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【発明の名称】 グラビア製版方法
【発明者】 【氏名】伊藤 竜男
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印刷株式会社内
【氏名】松永 和夫
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印刷株式会社内
【氏名】阿部 秀夫
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印刷株式会社内
【課題】グラビア版に形成される絵柄の多少面積に関係なく均一な版深が得られると共に、グラビア印刷の豊富な階調と微細な文字や画線を表現出来る。さらにゴミなどによる欠陥の無い高品質のグラビア印刷に用いるグラビア版のグラビア製版方法を提供する。

【解決手段】グラビア印刷に用いるグラビア版の製造における腐食工程であって、腐食液のシャワー量をシリンダーの円周方向の絵柄面積率および/又は軸長方向の絵柄面積率に応じて制御することを特徴とするグラビア製版方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食工程を有するグラビア製版方法であって、
腐食液のシャワー量をシリンダーの円周方向の絵柄面積率および/又は軸長方向の絵柄面積率に応じて制御することを特徴とするグラビア製版方法。
【請求項2】
前記絵柄面積率は、デジタル版情報に基づいたものであることを特徴とする請求項1記載のグラビア製版方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアシリンダーに形成される絵柄面積率に応じて腐食液のシャワー量を制御してグラビア印刷に用いるグラビア版を作製するグラビア製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラビア製版の方法としてはコンベンショナルグラビア法に代表される腐食による化学的方法とスタイラスと呼ばれるダイヤモンド針で彫刻する機械的彫刻法に大別される。腐食法のうちコンベンショナルグラビア法はカーボンチッシュに白線スクリーンを焼き付け、連続調のポジフイルムを焼き付ける事で版に深度差をつけ、階調表現が施されている。
【0003】
また、連続調のポジフィルムの安定性が低い事を改良した網グラビア法も用いられている。網グラビア法としては、深度は同じでセルの開口面積のみを変化させて階調表現を行うポーシェル法や、網点を焼き付ける際に拡散フィルムを用いて、開口面積と共に深度差をつけるTHグラビア法等が用いられている。
【0004】
この、THグラビア法は開口面積と深度の両方を同時に変化させる事ができるために階調表現が豊かで、品質要求度の高い印刷物に用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、ダイヤモンド針で彫刻する機械的彫刻法は原稿の濃淡をダイヤモンドの針で彫刻の深さに変換して彫刻するもので、三角錐の針を用いる事で彫刻セルの深さと開口寸法を同時に変えることができる。
【0006】
また、レーザー光や電子線を用いてシリンダー上の金属を直接昇華させてセルと呼ばれる凹部を形成する方法も知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
また、デジタル化した画像データを網点化したものを直接走査形レーザー光を用いて露光し、さらに現像、腐食によりセルを形成する方法が近年普及している。この方法は機械的彫刻法では表現できない細線や文字を従来の腐食法と同等の質で表現できる。しかもゴミの焼き込みやポジフィルムの伸縮に左右されない高い品質のグラビア版が作製できるようになってきている。
【0008】
特にレジストにポジ型レジストを用い、レーザー光で露光した部分を現像工程で溶解するタイプは露光スピードが速く、1本のシリンダーの製版面積が2平方メートルを越える出版用グラビアシリンダーの作製に適していると言われている。
【0009】
また、上記出版用グラビアシリンダーは1本のシリンダーに多くのページが面付けされており、そのページ毎に絵柄が異なることにより画線部の占める割合も異なったものになっている。
【0010】
