トップ :: B 処理操作 運輸 :: B26 切断手工具;切断;切断機

【発明の名称】 スリッター装置及び電極の製造方法
【発明者】 【氏名】片井 一夫
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内
【氏名】宮木 陽輔
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内
【氏名】遠藤 精一
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内
【課題】シート状電極の切断時に、集電体の切断屑が上刃側面に融着することを十分に抑制し、且つ、集電体の切断面にバリが発生することを十分に抑制することが可能なスリッター装置を提供すること。

【解決手段】1以上の上刃4が装着された回転軸2と、1以上の下刃7が装着された回転軸5とが、互いに平行に且つ上刃4の周縁部側面4aと下刃7の周縁部側面7aとが接触して所定の噛み合わせ深さが得られるように配設されており、上刃4の厚みが1mm以上、上刃4の刃先角度が75〜88°、上刃4及び下刃7の硬度が6.9×10〜8.8×10N/mm、上刃4の硬度と下刃7の硬度との差が4.9×10N/mm以下、上刃4及び下刃7の表面粗さが4μm以下、上刃4の表面粗さと下刃7の表面粗さとの差が2μm以下であることを特徴とするスリッター装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の円形の上刃が所定間隔で装着された回転軸と、1以上の円形の下刃が所定間隔で装着された回転軸とが、互いに平行に且つ前記上刃の周縁部側面と前記下刃の周縁部側面とが接触して所定の噛み合わせ深さが得られるような間隔で配設されており、
前記上刃の厚みが1mm以上であり、
前記上刃の刃先角度が75〜88°であり、
前記上刃及び前記下刃の硬度が6.9×10〜8.8×10N/mmであり、且つ、前記上刃の硬度と前記下刃の硬度との差が4.9×10N/mm以下であり、
前記上刃及び前記下刃の表面粗さが4μm以下であり、且つ、前記上刃の表面粗さと前記下刃の表面粗さとの差が2μm以下であることを特徴とするスリッター装置。
【請求項2】
1以上の円形の上刃が所定間隔で装着された回転軸と、1以上の直線状の下刃が所定間隔で平行に装着された、該下刃の刃面に対して垂直な軸とが、互いに平行に且つ前記上刃の周縁部側面と前記下刃の周縁部側面とが接触して所定の噛み合わせ深さが得られるような間隔で配設されており、
前記上刃の厚みが1mm以上であり、
前記上刃の刃先角度が75〜88°であり、
前記上刃及び前記下刃の硬度が6.9×10〜8.8×10N/mmであり、且つ、前記上刃の硬度と前記下刃の硬度との差が4.9×10N/mm以下であり、
前記上刃及び前記下刃の表面粗さが4μm以下であり、且つ、前記上刃の表面粗さと前記下刃の表面粗さとの差が2μm以下であることを特徴とするスリッター装置。
【請求項3】
電極活物質、該電極活物質を結着可能なバインダー、及び、該バインダーを溶解又は分散可能な液体を含む電極形成用塗布液をシート状の集電体上に塗布した後、前記液体を除去して前記集電体上に活物質含有層を形成し、シート状電極を得る活物質含有層形成工程と、
前記シート状電極を請求項1又は2記載のスリッター装置を用いて切断し、電極を得る電極形成工程と、
を含むことを特徴とする電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物を所定の幅にスリットするためのスリッター装置、及び、これを用いた電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の各種OA機器、VTRカメラ、携帯電話等の電子機器の小型軽量化に伴い、これら電子機器の駆動電源として用いられる二次電池や電気化学キャパシタ等の電気化学デバイスの小型軽量化及び高性能化が要求されている。
【0003】
電気化学デバイスの電極は、一般に、電極活物質をバインダーと混合して電極形成用塗布液を調製し、この塗布液を集電体の片面又は両面上に塗布した後、乾燥して、集電体の片面又は両面上に活物質含有層を形成してシート状電極を形成し、その後、シート状電極を圧延加工し、所定の寸法に切断することにより製造されている。
【0004】
電極の製造時における切断は、一般に、シート状電極を製造流れ方向に沿って所定の幅に切断するスリット工程と、所定幅とされた電極を所定の長さに切断する裁断工程とからなる。
