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【発明の名称】 溶接加工干渉予測システム及び該システムを利用した溶接治具設計方法
【発明者】 【氏名】柳川 洋介
【住所又は居所】静岡県磐田市新貝2500番地 ヤマハ発動機株式会社内

【氏名】青木 幹夫
【住所又は居所】静岡県磐田市新貝2500番地 ヤマハ発動機株式会社内

【要約】 【課題】3次元設計形状データと実際の溶接工具の形状との間に差異があった場合でも、溶接工具と溶接治具との干渉が生じることのない溶接加工干渉予測システム及び該システムを利用した溶接治具設計方法を提供する。

【解決手段】溶接工具5を予め設定された経路に沿って移動させつつ溶接治具2に固定された被溶接物1の所要部位を溶接する場合に、上記溶接工具5が上記経路上を移動する際の該溶接工具5と上記溶接治具2との干渉の有無を事前に予測する溶接加工干渉予測システムであって、上記溶接工具5の実物形状を計測することにより3次元データ化された実物工具形状5′を求め、該実物工具形状5′を上記経路に沿って移動させた際の工具動作軌跡を求め、該工具動作軌跡と上記溶接治具2との干渉の有無を予測する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接工具を予め設定された経路に沿って移動させつつ溶接治具に固定された被溶接物の所要部位を溶接する場合に、上記溶接工具が上記経路上を移動する際の該溶接工具と上記溶接治具との干渉の有無を事前に予測する溶接加工干渉予測システムであって、
上記溶接工具の実物形状を計測することにより3次元データ化された実物工具形状を求め、該実物工具形状を上記経路に沿って移動させた際の工具動作軌跡を求め、該工具動作軌跡と上記溶接治具との干渉の有無を予測すること特徴とする溶接加工干渉予測システム。
【請求項2】
請求項1において、上記3次元データ化された実物工具形状に予め設定された範囲の姿勢変化を加味することにより3次元データ化された姿勢調整済工具形状を求め、該姿勢調整済工具形状を上記経路に沿って移動させた際の姿勢調整済動作軌跡を求め、該姿勢調整済動作軌跡と上記溶接治具との干渉の有無を予測することを特徴とする溶接加工干渉予測システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の溶接加工干渉予測システムを利用して上記溶接治具を設計する溶接治具設計方法であって、
溶接治具を、上記工具動作軌跡又は姿勢調整済動作軌跡との干渉を排除した形状に設定することを特徴とする溶接治具設計方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動二輪車の車体フレーム等の被溶接物を溶接ロボットで自動溶接する場合に、溶接工具と被溶接物を固定する溶接治具との干渉の有無を事前に予測するようにした溶接加工干渉予測システム及び該システムを利用した溶接治具の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接の品質を保つには、被溶接物の溶接部位に対する溶接工具の姿勢(前進角や狙い角等)を各溶接部位に適した姿勢に保つことが重要である。例えば自動二輪車の車体フレームや排気管は複雑な曲線から構成されている場合が多い。そのためこれらの溶接に当たっては、溶接工具は多方向から溶接部位に向かって進入し、広範囲に渡って移動することとなるため、溶接時に溶接工具が溶接治具と干渉することが予想される。このような干渉が生じた場合には溶接治具の修正が必要となる。また修正が困難な場合には、溶接部位に対する溶接工具の角度が最適でないまま溶接が行なわれることとなり、溶接品質が低下することが懸念される。
【0003】
そこで溶接工具と溶接治具との干渉を回避するために、溶接工具の3次元設計形状データと予め設定された溶接工具の姿勢に基づいて溶接工具の移動する範囲を3次元形状として算出し、この3次元形状データを参照しながら溶接治具の設計を行なうようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2002−153993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記従来方法で設計された溶接治具を用いた溶接では、溶接工具と溶接治具との干渉が生じることが予想される。これは以下の理由による。
【0005】