また、ページ毎に絵柄が異なる出版用グラビアシリンダー版を作製する場合、レーザーの露光や現像工程は一般のグラビア版と同様に施すことが出きるが、腐食工程では出版用シリンダーにページ毎に絵柄が異なったものが形成されているために均一に絵柄が腐食されにくいという品質上の相違が生じている。
【0011】
また、腐食工程は通常塩化第二鉄あるいは塩化第二銅等の腐食液を現像工程が終了した
シリンダーにシャワーしてレジストで覆われていない部分が腐食され、腐食された部分が所定の版深度となる。さらに腐食作業が終了した後、シリンダーに形成されているレジストをアルカリ溶液で剥離し、また、さらに洗浄後、クロムメッキ等を施してグラビア印刷用のシリンダー版が作製される。
【0012】
上記、例えば、塩化第二銅の腐食液でシリンダーが腐食される化学反応は、塩化第二銅とシリンダー銅の酸化還元反応であり、その反応速度はシリンダー温度、腐食液の液温、塩化第二銅濃度、一価の銅イオン濃度、塩酸濃度等によって変化する。また、これらの反応速度は市販の温度制御装置、腐食液管理装置などによってコントロールすることができる。
【0013】
また、上記以外に反応速度をコントロールする方法として腐食液をシャワーするシャワー圧あるいはシリンダーを腐食する際のシリンダーの回転速度等がある。これらは腐食反応によって生じた反応生成物を除去し、新たな腐食液を送り込むことで次の反応を進める重要な要因となっている。
【0014】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開昭50−26603号公報
【非特許文献1】「コンバーテック」(株)加工技術研究会、1999年1月号、22頁〜26頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
グラビア印刷用の版は円筒状のシリンダーであるために、レジストをシリンダーに塗布して、さらにシリンダーを回転しながら現像する際に、現像液が空気に触れる面積が必然的に大きくなることで、現像液の劣化を早めている。そして、セルの大きさのバラツキが発生したり、現像されるべきセルが無くなるなどの問題が生じている。
【0016】
また、レーザー光で露光した部分を現像工程で溶解するタイプは露光スピードが速いが腐食工程でシリンダー版に形成されている絵柄等に均一に腐食液をシャワーした際も、形成されている絵柄の多い部分の腐食が進まないという問題がある。さらに腐食液をシャワーするノズルの本数を増やし、且つシャワー圧を上げても、絵柄の多い部分の腐食と、絵柄面積の少ない部分の腐食による版深度差は縮まらず、絵柄面積の少ない部分の腐食による版深度はより大きくなるという問題がある。
【0017】
本発明は上記した従来の問題点を鑑みてなされるものであり、グラビア版に形成される絵柄の多少面積に関係なく均一な版深が得られると共に、グラビア印刷の豊富な階調と微細な文字や画線を表現できる。さらにゴミなどによる欠陥の無い高品質のグラビア印刷に用いるグラビア版のグラビア製版方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記の課題を解決するために成されたもので、請求項1に係る本発明は、
腐食工程を有するグラビア製版方法であって、
腐食液のシャワー量をシリンダーの円周方向の絵柄面積率および/又は軸長方向の絵柄面積率に応じて制御することを特徴とするグラビア製版方法。
【0019】
請求項2に係る発明は、
前記絵柄面積率は、デジタル版情報に基づいたものであることを特徴とする請求項1記載のグラビア製版方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明はグラビア印刷に用いるグラビア版の製版工程でグラビア版に形成される絵柄面積率により腐食液のシャワー量を制御することにより、グラビア版に形成される絵柄の腐食を均一で、適宜の版深度に施すことができる。さらに豊富で滑らかな階調が表現でき、且つ高い見当精度とゴミなどによる欠陥の無い高品質のグラビア版を製造することができる。
【0021】