【0005】
スリット工程における電極の切断は、通常、シアー方式、ギャング方式等のスリッター装置により行われる。このスリッター装置には、複数の円形の上刃が所定間隔で装着された回転軸と、複数の円形の下刃が所定間隔で装着された回転軸とが、互いに平行に且つ上刃と下刃とが接触して所定の噛み合わせ深さが得られるような間隔で配設されている。そして、両回転軸を回転させることにより、剪断力でシート状物を所定の幅にスリットできるように構成されている。
【0006】
ここで、シアー方式は、上刃として刃先角度が85〜90°、厚みが1mm未満の薄い丸刃を用いる方式である。一方、ギャング方式は、上刃として刃先角度が90°、厚みがシアー方式の上刃よりも厚い丸刃を用いる方式である。
【0007】
スリッター装置は、切断対象となるシート状物を剪断力によって切断するものであり、鋭利な刃によって切断するものではない。そのため、従来のシアー方式やギャング方式の上刃を備えたスリッター装置を用いてシート状電極を切断すると、切断面に集電体のバリが発生しやすいという問題がある。これは、集電体上に形成されている活物質含有層の存在により切断刃からの切断荷重が分散されて剪断力が集電体に集中せず、このため金属製の集電体に延びが生じ、この状態で集電体が切断されるのでバリが発生するものと考えられる。
【0008】
電気化学デバイスのうち、リチウムイオン二次電池の場合には、アノードにおける集電体として例えば圧延銅箔が使用されるが、このアノードをスリッター装置により切断して作製すると、上記のように銅箔の切断面にバリが発生したり、銅箔の切断屑(銅粉)が発生することとなる。そして、アノードの活物質含有層上まで突出するような大きなバリは、セパレータを突き破り、電池内部でアノードとカソードとが短絡する等の不具合を発生させる原因となる。また、アノード表面やアノードのエッジ部分に付着した銅粉も同様の不具合を引き起こすおそれがあり、スリッター装置により切断を行った後には銅粉除去のためのクリーニング工程を行うことが必要となっていた。その結果、電極の製造工程が煩雑化し、製造コストが増大するという問題があった。
【0009】
このような問題を改善するため、例えば、特許文献1には、刃先角度25°〜65°の上刃を備えるシアー方式の切断装置が記載されている。このような上刃を用いることによって、銅箔を集電体とするアノードの切断時におけるバリの発生の抑制が図られている。
【0010】
しかしながら、上記の上刃を備える切断装置によっても、アルミニウム箔を集電体とするカソードの切断においては、バリの発生や上刃側面へのアルミニウムの融着を十分に抑制することが困難であった。
【0011】
また、電気化学デバイスのうち、電気二重層キャパシタの場合には、アノード及びカソードの両方で集電体にアルミニウム箔を用いることが多いため、上記の問題は電気二重層キャパシタの特性に対してより顕著に影響することとなる。
【0012】
また、特許文献2には、三次元金属多孔体からなる基板に活物質を充填したものを所定の寸法に切断した後、或いは上記基板を所定の寸法に切断し、活物質を充填した後に、上記基板の周囲を圧延、或いは削り取って電極を製造する方法が記載されている。これは、切断時に発生したバリを内側に押さえ込むか、或いは削り取るとともに、電極端部を肉薄にすることにより、電極のバリがセパレータを貫通して内部短絡が発生することを防止するものである。
【0013】
しかしながら、切断後にその周囲を圧延する方法では、切断時に発生する針状の尖ったバリは一旦押さえ込まれるが、その後再び立ち上がってしまうため、このバリが電池の内部短絡の原因となることがあった。また、切断後にその周囲を削り取る方法では、尖った削り屑や、基板とともに削られた活物質が電極表面に付着するなどして、これが内部短絡の原因となることがあった。
【0014】
更に、特許文献3には、バリや切断屑の問題を改善するために、電極の周縁部をその切断端面をも含んで熱融着性樹脂で被覆する方法が記載されている。
【0015】
しかしながら、この方法も切断後に切断端面を樹脂で被覆するもので、尖ったバリや切断屑の発生を抑えるものでなく、一旦押さえ込まれたバリ等がその後再び立ち上がってセパレータを貫通する場合があり、内部短絡の発生を十分に防止することが困難であった。
【特許文献1】特開平11−144713号公報