実物の溶接工具は、上記3次元設計形状データ通りにできていない場合があり、このような場合には溶接工具と溶接治具とが干渉する可能性がある。また実際に溶接を行ない良好な溶接品質が得られない場合には、溶接工具の姿勢を微調整して溶接品質を向上させることが行なわれるが、上記従来方法で設計された溶接治具の場合は、この微調整時に干渉を起こす可能性がある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、3次元設計形状データと実際の溶接工具の形状との間に差異があった場合でも、溶接工具と溶接治具との干渉が生じることのない溶接加工干渉予測システム及び該システムを利用した溶接治具設計方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、溶接工具を予め設定された経路に沿って移動させつつ溶接治具に固定された被溶接物の所要部位を溶接する場合に、上記溶接工具が上記経路上を移動する際の該溶接工具と上記溶接治具との干渉の有無を事前に予測する溶接加工干渉予測システムであって、上記溶接工具の実物形状を計測することにより3次元データ化された実物工具形状を求め、該実物工具形状を上記経路に沿って移動させた際の工具動作軌跡を求め、該工具動作軌跡と上記溶接治具との干渉の有無を予測すること特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、上記3次元データ化された実物工具形状に予め設定された範囲の姿勢変化を加味することにより3次元データ化された姿勢調整済工具形状を求め、該姿勢調整済工具形状を上記経路に沿って移動させた際の姿勢調整済動作軌跡を求め、該姿勢調整済動作軌跡と上記溶接治具との干渉の有無を予測することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の溶接加工干渉予測システムを利用して上記溶接治具を設計する溶接治具設計方法であって、溶接治具を、上記工具動作軌跡又は姿勢調整済動作軌跡との干渉を排除した形状に設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、溶接工具の3次元設計データではなく、溶接工具の実物を計測することにより3次元データ化された実物工具形状を求め、該実物工具形状を溶接経路に沿って移動させて工具動作軌跡を求め、該工具動作軌跡と溶接治具との干渉の有無を予測するようにしたので、溶接工具の実物と3次元設計データとの間に差異がある場合でも、この差異が上記干渉予測に悪影響を与えることはなく、従って溶接工具と溶接治具との干渉を確実に防止できる。
【0011】
また請求項2の発明では、上記3次元データ化された実物工具形状に姿勢変化を加味して3次元データ化された姿勢調整済工具形状を求め、該姿勢調整済工具形状に基づいて求めた姿勢調整済動作軌跡と溶接治具との干渉の有無を予測するようにしたので、溶接品質を向上させるために溶接工具の姿勢を微調整した場合であっても溶接工具と溶接治具との干渉を確実に回避できる。
【0012】
請求項3の発明では、溶接治具の設計に当たって、該溶接治具の形状を、3次元データ化された実物工具形状に基づく工具動作軌跡又は実物工具形状に溶接姿勢の変化を加味した3次元データ化された姿勢調整済工具形状に基づく姿勢調整済動作軌跡との干渉を回避するように設定したので、溶接工具との干渉を回避できる溶接治具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を添付図面に沿って説明する。
図1〜図9は本発明の一実施形態による溶接加工干渉予測システム及び該システムを利用した溶接治具設計方法を説明するための図であり、図1は溶接設備の斜視図、図2は被溶接物(車体フレーム)における調整済工具動作軌跡を示す斜視図、図3,図4は溶接治具に車体フレームをセットした状態を示す平面斜視図,底面斜視図、図5〜図7は溶接工具の姿勢を示す図、図8は行程を説明するための図、図9は行程を説明するためのブロック図である。
【0014】
図において、1は被溶接物である車体フレーム、2は該車体フレーム1の構成部品を所定形状に配置固定する溶接治具、3は該溶接治具2を支持し、該治具2、ひいては上記車体フレーム1を水平軸回りに回転させて所定の角度位置に位置決め保持する被溶接物回転機構(以下、外部軸と記す)、4は上記車体フレーム1の所要の溶接部位を自動的にアーク溶接する溶接ロボットである。
【0015】
上記車体フレーム1は複数の構成部品、例えば前端クロスパイプ1a、左,右サイドパイプ1b,1b,センタクロス部材1c,リヤクロス部材1d等から構成されている。
【0016】
上記溶接治具2は、複数のロック機構2a,2b,2c等を有し、上記車体フレーム1の各構成部品1a〜1dを所定の状態に固定保持する。
【0017】
上記溶接ロボット4は、ベース部4a上にポスト4b,アーム4cを所望位置に移動可能に配置し、該アーム4cの先端部に溶接工具5を装着したものである。この溶接ロボット4は、上記溶接工具5の先端の溶接トーチ5aが、溶接部位に対して所定の狙い角θ1や前進角θ2(図5〜図7参照)を保持した状態で溶接方向に前進するように動作する。また、この場合、上記外部軸3が上記溶接部位の傾斜角θ3が所定角度になるように上記溶接治具2を回転させる。なお上記狙い角θ1や前進角θ2及び傾斜角θ3については、満足できる溶接品質が得られように微調整が行なわれる。