さらに、腐食機のシャワー圧を低めにコントロールできることにより、ポンプの負荷が減少し、さらに、配管漏れ等による腐食液の吹き出し事故等が減少される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のグラビア製版方法を実施の形態に沿って以下に図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図9は本発明の一実施例を示す。図1は本発明のグラビア製版方法に使用される腐食機の一実施例の概略を示す概略図である。図1に示すように腐食機10は腐食槽4と腐食槽4の腐食液の老化あるいは温度等を管理するための腐食液管理装置8と、腐食液管理装置8に腐食槽4の腐食液を配管パイプ9を介して循環させている循環ポンプ7と、さらに腐食槽4の腐食液をシャワーさせるシャワー部11と、シャワー部11に腐食槽4の腐食液を供給配管パイプ5を介して供給する供給ポンプ6から形成されている。
【0023】
また、腐食槽4の腐食液は腐食液管理装置8で液温、塩化第二銅濃度、一価の銅イオン濃度、塩酸濃度等を計測して、管理基準値が常に保たれるようになっている。
【0024】
また、上記シャワー部11は供給される腐食液のシャワー量をコントロールするシャワーバルブ1とシリンダーに腐食液をシャワーするノズル2から形成されている。さらに、シャワーバルブ1とノズル2は一体化されている。そして、a〜kまで11箇所に設けられている。また、設ける数は特に限定されるものではない。さらに、シリンダー3はA〜Hまで8ページが面付け形成されているが、面付けページは印刷される印刷物の要求等により適宜選定される。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0026】
実施例1として、シリンダーの軸長方向の半円周部分に4ページ(A、B、C、D)を面付けし、さらに残りの半円周部分の軸長方向に4ページ(E、F、G、H)を面付けして図2に示すような絵柄面積率のシリンダーを製版した。
【0027】
また、上記シリンダーの製版はシリンダーにポジ型レジストを塗布し、該ポジ型レジストを乾燥硬化させた後、デジタル版情報に基づいて、レーザー露光を行い、さらに現像により露出した金属面を腐食することでグラビア版を得る方法で行った。そして、一本のシリンダーは従来の腐食を行い、他の一本のシリンダーは本発明のグラビア製版方法の腐食を行った。また、図2はノズル位置に対応したシリンダー上に形成された一周分の絵柄面積率の平均値を示す。
【0028】
次ぎに、図3は、図2に示す絵柄面積率を元に計算して得られる各ノズルからの腐食液のシャワー量に対応する各シャワーバルブの開度を示している。腐食はこの様な開度に各シャワーバルブを調整し、各ノズルよりシリンダーに向かって腐食液をシャワーして行った。
【0029】
また、図4の実線はシリンダーに腐食液をノズルによりシャワーして腐食した後、シリ
ンダーの各ページの版深度を測定した結果を示す。その結果、図4の実線に示すようにシリンダーのどのページの深度も均一であることが確認された。
【0030】
さらに、図4の点線は比較例として、同じ絵柄のシリンダーを用いて、全てのバルブの開度を100(全開)として、その他条件を変えず腐食液をノズルによりシャワーして腐食した後、版深度を測定した結果を示す。図4の点線(比較例)に示すようにシリンダーの絵柄が多い部分とされたページの版深度が浅くなっていることが分った。
【0031】
次ぎに、図5は上記作製された二本のシリンダーを用いて印刷を行い、印刷物の印刷濃度を測定した結果を示す。本発明のグラビア製版方法により作製されたシリンダーで印刷された印刷物は従来のグラビア製版方法で比較例として作製されたシリンダーにより印刷された印刷物に比較して、印刷濃度が安定していることが確認された。
【実施例2】
【0032】
次ぎに、実施例2として、実施例1と同様にシリンダーの軸長方向の半円周部分に4ページ(A、B、C、D)を面付けし、さらに残りの半円周部分の軸長方向に4ページ(E、F、G、H)を面付けして図6に示すような絵柄面積率のシリンダーを製版した。また、各ページの絵柄面積率データからシリンダー半周毎の各ノズル位置に対応した部分の絵柄面積率の平均値を示す。さらに、シリンダー円周方向の位相を半周毎に位相ABCD、位相EFGHと示す。
【0033】
また、上記シリンダーの製版は実施例1と同様に、シリンダーにポジ型レジストを塗布し、該ポジ型レジストを乾燥硬化させた後、デジタル版情報に基づいて、レーザー露光を行い、さらに現像により露出した金属面を腐食することでグラビア版を得る方法で行った。そして、一本のシリンダーは従来の腐食を行い、他の一本のシリンダーは本発明のグラビア製版方法の腐食を行った。