【特許文献2】特開平8−45500号公報
【特許文献3】特開平5−190200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、シート状電極の切断時に、集電体の切断屑が上刃側面に融着することを十分に抑制し、且つ、集電体の切断面にバリが発生することを十分に抑制することが可能なスリッター装置を提供することを目的とする。また、本発明は、上記スリッター装置を用いた電極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、スリッター装置における上刃及び下刃の硬度と表面粗さとを所定の範囲にすることにより上記目的を達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明のスリッター装置は、1以上の円形の上刃が所定間隔で装着された回転軸と、1以上の円形の下刃が所定間隔で装着された回転軸とが、互いに平行に且つ上刃の周縁部側面と下刃の周縁部側面とが接触して所定の噛み合わせ深さが得られるような間隔で配設されており、上刃の厚みが1mm以上であり、上刃の刃先角度が75〜88°であり、上刃及び下刃の硬度が6.9×10〜8.8×10N/mmであり、且つ、上刃の硬度と下刃の硬度との差が4.9×10N/mm以下であり、上刃及び下刃の表面粗さが4μm以下であり、且つ、上刃の表面粗さと下刃の表面粗さとの差が2μm以下であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のスリッター装置は、1以上の円形の上刃が所定間隔で装着された回転軸と、1以上の直線状の下刃が所定間隔で平行に装着された、該下刃の刃面に対して垂直な軸とが、互いに平行に且つ上刃の周縁部側面と下刃の周縁部側面とが接触して所定の噛み合わせ深さが得られるような間隔で配設されており、上刃の厚みが1mm以上であり、上刃の刃先角度が75〜88°であり、上刃及び下刃の硬度が6.9×10〜8.8×10N/mmであり、且つ、上刃の硬度と下刃の硬度との差が4.9×10N/mm以下であり、上刃及び下刃の表面粗さが4μm以下であり、且つ、上刃の表面粗さと下刃の表面粗さとの差が2μm以下であることを特徴とするものであってもよい。
【0020】
ここで、本発明において、硬度は、ダイヤモンド正四角錐圧子を備えたビッカース硬度計によってビッカース硬度(Hv)を20点測定し、これを算術平均した値を意味する。
【0021】
また、本発明において、表面粗さは、JIS B0601に基づいて中心線平均粗さ(Ra)を20点測定し、これを算術平均した値を意味する。
【0022】
本発明のスリッター装置においては、上刃及び下刃の硬度が6.9×10〜8.8×10N/mm(約700〜約900kgf/mm)の範囲となっている。切断時に集電体に生じるバリや切断屑のうち微細なものは、上刃と下刃との交差面において刃面に巻き込まれる傾向があるが、上刃と下刃とが上記範囲の硬度を有していることにより、上刃及び下刃に微細な変形が生じることを十分に抑制することができ、上刃と下刃との間のバリや切断屑が侵入し得る空間(逃げ空間)を非常に小さくすることができる。そのため、刃面に沿って移動して集電体に残留するバリや、刃面に融着する切断屑を減少させることができる。
【0023】
ここで、上刃又は下刃の硬度が6.9×10N/mm未満であると、刃の耐久性が低下して集電体の切断面にバリや切削屑が生じやすくなる。また、切削屑が生じやすくなることにより、刃面への切断屑の融着が生じやすくなる。
【0024】
一方、上刃又は下刃の硬度が8.8×10N/mmを超えると、切断屑が刃面に融着しやすくなる。また、刃面の切削あるいは研磨が困難となるため、刃面の表面粗さの調整が困難となる。
【0025】
また、本発明のスリッター装置においては、上刃及び下刃の表面粗さが4μm以下となっている。上刃及び下刃が上記範囲の表面粗さを有していることにより、刃面の隙間に侵入した微細な切断屑が刃面に融着することを十分に抑制することができる。ここで、上刃又は下刃の表面粗さが4μmを超えると、切断屑が刃面の凹凸によって保持されるとともに、集電体のバリが刃面の凹凸によって保持されてしまい、上刃と下刃との隙間にバリや切断屑が入り込んでしまう。
【0026】
