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【発明の名称】 溶湯防燃方法、鋳物製造方法およびマグネシウム合金鋳物
【発明者】 【氏名】北野 智靖
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内

【氏名】中浦 祐典
【住所又は居所】静岡県裾野市平松85番地 三菱アルミニウム株式会社技術開発センター内

【氏名】大堀 紘一
【住所又は居所】静岡県裾野市平松85番地 三菱アルミニウム株式会社技術開発センター内

【氏名】渡部 晶
【住所又は居所】静岡県裾野市平松85番地 三菱アルミニウム株式会社技術開発センター内

【氏名】松山 晴俊
【住所又は居所】静岡県裾野市平松85番地 三菱アルミニウム株式会社富士製作所内

【氏名】大井 民男
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシン精機株式会社内

【氏名】相川 智広
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシン精機株式会社内

【氏名】才川 清二
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシン精機株式会社内

【氏名】伊藤 真
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地 アイシン精機株式会社内

【要約】 【課題】所定の保持炉で保持される、カルシウムを含むマグネシウム合金の溶湯の燃焼を防止する方法を提供する。

【解決手段】所定の保持炉内で保持される、カルシウムを含有するマグネシウム合金の溶湯の表面に、六フッ化硫黄、二酸化硫黄などの防燃ガスを供給する。防燃ガスはキャリアガスと混合されて保持炉内へ供給される。キャリアガスとして、マグネシウム合金の溶湯と反応しない窒素および/またはアルゴンを使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを含有するマグネシウム合金の溶湯に防燃ガスを供給して溶湯の燃焼を防ぐ溶湯防燃方法であって、防燃ガスに窒素および/またはアルゴンを混合して、防燃ガスを溶湯へ供給することを特徴とする溶湯防燃方法。
【請求項2】
防燃ガスは、六フッ化硫黄および/または二酸化硫黄である請求項1に記載の溶湯防燃方法。
【請求項3】
カルシウムを含有するマグネシウム合金は、更にアルミニウムまたはストロンチウムまたはマンガンの中の少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項1に記載の溶湯防燃方法。
【請求項4】
カルシウムを含有するマグネシウム合金の溶湯を保持する保持炉からマグネシウム合金を鋳造機へ供給し、鋳造機でマグネシウム合金鋳物を製造する鋳物製造方法であって、防燃ガスに窒素および/またはアルゴンを混合して、防燃ガスを、溶湯を保持する保持炉へ供給することを特徴とする鋳物製造方法。
【請求項5】
防燃ガスは、六フッ化硫黄および/または二酸化硫黄である請求項4に記載の鋳物製造方法。
【請求項6】
カルシウムを含有するマグネシウム合金は、更にアルミニウムまたはストロンチウムまたはマンガンの中の少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項5に記載の鋳物製造方法。
【請求項7】
請求項4〜請求項6の何れか1項に記載の鋳物製造方法よって製造されたマグネシウム合金鋳物。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムを含むマグネシウム合金の溶湯防燃方法、該マグネシウム合金からなる鋳物の製造方法および該製造方法によって製造されるマグネシウム合金鋳物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マグネシウム合金は、軽量かつ比強度、放熱特性等に優れる材料であり、自動車部品等の材料として利用されている。マグネシウム合金からなる製品(鋳物)は、鋳物法、ダイカスト法等の種々の製造方法によって製造されている。
【0003】
