えば、充填剤、安定化剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐光安定剤など)、着色剤(染料、顔料など)、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、流動化剤、ドリッピング防止剤、抗菌剤、消臭剤などが含まれていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0046】
更に、セルロースエステル組成物の物性を損なわない限り、セルロースエステル以外の樹脂が含まれていてもよい。
【0047】
[製法]
本発明におけるセルロースエステル組成物は、セルロースエステル類と、前記可塑剤とを混合(特に、溶融混合又は溶融混練)することにより得られる。混合は、通常、セルロースエステルの融点以上、又は軟化温度以上で混ぜ合わせることによりおこなってもよい。混合の方法としては慣用の方法を使用することができ、例えば、各成分をタンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ニーダーなどの混合機を用いて乾式又は湿式で混合して調製してもよい。更に、前記混合機で予備混合した後、一軸または二軸押出機などの押出機で混練してペレットに調製したり、加熱ロールやバンバリーミキサーなどで混練して調製してもよい。混練の温度は、セルロースエステル類の融点又は軟化温度に応じて選択され、例えば、70〜250℃、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは150〜240℃程度であってもよい。なお、このような溶融混合(溶融混練)により、前記セルロースエステル類の一部と前記可塑剤の一部とが結合を形成してもよい。すなわち、前記セルロースエステル類は、通常、ヒドロキシル基を有しており、このヒドロキシル基と、前記可塑剤の末端基(カルボキシル基)とが反応して結合(エステル結合)を形成してもよい。詳細には、本発明の組成物は、前記セルロースエステル類の一部と前記可塑剤の一部とが反応した反応物(結合形成物)を含んでいてもよい。
【0048】
本発明により得られるセルロースエステル組成物又はその成形体(例えば、充填剤を含まない組成物又はその成形体)は、その黄色度(YI値)が30以下(例えば、1〜25、好ましくは3〜20、さらに好ましくは5〜15程度)、全光線透過率が85%以上(例えば、85〜99.5%、好ましくは88〜99%、さらに好ましくは90〜98%程度)であり、色相および透明性に優れるものであるが、汎用プラスチックの代替としてより広範な用途への使用を可能とするために、YI値は20以下であることがより好ましく、さらに15以下であることが特に好ましい。同様に、全光線透過率は、90%以上であることがより好ましい。
【0049】
また、本発明の組成物の熱変形温度(荷重0.45MPa)は、例えば、60〜200℃、好ましくは70〜180℃、さらに好ましくは80〜150℃程度であってもよい。
【0050】
前記のように、本発明では、前記特定の可塑剤を使用することにより、前記樹脂組成物又はその成形体からの前記可塑剤のブリードアウトがなく(又は僅かであり)、組成物又は成形体の変形を効率よく防止できる。そのため、本発明には、セルロースエステル類に、前記可塑剤を混合(特に溶融混練又は溶融混合)する(特に、特定の割合、例えば、セルロースエステル類/可塑剤(重量比)=99.5/0.5〜35/65の割合で混合する)ことにより、得られた混合物又は組成物からの前記可塑剤のブリードアウトを抑制しつつ、セルロースエステル類を可塑化する方法も含まれる。
【0051】
このようにして得られた本発明にかかるセルロースエステル組成物は、射出成形、押出成形、真空成形、異形成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、ブロー成形、ガス注入成形、T−ダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形などによって各種成形品に成形することができる。これらの成形方法のうち、例えば、フィルムへの加工は、インフレーション法、T−ダイ法等、従来の各種の成形方法により成形してフィルムに加工することができる。上記の方法によるフィルムの生産速度は、10〜50m/分、好ましくは15〜30m/分であり、フィルム切れが起こらずに連続生産できる時間は、好ましくは3時間以上、更に好ましくは10時間以上、特に好ましくは24時間以上である。