そして、上刃及び下刃が上述した硬度及び表面粗さを有しているとともに、上刃と下刃との間の硬度の差が4.9×10N/mm(50kgf/mm)以下、表面粗さの差が2μm以下となっていることにより、上刃と下刃とのかみ合わせ部分における刃面同士の磨耗を防止することができる。刃面同士の磨耗を防止することが可能となることから、切断屑の発生およびそれらの刃面への融着を防止する効果をより高めることができる。したがって、本発明のスリッター装置によれば、シート状電極の切断時に、集電体の切断屑が刃面に付着することを十分に抑制することができ、且つ、集電体の切断面にバリが発生することを十分に抑制することができる。更に、本発明のスリッター装置においては、刃面への切断屑の融着が十分に抑制されることから、上刃及び下刃の長寿命化を図ることができる。
【0027】
本発明はまた、電極活物質、該電極活物質を結着可能なバインダー、及び、該バインダーを溶解又は分散可能な液体を含む電極形成用塗布液をシート状の集電体上に塗布した後、液体を除去して集電体上に活物質含有層を形成し、シート状電極を得る活物質含有層形成工程と、シート状電極を請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のスリッター装置を用いて切断し、電極を得る電極形成工程と、を含むことを特徴とする電極の製造方法を提供する。
【0028】
かかる電極の製造方法においては、シート状電極を上述した本発明のスリッター装置を用いて切断しているため、集電体にバリが発生することを十分に抑制することができる。したがって、本発明の電極の製造方法によれば、電気化学デバイスを構成した際に、集電体のバリが原因となって生じる内部短絡の発生を十分に抑制することが可能な電極を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のスリッター装置によれば、シート状電極の切断時に、集電体の切断屑が刃面に付着することを十分に抑制することができ、且つ、集電体の切断面にバリが発生することを十分に抑制することができる。また、本発明の電極の製造方法によれば、集電体にバリが発生することを十分に抑制することができ、それにより、電気化学デバイスを構成した際に、内部短絡の発生を十分に抑制することが可能な電極を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
図1は、本発明のスリッター装置の好適な一実施形態の要部を示す概略断面図であり、図2は、本発明のスリッター装置に用いられる上刃の刃先形状を示す概略断面図であり、図3は、本発明のスリッター装置に用いられる上刃と下刃の噛み合わせを示す概略断面図である。
【0032】
図1〜3に示すように、本発明のスリッター装置1において、回転軸2(軸線:C2)には、円形の上刃4が所定間隔をおいて複数装着されており、隣り合う上刃4同士の間には、回転軸2の長手方向に所定の幅を有するスペーサー3が配置されている。また、回転軸5(軸線:C5)には、円形の下刃7が所定間隔をおいて複数装着されており、隣り合う下刃7同士の間には、回転軸5の長手方向に所定の幅を有するスペーサー6が配置されている。そして、回転軸2と回転軸5とは、互いに平行に且つ上刃4の周縁部側面4aと下刃7の周縁部側面7aとが接触して所定の噛み合わせ深さdが得られるような間隔で配設されている。更に、上刃4は、板バネ8によって、図1及び図3の左方(図1及び図3中の矢印の方向)に付勢され、上刃4の周縁部側面4aと下刃7の周縁部側面7aとが常に接触した状態で良好な噛み合わせが得られるように構成されている。
【0033】
また、本発明のスリッター装置1において、上刃4及び下刃7としては、いずれも硬度が6.9×10〜8.8×10N/mmであり、且つ、表面粗さが4μm以下であるものが用いられる。そして、上刃4及び下刃7は、上刃4の硬度と下刃7の硬度との差が4.9×10N/mm以下となり、且つ、上刃4の表面粗さと下刃7の表面粗さとの差が2μm以下となるような組み合わせで用いられる。このような上刃4及び下刃7を備えることにより、スリッター装置1は、シート状電極の切断時に、集電体の切断屑が刃面に融着することを十分に抑制し、且つ、集電体の切断面にバリが発生することを十分に抑制することができる
【0034】
また、上記効果をより確実に得る観点から、上刃4及び下刃7の表面粗さは2〜4μmであることが好ましい。
【0035】