上記製造方法において、マグネシウム合金は溶融状態にされるが、溶融状態にあるマグネシウム合金(溶湯)は、非常に反応性が高く、大気中の酸素や水等と容易に反応し、燃焼、爆発する恐れがある。その為、マグネシウム合金の溶湯を取り扱う際は、溶湯が発火、燃焼等を起こさないように溶湯の表面に防燃ガスを供給する等の防燃対策が施されている。
【0004】
例えば、特許文献1に示されるように、マグネシウム合金の溶湯の表面に、六フッ化硫黄(SF6)や二酸化硫黄(SO2)等の防燃ガスを供給して溶湯の燃焼を防止することが行われている(特許文献1参照)。マグネシウム合金の溶湯に防燃ガスを供給する際、防燃ガスは、二酸化炭素等に混合され、混合ガスとして供給されている。
【0005】
マグネシウム合金の溶湯は、ダイカストマシン等の鋳造機に供されるまでは、所定の保持炉(例えば、るつぼ)内で待機している。待機中のマグネシウム合金の溶湯の表面に上記防燃ガスが供給されると、溶湯の表面には主として酸化マグネシウムからなる皮膜が形成される。その皮膜は、溶湯中のマグネシウムと空気中の酸素が反応して形成され、多孔質体からなるものである。その皮膜に対し防燃ガスが供給されると、防燃ガスは、皮膜の孔に侵入し、その孔の中で滞留する。防燃ガスが皮膜の孔の中に滞留すると、水や酸素等は、孔の中に侵入し難くなる。すると溶湯中のマグネシウムは、酸素や水等と反応し難くなり、溶湯の燃焼が防止される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−96614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マグネシウム合金は、含有成分の違いによって幾つかに分類されている。それらの1つとして、カルシウムを含むマグネシウム合金(例えば、Mg−Al−Ca系)があるが、このマグネシウム合金の溶湯へ防燃ガスをする際、防燃ガスと混合するキャリアガスとして二酸化炭素を使用することは好ましくない。カルシウムを含むマグネシウム合金の溶湯に、二酸化炭素が供給されると、以下のような問題が生じる。
【0008】
カルシウムを含むマグネシウム合金の溶湯の表面には、空気中の酸素と溶湯中のカルシウムが反応して得られる酸化カルシウム等を含む皮膜が形成される。この皮膜中の酸化カルシウムは、更に防燃ガスに混合されている二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムとなる。時間の経過とともに、溶湯表面上の皮膜は、炭酸カルシウムが生成することにより厚みを増し、やがて皮膜は自重に耐えきれず溶湯内へ沈降する。溶湯内へ皮膜が沈降すると、溶湯の組成が変化してしまい問題である。また皮膜が溶湯内へ沈降すると、溶湯の流動性が悪化するという問題もある。流動性の悪化した溶湯を用いて鋳造すると、得られる鋳物には、流動性の悪化に伴う成形不良が生じやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る溶湯防燃方法は、カルシウムを含有するマグネシウム合金の溶湯に防燃ガスを供給して溶湯の燃焼を防ぐ溶湯防燃方法であって、防燃ガスに窒素および/またはアルゴンを混合して、防燃ガスを溶湯へ供給することを特徴とする。
【0010】
また本発明に係る溶湯防燃方法は、防燃ガスが六フッ化硫黄および/または二酸化硫黄であることが望ましい。
【0011】
また本発明に係る溶湯防燃方法は、カルシウムを含有するマグネシウム合金が、更にアルミニウムまたはストロンチウムまたはマンガンの中の少なくとも1つを含有することが望ましい。
【0012】
また本発明に係る鋳物製造方法は、カルシウムを含有するマグネシウム合金の溶湯を保持する保持炉からマグネシウム合金を鋳造機へ供給し、鋳造機でマグネシウム合金鋳物を製造する鋳物製造方法であって、防燃ガスに窒素および/またはアルゴンを混合して、防燃ガスを、溶湯を保持する保持炉へ供給することを特徴とする。
【0013】
また本発明に係る鋳物製造方法は、防燃ガスが、六フッ化硫黄および/または二酸化硫黄であることが望ましい。
【0014】
また本発明に係る鋳物製造方法は、カルシウムを含有するマグネシウム合金が、更にアルミニウムまたはストロンチウムまたはマンガンの中の少なくとも1つを含有することが望ましい。