【0034】
また、図7は、図6に示す絵柄面積率を元に計算して得られる各ノズルからの腐食液のシャワー量に対応する各シャワーバルブの開度を示している。腐食はこの様な開度に各シャワーバルブを調整し、各ノズルよりシリンダーに向かって腐食液をシャワーして行った。
【0035】
次ぎに図8の実線は各シャワーバルブの開度を適宜設定して腐食液をノズルからシャワーして上記シリンダーを腐食した後、シリンダーの各ページの版深度を測定した結果を示す。図8に示すようにシリンダーのどのページの深度も均一であることが確認された。
【0036】
さらに、図8の点線は比較例として、同じ絵柄のシリンダーを用いて、全てのシャワーバルブの開度を100(全開)として、その他条件を変えずシャワーにより腐食した後、版深度を測定した結果を示す。図8の点線(比較例)に示すようにシリンダーの絵柄が多い部分とされたページの版深度が浅くなっていることが分った。
【0037】
次ぎに、図9は上記作製された二本のシリンダーを用いて印刷を行い、印刷物の印刷濃度を測定した結果を示す。本発明のグラビア製版方法により作製されたシリンダーで印刷された印刷物は従来のグラビア製版方法で比較例として作製されたシリンダーで印刷された印刷物に比較して印刷濃度が安定していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のグラビア製版方法は出版用グラビアシリンダー等の様々なページが面付けされたシリンダーの腐食を均一に行い、常に一定の版深度のシリンダーが得られ、さらに豊富で滑らかな階調が表現でき、且つ、ゴミなどによる欠陥の無い高品質のグラビア版を安定
して製造できことにより、グラビア印刷分野に利用できることはもとより、球面状あるいは平面状形状等からなる腐食技法を利用する装飾美術工芸品等をはじめ広い分野に利用できる素晴らしい発明である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のグラビア製版方法に使用される腐食機の一実施例の概略を示す概略図である。
【図2】シリンダー上に形成される平均絵柄面積率と腐食液をシャワーするノズル位置の関係の一実施例を示す図である。
【図3】シリンダーに腐食液をシャワーするノズル位置とシャワーバルブの開度の一実施例を示す図である。
【図4】本発明のグラビア製版方法の腐食と従来の製版方法の腐食によりシリンダー上に形成されたぺージ(A〜H)の版深度の比較の一実施例を示す図である。
【図5】本発明のグラビア製版方法の腐食と従来の製版方法の腐食により製版されたシリンダーで印刷した、各ぺージ(A〜H)の印刷物の印刷濃度の比較の一実施例を示す図である。
【図6】シリンダー上に形成されるページ(A〜H)の平均絵柄面積率とノズル位置の関係を示す図である。
【図7】シリンダーに腐食液をシャワーするノズル位置とシャワーバルブの開度を示す図である。
【図8】本発明のグラビア製版方法の腐食と従来の製版方法の腐食によりシリンダー上に形成されたぺージ(A〜H)の版深度の比較の一実施例を示す図である。
【図9】本発明のグラビア製版方法の腐食と従来の製版方法の腐食により製版されたシリンダーで印刷した、各ぺージ(A〜H)の印刷物の印刷濃度の比較の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…シャワーバルブ
2…ノズル
3…シリンダー
4…腐食槽
5…供給配管パイプ
6…供給ポンプ
7…循環ポンプ
8…腐食液管理装置
9…配管パイプ
10…腐食機
11…シャワー部
【出願人】 【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号
【出願日】 平成16年7月27日(2004.7.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−35621(P2006−35621A)
【公開日】 平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願番号】 特願2004−218371(P2004−218371)