【0052】
フィルムは、1軸または2軸延伸されていてもよい。延伸フィルムはシュリンクフィルムとして使用することもできる。フィルムの厚みは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明におけるセルロースエステル組成物は、様々な分野における用途に使用することができる。例えば、本発明のセルロースエステル組成物から製造されるフィルム又はシートは、従来のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等の代替として広範な用途に使用することができる。フィルムの用途としては、バッグやパウチ用等の完成包装材料、畜肉、水産加工品等の自動包装用といった深絞り用、加熱収縮により包装するシュリンクフィルム用、密着包装等のスキンパック用、その他の樹脂との共延伸・熱固定フィルム用、金属箔との熱固定フィルム用等が挙げられる。シートの用途としては、食品容器等の二次加工用、ボトルを含め一般容器用、表面材料、光透過材用、引越し材料等の工業用等が挙げられる。これらの製品は、多層であってもよく、チューブ、パイプ、コーティング材料、模様入り成形品、ケーブル、その他の異形成形品に応用できることは言うまでもない。また、セルロースエステル、前記可塑剤(例えば、ラクチド、重量平均分子量950以下のラクチドのオリゴマー、および重量平均分子量950以下である乳酸のオリゴマーなど)はいずれも生分解性を有する場合が多いため、環境に放置されやすい物品、用途に用いることが好ましい。フィルムやシート以外にも、ボトル等圧肉の成形品として使用することもできる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例および比較例における各特性値の測定は、以下に示すような方法、条件でおこなった。
【0055】
<分子量および分子量分布>
検出器として示差屈折率系と差圧粘度計を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンから作成した汎用較正曲線を用いて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0056】
ポンプ;(株)島津製作所製、LC10AD
デガッサ;Erma Inc.、ERC−3612
オーブン;(株)島津製作所製、CTO−10
RI検出器;(株)島津製作所製、RID−6A
溶離液;クロロホルム
カラム;昭和電工(株)製、Shodex806Lを3本連結。
【0057】
<機械的特性>
JIS K7203に準じ、曲げ試験を行い、曲げ弾性率、曲げ強度を求めた。
【0058】
<全光線透過率>
JIS K7105に準じた。
【0059】
<黄色度(YI)>
JIS K7105に準じた。
【0060】
<ブリードアウト>
実施例および比較例で得られたペレットを、熱プレスで厚み0.5mm×長さ100mm×幅50mmの平板に成形し、得られた平板を65℃、90%RHの条件下で48時間放置した。そして、平板表面の可塑剤のブリードアウト状態を、以下の基準で評価した。
【0061】
○:ブリードアウトが見られない
×:ブリードアウトが見られ、平板の重量が3重量%以上減少した。
【0062】
<ラクチドオリゴマーの合成 参考例1>
四つ口フラスコに撹拌機、温度計、コンデンサーを取り付け、L−ラクチド(和光純薬(株)製)288g(2.0モル)、2−エチルヘキサン酸スズ(和光純薬(株)製)0.29g(0.716ミリモル)、トリメチロールプロパン(和光純薬(株)製)1)89.5g(0.67モル)、2)26.8g(0.2モル)を仕込み、140℃、5時間それぞれ撹拌しながら、重合を行った。得られたラクチドオリゴマーの重量平均分子量はそれぞれ1)600、2)1800であった。
【0063】
<ラクチドオリゴマーの合成 参考例2>
四つ口フラスコに撹拌機、温度計、コンデンサーを取り付け、L−ラクチド(和光純薬(株)製)288g(2.0モル)、2−エチルヘキサン酸スズ(和光純薬(株)製)0.29g(0.716ミリモル)、1,4−ブタンジオール(和光純薬(株)製)45g(0.5モル)を仕込み、140℃、5時間それぞれ撹拌しながら、重合を行った。得られたラクチドオリゴマーの重量平均分子量は700であった。