【0015】
また本発明に係るマグネシウム合金鋳物は、上記鋳物製造方法によって製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の溶湯防燃方法によれば、カルシウムを含むマグネシウム合金の溶湯の燃焼を防止することが出来る。
【0017】
また本発明の鋳物製造方法によれば、許容範囲の組成を有するマグネシウム合金からなる鋳物を製造することが出来る。
【0018】
また本発明のマグネシウム合金鋳物は、許容範囲の組成を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について説明する。
【0020】
〔溶湯防燃方法〕
本実施形態に係る溶湯防燃方法は、カルシウムを含有するマグネシウム合金の溶湯に、防燃ガスを供給して溶湯の燃焼を防ぐものである。特に、本実施形態に係る溶湯防燃方法は、溶湯が所定の鋳造機に供される前の段階であって、所定の保持炉内で保持されている状態のマグネシウム合金の溶湯の燃焼を防ぐものである。
【0021】
本実施形態で用いられるマグネシウム合金は、カルシウムを含有するマグネシウム合金である。該マグネシウム合金としては、例えば、マグネシウムまたはMg−Mn系、Mg−Zn系、Mg−Li系、Mg−Al−Zn系、Mg−Zn−Zr系等の公知のマグネシウム合金に対し、カルシウムを0.1〜10質量%程度の割合で添加したものを挙げることが出来る。
【0022】
該マグネシウム合金としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、マンガン、ストロンチウムからなるマグネシウム合金がある。このマグネシウム合金において、マグネシウム合金の全質量に対し、アルミニウムが6〜10質量%、カルシウムが1.8〜5質量%、マンガンが0.1〜0.6質量%、ストロンチウムが0.05〜1.0質量%の割合で含まれるものを使用することが好ましい。
【0023】
一般に、マグネシウム合金からなる製品(鋳物)は、鋳物法、ダイカスト法、チクソモールディング法等の製造方法を利用して製造される。これらの製造方法において、マグネシウム合金は所定の溶解炉で溶解され、溶融状態のマグネシウム合金(溶湯)とされる。
【0024】
マグネシウム合金の溶解は、所定の溶解炉において行われる。溶解炉としては、マグネシウム合金の溶解に使用される公知の溶解炉を用いることが出来、特に、組成、形状等において限定されるものでは無い。
【0025】
溶解炉内で溶解されたマグネシウム合金(溶湯)は、そのまま溶湯の状態で溶解炉内において保持され、その後、所定の鋳造機へ供されるか、あるいは一旦、所定の保持炉へ移され、その後、保持炉より所定の鋳造機へ供される。何れの場合においても、溶解炉または保持炉内で保持されるマグネシウム合金の溶湯に対し、防燃処置を施す必要がある。
【0026】
マグネシウム合金の溶湯は非常に反応性が高く、容易に空気中の酸素、水等と反応する。マグネシウム合金の溶湯が酸素、水等と反応すると、激しく燃焼し、場合によっては爆発することもある。したがって、上記処置として、マグネシウム合金の溶湯を保持する保持炉等内に防燃ガスを供給する。
【0027】
防燃ガスとしては、六フッ化硫黄(SF6)、二酸化硫黄(SO2)等のマグネシウム合金の溶湯の防燃ガスとして知られているものを用いることが出来る。特に、本実施形態においては、六フッ化硫黄(SF6)、二酸化硫黄(SO2)を使用することが好ましい。六フッ化硫黄(SF6)、二酸化硫黄(SO2)は、それぞれ単独または2種を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