上刃4及び下刃7の材質としては、上述した硬度と表面粗さの条件を満たしている限りにおいては特に制限されないが、例えば、SKD11等のダイス鋼、SKH等のハイス鋼、超硬鋼等が挙げられる。これらの中でも、上述した硬度と表面粗さの条件を確実に満たすことができ、且つ、シート状電極の切断時に集電体のバリの発生及び切断屑が刃の表面に融着することをより十分に抑制することできることから、ダイス鋼又はハイス鋼が好ましい。また、上刃4と下刃7とは同じ材質であることが好ましい。
【0036】
上刃4及び下刃7は、例えば市販のSKD11等の材料に焼きなましを行い、次いで表面を研磨することで形成されるものである。このとき、焼きなまし時の温度、処理時間及び冷却速度等を調節することにより、上述した範囲の硬度を有する上刃4及び下刃7を得ることができる。具体的には、例えば、SKD11を600℃に加熱して2時間保持した後、6〜12℃/分の冷却速度で冷却することにより、6.9×10〜8.8×10N/mmの硬度を有する上刃4及び下刃7を得ることができる。また、研磨条件を調節することによって、上述した範囲の表面粗さを有する上刃4及び下刃7を得ることができる。具体的には、例えば、焼きなまし後のSKD11に対して、平均粒子径が30μm程度のダイヤモンド砥粒入りペーストを用いて研磨することにより、表面粗さが4μm以下である上刃4及び下刃7を得ることができる。
【0037】
また、本発明のスリッター装置1において、上刃4は、厚みtが1mm以上であり、刃先角度θが75〜88°の範囲となっている。
【0038】
上刃4の厚みtが1mm未満であると、従来のシアー方式と同様の問題、すなわち、シート状電極の切断時に、集電体の切断面にバリが発生しやすいという問題が生じる。また、刃先角度θが75°未満であると、アルミニウム集電体の切断時にアルミニウムが上刃4側面に融着しやすく、上刃4にチッピング(刃欠け)が発生しやすくなる。一方、刃先角度θが88°を超えると、活物質含有層への上刃4の侵入が不十分となり、集電体に延びが生じて切断面に集電体の大きなバリが発生したり粉体(切断屑)が生じることになる。なお、刃先角度θは、好ましくは80〜85°の範囲である。
【0039】
また、下刃7の厚みは特に限定されないが、好ましくは5〜20mm程度である。
【0040】
更に、本発明のスリッター装置1において、上刃4は、断面に見て、下刃7との噛み合わせ深さdが200〜400μmであることが好ましく、250〜350μmであることがより好ましい。
【0041】
そして、上刃4は、厚みt、刃先角度θ及び噛み合わせ深さdが、下記式(1):
tanθ=t/d ・・・(1)
の関係を満たすものであることが好ましい。したがって、上刃4の厚みtは、tanθ=t/dの関係が満たされる値とすることが好ましく、θ及びdにより変化するが、1〜12mmであることが好ましく、1.1〜5mmであることがより好ましく、1.7〜4mmであることが特に好ましい。
【0042】
上記式(1)の関係式を満たす上刃4は、図3に示すように、上刃4の刃先部の傾斜面4cが、下刃7の周縁部側面7aとの接触面4aから、接触面4aとは反対側の面4bにわたって、下刃7の周端面7cと同じ水平高さ位置まで形成されている。
【0043】
このような刃先形状を有する上刃4を備えることにより、本発明のスリッター装置1は、アルミニウム箔を集電体とする電極の切断時においても、上刃側面へのアルミニウムの融着が十分に抑制することができ、且つ、集電体のバリの発生を十分に抑制することができる。なお、銅箔等のアルミニウム箔以外の金属箔を集電体とする電極の切断時においても、上刃側面への金属の融着及び集電体のバリの発生をより十分に抑制することができる。
【0044】
次に、図4を用いて本発明のスリッター装置によりシート状電極を切断する様子を説明する。図4は、本発明のスリッター装置によるシート状電極の切断の様子を説明するための概略断面図である。図4に示すように、搬送されてきたシート状電極10は、共に回転する上刃4と下刃7との噛み合わせ位置において、剪断力によって切断される。そして、切断により得られたシート状電極10のストリップは、2つの切断面、すなわち上刃4の側面4aと接触した切断面Aと、下刃7の側面7aと接触した切断面Bとを有すこととなる。このとき、上刃4及び下刃7が上述した硬度と表面粗さとの関係を満たしているため、シート状電極10の切断時に集電体のバリの発生及び切断屑が刃の表面に融着することを十分に抑制することができ、上記した切断面A及び切断面Bのいずれにおいても集電体のバリの発生が抑制される。また、上刃4の刃先部の傾斜面4cが、下刃7の周端面7cと同じ水平高さ位置まで存在するために、シート状物10をガイドする役割を果たし、スムーズ且つ的確な切断が達成される。