【0064】
(実施例1)
ダイセル化学工業(株)社製、酢酸セルロース「L−20」(酢化度55%、平均重合度140)80重量部とL−ラクチド(和光純薬(株)製)20重量部とをヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製、IM20B)で乾式混合し、乾燥機にて70℃、一昼夜予備乾燥した。予備乾燥後、二軸押出機(池貝機販(株)製、PCM30)を用いて、シリンダー設定温度180℃およびダイス温度220℃、スクリュー回転速度100rpmで溶融押出しした。得られたペレットを射出成形機(東芝機械(株)製、IS100E)で射出成形した成形片は、非常に透明性が高く、着色も少なかった。
【0065】
(実施例2)
ダイセル化学工業(株)社製、酢酸セルロース「L−20」(酢化度55%、平均重合度140)を70重量部、L−ラクチド(和光純薬(株)製)を30重量部とした以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレットを射出成形機(東芝機械(株)製、IS100E)で射出成形した成形片は、非常に透明性が高く、着色も少なかった。
【0066】
(比較例1)
L−ラクチドの代わりにジエチルフタレート(和光純薬(株)製)を用いた以外は実施例2と同様にして、ペレットを得た。得られたペレット射出成形機(東芝機械(株)製、IS100E)でを射出成形した成形片は、黄色度が高く外観が優れなかった。
【0067】
(比較例2)
L−ラクチドの代わりにトリフェニルフォスフェート(和光純薬(株)製)を用いた以外は実施例2と同様にして、ペレットを得た。得られた組成物は、着色は比較的少なかったが、成形片の透明度が劣り、濁ったような外観であった。
【0068】
(実施例3)
ダイセル化学工業(株)社製、酢酸セルロース「L−20」(酢化度55%、平均重合度140)70重量部と、参考例1で調製したL−ラクチドオリゴマー(重量平均分子量600)30重量部とをヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製、IM20B)で乾式混合し、乾燥機にて70℃、一昼夜予備乾燥した。予備乾燥後、二軸押出機(池貝機販(株)製、PCM30)を用いて、シリンダー設定温度180℃およびダイス温度220℃、スクリュー回転速度100rpmで溶融押出しした。得られたペレットを射出成形機(東芝機械(株)製、IS100E)で射出成形した成形片は、透明性が高く、着色も少なかった。
【0069】
(比較例3)
重量平均分子量600のL−ラクチドオリゴマーの代わりに、参考例1で調製した重量平均分子量1800のL−ラクチドオリゴマーを使用した以外は実施例3と同様にして溶融混練したが、得られた混練物は脆く、ペレット化できなかった。得られた混練物は透明性が悪く、濁ったような外観であった。
【0070】
(実施例4)
重量平均分子量600のL−ラクチドオリゴマーの代わりに、乳酸オリゴマー(荒川化学(株)製、「ラクトライザーGP4001」、重量平均分子量約500)を使用した以外は実施例3と同様にして、ペレットを得た。得られたペレットを射出成形機(東芝機械(株)製、IS100E)で射出成形した成形片は、透明性が高く、着色も少なかった。
【0071】
これら成形片の物性を表1に示す。なお、表1において、「DEP」とはジエチルフタレートを意味し、「TPP」とはトリフェニルフォスフェートを意味する。表1の結果より、本発明によるセルロースエステル組成物からなる成形片は、可塑剤のブリードアウトがなく、寸法安定性に優れ、さらには、その機械的強度や色相・透明性に極めて優れ、現在汎用されているプラスチックの代替として充分なものであることがわかる。
【0072】
【表1】


【出願人】 【識別番号】000002901
【氏名又は名称】ダイセル化学工業株式会社
【住所又は居所】大阪府堺市堺区鉄砲町1番地
【出願日】 平成17年12月27日(2005.12.27)
【代理人】 【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生

【公開番号】 特開2006−213916(P2006−213916A)
【公開日】 平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願番号】 特願2005−376682(P2005−376682)