【0018】
上記溶接治具は2は、上記溶接工具5の動作軌跡との干渉を回避できるように設計される。この場合、上記溶接トーチ5aの狙い角θ1や前進角θ2及び傾斜角θ3は、実際に溶接した場合の溶接品質の状況に応じて適宜微調整される。そこで上記溶接治具2は、上記微調整を含む上記溶接工具の動作軌跡(姿勢調整済動作軌跡)tとの干渉を回避できる形状,寸法に設定される。
【0019】
上記溶接工具の動作軌跡と溶接治具との干渉を事前に予測する方法についてより具体的に説明する。
【0020】
本実施形態では、溶接工具の3次元設計形状データは用いずに、実際に製作された溶接工具5の実物形状が3次元計測機6により計測される(図8(a),(b),図9(a))。そしてこの計測データにより作成された3次元CADデータ化された実物工具形状5′が想定され(図8(c)図9(b)、さらにこの実物工具形状5′に上記狙い角や前進角を予め設定された範囲内で加味することにより、つまり図8(d)に示すように加工点aを中心に上記狙い角等の範囲内で溶接工具を揺動させることにより3次元データ化された姿勢調整済工具形状5′′が設定される(図8(d),図9(c))。そしてこの姿勢調整済工具形状を用いて、上記設定された経路で、かつ設定された狙い角や前進角でもって溶接工具を移動させた場合の姿勢調整済動作軌跡tが求められる(図2,図3の二点鎖線、図9(d))。そして溶接治具2は、上記姿勢調整済溶接工具動作軌跡との干渉が生じることのないよう設計され、製作される(図9(e))。
【0021】
このように本実施形態では、溶接工具5の形状を3次元計測機で計測して得られたCADデータから3次元データ化された実物工具形状5′を求め、さらにこの実物工具形状5′に狙い角θ1や前進角θ2の微調整量を加味することにより3次元データ化された姿勢調整済工具形状5′′を想定し、この姿勢調整済工具形状5′′を用いて姿勢調整済動作軌跡tを求め、この姿勢調整済動作軌跡tとの干渉が生じることのないよう溶接治具を設計,製作するようにしたので、溶接工具の3次元設計形状データと実物との間に差異があった場合でも溶接治具と溶接工具との干渉を確実に回避できる。また実際に溶接した際に溶接工具の姿勢を微調整した場合でも溶接治具と溶接工具との干渉を確実に回避できる。
【0022】
また実物工具形状に溶接姿勢の変化を加味して求めた姿勢調整済工具形状に基づいて姿勢調整済動作軌跡tを求め、溶接治具を、上記軌跡tとの干渉を回避するように設定したので、溶接工具との干渉を回避できる溶接治具を容易確実に得ることができる。
【0023】
なお、上記実施形態では、車体フレームの溶接について説明したが、被溶接物が上記実施形態に限定されないのは勿論であり、本発明はあらゆる部材からなるあらゆる部品の溶接に適用できる。
【0024】
また、上記実施形態では、アーク溶接について説明したが、本発明は、アーク溶接以外の、例えばレーザ溶接,電子ビーム溶接,スポット溶接等、あらゆる溶接に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態システムが採用された溶接設備の斜視図である。
【図2】上記実施形態の車体フレーム(被溶接物)における調整済動作軌跡を示す斜視図である。
【図3】上記車体フレームを溶接治具にセットした状態の平面斜視図である。
【図4】上記車体フレームを溶接治具にセットした状態の底面斜視図である。
【図5】上記実施形態の溶接状態を示す模式斜視図である。
【図6】上記溶接状態を溶接方向前方から見た模式図である。
【図7】上記溶接状態を溶接方向側方から見た模式図である。
【図8】上記実施形態の行程を示す斜視図である。
【図9】上記実施形態の行程を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0026】
1 車体フレーム(被溶接物)
2 溶接治具
5 溶接工具
5′実物工具形状
5′′ 姿勢調整済工具形状
t 姿勢調整済動作軌跡
θ1,θ2 狙い角,前進角(溶接工具姿勢)
【出願人】 【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
【住所又は居所】静岡県磐田市新貝2500番地
【出願日】 平成16年11月4日(2004.11.4)
【代理人】 【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努

【公開番号】 特開2006−130522(P2006−130522A)
【公開日】 平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願番号】 特願2004−321029(P2004−321029)