【0045】
次に、本発明のスリッター装置1を用いた電極の製造方法について説明する。
【0046】
本発明の電極の製造方法においては、まず、電極活物質、該電極活物質を結着可能なバインダー、及び、該バインダーを溶解又は分散可能な液体を混合し、電極形成用塗布液を調製する。
【0047】
ここで、上記電極活物質は、電気化学デバイスの種類によって異なるが、例えば電気化学デバイスが電気二重層キャパシタの場合には、電極活物質として、電荷の蓄電と放電に寄与する電子伝導性を有する多孔体粒子が用いられる。多孔体粒子としては、例えば、粒状又は繊維状の賦活処理済みの活性炭等が用いられる。これら活性炭としてより具体的には、例えば、フェノール系活性炭や、椰子ガラ活性炭等が挙げられる。なお、本発明において、「キャパシタ」は「コンデンサ」と同義とする。
【0048】
電気化学デバイスがリチウムイオン2次電池の場合には、電極がアノードの場合とカソードの場合とで、用いられる電極活物質が異なる。電極がアノードの場合には、電極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出(インターカレート・デインターカレート、或いはドーピング・脱ドーピング)可能な黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することのできる金属、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)等が用いられる。
【0049】
また、電極がカソードの場合には、電極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiMnCo(x+y+z=1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物、V、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn又はFeを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)等が用いられる。これら金属酸化物の平均粒子径は1〜40μm程度が好ましい。
【0050】
なお、本発明において「アノード」及び「カソード」は、電気化学デバイスの放電時の極性を基準に決定したものである。
【0051】
上記バインダーとしては、上記電極活物質を結着可能なものであれば特に制限されるものではなく、従来より使用されている結晶性樹脂、非結晶性樹脂等の各種バインダーを使用することができる。例えば、バインダーとして、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリエチレンテレフタレートや、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル、フッ素ゴム等のフルオロカーボン系樹脂等を用いることができる。
【0052】
バインダーは、電極活物質100質量部に対して、通常1〜40質量部、好ましくは2〜25質量部、特に好ましくは5〜15質量部の量で使用される。
【0053】
上記液体としては、上記バインダーを溶解又は分散可能なものであれば特に制限されるものではなく、電極形成用塗布液を調製する際に従来より使用されている各種の溶剤を使用することができる。例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルエン等が挙げられる。
【0054】
また、電極形成用塗布液中には、電極活物質の電子伝導性を補足する目的等のために、必要に応じて導電助剤を添加することができる。導電助剤としては、電子伝導性を有するものであれば特に制限されるものではなく、公知の各種導電助剤を用いることができ、例えば、アセチレンブラック、グラファイト、金・銀・銅微粒子等が挙げられる。
【0055】
更に、電極形成用塗布液中には、必要に応じて、炭酸リチウム、シュウ酸、マレイン酸等の公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0056】