マグネシウム合金の溶湯が保持される保持炉に、防燃ガスが供給される様子を、図1を用いて説明する。図1には、マグネシウム合金の溶湯が保持される保持炉10が示されている。保持炉10は、溶湯を収容するための収容部12と、該収容部12の上部を覆う蓋部14を備える。収容部はマグネシウム合金の溶湯を収容するための凹部を備える。蓋部14は、収容部12の上部に配置され、凹部内に酸素、窒素等が混入しないように外気を遮断している。保持炉10内で保持されているマグネシウム合金の溶湯の表面には、所定の防燃ガス供給装置(図示せず)より供給される防燃ガスが供給路16を経由して供給される。図1中の矢印Aの向きから保持炉10内へ防燃ガスが供給される。供給路16の一端は、図示されない防燃ガス供給装置と接続しており、他端である供給口部18は、保持炉10の蓋部14が備える供給路挿通孔15を挿通した状態で蓋部14に固定されている。供給口部18の供給口20の位置は、溶湯の表面の位置より高い位置に設定されている。このように設定されている供給路16の供給口20から防燃ガスがマグネシウム合金の溶湯の表面に供給される。なおマグネシウム合金の溶湯の表面には皮膜35が形成されているが、供給される防燃ガスの圧力によって、皮膜35が破壊し、溶湯内へ沈降することはない。なお、保持炉10で保持されたマグネシウム合金の溶湯は、所定のポンプ22により保持炉10から配管24を経由し、所定の図示されない鋳造機へ供給される。図1中の矢印Bの方向へ溶湯が供給される。
【0029】
図1において、供給口20は、溶湯の表面の略垂直方向から防燃ガスが供給されるように設置されているが、本発明はこの場合に限られず、例えば、防燃ガスが溶湯の表面に対し任意の角度で供給されるように供給口を設置してもよい。
【0030】
防燃ガスを保持炉内へ供給する際、防燃ガスはキャリアガスに混合されて供給される。キャリアガスとしては、窒素、アルゴンが使用され、これらはそれぞれ単独で使用してもよく、また窒素、アルゴンの混合ガスをキャリアガスとして使用しても良い。窒素、アルゴンは、マグネシウム合金の溶湯へ供給されても、溶湯と反応して不要な生成物を生成しない。その為、窒素、アルゴンは、本実施形態において望ましいキャリアガスとして使用される。
【0031】
上記防燃ガスは、キャリアガスに対し、通常、0.01〜1.0体積%の割合で混合される。
【0032】
本実施形態で用いられるマグネシウム合金は所定量のカルシウムを含有するが、このカルシウムを含有するマグネシウム合金の溶湯が、空気中の酸素等と接触すると、溶湯と酸素等の間で化学反応が起こる。その反応の際、酸素等は溶湯中のマグネシウムよりもカルシウムが優先的に反応する。その為、反応生成物として、酸化カルシウムが酸化マグネシウムよりも優先的に得られ、マグネシウム合金の溶湯の表面に、酸化カルシウムを多く含んだ皮膜が形成される。
【0033】
上記酸化カルシウムを多く含む皮膜は、多孔質体であり、気体分子を取り込める程の大きさの空隙を備える。溶湯の表面に形成される皮膜に対し、上記防燃ガスが供給されると、防燃ガスが皮膜の空隙内へ侵入し、空隙内で滞留する。防燃ガスが空隙内で滞留した状態が保たれると、酸素や水等のマグネシウムと反応性を有する気体分子が、皮膜内の空隙内へ侵入し難くなり、酸素等とマグネシウム溶湯の表面とが接触し難くなる。すると、酸素等とマグネシウムとの反応が起こりにくくなり、溶湯の燃焼を防止することが出来る。
【0034】
防燃ガスの供給量は、保持炉内の防燃ガスの濃度、圧力が所定の範囲内で維持されるように調節されることが望ましい。
【0035】
なお本発明に係る実施形態として、図1を用いて、保持炉における防燃方法を防燃ガスの供給の説明を行ったが、溶解炉においてマグネシウム合金の溶湯を保持する場合も同様の手法によって防燃ガスを供給し、溶湯の防燃を図ることが出来ることは言うまでもない。
【0036】
本実施形態の溶湯防燃方法は、マグネシウム合金の溶湯へ防燃ガスを供給する際のキャリアガスとして、窒素、アルゴンを用いるので、キャリアガスがマグネシウム合金の溶湯と反応し、溶湯の表面に不要な生成物が生じることがない。したがって、不要な生成物が溶湯内へ沈降し、溶湯の流動性を悪化させることもない。また不要な生成物が溶湯内へ沈降し、溶湯の組成が変化することを防止することが出来る。即ち、マグネシウム合金の組成比を許容範囲内で維持することが出来る。
【0037】
〔鋳物製造方法およびマグネシウム合金鋳物〕
本実施形態に係る鋳物製造方法は、上記溶湯防燃方法によって燃焼を防止された(防燃された)カルシウムを含むマグネシウム合金の溶湯を用いて、マグネシウム合金の鋳物を製造するものである。上記溶湯防燃方法によって防燃されたマグネシウム合金の溶湯を、溶解炉、保持炉等から所定の鋳造機へ供給し、鋳造機によってマグネシウム合金の鋳物を製造(鋳造)することが出来る。