これらの電極活物質、バインダー、液体、及び、必要に応じて添加される導電助剤等の混合は、公知の方法により行うことができる。例えば、ロールミル法により、乾燥空気下や不活性ガス雰囲気下で混合することができる。これにより、電極形成用塗布液を調製することができる。
【0057】
次に、得られた電極形成用塗布液をシート状(帯状)の集電体上に塗布する。塗布は電極の目的に応じて、集電体の両面に行ってもよいし、片面のみに行ってもよい。また、集電体の両面に塗布液を塗布する場合には、同時に両面に塗布した後に乾燥して塗布液中の液体の除去を行ってもよく、片面に塗布して乾燥を行い、次いで他面に塗布して乾燥を行ってもよい。
【0058】
本発明において、集電体としては、金属箔、金属シート、パンチィングメタル、金属網等が使用される。これらの中でも金属箔、パンチィングメタルが好ましい。集電体の金属材料としては、特に制限されるものではなく、従来より集電体に使用されている各種の金属材料を使用することができる。このような金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、鉄等が挙げられ、銅、アルミニウム等が好ましい。集電体の厚みは、通常1〜30μmであり、好ましくは5〜20μmである。
【0059】
電極形成用塗布液の集電体への塗布は、公知の塗布方法、例えば、エクストルージョンコート、グラビアコート、リバースロールコート、ディップコート、キスコート、ドクターコート、ナイフコート、カーテンコート、ノズルコート、スクリーン印刷等の塗布方法により行うことができる。
【0060】
次に、電極形成用塗布液を集電体上に塗布した後、乾燥を行い、塗布液中の液体を除去する。乾燥は公知の方法により行うことができ、例えば、30〜150℃で、5〜15分間程度の乾燥条件で行うことができる。このようにして、集電体の片面又は両面に活物質含有層が形成される。
【0061】
また、本発明の電極の製造方法においては、乾燥により液体を除去した後、活物質含有層が形成された集電体を、ローラープレス機等により圧延し、活物質含有層の厚みを薄くし且つ一定に整え、電極の単位体積当たりの活物質の密度を高めることもできる。この際のプレス圧は、5〜1000kg/cm程度である。
【0062】
また、活物質含有層の厚みは、用途にもよるため特に限定されないが、例えば、40〜400μm程度である。
【0063】
以上のようにして集電体上に活物質含有層を形成し、シート状電極の作製を完了する(活物質含有層形成工程)。
【0064】
次に、得られたシート状電極を所定の寸法に切断する(電極形成工程)。切断は、一般に、シート状電極を製造流れ方向に沿って所定の幅に切断するスリット工程と、所定の長さに切断する裁断工程とからなる。また、本発明においては、上述したローラープレス機等による圧延処理に先立ってスリット工程を行い、スリット工程後に圧延処理を行ってもよい。
【0065】
また、スリット工程において、シート状電極の搬送速度は5〜150m/分程度、シート状電極のテンションは1〜50kg/電極幅、程度の範囲で設定することができる。
【0066】
本発明においては、シート状電極の切断を上述した本発明のスリッター装置1を用いて行う。このスリッター装置1を用いることにより、集電体にバリが発生することを十分に抑制することができる。したがって、本発明の電極の製造方法によれば、電気化学デバイスを構成した際に、集電体のバリ等に起因する内部短絡の発生を十分に抑制することが可能な電極を得ることができる。
【0067】
以上、本発明のスリッター装置及び電極の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明のスリッター装置においては、下刃7が直線状の下刃となっていてもよい。この場合、1以上の円形の上刃4が所定間隔で装着された回転軸2と、1以上の直線状の下刃が所定間隔で平行に装着された、該下刃の刃面に対して垂直な軸とが、互いに平行に配設される。このような構成を有するスリッター装置であっても、上刃及び下刃が上述した硬度及び表面粗さの条件を満たしていることにより、シート状電極の切断時に、集電体の切断屑が刃面に融着することを十分に抑制することができ、且つ、集電体の切断面にバリが発生することを十分に抑制することができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、スリッター装置1が複数の上刃4と下刃7とを有する場合について説明したが、本発明のスリッター装置は、単一の上刃4と下刃7とを有するものであってもよい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
[実施例1〜2及び比較例1〜8]
図1に示したものと同様の構成を有するスリッター装置において、上刃及び下刃として表1に示す硬度及び表面粗さを有するものをそれぞれ用いて実施例1〜2及び比較例1〜8のスリッター装置を作製した。ここで、硬度はダイヤモンド正四角錐圧子を備えたビッカース硬度計(島津製作所製、HMV−FA)により20点測定を行い、測定結果を算術平均して求めた。表面粗さは触針式表面粗さ計(テーラーホブソン社製、タリステップ)を用いて、刃面において2mmの走査を行なったときの表面粗さプロファイルから求めた。なお、上刃としては、厚み(t)が3.41mm、直径が10.5mm、刃先角度(θ)が8.5°、下刃との噛み合わせ深さ(d)が300μmであるものを用い、隣り合う上刃同士の間隔が50mmとなるように配置した。また、下刃は、厚みが10mm、直径が80mmであるものとし、上刃の配置間隔に対応するように配置した。
【0071】
【表1】


【0072】
(切断試験)
実施例1〜2及び比較例1〜8で作製したスリッター装置を用いて、厚み200μmのアルミニウム箔を150m分、断続的に切断する切断試験を行った。切断試験後、上刃及び下刃の刃面から5mm以内の領域を任意に20点選択し、光学顕微鏡(倍率:50倍)により刃面を観察することで、刃面にアルミニウムの融着が生じているかどうかを確認した。アルミニウムの付着が認められたものを不良としたときの不良数を表2に示す。また、切断試験により切断されたアルミニウム箔を任意に20個選択し、光学顕微鏡(倍率:50倍)によりアルミニウム箔の切断面を観察することで、アルミニウム箔にバリが発生しているかどうかを確認した。切断面にバリが認められたものを不良としたときの不良数を表2に示す。
【0073】
【表2】


【0074】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜2のスリッター装置によれば、比較例1〜8のスリッター装置と比較して、アルミニウム箔の切断時にアルミニウムが刃面に融着することを十分に抑制し、且つ、アルミニウム箔の切断面にバリが発生することを十分に抑制することができることが確認された。
【0075】
以上より、本発明のステッパー装置によれば、シート状電極を切断する際に、切断屑が刃面に融着することを十分に抑制し、且つ、集電体の切断面にバリが発生することを十分に抑制することができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のスリッター装置の好適な一実施形態の要部を示す概略断面図である。
【図2】本発明のスリッター装置に用いられる上刃の刃先形状を示す概略断面図である。
【図3】本発明のスリッター装置に用いられる上刃と下刃の噛み合わせを示す概略断面図である。
【図4】本発明のスリッター装置によるシート状電極の切断の様子を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・スリッター装置、2・・・回転軸、3・・・スペーサー、4・・・上刃、4a・・・上刃4の周縁部側面、5・・・回転軸、6・・・スペーサー、7・・・下刃、7a・・・下刃7の周縁部側面、8・・・板バネ、10・・・シート状電極。
【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋1丁目13番1号
【出願日】 平成16年6月29日(2004.6.29)
【代理人】 【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹

【識別番号】100092657
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 史朗

【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭

【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史

【公開番号】 特開2006−7404(P2006−7404A)
【公開日】 平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願番号】 特願2004−192203(P2004−192203)