【0038】
鋳物製造方法は、上記溶湯防燃方法を使用してカルシウムを含むマグネシウム合金の溶湯の燃焼を防止する工程を含み、かつ該工程において防燃されたマグネシウム合金の溶湯を、所定の鋳造機へ供給し、該鋳造機において鋳物を製造する工程を含むものである。
【0039】
鋳造機としては、鋳物法、ダイカスト法、チクソモールディング法等の公知の鋳物の製造方法において用いられる装置を使用することが出来る。これらの鋳造機へ溶湯を供給し、鋳物を製造する際も、溶湯の防燃処置が施されることが好ましい。その防燃処理を施す際に使用する防燃ガス、キャリアガスは、上記溶湯防燃方法で使用したものと同様のものを使用することが好ましい。
【0040】
本実施形態の鋳物製造方法においては、上記溶湯防燃方法により燃焼を防止されたマグネシウム合金の溶湯が用いられるので、溶湯にはマグネシウム合金とキャリアガスとの不要な反応物が含まれない。したがって、鋳造機に溶湯を円滑に供給することが可能となり、本実施形態の鋳物製造方法よって製造されたマグネシウム合金の鋳物(マグネシウム合金鋳物)には、溶湯の流動性の悪化に起因する成形不良が生じない。また、目標とする組成を備えるマグネシウム合金鋳物を製造することができる。なおマグネシウム合金鋳物には、トリミング、鋳バリ取り、仕上げ加工等が施されても良い。
【0041】
以下、本発明を実施例によって説明する。なお本発明は、以下に示される実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
〔実施例1〕
カルシウムを含むマグネシウム合金(マグネシウム合金の全質量に対し、アルミニウムを6.8質量%、カルシウムを3.4質量%、ストロンチウムを0.4質量%、マンガンを0.3質量%の割合で含むマグネシウム合金)の溶湯を40kg用意し、該溶湯を図1に示される保持炉中に入れ、該保持炉において720℃で保持した。その際、該保持炉へ、窒素(キャリアガス)と六フッ化硫黄(防燃ガス)を混合した混合ガス(六フッ化硫黄、0.5体積%)を防燃ガス供給装置より継続的に供給し、防燃処理を施した。混合ガスは1000ml/minの流量で供給された。防燃ガスが供給された状態でマグネシウム合金の溶湯を、保持炉内において10時間保持した。その後、マグネシウム合金の溶湯の表面に形成された皮膜を観察した。
【0043】
〔比較例1〕
上記実施例1において、キャリアガスとして窒素の代わりに二酸化炭素を使用して、0.5体積%の六フッ化硫黄を溶湯へ供給すること以外は、実施例1と同様にしてマグネシウム合金の溶湯に防燃処理を施した。上記実施例1と同様にして、10時間保持した後に溶湯の表面に形成された皮膜を観察した。
【0044】
上記実施例1で形成された皮膜は、その組成が、主として、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウムであることが確かめられた。一方、比較例1の皮膜は、主として炭酸カルシウムからなることが確かめられた。なお、これらの皮膜の組成の検出は、それぞれの防燃ガス雰囲気中で保持される溶湯の表面に形成された皮膜を、所定量採取し、それをXRD(株式会社リガク製、RINT2200)で解析することにより行った。また実施例1の皮膜の厚みは4.0μm、比較例1の皮膜の厚みは100.0μmであった。なお、皮膜の膜厚測定は、それぞれの防燃ガス雰囲気中で保持される溶湯の表面に形成された皮膜を所定量採取し、それを樹脂埋めしてSEM(日本電子株式会社製、JSM−6360LA)で皮膜断面を観察することにより、行った。
【0045】
実施例1において、10時間保持されたマグネシウム合金の溶湯は、発火等することなく保持することが出来た。また比較例1においても、発火等は生じなかった。
【0046】
〔実施例2〕
カルシウムを含むマグネシウム合金(マグネシウム合金の全質量に対し、アルミニウムを10.0質量%、カルシウムを4.0質量%、ストロンチウムを0.3質量%、マンガンを0.3質量%の割合で含むマグネシウム合金)の溶湯を40kg用意し、該溶湯を図1に示される保持炉中に入れ、該保持炉において720℃で保持した。その際、該保持炉へ、アルゴン(キャリアガス)と二酸化硫黄(防燃ガス)を混合した混合ガス(二酸化硫黄、0.5体積%)を防燃ガス供給装置より継続的に供給し、防燃処理を施した。混合ガスは1000ml/minの流量で供給された。防燃ガスが供給された状態でマグネシウム合金の溶湯を、保持炉内において10時間保持した。その後、マグネシウム合金の溶湯の表面に形成された皮膜を観察した。
【0047】
〔比較例2〕
上記実施例2において、キャリアガスとしてアルゴンの代わりに二酸化炭素を使用して、0.5体積%の二酸化硫黄を溶湯へ供給すること以外は、実施例2と同様にしてマグネシウム合金の溶湯に防燃処理を施した。上記実施例2と同様にして、10時間保持した後に溶湯の表面に形成された皮膜を観察した。
【0048】
上記実施例2で形成された皮膜は、その組成が、主として、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウムであることが確かめられた。一方、比較例2の皮膜は、主として炭酸カルシウムからなることが確かめられた。また実施例2の皮膜の厚みは5.0μm、比較例2の皮膜の厚みは100.0μmであった。なお、皮膜の組成、膜厚測定は、上記実施例1の測定方法と同様の方法を用いた。
【0049】
実施例2において、10時間保持されたマグネシウム合金の溶湯は、発火等することなく保持することが出来た。また比較例2においても、発火等は生じなかった。
【0050】
上記実施例1,2および比較例1,2のマグネシウム合金の溶湯を、鋳造機(東芝機械株式会社製、型締力:135トン、コールドチャンパータイプ ダイカストマシン、DC135HT)へ供給し、鋳物を製造した。
【0051】
実施例1、2の溶湯を使用して得られた鋳物には、特に成形不良は生じなかった。また得られた鋳物の組成を調べたところ、実施例1においては、アルミニウムを6.7質量%、カルシウムを3.2質量%、ストロンチウムを0.38質量%、マンガンを0.28質量%の割合で含むことが確かめられ、実施例2においては、アルミニウムを9.8質量%、カルシウムを3.7質量%、ストロンチウムを0.27質量%、マンガンを0.28質量%の割合で含むことが確かめられた。
【0052】
一方、比較例1,2の溶湯は、溶湯中に炭酸カルシウム等の不要な酸化物が含まれており、該溶湯は実施例1,2の溶湯と比較して流動性が悪い。その為、比較例1,2の溶湯を使用して得られた鋳物には、溶湯の流動性の悪化に伴う成形不良が見られた。また得られた鋳物の組成を調べたところ、比較例1においては、アルミニウムを5.6質量%、カルシウムを2.1質量%、ストロンチウムを0.28質量%、マンガンを0.28質量%の割合で含むことが確かめら、比較例2においては、アルミニウムを8.6質量%、カルシウムを1.8質量%、ストロンチウムを0.20質量%、マンガンを0.26質量%の割合で含むことが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】保持炉内のマグネシウム合金の溶湯に防燃ガスを供給する様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 保持炉、 12 収容部、14 蓋部、15 供給路挿通孔、16 供給路、 18 供給口部、 20 供給口、 22 ポンプ、 24 配管、30 マグネシウム合金の溶湯、 35 皮膜。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝2丁目3番3号
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
【住所又は居所】愛知県刈谷市朝日町2丁目1番地
【出願日】 平成17年5月31日(2005.5.31)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二

【識別番号】100096976
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 純

【公開番号】 特開2006−334610(P2006−334610A)
【公開日】 平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願番号】 特願2005−159423(P2005−159423)